説明

インダクタ部品

【課題】信号の反射成分を抑制することのできるインダクタ部品を提供する。
【解決手段】信号系の回路に挿入されるインダクタ部品であって、インダクタを構成する導体である巻線30は、回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含む。インダクタを構成する導体である巻線30が、回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含んでいるため、インダクタには抵抗成分が分布定数的に配置されることとなり、信号の反射成分を抑制することが可能となる。また、導体幅や長さなどを調整しなくとも特性インピーダンスを調整することができ、あるいは最小限の導体幅や長さなどの調整で特性インピーダンスの調整を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品として、信号系の回路に挿入されるインダクタ部品であって、巻芯を有するドラム型フェライトコアと、当該ドラム型フェライトコアの巻芯に巻回されることによってインダクタを構成する巻線とを備え、巻線の端部をドラム型フェライトコアの角鍔の電極に熱圧着接合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された巻線は、インダクタ部品の前後の回路パターンにおける導体と同材料によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−253394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなインダクタ部品を信号系の回路に組み込む場合、インダクタ部品の前後に抵抗器を接続して配置される。このとき、抵抗器及びインダクタ部品に信号を流すと、導体を伝わる信号が反射し、信号の減衰が生じるおそれがある。また、反射によって不要な輻射が生じ、ノイズの原因となってしまうおそれもある。従って、信号の反射成分を抑制することが求められていた。
【0005】
本発明は、信号の反射成分を抑制することのできるインダクタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、抵抗器とインダクタ部品とを接続することに変えて、インダクタ部品のインダクタを構成する導体自体に高い抵抗値を持たせることによって、信号の反射成分を抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るインダクタ部品は、信号系の回路に挿入されるインダクタ部品であって、インダクタを構成する導体は、回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るインダクタ部品によれば、インダクタを構成する導体が、信号系の回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含んでいるため、インダクタには抵抗成分が分布定数的に配置されることとなり、信号の反射成分を抑制することが可能となる。また、導体材料を選択して導体の抵抗値を調整することにより、導体幅や導体長さなどの構造的な調整をしなくとも特性インピーダンスを調整することができる。また、導体の長さを短くし、導体材料を選択して導体の抵抗値を高くして特性インピーダンスの調整を行うことにより、所望の特性インピーダンスを得ると同時に部品の小型化を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係るインダクタ部品において、インダクタを構成する導体は、互いに磁気結合した二つの巻線から構成されていることが好ましい。これによって、インダクタ部品はコモンモードフィルタとして機能することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号の反射成分を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係るインダクタ部品の斜視図である。
【図2】第2実施形態に係るインダクタ部品の斜視図である。
【図3】第3実施形態に係るインダクタ部品の斜視図である。
【図4】第3実施形態に係るインダクタ部品に含まれる素子を示す分解斜視図である。
【図5】TDR法による測定環境を説明するための図である。
【図6】TDR法による測定方法を説明するための図である。
【図7】測定対象となるインダクタンス部品の等価回路を示す図である。
【図8】TDR法による測定結果を示す線図である。
【図9】本実施形態に係るインダクタ部品の実装構造を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係るインダクタ部品1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係るインダクタ部品の斜視図である。
【0014】
インダクタ部品1は、図1に示されるように、コア10と、電極部20,21と、巻線(インダクタを構成する導体)30と、を備えている。本発明のインダクタ部品は、信号系の回路に挿入されるものであり、例えば電源系の回路に適用される大型のインダクタ部品とは異っている。
【0015】
