説明

インダクタの製造方法

【課題】基板上での設置スペースの確保が容易であり、かつ周辺部に他の部品の配置スペースも確保し易い省スペース型のインダクタの製造方法を簡易に得る。
【解決手段】基板に実装する実装部42と平行に延びる接続部41を有する端子部4A,4Bを、巻軸部の両端に上下鍔部22,23を有するドラムコア2の下鍔部23の端面に固定し、巻軸部に巻回した巻線3の端部を接続部41に絡げる際または絡げた後に、接続部41の一端部を上方に起立させ、全体を鍔部の投影領域に外接する正方形内に配置するインダクタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線を巻回するドラムコアに、板状金属部材からなる端子部が密着固定されてなるタイプのインダクタの製造方法に関し、特に、携帯電話、携帯型音楽メディア機器、携帯ゲーム機、小型ビデオカメラ等の小型(薄型)化の要求の高い電子機器の電源回路に実装される場合に好適なインダクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のインダクタとして、下記特許文献1に記載されたものが知られている。この公報記載のインダクタは、絡げ端子部と電極部とを構成する板状金属部材(金属片)の周縁に、ドラムコアの下鍔部側面に当接する短冊状小突起を設けることにより、ドラムコアと板状金属部材との位置決めの精度を高めるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−22137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、この種のインダクタが用いられる電子機器の小型化が進み、それに伴い、回路基板に実装されるインダクタに対する小型化の要求も強まっている。特に、狭小化する回路基板に数多くの電気(電子)部品を実装する必要性から、基板上での自身の実装面積が小さいだけではなく、その周辺部に他の部品の配置スペースも確保し易い省スペース型のインダクタが要望されている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、基板上での設置スペースの確保が容易であり、かつ周辺部に他の部品の配置スペースも確保し易いインダクタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るインダクタの製造方法は、巻軸部の両端に略円形の上鍔部および下鍔部がそれぞれ形成されてなるドラムコアと、前記巻軸部に巻回された巻線と、前記下鍔部の端面に密着固定された板状金属部材からなる端子部と、を備えてなるインダクタの製造方法であって、
前記端子部は、基板に実装される平板状の実装部と、一端部が該実装部と平行に延び前記巻線の端部が接続される接続部と、前記実装部の側辺から上方に屈曲する屈曲部とを有し、前記端子部を、前記実装部の前記側辺が、少なくとも前記各鍔部のうちの小径ではない方の円形鍔部に外接する外接正方形の2組の平行辺のいずれかに平行な方向に伸びて配置するように、前記実装部の上面を前記ドラムコアの前記下鍔部の端面に固定し、
次に、前記巻線を前記巻軸部に巻回し、該巻線の端部を前記接続部に接続するものであり、前記巻軸部に巻線を巻回する際には、前記接続部の一端部は前記実装部の面と平行に延伸して前記外接正方形の外側に突出しており、該接続部に前記巻線の端部を絡げる際または絡げた後に前記一端部を上方に起立させて前記外接正方形内に配置してなり、
当該インダクタを前記巻軸部の軸線方向に正射影した状態において、前記端子部の投影領域が、少なくとも前記各鍔部のうちの小径ではない方の鍔部の投影領域に外接する正方形内に収まることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインダクタの製造方法によれば、巻軸部の軸線方向に正射影された状態において、端子部の投影領域が、少なくとも各鍔部のうちの小径ではない方の鍔部の投影領域に外接する正方形内に収まるように構成されていることにより、基板上で占める自身の実装スペースが所定の正方形領域内に限定されることになる。このため、自身の実装スペースが正方形領域内に収まらない従来のものに比べ、基板上での自身の設置スペースの確保が容易となるとともに、設定された正方形領域の周辺部に他の部品を効率良くコンパクトに配置することが可能となり、簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明により製造された一実施形態に係るインダクタの正面側からの斜視図である。
