説明

インターロイキン−11類似体を含む生体ポリマー結合体

本発明は、インターロイキン-11(IL-11)類似体(mIL-11)及び生体適合性ポリマーで構成された生体ポリマー結合体を提供する。本発明のmIL-11は酸分解に対する向上した耐性を示し、成熟組換えヒトIL-11(rhIL-11)に比して増加した安定性を示す。本発明の結合体はより長い血清半減期を特徴とし、相応する非結合mIL-11と比較した場合、実質的に活性損失を示さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的治療剤の分野に関する。具体的に本発明は、ヒトインターロイキン-11の類似体又は変異体(mIL-11)を含む生体ポリマー結合体に関し、前記mIL-11は、成熟組換えヒトIL-11(rhIL-11)に比して向上した安定性を示し、前記生体ポリマー結合体はmIL-11の活性の大きさと実質的に同一の活性の大きさを有する。
【背景技術】
【0002】
好中球減少症及び血小板減少症として発現する血液学的毒性は、癌の化学療法と関連した望まれない副作用であり、この副作用は、しばしば患者に対して投与される抗腫瘍薬物の投与量を制限する。多様な種類の造血細胞及び非造血細胞と相互作用をする、間質細胞に由来するサイトカインであるインターロイキン11(IL-11)の生体内投与は血小板数値を増加させ、有利な血小板生成効果を示すものと明らかにされている。IL-11は巨核細胞(megakaryocyte)への幹細胞の分化、巨核細胞の増殖及び成熟、並びに血小板の生成において主な役割を果たす。
【0003】
組換えヒトIL-11(rhIL-11)は、癌の化学療法と関連する副作用の治療において潜在的に有用である。rhIL-11が動物に投与された場合、rhIL-11は巨核細胞の生成を向上させ、正常な動物及び免疫抑制された動物の両方において血小板数値を増加させる。rhIL-11生成物は、ワイエス-アイエルスト(Wyeth-Ayerst)社によりニューメガ(NEUMEGA)(登録商標)(一般名:オプレルベキン(oprelvekin))として市販され、重症の血小板減少症の予防用として承認を受けているだけでなく、重症の血小板減少症の危険が高い非骨髄悪性腫瘍を有する成人患者において骨髄抑制化学療法の後、血小板輸血の必要性減少用としても承認されている。NEUMEGA(登録商標)は凍結乾燥した散剤であって、5 mgのIL-11を含有する1回使用のバイアルの形態で供給される。前記散剤を1mlの滅菌された注射用水であるUSPで再構成して50μg/kg/日の投与量で投与される5mg/mlのIL-11を含む溶液を生成する。NEUMEGA(登録商標)に関連する最もありふれた副作用は心房不整脈、失神、呼吸困難、鬱血性心不全及び肺水腫を含む。
【0004】
rhIL-11の生体内投与が癌の化学療法を受けた患者において血小板数値の減少を予防する明白な薬理効果を示すものと明らかにされているとしても、求められる投与頻度(しばしば2週間以上の期間の間、1日1回)が好ましい頻度よりもさらに高い。それだけでなく、IL-11のようなサイトカインは興味深い治療剤であるものの、サイトカインが尿の排出、肝取り込み及び/又は酵素の分解を通じて迅速に除去されるために、サイトカインの使用はしばしば制限される。主として腎臓及び肝臓がrhIL-11を動物の循環系から迅速に除去するようである。この迅速な除去は、おそらくrhIL-11の低い分子量(約19kDa)及び高い陽イオン特性のためであるはずである。巨大分子に対する糸球体の毛細血管壁の選択透過性(permselectivity)は主に分子の大きさに基づいているために、水溶性ポリマーを用いたrhIL-11の化学的修飾は、蛋白質の糸球体濾過を制限し得る。
【0005】
ポリエチレングリコール(PEG)分子のような生体ポリマーを用いた組換え蛋白質の修飾は、短い循環時間を解決する手段として研究されてきた。PEGポリマーと蛋白質の結合(PEG化)は蛋白質の水力学的半径を増加させ、腎臓による迅速な除去から保護することにより生体利用可能性を改善し、溶解度を増加させるものと明らかにされている。その上、PEGポリマーの大きな容積によりPEG結合された蛋白質は減少した蛋白質分解及び減少した免疫認識を示し、このような性質はPEG化された蛋白質の実質的な利点を付与する(Veronese FM and Pasut G., Drug Discovery Today 70:1451-8(2005))。また一方で、蛋白質分解酵素又は抗体に対するPEG結合された蛋白質の抵抗能力は、前記蛋白質がその受容体に結合する能力を制限することもあり得る。その結果、受容体に対するPEG結合された蛋白質の結合親和性は、特に結合部位が受容体結合部位に含まれているか、又は受容体結合部位の非常に近くに位置している場合に減少される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
循環系にrhIL-11を有する必要性を解決するために、研究員等は水溶性ポリマーPEGを用いたrhIL-11の化学的修飾の可能性を調査した(文献(Takagi et al., Journal of Controlled Release 119: 271-278(2007)参照)。ところが、前述したように、PEGを用いたrhIL-11の化学的修飾には多くの短所がある。付着したPEGの大きな容積と立体障害により、PEG-rhIL-11結合体はIL-11受容体に結合することができないか最小限にしか結合することができない。それだけでなく、rhIL-11分子の生物学的活性が減少し得る。実際に高木(Takagi)氏等は、PEG-rhIL-11結合体が非結合rhIL-11よりも長い間、血漿内に保持されることから血小板数値の増加に対する測定可能な効果を示したが、PEG化されたrhIL-11の残った生物学的活性がPEGとの結合により減少したことを立証した(Takagi et al., Journal of Controlled Release 119: 271-278(2007))。したがって、所望の効能を得るために、増加した量のPEG-rhIL-11結合体を投与する必要があった。
【0007】
本発明は患者に投与された場合、より長い間、血漿内に保持されているだけでなく、生物学的活性も有していることから血小板減少症及び癌の化学療法と関連する他の血液学的毒性の治療及び予防効能が増加したIL-11分子に対する必要性を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、IL-11類似体と生体適合性ポリマーとの結合体を提供する。本発明のIL-11類似体(mIL-11)は酸分解(acidolysis)に対する向上した耐性を示し、rhIL-11と比して増大した安定性を示す。また、本発明の結合体はより長い血清半減期を特徴とし、相応する非結合mhIL-11と比して活性損失を全く示さないことを特徴とする。
【0009】
一実施様態において、本発明はmIL-11及び生体適合性ポリマーを含む結合体に関し、前記mIL-11のアミノ酸配列は配列番号2に記載の配列のうち5個以下のアミノ酸が置換された配列を含み、但し、配列番号2の1番目のアミノ酸はアラニンであり、配列番号2の125番目のアミノ酸はアスパラギンであり、前記結合体のmIL-11のアミノ酸配列とアミノ酸配列が同一である非結合的基準mIL-11のインビトロ細胞増殖活性の大きさに対する前記結合体のインビトロ細胞増殖活性の大きさの低下は、5%以下であり、前記細胞増殖活性は、IL-11受容体α鎖及び糖蛋白質130(gp130)を発現することによりIL-11に反応する細胞に、前記結合体又は前記非結合的基準mIL-11を処理し、前記細胞をインビトロで培養した際の細胞増殖を測定することによって決定される。
【0010】
また、他の実施様態において、本発明は変異体ヒトIL-11(mIL-11)及び生体適合性ポリマーを含む結合体に関し、前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列と95%以上同一であるアミノ酸配列を含み、但し、配列番号2の1番目のアミノ酸がアラニンであり、配列番号2の125番目のアミノ酸がアスパラギンであり、細胞増殖アッセイ(assay)において、前記結合体のmIL-11のアミノ酸配列とアミノ酸配列が同一である非結合的基準mIL-11のインビトロ細胞増殖活性の大きさに対する前記結合体のインビトロ細胞増殖活性の大きさの低下は、5%以下であり、前記細胞増殖活性は、IL-11受容体α鎖及び糖蛋白質(gp130)を発現することによりIL-11に反応する細胞に、前記結合体又は前記非結合的基準mIL-11を処理し、前記細胞をインビトロで培養した際の細胞増殖を測定することによって決定される。
【0011】
さらなる実施様態において、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリトリメチレングリコール、ポリ乳酸、ポリアクリル酸、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリ(L-リシン)、ポリアルキレンオキサイド、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルピロリドン及びポリアクリルアミドにより構成される群から選択される。具体的な実施様態において、生体適合性ポリマーはPEGである。他の特定の実施様態において、PEGは直鎖又は分枝鎖PEGである。更なる実施様態において、PEGの分子量は、約2kDa乃至約100kDa、約10kDa乃至約60kDa、約2kDa乃至約50kDa、又は約5kDa乃至約20kDaである。
【0012】
具体的な実施様態において、生体ポリマー結合体のmIL-11は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。他の実施様態において、生体ポリマー結合体のmIL-11は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、但し、31番目のバリンがアラニンに置換されており、155番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されている。
【0013】
また、本発明は、本発明の生体ポリマー結合体及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学組成物に関する。
【0014】
さらに本発明は、本発明の生体ポリマー結合体又は組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、前記哺乳動物においてIL-11に反応する疾患又は障害、例えば血小板減少症を治療するか、緩和するか、又は予防する方法に関する。また、本発明は、本発明の生体ポリマー結合体又は組成物を投与する段階を含む、哺乳動物において血小板数値を増加させる方法に関する。具体的な実施様態において、哺乳動物はヒトである。
【0015】
本発明の前記目的及び特徴だけでなく、他の目的及び特徴も本発明の下記詳細な説明及び添付の図面から自明であり、図面の説明は次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】アミン特異的PEG化方法を通じてPEG化された、精製済みのモノPEG化された(mono-PEGylated)IL-11変異体(PEG-mIL-11-SC、レーン1)及び精製済みのIL-11変異体(レーン2)を用いたSDS-PAGEゲルを示す図である。
【図2】(a)は組換えヒトIL-11(rhIL-11)と比較されたmIL-11の構造的アッセイから得られた結果を示すグラフであり、(b)は組換えヒトIL-11(rhIL-11)と比較されたmIL-11の機能的アッセイから得られた結果を示すグラフである。
【図3】50℃でpH3.5の溶液において、0、1、2、3及び4日間ストレスを受けたrhIL-11とmIL-11の逆相HPLCクロマトグラムを示す図である。
【図4】斜線で表示されたrhIL-11及びmIL-11の酸加水分解部位を示す図である。
【図5】IL-11変異体に存在するPEG 化部位に対する可能なアミン基を示す図である。N末端一次アミンは濃い灰色で表示されているのに対し、リシンのε-アミン(63番目、120番目及び196番目)は淡い灰色で表示されている。ナンバーリングは野生型ヒトIL-11(NCBI AAA59132.1)に基づく。
【図6】実施例3に示す精製済みのPEG-mIL-11-SCのサイズ排除HPLCクロマトグラムを示す図である。
【図7】(a)は実施例4に示す精製済みのPEG-mIL-11-ADのSDS-PAGEゲルを示す図であり、(b)は実施例4に示す精製済みのPEG-mIL-11-ADのサイズ排除HPLCクロマトグラムを示す図である。
【図8】非結合mIL-11を基準とした、PEG化されたmIL-11(PEG-mIL-11-AD又はPEG-mIL-11-SC)のインビトロ増殖活性の結果を示すグラフである(N=3)。誤差棒はデータの標準偏差を示す。
【図9】(a)はPEG-mIL-11-SC(400μg/kg)を1回皮下投与した後、ラット(N=5)における血小板数値の大きさを非結合mIL-11(400μg/kgの1回投与)で処理された群と比較して示すグラフであり、(b)はPEG-mIL-11-AD(400μg/kg)を1回皮下投与した後、ラット(N=5)における血小板数値の大きさを非結合mIL-11(400μg/kgの1回投与)で処理された群と比較して示すグラフである。誤差棒は、データの標準偏差を示す。
【図10】(a)はPEG-mIL-11-SC(400μg/kg)を1回皮下投与した後、ラット(N=5)における血小板数値を、非結合mIL-11(400μg/kg/日)を7日間毎日皮下投与されたラットと比較して示すグラフであり、(b)はPEG-mIL-11-AD(400μg/kg)を1回皮下投与した後、ラット(N=5)における血小板数値を、非結合mIL-11(400μg/kg/日)を7日間毎日皮下投与されたラットと比較して示すグラフである。誤差棒はデータの標準偏差を示す。
