説明

インターフェロン−アルファ及び細胞質残留性細胞膜透過ペプチドを含むIFN−α融合タンパク質

【課題】本発明は、細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(cytoplasmic transduction peptide,CTP)に融合されたIFN(interferon)−αを含むIFN−α融合タンパク質に関する。
【解決手段】本発明は、細胞膜結合及び肝移動特性を有するペプチドであるCTPをヒトIFN−αに遺伝的に融合して細胞膜結合能力及び抗ウイルス活性が向上し、細胞核への移動は抑制され、肝移動能力、肝滞留特性、及び肝組織浸透特性に優れた効果を有する融合タンパク質である。これにより、低用量で各種のウイルス性感染等を含む肝疾患の予防又は治療に効果的なタンパク質医薬品の開発が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(cytoplasmic transduction peptide,CTP)に融合されたIFN(interferon)−αを含むIFN−α融合タンパク質に関し、より詳細には、細胞膜結合能力が向上し、細胞内に導入された後には、核への移動が抑制され、優れた肝移動及び肝組織浸透特性を有するペプチドであるCTPをヒトインターフェロン−アルファタンパク質のN−末端又はC−末端に融合して新しい特性を有するインターフェロンタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンは肝炎治療剤として使用されてきており、インターフェロン−α製剤(Intron−A:Schering,Roferon−A:Roche)及びインターフェロン−α製剤よりも投与回収を減らしたPEGylated IFN 製剤(PEG−Intron:Schering,Pegasys:Roche)等として販売されている。
【0003】
インターフェロン−アルファ治療の初期副作用として、発熱、悪寒、全身無力感、食欲不振、吐き気及び筋肉痛があり、このような症状は、ほぼ全ての患者において投与用量に比例して現われるが、治療初期に最もひどく、一般的に治療を中断すればなくなる。また、B型慢性肝炎患者においてPEG−インターフェロン−アルファ治療中の副作用の頻度と重症度は、インターフェロン−アルファ治療と類似することが知られている(1)。
【0004】
上記のように、インターフェロンの投与用量による副作用が知られるため、治療剤としてインターフェロンを使用するにあたり、その投与量の減少が要求されている。
【0005】
本明細書全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として組み込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、肝移動能力、肝滞留特性、及び肝組織浸透特性に優れ、より優秀な効能を有するインターフェロンを開発すべく努力した。その結果、細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(CTP)をヒトインターフェロンに融合した融合タンパク質を製造することで上記融合タンパク質の優れた肝移動能力、肝組織浸透効果及び肝滞留特性を確認して、既存の治療剤が有していた副作用及び高コストの問題を解決することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の目的は、IFN−α融合タンパク質を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、上記IFN−α融合タンパク質をコードする核酸分子を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、上記核酸分子を含むベクターを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、上記ベクターを含む形質転換体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、IFN−α融合タンパク質の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、IFN−α融合タンパク質の精製方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、肝疾患予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、肝疾患予防又は治療方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、更に明確となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一様態によれば、本発明は、細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(cytoplasmic transduction peptide,CTP)に融合されたIFN(interferon)−αを含むIFN−α融合タンパク質を提供する。
【0017】
本発明者らは、肝移動能力、肝滞留特性、及び肝組織浸透特性に優れ、より優秀な効能のインターフェロンを開発すべく努力した。その結果、細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(CTP)をヒトインターフェロンに融合した融合タンパク質を製造することで、上記融合タンパク質の優れた肝移動能力、肝組織浸透効果及び肝滞留特性を確認した。
【0018】
本明細書において「IFN−α融合タンパク質」とは、CTPに融合されたIFN−αを含むタンパク質を意味する。
【0019】
本発明のIFN−α融合タンパク質に含まれるCTPは、本発明者らによって、CTPの問題点を解決するために世界で最初に開発された伝達ペプチド(delivery peptide)であって、これを出願して特許登録され(大韓民国特許第0608558号公報、米国特許第7101844号公報、及び日本国特許第4188909号公報)、上記特許文献に開示されているCTPに関する内容は、本発明の内容として挿入される。
【0020】
本明細書において「細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(CTP)」とは、本発明者らによって最初に導入された用語であって、細胞膜透過能を保有しながらも細胞質に残留する特性、即ち核内への移動が抑制される特性を有するペプチドを意味する。
【0021】
本発明のIFN−α融合タンパク質に含まれるCTPにおいて、ペプチドの長さは、当業界に受け容れられる一般的な長さに該当し、好ましくは9アミノ酸〜20アミノ酸、より好ましくは9アミノ酸〜15アミノ酸、最も好ましくは11アミノ酸である。
