インテグリンα−11サブユニットに対する結合剤およびその使用
本発明は、医薬に用いるための抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体に関し、ここで、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体はインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対して結合特異性を有する。特に、本発明は、関節炎疾患(例えば、RAおよびOA)などの炎症性症状の処置における、このような抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘発体の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグリンα11サブユニットまたはそれを含んでなるヘテロ二量体(例えば、α11β1ヘテロ二量体)に対して結合特異性を有する結合剤、および炎症性症状の処置におけるその使用に関する。具体的には、本発明は、関節炎疾患などの炎症性症状の処置に用いるための抗体および抗原結合フラグメント、その変異体、融合体および誘導体、ならびにそれを使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは細胞−細胞および細胞−マトリックス相互作用による多様な事象を調節する
インテグリンは、元々、内部の細胞骨格と隣接環境または細胞外細胞マトリックスとを結びつける介在細胞表面構造として定義されており、機能上「死んだ」分子と見なされていた。この理由は、1つには、ほとんどのインテグリンはシグナル伝達モチーフを欠いた極めて小さな細胞質テールだけを含むという知見に基づいていた。今日、インテグリンは、他の細胞表面受容体との相互作用および細胞内アダプタータンパク質の動員を介して、インサイドアウト(Phillips et ah, 1988, Blood 71:831-43.)、アウトサイドイン(Law et al, 1999, Nature 401:808-811.)の細胞シグナル伝達に関与する極めて複雑な構造であることが知られ、シグナルを細胞膜を横断して伝達することが示されている(Hynes, 2002, Cell 110:673-87;総説としては、Miranti & Brugge, 2002, Nat Cell Biol 4:E83-90.を参照)。
【0003】
最もよく研究されている数種のインテグリンを、モノクローナル抗体または小分子阻害剤を用いて遮断すると、細胞−細胞および細胞−マトリックスの接触が排除されて、発達、組織修復、脈管形成、炎症および止血を含む多様な生体プロセスの干渉が起こることが示されている。これらの抗体のいくつかは臨床段階治験の対象となっている(Shimaoka & Springer, 2003, Nat Rev Drug Discov 2:703-16)。
【0004】
このように、インテグリンが介在する免疫調節作用および細胞外マトリックス調節作用は、それらの天然ECMリガンドまたは抗β1インテグリン抗体を介したインテグリンの刺激にいっそう大きく限定されてきた(Loeser, 2002, Biorheology 39:119-24)。このような研究は、他のインテグリン受容体と同様に、軟骨細胞インテグリンのインサイドアウト、アウトサイドイン、側方シグナル伝達関与を実証した。
【0005】
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は、滑膜性関節を侵し、疼痛、腫脹を生じ、患者の運動を低下させる炎症性の自己免疫疾患である。総ての末梢関節がRAに侵される可能性があるが、罹患が最も多いのは手、足および膝の関節である。RAでは、未知の理由で免疫系が滑膜(関節包を裏打ちしている組織)を攻撃し、局部的炎症を起こす。炎症はやがてその関節内の軟骨および骨の破壊、ならびにその関節を支えている靱帯、腱および筋肉の破壊を引き起こす。リウマチ様の滑膜では、活性化されたT細胞、B細胞、マクロファージ、繊維芽細胞、内皮細胞および血漿細胞が確認できる。管系における処置の多くは、これらの特定の細胞のより標的化された阻害をねらいとしている。RAの実際の原因はまだ知られていないが、強い遺伝的要素がある。
【0006】
RAは世界の成人人口の0.5〜2.0%に見られ、患者の3人に1人が20年以内に重度の不能状態となっている。RAの罹患率は男性よりも女性で3倍高く、発症のピーク年齢は通常20〜45歳の間である。死亡率は、年齢および性別の合致した対照よりもRA罹患者で27%高く、女性のサブセットではいっそう高い。これは、研究によっておよそ5〜18年の余命の低下を表す。ラジオグラフィー的に明らかな関節疾患は、最初の2年では患者の>67%、最初の5年では患者の>72%に見られる。
【0007】
RAは、滑膜性関節を標的とする慢性の全身性炎症性疾患であり、一連の関節外徴候を伴うことが多い。この関節炎は、関節軟骨へのリンパ球および顆粒球の浸潤、滑膜繊維芽細胞およびマクロファージの増殖、ならびに関節を取り巻いている滑膜性内面の新血管新生という複数細胞の炎症プロセスを特徴とする。この増殖プロセスには、関節の腫脹、紅斑および疼痛が含まれるが、関節の破壊ならびに骨密度および構造の低下への進行も起こる。
【0008】
RAの病理学的メカニズムは十分理解されていない。しかしながら、マクロファージ、樹状細胞、繊維芽細胞様滑膜細胞、肥満細胞、T細胞およびB細胞などの多くの細胞種が関与していると考えられる。RA滑膜では、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−15などのサイトカインおよび種々のケモカインの放出が実在する。TNF−αおよびIL−1のレベルは疾病の症状および関節の損傷と強く相関している。血中のリウマチ様因子(RF)および抗シトルリン抗体などの自己抗体のレベルはRAに特徴的であり、この疾病の診断および予後マーカーとなる。
【0009】
関節リウマチはまず、いくつかの異なる細胞種の流入によって示唆される滑膜の炎症性応答を特徴とする。この内面は肥厚し、腫脹する。さらに、骨の破壊が見られる。
【0010】
RAでは疾病改善薬が利用できるが、それらは副作用のために使用が制限され、多くの患者は既存の治療に応答しない。過去20年の間、RA処置のもっと積極的なアプローチは、疾病の進行を休止させることを試みる疾病改善抗リウマチ薬(DMARDS)の開発に至った。最も処方されているDMARDは、元々は癌の処置に用いられていたメトトレキサートである。他のものとしては、金塩、抗マラリア薬、スルファサラジン、テトラサイクリンおよびシクロスポリンが含まれる。医師は通常、疾病の発症時にDMARDを処方するが、中度〜重度のRA罹患者にはNSAID、コルチコステロイドおよびDMARDが同時に与えられる。
【0011】
メトトレキサートは大多数のRA患者で効果的であるが、多くの人がこの薬剤の副作用に耐えられず、およそ50%の患者がついには処置が上手く行かず、その後は生物応答改質剤など、より最近の治療革新が望ましくなる。1998年に市場に出たレフルノミド(Arava; Aventis)はメトトレキサートとメカニズムおよび副作用が類似しており、メトトレキサート療法に失敗した患者の第二選択薬として用いられている。最も好結果の新規RA療法は、エタネルセプト(Eribrel; Amgen)、インフリキシマブ(Remicade; J&J/Centocor)およびアダリムマブ(Humira; Abbott)などの腫瘍壊死因子−α(TNFα)阻害剤である。しかしながら、TNFα阻害剤は、長期間の使用では、感染症および癌の増加などの副作用の可能性がある。
【0012】
骨関節炎
骨関節炎(OA)は、進行性の変性性関節疾患であり、最も多い形態の関節炎である。骨関節炎は加齢と強い関係があり、高齢者における疼痛および能力障害の主要な原因である。種々の機械的、代謝的または構成的傷害がOAを誘発し得る。これらの傷害は明らかにならないままである場合(「原発性」OA)が多いが、外傷などの明白な原因が明らかになる場合もある(「二次的」OA)。関節組織(軟骨、骨、滑膜、関節包、靱帯、筋肉)は総て、健康および機能に関して互いに依存し合っている。あるものに対する傷害は他に影響を及ぼし、関節全体に影響を及ぼす一般的なOA現象を招く。OAプロセスには、新しい組織、最も著しくは骨(「骨棘」の産生および関節形状のリモデリングが含まれる。多くの場合、OAはこれらの傷害を代償し、無痛であるが解剖学的に変化した機能性関節をもたらす(「代償性」OA)。しかしながら、これが上手く行かない場合もあり、進行性の損傷、関連の症状および「関節不全」を有するOA患者としての顕現に至る。このような見方は、OAの臨床的不均質性および変動のある臨床転帰を説明する。
【0013】
骨関節炎は、65歳を超える身体障害の主因であり、人口の推計10%に影響を及ぼしている。OA関連の身体障害の罹患率は男性よりも女性で高く、85歳を超える女性では常に25%にのぼる。予測では、2020年までにOA関連障害を有する人の数は66%増加することが示唆されている。もしOAの医学的治療および予防のための疾病改善戦略を見つけることができなければ、次の30年で、関節置換術を必要とする股関節部および膝の重度症候性OAを有する人の数にも同様の増加が予測される。
【0014】
骨関節炎(OA)は、単一の疾病またはプロセスではなく、1以上の滑膜性関節の構造的不全、そしてやがては症候的不全をもたらすある範囲のプロセスおよび障害の臨床的および病理学的転帰である。OAは、肋軟骨下の骨、靱帯、関節包、滑膜および関節周囲の筋肉ならびに関節軟骨を含む関節全体を含む。結局、関節軟骨は、繊維形成、亀裂、潰瘍形成および関節表面の全厚の減少を伴って退化する。
【0015】
骨関節炎の処置には広範囲のアプローチが含まれるが、手術を除いてほとんどの処置は待期的である。これは、ほとんどの処置が痛みを緩和し、それにより、患者の関節機能を高めるものであることを意味するが、これらの処置は疾病の経過を変化させない。外科的介入には、関節置換および骨切り術が含まれるが、これらは骨関節炎の進行を逆転させ、特定の関節に対して長期の機能改善および疼痛緩和をもたらし得る。
【0016】
従って、また、OAを処置するための選択肢を改善する差し迫った必要がある。OAに対する既存の薬物療法は症状(主として疼痛)を軽減し、ある程度の効果しかなく、患者は実質的な疼痛負荷があるままである場合も多い。このように、これまでにOAにおいて疾病改善効果が実証された薬剤はない。
【0017】
従って、本発明は、RAおよびOAなどの炎症性症状に対する新規な処置およびそれに用いるための新規な結合剤を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0018】
本発明の第一の態様は、炎症性症状を処置するための薬剤の製造における、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体の使用を提供し、ここで、該抗体もしくはフラグメントは以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHW[配列番号6]
を含んでなる。
【0019】
当業者であれば、上記配列番号1〜6のアミノ酸配列は相補性決定領域(CDR)を表すことが分かるであろう。
【0020】
本発明の第二の態様は、炎症性症状の診断薬または予後薬の製造における、上記の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用を提供する。
【0021】
本発明の第三の態様は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を検出および/または画像化するための薬剤の製造における、上記の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用を提供する。
【0022】
本発明の関連の態様は、
(a)炎症性症状を処置するための、上記の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用;
(b)炎症性症状を診断または予後するための、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用;
(c)インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を検出および/または画像化するための、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用
を提供する。
【0023】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する「結合特異性」とは、インテグリンα11サブユニット、またはα11β1ヘテロ二量体などのそのヘテロ二量体と結合することができる、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を意味する。
【0024】
一実施形態において、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体は、軟骨細胞、繊維芽細胞、間葉細胞(例えば、間葉幹細胞)または樹状細胞などの細胞の表面に存在する。
【0025】
さらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、in vivoにおいて、すなわち、インテグリンα11サブユニットが体内に存在する生理学的条件下で、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と結合することができる。このような結合特異性は、α11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現するトランスフェクト細胞を用い、例えば、ELISA、免疫組織化学、免疫沈降、ウエスタンブロット、クロマトグラフィーおよびフローサイトメトリーなどの当技術分野で周知の方法によって決定することができる(実施例参照)。抗体の特異性をどのように評価するかの例は、例えば、引用することにより本明細書の一部とされるHarlow & Lane, "Antibodies: A Laboratory", Cold Spring Habor Laboratory Press, New Yorkに示されている。
【0026】
当業者であれば、インテグリンα11サブユニットはヒトまたは動物インテグリンα11サブユニットであり得ることが分かるであろう。一実施形態において、インテグリンα11サブユニットはヒトである。既知のインテグリンα11サブユニットの例は、引用することにより本明細書の一部とされる国際特許出願(公報)WO00/75187(Cartela AB)に開示されている。
【0027】
もう1つの実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と選択的に結合することができる。「選択的に結合することができる」とは、別のタンパク質(特に、α11と最も高い同一性を有するα10、α1およびα2などの他のインテグリン)に対するよりもインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量と少なくとも10倍強く、例えば、少なくとも50倍強く、または少なくとも100倍強く結合するこのような抗体由来結合部分を含むものとする。この結合部分は生理学的条件下、例えば、in vivoでインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と選択的に結合し得る。相対的結合強度を評価するのに好適な方法としてイムノアッセイが含まれ、例えばこの場合、結合部分は抗体である(引用することにより本明細書の一部とされるHarlow & Lane, "Antibodies: A Laboratory", Cold Spring Habor Laboratory Press, New York参照)。あるいは、結合は競合アッセイを用いるか、またはBiacore(登録商標)分析(Biacore International AB, Sweden)を用いて評価することもできる。
【0028】
さらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と排他的に結合する。
【0029】
当業者であれば、抗体またはその抗原結合フラグメントの結合特異性は、成分である重鎖と軽鎖の可変領域内の相補性決定領域(CDR)の存在により付与されることが分かるであろう。本発明の使用では、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性は、上記の配列番号1〜6として定義されるCDRまたは同じ結合特異性を保持するその変異体配列の存在により付与される。
【0030】
「結合特異性を保持する」とは、該抗体またはその抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、インテグリンα11サブユニットとの結合に関して抗体「A03」と競合することができる(配列番号11および下記実施例を参照)。
【0031】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜6として特定されるCDRを含んでなる抗体と同じインテグリンα11サブユニット上のエピトープと結合し得る。
【0032】
「エピトープ」とは、本明細書において、抗体が結合する分子の部位、すなわち、抗原のある分子領域を意味するものとする。エピトープは、例えばアミノ酸配列によって決定される直鎖エピトープ、すなわち一次構造、または二次構造、例えば、ペプチド鎖のβシートもしくはαヘリックスへの折りたたみにより、または三次構造、例えば、ヘリックスもしくはシートが折りたたまれるか、または配列された抗原の三次元構造を与える方法により定義される三次元エピトープであり得る。
【0033】
インテグリンα11サブユニットの好適なエピトープ(またはその一部)の例は以下の通りである。
WNGCNEDEHCVPDLVLDARSDLPTAMEYCQRVLRKPAQDCSAYTLSF
DTTVFIIESTRQRVAVEATLENRGENAYSTVLNISQSANLQFASLIQKED
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDVVSINCNIRLV
PNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP
[配列番号7]
【0034】
インテグリンα11のさらなる好適なエピトープとしては、配列番号7のフラグメント、融合体または天然変異体が含まれ得る。
【0035】
例えば、好適なフラグメントは、配列番号7で示されるヒトα11インテグリン配列のほぼアミノ酸778番〜アミノ酸1142番、またはヒトα11インテグリン配列のほぼアミノ酸804番〜ほぼアミノ酸826番のアミノ酸配列を本質的に含んでなるペプチドなどの細胞外延長領域、特に、アミノ酸配列EYCQRVLRKPAQDCSAYTLSFDT[配列番号8]を本質的に含んでなるペプチド、またはヒトα11配列のほぼアミノ酸(aa)番号:aa778〜aa800、ほぼaa800〜820番、ほぼaa820〜840番、ほぼaa840〜860番、ほぼaa860〜880番、ほぼaa880〜900番、ほぼaa900〜920番、ほぼaa920〜940番、ほぼaa940〜960番、ほぼaa960〜980番、ほぼaa980〜1000番、ほぼaa1020〜1040番、ほぼaa1040〜1060番、ほぼaa1080〜1100番、ほぼaa1100〜1120番、ほぼaa1120〜1142番を含んでなるか、またはそれからなるいずれかのポリペプチドフラグメントを含んでなるか、またはそれからなる。
【0036】
上記の総てのアミノ酸番号は、ヒトα11配列アミノ酸番号から算出され、WO00/75187(引用することにより本明細書の一部とされる)に開示されているヒトインテグリンα11のアミノ酸1番はMであり、aa2番はDであり、aa3番はLであり、aa4番はPであり、aa5番はRであり、aa6番はGであり、aa7番はLであるなどである。
