説明

インダクタンス素子、フィルタ回路及びノイズフィルタ

【課題】設計上の自由度が高く且つ電気的信頼性の高い、新たな構造のインダクタンス素子を提供すること。
【解決手段】本発明のインダクタンス素子は、磁気コア15aと、被覆導線17,18を巻回してなるコイルと、コイルの少なくとも一部に接触又は近接して設けられた誘電体22と、コイルと誘電体22を挟むことでコイル及び誘電体とキャパシタを形成する導電体23aであって磁気コア15aと電気的に絶縁された導電体23aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として交流線(ACライン)等においてノイズフィルタとして用いられるインダクタンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタンス素子が高周波領域にて用いられる際にコイルの線間容量がノイズ抑制に与える悪影響を排除するために、磁気コアを接地すると共に接地された磁気コアに被覆導線を直接巻回することでコイルを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
これに対して、被覆導線における被覆の耐電圧などを問題とし、接地導体を形成された磁気コア上に、誘電体及び近接導体を順に形成し、更にその上に被覆導線を巻回することにより、磁気コアと被覆導線とを離し、それによって信頼性を高めたものも提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−102426号公報
【特許文献2】特開2004−311866号公報
【特許文献3】特開2004−235709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁気コアを接地することとすると、例えば、容量値の調整がしづらいなど設計上の自由度が低いという問題がある。また、その構造的特徴故に製造工程において欠陥が生じる恐れがある可能性もある。
【0006】
そこで、本発明は、新たな構造のインダクタンス素子及びそれを用いたノイズフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1のインダクタンス素子として、磁気コアと、被覆導線を巻回してなるコイルと、前記コイルの少なくとも一部に接触又は近接して設けられた誘電体と、前記コイル及び前記誘電体とキャパシタを形成する導電体とを備えたインダクタンス素子において、前記磁気コアと前記導電体とが電気的に絶縁されていることを特徴とするインダクタンス素子が得られる。
【0008】
更に、本発明によれば、第2のインダクタンス素子として、第1のインダクタンス素子において、前記磁気コアと前記導電体との間に、前記コイル及び前記誘電体が介在していることにより、前記磁気コアと前記導電体とは電気的に絶縁されているインダクタンス素子が得られる。
【0009】
更に、本発明によれば、第3のインダクタンス素子として、第1又は第2のインダクタンス素子において、前記誘電体は、所定の肉厚を有し且つ前記コイルの外周を覆うようにして構成された包囲部材からなるインダクタンス素子が得られる。
【0010】
更に、本発明によれば、第4のインダクタンス素子として、第1乃至第3のいずれかのインダクタンス素子において、前記磁気コアは、トロイダルコアであり、当該インダクタンス素子は、該磁気コアの全体を覆う絶縁体を更に備えており、前記被覆導線は、前記磁気コアを前記絶縁体に組み込んでなる組込体に巻回され、前記コイルを構成しており、前記誘電体は、該コイルの外周側部の少なくとも一部を覆っており、前記導電体は、当該誘電体の更に外側に設けられているインダクタンス素子が得られる。
【0011】
更に、本発明によれば、第5のインダクタンス素子として、第1のインダクタンス素子において、前記誘電体は、所定の肉厚を有し、前記コイルは、少なくとも前記磁気コア、前記導電体及び前記誘電体に前記被覆導線を巻回してなるインダクタンス素子が得られる。
【0012】
更に、本発明によれば、第6のインダクタンス素子として、第5のインダクタンス素子において、前記磁気コアは、トロイダルコアであり、当該インダクタンス素子は、該磁気コアの全体を覆う絶縁体を更に備えており、前記導電体は、前記絶縁体の外側に設けられており、前記誘電体は、前記導電体の外側に設けられているインダクタンス素子が得られる。
【0013】
更に、本発明によれば、第7のインダクタンス素子として、第1乃至第6のいずれかのインダクタンス素子において、前記誘電体は、片面または両面に粘着層を備える絶縁シート又は絶縁テープからなるインダクタンス素子が得られる。
【0014】
更に、本発明によれば、第8のインダクタンス素子として、第1乃至第7のいずれかかのインダクタンス素子において、前記誘電体は、シリコーン樹脂シート又はフッ素樹脂シートからなるインダクタンス素子が得られる。
【0015】
更に、本発明によれば、第9のインダクタンス素子として、第1乃至第8のいずれかのインダクタンス素子において、前記導電体は、箔状導体であるインダクタンス素子が得られる。