【0022】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明のIFN−α融合タンパク質に含まれるCTPは、配列表の第13配列乃至第26配列から構成された群より選択されるアミノ酸配列を含み、より好ましくは配列表の第13配列乃至第18配列、第20配列乃至第22配列、第25配列及び第26配列から構成された群より選択され、最も好ましくは第13配列及び第25配列から構成された群より選択される。
【0023】
CTPは、細胞膜結合能力に優れ、細胞内に導入された後にも核への移動が抑制される特性を有し、生体内で他の伝達体(特に、PTD又はポリアルギニン)に比べて細胞毒性が低く、且つ融合されたタンパク質を肝に移動させる独特の性質を有しており、肝をターゲットとする疾患治療のための効果的な薬物伝達ペプチドである。
【0024】
本明細書において「インターフェロン−アルファ(IFN−α)」とは、ウイルスの複製及び細胞増殖を抑制して免疫反応を調節する、同質性が大きく、種特異的なタンパク質群を意味する。
【0025】
本発明のIFN−α融合タンパク質に含まれるIFN−αは、組み換えIFN−α2b、組み換えIFN−α2a、組み換えIFN−α2c、天然アルファ−インターフェロンの精製された混合物であるIFN−α−n1、コンセンサスアルファ−インターフェロン(米国特許第4,897,471号公報及び第4,695,623号公報参照)又は天然アルファ−インターフェロンの混合物であるIFN−α−n3であり、より好ましくはIFN−α2a又はIFN−α2b、最も好ましくはIFN−α2bである。IFN−α2bの製造方法は、米国特許第4,530,901号公報に詳しく記載されている。
【0026】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明のIFN−α融合タンパク質に含まれるIFN−αは、配列表の第28配列のアミノ酸配列を含む。
【0027】
本発明の他の好ましい実施例によれば、本発明のIFN−α融合タンパク質は、上記CTPが上記IFN−αのN−末端又はC−末端に融合され、より好ましくは、上記CTPが上記IFN−αのN−末端に連結される。
【0028】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明のIFN−α融合タンパク質は、上記CTPが上記IFN−αのN−末端に連結される場合には、配列表の第30配列のアミノ酸配列を含む。
【0029】
本発明の他の好ましい実施例によれば、本発明のIFN−α融合タンパク質は、上記CTPが上記IFN−αのC−末端に連結される場合には、配列表の第32配列のアミノ酸配列を含む。
【0030】
本発明の他の更に好ましい実施例によれば、本発明のIFN−α融合タンパク質は、ポリエチレングリコール(PEG)が更に結合されてもよく、上記PEGを結合させるPEG化反応は、当業界の一般的な方法で行われることができる(M.J.Roberts,M.D.Bentley et al.,Chemistry for peptide and protein PEGylation,Advanced Drug Delivery Reviews;54:459 476(2002);Francesco M.,Peptide and protein PEGylation:a review of problems and solutions,Veronese Biomaterials;22:405−417(2001))。
【0031】
本発明のより好ましい実施例によれば、本発明の融合タンパク質に結合されるPEGの分子量は、好ましくは10kDa〜100kDaであり、より好ましくは10kDa〜60kDaであり、最も好ましくは15kDa〜40kDaである。PEGの分子量が、10kDa〜100kDaである場合、腎クリアランス機序を減少させて血液内の維持時間を延長させることで、本発明の融合タンパク質の投与量を減少させる効果を有する。
【0032】
本発明の他の様態によれば、本発明は、上述した本発明のIFN−α融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。
【0033】
本明細書において「核酸分子」とは、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む(Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York(1980);Uhlman及びPeyman,Chemical Reviews,90:543−584(1990))。
【0034】
本発明のIFN−α融合タンパク質に含まれるIFN−αのヌクレオチド配列は、配列表の第27配列のヌクレオチド30〜533を含む。本発明のIFN−α融合タンパク質をエンコードする核酸分子は、最も好ましくは、配列表の第29配列のヌクレオチド30〜566又は配列表の第31配列のヌクレオチド31〜567を含む。CTP−融合IFN−αをコードする本発明の核酸分子は、上記のヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含むものと解釈される。上記の実質的な同一性とは、上記本発明のヌクレオチド配列と任意の他の配列とを最大限対応するようにアライメントし、当業界で通常利用されるアルゴリズムを用いてアライメントされた配列を分析した場合に、最小80%の相同性、より好ましくは最小90%の相同性、最も好ましくは最小95%の相同性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0035】
本発明の他の様態によれば、本発明は、CTP−融合IFN−αをコードする上述した本発明の核酸分子を含むIFN−α融合タンパク質発現用ベクターを提供する。
【0036】
本発明のベクターシステムは、当業界に公知された多様な方法を通じて構築されることができ、これに関する具体的な方法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に開示されており、この文献は、本明細書に参照として挿入される。
【0037】
本発明のベクターは、典型的にクローニングのためのベクター又は発現のためのベクターとして構築されてもよい。また、本発明のベクターは、原核細胞又は真核細胞を宿主として構築されてもよい。本発明のヌクレオチド配列が原核細胞由来であり、培養の便宜性などを考慮して、原核細胞を宿主とすることが好ましい。
【0038】
本発明のベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーター等)、解読開始のためのリボソーム結合部位及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。宿主細胞として、coliを用いる場合、coliトリプトファン生合成経路のプロモーター及びオペレータ部位(Yanofsky,C.,J.Bacteriol.,158:1018−1024(1984))及びファージλの左向プロモーター(pLλプロモーター、Herskowitz,I.and Hagen,D.,Ann.Rev.Genet.,14:399−445(1980))を調節部位として用いてもよい。