【図11】(a)はラット(N=4乃至6)においてPEG-mIL-11-SC(400μg/kg)(A)を1回皮下投与した後、生体内IL-11濃度を、非結合mIL-11(400μg/kg)を1回投与した場合と比較して示すグラフであり、(b)はラット(N=4乃至6)においてPEG-mIL-11-AD(400μg/kg)を1回皮下投与した後、生体内IL-11濃度を、非結合mIL-11(400μg/kg)を1回投与した場合と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明はIL-11類似体及び生体適合性ポリマーにより構成された結合体、及び癌の化学療法と関連した血小板減少症及び好中球減少症を含む、IL-11に反応する疾患又は障害の治療、緩和又は予防において、前記結合体の用途に関する。本発明の結合されたIL-11類似体(mIL-11)ポリペプチドは、ヒトIL-11又は組換えヒトIL-11(rhIL-11)よりも長い間、血漿内に保持され、非結合mIL-11の生物学的活性と実質的に同一の生物学的活性を有する。
【0018】
ヒトIL-11及び組換えヒトIL-11のアミノ酸配列は以下に記載されている。ヒトIL-11のアミノ酸配列は次のとおりである。
【0019】
【化1】

【0020】
組換えヒトIL-11のアミノ酸配列は次のとおりである。
【0021】
【化2】

【0022】
mIL-11ポリペプチド
mIL-11ポリペプチド(配列番号2)は、配列番号1のIL-11ポリペプチドの最初の30個のN末端アミノ酸を欠失させた後に、1番目となったバリン(Val)をアラニン(Ala)に置換させ、形成された125番目となったアスパラギン酸(Asp)をアスパラギン(Asn)に置換させることにより生成されたヒトIL-11(配列番号1)の類似体である。
【0023】
mIL-11のアミノ酸配列は次のとおりである。
【0024】
【化3】

【0025】
mIL-11ポリペプチドは、その内容が本明細書に参考として導入される中国特許第11677号にすでに記載されている。
【0026】
用語“mIL-11”は、“IL-11類似体”、“mIL-11ポリペプチド”又は“IL-11変異体”と相互交換的に用いられ、本明細書で用いられているように配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。
【0027】
本発明は、例えば、配列番号2に記載されたポリペプチド配列及び/又は配列番号2のポリペプチド断片と約95%、96%、97%、98%若しくは99%以上同一であるアミノ酸配列を含む、又はこのアミノ酸配列により構成されたポリペプチドを含み、但し、配列番号2の任意のポリペプチド及び/又は断片は配列番号2の1番目のアミノ酸としてアラニンを有し、配列番号2の125番目のアミノ酸としてアスパラギンを有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
本発明の比較対象アミノ酸配列と、例えば95%以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、このポリペプチドが配列番号2の1番目のアミノ酸としてアラニンを有し、配列番号2の125番目のアミノ酸としてアスパラギンを有するという点、及び前記ポリペプチドの配列が比較対象のアミノ酸配列の100個のアミノ酸当り5個以下のアミノ酸の変更を含み得るという点を除いて、前記ポリペプチドのアミノ酸配列が比較対象のアミノ酸配列と同一であることを意味する。すなわち、比較対象のアミノ酸配列と95%以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、配列番号2の1番目及び125番目のアミノ酸を除いて、前記ポリペプチドの配列において5%以下のアミノ酸が挿入され得る、欠失され得る、又は他のアミノ酸に置換され得る。基準配列のこのような変更は、基準アミノ酸配列のアミノ末端位置若しくはカルボキシ末端位置で起き得る、又は基準配列若しくは基準配列内の少なくとも一つの隣接した基において残基間に個別的に散在している、前記末端位置の間の任意の位置で起き得る。
【0029】
実質的な問題として、任意の特定ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%又は99%以上同一であるかは、公知にされているコンピュータープログラム、例えばBLASTPアルゴリズムを用いるBLAST2.0を用いて通常確認することができる(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990; Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997; Altschul, J. Mol. Biol. 219:555-565, 1991)。当分野において公知であるように、2種のポリペプチド間の“類似性”はアミノ酸配列、及びポリペプチドの保存されたアミノ酸置換を第2ポリペプチドの配列と比較することにより測定する。本願においてこのような配列に対する同一性又は相同性(homology)は配列を整列し、必要であればギャップ(gap)を導入して最大相同性(%)を達成し、任意の保存的置換を配列同一性の一部として見なさなかった後に、公知にされているペプチドと同一の、候補配列内のアミノ酸残基の百分率として定義される。ペプチド配列におけるN末端、C末端若しくは内部の延長、欠失又は挿入は、相同性に影響を及ぼすものと解釈されない。
【0030】
さらに、本発明は配列番号2に記載されたアミノ酸配列、又は5個以下(5個、4個、3個、2個、1個又は0個)のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失を有するアミノ酸配列を含む、又は前記アミノ酸配列に構成されるが、配列番号2の1番目のアミノ酸においてアラニンを有し、配列番号2の125番目のアミノ酸においてアスパラギンを有するポリペプチドを含む。
【0031】
mIL-11ポリペプチドに適用される用語“この誘導体”又は“この変異体”は、配列番号2のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%若しくは99%以上同一であるアミノ酸配列により構成される、又は配列番号2に比して5個以下(5個、4個、3個、2個、1個若しくは0個を含む)のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失を有するアミノ酸配列により構成されるが、配列番号2の1番目のアミノ酸としてアラニンを有し、配列番号2の125番目のアミノ酸としてアスパラギンを有するポリペプチドであって、mIL-11の実質的に全ての生物学的活性を有するポリペプチドを指す。ポリペプチドがmIL-11の実質的に全ての生物学的活性を有する限り、付加又は置換に非自然発生アミノ酸を用いることを含み、付加又は置換は任意の内部位置、N末端及び/又はC末端で起き得る。
【0032】
mIL-11の変異体又は誘導体は、(i)少なくとも一つのアミノ酸残基が保存的アミノ酸残基、若しくは非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)に置換されており、このような置換されたアミノ酸残基が遺伝コードによりコードされたアミノ酸残基若しくは遺伝コードによりコードされないアミノ酸残基であり得る変異体若しくは誘導体、(ii)少なくとも一つのアミノ酸残基が置換基を含む変異体又は誘導体、(iii)成熟ポリペプチドが他の化合物、例えばポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)と融合している変異体若しくは誘導体、(iv)追加のアミノ酸がポリペプチドの精製のために成熟ポリペプチドに融合している変異体若しくは誘導体、又は(v)ポリペプチドの断片が溶解可能であり、すなわち、膜に結合されておらず依然としてリガンドを膜結合された受容体に結合させる変異体若しくは誘導体であり得る。このような変異体又は誘導体は、本明細書の開示内容に照らして当業者の技術知識内にあるものと見なされる。
【0033】
ポリペプチドの“変異体”は、保存的変異体又は対立遺伝子変異体であり得る。本明細書で用いられているように、保存的変異体は蛋白質の生物学的機能に不利な影響を及ぼさない配列変更を有するアミノ酸配列を意味する。変更された配列が蛋白質と関連した生物学的機能を妨害したり破壊する場合、置換、挿入又は欠失が蛋白質に不利な影響を及ぼすと言われている。例えば、蛋白質の総電荷、構造又は疎水性-親水性は、生物学的活性に不利な影響を及ぼさず、且つ変更され得る。したがって、アミノ酸配列は例えば、蛋白質の生物学的活性に不利な影響を及ぼさず、かつペプチドがより高い疎水性又は親水性を示すように変更され得る。
【0034】
“保存的アミノ酸置換”は、アミノ酸残基が類似した電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるアミノ酸置換である。類似した電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリー(family)は当分野に定義されている。このファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン及びシステイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン及びイソロイシン)並びに芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン及びヒスチジン)を含む。代案として突然変異は、例えば飽和突然変異誘発によりコード配列の全部又は一部に無作為に導入され得、生成された変異体の生物学的活性をスクリーニングして活性(例えば、IL-11活性)を有する変異体を確認することができる。
【0035】
“対立遺伝子変異体”は生物の染色体上において所定の座位を占める遺伝子の択一的形態を意味する(Genes II, Lewin, B., ed., John Wiley & Sons, New York(1985))。非自然発生変異体は、当分野において公知である突然変異誘発技法を用いて生成することができる。対立遺伝子変異体は、先に言及した変異体とは多少異なるアミノ酸配列を有するとしても、mIL-11蛋白質と関連する同一又は類似の生物学的機能を依然として有するはずである。
【0036】
例えば種々の文献、例えば文献(Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y, 1989)、文献(DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985))、文献(Ausubel, et al., (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., 1994)、文献(Sidhu et al., Methods Enzymol 328:333-363, 2000)及び文献(Kunkel et al., Methods Enzymol 204: 1991)に記載されているように、アミノ酸置換を発生させる部位指定突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発を含む当業者に公知である標準技法を用いて、本発明の分子をコードするヌクレオチド配列内に変異を導入することができる。
【0037】
したがって、本発明の蛋白質及びペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む分子、その変異体又は誘導体を含む。考慮される変異体は、蛋白質が置換、化学的手段、酵素的手段又は他の適当な手段を通じて自然発生アミノ酸以外の物質(例えば、検出可能な物質、例えば酵素又は放射性同位元素)により共有結合的に修飾されている誘導体を含む変異体も含む。
【0038】
公知にされている蛋白質の操作方法及び組換えDNA技法を用いてmIL-11ポリペプチドの特性が改善されるか、又は変更されるように変異体を発生させることができる。例えば、生物学的機能の実質的な損失なしにmIL-11ポリペプチドから少なくとも一つのアミノ酸を欠失させて特定の位置、例えば前記ポリペプチドのN末端近傍に位置したLys残基において生体ポリマーの共有結合を促進させることができる。
【0039】
したがって、本発明は実質的な生物学的活性を示すmIL-11ポリペプチド変異体もまた含む。このような変異体は、活性に対してほとんど影響を及ぼさないように当分野に公知となっている一般的な規則にしたがって選ばれた欠失、挿入、逆位、反復及び置換を含む。
【0040】
当業者は、以下にさらに詳細に記載されているように蛋白質の機能に多少及び若干有意に影響を及ぼすか、又は有意に影響を及ぼさない可能性が高いアミノ酸置換(例えば、脂肪族アミノ酸を第2脂肪族アミノ酸に置換させること)を十分に認識している。
【0041】
本発明の“誘導体”は置換、化学的手段、酵素的手段又は他の適当な手段を通じて自然発生アミノ酸以外の物質(例えば、検出可能な物質、例えば酵素又は放射性同位元素)により共有結合的に修飾され得る。誘導体の例としては、融合蛋白質を挙げることができる。
【0042】
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然ポリペプチド又は合成ポリペプチド、好ましくは組換えポリペプチドであり得る。
【0043】