【0016】
更に、本発明によれば、第10のインダクタンス素子として、第9のインダクタンス素子において、前記箔状導体は、前記誘電体上に、金属メッキ、金属蒸着若しくは金属スパッタリングにより形成されたものであるか、又は、導電性塗料を塗布することにより形成されたものであるインダクタンス素子が得られる。
【0017】
更に、本発明によれば、第11のインダクタンス素子として、第9のインダクタンス素子において、前記箔状導体は、前記誘電体上に、貼り合わされているインダクタンス素子が得られる。
【0018】
更に、本発明によれば、第12のインダクタンス素子として、第1のインダクタンス素子において、前記誘電体は、前記磁気コアと前記導電体とを離間しつつ保持可能な絶縁体モールドであり、前記被覆導線は、前記誘電体上に巻回されているインダクタンス素子が得られる。
【0019】
更に、本発明によれば、第13のインダクタンス素子として、第12のインダクタンス素子において、前記誘電体は、前記導電体を内含すると共に当該導電体から離れた位置に前記磁気コアを収容するコア収容部を有するようにして、形成されているインダクタンス素子が得られる。
【0020】
更に、本発明によれば、第14のインダクタンス素子として、第12又は第13のインダクタンス素子において、前記磁気コアは、トロイダルコアであり、前記誘電体は、トロイダル状の外観を有しており、前記被覆導線は、前記誘電体に巻回され、前記コイルを構成しているインダクタンス素子が得られる。
【0021】
更に、本発明によれば、第15のインダクタンス素子として、第14のインダクタンス素子において、前記導電体は、前記磁気コアよりも前記誘電体の外周側面に近い位置に設けられているインダクタンス素子が得られる。
【0022】
更に、本発明によれば、第16のインダクタンス素子として、第14のインダクタンス素子において、前記導電体は、前記磁気コアよりも前記誘電体の内周側面に近い位置に設けられているインダクタンス素子が得られる。
【0023】
更に、本発明によれば、第17のインダクタンス素子として、第1乃至第16のいずれかのインダクタンス素子において、前記導電体に接続されたグランド端子を更に備えているインダクタンス素子が得られる。
【0024】
更に、本発明によれば、第18のインダクタンス素子として、第1乃至第17のいずれかのインダクタンス素子において、前記磁気コアは、10000以上の透磁率を有するインダクタンス素子が得られる。
【0025】
更に、本発明によれば、第1乃至第18のいずれかのインダクタンス素子を備えたフィルタ回路が得られる
【0026】
更に、本発明によれば、第1のノイズフィルタとして、第1乃至第18のいずれかのインダクタンス素子と、入力端子及び出力端子を有する金属筐体を備えたノイズフィルタであって、前記インダクタンス素子は、前記金属筐体内に配置されており、前記入力端子及び出力端子は、前記被覆導線に接続されているノイズフィルタが得られる。
【0027】
更に、本発明によれば、第2のノイズフィルタとして、第1のノイズフィルタにおいて、前記被覆導線は、第1の被覆導線及び第2の被覆導線からなり、前記金属筐体は、前記入力端子として第1の入力端子及び第2の入力端子を備え、前記出力端子として第1の出力端子及び第2の出力端子を備えており、前記第1の被覆導線は、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子に電気的に接続されており、前記第2の被覆導線は、前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子に電気的に接続されているノイズフィルタが得られる。
【0028】
更に、本発明によれば、第3のノイズフィルタとして、第2のノイズフィルタにおいて、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子の間に電気的に接続されたコンデンサ素子を更に備えたノイズフィルタが得られる。
【0029】
更に、本発明によれば、第4のノイズフィルタとして、第2又は第3のノイズフィルタにおいて、前記金属筐体と前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の夫々との間に電気的に接続されたコンデンサ素子を更に備えたノイズフィルタが得られる。
【0030】
更に、本発明によれば、第5のノイズフィルタとして、第1乃至第4のノイズフィルタにおいて、前記インダクタンス素子は、前記導電体に接続されたグランド端子を更に備えており、該グランド端子は、前記金属筐体に接続されているノイズフィルタが得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、設計上の自由度が高まり、且つ、電気的信頼性の高いインダクタンス素子を得ることができる。
【0032】
更に、本発明によるインダクタンス素子を用いてノイズフィルタを構成することとすると、減衰特性を高周波側まで広帯域化することができる。