【0037】
好適なエピトープ融合体としては、上記のペプチドとStrepTagテールの融合体が含まれる。
【0038】
上記のエピトープポリペプチド配列の、天然変異体などのエピトープ変異体としては、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも60%の同一性、好ましくは、前記配列と少なくとも70%または80%または85%または90%の同一性、より好ましくは、前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含んでなるポリペプチドを含む。
【0039】
同一性%は、例えば、Expasy facilityサイト:
(http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN_form.html)
のLALIGNプログラム(Huang and Miller, Adv. Appl. Math. (1991) 12:337-357)を用い、パラメーターとしてグローバルアライメントオプション、スコアリングマトリックスBLOSUM62、オープニングギャップペナルティー−14、エクステンディングギャップペナルティー−4を用いるなど、当技術分野で周知の方法によって決定することができる。
【0040】
あるいは、2つのポリペプチド間の配列同一性%は、例えば、ウイスコンシン大学ジェネティックコンピューティンググループのGAPプログラムなどの好適なコンピュータープログラムを用いて決定することもでき、同一性%は、その配列が最適にアラインされたポリペプチドに関して計算されると考えられる。
【0041】
抗体「A03」の結合特異性を保持する抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体はまた、抗体「A03」と同じ1以上の生物特性を保持していてもよい(下記参照)。
【0042】
試験抗体が結合に関して第二の抗体と競合することができるかどうかを判定するための方法は当技術分野で周知である。
【0043】
1つの好適な方法が、α11結合抗体A03の評価のためのサンドイッチELISAである。例えばポリクローナル抗体の好適な量は、ヒトα11の細胞質テールに対するポリクローナルウサギ抗体10μg/mlなどである。次に、この抗体は、例えばMaxisorp Nunc(商標)などの96ウェルプレートにコーティングされた場合、捕捉抗体として用いられる。コーティングは、例えばプレートを4℃で一晩インキュベートした後、例えばTBS−T(20mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaClおよび0.05%Tween−20)で3回洗浄することによるなど、当技術分野で公知の標準法に従って行う。ウェルを、例えば室温にて、TBS−T中3%のBSAで1時間ブロッキングすることができる。次に、ヒトα11発現ベクターで安定トランスフェクトされたHEK細胞からの細胞抽出液をアッセイバッファー(例えば、0.1%BSA、1mM MgCl2および10μM CaCl2を添加したTBS−T)で希釈する。次に、例えばウェル当たり50μlなどの好適な量の希釈細胞抽出液を加え、例えば室温で1時間、インキュベートして、コーティングされた抗体と結合させる。その後、プレートをTBS−Tで3回洗浄する。次に、ビオチンとコンジュゲートさせた一次抗体(A03または対照抗体)を、例えばアッセイバッファー中2μg/mlなどの好適な量で加える。次に、プレートを、例えば室温で1時間など、可能であれば、A03および対照抗体の結合を可能とするに十分な時間インキュベートした後、TBS−Tで3回洗浄する。ビオチニル化一次抗体を用いる場合には、ストレプトアビジン−HRP抗体(DAKO)を用い、アッセイバッファーで相応に希釈し(1:5000)、ウェルに加えればよい。その後、プレートを、例えば室温で1時間など、ストレプトアビジン−ビオチン複合体が形成するに十分にインキュベートする。例えばTBS−Tで3回などの洗浄の後、プレートをペルオキシダーゼ基質(例えば、OPD SigmaFast, Sigma)で現像する。比色定量変化の吸光度を好適な波長(この場合490nm)で測定する。
【0044】
一次抗体がコンジュゲートされない場合には、同じELISAを代わりに、例えばSerotecからの、例えばマウス抗ヒトIgG4−HRPなどの、HRPと直接コンジュゲートされたヒトIgG4に対する二次抗体とともに、あるいはコンジュゲートされない場合には、次いで例えばDAKOからのHRPコンジュゲート抗マウス抗体とインキュベートすることができる。その後、プレートを洗浄し、上記で概略を示したように現像する。
【0045】
さらなる方法としては、上記で概略を示したサンドイッチELISAを逆転させることを含み、代わりに、捕捉抗体としてα11抗体A03を用いる。この場合、α11を含む細胞抽出液を加え、以下の改変を施して上記で概略を示したようにELISAを行う。
【0046】
一次抗体として、ヒトα11の細胞質テールに対するポリクローナルウサギ抗体をアッセイバッファーで希釈する(1μg/ml)。二次抗体として、HRPコンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体を用いることができる(例えば、DAKO、1:5000希釈)。その後、プレートを洗浄し、上記で概略を示したように現像する。
【0047】
さらなるELISAアッセイでは、エピトープ修飾または遮断抗体を評価することができる。これは、例えば以下の改変を施して上記で詳細に示したサンドイッチELISAを用いるなど、いくつかの方法で行うことができる。
【0048】
捕捉抗体ならびにα11を上記で詳細に示したように96ウェルプレートに加える。一次抗体を適用する前に、プレートをアッセイバッファー中10μg/mlの試験抗体、例えば、エピトープ修飾または遮断抗体とともにインキュベートする。プレートを室温で15分間インキュベートし、その後、ビオチンとコンジュゲートさせた一次抗体(A03または対照抗体)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、上記で概略を示したように現像する。
【0049】
試験抗体、例えば、エピトープ修飾または遮断抗体を評価するために逆サンドイッチELISAも使用可能である。このELISAでは、α11抗体A03を捕捉抗体として使用することができる。次に、α11を含有する細胞抽出液を上記で概略を示したように加え、種々のコンジュゲート、可能性のある修飾抗体を一次抗体として用いることができる。
【0050】
試験抗体が結合に関して二次抗体と競合することができるかどうかを評価するためのさらなる方法は、下記の実施例IVに記載されているような蛍光活性化セルソーター(FACS(登録商標))などのフローサイトメトリーによる。
【0051】
競合抗体を同定するのに好適なさらなる方法は、引用することにより本明細書の一部とされるAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow & Lane, Cold Spring Habor Laboratory Press, New York, ISBN 0-87969-314-2(例えば、567〜569頁、574〜576頁、583頁および590〜612頁を参照)に開示されている。
【0052】
「抗体」とは、実質的に完全な抗体分子、ならびにキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(ここでは、天然ヒト抗体に対して、少なくとも1つのアミノ酸が突然変異している)、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、ならびにその抗原結合フラグメントおよび誘導体を含むものとする。例えば、この抗体はモノクローナル抗体であり得る。
【0053】
よって、一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる。
【0054】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は本質的に完全な抗体からなってよい。「本質的に〜からなる」とは、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、インテグリンα11サブユニットに対する結合特異性を保持するに十分な完全抗体の一部からなることを意味する。
【0055】
「抗体」とはまた、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEをはじめ、あらゆる抗体種を含む。しかしながら、一実施形態において、該抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子などのIgG分子である。
【0056】
一実施形態において、該抗体はIgG4分子である。
【0057】
さらなる実施形態において、該抗体は非天然抗体である。もちろん、抗体が天然抗体である場合、それは単離された形態(すなわち、天然に見られるものとは異なる)で提供される。
【0058】
抗体の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)ドメインは抗原認識に関与し、これは初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識された事実である。さらなる確証は齧歯類抗体の「ヒト化」により見出された。齧歯類起源の可変ドメインをヒト起源の定常ドメインに融合し、結果として得られる抗体が齧歯類により産み出された抗体の抗原特異性を保持するようにすることができる(Morrison et al (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851-6855)。
【0059】
総て1以上の可変ドメインを含む、抗体フラグメントの細菌発現を含む実験から知られているように、抗原特異性は可変ドメインにより付与され、定常ドメインとは独立である。これらの分子にはFab様分子(Better et al (1988) Science 240, 1041);Fv分子(Skerra et al (1988) Science 240, 1038);VHおよびVLパートナードメインがフレキシブルオリゴペプチドを介して連結されている単鎖Fv(ScFv)分子(Bird et al (1988) Science 242, 423; Huston et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879)および単離されたVドメインを含んでなるシングルドメイン抗体(dAb)(Ward et al (1989) Nature 341, 544)。特異的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関与する技術の一般的な総説はWinter & Milstein (1991) Nature 349, 293-299に見出される。
【0060】
よって、「抗原結合フラグメント」とは、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と結合することができる抗体の機能的フラグメントを意味する。
【0061】
抗原結合フラグメントの例は、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択することができる。
【0062】
一実施形態において、抗原結合フラグメントはscFvである。
【0063】
完全抗体ではなく抗体フラグメントを用いる利点は数倍である。フラグメントが小さいほど、固体組織の浸透性が良好となるなど、薬理特性の向上をもたらすことができる。さらに、Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体フラグメントなどの抗原結合フラグメントを大腸菌(E. coli)内で発現させ、そこから分泌させることができ、よって、大量の該フラグメントを容易に生産することができる。
【0064】
また、修飾型の、例えば、ポリエチレングリコールまたはその他の好適なポリマーの共有結合によって修飾された、抗体およびその抗原結合フラグメントならびにその使用も本発明の範囲内に含まれる。
【0065】
抗体および抗体フラグメントを作製する方法は当技術分野で周知である。例えば、抗体は、抗体分子のin vivo産生の誘発、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(引用することにより本明細書の一部とされるOrlandi. et al, 1989. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:3833-3837; Winter et al, 1991, Nature 349:293-299)または培養細胞系統によるモノクローナル抗体分子の作製を用いるいくつかの方法のいずれか1つによって作製することができる。これらには、限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびエプスタイン−バーウイルス(EBV)−ハイブリドーマ技術が含まれる(引用することにより本明細書の一部とされるKohler et al, 1975. Nature 256:4950497; Kozbor et al, 1985. J Immunol. Methods 81:31-42; Cote et al, 1983. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030; Cole et al, 1984. Mol Cell. Biol. 62:109-120参照)。
【0066】
該抗体もしくは抗原結合フラグメントまたはその誘導体は組換え手段によって生産することができる。
【0067】
選択された抗原に対する好適なモノクローナル抗体は、例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、"Monoclonal Amtibodies: A manual of techniques", H Zola (CRC Press, 1988)および"Monoclonal Hybridoma Amtibodies: Techniques and Applications", J G R Hurrell (CRC Press, 1982)に開示されているものなどの既知の技術によって製造することができる。
抗体フラグメントはまた、当技術分野で周知の方法を用いて得ることもできる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Harlow & Lane, 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, New York参照)。例えば、本発明の抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解加水分解またはそのフラグメントをコードするDNAの大腸菌もしくは哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物またはその他のタンパク質発現系)での発現によって製造することができる。あるいは、抗体フラグメントは、常法により、完全抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることもできる。
【0068】
当業者であれば、ヒト療法または診断法にはヒト化抗体を使用可能であることが分かるであろう。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト抗体に由来する、好ましくは最小部分を有する、遺伝的に操作されたキメラ抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体には、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補性決定領域が、望ましい官能基を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域に由来する残基で置換されている抗体が含まれる。いくつかの例では、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒトヒト残基で置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも導入された相補性決定領域またはフレームワーク配列にも見られる残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に総てを含み、ここでは、相補性決定領域の総てまたは実質的に総てが非ヒト抗体のそれに相当し、フレームワーク領域の総てまたは実質的に総てが関連のあるヒトコンセンサス配列のそれに相当する。ヒト化抗体は最適には、一般にヒト抗体に由来する、Fc領域などの抗体定常領域の少なくとも一部も含む(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Jones et al, 1986. Nature 321:522-525; Riechmann et al, 1988, Nature 332:323-329; Presta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596参照)。
【0069】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基(導入残基と呼ばれることが多い)は一般に導入可変ドメインから取られる。ヒト化は、ヒト相補性決定領域を対応する齧歯類相補性決定領域で置換することにより、本質的に記載の通りに行うことができる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Reichmann et al, 1988. Nature 332:323-327; Verhoeyen et al, 1988, Science 239:1534-15361;米国特許第4,816,567号参照)。よって、このようなヒト化抗体は、完全なヒト可変ドメインよりも実質的に少ないドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は、いくつかの相補性決定領域残基および可能性としてはいくつかのフレームワーク残基が齧歯類抗体の類似部位由来の残基で置換されているヒト抗体であってよい。
【0070】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリーを含む当技術分野で公知の種々の技術を用いて同定することができる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Hoogenboom & Winter, 1991, J. Mol. Biol. 227:381; Marks et al, 1991, J. Mol. Biol. 222:581; Cole et al., 1985, In: Monoclonal antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77; Boerner et al, 1991. J. Immunol. 147:86-95, Soderlind et al., 2000, Nat Biotechnol 18:852-6およびWO98/32845参照)。
【0071】
一度、好適な抗体が得られれば、例えば、ELISA、免疫組織化学、フローサイトメトリー、免疫沈降、ウエスタンブロットなどにより、抗体の結合特異性または生物活性などの活性に関してそれらを試験することができる。生物活性は特定の特徴に関する読み取りを用いる種々のアッセイで試験することができる。本発明の抗体の1以上の生物活性の例としては次のものがある。
a)軟骨の退化からの保護(例えば、プロテオグリカン含量の減少)
b)関節の炎症(例えば、腫脹)の軽減;および/または