コア10は、磁性体(例えば、フェライト等)又は非磁性体(例えば、セラミック等)からなる。コア10は、いわゆるドラムコアであって、巻芯部12と、当該巻芯部12の軸方向の両端に形成された一対の鍔部13,14とを有している。巻芯部12は、四角柱形状を呈している。各鍔部13,14は、直方体形状を呈している。巻芯部12と鍔部13,14とは、一体的に形成されている。コア10は、その巻芯部12の軸心方向に平行な断面での形状がH字状を呈している。
【0016】
電極部20は鍔部13に位置し、電極部21は鍔部14に位置している。電極部20,21は、鍔部13,14の側面に金属材料(例えば、銀等)を主成分とする導電ペーストを転写した後に所定温度(例えば、700℃程度)にて焼き付け、更に金属めっきを施すことにより、形成される。金属めっきには、NiとSn、CuとNiとSn、NiとAu、NiとPdとAu、NiとPdとAg、又は、NiとAg等を用いることができる。電極部20,21は、金属製の板材を鍔部13,14の対応する位置に装着することにより構成してもよい。金属製の板材には、例えば金属めっき(NiとSn)を施した燐青銅等を用いることができる。また、電極部20,21は、鍔部13,14にめっき法により直接形成してもよい。
【0017】
巻線30は、高い抵抗値を有する導体線からなり、巻芯部12に3ターン以上巻回された巻回部32と、巻回部32の両端32a,32bに位置する引き出し部34,35と、を含んでいる。図1では、巻線30の絶縁被膜の図示は省略しており、導体としての芯線を図示している。巻線30が高い抵抗値を有する導体線からなることによって、インダクタにおいて、抵抗成分が分布定数的に配置される構成となる。
【0018】
高い抵抗値とは、インダクタ部品1が組み込まれる信号系の回路における導体よりも高い抵抗値である。信号系の回路における導体には、例えば、Cuが用いられ、抵抗値は17nΩ・m程度である。高い抵抗値を有する巻線30の導体材料は、具体的には、銅ニッケル合金、鉄、銅マンガン合金、銅マンガンニッケル合金、ニクロム合金、鉄・クロム・アルミニウム合金、鉄ニッケル合金、ステンレス、パラジウム系材料、亜鉛系材料、ケイ素系材料、ルテニウム系材料等の一般的な抵抗器に使用される材料である。これらの材料の抵抗値は、具体的には28nΩ・m〜6700nΩ・m程度である。
【0019】
巻回部32と引き出し部34,35とは連続しており、引き出し部34は巻回部32の端32a,32bに接続されることとなる。引き出し部34は、その端が電極部20に継線されることにより、電極部20に物理的且つ電気的に接続されている。引き出し部35は、その端が電極部21に継線されることにより、電極部21に物理的且つ電気的に接続されている。これらにより、引き出し部34,35は、巻回部32と電極部20,21とを接続する。引き出し部34と電極部20,21との接続(継線)は、熱圧着、溶接、あるいは、半田付け等により行われる。
【0020】
以上のように、本実施形態においては、インダクタを構成する導体である巻線30が、信号系の回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含んでいるため、インダクタには抵抗成分が分布定数的に配置されることとなり、信号の反射成分を抑制することが可能となる。また、導体材料を選択して巻線30の抵抗値を調整することにより、導体幅や導体長さなどの構造的な調整をしなくとも特性インピーダンスを調整することができる。また、巻線30の長さを短くし、導体材料を選択して巻線30の抵抗値を高くして特性インピーダンスの調整を行うことにより、所望の特性インピーダンスを得ると同時に部品の小型化を図ることができる。
【0021】
(第2実施形態)
図2を参照して、第2実施形態に係るインダクタ部品2の構成を説明する。図2は、第2実施形態に係るインダクタ部品の斜視図である。
【0022】
インダクタ部品2は、図2に示されるように、コア10と、電極部23〜26と、2本の巻線40,45と、を備えている。インダクタ部品2は、いわゆるコモンモードチョークコイルを構成している。
【0023】
電極部23,24は鍔部13に位置し、電極部25,26は鍔部14に位置している。電極部23〜26は、第1実施形態における電極部20,21と同様に形成される。
【0024】
巻線40,45は、第1実施形態における巻線30と同じく高い抵抗値を有する導体線からなる。図2では、巻線40,45の絶縁被膜の図示は省略しており、導体としての芯線を図示している。インダクタ部品2が組み込まれる回路における導体には、例えば、Cuが用いられ、抵抗値は17nΩ・m程度である。高い抵抗値を有する巻線40,45の導体材料は、具体的には、銅ニッケル合金、鉄、銅マンガン合金、銅マンガンニッケル合金、ニクロム合金、鉄・クロム・アルミニウム合金、鉄ニッケル合金、ステンレス、パラジウム系材料、亜鉛系材料、ケイ素系材料、ルテニウム系材料等の一般的な抵抗器に使用される材料である。これらの材料の抵抗値は、具体的には28nΩ・m〜6700nΩ・m程度である。
【0025】
巻線40,45は、巻芯部12に3ターン以上巻回された巻回部42,47と、巻回部42,47の両端42a,42b,47a,47bに位置する引き出し部44a,44b,49a,49bと、を含んでいる。巻回部42,47と引き出し部44a,44b,49a,49bとは連続しており、引き出し部44a,44b,49a,49bは巻回部42,47の端42a,42b,47a,47bに接続されることとなる。