【0033】
なお、ノイズフィルタには、ノーマルモードノイズを除去するためのコンデンサ素子(アクロスザラインコンデンサ;Xコン)及びコモンモードノイズを除去するためのコンデンサ素子(ラインバイパスコンデンサ;Yコン)を備えるものがある。ここで、ノーマルモードノイズとは、ノイズフィルタの入力線間に発生するノイズを示す。一方、コモンモードノイズとは、ノイズフィルタの入力線間とは別な基準電位との間に発生するノイズを示す。
【0034】
本発明のインダクタンス素子を使用したノイズフィルタを用いた場合、Yコンを省略したとしてもノイズの除去を好適化することができる。即ち、本発明によれば、Yコンに起因した漏洩電流を低減しつつ所望とする減衰特性を得ることができる。
【0035】
また、導電体により十分な容量を有するキャパシタをインダクタに対して負荷することができることから、インダクタンス素子単独でもフィルタを構成することができる。なお、このことは、本発明によるインダクタンス素子とキャパシタとを組み合わせてフィルタを構成することを制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。以下に説明する実施の形態におけるインダクタンス素子は、コモンモード用のものであり、被覆導線を2本備えて構成したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、被覆導線を1本のみ用いたノーマルモード用のインダクタンス素子にも適用可能である。
【0037】
(第1の実施の形態)
図1乃至図3に示されるように、本発明の第1の実施の形態によるインダクタンス素子14aは、トロイダル形状の磁気コア15aと、磁気コア15aの全体を覆う絶縁性ケース16aと、絶縁性ケース16aに磁気コア15aを組み込んでなる組込体に被覆導線17,18を巻回して形成したコイルと、コイルの外周部を覆うリング状の誘電体22と、誘電体22をコイル(被覆導線17,18)と挟むことでコイル(被覆導線17,18)及び誘電体22とキャパシタを形成する箔状導体23aと、箔状導体23aから引き出されたグランド端子21を備えている。図1から明らかなように、本実施の形態においては、磁気コア15aと箔状導体23aとの間に、絶縁性ケース16a、コイル(被覆導線17,18)及び誘電体22が介在していることにより、磁気コア15aと箔状導体23aとは電気的に絶縁されている。
【0038】
本実施の形態における磁気コア15aは、10000程度の初期透磁率を有している。一般的な磁性材料の初期透磁率は約5000程度であるので、本実施の形態において使用した磁性材料の透磁率はその約2倍である。このように、高透磁率材料を用いると、減衰特性を劣化させることなく体積を小さくすることができる。なお、小型化を主目的としない場合には一般的な磁性材料を用いても良い。
【0039】
被覆導線17,18は、例えば、ウレタン線又はエナメル線からなる。尚、被覆導線17,18のリード部分は、実際には図3に示されるように等間隔に引き出されるものであるが、図1においては、理解を容易にするために幾分間隔をずらして示してある。
【0040】
本実施の形態における誘電体22は、図示されたように、所定の肉厚を有するリング状のものであるが、例えば、一部切り離されたC字状のものや他の形状であってもよく。また、より薄い絶縁シートや絶縁テープを用いて構成することとしても良い。絶縁シートの場合、コイル外周側面部への接着用としてシートの片面に粘着層を設けることとしても良いし、製造時に、絶縁シートを接着剤でコイル外周側面に貼付することとしても良い。
【0041】
本実施の形態における箔状導体23aは、誘電体22の外周面上の一部に銅をスパッタリングすることにより形成されたものである。箔状導体23aは、銅箔に代えて、例えば、アルミニウム箔、銀箔若しくは金箔のいずれか、又はそれらの金属を含む合金箔であっても良い。箔状導体23aは、スパッタリングに代えて、金属メッキ若しくは金属蒸着により形成されても良いし、導電性塗料を誘電体22上に塗布することにより形成することとしても良い。加えて、別途形成された箔状導体23aを誘電体22上に貼付することとしても良い。箔状導体23aは、外周面上の一部のみならず、外周面上の全部を覆うこととしても良い。被覆導線17,18と十分容量の大きいキャパシタを形成しうるのであれば、箔状導体23aに代えて、他の形状の導電体を用いても良い。
【0042】
なお、箔状導体23aにより被覆導線17,18を覆う個所や面積等は、被覆導線17,18の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁気コア15aの大きさ,材料特性等により適宜変更することが可能である。
【0043】
本実施の形態におけるグランド端子21は、図1乃至図3に示されるように、被覆導線17,18のリード部分のいずれからも同一距離となる部分に一つのみ設けてあるが、例えば、図4に示されるように、2つ設けることとしても良いし、それらグランド端子21間の間隔を被覆導線17,18よりも大きくすることとしても良い。