c)炎症性細胞の浸潤の軽減
【0072】
前記生物活性を試験するのに好適なアッセイの例は当技術分野で公知であり、本明細書の実施例でも示されている。
【0073】
本発明の第一の態様の一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜3で示されるCDRを含んでなる重鎖可変領域を含んでなる。例えば、該重鎖可変領域は、配列番号9:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGQGTLVTVSS[配列番号9]
のアミノ酸配列を含んでなり得るか、それから本質的になり得るか、またはそれからなり得る。
【0074】
本発明の第一の態様のさらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号4〜6で示されるCDRを含んでなる軽鎖可変領域を含んでなる。例えば、該軽鎖可変領域は、配列番号10:
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLI
YGYNERPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSG
HVVFGGGTKLTVLG
[配列番号10]
のアミノ酸配列を含んでなり得るか、それから本質的になり得るか、またはそれからなり得る。
【0075】
よって、一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる重鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0076】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号11のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか、またはそれからなる重鎖および/または配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか、またはそれからなる軽鎖を含んでなり得る。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAA
LGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSWTVPS
SSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFL
FPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK
PREEQFNSTYRWSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKA
KGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPE
NNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHY
TQKSLSLSLGK
[配列番号11]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLI
YGYNERPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSG
HVVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPG
AVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRS
YSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
[配列番号12]
【0077】
さらなる例示的実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号13のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQWGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGOGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQSVLTQP
PSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGYNER
PSGWDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSGHWFGG
GTKLTVLG
[配列番号13]
【0078】
この配列は本発明の方法に用いるための例示的「A03」scFv分子に相当する(リンカー配列は下線で示される)。所望により、この配列はまた、例えばC末端にc−mycおよび/またはヒスチジンタグを含んでもよい。
EQKLISEEDLSGSAAAHHHHHH[配列番号14]
【0079】
本明細書において「アミノ酸」とは、標準的な20の遺伝的にコードされているアミノ酸およびそれらの対応する「D」型立体異性体(天然の「L」型に対して)ωアミノ酸他の天然アミノ酸、非通常アミノ酸(例えば、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸など)および化学的に誘導体化されたアミノ酸(下記参照)を含む。
【0080】
「アラニン」または「Ala」または「A」など、アミノ酸が具体的に挙げられている場合、この用語は、特に断りのない限り、L−アラニンとD−アラニンの双方を指す。他の非通常アミノ酸も、そのポリペプチドに所望の機能特性が保持されている限り、本発明のポリペプチドに好適な成分であり得る。示されているペプチドに関し、それぞれコードされているアミノ酸残基は、適当であれば、通常アミノ酸の通称に相当する一文字表記により表される。
【0081】
一実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド結合剤はL−アミノ酸を含んでなるか、またはそれからなる。
【0082】
当業者であれば、本発明は、定義されたポリペプチドの変異体、融合体および誘導体、ならびに該変異体または誘導体の融合体、ならびにその使用を、このような変異体、融合体および誘導体がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する限り、包含することが分かるであろう。
【0083】
変異体は、組換えポリヌクレオチドを用い、当技術分野で周知のタンパク質工学および部位指定突然変異誘発の方法を用いて作製することができる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Molecular Cloning : a Laboratory Manual, 3rd edition, Sambrook & Russell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。
【0084】
該ポリペプチドの「融合体」とは、他のいずれかのポリペプチドと融合されたポリペプチドを含むものとする。例えば、該ポリペプチドは、該ポリペプチドの精製を容易にするために、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)またはAタンパク質などのポリペプチドと融合させることができる。このような融合体の例は当業者に周知である。同様に、該ポリペプチドは、His6などのオリゴ−ヒスチジンタグまたは周知のMycタグエピトープなどの、抗体により認識されるエピトープと融合させることができる。該ポリペプチドの任意の変異体または誘導体との融合体もまた、本発明の範囲に含まれる。インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持するなど、望ましい特性を保持する融合物が好ましいと考えられる。
【0085】
該融合体は本発明のポリペプチドに望ましい特徴を付与するさらなる部分を含んでなることができ、例えば、該部分はポリペプチドの検出もしくは単離、またはポリペプチドの細胞取り込みの促進に有用であり得る。該部分は例えば、当業者に周知のような、ビオチン部分、放射性部分、蛍光部分、例えば、小蛍光団もしくは緑色蛍光タンパク質(GFP)蛍光団であり得る。該部分は、当業者に公知のような免疫原性タグ、例えば、Mycタグであってもよいし、あるいは当業者に公知のように、ポリペプチドの細胞取り込みを促進することができる親油性分子またはポリペプチドドメインであってもよい。
【0086】
「ポリペプチドの変異体」とは、保存性または非保存性のいずれかの、挿入、欠失および置換を含むものとする。特に、このような変化が該ポリペプチドの活性を実質的に変化させないポリペプチドの変異体を含むものとする。例えば、このような変化がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を実質的に変化させないポリペプチドの変異体を含むものとする。
【0087】
ポリペプチド変異体は、上記で示された1以上のアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性、例えば、上記で明示された1以上のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0088】
2つのポリペプチド間の配列同一性%は、例えば、ウイスコンシン大学ジェネティックコンピューティンググループのGAPプログラムなどの好適なコンピュータープログラムを用いて決定することができ、同一性%は、その配列が最適にアラインされたポリペプチドに関して計算されると考えられる。
【0089】
このアライメントはあるいは、Clustal Wプログラム(Thompson et al, 1994, Nuc. Acid Res. 22:4673-4680に記載の通り)を用いて行うこともできる。
【0090】
使用するパラメーターは次の通りであり得る:
ファースト・ペアワイズ・アライメント・パラメータ:K−タプル(ワード)サイズ;1、ウインドウサイズ;5、ギャップペナルティー;3、トップダイアゴナルの数;5。スコアリング法:x%。
マルチプル・アライメント・パラメーター:ギャップオープンペナルティー;10、ギャップエクステンションペナルティー;0.05。
スコアリング法:BLOSUM。
【0091】
あるいは、BESTFITプログラムを用いて、ローカル配列アラインメントを決定することもできる。
【0092】
本発明のポリペプチド、変異体、融合体または誘導体は、修飾または誘導体化された1以上のアミノ酸を含み得る。
【0093】
1以上のアミノ酸の化学誘導体は機能的側基との反応により達成することができる。このような誘導体化分子としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、塩酸アミン、p−トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成している分子が含まれる。遊離カルボキシル基は、誘導体化して、塩、メチルおよびエチルエステルまたはその他の種のエステルおよびヒドラジド基を形成し得る。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化して、O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成し得る。また、化学誘導体として、20の標準アミノ酸の天然アミノ酸誘導体を含むペプチドも含まれる。例えば、4−ヒドロキシプロリンはプロリンに取って代わることができ、5−ヒドロキシリシンはリシンに取って代わることができ、3−メチルヒスチジンはヒスチジンに取って代わることができ、ホモセリンはセリンに、また、オルニチンはリシンに取って代わることができる。誘導体としてはまた、必要な活性が維持される限り、1以上のさらなる付加または欠失を含むペプチドも含む。含まれる他の修飾としては、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化またはチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化(例えば、アンモニアまたはメチルアミンによる)などの末端修飾がある。
【0094】
当業者であれば、ペプチドミメティック化合物も有用であり得ることが分かるであろう。よって、「ポリペプチド」には、インテグリンα11サブユニットと結合することができるペプチドミメティック化合物を含むものとする。「ペプチドミメティック」とは、治療薬としての特定のペプチドのコンフォメーションおよび望ましい特徴を模倣する化合物を指す。
【0095】
例えば、本発明のポリペプチドは、アミノ酸残基がペプチド(−CO−NH−)結合によって連結されている分子だけでなく、このペプチド結合が逆転している分子も含む。このような逆ペプチドミメティックは、例えば、引用することにより本明細書の一部とされるMeziere et al. (1997) J. Immunol. 159, 3230-3237に記載されているものなど、当技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。このアプローチには、主鎖に関わるが、側鎖の配向には関わらない変化を含むシュードペプチドの作製が含まれる。CO−NHペプチド結合の代わりにNH−CO結合を含む逆ペプチドは、タンパク質分解に対して遙かに高い耐性を有する。あるいは、本発明のポリペプチドは、1以上のアミノ酸残基が通常のアミド結合の代わりに−y(CH2NH)−結合によって連結されているペプチドミメティック化合物であってもよい。
【0096】
さらに別法では、このペプチド結合は、これらのアミノ酸残基の炭素原子間にスペースを保持する適当な適当なリンカー部分が用いられる限り、一緒に分配することができ、このリンカー部分がペプチド結合と実質的に同じ電荷分布および実質的に同じ二次元配置を有していれば特に好ましい。
【0097】
このポリペプチドは、エキソ型タンパク質分解消化に対する感受性を低下させる助けとなるように、そのN末端またはC末端において便宜にブロッキングすることができると考えられる。
【0098】
D−アミノ酸およびN−メチルアミノ酸などの種々の非コードまたは修飾アミノ酸もまた、哺乳類ペプチドを修飾するために使用されてきた。さらに、推定される生活性コンフォメーションが、環化などの共有結合的修飾により、またはラクタムの組み込みにより、または他の種類の架橋により安定化され得る(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Veber et al., 1978, Proc. Natl. Acad. ScLi. USA 75:2636およびThursell et al., 1983, Biochem. Biophys. Res. Comm. 111:166参照)。
【0099】
多くの合成戦略の中でも一般的な主題は、ペプチドに基づくフレームワークにいくつかの環状部分を導入することであった。この環状部分はペプチド構造のコンフォメーションスペースを制限し、多くの場合、そのペプチドの、特定の生物学的受容体に対する特異性の増強をもたらす。この戦略の付加的利点は、ペプチドに環状部分を導入すると、細胞ペプチダーゼに対する感受性が消失されたペプチドも得られるということである。
【0100】
よって、例示的ポリペプチドは末端システインアミノ酸を含んでなる。このようなポリペプチドは、末端システインアミノ酸におけるメルカプチド基のジスルフィド結合の形成によりヘテロデティック(heterodetic)形態で、または末端アミノ酸間のアミドペプチド結合の形成によりホモデティック(homodetic)形態で存在し得る。上記で示したように、N、末端システインとC末端システインの間のジスルフィド結合またはアミド結合によって小ペプチドを環化すると、タンパク質分解が低下し、また、構造の堅牢性が高まることで、直鎖ペプチドで見られることがある特異性および半減期の問題が回避され、より特異性の高い化合物が生じ得る。ジスルフィド結合によって環化されたポリペプチドは、タンパク質分解をなお受けやすい遊離のアミノ末端およびカルボキシ末端を有するが、N末端アミンとC末端カルボキシルの間でのアミド結合の形成により環化されたペプチドは、それゆえに、もはや遊離のアミノ末端またはカルボキシ末端を含まない。例えば、本発明のペプチドは、C−N結合またはジスルフィド結合のいずれかによって連結可能である。
【0101】
本発明は、ペプチドの環化の方法により何ら限定されるものではないが、その環状構造がいずれかの好適な合成方法によって達成され得るペプチドを包含する。よって、ヘテロデティック結合としては、限定されるものではないが、ジスルフィド橋、アルキレン橋またはスルフィド橋による形成を含み得る。ジスルフィド橋、アルキレン橋またはスルフィド橋を含む環状ホモデティックペプチドおよび環状ヘテロデティックペプチドの合成方法は、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第5,643,872号に開示されている。環化法の他の例は、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第6,008,058号に記載および開示されている。
【0102】
環状安定ペプチドミメティック化合物の合成のためのさらなるアプローチとして閉環メタセシス(RCM)がある。この方法はペプチド前駆体を合成する工程と、それをRCM触媒と接触させてコンフォメーション的に制限されたペプチドを得ることを含む。好適なペプチド前駆体は2以上の不飽和C−C結合を含み得る。この方法は固相ペプチド合成技術を用いて行うことができる。この実施形態では、固相支持体に固定されている前駆体をRCM触媒と接触させた後、生成物を固相支持体から切断し、コンフォメーション的に制限されたペプチドを得る。
【0103】
引用することにより本明細書の一部とされるD. H. RichによりProtease Inhibitors, Barrett and Selveson, eds., Elsevier (1986)に開示されているもう1つのアプローチ,は、酵素阻害剤の設計において遷移状態類似体の概念の適用によりペプチドミミックスを設計したものである。例えば、スタリンの第二級アルコールは、ペプシン基質の切れやすいアミド結合の四面体遷移状態を模倣することが知られている。
【0104】
要するに、末端修飾は周知のように、プロテイナーゼ消化のよる感受性を低下させるのに、従って、溶液中、特に、プロテアーゼが存在する可能性のある体液中のペプチドの半減期を延長するのに有用である。ポリペプチドの環化もまた有用な修飾であり、環化により形成される安定構造のために、また、環状ペプチドで見られる生物活性の点で好ましい。
【0105】
よって、一実施形態において、ポリペプチド結合部分は環状である。しかしながら、別の実施形態では、ポリペプチドは直鎖である。
【0106】
本発明はまた、本発明のポリペプチド結合部分の薬学上許容される酸または塩基付加塩を含んでなる組成物も含む。本発明において有用な上述の塩基化合物の薬学上許容される酸付加塩を作製するために使用される酸は、無毒な酸付加塩、すなわち、とりわけ塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、二硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、二酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩[すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3ナフトエート)]塩などの薬理学上許容される陰イオンを含む塩を形成するものである。
【0107】
薬学上許容される塩基付加塩もまた、本発明の化合物の薬学上許容される塩形態を作製するために使用可能である。
【0108】