【図2】図1に示すドラムコアの正面図である。
【図3】図1に示す端子部の背面側からの斜視図である。
【図4】ドラムコアに端子部が密着固定された状態を示す底面側からの斜視図である。
【図5】一実施形態に係るインダクタの平面図である。
【図6】他の実施形態に係るインダクタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る製造方法により形成されるインダクタの実施形態について、添付した各図面を参照しつつ詳細に説明する。図1〜図5は本発明により製造されるインダクタの一実施形態を示しており、図6は他の実施形態を示している。なお、以下の説明では、図1に示す3次元直交座標系のX軸の方向を前後(矢線の向きが前)、Y軸の方向を左右(矢線の向きが右)、Z軸の方向を上下(矢線の向きが上)と称する。また、他の図における3次元直交座標系は、図1のものと向きが一致するように示されている。
【0010】
まず、図1〜図4を用いて、本発明の一実施形態に係るインダクタの構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るインダクタの全体構成を示す正面側からの斜視図、図2は図1に示すドラムコアの正面図、図3は図1に示す端子部の背面側からの斜視図である。また、図4はドラムコアに端子部が密着固定された状態を示す底面側からの斜視図である。
【0011】
本実施形態のインダクタ1は、例えば、携帯電話、携帯型音楽メディア機器、携帯ゲーム機、小型ビデオカメラ等の電子機器の電源回路に実装されるものであり、図1に示すように、ドラムコア2と巻線3と一対の端子部4A,4Bとから構成されている。
【0012】
図2に示すように上記ドラムコア2は、上記巻線3(図1参照)が巻回される柱状の巻軸部21と、該巻軸部21の上下両端(巻軸部21の軸線Cが延伸する方向の両端)に配された円形の鍔部(上鍔部22および下鍔部23)と、が互いに一体に形成されてなるものであり、例えば、軟磁性材料のフェライト(その他に、パーマロイ、センダスト、鉄カルボニル等の材料や、これらの微粉末を圧縮成型したダストコアを使用することも可能)により構成されている。なお、上記上鍔部22と上記下鍔部23とは、互いに同じ外径寸法を有するように形成されている。
【0013】
一方、上記各端子部4A,4Bは、図3に示すように、それぞれ板状金属部材から形成されてなるものであり、上記巻線3(図1参照)の端部が接続される接続部41と、回路基板(図示略)に実装される実装部42と、該実装部42の一側面から上方に屈曲する一対の屈曲部43とを備えている。この各端子部4A,4Bは、図4に示すように、上記接続部41および上記各屈曲部43が上記下鍔部23の側面側に突出するように配置され、上記実装部42の上面と上記下鍔部23の底面との間に塗布された接着剤により、下鍔部23の底面に密着固定される。
【0014】
また、各端子部4A,4Bは、上記下鍔部23に密着固定された図4に示す状態では、上記接続部41の一端部が前方に屈曲しているが、上記巻線3の端部が絡げられる際または絡げられた後に、この屈曲していた部分が図1に示すように上方に延伸されるように構成されている。
【0015】
このように構成された上記インダクタ1は、図1に示すように上記下鍔部23の底面側を図示せぬ回路基板と対向させた状態で該基板上に載置され、上記各端子部4A,4Bの上記各屈曲部43が基板面に半田付けされることにより、回路基板上に固定されるように構成されており、各屈曲部43と基板面との間に形成される半田フィレット(図示略)の状態を視認することによって、半田付けが適正になされているか否かを確認し得るようになっている。
【0016】
次に、上記インダクタ1の主要な特徴について、図5を用いて説明する。図5は本発明の一実施形態に係るインダクタの平面図(上記インダクタ1を上記軸線Cの方向に正射影した状態の図)である。
【0017】
図5に示すように上記インダクタ1は、当該インダクタ1を上記軸線Cの方向に正射影した状態において、上記各端子部4A,4Bの投影領域が上記上鍔部22(上記下鍔部23)の投影領域に外接する正方形5(図中2点鎖線で示す)の内部に収まるように構成されている。また、上記各端子部4A,4Bの上記接続部41に絡げられた上記巻線3の各端部の投影領域も、上記正方形5の内部に収まるように構成されている。
【0018】