【0044】
かかる構成を備えるインダクタンス素子14aについてグランド端子21を接地して用いると、高周波数帯域においても減衰特性が劣化することなく、比較的広い周波数範囲に亘って良好な減衰特性を得ることができる。
【0045】
特に、本実施の形態においては、箔状導体23aは、トロイダル状の磁気コア15aよりも径方向外側に設けられている。このため、磁気コア15aの外周よりも箔状導体23aの面積を大きくとることができ、従って、磁気コア15aを直に接地する従来技術と比較して、被覆導体17,18に付加するキャパシタの容量を大きくとることができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
図5乃至図7に示されるように、本発明の第2の実施の形態によるインダクタンス素子14a’は、前述の第1の実施の形態によるインダクタンス素子14aの変形例であり、従って、以下においては両者の異なる部分のみについて説明し、第1の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図5乃至図7において、図1乃至図3で用いた参照符号と同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
【0047】
図5乃至図7に示されるように、本実施の形態におけるインダクタンス素子14a’は、2つに分割された箔状導体23b、23b’を備えており、夫々、被覆導線17及び被覆導線18に対応するように設けられている。このように、箔状導体23b、23b’を2つに分割した結果、グランド端子21も一対設けられている。
【0048】
(第3の実施の形態)
図8乃至図10に示されるように、本発明の第3の実施の形態によるインダクタンス素子14a”もまた、前述の第1の実施の形態によるインダクタンス素子14aの変形例であり、従って、以下においては両者の異なる部分のみについて説明し、第1の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図8乃至図10において、図1乃至図3で用いた参照符号と同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
【0049】
図8乃至図10に示されるように、本実施の形態におけるインダクタンス素子14a”は、誘電体22のうち被覆導線17,18のリード部分近傍を除く部分を覆うようにして設けられた箔状導体23cを備えている。加えて、グランド端子21も一対設けられている。
【0050】
(第4の実施の形態)
図11乃至図13に示されるように、本発明の第4の実施の形態によるインダクタンス素子14bは、トロイダル形状の磁気コア15bと、磁気コア15bの全体を覆う絶縁性ケース16bと、絶縁ケース16bの外側に設けられたC字状の箔状導体23dと、箔状導体23dの外側に設けられた誘電体22と、誘電体22に設けられた孔を通じて箔状導体23dから引き出されたグランド端子21と、コイル(被覆導線17、18)とを備えている。本実施の形態における被覆導線17、18は、夫々、磁気コア15b、絶縁ケース16b、箔状導体23d、誘電体22に巻回してコイルを形成している。なお、以下においては、第1の実施の形態と異なる部分のみについて説明し、第1の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図11乃至図13おいて、図1乃至図3で用いた参照符合と同一の参照符号又は類する参照符号を付し、説明を省略することとする。
【0051】
本実施の形態においては、箔状導体23dとコイル(被覆導線17、18)との間に誘電体22が介在することによりキャパシタが形成される一方、図11から明らかなように、磁気コア15bと箔状導体23dとの間に絶縁性ケース16bが設けられていることにより電気的に絶縁されている。
【0052】
本実施の形態におけるグランド端子21は、図11乃至図13に示されるように、被覆導線17、18のリード部分のいずれからも同一の距離となる部分に一つのみ設けてあるが、例えば、図14に示されるように、2つ設けることとしても良いし、それらグランド端子21間の間隔を被覆導線17、18よりも大きくすることとしてもよい。
【0053】
(第5の実施の形態)
図15乃至図18に示されるように、本発明の第5の実施の形態によるインダクタンス素子14cは、トロイダル形状の磁気コア15cと、C字状を有する薄板状導体24aと、トロイダル状の外観を有し且つ磁気コア15cと薄板状導体24aとを離間しつつ保持する絶縁体モールドで構成された誘電体16cと、誘電体16cに被覆導線17,18を巻回してなるコイルと、誘電体16cに設けられた孔を通じて薄板状導体24aから引き出されたグランド端子21を備えている。なお、以下においては第1の実施の形態と異なる部分のみについて説明し、第1の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図15乃至図18において、図1乃至図3で用いた参照符号と同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