本来酸性である本発明の化合物の薬学上許容される塩基塩を作製するために試薬として使用可能な化学塩基は、このような化合物と無毒な塩基塩を形成するものである。このような無毒な塩基塩としては、限定されるものではないが、とりわけ、アルカリ金属陽イオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)ならびにアルカリ土類金属陽イオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)、アンモニウムまたは水溶性アミン付加塩、例えば、N−メチルグルカミン−(メグルミン)、および低級アルカノールアンモニウムおよび薬学上許容される有機アミンの他の塩基塩などのような薬理学上許容される陽イオンに由来するものが挙げられる。
【0109】
本明細書に記載のポリペプチドは、保存のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。好適ないずれの凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーク乾燥)および/または再構成技術を使用してもよい。当業者であれば、凍結乾燥および再構成が様々な程度の抗体活性損失をもたらし得ること(例えば、通常の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも大きな活性損失を有する傾向がある)、および補償するために使用レベルは上方調整しなければならない場合があることが分かるであろう。一実施形態では、凍結乾燥(フリーズドライ)したポリペプチドは、再水和した際にその活性(凍結乾燥前)の約20%以下、または約25%以下、または約30%以下、または約35%以下、または約40%以下、または約45%以下、または約50%以下を失活する。
【0110】
当業者であれば、本明細書に記載の抗体および抗原結合フラグメント、その変異体、融合体および誘導体がその単量体形態、またはホモもしくはヘテロ多量体(例えば、二量体、三量体、四量体、五量体など)形態で存在し得ることが分かるであろう。
【0111】
本発明のさらなる実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、治療部分および/または検出可能部分を含んでなる。
【0112】
「検出可能部分」とは、その部分が、本発明の化合物を患者に投与した後に標的部位に局在した際に、一般には非侵襲的に身体および局在した標的の部位の外側から検出可能なものである。検出可能部分は、検出可能な種の産生に直接または間接的のいずれかで関与する単一の原子または分子であり得る。よって、本発明のこの実施形態の結合剤は画像化および診断に有用である。
【0113】
好適な検出可能部分は医化学では周知であり、これらの部分とポリペプチドおよびタンパク質との連結は当技術分野で周知である。検出可能部分の例としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる:放射性同位元素(例えば、3H、14C、35S、123I、125I、131I、99Tc、111In、90Y、188Re)、放射性核種(例えば、11C、18F、64Cu)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン、カルボシアニン)、酵素標識(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、化学発光剤、ビオチニル基および二次リポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、標識は、潜在的立体障害を軽減するための、様々な長さのスペーサーアームによって結合させる。
【0114】
放射性標識またはその他の標識は、既知の方法で本発明のポリペプチドに組み込むことができる。例えば、結合部分がポリペプチドであれば、生合成可能であるか、または例えば水素の代わりにフッ素−19を含む好適なアミノ酸前駆体を用いる化学アミノ酸合成によって合成することができる。99mTc、123I、186Rh、188Rhおよび111Inなどの標識は、結合部分内のシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム−90はリシン残基を介して結合させることができる。123Iを組み込むためにはヨードゲン法(引用することにより本明細書の一部とされるFraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Comm. 80, 49-57)を使用することができる。参照文献(引用することにより本明細書の一部とされる"Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy", J-F Chatal, CRC Press, 1989)は、他の方法を詳細に記載している。
【0115】
上記のような抗体および抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、炎症性症状の処置に有効性を有する。
【0116】
「処置」とは、対象/患者の治療的処置および予防的処置の双方を含むものとする。「予防的」とは、患者または対象における炎症性症状の見込みを予防または軽減する、本明細書に記載のポリペプチドまたは処方物の使用を包含するために用いる。
【0117】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される炎症性症状の処置に有効性を有し得る。
【0118】
一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、関節リウマチまたは骨関節炎などの関節疾患の処置において有効性を有する。このような有効性は、マウスにおける関節炎モデル(実施例参照)などの好適な動物モデルで決定することができる。
【0119】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、in vitroおよび/またはin vivoにおいてコラーゲンの分解を調整(例えば、阻害)する能力を持ち得る。
【0120】
「調整する」とは、コラーゲンの分解速度を高める、または低下させることを含むものとする。コラーゲンの分解の阻害は完全なものであっても部分的なものであってもよい。例えば、コラーゲンの分解は、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の不在下でのコラーゲン分解に比べて10%以上、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害され得る。
【0121】
該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、次の医学的に有用な特性の1以上を示し得る。
a)軟骨の退化からの保護(例えば、プロテオグリカン含量の減少)
b)関節の炎症(例えば、腫脹)の軽減;および/または
c)炎症性細胞の浸潤の軽減
【0122】
上記の特性の試験方法は下記の実施例に記載されている。
【0123】
ゆえに、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、同じ動物モデルで腫脹を軽減する(NSAID)または腫脹および細胞浸潤(抗TNF抗体)を軽減する関節疾患に対する確立された療法を超える有利な特性を有し得るが、3つのパラメーター総てには影響を及ぼすことはできない。
【0124】
よって、本発明は次の方法:
a)軟骨部位に上記のような抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、軟骨を分解から保護するための方法;
b)関節に上記のような抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、関節炎症を軽減するための方法;および
c)関節に上記のような抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、炎症性細胞の関節への浸潤を軽減するための方法
を提供する。
【0125】
特に、本発明の第四の態様は、炎症性症状を有する個体を処置するための方法を提供し、該方法は個体に有効量の上記で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む。
【0126】
本発明の第五の態様は、個体において炎症性症状を診断または予後するための方法を提供し、該方法は個体に有効量の上記で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む。
【0127】
第六の態様は、個体の身体において、炎症性症状に関連するインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を画像化するための方法を記載し、該方法は個体に有効量の上記で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む。
【0128】
本発明の上記態様の一実施形態では、該方法は、個体において該化合物の位置を検出する工程をさらに含む。
【0129】
本発明の第七の態様は、個体において炎症性症状の進行を監視するための方法を提供し、該方法は、
(a)第一の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、その中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;
(b)第二の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、インテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;および
(c)工程(a)と(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を比較すること
を含み、工程(a)と比べた場合の工程(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量の増加が炎症性症状の進行の指標となる。
【0130】
本発明の第八の態様は、炎症性症状と関連する細胞を同定する方法を提供し、該方法は供試細胞のサンプル中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること、およびそれを陽性対照および/または陰性対照に対するインテグリンα11サブユニットタンパク質の量と比較することを含む。
【0131】
該陽性対照は炎症性症状に罹患している対象由来の細胞を含んでよく、該陰性対照は炎症性症状に罹患していない健康な対象に由来する細胞を含んでよい。
【0132】
本発明の一実施形態において、該細胞は軟骨細胞、繊維芽細胞および間葉細胞(例えば、間葉幹細胞)からなる群から選択される。
【0133】
サンプル中のインテグリンα11サブユニットの量は、当技術分野で周知の方法を用いて決定することができる。生体サンプル中のインテグリンα11タンパク質レベルをアッセイするのに好適な方法には、抗体に基づく技術が含まれる。例えば、組織中のインテグリンα11タンパク質発現は、従来の免疫組織学的方法を用いて検討することができる。これらの場合、一次抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)によって特異的認識が提供されるが、二次検出系は蛍光、酵素またはその他のコンジュゲートされた二次抗体が利用可能である。結果として、病理学的検査用の組織切片の免疫組織学的染色が得られる。また、ウエスタンブロットまたはドット/スロットアッセイのためにインテグリンα11タンパク質を遊離させるために、例えば尿素および中性洗剤を用いて組織を抽出することもできる(引用することにより本明細書の一部とされるJalkanen et al, 1985, J. Cell. Biol. 101:976-985; Jalkanen et al, 1987, J. Cell. Biol 105:3087-3096)。陽イオン性固相の使用に基づくこの技術では、インテグリンα11タンパク質の定量は、標品として単離されたインテグリンα11タンパク質を用いて果たすことができる。この技術は体液にも適用することができる。
【0134】
一実施形態において、供試細胞は、対応する正常な健康細胞に比べての、インテグリンα11サブユニットタンパク質レベルのアップレギュレーションにより、炎症性症状と関連する細胞として同定される。「アップレギュレーションされる」とは、インテグリンα11サブユニットタンパク質が、正常(健康)細胞におけるインテグリンの発現に比べて少なくとも10%上昇していることを意味する。例えば、インテグリンα11サブユニットタンパク質のレベルは少なくとも20%、30%、40%、50%またはさらには100%もしくはそれを超えて上昇され得る。
【0135】
さらなる実施形態において、上記の方法は、個体において該化合物の位置を検出する工程をさらに含む。
【0136】
化合物または抗体の検出は、臨床的画像化および診断の技術分野で周知の方法を用いて果たすことができる。必要とされる特定の方法は、該化合物または抗体に結合される検出可能な標識の種類によって異なる。例えば、放射性原子はオートラジオグラフィーまたはあるいは場合によっては上記のような磁気共鳴画像法(MRI)を用いて検出可能である。
【0137】
本発明の上記方法のさらなる実施形態において、炎症性症状は、関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される。
【0138】
例えば、炎症性症状は関節リウマチまたは骨関節炎などの関節疾患であり得る。
【0139】
本発明の第九の態様は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、前記抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該その変異体もしくはその誘導体の融合体と競合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する(ただし、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は配列番号1〜6のアミノ酸配列の総ては含まない)。
【0140】
好適な抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は、本発明の使用および方法に関して上記されている。
【0141】
インテグリンα11サブユニットとの結合に関して、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合することができるこのような抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は、当技術分野で周知の技術を用いて同定することができる。例えば、まずファージディスプレー抗体ライブラリーをスクリーニングしてインテグリンα11サブユニットと結合する抗体を同定し、その後、これらの抗体を、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合するものを同定するためにさらに試験することができる。
【0142】
本発明の第九の態様の抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体の一実施形態において、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体は細胞(軟骨細胞または繊維芽細胞など)の表面に局在する。
【0143】
当業者ならば、本発明の第九の態様の抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は本発明の上記使用および方法において有用性を有することが分かるであろう。
【0144】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子「と競合することができる」とは、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体は、配列番号11のscFv分子とインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合を少なくとも部分的に阻害する、または干渉することができることを意味する。競合結合は、ELISA(上記の通り)などの当業者に周知の方法によって決定することができる。
【0145】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該その変異体もしくは誘導体の融合体は、配列番号11のscFv分子とインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合を、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、35%、またはさらには100%阻害することができる。
【0146】
一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子と同じエピトープと結合することができる。
【0147】
もう1つの実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子が結合するものとは異なるエピトープと結合することができる。
【0148】
本明細書において「エピトープ」とは、抗体が結合する分子の部位、すなわち、抗原のある分子領域を意味するものとする。エピトープは、例えばアミノ酸配列、すなわち一次構造により決定される直鎖エピトープ、または二次構造、例えば、ペプチド鎖の、βシートまたはαヘリカルへの折りたたみにより、またははヘリックスもしくはシートが折りたたまれ、または配列されて抗原の三次元構造を与える方法である三次構造により定義される三次元エピトープであってよい。
【0149】
本発明の第九の態様の一実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる。
【0150】
本発明の第九の態様のもう1つの実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、およびFab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)からなる群から選択される)抗原結合フラグメントを含んでなるか、またはそれからなる。
【0151】
該抗体はモノクローナル抗体などの組換え抗体であり得ると考えられる。例えば、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントはヒトまたはヒト化されていてもよい。
【0152】
本発明の第九の態様のさらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、in vitroおよび/またはin vivoにおいてコラーゲンの分解を調整(例えば、阻害)することができる。
【0153】
本発明の第九の態様の抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は、例えば、関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される炎症性症状の処置において有用性を有し得る。
【0154】
本発明の第九の態様のさらなる実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、治療部分および/または検出可能部分(上記の通り)をさらに含んでなる。
【0155】
本発明の第十の態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体をコードする核酸分子、またはその成分ポリペプチド鎖を提供する。
【0156】