ヒトIL-11の構造及び機能は広範囲に研究されており、当業者は、蛋白質の実質的に全ての生物学的活性を有するのにおいて重要であるだけでなく、好ましくはmIL-11の任意の変異体又は誘導体において変更されない、又は保存的にのみ変更されるIL-11配列のアミノ酸を認識している。生物学的活性に重要でない他のアミノ酸はより自由に欠失され得る及び/又は置換され得る。生物学的活性に重要なアミノ酸として公知にされているアミノ酸の例としてはLys41、Met58、Lys98、Lys174、Thr175、Arg176及びLeu177(Czupryn et al., J. Biol. Chem. 270:978(1995)); Pro13、Glu16、Leu17、Leu22、Arg25、Leu28、Thr31、Arg32、Leu34、Arg39、Arg150、Ala152、His153、Ile155、Gly158、Leu159、Thr162、Leu163、Asp164、Trp165、Arg168及びLeu170(Czupryn et al., Ann. NY Acad. Sci. 762:152(1995)); 及びLeu63, Ile149, Arg168及びLeu172(Tacken et al., Eur. J. Biochem. 265:645(1999))を挙げることができるが、これらに限定されず、このときアミノ酸番号はrhIL-11ポリペプチドのアミノ酸番号に相応する。当業者は、慣用的な突然変異誘発技法、例えば前記引用文献に記載されている突然変異誘発技法を用いてmIL-11の誘導体を製造することができ、mIL-11ポリペプチドの実質的に全ての生物学的活性を有する誘導体を確認することができる。
【0044】
本明細書においてmIL-11、非結合mIL-11又は天然mIL-11がmIL-11と関連して用いられる表現“実質的に同一である生物学的活性”、“実質的な生物学的活性”、“類似した生物学的活性”又は“活性の損失を本質的に示さない”は生物学的活性のうち少なくとも1種の任意の生物学的活性(例えば、血小板生成又はmIL-11の他の認識された生物学的活性、例えば酸加水分解に対するmIL-11の耐性を刺激する能力)の95%、96%、97%、98%又は99%以上を意味する。mIL-11の生物学的活性は文献(Lebeau B et al., Lebeau B et al., FEBS Letters 407: 141-147(1997))に記載されている方法と類似したアッセイである、gp130及びIL-11受容体α鎖を発現するBa/F3細胞を用いたインビトロ細胞増殖アッセイにおいて測定される細胞増殖を誘導するmIL-11の能力を含む。このような細胞増殖アッセイを用いた場合、表現“mIL-11ポリペプチドの生物学的活性”を修飾するのに用いられる用語“実質的に全ての”、“類似した”又は“同一である”は、前記アッセイにより測定された活性の大きさに相応し、このとき前記の活性の大きさは、mIL-11ポリペプチドの細胞増殖活性の大きさに比して低下量が5%以下である。
【0045】
mIL-11を含む結合体の生物学的活性の大きさは、前述したような少なくとも1種の生物学的活性の大きさを測定することにより決定され得る。このような決定は、本発明の結合体を非結合的基準mIL-11と比較することにより達成することができる。本明細書で用いられている用語“基準”は、比較対象として言及された物質又は項目を意味し、対照群として用いられ得る。本発明と関連して、“基準” mIL-11は、結合体の生体ポリマーがこれに付着しているmIL-11の生物学的活性にどのような影響を及ぼすのかを確認するために試験される結合体内のmIL-11と同一の配列を有する非結合mIL-11である。したがって、mIL-11、その変異体又は誘導体を含む結合体の生物学的活性を相応の非結合的“基準” mIL-11と比較することにより、結合された形態のmIL-11が非結合形態のmIL-11と比較したとき実質的に同一の生物学的活性を示すのかを確認することができる。
【0046】
例えば、mIL-11ポリペプチドの実質的にすべての生物学的活性を示す生体ポリマー結合体は、前記インビトロ細胞増殖アッセイにより測定された場合、非結合mIL-11ポリペプチドの細胞増殖活性の大きさに比して5%、4%、3%、2%又は1%以下の活性の大きさの減少を示すはずである。例えばmIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む特定の生体ポリマー結合体の生物学的活性を比較した場合、前記結合体のmIL-11と比較される非結合mIL-11は同一の配列を有する。mIL-11活性は、当分野において十分に知られている他の慣用的なインビトロアッセイ及び生体内アッセイ(例えば、巨核細胞増殖アッセイ、血小板血中濃度の刺激)によっても測定され得る。
【0047】
本発明の一部の実施様態において、単離された又は精製済みのmIL-11、その変異体、断片又は誘導体が本発明の方法で用いられる。mIL-11、その変異体、断片又はその誘導体の“単離された”又は“精製済みの”蛋白質は、mIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体の起源となる細胞又は組織供給源に由来する細胞物質又は他の汚染蛋白質を実質的に含有しないか、又は化学的に合成された場合には化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含有しない。表現“細胞物質を実質的に含有しない”は、mIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体を組換えで生成する細胞の細胞成分から分離されたmIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体の製剤を含む。一実施様態において、表現“細胞物質を実質的に含有しない”は(乾燥重量を基準として)約30%未満、例えば約20%未満、約10%未満又は約5%未満の非mIL-11蛋白質(本明細書において“汚染蛋白質”とも指称される)を含有する、mIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体の製剤を含む。mIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体が組換えで生成された場合、mIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体は、好ましくは培養培地も実質的に含有しない。すなわち、培養培地は蛋白質製剤の約20%未満、例えば約10%未満又は約5%未満を占める。
【0048】
表現“化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含有しない”は、mIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体の合成に関与する化学的前駆体又は他の化学物質から分離しているmIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体の製剤を含む。一実施様態において表現“化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含有しない”は、(乾燥重量を基準として)約30%未満、例えば約20%未満、約10%未満又は約5%未満の化学的前駆体又は非mIL-11化学物質を含む、mIL-11蛋白質、その変異体、断片又は誘導体の製剤を含む。
【0049】
mIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体は当分野において知られている任意の方法、例えば組換え発現又は化学的合成により生成され得る。好ましくは、mIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体は、例えば、細菌、酵母又は哺乳動物の細胞培養物における組換えで発現する。組換え発現は、mIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを製造する段階、前記ベクターを宿主細胞内に伝達する段階、前記宿主細胞をmIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体が発現する条件下で培養する段階、及びmIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体を分離する段階を伴う。組換えベクターを製造し、このベクターを用いて宿主細胞を形質転換させ、前記ベクターを宿主細胞内で複製させて生物学的活性外来ポリペプチド及び蛋白質を発現する方法及び材料は、本明細書に参考としてそれぞれ導入される文献(Sambrook et al., Molecular Cloning, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, 2001)及び文献(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 3rd edition,(2000))に記載されている。
【0050】
mIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体のアミノ酸配列情報を用いてmIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体をコードするポリヌクレオチド配列を生成することができる。前記ポリヌクレオチド配列は化学的に合成され得る、又は野生型IL-11若しくは組換えIL-11をコードする遺伝子若しくはcDNAから誘導され得る。mIL-11をコードするポリヌクレオチド配列の利用可能性は当分野において十分に知られており、慣用的に実施されている技法により、そのコードされたポリペプチドの大規模発現を可能にする。
【0051】
生体適合性ポリマー及び生体適合性ポリマー結合体
本発明の生体適合性ポリマー又は生体ポリマーは、少なくとも1種のポリアルキレングリコール(少なくとも1種のポリ(エチレングリコール)、少なくとも1種のモノメトキシポリ(エチレングリコール)及び少なくとも1種のモノヒドロキシポリ(エチレングリコール)を含むが、これらに限定されない)、少なくとも1種のポリアルキレンオキサイド、少なくとも1種のポリオキシラン、少なくとも1種のポリオレフィン系アルコール、例えば、ポリビニルアルコール、少なくとも1種のポリカルボキシレート、少なくとも1種のポリ(ビニルピロリドン)、少なくとも1種のポリ(オキシエチレンオキシメチレン)、少なくとも1種のポリ(アミノ酸)、少なくとも1種のポリアクリロイルモルホリン、少なくとも1種のアミドと少なくとも1種のアルキレンオキサイドとの少なくとも1種の共重合体、少なくとも1種のデキストラン及び少なくとも1種のヒアルロン酸を含むが、これらに限定されない。
【0052】
具体的に本発明の生体ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリトリメチレングリコール、ポリ乳酸、ポリアクリル酸、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリ(L-リシン)、ポリアルキレンオキサイド、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルピロリドン又はポリアクリルアミドを含むが、これらに限定されない。
【0053】
本発明の生体ポリマーは当分野において公知である、単官能基により活性化された任意の直鎖又は分枝鎖形態のポリマーを含み得る。例えば、分子量(活性化基の質量を除く)が約1kDa乃至約100kDaであるポリマーが含まれる。分子量の適当な範囲は、約2kDa乃至約100kDa、約2kDa乃至約20kDa、約5kDa乃至約20kDa、約5kDa乃至約30kDa、約10kDa乃至約20kDa、約10kDa乃至約60kDa、約18kDa乃至約60kDa、約12kDa乃至約30kDa、約5kDa、約10kDa、約20kDa又は約30kDaを含むが、これらに限定されない。直鎖PEGの場合、約10kDa、約20kDa又は約30kDaの分子量はそれぞれ約230個、約450個又は約680個のエチレンオキサイド単量体ユニット(unit)の重合度(n)に相応する。
【0054】
本明細書で用いられている“PEG”は直鎖であれ、分枝鎖であれ、又は多数のアーム(arm)を有する形態であれ関係なく、また末端閉鎖されたものであれ、又はヒドロキシルで終結したものであれ関係なくエチレンオキサイドのすべてのポリマーを含む。“PEG”は、エチレンオキサイドのポリマーに対して当分野において用いられる他の名称のうちポリ(エチレングリコール)、メトキシポリ(エチレングリコール)、又はmPEG或いはポリ(エチレングリコール)-モノメチルエーテル、アルコキシポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)又はPEO、α-メチル-Ω-ヒドロキシ-ポリ(オキシ-1,2-エチレンジイル)及びポリオキシランとして当分野において公知のポリマーを含む。
【0055】
本明細書で用いられる“PEG化”は、PEGを生体活性標的分子、特に受容体結合蛋白質に共有カップリングさせる任意の過程を意味する。PEG化により生成された結合体は、“PEG化された”ものとして指称される。PEG化はアミン特異的PEG化、N末端指定PEG化及び/又は部位特異的修飾を含む少なくとも1種の化学的修飾方法を用いて達成することができる。
【0056】
本明細書で用いられている用語“結合体”は、生体ポリマー、例えばPEGが標的分子、例えばrhIL-11又はmIL-11に共有結合性の付着をしている生成物を意味する。用語“結合”は、前述したような結合体の形成を意味する。生体ポリマーを標的分子に結合させる分野において熟練の技術を有する者により通常用いられる任意の方法が本発明において用いられ得る。
【0057】
rhIL-11分子は、アミン特異的結合方法が適用された場合、PEGのような生体ポリマーの共有結合性の付着に用いられ得る4個の部位を含有する。前記4個の部位は、3個のリシン残基(Lys41, Lys98 及びLys174)及びN末端を含む。rhIL-11の三次元構造予測と関連して、前記3個の一次アミン基は、rhIL-11の外面上に存在する。rhIL-11のLys41、Lys98及びLys174はそれぞれmIL-11(配列番号2)のLys33、Lys90及びLys166に相応する。
【0058】