【0054】
本実施の形態においては、薄板状導体24aとコイル(被覆導線17,18)との間に誘電体16cが介在することによりキャパシタが形成される一方、図15及び図18から明らかなように、磁気コア15cと薄板状導体24aとの間も誘電体16cにより電気的に絶縁されている。
【0055】
本実施の形態における誘電体16cは、図18に示されるように、主部16c1と蓋部16c2とからなる。主部16c1の外周側面16c4よりにはモールド形成時に埋め込まれた薄板状導体24aが保持されており、主部16c1の内周側面16c5よりにはコア収容部16c3を構成するドーナツ状の凹部が形成されている。このことから明らかなように、本実施の形態においては、薄板状導体24aは、磁気コア15cよりも誘電体16cの外周側面16c4に近い位置に設けられている。このため、薄板状導体24aの面積を大きくとることができ、従って、被覆導体17,18に付加するキャパシタの容量を大きくとることができる。なお、薄板状導体24aを被覆導線17,18と対向させる個所や面積等は、被覆導線17,18の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁気コア15cの大きさ,材料特性等により適宜変更することができる。
【0056】
本実施の形態におけるグランド端子21は、図15乃至図17に示されるように、被覆導線17,18のリード部分のいずれからも同一距離となる部分に一つのみ設けてあるが、第1の実施の形態の場合と同様に、例えば、図4に示されるように、2つ設けることとしても良いし、それらグランド端子21間の間隔を被覆導線17,18よりも大きくすることとしても良い。
【0057】
(第6の実施の形態)
図19乃至図22に示されるように、本発明の第6の実施の形態によるインダクタンス素子14c’は、前述の第5の実施の形態によるインダクタンス素子14cの変形例であり、従って、以下においては両者の異なる部分のみについて説明し、第5の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図19乃至図22において、図15乃至図18で用いた参照符号と同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
【0058】
図19乃至図21に示されるように、本実施の形態におけるインダクタンス素子14c’は、2つに分割された薄板状導体24b、24b’を備えており、夫々、被覆導線17及び被覆導線18に対応するように設けられている。このように、薄板状導体24b、24b’を2つに分割した結果、グランド端子21も一対設けられている。
【0059】
本実施の形態における誘電体16c’は、図22に示されるように、主部16c’1と蓋部16c’2とからなる。主部16c’1の外周側面16c’4よりにはモールド形成時に埋め込まれた薄板状導体24b、24b’が保持されており、主部16c’の内周側面16c’5よりにはコア収容部16c’3を構成するドーナツ状の凹部が形成されている。このことから明らかなように、本実施の形態においては、薄板状導体24b、24b’は、磁気コア15cよりも誘電体16c’の外周側面16c’4に近い位置に設けられている。
【0060】
(第7の実施の形態)
図23乃至図26に示されるように、本発明の第7の実施の形態によるインダクタンス素子14c”もまた、前述の第5の実施の形態によるインダクタンス素子14cの変形例であり、従って、以下においては両者の異なる部分のみについて説明し、第5の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図23乃至図26において、図15乃至図18で用いた参照符号と同一の参照符号を付し、説明を省略することとする。
【0061】
図23乃至図25に示されるように、本実施の形態におけるインダクタンス素子14c”は、被覆導線17,18のリード部側に開いたC字状断面を有する薄板状導体24cを備えている。加えて、グランド端子21も一対設けられている。
【0062】
本実施の形態における誘電体16c”は、図26に示されるように、主部16c”1と蓋部16c”2とからなる。主部16c”1の外周側面16c”4よりにはモールド形成時に埋め込まれた薄板状導体24cが保持されており、主部16c”の内周側面16c”5よりにはコア収容部16c”3を構成するドーナツ状の凹部が形成されている。このことから明らかなように、本実施の形態においても、薄板状導体24cは、磁気コア15cよりも誘電体16c”の外周側面16c”4に近い位置に設けられている。
【0063】
(第8の実施の形態)