【0039】
なお、本発明に用いられるベクターは、当業界において頻繁に使用されるプラスミド(例えば、pSC101、ColE1、pBR322、pUC8/9、pHC79、pUC19、pET等)、ファージ(例えば、λgt4.λB、λ−Charon、λΔz1及びM13等)又はウイルス(例えば、SV40等)を操作して作製してもよい。
【0040】
一方、本発明のベクターは、発現ベクターであり、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから由来されたプロモーター(例えば、メタロチオニンプロモーター等)又は哺乳動物ウイルスから由来されたプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター及びHSVのtkプロモーター等)を用いることができ、一般的に、転写終結配列としてポリアデニル化配列を有する。
【0041】
本発明のベクターは、それより発現される本発明のIFN−α融合タンパク質の精製を容易にするために、必要に応じて他の配列と融合されてもよく、融合される配列は、例えば、グルタチオンS−トランスファラーゼ(Pharmacia,USA)、マルトース結合タンパク質(NEB,USA)、FLAG(IBI,USA)及び6x His(hexahistidine;Quiagen,USA)等を用いてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0042】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明のベクターによって発現されたIFN−α融合タンパク質は、陽イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィーにより精製される。
【0043】
なお、本発明の発現ベクターは、選択標識として、当業界で通常用いられる抗生物質耐性遺伝子を含んでもよく、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン、テトラサイクリンに対する耐性遺伝子などが挙げられる。
【0044】
本発明の他の様態によれば、本発明は、上述した本発明のベクターを含む形質転換体を提供する。
【0045】
本発明のベクターを安定して連続的にクローニング及び発現させることができる宿主細胞は、当業界に公知のいずれの宿主細胞をも用いることができ、例えば、coli JM109、coli BL21(DE3)、coli RR1、coli LE392、coli B、coli X 1776、coli W3110、バチルスサブティリス、バチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、サルモネラチピムリウム、セラチア菌、多様なシュードモナス種等の腸内細菌、菌株などが挙げられる。
【0046】
また、本発明のベクターを真核細胞に形質転換させる場合には、宿主細胞として、例えば、酵母(Saccharomyce cerevisiae)、昆虫細胞及びヒト細胞(例えば、CHO細胞(Chinese hamster ovary)、W138、BHK、COS−7、293、HepG2、3T3、RIN、MDCK細胞等)などが用いられる。
【0047】
本発明のベクターを宿主細胞内に運ぶ方法としては、宿主細胞が原核細胞の場合、CaCl法(Cohen,S.N.et al.,Proc.Natl.Acac.Sci.USA,9:2110−2114(1973));ハナハン法(Cohen,S.N.et al.,Proc.Natl.Acac.Sci.USA,9:2110−2114(1973)及びHanahan,D.,J.Mol.Biol.,166:557−580(1983));電気穿孔法(Dower,W.J.et al.,Nucleic.Acids Res.,16:6127−6145(1988))等により実施される。更に、宿主細胞が真核細胞の場合、マイクロインジェクション法(Capecchi,M.R.,Cell,22:479(1980));カルシウムフォスフェート沈殿法(Graham,F.L.et al.,Virology,52:456(1973));電気穿孔法(Neumann,E.et al.,EMBO J.,1:841(1982));リポソーム媒介形質感染法(Wong,T.K.et al.,Gene,10:87(1980));DEAE−デキストラン処理法(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188−1190(1985));遺伝子衝撃法(Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:9568−9572(1990))等によりベクターを宿主細胞内に注入することができる。
【0048】
宿主細胞内に注入されたベクターは、宿主細胞内で発現されることができ、このような場合、本発明のIFN−α融合タンパク質が多量に得られる。例えば、上記発現ベクターがlacプロモーターを含む場合には、宿主細胞にIPTGを処理して遺伝子発現を誘導することができる。
【0049】
以下、本発明のIFN−α融合タンパク質の製造方法又は精製方法は、上述した本発明のIFN−α融合タンパク質を製造又は精製する方法であるため、両方間で共通する内容は、繰り返し記載による明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0050】
本発明の他の様態によれば、本発明は次のステップを含むIFN−α融合タンパク質の製造方法を提供する:(a)プロモーターに作動的に連結された上述した本発明のIFN−α融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを製造するステップ;(b)上記ステップ(a)の発現ベクターで形質転換された形質転換体を培養するステップ;及び(c)上記ステップ(b)の形質転換体培養液からIFN−α融合タンパク質を得るステップ。
【0051】
本明細書において「作動的に連結された」とは、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合部位のアレイ)と他の核酸配列との間の機能的な結合を意味し、これにより上記調節配列は、上記他の核酸配列の転写及び/又はトランスレーションを調節する。
【0052】
本発明の他の様態によれば、本発明は次のステップを含むIFN−α融合タンパク質の精製方法を提供する:(a)プロモーターに作動的に連結された上述した本発明のIFN−α融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターで形質転換された形質転換体を培養するステップ;(b)上記ステップ(a)の形質転換体培養液からIFN−α融合タンパク質凝集体(inclusion body)を得るステップ;及び(c)上記ステップ(b)の凝集体をpH10〜pH12の溶解化(solubilization)緩衝液に溶解し、リフォールディング(refolding)緩衝液で4℃〜25℃及びpH8〜pH10の条件で撹拌するステップ。