単離された核酸分子は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を発現するのに好適である。「発現するのに好適とは、その核酸分子が、翻訳されてポリペプチド、例えばRNAを形成し得るポリヌクレオチドであること、または本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(好ましくはDNAである)がプラスミドなどの発現ベクターに、発現に適切な配向および適正なリーディングフレームで挿入されることを意味する。このポリヌクレオチドは、任意の所望の宿主によって認識される適当な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列と連結することができ、このような制御を発現ベクターに組み込むことができる。
【0157】
よって、該核酸分子はDNAまたはRNAであり得る。
【0158】
該核酸分子(またはポリヌクレオチド)は、本発明のポリペプチド産物を産生するのに好適な宿主で発現させることができる。よって、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、本明細書に含まれる教示に照らして適宜改変された、発現ベクターを構築するための既知の技術に従って使用することができ、次にこれを用いて、本発明のポリペプチドの発現および産生に適当な宿主細胞を形質転換する(例えば、引用することにより本明細書の一部とされるSambrook & Russell, 2000, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor, New York参照)。
【0159】
ポリペプチドをコードする核酸分子は、適当な宿主へ導入するための広範な他のポリヌクレオチド配列と連結させることができる。この付随ポリヌクレオチドは、宿主の性質、宿主へのポリヌクレオチドの導入様式、およびエピソーム維持が望ましいか組み込みが望ましいかによって異なる。
【0160】
要するに、適当な宿主内で、その核酸分子によりコードされているポリペプチド結合部分または化合物を発現することができる核酸分子を含んでなる発現ベクターを構築すればよい。
【0161】
例えば相補性付着末端を介して核酸分子、特にDNAを作動可能なようにベクターに連結するための種々の方法が開発されている。例えば、ベクターDNA中に挿入されるDNAセグメントに相補的ホモポリマートラクトを付加することができる。次に、このベクターおよびDNAセグメントを相補的ホモポリマーテール間の水素結合によって連結し、組換えDNA分子を形成する。
【0162】
1以上の制限部位を含有する合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに連結する別法を提供する。例えばエンドヌクレアーゼ制限消化によって作製されたDNAセグメントをバクテリオファージT4 DNAポリメラーゼまたは大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIで処理する(この酵素はそれらの3’−5’−エキソヌクレオ分解活性を有する、突出した3’一本鎖末端を除去し、それらの重合活性を有する陥凹した3’末端を埋める)。
【0163】
従って、これらの活性の組合せで平滑末端DNAセグメントが生じる。次に、この平滑末端セグメントを、バクテリオファージT4 DNAリガーゼなどの、平滑末端DNA分子の連結を触媒し得る酵素の存在下、よりモル過剰のリンカー分子とともにインキュベートする。よって、この反応の生成物は、それらの末端にポリマーリンカー配列を有するDNAセグメントである。その後、これらのDNAセグメントを適当な制限酵素で切断し、そのDNAセグメントのものに適合する末端を作り出す酵素で切断した発現ベクターに連結する。
【0164】
種々の制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーが、International Biotechnologies Inc., New Haven, CN, USAをはじめとするいくつかの供給者から市販されている。
【0165】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾するための望ましい方法がPCRの使用である。この方法は、例えば、好適な制限部位における操作によって好適なベクターにDNAを導入するために使用可能であるか、または当技術分野で知られているように、他の有用な方法でDNAを修飾するために使用可能である。
【0166】
この方法において、酵素的に増幅させるDNAを、それ自体増幅されたDNAに組み込まれる2つの特異的プライマーに隣接させる。該特異的プライマーは、当技術分野で公知の方法を用い、発現ベクターにクローニングするために使用可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。
【0167】
次に、このDNA(またはレトロウイルスベクターの場合にはRNA)を好適な宿主内で発現させて、本発明の化合物またはその結合部分を含んでなるポリペプチドを産生させる。よって、該ポリペプチドをコードするDNAを、本明細書に含まれる教示に照らして適宜改変された既知の技術に従って用いて発現ベクターを構築することができ、次に、これを用いて本発明の化合物またはその結合部分の発現および産生に適当な宿主細胞を形質転換させる。このような技術としては、1984年4月3日にRutter et alに対して発行された米国特許第4,440,859号、1985年7月23日にWeissmanに対して発行された米国特許第4,530,901号、1986年4月15日にCrowlに対して発行された米国特許第4,582,800号、1987年6月30日にMark et alに対して発行された米国特許第4,677,063号、1987年7月7日にGoeddel対して発行された米国特許第4,678,751号、1987年11月3日にItakura et alに対して発行された米国特許第4,704,362号、1987年12月1日にMurrayに対して発行された米国特許第4,710,463号、1988年7月12日にToole, Jr. et alに対して発行された米国特許第4,757,006号、1988年8月23日にGoeddel et alに対して発行された米国特許第4,766,075号および1989年3月7日にStalkerに対して発行された米国特許第4,810,648号に開示されているものが含まれる(これらは総て引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0168】
本発明の方法に用いるためのポリペプチド結合部分をコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合にはRNA)は、適当な宿主に導入するための広範な他のDNA配列と連結させることができる。この付随DNAは、宿主の性質、宿主へのポリヌクレオチドの導入様式、およびエピソーム維持が望ましいか組み込みが望ましいかによって異なる。
【0169】
一般に、該DNAは、プラスミドなどの発現ベクターに、発現に適切な配向および適正なリーディングフレームで挿入される。必要に応じて、該DNAは、所望の宿主によって認識される適当な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列と連結することができ、このような制御は発現ベクター内で一般に利用可能である。次に、このベクターを、標準的な技術によって宿主へ導入する。一般に、総てではないが、種祝はこのベクターによって形質転換される。よって、形質転換された宿主細胞を選択する必要がある。ある選択技術には、発現ベクターに、抗生物質耐性など、形質転換細胞において選択可能な形質をコードするDNA配列を、必要な制御配列とともに組み込むことを含む。あるいは、このような選択可能な形質の遺伝子は別のベクター上にあってもよく、これを用いて所望の宿主細胞同時形質転換する。
【0170】
次に、本発明の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を、そのポリペプチドの発現を可能とする十分な時間、本明細書に開示されている教示に照らして当業者に公知の適当な条件下で培養し、その後それを回収することができる。
【0171】
多くの発現系が知られており、細菌(例えば、大腸菌および枯草菌(Bacillus subtilis))、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、糸状真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞および昆虫細胞が含まれる。
【0172】
これらのベクターは一般に、そのベクターが他の非原核細胞種での発現に用いられるとしても、原核生物での増殖のためのColE1 oriなどの原核生物レプリコンを含む。これらのベクターはまた、それで形質転換された大腸菌などの細菌宿主細胞内でそれらの遺伝子の発現(転写および翻訳)を命令し得る原核生物プロモーターなどの適当なプロモーターも含み得る。
【0173】
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写を起こさせるDNA配列により形成される発現制御エレメントである。例示的細菌宿主に適合するプロモーター配列は一般に、本発明のDNAセグメントの挿入に便宜な制限部位を含むプラスミドベクターで提供される。
【0174】
典型的な原核生物ベクタープラスミドは、Biorad Laboratories (Richmond, CA, USA)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329、ならびにPharmacia, Piscataway, NJ, USAから入手可能なpTrc99AおよびpKK223−3である。
【0175】
典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia, Piscataway, NJ, USAから入手可能なpSVLである。このベクターは、クローニングされた遺伝子の発現を駆動するためにSV40後期プロモーターを使用し、COS−1細胞などのT抗原産生細胞で最大発現レベルが見られる。
【0176】
誘導型の哺乳類発現ベクターの例は、これもまたPharmaciaから入手可能なpMSGである。このベクターは、クローニングされた遺伝子の発現を駆動するためにマウス乳癌ウイルスの長い末端反復配列のグルココルチコイド誘導型プロモーターを用いる。
【0177】
有用な酵母プラスミドベクターはpRS403−406およびpRS413−416であり、一般に、Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA 92037, USAから入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は酵母組み込みプラスミド(YIp)であり、酵母選択マーカーHIS3、TRP1、LEU2およびURA3を組み込む。プラスミドpRS413−416は酵母セントロメアプラスミド(Ycp)である。
【0178】
多様な宿主細胞とともに用いるための他のベクターおよび発現系も当技術分野で周知である。
【0179】
宿主細胞は原核生物または真核生物のいずれであってもよい。細菌細胞は好ましい原核宿主細胞であり、一般に、例えば、Bethesda Research Laboratories Inc., Bethesda, MD, USAから入手可能な大腸菌株DH5およびRockville, MD, USAのthe American Type Culture Collection (ATCC)から入手可能なRR1(No. ATCC 31343)などの大腸菌株である。例示的真核生物の宿主細胞としては、酵母、昆虫および哺乳類細胞が挙げられ、マウス、ラット、サルまたはヒト繊維芽細胞系統および腎臓細胞系統などの脊椎動物細胞が好ましい。酵母宿主細胞としては、Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA 92037, USAから一般に入手可能なYPH499、YPH500およびYPH501がある。例示的哺乳類宿主細胞としてが、ATCCからCRL 1658として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびヒト胎児腎臓細胞である293細胞が挙げられる。例示的昆虫細胞としては、バキュロウイルス発現ベクターでトランスフェクト可能なSf9細胞がある。
【0180】
本発明のDNA構築物による適当な細胞宿主の形質転換は周知の方法によって達成され、その方法は用いるベクターの種類によって異なる。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69, 2110およびSambrook et al (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY参照。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al (1986) Methods In Yeast Genetics, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY(これらは総て引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されている。引用することにより本明細書の一部とされるBeggs (1978) Nature 275, 104-109の方法も有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞をトランスフェクトするのに有用な試薬、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE−デキストランまたはリポソーム製剤は、Stratagene Cloning SystemsまたはLife Technologies Inc., Gaithersburg, MD 20877, USAから入手可能である。
【0181】
エレクトロポレーションも細胞を形質転換および/またはトランスフェクトするのに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。
【0182】
例えば、多くの細菌種が、引用することにより本明細書の一部とされるLuchansky et al (1988) Mol. Microbiol. 2, 637-646に記載されている方法により形質転換可能である。25μFDにて6250V/cmを用いる2.5PEBに懸濁させたDNA−細胞混合物のエレクトロポレーション後に、一貫して最大数の形質転換体が回収される。
【0183】
エレクトロポレーションにより酵母を形質転換するための方法は、引用することにより本明細書の一部とされるBecker & Guarente (1990) Methods Enzymol. 194, 182に開示されている。
【0184】
首尾よく形質転換された細胞、すなわち、本発明のDNA構築物を含む細胞は、周知の技術によって同定することができる。例えば、本発明の発現構築物の導入から得られた細胞を増殖させて、本発明のポリペプチドを産生することができる。細胞を採取し、溶解させ、それらのDNA内容物を、引用することにより本明細書の一部とされるSouthern (1975) J. Mol. Biol. 98, 503またはBerent et al (1985) Biotech. 3, 208によって記載されているものなどの方法を用い、DNAの存在に関して調べることができる。あるいは、上清におけるタンパク質の存在を下記のような抗体を用いて検出することもできる。
【0185】
組換えDNAの存在に関して直接アッセイする他、その組換えDNAがタンパク質の発現を命令することができる場合には、周知の免疫学的方法によって形質転換の成功を確認することができる。例えば、発現ベクターで首尾よく形質転換された細胞は、適当な抗原性を示すタンパク質を産生する。
【0186】
形質転換されたと思われる細胞のサンプルを採取し、好適な抗体を用い、タンパク質に関してアッセイする。
【0187】
宿主細胞は非ヒト動物体内の宿主細胞であってもよい。よって、導入遺伝子の存在のために本発明のポリペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。一実施形態において、トランスジェニック非ヒト動物は、マウスなどの齧歯類である。トランスジェニック非ヒト動物は、当技術分野で周知の方法を用いて作製することができる。
【0188】
宿主細胞を培養し、組換えタンパク質を単離する方法は当技術分野で周知である。産生される本発明の化合物(またはその結合部分)は宿主細胞によって異なると考えられる。例えば、酵母または細菌細胞などのある種の宿主細胞は、違ったように翻訳後修飾され得る本発明の化合物(またはその結合部分)の形態の産生をもたらし得る異なった翻訳後修飾系を持っていても持っていなくてもよい。
【0189】
一実施形態では、宿主細胞は細菌細胞である。あるいは、宿主細胞は哺乳類細胞、例えばヒト細胞、例えばヒト細胞または類人猿細胞などの霊長類目由来の細胞、またはラット細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、リス細胞、モルモット細胞、マーモット細胞もしくはビーバー細胞などの齧歯目由来の細胞であり得る。
【0190】
さらなる実施形態では、宿主細胞はCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞またはHEK(ヒト胎児腎臓)細胞である。
【0191】
よって、本発明の第11の態様は、本発明の第十の態様の核酸分子を含んでなるベクターを提供する。
【0192】
同様に、本発明の第12の態様は、本発明の第十の態様の核酸分子または本発明の第11の態様のベクターを含んでなる組換え宿主細胞を提供する。
【0193】
本発明の第13の態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を作製する方法を提供し、該方法は、コードされている抗体もしくはその抗原結合フラグメントの発現を可能とする条件下で本発明の第12の態様の宿主細胞を培養することを含む。このような方法はまた、本発明の方法で用いるための抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を産生するために使用することもできる。
【0194】
このようなポリペプチドは、ウサギ網状赤血球ライゼートまたは麦芽ライゼート(Promegaから入手可能)などの市販のin vitro翻訳系を用いてin vitroで産生することができる。例えば、この翻訳系はウサギ網状赤血球ライゼートであり得る。便宜には、TNT転写−翻訳系(Promega)のように、この翻訳系を転写系と組み合わせることができる。この系により、コードDNAポリヌクレオチドから好適なmRNA転写物を翻訳と同じ反応で生産することができる。
【0195】
当業者であれば、上記の医薬および薬剤が医学および獣医学双方の分野で有用性を有することがさらに分かるであろう。よって、これらの医薬および薬剤はヒトおよび非ヒト動物(ウマ、イヌ、マウス、ラット、霊長類、サル、ブタおよびネコなど)の双方の処置に使用可能である。しかしながら、好ましくは、患者はヒトである。
【0196】
本発明の第14の態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体と薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0197】
本明細書において「医薬組成物」とは、治療上有効な処方物を意味する。
【0198】