生体ポリマー結合体、例えば、PEG結合体の典型的な製剤においてPEGに結合される関心のある分子(例えば、rhIL-11又はmIL-11)は、過剰なモル濃度のPEGと共に緩衝剤で恒温処理される。この反応は、所望の反応時間、温度及びPEG修飾因子/IL-11分子のモル比を用いて行う。PEG化に用いられる反応条件に関する情報は当分野において公知であり、例えば、文献(Zalipsky et al., Biotechnol. Appl. Biochem. 15:100-114(1992))及び文献(Kinstler et al., Pharm. Res. 75:996-1002(1996))において見出すことができる。このような結合反応を行うのにおいて、高木氏とその同僚らは、rhIL-11分子の生物学的活性を維持するのが難しいとのことを発見した(文献(Takagi et al., Journal of Controlled Release 119: 271-278(2007))参照)。
【0059】
ベクター及び宿主細胞
ベクターは本願において、mIL-11、その変異体若しくは誘導体をコードするDNA又はRNAを増幅させる及び/又はmIL-11、その変異体若しくは誘導体をコードするDNAを発現するのに用いられる。本明細書で用いられている用語“ベクター”は、それ自体に連結されている他の核酸を運搬することができる核酸分子を意味する。ベクターの1種が“プラスミド”であり、プラスミドは追加のDNAセグメント(segment)とライゲーション(ligation)され得る環状2本鎖DNAループを意味する。ベクターの他の種類はウイルスベクターであり、このとき追加のDNAセグメントはウイルスゲノムとライゲーションされ得る。一部のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム(episome)哺乳動物ベクター)はこれらが導入される宿主細胞内で自家複製することができる。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内への導入時に宿主細胞のゲノム内に統合され、前記宿主ゲノムと共に複製される。それだけでなく、一部のベクターはそれらに作動可能なように連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書において“発現ベクター”と指称される。一般的に、組換えDNA技法で用いられ得る発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。本明細書において“プラスミド”と“ベクター”とは相互交換的に用いられ得るが、これはプラスミドがベクターの最もありふれた使用形態であるためである。ところが、本発明は同等の機能をなす他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製不能なレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス)を含む。
【0060】
原核細胞における蛋白質の発現は、融合蛋白質又は非融合蛋白質の発現を指示する基本構成(constitutive)プロモーター又は誘導性(inducible)プロモーターを含有するベクターを用いて大腸菌(E.coli)において最も頻繁に行われる。融合ベクターは、その内部にコードされた蛋白質、通常、組換え蛋白質のアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、典型的に(1)組換え蛋白質の発現を増加させ、(2)組換え蛋白質の溶解度を増加させ、(3)親和性精製においてリガンドとして作用することにより組換え蛋白質の精製を補助するのに寄与する。しばしば、融合発現ベクターにおいて、蛋白質分解切断部位を融合物質と組換え蛋白質との連接部位に導入して融合蛋白質を精製した後、前記組換え蛋白質を前記融合部分から分離することができる。このような酵素及びこれらの同族認識配列は、因子Xa、トロンビン及びエンテロキナーゼ(enterokinase)を含む。典型的な融合発現ベクターは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)を標的蛋白質に融合させるpGEX(アマシャム(Amersham); Smith et al., Gene 67:31-40(1988))、マルトースE結合蛋白質を標的蛋白質に融合させるpMAL(ニューイングランド・バイオラブス(New England Biolabs)社、米国マサチューセッツ州ビバリー)又は蛋白質Aを標的蛋白質に融合させるpRIT5(ファルマシア(Pharmacia)社、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)を含む。
【0061】
適当な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例としては、pTrc(Amrann et al., Gene 69:301-315(1988))及びpET 1 Id(Studier et al., GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990) 60-89)が挙げられる。大腸菌において組換え蛋白質の発現を最大化する一つの方法は、組換え蛋白質を蛋白質分解として切断する能力が損傷した宿主細菌で蛋白質を発現させることである(文献(Gottesman, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990) 119-128)参照)。他の方法は、アミノ酸それぞれに対する個々のコドンが、大腸菌において優先的に用いられるコドンとなるように発現ベクター内に挿入される核酸の核酸配列を変更させることである(Wada et al., Nuc. Acids Res. 20:2111-2118(1992))。本発明の核酸配列のこのような変更は、標準DNA合成技法により行うことができる。
【0062】
また、他の実施様態において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母サッカロミセスセレビシエ(S. Cerevisiae)における発現のために用いられ得るベクターの例としてはpYepSec1(Baldari et al., EMBO J. 6:229-234(1987)), pMFa(Kurjan et al., Cell 50:933-943(1982))、pJRY88(Schultz et al., Gene 54:113-123(1987))、pYES2(インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)及びpicZ(インビトロジェン社)が挙げられる。
【0063】
代案として、mIL-11、その変異体又は誘導体は、バキュロウイルス (baculovirus)発現ベクターを用いて昆虫細胞内で発現させることができる。培養された昆虫細胞(例えば、SF9細胞)において蛋白質を発現させるのに用いられ得るバキュロウイルスベクターは、pAc系列(Smith et al., Mol. Cell. Biol. 3:2156-2165(1983))及びpVL系列(Lucklow et al., Virology 170:31-39(1989))を含む。
【0064】
他の実施様態において、本発明の核酸は哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物の細胞内で発現させる。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed, Nature 329:840(1987))及びpMT2PC(Kaufman et al., EMBO J. 6: 187-195(1987))が挙げられる。哺乳動物細胞において用いられる場合、発現ベクターの調節機能はしばしばウイルス調節要素により提供される。例えば、通常用いられるプロモーターは、ポリオーマ(polyoma)、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス及びサル(Simian)ウイルス40に由来する。原核細胞及び真核細胞の両方に適合する他の発現システムについては、例えば文献(Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989)の第16章及び第17章を参照する。
【0065】
好ましい発現ベクターはmIL-11、その変異体若しくは誘導体をコードするDNA配列が適当な宿主内でmIL-11、その変異体若しくは誘導体の発現を行うことができる適当な調節配列に作動可能に連結されている、又は結合されている複製可能なDNA構築物(construct)である。DNA領域は、これらが相互に対して機能的に関連している場合、作動可能に連結されている又は結合されている。例えば、プロモータは、このプロモータがそれ自体に連結されている又は結合されているコード配列の転写を調節する場合、前記コード配列に作動可能に連結されている又は結合されている。当業者は、発現ベクターのデザインが形質転換される宿主細胞の選択、及び所望の蛋白質の発現レベル等のような因子により左右され得ることを認識する。本発明の発現ベクターは宿主細胞内に導入され、本明細書に記載された核酸によりコードされた蛋白質又はペプチド(融合蛋白質又はペプチドを含む)を生成することができる。好ましいベクターは、好ましくは宿主生物により認識されるプロモーターを含有する。本発明のプロモーター配列は、原核細胞、真核細胞又はウイルスのプロモーター配列であり得る。適当な原核細胞のプロモーター配列の例としては、大腸菌のtrpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、recAプロモーター、ヒートショック(heat shock)プロモーター及びlacZプロモーターが挙げられる。更なるプロモーターはバクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージλのPRプロモーター及びPLプロモーター、サイトメガロウイルス即時初期プロモーター及びラウス肉腫ウイルスプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0066】
さらに、適当な発現ベクターは、形質転換された宿主細胞のスクリーニングを可能にする適当なマーカーを含み得る。選ばれた宿主の形質転換は、当業者に十分に公知にされており、前記サムブルーク(Sambrook)の文献に記載されている種々の技法のうち、任意の技法を用いて行う。
【0067】
複製起点は、外来の複製起点を含むようにベクターを構築することにより提供され得る、又は宿主細胞染色体の複製メカニズムにより提供され得る。ベクターが宿主細胞染色体内に統合される場合、宿主細胞の染色体複製メカニズムによる複製起点の提供のみでも十分であり得る。
【0068】
ライゲーション用平滑(blunt)末端又はスタッガード(staggered)末端のような適当な末端を提供するための制限酵素の分解、適当な場合、コヒーシブ(cohesive)末端の充填(filling in)、好ましくない連結を避けるためのアルカリ性フォスファターゼ(alkaline phosphatase) 処理、及び適当なリガーゼ(ligase)を用いたライゲーションを含む普遍的な技法を用いてmIL-11、その変異体又は誘導体をコードするヌクレオチド配列をベクターDNAと組み替えることができる。このような操作に対する技法は、前記サムブルークの文献に開示されており、当分野において十分に知られている。哺乳動物発現ベクターの構築方法は、例えば本明細書に全体として参考にそれぞれ導入される文献(Okayama et al., Mol. Cell. Biol. 3:280(1983))、文献(Cosman et al., Mol. Immunol. 23:935(1986))、文献(Cosman et al., Nature 312:768(1984))、ヨーロッパ特許出願公開第0367566号及び国際特許出願公開第WO 91/18982号に開示されている。
【0069】
本発明の他の様態によると、コードされたmIL-11、その変異体又は誘導体ポリペプチドの発現を許容する方式でmIL-11、その変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞(原核細胞及び真核細胞を含む)が提供される。本発明のポリヌクレオチドは環状プラスミドの一部であって、宿主細胞内に導入され得る、又は単離された蛋白質コード領域を含む線形DNA若しくはウイルスベクターとして導入され得る。当分野において十分に知られており、慣用的に実施されている宿主細胞内へのDNAの導入方法は、形質転換、形質感染、電気穿孔、核注入、又は運搬体、例えばリポゾーム、ミセル(micelle)、ゴースト細胞及び原形質体(protoplast)との融合を含む。本発明の発現システムは、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、無脊椎動物、脊椎動物及び哺乳動物細胞システムを含む。
本発明の宿主細胞は、mIL-11、その変異体又は誘導体ポリペプチドを大規模に製造する方法において有用であり、このとき前記細胞は適当な培養培地で培養され、所望のポリペプチド生成物は当分野において公知の精製方法、例えば免疫アフィニティークロマトグラフィー、受容体アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除濾過、陽イオン又は陰イオン交換クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及び液相HPLC等を含む普遍的なクロマトグラフィー方法により前記細胞又はこの細胞が培養された培地から単離される。他の精製方法は、所望の蛋白質が特異的結合パートナー又は物質により認識される特異的タグ、標識又はキレーティング物質を有する融合蛋白質として発現し、精製される方法を含む。精製済みの蛋白質は所望の蛋白質を提供するように切断され得る、又は完全な融合蛋白質として残されるようになる。融合成分の切断は、切断過程の結果として追加のアミノ酸残基を有する所望の蛋白質の形態を生成することができる。