図27乃至図30に示されるように、本発明の第8の実施の形態によるインダクタンス素子14dは、トロイダル形状の磁気コア15dと、C字状を有する薄板状導体25aと、トロイダル状の外観を有し且つ磁気コア15dと薄板状導体25aとを離間しつつ保持する絶縁体モールドで構成された誘電体16dと、誘電体16dに被覆導線17,18を巻回してなるコイルと、誘電体16dに設けられた孔を通じて薄板状導体25aと電気的に接続されたグランド端子21を備えている。なお、以下においては第5の実施の形態と異なる部分のみについて説明し、第5の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図27乃至図30において、図15乃至図18で用いた参照符号と同一の参照符号又は類する参照符号を付し、説明を省略することとする。
【0064】
本実施の形態においては、薄板状導体25aとコイル(被覆導線17,18)との間に誘電体16dが介在することによりキャパシタが形成される一方、図27及び図29から明らかなように、磁気コア15dと薄板状導体25aとの間も誘電体16dにより電気的に絶縁されている。
【0065】
本実施の形態における誘電体16dは、図30に示されるように、主部16d1と蓋部16d2とからなる。主部16d1の内周側面16d5よりにはモールド形成時に埋め込まれた薄板状導体25aが保持されており、主部16d1の外周側面16d4よりにはコア収容部16d3を構成するドーナツ状の凹部が形成されている。このことから明らかなように、本実施の形態においては、薄板状導体25aは、磁気コア15dよりも誘電体16dの内周側面16d5に近い位置に設けられている。
【0066】
(第9の実施の形態)
図31及び図32に示されるように、本発明の第9の実施の形態は、第1の実施の形態におけるインダクタンス素子14aを備えるノイズフィルタに関するものである。図31又は図32において、第1の実施の形態によるインダクタンス素子と同一構成を有する構成要素については、図1又は図2で用いた参照符号と同一の参照符号を付し、以下においては、それら構成要素についての説明を省略することとする。
【0067】
図31に示されるとおり、本実施の形態におけるノイズフィルタは、インダクタンス素子14aと、金属筐体31と、ノーマルモードノイズを除去するためのコンデンサ素子32とから構成されている。金属筐体31は、入力端子33、34及びアース端子35を有する商用電源入力ソケット36と、出力端子37、38と、外部接地用端子39を備えている。本実施の形態において、被覆導線17は、入力端子33及び出力端子37に電気的に接続されており、被覆導線18は、入力端子34及び出力端子38に電気的に接続されている。グランド端子21は金属筐体31に電気的に接続されている。コンデンサ素子32は、入力端子33及び入力端子34の間に電気的に接続されている。また、図32に示されるとおり、アース端子35は、金属筐体31に電気的に接続されており、金属筐体31は、外部接地用端子39により接地される。
【0068】
図33から理解されるとおり、本実施の形態におけるノイズフィルタ30は、従来のインダクタンス素子を備えたノイズフィルタよりも10kHz〜20MHzの広周波帯域において優れた減衰特性を示している。これは、グランド端子21を接地接続することで被覆導線17及び被覆導線18間に発生する線間容量の一部がキャンセルされることに起因していると考えられる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態によれば、Yコンを省略することでYコンからの漏洩電流を低減しつつ、上述のような優れた減衰特性を得ることができる。
【0070】
以上、本実施の形態として、第1の実施の形態におけるインダクタンス素子14aを備えるノイズフィルタ30について説明したが、インダクタンス素子14aに代えて第2乃至第8いずれかの実施の形態におけるインダクタンス素子を用いることとしてもよい。また、第1乃至第8の実施の形態のインダクタンス素子のようなトロイダル形状の磁性体コアを有するものに代えて、磁性体コアを装着可能な絶縁性ボビンを用い、その絶縁性ボビンへ被覆導線を巻回してなるような構造を有するインダクタンス素子を用いることも可能である。
【0071】
上述したノイズフィルタは、Yコンを有しないものであったが、出力端子36、37と金属筐体31との間に接続されたYコンを更に備えた構成としてもよいし、Xコンを省略し、Yコンのみを備えた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図2】図1に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図3】図1に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図4】図3に示されるインダクタンス素子の変形例を示す底面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図6】図5に