【0053】
本発明の好ましい実施例によれば、上記ステップ(c)の溶解化緩衝液は、tris−HCl、EDTA及び尿素を含み、上記リフォールディング緩衝液は、tris−HCl、EDTA、尿素、スクロース、並びに酸化及び還元グルタチオンから構成された群より選択される。
【0054】
本発明の他の様態によれば、本発明は(a)上述した本発明のIFN−α融合タンパク質の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む肝疾患予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供する。
【0055】
本発明の他の様態によれば、本発明は(a)上述した本発明のIFN−α融合タンパク質の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物を、対象(subject)に投与するステップを含む肝疾患予防又は治療方法を提供する。
【0056】
本発明の他の様態によれば、本発明は肝疾患予防又は治療用の薬剤学的組成物を製造するための上述した本発明のIFN−α融合タンパク質の用途を提供する。
【0057】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明の組成物は血管に投与され、より好ましくは血管に投与される組成物の有効成分はPEGが結合された、CTP融合IFN−αの融合タンパク質である。
【0058】
本発明の組成物によって予防又は治療される肝疾患は、肝臓癌、肝炎、肝硬変症及びその他肝疾患を含み、好ましくは肝臓癌及び肝炎を含み、より好ましくはB型又はC型肝炎である。
【0059】
本発明の他の様態によれば、本発明は上述した本発明のCTPと肝疾患治療用薬物が融合されたCTP−薬物融合タンパク質を提供する。
【0060】
また、本発明は(a)CTPと肝疾患治療用の薬物とが融合されたCTP−薬物融合タンパク質の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む肝疾患予防又は治療用の薬剤学的組成物を提供する。
【0061】
本発明の他の様態によれば、本発明は(a)CTPと肝疾患治療用の薬物とが融合されたCTP−薬物融合タンパク質の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物を対象(subject)に投与するステップを含む肝疾患予防又は治療方法を提供する。
【0062】
本発明の他の様態によれば、本発明は、肝疾患予防又は治療用の薬剤学的組成物を製造するためのCTPと肝疾患治療用の薬物とが融合されたCTP−薬物融合タンパク質の用途を提供する。
【0063】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明に含まれる肝疾患治療用の薬物は、当業界に公知の多様な薬物を含み、好ましくは非経口投与される薬物、更に好ましくは血管に投与される薬物を含む。
【0064】
上記肝疾患治療用の薬物とCTPとの融合は、薬物の種類及び形態によって、本発明のIFN−α融合タンパク質の製造方法又は、当業界に公知のタンパク質融合技術を用いて行ってもよく、例えば、ペプチドリンカー(linker)等を用いて行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本明細書において「薬剤学的有効量」とは、上述した本発明の融合タンパク質の効能又は活性を達成するのに十分な量を意味する。
【0066】
本発明の薬剤学的組成物は、必要に応じて薬剤学的に許容される通常の無毒性担体、補助剤及び賦形剤を含有する用量単位製剤であって、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、直腸内又は局所的に投与することができ、好ましくは非経口的に投与することができる。また、局所投与は、経皮的パッチ剤のような経皮投与又はイオン泳動装置を用いることを含んでもよい。
【0067】
本明細書において「非経口的投与」とは、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技術を含む。薬物製剤は、例えば、文献(Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975)に開示されている。薬物製剤に関する内容は、文献(Liberman,H.A.及びLachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980)より確認することができる。
【0068】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤の際に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油等を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、上記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤等を更に含んでもよい。好適な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington‘s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳しく記載されている。
【0069】
本発明の薬剤学的組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食事、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様に処方されることができる。本発明の薬剤学的組成物の投与量は、大人基準で、好ましくは、0.001μg/kg(体重)〜100μg/kg(体重)である。
【0070】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することで、単位用量形態で製造されるか、あるいは多用量容器内に内入させて製造されることができる。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤又は乳化液の形態であるか、エキス剤、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤を更に含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、大腸菌のコドン使用頻度が考慮されたヒトインターフェロン−アルファ(IFN−α)のPCR合成遺伝子(sIFN)を示す図である。