【0070】
本発明のポリペプチドの発現に適合する宿主細胞は、原核細胞、酵母及び真核細胞を含むが、これらに限定されない。原核発現ベクターが用いられた場合、適当な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の原核細胞である。適当な真核細胞は、エスケリチア(Escherichia)属、バシラス(Bacillus)属、サルモネラ(Salmonella)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の細菌を含むが、これらに限定されない。
【0071】
真核細胞発現ベクターが用いられる場合、適当な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の真核細胞である。好ましくは、真核細胞は高等真核動物の細胞である。適当な真核細胞は、非ヒト哺乳動物組織培養細胞及びヒト組織培養細胞を含むが、これらに限定されない。好ましい宿主細胞は、昆虫細胞、ヒーラ(HeLa)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS細胞)、ヒト293細胞、及びミューリン3T3繊維母細胞を含むが、これらに限定されない。細胞培養物においてこのような細胞を増殖させることは慣用的な技法である(全体として本明細書に参考に導入される文献(Tissue Culture, Academic Press, Kruse and Patterson, Eds.(1973))参照)。
【0072】
また、酵母宿主が宿主細胞として用いられ得る。好ましい酵母細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピチア(Pichia)属及びクルベロミセス(Kluveromyces)属を含むが、これらに限定されない。好ましい酵母宿主は、サッカロミセスセレビシエ及びピチアパストリス(P. pastoris)である。好ましい酵母ベクターは2T酵母プラスミドに由来する複製起点配列、自家複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化配列、転写終結配列及び選別可能なマーカー遺伝子を含有し得る。酵母及び大腸菌の両方において複製され得るシャトル(shuttle)ベクターも好ましいベクターに含まれる。
【0073】
代案として、昆虫細胞が宿主細胞として用いられ得る。好ましい実施様態において、本発明のポリペプチドはバキュロウイルス発現システムを用いて発現させる(全体として本明細書に参考にそれぞれ導入される文献(Luckow et al., Bio/Technology, 6:47(1988), BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS: A LABORATORY MANUAL)、文献(O‘Rielly et al.(Eds.), W.H. Freeman and Company, New York, 1992)及び米国特許第4,879,236号参照)。また、例えば、MAXBACTM完全バキュロウイルス発現システム(インビトロジェン社)を昆虫細胞内における発現のために用いることができる。適当な宿主細胞は、文献(Goeddel, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990))にさらに記載されている。代案として、組換え発現ベクターは例えば、T7プロモーター調節配列及びT7重合酵素を用いることを通じてインビトロで転写され、翻訳され得る。
【0074】
本発明の宿主細胞、例えば、培養物中の原核又は真核宿主細胞を用いてmIL-11ポリペプチド、その変異体又は誘導体を生成する(即ち、発現させる)ことができる。一実施様態において、本発明の方法は、mIL-11、その変異体又は誘導体が生成されるように本発明の宿主細胞(mIL-11、その変異体又は誘導体をコードする組換え発現ベクターが導入されている)を適当な培地で培養する段階を含む。他の実施様態において、前記方法はmIL-11、その変異体又は誘導体を培地又は宿主細胞から単離する段階をさらに含む。
【0075】
mIL-11、その変異体又は誘導体ポリペプチドが主に細胞内で発見された場合、当業者に公知の任意の標準技法を用いて細胞内物質(グラム陰性菌の場合、封入体(inclusion body)を含む)を宿主細胞から抽出することができる。このような方法は、例えば、宿主細胞をフレンチプレス(French press)で溶解させて原形質/細胞質の内容物を放出させること、均質化、及び/又は超音波処理後の遠心分離を含むが、これらに限定されない。
【0076】
mIL-11ポリペプチド、その変異体又は誘導体が細胞質内で封入体を形成した場合、このような封入体はしばしば細胞内膜及び/又は細胞外膜に結合し得る。遠心分離の際、封入体は主としてペレット物質の形態で見出される。ペレット物質を極限pHで処理する、又はアルカリpHでジチオスレイトール(dithiothreitol)若しくは酸pHでトリス-カルボキシエチルホスフィン(tris-carboxyethyl phosphine)のような還元剤の存在下で洗剤、グアニジン、グアニジン誘導体、ウレア若しくはウレア誘導体のような少なくとも1種のカオトロピック剤で処理して封入体を放出し、分解して溶解させることができる。一旦、mIL-11ポリペプチド、その変異体又は誘導体が溶解されると、前記mIL-11ポリペプチド、その変異体又は誘導体をゲル電気泳動及び免疫沈降等を用いて分析することができる。mIL-11ポリペプチド、その変異体又は誘導体を単離する多様な方法が当業者に自明であり、例えば、以下に記載されている方法及び文献(Marston et al., Meth. Enzymol. 182:264-275(1990))(全体として本明細書に参考に導入される)に記載されている方法のような標準の方法を用いて単離を達成することができる。
【0077】
単離されたmIL-11ポリペプチド、その変異体又は誘導体が用いられた単離方法の遂行後に生物学的活性を示さない場合、前記ポリペプチドをその三次元構造に“リフォールディング(refolding)”させるか、又は転換させてジスルフィド結合を発生させる多様な方法を用いて生物学的活性を回復させることができる。当業者に知られている方法は、溶解されるポリペプチドのpHを特定濃度のカオトロピック剤の存在下で、通常、pH7よりも高いpHに調節することを含む。カオトロピック剤の選択は、封入体を溶解するために通常低濃度で用いられるカオトロピック剤の選択と非常に類似しているが、溶解のために用いられるカオトロピック剤と必ずしも同一である必要はない。蛋白質のシステイン架橋の形成においてジスルフィドシャッフリング(shuffling)が起こるようにする特定の酸化還元力を発生させるために還元剤を用いたり、還元剤及びその酸化された形態を特定の比率で用いる必要があり得る。通常用いられる酸化還元対のうち、いくつかの対はシステイン/シスタミン、グルタチオン(GSH)/ジチオビスGSH、塩化銅、ジチオスレイトール(DTT)/ジチアンDTT及び2-メルカプトエタノール(bME)/ジチオ-b(ME)を含む。リフォールディングの効率を増大させるために、補助溶媒、例えばグリセリン、多様な分子量のポリエチレングリコール及びアルギニンを用いる必要があり得る。
【0078】
治療方法
本発明はIL-11に反応する疾患若しくは障害の治療、緩和又は予防方法を含む。IL-11投与に反応し得る疾患又は障害の例としては、血小板減少症(例えば、骨髄抑制化学療法により誘導された血小板減少症)、免疫-媒介障害(例えば、細胞毒性T細胞媒介及び補体媒介細胞毒性並びに移植片対宿主病)、粘膜炎(例えば、口腔粘膜炎、胃腸粘膜炎、鼻腔粘膜炎及び直腸炎)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎及び感染性大腸炎)、炎症性皮膚障害(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎及び接触性過敏反応)、敗血症、歯肉炎、歯周炎、炎症性眼疾患(例えば、結膜炎、網膜炎及びぶどう膜炎)、胃腸運動障害(例えば、胃食道逆流疾患、摂食過敏症及び手術後無力性腸閉塞症)、膵臓炎、壊死性腸炎、アフタ性潰瘍、咽頭炎、食道炎、消化性潰瘍、AIDS、リューマチ、関節炎、骨関節炎、脊椎関節病症、抗生剤により誘導された下痢、多発性硬化症、糖尿病、骨粗しょう症、再潅流損傷、喘息、鼻炎、妊娠中毒症、フォン・ビルブラント病(Von Willebrand disease)、A型血友病、非ホジキンリンパ腫並びに造血前駆細胞又は幹細胞欠乏症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本明細書で用いられている用語“治療有効量”は、障害の少なくとも1種の症状を緩和させるか、障害の発達を予防するか、障害の退行を誘発するのに十分な治療剤の量を意味する。例えば、血小板減少症の治療と関連して、治療有効量は好ましくは血小板の血中濃度を5%以上、好ましくは10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上又は100%以上まで増加させる治療剤の量を意味する。
【0080】
本明細書で用いられている用語“予防する(prevent)”、“予防する(preventing)”及び“予防(prevention)”は、動物における病的細胞の発生の減少又は所望の細胞(例えば、血小板)の減少防止を意味する。予防は対象体(subject)において所望の細胞の減少を完全に、例えば、全体的に防止することであり得る。予防は対象体において所望の細胞の減少が本発明を用いない場合に起こる所望の細胞の減少よりも少なく起こるようにする部分的な予防であり得る。
【0081】
mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は、疾患又は障害の症状の発病後に投与され得る。他の実施様態において、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は、疾患又は障害が起こる可能性が高い条件下で前記疾患又は障害の発病前に投与されて疾患又は障害の重症度を予防したり減少させることができる。例えば、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体のPEG結合された形態は、血小板減少症を引き起こすと知られている化学療法治療を受けた患者に投与され得る。
【0082】
mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は、疾患若しくは障害の治療、緩和又は予防に効果的であると知られている少なくとも1種の他の治療剤の投与又は治療と共に行われ得る。他の治療剤又は治療の例としては、他の成長因子(例えばインターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子及びエリスロポイエチン)、免疫抑制剤、消炎剤、抗癌剤、抗体及び放射線治療が挙げられるが、これらに限定されない。mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体、及び少なくとも1種の他の治療剤は、単一組成物又は別個の組成物として投与され得る。一部の実施様態において、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体、及び少なくとも1種の他の治療剤は、下記の条件のうち少なくとも1種の条件下で動物に投与される:異なる周期、異なる期間、異なる濃度及び異なる投与経路等。一部の実施様態において、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は、他の治療剤の投与前、例えば、他の治療剤を投与する0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間又は4週間前に投与される。一部の実施様態において、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は、治療剤の投与後、例えば治療剤の投与から0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間又は4週間後に投与される。一部の実施様態において、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体及び他の治療剤は同時に投与されるものの、異なるスケジュールで投与される。mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は毎日、1週間当り2回又は1週間当り1回投与され、他の治療剤又は抗癌剤は1週間当り1回、2週間当り1回、3週間当り1回又は4週間当り1回投与される。
【0083】
組成物
本発明の範囲内に含まれる組成物は、本発明のmIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体が所望の目的を達成するのに効果的な量で含有されている全ての組成物を含む。個体により異なり得るが、それぞれの成分における有効量の最適範囲の決定は当分野の技術内にある。典型的に、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は、体重1kg当り約1μg乃至約5000μgの投与量で動物、例えばヒトに投与され得る。他の実施様態において、投与量は体重1kg当り約2μg乃至約1000μg、約5μg乃至約500μg又は約5μg乃至約250μgである(化学的修飾がない蛋白質のみの質量を計算)。
【0084】