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図7】図5に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図9】図8に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図10】図8に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図12】図11に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図13】図11に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図14】図11に示されるインダクタンス素子の変形例を示す底面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図16】図15に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図17】図15に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図18】図15に示されるインダクタンス素子に含まれる誘電体及び薄板状導体を示す断面図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図20】図19に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図21】図19に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図22】図19に示されるインダクタンス素子に含まれる誘電体及び薄板状導体を示す断面図である。
【図23】本発明の第7の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図24】図23に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図25】図23に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図26】図23に示されるインダクタンス素子に含まれる誘電体及び薄板状導体を示す断面図である。
【図27】本発明の第8の実施の形態に係るコモンモード用インダクタンス素子を示す平面図である。
【図28】図27に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図29】図27に示されるインダクタンス素子の底面図である。
【図30】図27に示されるインダクタンス素子に含まれる誘電体及び薄板状導体を示す断面図である。
【図31】本発明の第9の実施の形態に係るノイズフィルタを示す平面図である。
【図32】図31に示されるノイズフィルタの側面図である。
【図33】従来のノイズフィルタと本発明のノイズフィルタにおける高周波特性を表すグラフである。
【符号の説明】
【0073】
14a,14a’,14a”,14b,14c,14c’,14c”,14d インダクタンス素子
15a〜15d 磁気コア
16a,16b 絶縁性ケース
16c,16d 誘電体
17,18 被覆導線
21 グランド端子
22 誘電体
23a,23b,23b’,23c,23d 箔状導体
24a,24b,24b’,24c,25a 薄板状導体
30 ノイズフィルタ
31 金属筐体
32 コンデンサ素子
33,34 入力端子
35 アース端子
36 商用電源入力ソケット
37,38 出力端子
39 外部接地端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気コアと、被覆導線を巻回してなるコイルと、前記コイルの少なくとも一部に接触又は近接して設けられた誘電体と、前記コイル及び前記誘電体とキャパシタを形成する導電体とを備えたインダクタンス素子において、
前記磁気コアと前記導電体とは電気的に絶縁されている
ことを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項2】
前記磁気コアと前記導電体との間に、前記コイル及び前記誘電体が介在していることにより、前記磁気コアと前記導電体とは電気的に絶縁されている、請求項1記載のインダクタンス素子。
【請求項3】
前記誘電体は、所定の肉厚を有し且つ前記コイルの外周を覆うようにして構成された包囲部材からなる、請求項1又は請求項2記載のインダクタンス素子。
【請求項4】
前記磁気コアは、トロイダルコアであり、
当該インダクタンス素子は、該磁気コアの全体を覆う絶縁体を更に備えており、
前記被覆導線は、前記磁気コアを前記絶縁体に組み込んでなる組込体に巻回され、前記コイルを構成しており、
前記誘電体は、該コイルの外周側部の少なくとも一部を覆っており、
前記導電体は、当該誘電体の更に外側に設けられている