【図2】図2は、IFN−αのN−末端にCTPが融合されたIFN−αのPCR合成遺伝子(CTP−sIFN)及びアミノ酸配列を示す図である。
【図3】図3は、IFN−αのC−末端にCTPが融合されたIFN−αのPCR合成遺伝子(sIFN−CTP)及びアミノ酸配列を示す図である。
【図4】図4は、sIFNn、CTP−sIFN及びsIFN−CTPのPCR結果を示すゲル写真である。レーン1は、CTP−sIFNを、レーン2は、sIFN−CTPを、レーン3は、sIFNを示す。
【図5a】図5aは、pIFN、pNIFN及びpCIFNの発現ベクターを製造する過程を示す図である。
【図5b】図5bは、sIFN、CTP−sIFN及びsIFN−CTPタンパク質をエンコードするヌクレオチド配列をそれぞれ含むpET−21bの遺伝子地図である。
【図6】図6は、IFN及びCTP−融合IFNタンパク質を確認したSDS−PAGE及びウエスタンブロッティング分析結果を示す写真である。(−)は、誘導しない場合を示し、(+)は、IPTG誘導を示す。
【図7】図7は、IFN、CTP−IFN及びIFN−CTPタンパク質を確認したSDS−PAGE分析結果を示す写真である。(−)は、誘導しない場合を示し、(+)は、IPTG誘導を示す。
【図8】図8は、IFN及びCTP−IFNタンパク質のHeLa細胞膜結合の有無を共焦点走査顕微鏡を用いて観察した写真である。
【図9】図9は、CTP−融合IFNタンパク質がHeLa又はHepG2細胞内で核膜を通過せずに細胞質にのみ留まっていることを示す、共焦点走査顕微鏡を用いて観察した写真を示す。
【図10】図10は、IFN及びCTP−融合IFNタンパク質のランダムPEG化(PEGylation)反応結果を示すゲル写真である。
【図11】図11は、PEG−IFN及びPEG−CTP融合IFNタンパク質をマウスの静脈に投与した後、インビボイメージングステムであるIVIS−200を用いて体内分布を示す写真である。
【図12】図12は、PEG−IFN、PEG−N末端CTP融合IFN及びPEG−C末端CTP融合IFNタンパク質をマウスに投与した後、投与タンパク質の肝組織内の相対濃度測定結果を示すグラフである。
【図13】図13は、PEG−IFN及びPEG−CTP融合IFNタンパク質のマウスの肝組織凍結断片(Cryo section)の蛍光顕微鏡観察結果を示す写真である。
【図14】図14は、PEG−IFN、PEG−N末端CTP融合IFN及びPEG−C末端CTP融合IFNタンパク質をマウスに投与した後、時間経過による肝における投与タンパク質の相対濃度測定結果を示すグラフである。
【図15】図15は、IFN、PEG−IFN、N−末端CTP融合IFN及びPEG−N末端CTP融合IFNタンパク質の抗ウイルス活性測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨に沿って本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例】
【0073】
(実施例1:大腸菌での高発現のためのヒトインターフェロン−アルファ(IFN−α)遺伝子の鋳型合成)
ヒト由来のインターフェロン−アルファ(Interferon−α,IFN−α)遺伝子は大腸菌でよく発現されない相当数のコドンを含んでおり、変形せずに使用する場合IFNタンパク質の発現率が非常に低いものと知られている。特に、AGG/AGA、CUA、AUA、CCA又はCCCのようなコドンクラスターは大腸菌で発現されるタンパク質の量と質をいずれも低下させるものと報告されている(2、3)。
【0074】
これらの中で最も深刻な影響を与えるものとして、AGGコドンクラスターが挙げられるが、その理由は使用できるtRNAのプール(pool)が制限されており、且つ、該クラスターはシャイン−ダルガノ配列(Shine−Dalgarno sequence)と類似して、リボソームと競争的に結合するからであると理解されている(4、5)。
【0075】
このような低発現の問題を解決するために、大腸菌のコドン使用頻度を考慮してレアコドン(rare codon)を除外させた、ヒトIFN−α遺伝子の全体配列を化学的に合成しようとした。まず、大腸菌のコドン使用頻度に最適化されたヒトIFN−α2bの遺伝子を得るために、18個のヌクレオシドが互いに重複するように下記表1のような 6個のオリゴマーを合成した。:
【0076】
【表1】

【0077】
(実施例2:IFN又はCTP−融合IFN遺伝子のPCR合成)
IFN、これのN−末端又はC−末端にCTPペプチドが融合されたIFNのDNAを得るために、下記表2のプライマーを用いて上記表1のヒトIFN遺伝子のオリゴマーを鋳型としてSOEing PCRを実施した(6)。:
【0078】
【表2】

【0079】
(実施例2−1:IFNタンパク質の高発現のための変形IFN−α遺伝子(sIFN)の合成)
ヒト由来の遺伝子を変形せずに大腸菌で発現する場合、発現量が非常に少ない問題点があった。これを解決するために、大腸菌のコドン使用頻度が考慮された合成遺伝子を得るために2段階の反応を実施した。まず、上記表1の6個のオリゴマーを同量ずつ交ぜてpfu DNAポリメラーゼ及びdNTPミクスチャーを添加した後、60℃で30分間反応させてコドン使用頻度によって合成された、ヒトIFN−α遺伝子の鋳型を作製した。この鋳型にCFN−4及びCFN−3プライマーでPCRを実施して、図1のようなヒトIFN−αの遺伝子を得た(配列表の第27配列)。このようにして得られた約0.55kbのPCR結果物を図4のレーン3に示す。
【0080】
(実施例2−2:N−末端CTP−融合IFN−α遺伝子(CTP−sIFN)の合成)
IFN−αのN−末端にCTPペプチドを付着するために3段階の反応を実施した。まず、上記表1の6個のオリゴマーを同量ずつ交ぜてpfu DNAポリメラーゼ及びdNTPミクスチャーを添加した後、60℃で30分間反応させてコドン使用頻度によって合成されたヒトIFN−α遺伝子の鋳型を作製した。この鋳型にCFN−1及びCFN−3プライマーで1次PCRを実施した後、更にこれを鋳型としてCFN−2及びCFN−3プライマーで2次PCRを実施して、図2のようなアミノ酸配列を有するN−末端にCTPが融合されたヒトIFN−αの遺伝子を得た(配列表の第29配列)。このようにして得られた約0.58kbのPCR結果物を図4のレーン1に示す。
【0081】
(実施例2−3:C−末端CTP−融合IFN−α遺伝子(sIFN−CTP)の合成)
上記実施例2−2のN−末端CTP融合IFNと同一の方法でヒトIFN−α遺伝子の鋳型を作製し、これにCFN−4及びCFN−5プライマーで1次PCRを実施した後、
CFN−4及びCFN−6プライマーで2次PCRを実施して、図3のようなアミノ酸配列を有するC−末端にCTPが融合されたヒトIFN−αの遺伝子を合成した(配列表の第31配列)。このようにして得られた約0.58kbのPCR結果物を図4のレーン2に示す。