【0026】
引き出し部44a,44b,49a,49bは、電極部23〜26にも接続されている。引き出し部44aは、その端が電極部23に継線されることにより、電極部23に物理的且つ電気的に接続されている。引き出し部44bは、その端が電極部25に継線されることにより、電極部25に物理的且つ電気的に接続されている。これらにより、引き出し部44a,44bは、巻回部42と電極部23,25とを接続する。引き出し部49aは、その端が電極部24に継線されることにより、電極部24に物理的且つ電気的に接続されている。引き出し部49bは、その端が電極部26に継線されることにより、電極部26に物理的且つ電気的に接続されている。これらにより、引き出し部49a,49bは、巻回部47と電極部24,26とを接続する。引き出し部44a,44b,49a,49bと電極部23〜26との接続(継線)は、熱圧着、溶接、あるいは、半田付け等により行われる。
【0027】
以上のように、本実施形態においては、インダクタを構成する導体である巻線40,45が、回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含んでいるため、インダクタには抵抗成分が分布定数的に配置されることとなり、信号の反射成分を抑制することが可能となる。また、導体材料を選択して巻線40,45の抵抗値を調整することにより、導体幅や導体長さなどの構造的な調整をしなくとも特性インピーダンスを調整することができる。また、巻線40,45の長さを短くし、導体材料を選択して巻線40,45の抵抗値を高くして特性インピーダンスの調整を行うことにより、所望の特性インピーダンスを得ると同時に部品の小型化を図ることができる。
【0028】
(第3実施形態)
図3及び図4を参照して、第3実施形態に係るインダクタ部品3の構成を説明する。図3は、第3実施形態に係るインダクタ部品の斜視図である。図4は、第3実施形態に係るインダクタ部品に含まれる素子を示す分解斜視図である。
【0029】
インダクタ部品3は、図3に示されるように、直方体形状の素子50と、一対の電極部60,62とを備えている。インダクタ部品3は、いわゆる積層型インダクタを構成している。
【0030】
素子50は、図4に示されるように、コイル部70と、外装部80とを有している。コイル部70は、コイル状導体71と、当該コイル状導体71の両端に位置する引き出し導体73,74を含んでいる。外装部80は、積層される複数の絶縁体層81〜86を含んでいる。各絶縁体層81〜86は、例えば、磁性体(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト等)を含むセラミックグリーンシートの焼結体、又は、非磁性体(例えば、Cu−Zn系フェライト)等の非磁性体を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。なお、実際のインダクタ部品3では、各絶縁体層81〜86は、互いの間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0031】
各電極部60,62は、素子50の外側面に配置されている。各電極部60,62は、例えば導電性金属粉末及びガラスフリットを含む導電性ペーストを素子50の外表面の付与し、焼き付けることによって形成される。必要に応じて、焼き付けにより形成された電極部分上にめっき層が形成されることもある。
【0032】
コイル状導体71は、絶縁体層81〜85に形成された導体パターン71a〜71eにより構成される。また、引き出し導体73は、絶縁体層81,85に形成された導体パターン73aにより構成される。本実施形態においては、導体パターン71aと導体パターン73aとが一体に連続して形成され、導体パターン71eと導体パターン73aとが一体に連続して形成されている。
【0033】
導体パターン71a〜71e,73aは、第1実施形態における巻線30と同じく高い抵抗値を有する導体材料からなる。インダクタ部品3が組み込まれる回路における導体には、例えば、Cuが用いられ、抵抗値は17nΩ・m程度である。高い抵抗値を有する導体パターン71a〜71e,73aの導体材料は、具体的には、銅ニッケル合金、鉄、銅マンガン合金、銅マンガンニッケル合金、ニクロム合金、鉄・クロム・アルミニウム合金、鉄ニッケル合金、ステンレス、パラジウム系材料、亜鉛系材料、ケイ素系材料、ルテニウム系材料等の一般的な抵抗器に使用される材料である。これらの材料の抵抗値は、具体的には28nΩ・m〜6700nΩ・m程度である。導体パターン71a〜71e,73aは、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0034】
導体パターン71aは、コイル状導体71の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層81上で略L字状に伸びている。導体パターン71bは、コイル状導体71の略3/4ターン分に相当し、絶縁体層82上で略U字状に伸びている。導体パターン71cは、コイル状導体71の略3/4ターン分に相当し、絶縁体層83上で略C字状に伸びている。導体パターン71dは、コイル状導体71の略3/4ターン分に相当し、絶縁体層84上で略U字状に伸びている。導体パターン71eは、コイル状導体71の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層85上で略L字状に伸びている。導体パターン71a〜71eは、絶縁体層81〜86の積層方向に併置されることとなる。