一部の実施様態において、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体を含む組成物は、単位投与剤形、例えば1回使用容器、即時使用が可能な注射溶液、丸剤、カプセル剤又は局所組成物の形態である。一実施様態において単位投与剤形は、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体を約500mg未満、例えば約0.1mg乃至約500mg、約0.2mg乃至約100mg又は約0.5mg乃至約50mgの量で含む。
【0085】
mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体は、単離されたポリペプチドとして投与され得るだけでなく、本発明のポリペプチドは薬学的に用いられ得る製剤形態としての本発明のポリペプチドの加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む適当かつ薬学的に許容可能な担体を含有する薬学製剤の一部として投与され得る。好ましくは、前記製剤は約0.01%乃至99%、好ましくは約0.25%乃至75%の活性ポリペプチドを賦形剤と共に含有する。
【0086】
一実施様態において、薬学組成物はmIL-11ポリペプチド、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体を安定化させて保存時の分解を防止する賦形剤を含む。一実施様態において、薬学組成物は生体適合性ポリマーに結合されたポリペプチドの安定性を保存するために乾燥した形態、例えば凍結乾燥した形態である。乾燥した形態の組成物は、動物に投与される直前に適当な液体、例えば水又は食塩水に溶解される。また他の実施様態において、薬学組成物は液体の形態である。mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体に適合する薬学組成物の例としては、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体適合性ポリマー結合体、グリシン、冷凍保護剤、場合によりポリソルベート、メチオニン及び緩衝剤を含む組成物が挙げられる(米国特許第6,270,757号及び第7,033,992号参照)。
【0087】
本発明の薬学組成物は、本発明の化合物の有利な効果を経験することが可能な任意の動物に投与され得る。このような動物のうち哺乳動物、例えばヒトが好ましいが、本発明はこれらに限定されない。他の動物は家畜(牛、羊、豚、馬、犬及び猫等)を含む。一実施様態において、動物はヒト又はサルである。
【0088】
薬学組成物は、その所望の目的を達成する任意の手段により投与され得る。例えば、投与は非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、口腔、髄膜腔内、頭蓋内、鼻腔内又は局所経路により達成され得る。代案として又は並行的に、投与は経口経路により達成され得る。好ましい投与経路は治療される、緩和される、又は予防される疾患若しくは障害により左右される。例えば、血小板減少症の刺激に好ましい投与経路は皮下経路である。胃腸炎症障害の治療、緩和又は予防に好ましい投与経路は局所経路である。投与される投与量は、需要者の性別、健康及び体重、並行治療を行っている場合はその種類、治療頻度及び所望の効果の性質により左右される。
【0089】
本発明の薬学製剤は、それ自体で公知にされている方法、例えば普遍的な混合、顆粒化、糖衣錠の製造、溶解又は凍結乾燥の方法により製造される。したがって、経口使用のための薬学製剤は活性化合物を固体の賦形剤と混合し、生成された混合物を場合により粉砕し、所望の場合又は必要な場合、適当な補助剤を添加した後に顆粒混合物を加工して錠剤又は糖衣錠コア(core)を得ることにより製造することができる。
【0090】
適当な賦形剤は、例えばラクトース、スクロース、マンニトールソルビトール、セルロース製剤、及び/又はリン酸カルシウム、例えば三塩基性リン酸カルシウム又はリン酸水素カルシウム、特にサッカライドのような充填剤だけでなく、例えば、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、イネ澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドンを用いる、澱粉ペーストのような結合剤である。必要な場合、崩壊剤、例えば前記言及された澱粉だけでなくカルボキシメチル澱粉、架橋結合されたポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加することができる。補助剤は、特に、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸若しくはその塩、例えばステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウム、及び/又はポリエチレングリコールのような流動調節剤及び潤滑剤である。糖衣錠コアは所望の場合、胃液に対する耐性を示す適当なコーティング剤でコーティングされている。このため、場合によりアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る濃縮されたサッカライド溶液を用いることができる。胃液に対する耐性を示すコーティング剤を製造するために、適当なセルロース製剤、例えばアセチルセルロースフタレート又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの溶液が用いられる。例えば、活性化合物投与量の組み合わせを確認したり特徴を評価するために顔料又は色素を錠剤或いは糖衣錠コーティング剤に添加することができる。
【0091】
経口投与され得る他の薬学製剤は、ゼラチンから製造されたプッシュフィット(push-fit)カプセル剤だけでなく、ゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールから製造された密封された軟質カプセル剤を含む。前記プッシュフィットカプセル剤は、例えばラクトースのような充填剤、例えば澱粉のような結合剤、及び/又は例えばタルク若しくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、また、場合により安定化剤と混合され得る顆粒形態の活性化合物を含有し得る。軟質カプセル剤において、活性化合物は好ましくは適当な液体、例えば脂肪油又は液体パラフィンに溶解されるか懸濁される。安定化剤も添加され得る。
【0092】
また、本発明は薬学キットを含むキットに関する。前記キットは、mIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体ポリマー結合体だけでなく適当な対照群、例えば陽性対照群及び/又は陰性対照群を含み得る。一部の実施様態において、前記キットはmIL-11、その変異体、断片又は誘導体を含む生体ポリマー結合体を含む薬学組成物を含み得る。前記キットは、好ましくは追加の成分、例えば説明書、固体支持体、定量化補助試薬等を含む。化合物又は薬剤は、適当な容器内に包装され得る。
【実施例】
【0093】
実施例1:ヒトインターロイキン-11(IL-11)変異体
A.ヒトIL-11変異体の製造
ヒトIL-11変異体(mIL-11)は、化学的ストレス及び蛋白質分解ストレスに耐えるように再デザインされたヒトインターロイキン-11(IL-11)である。ヒトIL-11(NCBIAAA59132.1 配列番号1)のN末端領域(1乃至30個の残基)が欠失されており、新たなN末端(ヒトIL-11の31番目のバリンに相応する)及び新たに形成された125番目(ヒトIL-11の155番目)のアスパラギン酸がそれぞれアラニン及びアスパラギンに置換された。mIL-11のアミノ酸配列は配列番号2であって、先に記載したとおりである。pGEX4T発現ベクターを用いてmIL-11をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合蛋白質(GST-mIL-11)として発現させた。詳細な製造過程は、国際特許出願公開第WO 2006/126102(A2)号に記載されている過程と類似する。要約すると、部位指定突然変異誘発を通じてmIL-11をコードするcDNAを発生させ、pGEX4Tのアンピシリン耐性遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子に置換されているpGEX4T-kan発現ベクター内に導入してGST-mIL-11を生成した。生成された発現ベクターpGEX4T-GST-mIL-11を用いて大腸菌KRX(プロメガ社、米国ウィスコンシン州メディソン)を形質転換させた。単一の形質転換体をカナマイシン(10μg/ml)が添加されたLBブロスに播種し、増殖が適当なレベル(OD600=0.5)に到達するまで30℃で恒温処理した。引き続き、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)(0.4mM)を添加して蛋白質の発現を誘導し、細胞を30℃で3時間乃至4時間の間さらに培養した。
【0094】
GST-mIL-11の発現はSDS-PAGEで確認した。細胞を遠心分離して集め、集めた細胞を2mM EDTAが含有されたpH7.5の50mMリン酸ナトリウムに再懸濁し、前記細胞を超音波処理又は高圧均質化機を用いて4℃で溶解させた。別途に明示されていない限り、下記段階は4℃で行われた。溶解された細胞の残骸(debris)を遠心分離で除去し、上澄液に対してGST-アフィニティークロマトグラフィー(GEヘルスケア(GE Healthcare)社、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)を行った。カラムをpH 7.5の50 mMリン酸ナトリウムで洗浄した後、10 mMの還元されたグルタチオンが含有されたpH 7.5の50 mMリン酸ナトリウムで溶出した。溶出されたGST-mIL-11分画を集めてトロンビン蛋白質分解のために20℃で恒温処理した。GST-mIL-11 1 mg当り0.75 Uのトロンビンを添加した後、弱く撹拌しながら20℃で1.5時間の間恒温処理した。蛋白質の濃度は、吸光係数を用いて紫外分光法により分析した。蛋白質分解は1乃至4℃への即時冷却を通じて終結させた。次に、反応溶液に対して陽イオン交換クロマトグラフィー(SPセファロース急速流動樹脂、GEヘルスケア社、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)を行った。カラムをpH 7.5の50 mMリン酸ナトリウムで広範囲に洗浄した。この条件下で、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ及びグルタチオンを移動相で溶出し、結合された状態で残っているmIL-11を切断した。mIL-11分画をpH 7.5の50 mMリン酸ナトリウム中の0 mM乃至40 mM NaCl 線形勾配を用いて集めた後、ベンズアミジンカラム(GEヘルスケア社、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)に入れて、任意の残留トロンビンを取り除いた。カラムを通過した分画を集め、前記分画をセファデキス75カラム(GEヘルスケア社、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)に入れて緩衝剤を0.1%のポリソルベート20及び5%のソルビトールが含有されたpH5.0の50mM酢酸ナトリウムに交換した。mIL-11分画を集めて用いるときまで-80℃で保存した(図1、レーン2)。
【0095】
B.ヒトIL-11変異体の特徴究明
IL-11に対する変異の効果を調べるために、円二色性(CD)分光法及び細胞増殖アッセイを通じてそれぞれ二次構造アッセイ及び生物学的活性アッセイを行った。ヒトインターロイキン-11は、4個の螺旋多発フォールディングを採択するものと推定される(Czupryn et al., JBC 270:978-985(1995))。前記文献(Czupryn et al.)に記載されたモデルと類似するが、若干変更されたJASCO J-810モデル(日本・東京)を用いてmIL-11の遠紫外線CDスペクトルを計測した。CDスペクトルの計測は、0.1 cmの経路長で25±1℃にてpH8.0の10mM トリス-HClを用いて行った。サンプル濃度は0.5 mg/mlであった。対照群として組換えヒトIL-11(rhIL-11, ワイオス社、米国ニュージャージー州、配列番号3)も分析した。mIL-11のCDスペクトルは典型的なα螺旋信号を示し、rhIL-11のCDスペクトルと類似した(図2(a))。さらに、IL-11受容体を発現するBa/F3細胞を用いてmIL-11の細胞増殖活性を試験したとき(詳細な過程については実施例5を参照)、mIL-11の生物学的活性曲線はrhIL-11の生物学的活性曲線と類似した(図2(b))。この結果は、IL-11に導入された変異が、IL-11がその受容体と結合する能力に影響を及ぼさず分子の全体構造にも影響を及ぼさないことを立証する。細胞株に対する詳細な情報及びアッセイプロトコールは実施例5において説明されている。
【0096】
実施例2:酸性条件下でのmIL-11の安定性アッセイ
実施例1に記載されているように、mIL-11は化学的ストレス下でIL-11よりもさらに安定するようにデザインされた。mIL-11の安定性とIL-11の安定性を比較するために、強制分解実験を行った。要約すると、実施例1において製造されたmIL-11及びワイオス社(米国ニュージャージー州)より購入したrhIL-11を50℃にてpH 3.5の2 mMのクエン酸緩衝剤で0日乃至4日間恒温処理した。処理されたサンプルを一定の時点(0日、1日、2日、3日及び4日)で集めて即時に凍結させることにより分析するときまで反応を停止させた。分解された生成物をSDS-PAGE及び液相HPLC(RP-HPLC, C4, 5×4.6 mm、バイダック(Vydac)社、米国イリノイ州ジオフィールド)で分析した。RP-HPLCから得られたピークのそれぞれ(図3)を集めてエドマン(Edman)配列分析及び質量分光法で確認した。