【0082】
(実施例3:IFN及びCTP−融合IFNの大腸菌発現ベクターの製造)
PCRを通じて確保された3種類(sIFN、CTP−sIFN、及びsIFN−CTP)の遺伝子を大腸菌で発現するために、図5aのような過程を経て大腸菌発現ベクターであるpET−21bベクター(Novagen)にそれぞれクローニングを実施して、pIFN、pNIFN、及びpCIFNの3個の発現ベクターを製造した。まず、それぞれのPCR産物をpGEM−Tベクターにクローニングして塩基配列を分析し、所望のアミノ酸配列が変形されずに合成された3種類の組み換えpGEM−Tベクター(sIFN/pGEM−T、CTP−sIFN/pGEM−T及びsIFN−CTP/pGEM−T)を得た。このような組み換えpGEM−TベクターからPCR時にプライマーに含ませておいた制限酵素セットを用いてインサート(insert)を得て、これらをpET−21bベクターに導入して最終3種類の発現ベクター(pIFN、pNIFN、及びpCIFN)を完成した(図5b)。
【0083】
(実施例4:大腸菌におけるIFN及びCTP−融合IFNの発現及び確認)
pET−21bベクター(Novagen)を用いてそれぞれ構成された発現ベクターを発現用大腸菌であるcoli BL21(DE3)(Novagen)に形質転換させ、3種類の生産菌株(coli BL21(DE3)/pIFN、pNIFN、及びpCIFN)を作製し、これらをLB培地で600nm波長の吸光度が0.4になるまで培養した。次に、0.4mM(mmol/L)のIPTGを添加してさらに4時間培養してSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを通じて正常なIFN及びCTP−融合IFNが生成されることを確認した(図6)。
【0084】
(実施例5:IFN及びCTP−融合IFNの製造)
上記IFN及びCTP−融合IFNを大量確保するために、5L醗酵槽を用いた大量培養及び精製を実施した。
【0085】
(実施例5−1:5L醗酵槽を用いた大量培養)
生産菌株.coli BL21(DE3)/pIFN、pNIFN、及びpCIFNでインターフェロン(pIFN)又はCTP−融合インターフェロン(pNIFN又はpCIFN)を大量確保するために、5L醗酵槽(BioStat(登録商標)B,B.Braun Biotech International.)を用いて大量培養を実施した。まず、2xYT培地(トリプトン16g、酵母抽出物10g及びNaCl 5g/L)60mLにアンピシリン(ampicillin)を50μg/mLとなるように添加した後、それぞれの菌株を植菌して37℃で16時間培養した。この培養液を50μg/mLのアンピシリン(ampicillin)が添加された3LのTB醗酵槽培地(酵母抽出物24g、トリプトン12g、グリセロール0.4質量%、KHPO 2.31g又はKHPO 12.54g/L)に全部植菌して37℃で培養し、600nmで吸光度を測定して約3になったときに、最終濃度0.4mM(mmol/L)のIPTGを添加してタンパク質の発現を誘導した。次に、更に6時間培養して細胞を回収して発現をSDS−PAGEで確認した(図7)。
【0086】
(実施例5−2:凝集体(inclusion body)の分離及びリフォールディング (refolding))
上記大量発現した培養液から細胞を回収して、TE緩衝液(50mM Tris−HCl、5mM EDTA、pH8.0)に再懸濁した後、ホモジナイザー(EmulsiFlex C−3,Avestin)を用いて細胞を破砕し遠心分離して不溶性の凝集体分画を回収した。これを1質量%のトリトン−X100で2回、また蒸溜水で2回洗浄して細菌破砕物が除去された凝集体を分離した。構造的に活性を有するIFN及びCTP−融合IFNを得るために、分離した凝集体を種類別に最適化された溶解化(solubilization)緩衝液にそれぞれ溶かし、これを更にそれぞれのリフォールディング緩衝液で撹拌してリフォールディングを実施した。各IFNの凝集体の溶解化(solubilization)及びリフォールディングに用いた緩衝液及び条件を下記表3に示す。:
【0087】
【表3】

【0088】
(実施例5−3:クロマトグラフィーによる高純度精製)
上記方法によってリフォールディングを実施した後、構造的に正常リフォールディングされたIFN又はCTP−融合IFNを高純度で精製するために、陽イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィーを行った。分離しようとするタンパク質の等電点がIFNの場合に約6.0、CTP−融合IFNの場合に約9.2と予想されるので、それぞれこれより低いpHでCM−セファロース(sepharose)陽イオン交換基(Amersham Biosciences)に結合させた後、下記表4に示すpH及びNaCl濃度勾配で溶出してそれぞれの分画を得て、SDS−PAGEを通じてタンパク質溶出分画を決定した。確保された溶出分画からタンパク質マルチマーを除去し、緩衝液を入れ替えるために分子量5,000ダルトンのセントリコン(centricon)で濃縮した後、ゲル濾過クロマトグラフィーを実施して高純度のタンパク質を最終確保した。
【0089】
【表4】

【0090】
(実施例6:IFN及びCTP−融合IFNの活性測定)
上記実施例5を通じて精製されたIFN及びCTP−融合IFNを用いて次のように生物学的活性を測定した。:
【0091】
(実施例6−1:細胞膜結合及び細胞質残留特性の観察)
精製されたIFN及びCTP−融合IFNをFITC又はローダミン(rhodamine)蛍光物質で標識し、2日培養したHeLa(韓国細胞株銀行)又はHepG2細胞(韓国細胞株銀行)に最終濃度が5nM(nmol/L)〜10nM(nmol/L)となるように処理した後、その分布を共焦点走査顕微鏡(LSM 5 Exciter,Carl−Zeiss)を用いて観察した。
【0092】
図8から確認できるように、CTP−融合IFNがIFNよりも格段に強い細胞膜の結合を示し、また、図9から見られるように、細胞膜を透過して細胞内に移動したCTP−融合IFNの場合、核膜を通過せずに細胞質にだけ留まっていることが確認できた。この結果から、CTP−融合IFNの場合、共に付着されたタンパク質により発生し得る核内染色体の損傷危険が減少されることが証明された。
【0093】
(実施例6−2:肝移動及び肝組織浸透活性の測定)
(1)IFN及びCTP−融合IFNのPEG化(PEGylation)
マウスの場合、タンパク質の分子量が30kDa以下と小さければ、腎クリアランス(renal clearance)機序により速やかに膀胱に排出され、タンパク質の血液内維持時間が短くなり肝移動特性を観察しにくい問題が発生し得る。したがって、このような問題点を克服して血液内維持時間を延長させて肝移動特性の観察を容易にするために、約20kDa前後のIFN及びCTP−融合IFNにPEG化を実施して分子量を最小40kDa以上に増加させようとした。