本明細書において「治療上有効な量」または「有効量」または「治療上有効」とは、与えられた条件および投与計画に対して治療作用をもたらす量(例えば、コラーゲンの分解を阻害するのに十分な量)を指す。これは、必要とされる添加剤および希釈剤、すなわち、担体または投与ビヒクルをともに所望の治療作用をもたらすように計算された有効物質の所定の量である。さらに、それは宿主の活動、機能および応答において臨床上有意な欠損を軽減または回避するのに十分な量を意味するものとする。あるいは、治療上有効な量は、宿主において臨床上有意な症状における改善をもたらすに十分なものである。当業者であれば分かるように、化合物の量はその具体的活性によって異なり得る。好適な用量は、必要とされる希釈剤とともに所望の治療作用をもたらすように計算された有効組成物の所定量を含み得る。本発明の組成物の製造のための方法および使用では、治療上有効な量の有効成分が提供される。治療上有効な量は、当技術分野で周知のように、齢、体重、性、症状、合併症、他の疾病などの患者の特徴に基づき、熟練の医師または獣医師によって決定することができる。
【0199】
当業者であれば、このような有効量の該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体、その処方物は、単回のボーラス投与(すなわち、急性投与)として送達することもでききるし、あるいはより好ましくは、経時的な一連の投与(すなわち、慢性投与)としても送達することもできることが分かるであろう。
【0200】
当業者であれば、本発明の方法で用いるための抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、炎症性症状の処置のための1以上の他の慣例薬と組み合わせて投与できることがさらに分かるであろう。
【0201】
例えば、関節リウマチの場合、好適な慣例薬としては、限定されるものではないが、疾病改善抗リウマチ薬(DMARDS、例えば、メトトレキサート)、金塩、抗マラリア薬、スルファサラジン、テトラサイクリン、シクロスポリン、NSAID、コルチコステロイド、レフルノミド(Arava; Aventis)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)阻害剤、例えば、エタネルセプト(エンブレル;Amgen)、インフリキシマブ(Remicade; J&J/Centocor)およびアダリムマブ(Humira; Abbott)が挙げられる。
【0202】
OAの場合、好適な慣例薬としては、限定されるものではないが、アセトアミノフェン(パラセタモールとしても知られる)などの鎮痛薬または抗炎症薬、またはCOX2阻害剤などのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、MMP阻害剤などの疾病改善骨関節炎薬(DMOAD)、またはインターロイキン1(IL−1)阻害剤が挙げられる。
【0203】
本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、用いる化合物の有効性/毒性に応じて種々の濃度で処方することができる。一実施形態では、この処方物は本発明の薬剤を0.1μM〜1mMの間、例えば1μM〜100μMの間、5μM〜50μMの間、10μM〜50μMの間、20μM〜40μMの間、または約30μM濃度で含んでなる。in vitro適用では、処方物はより低濃度の、例えば0.0025μM〜1μMの間の本発明の化合物を含み得る。
【0204】
よって、炎症性症状の処置に有効な量(上記の通り)の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を含んでなる医薬処方物が提供される。
【0205】
当業者であれば、これらの医薬および薬剤は一般に、意図される投与経路および標準的な薬務に関して選択された好適な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与されることが分かるであろう(例えば、引用することにより本明細書の一部とされるRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995, Ed. Alfonso Gennaro, Mack Publishing Company, Pennsylvania, USA参照)。
【0206】
例えば、これらの医薬および薬剤は、即放出、遅延放出または徐放性適用のための、香味剤または着色剤を含み得る錠剤、カプセル剤、小卵剤(ovule)、エリキシル剤、溶液または懸濁液の形態で経口投与、頬側投与または舌下投与することができる。これらの医薬および薬剤はまた陰茎海綿体注射によって投与することもできる。
【0207】
このような錠剤は、微晶質セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、デンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合体シリケートなどの崩壊剤、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ−プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアラビアガムなどの造粒結合剤を含み得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの滑沢剤も含み得る。
【0208】
ゼラチンカプセル剤中の増量剤と類似の種の固体組成物も使用可能である。これに関する例示的賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液および/またはエリキシル剤では、本発明の化合物は種々の甘味剤または香味剤、着色物質または色素と、また乳化剤および/または沈殿防止剤と、また水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤、ならびにその組合せと組み合わせることができる。
【0209】
これらの医薬および薬剤はまた、非経口投与、例えば、静脈内投与、関節内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与または皮下投与することもできるし、あるいは注入技術により投与することもできる。それらは、例えば血液と等張な溶液を作製するために十分な塩またはグルコースなどの他の物質を含んでもよい無菌水溶液の形態で最良に用いられる。これらの水溶液は必要であれば適宜緩衝させなければならない(例えば、pH3〜9)。無菌条件下での好適な非経口処方物の作製は、当業者に周知の標準的な製薬技術により容易に達成される。
【0210】
非経口投与に好適な処方物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および意図するレシピエントの血液と等張の処方物とする溶質を含み得る水性および非水性無菌注射溶液、ならびに沈殿防止剤および増粘剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁液が含まれる。これらの処方物は、例えば密閉アンプルおよびバイアルなどの単位用量または多回用量容器で提供することができ、注射直前に例えば注射水などの無菌液体担体を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。即時調合注射溶液および懸濁液は、これまでに記載されている種の無菌粉末、顆粒および錠剤から作製し得る。
【0211】
ヒト患者への経口および非経口投与では、これらの医薬および薬剤の一日用量レベルは通常、成人1人当たり1〜1000mg(すなわち、約0.015〜15mg/kg)であり、単回用量または分割用量で投与される。
【0212】
疾病の予防または治療のための、抗体の適当用量は処置される疾病の種類、その疾病の重篤度および経過、抗体またはそのフラグメントが予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、従前の療法の経過、および患者の臨床歴および抗体またはそのフラグメントに対する応答によって異なる。本発明の抗体、抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体は、1回で、または一連の処置にわたって患者に適宜投与される。疾病の種類および重篤度によって、抗体またはそのフラグメント約0.015〜15mg/患者体重kgが患者への投与のための初期用量である。投与は例えば1回以上の独立した投与によってもよいし、あるいは持続的注入によってもよい。症状によって数日またはそれ以上にわたる反復投与では、病徴の望ましい抑制または緩和が起こるまで処置を繰り返す。しかしながら、他の投与計画が有用である場合もあり、それらを排除するものではない。
【0213】
症状の緩和、疾病の予防または治療における抗体、抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体の有効性は、本発明の抗体のものとは異なるエピトープに対する別の抗体またはそのフラグメント、または意図する治療適応に関して知られている1以上の慣例治療薬など、同じ臨床適応に有効な別の薬剤との連続投与または組合せ投与により改善し得る。
【0214】
このような適応に影響を及ぼす好適な薬学上許容される薬剤は、例えば骨関節炎、関節リウマチなどの関節疾患のような炎症性疾患の処置のための、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症薬;例えば抗TNF抗体、インターロイキン受容体アンタゴニスト、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤または骨形態形成タンパク質(BMP)などの抗シトルチン薬;疼痛管理処置のための整形外科術後の術後使用のための局部麻酔薬またはアテローム斑の処置のための抗高脂血症薬、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤または骨形態形成タンパク質(BMP)といった抗炎症薬であり得る。
【0215】
これらの医薬および薬剤はまた鼻内投与または吸入による投与が可能であり、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロ−メタン、ジクロロテトラフルオロ−エタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A3または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の好適なガスなどの好適な噴射剤を用いて、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、ドライパウダー吸入器またはエアゾールスプレー剤形の形態で便宜に送達される。加圧エアゾールの場合、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えば、エタノールと噴射剤の混合物を溶媒として用い(さらに、例えばトリオレイン酸ソルビタンなどの滑沢剤を含んでもよい)、有効化合物の溶液または懸濁液を含み得る。吸入器または通気器に用いるためのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチン製)は、本発明の化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含むように処方することができる。
【0216】
エアゾールまたはドライパウダー処方物は、各計量量または「ひと吹き」が患者に送達するための本発明の化合物を少なくとも1mg含むように調整することができる。エアゾールによる一日総量は患者ごとに異なり、1回またはそれを超える回数、通常には、1日にさたる分割量で投与することができると考えられる。
【0217】
あるいは、これらの医薬および薬剤は、坐剤または膣坐剤の形態で投与することもできるし、あるいはローション、溶液、クリーム、軟膏またはダスティングパウダーの形態で局所適用することもできる。本発明の化合物はまた、例えば皮膚パッチの使用により経皮投与することもできる。それらはまた、眼内経路によって投与することもできる。
【0218】
皮膚への局所適用では、これらの医薬および薬剤は、例えば以下:鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水の1以上の混合物に懸濁または溶解させた有効化合物を含有する好適な軟膏として処方することができる。あるいは、それらは、例えば以下:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水の1以上の混合物に懸濁または溶解させた好適なローションまたはクリームとして処方することもできる。
【0219】
口内局所投与に好適な処方物としては、香味基剤、通常はスクロースおよびアラビアガムまたはトラガカントガム中に有効成分を含んでなるトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアガムなどの不活性基剤中に有効成分を含んでなる香錠;ならびに好適な液体担体中に有効成分を含んでなるマウスウォッシュがある。
【0220】
これらの医薬または薬剤がポリペプチドである場合には、マイクロスフェアなどの徐放性薬物送達系を用いるのが好ましい場合がある。これらは特に注射頻度を減らすために設計される。このような系の一例として、生分解性マイクロスフェア中に組換えヒト成長ホルモン(rhGH)を封入するNutropin Depotがあり、一度注射すると、長時間かけてゆっくりrhGHを放出する。
【0221】
徐放性免疫グロブリン組成物はまた、リポソームに捕捉された免疫グロブリンも含む。免疫グロブリンを含有するリポソームは、それ自体公知の方法によって作製される。例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Epstein et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 3688-92 (1985); Hwang et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4030-4 (1980);米国特許第4,485,045号;同第4,544,545号;同第6,139,869号および同第6,027,726号参照。通常には、これらのリポソームは、液体含量が約30モル%(mol%)コレステロールよりも高い小型(約200〜約800オングストローム)の単層種であり、選択された割合は最適な免疫グロブリン療法向けに調整される。
【0222】
あるいは、ポリペプチド医薬および薬剤は、必要な部位に直接薬剤を放出する外科的に埋め込んだデバイスにより投与することもできる。
【0223】
また、タンパク質およびポリペプチドの投与のためにエレクトロポレーション療法(EPT)系も使用可能である。細胞にパルス電場を送達するデバイスは薬剤に対する細胞膜の浸透性を高め、細胞内薬物送達の著しい増強をもたらす。
【0224】
また、タンパク質およびポリペプチドは、エレクトロインコーポレーション(EI)によって送達することもできる。EIは、皮膚の表面で直径30ミクロンまでの小粒子がエレクトロポレーションで用いられるものと同一または類似の電気パルスを受ける場合に生じる。EIでは、これらの粒子は角質層を経て皮膚のより深部に送られる。これらの粒子には薬剤または遺伝子を付加またはコーティングすることができ、あるいは単に皮膚に化合物が侵入可能な孔を開ける「弾丸」としても働き得る。
【0225】
タンパク質およびポリペプチド送達の別法は、温度感受性ReGel注入である。体温より低いとReGelは注入可能な液体であるが、体温ではすぐにゲルリザーバーを形成し、これはゆっくり浸食し、既知の安全な生分解性ポリマーへと溶解する。このバイオポリマーが溶解するにつれ、有効薬剤が経時的に送達される。
【0226】
タンパク質およびポリペプチド医薬はまた経口送達することもできる。このような1つの系では、タンパク質およびポリペプチドを同時送達するために、身体のビタミンB12の経口取り込みの天然プロセスを用いる。ビタミンB12取り込み系を付加することで、これらのタンパク質またはポリペプチドは腸管壁を経て移動可能である。ビタミンB12類似体と薬剤の間で複合体が形成され、この複合体のビタミンB12部分における内性因子(IF)に対する有意な特異性と複合体の薬剤部分の有意な生活性が保持される。
【0227】
本発明の第九の態様の抗体および抗体由来結合剤は、上記のような医薬組成物を含んでなるキットの形態で提供され得る。よって、炎症性症状の処置に用いるためのキットが提供され得る。
【0228】
あるいは、キットは、診断において用いるのに好適な、本発明の検出可能な抗体または抗原結合フラグメントもしくは誘導体を含み得る。このような診断キットは、個包装試薬としての診断薬を少なくとも1回のアッセイに十分な量で含み得る。包装試薬の使用説明書も一般に含まれる。このような説明書は一般に、試薬濃度および/または混合する試薬とサンプルの相対量、試薬/サンプル混合物の持続時間、温度、バッファー条件などの少なくとも1つのアッセイ法パラメーターを記載した有形表示物を含む。
【0229】
本発明のさらなる態様は、炎症性症状を処置するための候補化合物を同定するための方法を提供し、該方法は、
a)供試化合物を準備する工程;
b)該化合物の、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、以下のCDR配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくは誘導体の融合体と競合する能力を試験する工程
を含み、
【0230】
該試験化合物がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して競合することができれば、それは炎症性症状を処置するための候補化合物として同定される。
【0231】
競合結合はELISAなど、当技術分野で周知の方法を用いてアッセイすることができる(上記参照)。
【0232】
一実施形態において、本方法は、コラーゲンの分解を調整(例えば、阻害)する化合物の能力を試験する工程をさらに含む。
【0233】
「調整する」とは、コラーゲンの分解速度を高める、または低下させることを含む。コラーゲンの分解の阻害は完全であっても部分的であってもよいと考えられる。例えば、コラーゲン分解は、試験化合物の不在下でのコラーゲンの分解と比べて、10%またはそれ以上、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害され得る。
【0234】
便宜には、試験工程のいくつかまたは総てがin vivoで行われる。
【0235】
あるいは、試験工程のいくつかまたは総てが、例えば、免疫組織化学法(例えば、サフラニンでの染色)を用いてin vitroで行ってもよい(下記の実施例参照)。
【0236】
例示的試験化合物としては、ポリペプチド、またはその融合体もしくは誘導体、または該誘導体の融合体が含まれる。例えば、試験化合物は抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体、またが該変異体もしくはその誘導体の融合体であり得る。
【0237】
一実施形態において、試験化合物は完全な抗体である。
【0238】
あるいは、試験化合物は、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択される抗原結合フラグメントであり得る。
【0239】
本発明のさらなる態様は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体により定義されるエピトープを提供し、ここで、該抗体またはフラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる。
【0240】
一実施形態において、該エピトープは以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEEKRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDVVSINCNIRLV
PNQEΓNFHLLGNLWLRSLICALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP[配列番号15]
またはそのフラグメント、融合体もしくは変異体を含んでなるか、またはそれからなる。
【0241】
その例示的変異体、融合体およびフラグメントは上記に開示されている。