これにより、図示せぬ回路基板上で占めるインダクタ1の実装スペースが、上記正方形5の領域内に限定されることになるので、基板上でのインダクタ1の設置スペースの確保が容易となるとともに、上記正方形5の領域の周辺部に他の部品を効率良くコンパクトに配置することが可能となる。
【0019】
次に、本発明に係るインダクタの他の実施形態について、図6を用いて説明する。図6は本発明の他の実施形態に係るインダクタの平面図である。なお、図6に示す実施形態において、図1〜図5に示すものと概念的に共通する構成要素については、同一の番号等を付すこととし、その詳細な説明は省略する。
【0020】
図6に示すインダクタ1Aは、ドラムコア2と巻線3と一対の端子部4C,4Dとから構成されている。このインダクタ1Aの特徴は、上記各端子部4C,4Dの構成にある。すなわち、図6に示すように上記インダクタ1Aは、当該インダクタ1Aを上記軸線Cの方向に正射影した状態において、上記各端子部4C,4Dにおける各屈曲部43の投影領域が、上記インダクタ1のも屈曲部43が図示せぬ基板面に半田付けされる際に形成される半田フィレット6の投影領域も、上記正方形5の内部に収まるようになっている。
【0021】
このため、回路基板上で占めるインダクタ1Aの実装スペースが、上記半田フィレット6が形成される部分も含めて、上記正方形5の領域内に限定されることになるので、上記インダクタ1に比べて、基板上でのインダクタ1Aの設置スペースの確保が容易となるとともに、上記正方形5の領域の周辺部に他の部品をより効率良くコンパクトに配置することが可能となる。
【0022】
以上、本発明により製造されるインダクタの実施形態について説明したが、本発明により製造されるインダクタは、上述した実施形態のものに限られるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0023】
例えば、上述した実施形態では、ドラムコア2の上鍔部22と下鍔部23とが、互いに同じ外径寸法を有するように形成されているが、両鍔部が互いに異なる外径寸法を有する不等鍔のドラムコアを用いることができる。不等鍔のドラムコアを用いたインダクタの場合、少なくとも両鍔部のうちの小径ではない方の鍔部の投影領域に外接する正方形内に、端子部の投影領域が収まるように構成すればよい。
【符号の説明】
【0024】
1,1A インダクタ
2 ドラムコア
3 巻線
4A〜4D 端子部
5 正方形
6 半田フィレット
21 巻軸部
22 上鍔部
23 下鍔部
41 接続部
42 実装部
43 屈曲部
軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻軸部の両端に略円形の上鍔部および下鍔部がそれぞれ形成されてなるドラムコアと、前記巻軸部に巻回された巻線と、前記下鍔部の端面に密着固定された板状金属部材からなる端子部と、を備えてなるインダクタの製造方法であって、
前記端子部は、基板に実装される平板状の実装部と、一端部が該実装部と平行に延び前記巻線の端部が接続される接続部と、前記実装部の側辺から上方に屈曲する屈曲部とを有し、前記端子部を、前記実装部の前記側辺が、少なくとも前記各鍔部のうちの小径ではない方の円形鍔部に外接する外接正方形の2組の平行辺のいずれかに平行な方向に伸びて配置するように、前記実装部の上面を前記ドラムコアの前記下鍔部の端面に固定し、
次に、前記巻線を前記巻軸部に巻回し、該巻線の端部を前記接続部に接続するものであり、前記巻軸部に巻線を巻回する際には、前記接続部の一端部は前記実装部の面と平行に延伸して前記外接正方形の外側に突出しており、該接続部に前記巻線の端部を絡げる際または絡げた後に前記一端部を上方に起立させて前記外接正方形内に配置してなり、
当該インダクタを前記巻軸部の軸線方向に正射影した状態において、前記端子部の投影領域が、少なくとも前記各鍔部のうちの小径ではない方の鍔部の投影領域に外接する正方形内に収まることを特徴とするインダクタの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−48281(P2013−48281A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−238573(P2012−238573)
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【分割の表示】特願2006−76486(P2006−76486)の分割
【原出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】