【0035】
導体パターン71a〜71eは、その端部同士が絶縁体層81〜84,86にそれぞれ形成された貫通電極75a〜75dにより電気的に接続される。導体パターン71a〜71eは、絶縁体層81〜86の積層方向に隣り合う導体パターン71a〜71e同士が相互に電気的に接続されることで、コイル状導体71を構成することとなり、コイル状導体71では、導体が3ターン以上巻回されることとなる。
【0036】
引き出し導体73aは、絶縁体層81上で、導体パターン71aの一端から連続して略I字状に伸びている。導体パターン73aの一端は、素子50の外表面に露出している。導体パターン73aは、電極部60に物理的且つ電気的に接続される。また、導体パターン73aは、絶縁体層85上で、導体パターン71eの他端から連続して略I字状に伸びている。導体パターン73aの他端は、素子50の外表面に露出している。導体パターン73aは、電極部62に物理的且つ電気的に接続される。
【0037】
以上のように、本実施形態においては、インダクタを構成する導体である導体パターン71a〜71e,73aが、回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含んでいるため、インダクタには抵抗成分が分布定数的に配置されることとなり、信号の反射成分を抑制することが可能となる。また、導体材料を選択して導体パターン71a〜71e,73aの抵抗値を調整することにより、導体幅や導体長さなどの構造的な調整をしなくとも特性インピーダンスを調整することができる。また、導体パターン71a〜71e,73aの長さを短くし、導体材料を選択して導体パターン71a〜71e,73aの抵抗値を高くして特性インピーダンスの調整を行うことにより、所望の特性インピーダンスを得ると同時に部品の小型化を図ることができる。
【0038】
続いて、本実施形態によって、信号の反射成分を抑制できることを、具体的に示す。ここでは、インダクタ部品のインピーダンスをTDR(Time Domain Reflectometry)法により測定する。TDR法とは、伝送線路にステップパルスを送出し、その特性インピーダンスの不連続箇所にて反射されたパルスを測定することにより、伝送線路の特性インピーダンスを計測する測定法である。
【0039】
まず、図5に基づいて、TDR法による測定環境を説明する。図5に示される各測定環境では、高速オシロスコープ90とレシーバIC92とが、伝送路94を介して接続されている。伝送路94は、ケーブル96とインダクタ部品98とを有している。高速オシロスコープ90は、TDRモジュール91を有している。高速オシロスコープ90は、TDRモジュール91を通してケーブル96と接続され、ケーブル96の他端はインダクタ部品98と接続される。インダクタ部品98の他端にはレシーバIC92が接続される。
【0040】
高速オシロスコープ90としては、アジレント・テクノロジー社(Agilent Technologies, Inc.)製のAgilent86100広帯域オシロスコープを用いる。TDRモジュール91としては、アジレント・テクノロジー社製の54754差動TDRプラグイン・モジュールを用いる。レシーバIC92は、電源がオフのときに無限大の入力インピーダンスを有し、高速オシロスコープ90からの信号を100%反射させる。伝送路94は、50Ωの特性インピーダンスを有する。
【0041】
次に、図5及び図6に基づいて、TDR法による測定方法について説明する。まず、高速オシロスコープ90が入射電圧ステップEiを発生させ、この入射電圧ステップEiを伝送路94に出力する。伝送路94上で特性インピーダンスの不連続点が存在しない場合には、入射電圧ステップEiがレシーバIC92でそのまま反射され、高速オシロスコープ90には、図6(a)に示すように、入射電圧ステップEiのみが表示される。
【0042】
一方、伝送路94の特性インピーダンスに不連続箇所が存在する場合には、その不連続箇所で入射電圧ステップの一部が反射される。この場合、高速オシロスコープ90には、図6(b)に示すように、反射波Erが入射電圧ステップEiに代数的に追加されて表示される。この結果より、インピーダンスの不連続箇所の位置と特性インピーダンスの値を求めることができる。すなわち、反射波Erが測定されるまでの時間Tによりインピーダンスの不連続箇所の位置を求めることができると共に、反射波Erの値により不連続箇所でのインピーダンスを求めることができる。
【0043】
測定においては、インダクタ部品98として、等価回路が図7(a)に示されるように、従来の技術のインダクタ部品、すなわち構成が第1実施形態に係るインダクタ部品であって巻線の導体材料がCuであるインダクタ部品を用い、等価回路が図7(b)に示されるように、従来のインダクタ部品の後方に2Ωの抵抗器を接続したものを用い、等価回路が図7(c)に示されるように、従来のインダクタ部品の前方に2Ωの抵抗器を接続したものを用い、等価回路が図7(d)に示されるように、上述した第1実施形態に係るインダクタ部品1とを用いた。従来の技術のインダクタ部品の構成と、インダクタ部品1との構成とは、巻線の導体材料を除いて、同じ構成とした。