【0094】
このために分子量20kDaのPEG(polyethylene glycol)NHSエステル(JENKEM Biotechnology)を用いてIFN及びCTP−融合IFNをランダムでPEG化し(図10)、これを陽イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィーを実施してモノ−PEG化されたIFN及びCTP−融合IFNを最終分離した。
【0095】
(2)インビボイメージングシステムを用いた肝移動及び肝組織浸透の観察
PEG化を通じて分子量を40kDa以上に増加させたIFN及びCTP−融合IFNを、Cy5.5蛍光物質で標識し、マウスの静脈に2nmol投与した後、約45分間経過後、投与タンパク質の体内分布をIVIS−200(Xenogen)を通じて、確認した。
【0096】
図11から分かるように、PEG−IFNは、45分経過後、膀胱に排出されるのに対し、PEG−CTP融合IFNは、大部分が肝に留まっていることが確認できた。図12から確認できるように、肝を摘出して蛍光強度測定を通じた投与タンパク質の肝組織内の相対濃度を比較した結果、PEG−IFNに対してPEG−N末端CTP−融合IFNが約3.2倍、そしてPEG−C末端CTP−融合インターフェロンが約2.6倍高いことが分かった。
【0097】
図13は、摘出した肝を凍結した後、薄い切片(Cryo section)として、蛍光顕微鏡を通じてCy5.5で標識されたPEG−IFN及びPEG−CTP融合IFNの組織内の分布を観察したものであって、PEG−IFNとは違って、PEG−CTP融合IFNが肝の一部表面にだけ留まらず、肝組織の内部にまで強く侵透していることが分かる。
【0098】
これは、既存に販売されているPEG−IFNに比べて、PEG−CTP融合IFNを用いて肝炎治療剤を開発する場合、既存のインターフェロン治療剤に比べて少量でも、より持続的な肝治療効果を奏することを意味する。
【0099】
(3)時間経過による肝における濃度変化の測定
マウス静脈にPEG化されたIFN及びCTP−融合インターフェロンを蛍光標識して投与した後、時間経過による肝での蛍光強度を測定することで投与タンパク質の相対濃度を決定した。
【0100】
その結果、図14から見られるように、CTP−融合IFNの最大濃度時点は投与後30分〜60分であり、以後IFNに比べて遅い速度で膀胱に排出された。IFNが投与後約2時間で全部排出されるのに対し、CTP−融合インターフェロンは最小6時間から最大24時間まで一定量以上維持される優れた肝滞留特性を示した。
【0101】
これは、IFNにCTPを融合して肝炎治療剤を開発する場合、既存のインターフェロン治療剤に比べて少量でもより持続的な治療効果を奏することを意味する。
【0102】
(実施例6−3:抗ウイルス活性の測定)
精製されたIFN及びCTP−融合IFNの抗ウイルス活性はMDBK(Madin−Darby Bovine Kidney)細胞(韓国細胞株銀行)にVSV(Vesicular stomatitis virus)(韓国細胞株銀行)を感染させたときに発生する細胞病変効果(cytopathic effect)を、これらタンパク質がどの程度緩和させることができるかを確認することで測定した。
【0103】
まず、MDBK細胞をDMEM培地で7.5×10細胞/mLになるように希釈した後、96ウェルプレートの各ウェルごとに200μLずつ分注して37℃、5%CO培養基で約18時間培養し、これに2倍ずつ連続希釈されたIFN及びCTP−融合IFNを処理してインターフェロン反応を誘導した。4時間〜20時間反応を誘導後、全てのウェルに5×10PFUのVSVを感染させ約24時間追加培養して細胞病変効果を誘発した。培養が終わった細胞をホルムアルデヒドで固定してクリスタルバイオレット(crystal violet)染色した後、乾燥させ、80質量%メタノールを添加して染色薬を溶かし出して570nmで吸光度を測定した。
【0104】
(1)精製インターフェロンの抗ウイルス活性
既知のインターフェロン標準品との相対比較を通じて、精製インターフェロンの抗ウイルス活性を決定した。インターフェロンを20時間処理して反応を誘導した後、抗ウイルス活性を測定した結果、下記表5からわかるように、精製されたインターフェロンの活性は標準品対比97.7%で標準品と同等であり、非活性は約2.54×10IU/mgで国際基準(1.4×10IU/mg以上)を満たした。以後の活性測定では、標準品と同等な活性を有するものと判明された精製インターフェロンを新しい標準品とした。
【0105】
【表5】

【0106】
(2)CTP−融合IFN、PEG−IFN、及びPEG−CTP融合IFNの抗ウイルス活性
N−末端CTP−融合IFN、PEG−IFN、及びPEG−N末端CTP融合IFNの抗ウイルス活性は、4時間インターフェロン反応を誘導した後、測定した(図10)。
【0107】
図15に示すように、抗ウイルス活性はN−末端CTP−融合IFNがIFNよりも高く、PEG−N末端CTP融合IFNがPEG−IFNより高かった。これらの非活性及び相対活性は下記表6及び表7に示す。これより、IFNに比べてCTP−融合IFNの方が高い抗ウイルス効果を奏することが確認され、また、PEG−IFNに比べてPEG−CTP融合IFNの方が高い抗ウイルス活性を示すことが確認された。
【0108】
【表6】

【0109】
【表7】

【0110】
以上で詳細に説明したように、本発明は、細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(cytoplasmic transduction peptide,CTP)に融合されたIFN(interferon)−αを含むIFN−α融合タンパク質を提供する。本発明は、細胞膜結合及び肝移動特性を有するペプチドであるCTPをヒトIFN−αに遺伝的に融合して細胞膜結合能力及び抗ウイルス活性が向上し、核への移動が抑制され、肝移動及び滞留、肝組織浸透に優れた効果を有する融合タンパクである。これにより、各種のウイルス性感染等を含む肝疾患の予防又は治療に効果的なタンパク質医薬品の開発が可能となる。
【0111】
以上のように本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好ましい実施例に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるのではない点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれの等価物によって定義されると言えよう。
【0112】
[参考文献]
1.Kwan Sik Lee,Dong Joon Kim et al.Management of Chronic Hepatitis B,The Korean Journal of Hepatology.;13:447−488(2007).