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項5】
前記誘電体は、所定の肉厚を有し、
前記コイルは、少なくとも前記磁気コア、前記導電体及び前記誘電体に前記被覆導線を巻回してなる
請求項1記載のインダクタンス素子。
【請求項6】
前記磁気コアは、トロイダルコアであり、
当該インダクタンス素子は、該磁気コアの全体を覆う絶縁体を更に備えており、
前記導電体は、前記絶縁体の外側に設けられており、
前記誘電体は、前記導電体の外側に設けられている
請求項5記載のインダクタンス素子。
【請求項7】
前記誘電体は、片面または両面に粘着層を備える絶縁シート又は絶縁テープからなる、請求項1乃至請求項6いずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項8】
前記誘電体は、シリコーン樹脂シート又はフッ素樹脂シートからなる、請求項1乃至請求項7いずれか記載のインダクタンス素子。
【請求項9】
前記導電体は、箔状導体である、請求項1乃至請求項8いずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項10】
前記箔状導体は、前記誘電体上に、金属メッキ、金属蒸着若しくは金属スパッタリングにより形成されたものであるか、又は、導電性塗料を塗布することにより形成されたものである、請求項9記載のインダクタンス素子。
【請求項11】
前記箔状導体は、前記誘電体上に、貼り合わされている、請求項9記載のインダクタンス素子。
【請求項12】
前記誘電体は、前記磁気コアと前記導電体とを離間しつつ保持可能な絶縁体モールドであり、前記被覆導線は、前記誘電体上に巻回されている、請求項1記載のインダクタンス素子。
【請求項13】
前記誘電体は、前記導電体を内含すると共に当該導電体から離れた位置に前記磁気コアを収容するコア収容部を有するようにして、形成されている、請求項12記載のインダクタンス素子。
【請求項14】
前記磁気コアは、トロイダルコアであり、
前記誘電体は、トロイダル状の外観を有しており、
前記被覆導線は、前記誘電体に巻回され、前記コイルを構成している
請求項12又は請求項13記載のインダクタンス素子。
【請求項15】
前記導電体は、前記磁気コアよりも前記誘電体の外周側面に近い位置に設けられている
請求項14記載のインダクタンス素子。
【請求項16】
前記導電体は、前記磁気コアよりも前記誘電体の内周側面に近い位置に設けられている
請求項14記載のインダクタンス素子。
【請求項17】
前記導電体に接続されたグランド端子を更に備えている、請求項1乃至請求項16のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項18】
前記磁気コアは、10000以上の透磁率を有する、請求項1乃至請求項17のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれかに記載のインダクタンス素子を備えたフィルタ回路。
【請求項20】
請求項1乃至請求項18のいずれかに記載のインダクタンス素子と、入力端子及び出力端子を有する金属筐体を備えたノイズフィルタであって、
前記インダクタンス素子は、前記金属筐体内に配置されており、
前記入力端子及び出力端子は、前記被覆導線に接続されている
ノイズフィルタ。
【請求項21】
前記被覆導線は、第1の被覆導線及び第2の被覆導線からなり、
前記金属筐体は、前記入力端子として第1の入力端子及び第2の入力端子を備え、前記出力端子として第1の出力端子及び第2の出力端子を備えており、
前記第1の被覆導線は、前記第1の入力端子及び前記第1の出力端子に電気的に接続されており、
前記第2の被覆導線は、前記第2の入力端子及び前記第2の出力端子に電気的に接続されている
請求項20に記載のノイズフィルタ。
【請求項22】
前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子の間に電気的に接続されたコンデンサ素子を更に備えた、請求項21に記載のノイズフィルタ。
【請求項23】
前記金属筐体と前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の夫々との間に電気的に接続されたコンデンサ素子を更に備えた、請求項21又は請求項22に記載のノイズフィルタ。
【請求項24】
前記インダクタンス素子は、前記導電体に接続されたグランド端子を更に備えており、
該グランド端子は、前記金属筐体に接続されている
請求項21乃至請求項23のいずれかに記載のノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2008−118101(P2008−118101A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192344(P2007−192344)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】