【0097】
SDS-PAGE(データ省略)及びRP-HPLC(図3)による分析時、処理してから24時間以内に約60%のrhIL-11が分解されて3個の断片を生成した。この結果は文献(Kenley and Warne, Pharma. Res. 11:72-76(1994))にすでに記載されている結果と類似する。RP-HPLCによる分析時、酸性の条件下で4日が経過した後、わずかに3%の完全なrhIL-11しか観察されなかった。この結果も、前記文献(Kenley and Warne)にすでに記載されている結果と同一である。共通の酸加水分解部位は、rhIL-11において2箇所あり、mIL-11において1箇所ある、プロリン(P)とアスパラギン酸(D)との間のペプチド結合である(斜線で表示、図4)。しかしながら、mIL-11の場合、mIL-11の大多数(約85%)が処理全体にわたって完全な状態で残っていた(図3)。mIL-11の観察された分解部位は、プロリン3とアスパラギン酸4との間のペプチド結合であった。rhIL-11とは異なり、154番目と155番目との間のペプチド結合(図4)は蛋白質分解から保護されたが、このような結果は配列番号2の124番目及び125番目(配列番号1の154番目(P)及び155番目(D)に相応する)においてアスパラギン酸がアスパラギンに置換された変異のためであると推定される。この結果は、mIL-11が酸性条件下でrhIL-11よりも顕著にさらに安定することを立証する。mIL-11のこのような特徴はPEG化において有利であるが、これは幾つかの場合、PEG化の条件が非常に過酷な条件であるためである。
【0098】
実施例3:アミン特異的PEG化を用いたモノPEG化されたIL-11変異体の製造
A.モノPEG化されたIL-11変異体(PEG-mIL-11-SC)の製造
IL-11変異体には4個の表面露出したアミンが存在する(N末端の一次アミン1個、及びリシン残基のイプシロンアミン3個、図5)。アミン特異的PEG化方法を、以下に記載されているとおりに行った。
【0099】
先ず、実施例1に記載されている精製済みのmIL-11をpH7.4のリン酸塩緩衝食塩水(PBS)に対して透析して任意の所望しないアミン基を取り除いた。その後、透析されたmIL-11溶液を限外濾過膜(ビバスピン2(Vivascience2))、10K MWCO、ビバサイエンス(Vivascience)社、ドイツ)を用いて1 mg/mlの濃度に濃縮した。mIL-11の濃度は280 nmにおける吸光度測定(Pace et al., Prot. Sci. 4: 2411(1995))又はローリー(Lowry)法(Lowry et al., J. Biol. Chem. 193: 265(1951))で測定した。透析されたmIL-11溶液を弱く撹拌しながら室温(20℃乃至25℃)で5モル濃度の過剰のメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルカーボネート(mPEG-SC、IDB、韓国)と共に1時間乃至2時間反応させた。試験されたPEGポリマーの長さは、5kDa、20kDa又は30kDaであった。付着したPEGポリマーの長さと関係なく同一の反応及び精製を適用した。その次に、反応溶液を10K膜(ビバスピン2、30K MWCO、ビバサイエンス社、ドイツ)を用いてpH5.0の50mMの酢酸ナトリウムに対して透析濾過をすることにより非反応のPEGポリマーを取り除いた。
【0100】
次に、得られた溶液に対して、陽イオン交換クロマトグラフィー(SP-セファロース、GEヘルスケア社、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)を行い、pH 5.0の50mM酢酸ナトリウムに平衡化させた。カラムを前記緩衝剤中の0 mM乃至400mMの線形塩勾配で溶出して、ジPEG化された(di-PEGylated)mIL-11、モノPEG化されたmIL-11(PEG-mIL-11-SC)及び非PEG化されたmIL-11を分離した。引き続き、得られたモノPEG化されたmIL-11分画をセファデキス25カラムを用いて製剤化緩衝剤(0.1%のポリソルベート20及び5%のソルビトールを含有するpH5.0の50 mM酢酸ナトリウム)内に脱塩させた。PEG-mIL-11-SCの濃度は280 nmにおける吸光度測定及びローリー法で測定した。最終濃度を1 mg/mlに調整し、用いるときまで-80℃で保存した。
【0101】
B.特徴の評価
PEG-mIL-11-SCと指称される精製済みのモノPEG化されたmIL-11は、SDS-PAGE(4%乃至12%のNuPAGEノベックス(Novex) ビス-トリスアクリルアミドゲル、インビトロジェン社、米国カリフォルニア州カールスバード)及びサイズ排除HPLC(バイオシル(Bio-Sil)SEC 250、バイオ・ラッド(Bio-Rad)社、米国カリフォルニア州リッチモンド)を用いて分析した。20 kDa mPEG-SCでPEG化されたmIL-11に対する明確な50 kDaのバンドがSDS-PAGEゲル上で観察されたが(図1、レーン1)、これは精製後に得られたmIL-11の多くがモノPEG化されたmIL-11であることを立証する。5%未満の75 kDaバンド(ジPEG化されたmIL-11を示す)及び1%未満の非反応のmIL-11(18kDa)が検出された。サイズ排除HPLC分析を用いたとき、さらに多少高い含量のジPEG化されたmIL-11(8%、保持時間約14分)が検出されたのに対し、非反応のmIL-11(1%)の含量は変動しなかった(図6)。モノPEG化されたmIL-11(PEG-mIL-11-SC)の総純度は、どのような精製バッチが試験されたのかと関係なくに80%よりもさらに高かった。
【0102】
実施例4:N末端特異的PEG化を用いたモノPEG化されたmIL-11変異体の製造
A.N末端特異的PEG化方法を用いたモノPEG化されたmIL-11変異体(PEG-mIL-11-AD)の製造
PEG生体ポリマーを蛋白質のN末端に選別して導入するために、4モル濃度の過剰のメトキシPEGプロピオニルアルデヒド(20kDa)(ネクターセラピューティックス(Nektar Therapeutics)社、米国カリフォルニア州サンカルロス)をpH 5.0の50 mM酢酸ナトリウムを用いて精製済みのmIL-11変異体と混合した。続いて、ナトリウムシアノボロハイドライド(最終濃度5mM)を還元剤として添加した。反応混合物を弱く撹拌しながら室温(20℃乃至25℃)で24時間恒温処理した。精製段階を即時に行うか、又は即時に-20℃で保存することにより反応を停止させた。1個のPEGポリマーがN末端に付着しているmIL-11(PEG-mIL-11-AD)の精製方法は実施例3に記載された方法と同一であった。
【0103】
B. 特徴の評価
分析方法は、実施例3の分析方法と同一であった。75kDa、50kDa及び18 kDa近傍で移動する3個のバンドもまた実施例3の場合と同様に検出されたが、前記3個のバンドはそれぞれジPEG化されたmIL-11、モノPEGされたmIL-11及び天然(非結合の)mIL-11を示す。わずかに1%未満のジPEG化されたmIL-11(75kDa)及び1%未満の非反応のmIL-11(18kDa)しか検出されなかった(図7(a))。サイズ排除HPLC分析を用いた場合、モノPEG化されたmIL-11(保持時間約15分)の総純度は約92%であり、ジPEG化されたmIL-11(保持時間約14分)の総純度は8%であり、非反応又は非結合mIL-11の総純度は1%未満であった(図7(b))。
【0104】
実施例5:PEG化されたmIL-11のインビトロ生物学的活性
A.ヒトIL-11受容体を発現するBa/F3細胞(Ba11G)の構築
文献(Lebeau et al., FEBS Letters 407: 141-147(1997))に記載された方法と類似した、gp130及びIL-11受容体α鎖を発現するBa/F3細胞を用いるインビトロ細胞増殖アッセイを用いてPEG化されたmIL-11の生物学的活性を測定した。
【0105】
要約すると、Ba/F3細胞に2種のレトロウイルスベクター、即ちIL-11受容体α鎖(NCBI NM 004512.3)を発現するMIN-IL-11R及びgp130(NCBI NM 602184)を発現するMIH-gp130を導入させ、IL-11受容体、gp130及びIL-11受容体α鎖(IL-11R)を安定して発現するBa/F3細胞株(DSMZ、ドイツ)を製造した。レトロウイルスプラスミドpMIN-IL-11Rは、IL-11R遺伝子をpMINベクター(Yu et al., Gene Therapy 10: 706-711 (2003))内に挿入して製造した。pMIH-gp130はpMINのネオマイシン耐性遺伝子をハイグロマイシン耐性遺伝子に置換させた後、gp130遺伝子を挿入して製造した。レトロウイルスベクターMIN-IL-11Rを製造するために、文献(Yu et al., Gene Therapy10: 706-711(2003))に記載されているようにgag-polを発現するpVM-GP及び両種性エンベロープ(amphotropic envelope)を発現するpVM-AEを用いてpMIN-IL-11RをHEK293T細胞に導入した。レトロウイルスベクターMIH-gp130は、pMIH-gp130がpMIN-IL-11Rの代わりに導入されたという点を除いて、MIN-IL-11Rの製造方法と同一の方法で製造した。その導入された細胞を10%のウシ胎児血清を含むDMEM培地で2日間培養した。培養後、培養物の上澄液を0.45μmフィルターを用いて濾過し細胞非含有ウイルスを得た。IL-11受容体のα鎖を発現するBa/F3細胞を製造するために、Ba/F3細胞にレトロウイルスベクターMIN-IL-11Rを導入し、2mg/ml G418の存在下で選別した。IL-11受容体α鎖の発現は、FITC-抗-IL-11R(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)社、米国イリノイ州ロックフォード)を用いてフローサイトメトリー(flow cytometry)により確認した。その次に、IL-11Rを安定して発現する細胞にレトロウイルスベクターMIH-gp130を導入し、2 mmg/mlのG418及び0.5 mg/mlのハイグロマイシンの存在下で選別した。IL-11R及びgp130の発現は、それぞれFITC-抗-IL-11R及びPE-抗-hgp130(BD バイオサイエンス(BD Biosciences)社、米国カリフォルニア州サンホセ)を用いてフローサイトメトリーにより確認した。IL-11R及びgp130の両方を発現する単一クローンは、2mg/ml G418及び0.5mg/mlハイグロマイシンの存在下における限界希釈により得た。細胞からのIL-11受容体α鎖及びgp130 mRNAの生成は、下記のプライマー対を用いてRT-PCRで確認した。
【0106】
IL-11受容体α鎖に対するプライマー対:
配列番号4: 5'-CGACGCGTATGAGCAGCAGCTGCTCAGGG-3'(前方向)
配列番号5: 5'-GAAGATCTCTACAGGTTTGGAGCTCCTGG-3'(逆方向)
gp130に対するプライマー対:
配列番号6: 5'-ACGCGTATGTTGACGTTGCAGACT-3'(前方向)
配列番号7: 5'-GGATCCTCACTGAGGCATGTAGCC-3'(逆方向)
B.モノPEG化されたmIL-11のインビトロ生物学的活性アッセイ
前記実施例3及び4に記載されたアミン特異的方法又はN末端特異的方法を用いて製造したモノPEG化されたmIL-11(PEG-mIL-11-SC又はPEG-mIL-11-AD)及び実施例1で製造された非結合mIL-11を10倍段階希釈により、1 pg/mlから1μg/mlまで希釈し、96ウェルプレート内に入れた。100μlのBa11G細胞(3×104個細胞/ml)を前記希釈したサンプルに添加し、37℃で5%CO2下に96ウェルプレート内で72時間培養した。培養末期に細胞を37℃で5%CO2下にてXTT 試薬(細胞増殖キットII, ロシュ社、米国インディアナ州インディアナポリス)を用いて4時間処理した。492nmにおけるサンプルの吸光度は、マイクロプレートリーダー(ベルサマックス(VERSA max)、モレキュラーデバイス(Molecular Devices)社、米国カリフォルニア州ソニベイル)で測定した。690nmにおける吸光度をサンプルのそれぞれの492nmの吸光度から差減して細胞の散乱信号を取り除いた。全てのアッセイを3回繰り返し行った。
【0107】
アミン特異的PEG化によりモノPEG化されたmIL-11(PEG-mIL-11-SC)の製剤及びN末端特異的PEG化によりPEG化されたmIL-11(PEG-mIL-11-AD)の製剤は、非結合mIL-11と類似した細胞増殖活性を示したが、このような結果はPEGの付加がIL-11とIL-11受容体の間の相互作用を妨害しないことを立証する(図8)。PEG化されたmIL-11の投与量反応曲線は、x軸上のサンプル濃度に対するy軸上の吸光度により描かれた。S字形投与量依存曲線は、ロジスティック方程式に対して描かれた。
【0108】
実施例6:ラットにおいてPEG化されたmIL-11変異体の生体内生物学的活性
1回の皮下注射を用いて400μg/kgのPEG-mIL-11-AD、PEG-mIL-11-SC又は非結合mIL-11を10週齢のメススプラーグダウリー(Sprague-Dawley)ラット(日本SLC社)に投与することによりPEG化されたmIL-11の生体内試験を行った。食塩水を溶媒対照群として用いた。群当り5匹の動物を割り当てた。投与後、種々の時点(0日、3日、6日、8日、10日及び12日)において尾静脈から血液サンプルを採取した。自動血液分析器(アボットラボ(Abbott Lab)社、米国イリノイ州アボットパーク)を製造者の説明書に従って用い、血小板数値を測定した。
【0109】