2.M.Robinson,R.Lilley,S.Little et al.Codon usage can affect efficiency of translation of genes in Escherichia coli,Nucleic Acids Res.;12:6663−6671(1984).
3.I.G.Ivanov,R.Alexandrova,B.Dragulev et al.Effect of tandemly repeated AGG triplets on the translation of CAT−mRNA in coli,FEBS Lett.;307:173−176(1992).
4.I.G.Ivanov,N.Markova et al.Constitutive expression of native human interferon−a gene in coli,Int.J.Biochem.;21:983−985(1989).
5.R.Alexandrova,M.Eweida et al.Domains in human interferon−alpha 1 gene containing tandems of arginine codons AGG play the role of translational initiators in coli,Int.J.Biochem.Cell Biol.;27:469−473(1995).
6.R.M.Horton,Z.Cai et al.Gene splicing by overlap extension:tailor−made genes using the polymerase chain reaction,Biotechniques.;8:528−535(1990).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞質残留性細胞膜透過ペプチド(cytoplasmic transduction peptide,CTP)に融合されたIFN(interferon)−αを含むことを特徴とするIFN−α融合タンパク質。
【請求項2】
CTPが、配列表の第13配列乃至第26配列から構成された群より選択されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項3】
IFN−αが、IFN−α2bである請求項1に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項4】
IFN−αが、配列表の第28配列のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項5】
CTPが、IFN−αのN−末端又はC−末端に融合される請求項1に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項6】
CTPが、IFN−αのN−末端に連結される請求項5に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項7】
CTPが、IFN−αのN−末端に連結される場合には、配列表の第30配列のアミノ酸配列を含む請求項5に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項8】
CTPが、IFN−αのC−末端に連結される場合には、配列表の第32配列のアミノ酸配列を含む請求項5に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項9】
ポリエチレングリコール(PEG)が更に結合される請求項1に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項10】
PEGの分子量が、10kDa〜100kDaである請求項9に記載のIFN−α融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のIFN−α融合タンパク質をコードすることを特徴とする核酸分子。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸分子を含むことを特徴とするベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含むことを特徴とする形質転換体。
【請求項14】
次のステップを含むことを特徴とするIFN−α融合タンパク質の製造方法:
(a)プロモーターに作動的に連結された請求項1から10のいずれかに記載のIFN−α融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを製造するステップ;
(b)前記ステップ(a)の発現ベクターで形質転換された形質転換体を培養するステップ;及び
(c)前記ステップ(b)の形質転換体培養液から前記IFN−α融合タンパク質を得るステップ。
【請求項15】
次のステップを含むことを特徴とするIFN−α融合タンパク質の精製方法:
(a)プロモーターに作動的に連結された請求項1から10のいずれかに記載のIFN−α融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターで形質転換された形質転換体を培養するステップ;
(b)前記ステップ(a)の形質転換体培養液からIFN−α融合タンパク質凝集体(inclusion body)を得るステップ;及び
(c)前記ステップ(b)の凝集体をpH10〜pH12の溶解化(solubilization)緩衝液に溶解し、リフォールディング(refolding)緩衝液で4℃〜25℃及びpH8〜pH10の条件で撹拌するステップ。
【請求項16】
ステップ(c)の溶解化緩衝液が、tris−HCl、EDTA及び尿素を含み、リフォールディング緩衝液が、tris−HCl、EDTA、尿素、スクロース、並びに酸化及び還元グルタチオンから構成された群より選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)請求項1から10のいずれかに記載のIFN−α融合タンパク質の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含むことを特徴とする肝疾患予防又は治療用の薬剤学的組成物。
【請求項18】
肝疾患が、肝臓癌又は肝炎である請求項17に記載の薬剤学的組成物。
【請求項19】
血管に投与される請求項17に記載の薬剤学的組成物。
【請求項20】
(a)請求項1から10のいずれかに記載のIFN−α融合タンパク質の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物を対象(subject)に投与するステップを含むことを特徴とする肝疾患予防又は治療方法。
【請求項21】
肝疾患が、肝臓癌又は肝炎である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
薬剤学的組成物が、血管に投与される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
肝疾患予防又は治療用の薬剤学的組成物を製造するための請求項1から10のいずれかに記載のIFN−α融合タンパク質の用途。
【請求項24】
肝疾患が、肝臓癌又は肝炎である請求項23に記載の用途。
【請求項25】
薬剤学的組成物が、血管に投与される請求項23に記載の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−521754(P2012−521754A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501917(P2012−501917)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001575
【国際公開番号】WO2010/110503
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511233876)ジェイダブリュ ファーマシューティカル コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】