【0044】
図8に測定結果を示す。図8(a)は図7(a)の等価回路における測定結果、図8(b)は図7(b)の等価回路における測定結果、図8(c)は図7(c)の等価回路における測定結果、図8(d)は図7(d)の等価回路における測定結果を示している。図8(a)から分かるように、インダクタ部品98が従来のインダクタ部品のみの場合、図中A1で示される位置と図中A2で示される位置においてインピーダンスが大きく変化しており、位置A1と位置A2との間においても、図中A3で示す位置においてインピーダンスが大きく変化している。これらのインピーダンスが急激に変化する位置A1,A2,A3において反射が生じる可能性がある。
【0045】
図8(b)から分かるように、インダクタ部品98として従来のインダクタ部品の後方に抵抗器を接続したものを用いた場合、図中B1で示される位置においてインピーダンスが大きく変化しており、特に、図中B2で示される位置においては、更に急激にインピーダンスが変化している。また、位置B1と位置B2との間においても、図中B3で示す位置においてインピーダンスが大きく変化している。これらのインピーダンスが急激に変化する位置B1,B2,B3において反射が生じる可能性がある。
【0046】
図8(c)から分かるように、インダクタ部品98として従来のインダクタ部品の前方に抵抗器を接続したものを用いた場合、図中C1及び図中C3で示される位置においてインピーダンスが大きく変化しており、特に、図中C2で示される位置においては、更に急激にインピーダンスが変化している。また、位置C1と位置C2との間においても、図中C4で示す位置においてインピーダンスが大きく変化している。これらのインピーダンスが急激に変化する位置C1,C2,C3,C4において反射が生じる可能性がある。
【0047】
一方、図8(d)から分かるように、インダクタ部品98として本発明の第1実施形態に係るインダクタ部品1を用いた場合、図中D1及び図D2に示される位置におけるインピーダンスの変化が観察されるが、位置D1における変化は位置A1,B1,C1における変化に比べて緩やかであり、位置D2における変化は位置A2,B2,C2における変化に比べて緩やかである。更に、位置D1と位置D2との間には、インピーダンスが大きく変化することなく滑らかに変化している。従って、第1実施形態に係るインダクタ部品1は、従来のインダクタ部品に比して、反射成分を抑制できることが理解される。
【0048】
次に、図9を参照して、本実施形態に係るインダクタ部品の実装構造について、説明する。図9は、本実施形態に係るインダクタ部品の実装構造を説明するための回路図である。図9(a)は従来のインダクタ部品の実装構造を説明するための回路図であり、図9(b)は本実施形態に係るインダクタ部品の実装構造を説明するための回路図である。ここでは、実装するインダクタ部品として第1実施形態に係るインダクタ部品1を用いて説明するが、他の実施形態に係るインダクタ部品2,3も、同様に実装することができる。
【0049】
図9(a)に示されるように、従来のインダクタ部品120は、プロセッサ100とメモリ101との間の入力ライン・出力ラインとの間に挿入されている。また、入力ライン・出力ラインにはインダクタ部品120とともに抵抗器110が直列に接続されている。一方、図9(b)に示すように、本実施形態に係るインダクタ部品1は、抵抗器と接続されることなく、単体でプロセッサ100とメモリ101との間の入力ライン・出力ラインとの間に挿入される。これによって、インダクタ部品1は、信号系の回路におけるインダクタとして機能する。なお、入力ライン・出力ラインにおいて、インダクタ部品1に接続される導線140が、回路における導体に該当する。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、上述の実施形態よりも巻線の巻数を増加、あるいは減少させてもよく、巻線のピッチも適宜変化させてよい。
【符号の説明】
【0051】
1,2,3…インダクタ部品、30,40,45…巻線(インダクタを構成する導体)、71a〜71e,73a…導体パターン(インダクタを構成する導体)、140…導線(回路における導体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号系の回路に挿入されるインダクタ部品であって、
インダクタを構成する導体は、前記回路における導体よりも高い抵抗値を有する導体材料を含むことを特徴とするインダクタ部品。
【請求項2】
前記インダクタを構成する導体は、互いに磁気結合した二つの巻線から構成されていることを特徴とする請求項1記載のインダクタ部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−3733(P2011−3733A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145597(P2009−145597)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】