図9に示すように、PEG-mIL-11-SC(a)又はPEG-mIL-11-AD(b)に処理された動物の血小板数値は、3日目から増加して6日目となる日に最大値に達した。前記2種のPEG化されたmIL-11蛋白質を処理した場合の血小板数値は、6日目に天然mIL-11を処理した場合の血小板数値よりも有意に高く(**; P<0.001)、6日目及び8日目に溶媒対照群の血小板数値よりも有意に高かった(**; P<0.05)。種々の時点において非結合mIL-11と溶媒対照群の間の血小板数値において統計的に有意な差異はなかった。この結果は、前記2種のPEG化されたmIL-11蛋白質の生物学的活性がラットにおいて非結合mIL-11の生物学的活性よりもさらに高いことを立証する。
【0110】
投与頻度を減少させる能力について、ラットにおいてPEG-mIL-11-SC又はPEG-mIL-11-ADの1回投与と非結合mIL-11の複数回投与とを比較することにより試験を行った。体重が約250gである10週齢のメススプラーグダウリーラット(群当り5匹)に400μg/kgのPEG化されたmIL-11(PEG-mIL-11-SC又はPEG-mIL-11-AD)を1回皮下注射した。400μg/kgの非結合mIL-11を対照群として7日間、毎日注射により投与した。投与後、種々の時点(0日、3日、6日、8日、10日及び12日)において尾静脈から血液サンプルを採取した。自動血液分析器を用いて血小板数値を測定した。
【0111】
図10に示すように、PEG-mIL-11-SC(a)又はPEG-mIL-11-AD(b)により処理された動物の血小板数値は3日目から増加して6日目に最大値に達したのに対し、非結合mIL-11により処理された動物の血小板数値は8日目に最大値に達した。前記2種のPEG化されたmIL-11に処理された群の血小板数値の最大値は、非結合mIL-11の7回連続注射後に測定された血小板数値と類似した。この結果は、PEG化されたmIL-11の1回投与された投与量が非結合mIL-11の7回毎日投与された投与量を効果的に代替することができ、ラットにおいて同一の効能又は増加した効能を示すことを立証する。
【0112】
実施例7:ラットにおいてPEG化されたmIL-11変異体の薬物動力学
ラットにおいてPEG-mIL-11-SC及びPEG-mIL-11-ADの薬物動力学を測定するために、1回皮下注射を用いて400μg/kgのPEG-mIL-11-SC又はPEG-mIL-11-ADを10週齢のメススプラーグダウリーラット(日本SLC社)に投与した。食塩水又は400μg/kgの非結合mIL-11を対照群として用いた。群当り4匹乃至6匹のラットを割り当てた。要約すると、投与後、種々の時点(0.08時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間及び96時間)において尾静脈から血液サンプルを採取した。その次に、血漿サンプルを遠心分離(2,500g、10分)で分離し、商業的に入手が可能なヒトIL-11 ELISAキット(R&Dシステム社、米国ミネソタ州ミネアポリス)を製造者の説明書にしたがって用い、PEG-mIL-11-SC、PEG-mIL-11-AD又は天然mIL-11の血漿濃度を測定した。PEG-mIL-11-SC、PEG-mIL-11-AD又は非結合mIL-11を標準蛋白質として用いた。薬物動力学的パラメータを、非区画方法を用いてウィンノリン(WinNonlin)ソフトウェア・バージョン5.2(ファーサイトコーポレーション(Pharsight Corp.)、米国ノースカロライナ州ケリー)で分析した。
【0113】
図11に示すように、PEG-mIL-11-SC(a)又はPEG-mIL-11-AD(b)の血漿濃度は8時間で最大値に達し、投与後72時間まで持続した。非結合mIL-11の血漿濃度は1時間で最大値に達し、投与後12時間まで持続した。PEG-mIL-11-SC、PEG-mIL-11-AD又は非結合mIL-11の薬物動力学的パラメータは、下記[表1]に要約されている。PEG-mIL-11-SC又はPEG-mIL-11-ADの半減期は、非結合mIL-11の半減期よりも約5倍長かった。PEG-mIL-11-AD又はPEG-mIL-11-SCに対する曲線下面積(AUC)は、同一の投与量を用いたとき非結合mIL-11のAUCよりも約8倍又は5倍高かった。この結果は、前記2種のPEG化されたmIL-11蛋白質がラットにおいて非結合mIL-11と比較して長い持続性を有する特徴があることを立証する。
【0114】
下記の[表1]は1回の皮下投与後、ラットにおけるPEG-mIL-11及びmIL-11の詳細な薬物動力学的特徴を示す。
【0115】
【表1】

【0116】
前記実験は、本発明の可能な実施様態を例示する。本発明がその一部の実施様態と関連して具体的に表現されて記載されているが、当業者は、このような実施様態が例として提供されただけであって、本発明を限定するために提供されたものでなく、本発明の技術的思想及び範囲を外れず、かつ形態及び細部事項における種々の変更を前記実施様態に付加することができることを理解するはずである。したがって、本発明の範囲及び範疇は、前記例示としての実施様態のうちどのような実施様態によっても限定されてはならず、特許請求の範囲及びその等価物によってのみ定義されなければならない。
【0117】
論文又は抄録、公開された又はそれに相応する米国又は外国の特許出願、発行された特許、外国特許及び任意の他の文献を含む、本明細書において引用された全ての文献(この引用文献に開示されている全てのデータ、表、図面及び内容を含む)は、全体として本明細書に参考にそれぞれ導入される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異体ヒトIL-11(mIL-11)及び生体適合性ポリマーを含む結合体(conjugate)であって、
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号2に記載の配列のうち5個以下のアミノ酸が置換された配列を含み、但し、配列番号2の1番目のアミノ酸がアラニンであり、配列番号2の125番目のアミノ酸がアスパラギンであり、
前記結合体のmIL-11のアミノ酸配列とアミノ酸配列が同一である非結合的基準mIL-11のインビトロ細胞増殖活性の大きさに対する前記結合体のインビトロ細胞増殖活性の大きさの低下は、5%以下であり、
前記細胞増殖活性は、IL-11受容体α鎖及び糖蛋白質130(gp130)を発現することによりIL-11に反応する細胞に、前記結合体又は前記非結合的基準mIL-11を処理し、前記細胞をインビトロで培養した際の細胞増殖を測定することによって決定される結合体。
【請求項2】
前記生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリトリメチレングリコール、ポリ乳酸、ポリアクリル酸、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリ(L-リシン)、ポリアルキレンオキサイド、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルピロリドン及びポリアクリルアミドにより構成される群から選択される請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
前記生体適合性ポリマーは、PEGである請求項1に記載の結合体。
【請求項4】
前記PEGは、直鎖又は分枝鎖PEGである請求項3に記載の結合体。
【請求項5】
前記mIL-11は、モノPEG化された(mono-PEGylated)mIL-11である請求項1に記載の結合体。
【請求項6】
前記PEGの分子量は、約2kDa乃至約100kDaである請求項3に記載の結合体。
【請求項7】
前記PEGの分子量は、約10kDa乃至約60kDaである請求項6に記載の結合体。
【請求項8】
前記PEGの分子量は、約2kDa乃至約50kDaである請求項6に記載の結合体。
【請求項9】
前記PEGの分子量は、約5kDa乃至約20kDaである請求項8に記載の結合体。
【請求項10】
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号2に記載の配列を含む請求項1に記載の結合体。
【請求項11】
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号1に記載の配列を含み、但し、31番目のバリンがアラニンに置換され、155番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されている請求項1に記載の結合体。
【請求項12】
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号3に記載の配列を含み、但し、9番目のバリンがアラニンに置換され、133番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されている請求項1に記載の結合体。
【請求項13】
mIL-11及び生体適合性ポリマーを含む結合体であって、
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列と95%以上同一であるアミノ酸配列を含み、但し、配列番号2の1番目のアミノ酸がアラニンであり、配列番号2の125番目のアミノ酸がアスパラギンであり、
細胞増殖アッセイにおいて、前記結合体のmIL-11のアミノ酸配列とアミノ酸配列が同一である非結合的基準mIL-11のインビトロ細胞増殖活性の大きさに対する前記結合体のインビトロ細胞増殖活性の大きさの低下は、5%以下であり、
前記細胞増殖活性は、IL-11受容体α鎖及びgp130を発現することによりIL-11に反応する細胞に、前記結合体又は前記非結合的基準mIL-11を処理し、前記細胞をインビトロで培養した際の細胞増殖を測定することによって決定される結合体。
【請求項14】
前記生体適合性ポリマーは、PEG、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリトリメチレングリコール、ポリ乳酸、ポリアクリル酸、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリ(L-リシン)、ポリアルキレンオキサイド、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルピロリドン及びポリアクリルアミドにより構成される群から選択される請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
前記生体適合性ポリマーは、PEGである請求項13に記載の結合体。
【請求項16】
前記PEGは、直鎖又は分枝鎖PEGである請求項15に記載の結合体。
【請求項17】
前記mIL-11は、モノPEG化されたmIL-11である請求項13に記載の結合体。
【請求項18】
前記PEGの分子量は、約2kDa乃至約100kDaである請求項15に記載の結合体。
【請求項19】
前記PEGの分子量は、約10kDa乃至約60kDaである請求項18に記載の結合体。
【請求項20】
前記PEGの分子量は、約2kDa乃至約50kDaである請求項18に記載の結合体。
【請求項21】
前記PEGの分子量は、約5kDa乃至約20kDaである請求項20に記載の結合体。
【請求項22】
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号2に記載の配列を含む請求項13に記載の結合体。
【請求項23】
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号1に記載の配列を含み、但し、31番目のバリンがアラニンに置換され、155番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されている請求項13に記載の結合体。
【請求項24】
前記mIL-11のアミノ酸配列は、配列番号3に記載の配列を含み、但し、9番目のバリンがアラニンに置換されており、133番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されている請求項13に記載の結合体。
【請求項25】
請求項1乃至請求項24のうちいずれか1項に記載の結合体及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学組成物。
【請求項26】
血小板減少症の治療を必要とする患者において、血小板減少症を治療する薬剤の製造のための、請求項1乃至請求項24のうちいずれか1項に記載の結合体又は請求項25に記載の薬学組成物の用途。
【請求項27】
前記患者は、哺乳動物である請求項26に記載の用途。
【請求項28】
前記哺乳動物は、ヒトである請求項27に記載の用途。
【請求項29】
血小板の増加を必要とする患者において、血小板を増加させる薬剤の製造のための、請求項1乃至請求項24のうちいずれか1項に記載の結合体又は請求項25に記載の薬学組成物の用途。
【請求項30】
前記患者は、哺乳動物である請求項29に記載の用途。
【請求項31】
前記哺乳動物はヒトである請求項30に記載の用途。

【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−500845(P2012−500845A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524891(P2011−524891)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004671
【国際公開番号】WO2010/024557
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(507348377)ビロメッド カンパニー, リミテッド (6)
【出願人】(505358336)バイオポリメド インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】