【0242】
よって、さらなる態様として、本発明はまた、以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDWSINCNIRLV
PNQEΓNFHLLGNLWLRSLKALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP[配列番号15]
またはそのフラグメント、融合体もしくは変異体を含んでなるか、またはそれからなる単離されたポリペプチドを提供する。
【0243】
該ポリペプチドは免疫応答を刺激し得るので、免疫原性エピトープとして働く。
【0244】
一実施形態において、該ポリペプチド、フラグメント、その融合体または変異体は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくは抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体と結合することができ、
【0245】
ここで、該抗体またはフラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号I];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる。
【0246】
本発明のさらなる態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を同定または産生するための、上記のエピトープおよび単離されたポリペプチドの使用を提供する。
【0247】
本発明はまた、上記のエピトープおよび単離されたポリペプチドをコードする単離された核酸分子ならびにベクター、宿主細胞およびそれを作製する方法を包含する。
【0248】
本明細書において、単数形「a」、「and」および「the」は、特に断りのない限り、複数形を含む。よって、例えば、「ある抗体」という場合には、複数のこのような抗体を含み、「その用量」という場合には、1以上の用量および当業者に公知のその等価物を含むなどである。
【0249】
以下、本発明のある特定の態様を用いる限定されない例を、次の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】抗α11インテグリン結合剤に関するn−CoDeR(登録商標)抗体ライブラリーのスクリーニング。スクリーニングされた192のα11インテグリン活性scFvクローンをα11インテグリンでトランスフェクトされた293細胞と結合するかどうかを確認したが、大腸菌により発現されるHisタグscFvクローンを、インテグリントランスフェクト細胞(図面に示されている通り)、マウス抗His mAb、Cy5コンジュゲート抗マウスmAb試薬と同時インキュベーションした後、FMATマクロコンフォーカルによるスクリーニング装置でスクリーニングすることによっては、α10インテグリントランスフェクト293細胞との結合は見られなかった。スクリーニングされたscFvを、α11インテグリン特異的結合剤に関してn−CoDeR(登録商標)抗体ライブラリーをパンニングした後に賦活させる。このアプローチを用い、172のscFvクローンを選択的α11インテグリン結合剤として確認した。
【図2】抗インテグリンscFvの標的インテグリン特異性。ヒトα10インテグリン(左のグラフ)またはヒトα11インテグリン(右のグラフ)でトランスフェクトされたHek293細胞を抗α10インテグリンscFv(対照、標識付きのグレーのピーク)、抗α11インテグリンscFv(標識付きのグレーのピーク)または無関係の対照scFv(黒塗りのピーク)とともにインキュベートした。scFvと細胞の結合を、二次フィコエリトリンコンジュゲート抗His mAbで検出した後、フローサイトメトリーにより分析した。
【図3】抗α11インテグリンscFvの、α11β1インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞の、コラーゲンIIコーティングプレートへの接着を選択的に阻害する能力。α10インテグリンでトランスフェクトされたC2C12マウス繊維芽細胞(A)またはα11インテグリンでトランスフェクトされたC2C12マウス繊維芽細胞(B)を、10μg/mlの抗α11インテグリンscFv、FITC−8対照scFV、抗α10インテグリンモノクローナル抗体またはIgG2aイソ型対照抗体とともにプレインキュベートした。次に、細胞を、コラーゲンIIをコーティングしたマイクロタイタープレートに加え、接着させた。結合しなかった細胞を洗い流し、結合細胞の数を酵素アッセイにより決定した。グラフは3回の独立した実験からのデータを合わせたものを表し、各実験からのデータは抗体を含まない対照に対してノーマライズした。(上)α10トランスフェクト細胞の細胞接着に対するScFvの効果。(下)α11トランスフェクト細胞の細胞接着に対するScFvの効果。平均値と標準誤差(s.e.m.)。有意性は一元配置Anovaおよびダネットの多重比較検定を用いて算出した。白いバー:α11−scFv。縞のバー;対照。
【図4】n−CoDeR(登録商標)抗α11インテグリンscFvと末梢血白血球部分集団との結合の欠如。精製ヒトPBLを、異なる蛍光団とコンジュゲートさせた細胞部分集団特異的モノクローナル抗体の存在下で、抗α11インテグリンscFv α11_A_001−A03−MH(グレーの線)、陽性対照scFv C11(黒い点線)または陰性対照scFv FITC−8(黒塗りのピーク)とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、1/20 PEコンジュゲート抗His抗体(R&D Systems)とともにインキュベートした。抗α11β1インテグリン特異的scFvの陽性結合を、陰性対照CT17 scFvで染色した細胞の97〜99%で見られるものよりも大きなFL2蛍光強度として記録した。マウス抗His抗体とのインキュベーションの前に、細胞を予めブロッキングし、200μg/mlのマウスIgG/2×106全白血球の存在下で維持し、T細胞、B細胞およびNK細胞をCD3+、CD19+、CD3−CD56+細胞(左のグラフのそれぞれゲート5、4および3)として同定した。単球(R2)および顆粒球(R1)は、独特な前方分散および側方分散特性によって定義され、さらにはCD3−CD19−CD56−として定義された。
【図5】mBSAの関節内注射後3日目の誘発および非誘発膝におけるTc−99m取り込みにより測定される関節腫脹の比。凡例:「CT17」=対照Ab(コレラ毒素に対する)、「A03」=例示的抗α11全IgG抗体。
【図6】膝関節全体の切片における滑膜空間の浸潤細胞としての炎症の組織学的スコア。0〜3の任意の尺度:0−炎症無し、1−軽度の炎症、2−中度の炎症、3−重度の炎症。凡例:「CT17」=対照Ab、「A03」=例示的抗α11抗体。
【図7】膝関節全体の切片における関節空間への細胞の滲出、浸潤の組織学的スコア。0〜3の任意の尺度:0−炎症無し、1−軽度の炎症、2−中度の炎症、3−重度の炎症。凡例:「CT17」=対照Ab、「A03」=例示的抗α11抗体。
【図8】画像解析によって測定された膝蓋軟骨における関節炎誘発後15日目のプロテオグリカン(PG)の枯渇。凡例「CT17」=対照Ab、「A03」=例示的抗α11抗体。
【図9】PG枯渇−A03は最初の実験において関節炎誘発後15日目のPG枯渇を軽減する。図11Aは膝蓋からの組織学的スコアリングを示し(図10に0おける画像解析によりスコアリングとして示される)、図11Bは外側脛骨の組織学的スコアリングを示し、図11Cは膝の全体像を示す。
【図10】PG枯渇−A03は第2の実験における関節炎誘発後15日目のPG枯渇を軽減する。図12Aは膝蓋骨からの組織学的スコアリングを示し、図12Bは外側脛骨の組織学的スコアリングを示す(外側脛骨に関してp=0.02)。
【図11】A03は関節炎誘発後15日目に測定される骨棘の大きさを減少させる。
【図12】G6PIにより誘発された関節炎における関節炎の罹患率(頻度)。処置はG6PI感作後7、10、13および16日目に行った。
【図13】G6PIにより誘発された関節炎における関節炎に平均臨床スコア。処置はG6PI感作後7、10、13および16日目に行った。
【図14】G6PI感作後13日目の体重変化(%)。対照抗体で処置したマウスは平均10%体重が低下した。A03処置マウスは平均5%体重が低下し、対照群と比べて体重低下は明らかに減少した(p=0.08)。
【実施例】
【0251】
実施例1−本発明の例示的抗体(「A03と呼ぶ」)の生産
α11β1インテグリンに特異的なn−CoDeR(登録商標)由来ヒト抗体の同定
全ヒト抗体ライブラリーn−CoDeR(登録商標)(引用することにより本明細書の一部とされるSoderlind et al, 2000, Nat Biotechnol 18:852-6およびWO98/32845参照)を、α10β1インテグリンまたはα11β1インテグリンに対して特異性を有する抗体フラグメント(scFv)に関してスクリーニングした。標的インテグリン特異性の高い抗体の賦活を最大にするため、一連の陽性およびサブトラクティブパンニング法を合わせたものを考案した(下記付録参照)。scFv形式へ変換した後、抗体フラグメントを大腸菌で発現させ、適当であれば、FMAT技術(図1、FMAT分散プロット)を用い、α10β1インテグリンまたはα11β1インテグリンを発現するHek−293細胞との結合に関して陽性および陰性スクリーニングを行った。このようにして、α10β1インテグリンまたはα11β1インテグリンに特異的な遺伝子型が独特な数百の抗体フラグメントが同定された(表1)。
【0252】
抗体パンニング手順
PBS中、3%BSA、0.02%アジ化ナトリウム、0.1%NP40、10mM MgCl2および0.01mM CaCl2のバッファー中、n−CoDeR(登録商標)scFvライブラリーのファージ原株を、Dynalsの説明書に従い、ウサギ−抗α10インテグリンおよびウサギ−抗α11インテグリンポリクローナル抗体を結合させた免疫チューブおよびトシル活性化ダイナビーズM−280(Dynalカタログ番号142.04)でのBSAコーティングを用い、4℃で一晩予備選択した。最初のパンニングは4℃で一晩、ウサギ−抗α11ポリクローナル抗体を結合させた(上記の通り)磁気ビーズに付加した、α11β1を発現する15×106のHEK293細胞のライゼートに対して行った。ビーズを9×1mlのバッファーで洗浄し、結合しているファージをトリプシンで溶出させ、他所に記載されているように増幅させた(Hallborn & Carlsson, 2002, Biotechniques Dec;Suppl:30-37)。
【0253】
1回目のパンニングから増幅したファージを上記のように緩衝させ、1回目のパンニングの場合と同様にポリクローナル結合ダイナビーズに対して予備選択を行った後、ウサギ−抗α11ポリクローナル抗体を有するダイナビーズに付加された10×106 HEK293 α11β1細胞のライゼートを用いて1回目のパンニングと同様に選択を行った。洗浄後(9×1mlバッファー)、結合しているファージをトリプシンで溶出させ、増幅させた。
【0254】
2回目のパンニングから増幅させたファージを、10%FCS、10mM MgCl2および10μM CaCl2を含有するDMEM細胞培地で希釈し、α10β1を発現する45×106 C2C12細胞およびα10β1を発現する13×105 HEK細胞に対して4℃で一晩、予備選択を行った。次に、ファージを4℃で4時間α11β1とともにインキュベートし、組換えC2C12細胞(5×106細胞を使用)上に展示させた。結合していないファージを除去するために40%フィコール(2%FCS、10mM MgCl2および10μM CaCl2を含有)による密度勾配遠心分離を行った後、残った結合剤を76mMクエン酸pH2.5および200mMトリエタノールアミンの双方で溶出させた。溶出したファージのプールをscFv形式へ変換させるため、大腸菌HB101Fで増幅させた。
【0255】
scFv形式への変換
c−myc/6xhis scFv形式への変換(EagI変換)
タンパク質IIIは、scFvとファージ粒子の間の機能的連結であり、遺伝子IIIを除去すると、可溶性scFvが産生される。n−CoDeR Lib2000選択からのファージミドDNAをEagIde消化して遺伝子IIIを除去し、6×hisタグをscFvフラグメントおよびc−mycタグに隣接させた。このプラスミドを連結し、遺伝子III内に制限部位を有するEcoRIで「キラーカット(killer-cut)」を行い、再連結したファージミドを排除した。このプラスミドDNAを化学コンピテント大腸菌TOP10に形質転換させた。
【0256】
n−CoDeR(登録商標)ライブラリーから単離されたユニークな遺伝子型を有するα11インテグリン特異的抗体フラグメントの数
【表1】
【0257】
標的化されたインテグリンα鎖に対する抗原の特異性
これまでにインテグリンヘテロ二量体と結合する4つの異なるコラーゲン、すなわち、α1β1、α2β1、α10β1およびα11β1が同定されている。異なる種類のコラーゲンに対する結合に関するそれらの個体間選択性は完全には特徴付けられてない。コラーゲン結合インテグリンの中でも、α10β1 α11βlインテグリンおよびα11β1インテグリンは高い相同性を示す(リガンド結合I−ドメインのアミノ酸レベルで60%の同一性)(Gullberg et al, 2003, Structure and function of alphalpha11beta1 integrin. In: D. Gullberg (Ed) I Domains in Integrins.参照)。結論として、これらのインテグリンヘテロ二量体のいずれかに対するいくつかの抗体は他のものと交差反応性がある可能性がある。
【0258】
細胞外マトリックスのターンオーバーに対する単離された抗α11β1インテグリン抗体の、見られた推定効果が、α11β1インテグリンヘテロ二量体との排他的相互作用によるものであるとすることができるように、この複合体に対する抗体の詳細な特異性を調べた。このように、抗α11β1インテグリンscFvを、フローサイトメトリーを用い、α10β1インテグリンでトランスフェクトされた、またはα11β1インテグリンでトランスフェクトされたHek−293細胞との結合に関して調べた。このアプローチにより、29の抗α11β1インテグリンscFv(検討した38のうち)がα11β1インテグリントランスフェクト細胞と強く結合したが、α10β1インテグリントランスフェクト細胞とは結合しないことが確認された(図2)。
【0259】
抗インテグリン抗体の詳細な特異性を、抗α11β1インテグリンscFvの、α11β1インテグリンでトランスフェクトされた(α10β1インテグリンでトランスフェクトされたものではない)C2C12細胞のコラーゲンIIコーティングプレートへの接着を選択的に阻害する能力によりさらに示す(図3)。インテグリンの構造とインテグリンの活性化および結合の際に起こる構造変化を考えれば、細胞接着(すなわち、インテグリンの結合)を妨げる薬剤が潜在的に興味深い。リガンド結合部位(すなわち、MIDAS)において、またはその付近で結合する抗体またはscFvはリガンドの相互作用を物理的に妨げることができる。MIDAS付近で結合しないが(例えば、非I−ドメイン結合剤)、細胞接着に対してなお作用を有する抗体またはscFvは、インテグリンα鎖構造、インテグリンの活性化またはα/β鎖の相互作用を妨げる可能性がある。
【0260】
最後に、in vitroおよびin vivo試験系において機能を検討する前に、抗α11β1インテグリン抗体クローンは、顆粒球、単球、Tリンパ球、Bリンパ球およびナチュラルキラー細胞を含む定義された末梢血白血球部分集団と交差反応しないことが示された(図4)。
【0261】
例示的抗α11抗体に関する配列情報
抗α11完全IgG抗体(A03)の重鎖−アミノ酸配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAA
LGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSWTVPS
SSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFL
FPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK
PREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKA
KGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPE
NNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHY
TQKSLSLSLGK
[配列番号11]
【0262】
抗α11完全IgG抗体(A03)の軽鎖−アミノ酸配列
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLI
YGYNERPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSG
HVVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPG
AVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRS
YSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
[配列番号12]
【0263】
ScFv形式の抗α抗体(A03)−アミノ酸配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGOGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQSVLTQP
PSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGYNER
PSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSGHWFGG
GTKLTVLG
[配列番号13]
【0264】
抗α11完全IgG抗体(A03)の重鎖−ヌクレオチド配列
GAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGG
GGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTCGTT
ACTACATGCACTGGGTCCGCCAAGTTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTG
GGTATCGGGTGTTAGTTGGAATGGCAGTAGACGCACTATGCAGAC
TCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACAC
GCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACTGCCGTG
TATTACTGTGCGAGAGTAAGTGGAGATGGCTACAATTTTGGCGCCTG
GGGCCAGGGTACACTGGTCACCGTGAGCTCAGCTTCCACCAAGGGC
CCATCCGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAG
CACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGG
TGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACAC
CTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCG
TGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGC
AACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTG
AGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCATCATGCCCAGCACCTGAGTTC
CTGGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACAC
TCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACG
TGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGG
CGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTC
AACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGA
CTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGC
CTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGC
CCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGAT
GACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACC
CCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAA
CAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCT
TCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGG
GAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACT
ACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTAAA
[配列番号16]
【0265】
抗α11完全IgG抗体(A03)の軽鎖−ヌクレオチド配列
CAGTCTGTGCTGACTCAGCCACCCTCAGCGTCTGGGACCCCCGGGCA
GAGGGTCACCATCTCCTGCACTGGGAGCAGCTCCAACATCGGGGCA
GGTTATGATGTACACTGGTATCAGCAGCTCCCAGGAACGGCCCCCAA
ACTCCTCATCTATGGTTATAATGAGCGGCCCTCAGGGGTCCCTGACC
GATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACCTCAGCCTCCCTGGCCATCAGT
GGGCTCCGGTCCGAGGATGAGGCTGATTATTACTGTGCAGCATGGG
ATGACAGCCTGAGTGGTCATGTGGTATTCGGCGGAGGAACCAAGCT
GACGGTCCTAGTCAGCCCAAGGCTGCCCCCTCGGTCACTCTGTTCC
CGCCCTCCTCTGAGGAGCTTCAAGCCAACAAGGCCACACTGGTGTGT
CTCATAAGTGACTTCTACCCGGGAGCCGTGACAGTGGCCTGGAAGG
CAGATAGCAGCCCCGTCAAGGCGGGAGTGGAGACCACCACACCCTC
CAAACAAAGCAACAACAAGTACGCGGCCAGCAGCTATCTGAGCCTG
ACGCCTGAGCAGTGGAAGTCCCACAGAAGCTACAGCTGCCAGGTCA
CGCATGAAGGGAGCACCGTGGAGAAGACAGTGGCCCCTACAGAATG
TTCA
[配列番号17]
【0266】
ScFv形式の抗α11抗体(A03)−ヌクレオチド配列
GAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGG
GGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTCGTT
ACTACATGCACTGGGTCCGCCAAGTTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTG
GGTATCGGGTGTTAGTTGGAATGGCAGTAGACGCACTATGCAGAC
TCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACAC
GCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACTGCCGTG
TATTACTGTGCAAGAGTAAGTGGAGATGGCTACAATTTTGGCGCCTG
GGGCCAGGGTACACTGGTCACCGTGAGCAGCGGTGGAGGCGGTTCA
GGCGGAGGTGGATCCGGCGGTGGCGGATCGCAGTCTGTGCTGACTC
AGCCACCCTCAGCGTCTGGGACCCCCGGGCAGAGGGTCACCATCTCC
TGCACTGGGAGCAGCTCCAACATCGGGGCAGGTTATGATGTACACT
GGTATCAGCAGCTCCCAGGAACGGCCCCCAAACTCCTCATCTATGGT
TATAATGAGCGGCCCTCAGGGGTCCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAA
GTCTGGCACCTCAGCCTCCCTGGCCATCAGTGGGCTCCGGTCCGAGG
ATGAGGCTGATTATTACTGTGCAGCATGGGATGACAGCCTGAGTGGT
CATGTGGTATTCGGCGGAGGAACCAAGCTGACGGTCCTAGGT
[配列番号18]
【0267】
最初のスクリーニング実験は、scFv形式の例示的抗体「A03」を用いて行った。
【0268】
in vivo試験は、完全IgG形式の例示的抗体「A03」を用いて行った。
付録I.−抗α11β1インテグリンscFvを単離するために用いた選択戦略
【0269】
選択戦略E〜G(下のグラフ)を、α11β1インテグリン特異的抗体を賦活する目的で行う選択により例示する。
【0270】
【表2】
【0271】
実施例II−抗原誘発性関節炎に対する本発明の例示的抗体の効果
この研究の目的は、C57B1/6マウスにおいてmBSA抗原による誘発された関節炎(AIA)における、本発明の例示的完全IgG抗体(「A03」と呼ぶ)の効果を調べることであった。
【0272】
材料および方法
試験施設
Experimental Rheumatology & Advanced Therapeutics, University Medical Center Nijmegen, Geert Grooteplain 26-28, 6525 GA Nijmegen, The Netherlands
【0273】
実験計画
実験プロトコールを下記の表2および3に示す。
【0274】
表2
【表3】
【0275】
表3
【表4】
動物
【0276】
10週齢の雄C57B1/6マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME, USA) (23〜25g)を研究に用いた。マウスは到着後少なくとも1週間馴化させた。食物および酸性水は自由に摂らせた。マウスは毎週秤量した。
抗原誘発性関節炎の誘発
【0277】
抗原誘発性関節炎は、記載のもの(1)と同様のプロトコールを用いて誘発した。要するに、−21日目に、フロイントノ完全アジュバント(CFA)中に乳化させた100μgのメチル化BSA(mBSA, Sigma)(100μl mg/ml)をマウスに感作させた。注射は側腹部と後脚の足蹠の双方に分割した。熱失活させた百日咳菌(Bordetella pertussis)(RIVM, Bilthoven, The Netherlands)1mlを付加的アジュバントとして腹腔内(i.p.)投与した。最初の感作から7日後に動物の頚部にCFA中、100μg(100μl mg/ml)のmBSAおよび1mlの百日咳菌(i.p.)を追加投与した。追加注射から2週間後に、マウスの右膝関節に60μg mBSA(mBSA)を関節内注射することで関節炎を誘発させた。
抗体
【0278】
抗体はBiolnvent International AB (Lund, Sweden)のよって生産されたものである。
試験抗体の投与
【0279】
抗体は、Cartela AB (Lund, Sweden)から試験施設に到着した後、4℃で保存した。適正な濃度を得るために抗体を無菌PBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶解させ、無菌条件下、4℃で保存した。1日目に抗体薬剤の投与を開始し、13日目に終了した。抗体投与は1、5、9および13日目に行った。抗体は200μl/マウスをi.p.投与した。抗体の投与は常に1日の同じ時間−/+1時間に行った。以下のスキームで各マウスに合計900μgの抗体を投与した。
【0280】
表4
【表5】
同位元素取り込みの指標としての炎症スコアリング
【0281】
関節の腫脹は3日目と10日目に膝関節における99Tcペルテケート(pertechate)取り込みを用いて測定した。要するに、マウスに12μCiの99Tcをi.p.注射した後、クロルアルドヒドレートで鎮静させた。30分後、膝を固定位に保ちつつ、視準されたNa−I−シンチレーションクリスタルを用いて、γ線照射を評価した。関節炎は右膝(注射)と左膝(注射無し)における99Tc取り込みの比率としてスコアリングした。比率が1.1より大きい場合に、右膝関節の炎症を示すものとした。この方法はこれまでに、組織学的所見とよく相関することが示されている(2)。
組織学
【0282】
右および左双方の膝関節全体を、従前に記載されたように(1)、組織学向けに切開および処理した。要するに、膝をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で3日間固定し、5%緩衝ギ酸中で脱石灰した後、パラフィンワックス中に包埋した。ミクロトームで半連続の冠状7μm切片を作製した。これらの切片をヘマトキシリンでおよびエオジン(H&E)で、またはサフラニン−O(Safranin O: Merck #1.15948)およびFastgreen(Fast Green FCF: Merck # 1.04022)で染色した。組織学的パラメーター(関節炎症、プロテオグリカン枯渇、骨棘形成)を光学顕微鏡によりスコアリングした。また、膝蓋におけるプロテオグリカン枯渇はデジタル画像解析を用いてスコアリングした。
炎症のスコアリング
【0283】
膝全体の前面切片をH&Eで染色した。炎症の組織学的スコアリングは光学顕微鏡によった。炎症の程度を滑膜空間中の浸潤細胞の量として、また、関節空間中の細胞の滲出量としてスコアリングした。滲出および浸潤は双方とも、0〜3の任意の尺度:0−炎症無し、1−軽度の炎症、2−中度の炎症、3−重度の炎症を用いてスコアリングした(1)。
【0284】
軟骨損傷のスコアリング
プロテオグリカンの欠如の指標として、膝関節全体の切片をサフラニン−OおよびFastgreenで染色した。種々の軟骨層(膝蓋骨、膝蓋大腿骨、外側脛骨、外側大腿、内側脛骨、内側大腿)の6部位からの赤色染色の欠如を、0〜3の任意の尺度:0−プロテオグリカン枯渇無し、1−軽度のプロテオグリカン枯渇、2−中度のプロテオグリカン枯渇、3−重度のプロテオグリカン枯渇を用いて評価した(1)。また、膝蓋におけるプロテオグリカン枯渇はデジタル画像解析を用いてスコアリングした。
骨棘のスコアリング
【0285】
骨棘の大きさは、H&E染色した内側大腿からの切片に対して、0〜3の任意の尺度:0−骨棘無し、1−軟骨形成の徴候、2−小さな骨棘、3−大きな骨棘を用いてスコアリングした。
統計学
【0286】
軟骨のプロテオグリカン枯渇損傷は、ノンパラメトリックKruskal−Wallis検定およびダンの事後検定を用いて分析した。群間差異はマン・ホイットニー検定を用いて検定した。総ての部位を個別に検定した。テクネチウムの取り込みは、スチューデントのt検定を用いて検定した。統計学的計算を行うため、グラフパッドプリズム4ソフトウエアを用いた。
【0287】
結果
関節炎マウスにおいてα11インテグリンに対する抗体による処置は炎症を軽減した
【0288】
膝関節へのmBSAのi.a.注射により1つの関節炎を誘発した。この疾病は発症が早く、i.a.注射後1日目に関節の腫脹が最大に達し、7日まで徐々に低下した。さらに8日後(i.a.注射から15日後)、疾病がより慢性化した際にマウスを屠殺した。関節炎マウスを抗α11インテグリン抗体(A03)で処置すると、マウスの膝関節の腫脹程度ならびに関節中への炎症性細胞の浸潤程度として評価される炎症に有意な軽減がもたらされた。抗α11インテグリン抗体(A03)で処置したマウスでは、mBSAのi.a.注射3日後に、誘発された膝関節の腫脹に対照抗体(CT17)で処置したマウスに比べて有意な軽減が見られた(P=0.035、T検定)(図5)。その後の2回の実験でも同様の結果が示された。
【0289】
抗α11インテグリンで処置したマウスは、実験の終了時(i.a.注射15日後)における滑膜空間(図6)および関節空間(滲出)(図8)中の浸潤細胞の量が、対照抗体で処置したマウスに比べて少なかったが、この違いは統計学的に有意な差ではなかった。
関節炎マウスにおいてα11に対する抗体による処置は軟骨を破壊から保護する
【0290】
抗α11インテグリン抗体で処置されたマウスでは、対照抗体で処置されたマウスに比べ軟骨の破壊が少なかった(P=0.015)(図8)。軟骨破壊の量は、0〜3の任意の尺度を用いて、ならびに画像解析を用いて、組織切片におけるプロテオグリカンの欠如としてスコアリングした。プロテオグリカン枯渇に対する抗α11インテグリン抗体による処置の保護効果は膝においてスコアリングされた6箇所総てで見られた。
【0291】
図9および10は、任意の尺度評価を用いてプロテオグリカン(PG枯渇)およびその低下として評価される膝蓋および外側脛骨に対する抗α11インテグリン抗体による処置の効果をさらに示す。2つの異なる実験を表しているこれら2つの図面で分かるように、A03による処置は膝蓋および外側脛骨の双方においてPG枯渇を軽減する。実験2にいける外側脛骨のA03でのPG枯渇の軽減は有意である(p=0.02)。これら2つの図9および10は、膝蓋の画像解析(図9に相当、任意の尺度で分析された膝蓋)と比較しなければならず、その結果が図8に示されている(P=0.015)。
【0292】
図11は、骨棘の大きさに対する抗α11インテグリン抗体により処置の効果を示している。この図面で分かるように、対照抗体(CT17)による処置に比べ、A03抗体で処置した後に骨棘の大きさの低下が見られる。
【0293】
結論
本発明の例示的抗α11インテグリン抗体(A03)による処置は、関節の腫脹および炎症性細胞の浸潤として評価される、抗原誘発性関節炎(AIA)で誘発された関節炎マウスの関節の炎症を軽減する。さらに、抗α11インテグリン処置はAIAマウスにおいて軟骨を退化から保護し、これはプロテオグリカン分解の低下として示される。本発明者らの結果は、3日目の炎症(TC取り込み)と15日目の軟骨退化(PG枯渇)の間に明白な相関を示す。
【0294】
現在確立されているRAに対する処置は、同じAIAモデルで腫脹を軽減する(NSAIDS)か、または腫脹と浸潤細胞の量を軽減する(抗TNFα)が、軟骨に対して保護効果を有するものはない(6〜9)。これは、抗α11インテグリン処置が単独療法としての、または他の療法との併用としてのRA療法に大きな可能性を有することを示唆する。
【0295】
参照文献
【0296】
実施例III−グルコース−6−リン酸誘発性関節炎に対する本発明の例示的抗体の効果
この研究の目的は、DBA/1マウスにおいて例示的完全IgG抗体(「A03と呼ぶ」)の作用を試験することであった。
【0297】
材料および方法
試験施設
Cartela AB, Scheelvagen 22, 223 63 Lund, Sweden
【0298】
実験計画
実験プロトコールを下記表5および6に示す。
【0299】
表5
【表6】
【0300】
表6
【表7】
【0301】
動物
雌DBA1マウスをTaconic M&B, Denmarkから入手した。マウスにEMI Expanded(special Diet Services Ltd, UK)および水を自由に摂らせた。マウスには少なくとも1週間、新しい環境に対する馴化期間を設けた。水およびケージは1週間に2回交換した。必要に応じて餌を満たした。マウスは蓋を強化したMac3ケージ当たり7匹を飼育した。
抗原
【0302】
組換えヒトグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(G6PI)は、Kamradt (Deutches Rheumaforschungszentrum Berlin, Berlin, Germany)から、従前に記載されているように(3)製造されたものを購入した。
グルコース−6−リン酸イソメラーゼ誘発性関節炎の誘発
【0303】
マウスにCFA(Difco, Detroit, MI, USA)中に1:1比で乳化させた200μgの組換えヒトG6PIを感作させた。100μl量を尾の基部に皮下注射した(3)。
試験薬の投与
【0304】
抗体は4℃で保存した。抗体を無菌PBSに溶解させ、無菌条件下4℃で保存した。抗体の投与はhG6PI注射後、7、10、13、16日目に行った。抗体は200μl/マウスをi.p.投与した。抗体の投与は常に1日の同じ時間−/+1時間に行った。以下のスキームで各マウスに合計880μgの抗体を投与した。
【0305】
表7
【表8】
炎症のスコアリング
【0306】
各脚について1〜15の範囲の拡張スコアリングプロトコールを用い、これまでに記載されているような(4)関節炎のマウス1匹につき最大スコア60とした。各関節炎(発赤および腫脹)の足指および指を1とし、影響を受けた足首を5とした。
組織学
【0307】
後足および足首をリン酸緩衝ホルマリン(pH7.4)中で3日間固定し、EDTA中で脱石灰した後、パラフィンワックスに包埋した。ミクロトームで半連続の5μm切片を作製した。前足をEDTA中で脱石灰した後、OCTに包埋し、凍結させた。クリオスタットで半連続の5μm切片を作製した。
軟骨損傷および骨破壊のスコアリング
【0308】
後足および足首のパラフィン切片をヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)またはサフラニン−Oで染色した。切片を、勾配作製系(5)を用いたプロテオグリカン枯渇に関して、さらにはまた光学顕微鏡による骨棘形成および骨破壊に関して等級付けした。プロテオグリカン枯渇はまた、デジタル画像解析を用い、赤色染色の欠損としてスコアリングした。
免疫染色
【0309】
凍結切片を室温まで温めた後、アセトン中、−20℃で10分間固定した。スライドをPBSで5分3回洗浄した後、37℃で30分間、ヒアルロニダーゼ(PBS中2mg/ml;Sigma)とともにインキュベートした。もう一度、PBS中で5分3回洗浄した後、切片をPBS中に希釈した4%ヤギ血清(Sigma, G-9023)ととともに30分間インキュベートして遮断した。切片を室温で60分間、PBS中4%ヤギ血清中に1:100希釈したビオチニル化IgG4−抗α11インテグリンAb(=20μg/ml)とともにインキュベートした後、PBS中で5分3回洗浄した。その後、切片を蛍光(Alexa Fluor 448またはCy3)コンジュゲートストレプトアビジンとともにさらに60分間インキュベートした。PBS中でさらに5分3回洗浄した後、スライドにVectashieldを取り付け、蛍光顕微鏡下で観察した。
結果
【0310】
マウスにおいてα11インテグリンに対する抗体による処置はG6PI誘発性関節炎の罹患率および重篤度を軽減した
【0311】
組換えヒトグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(rhG6PI)を感作させると、前足と後足の双方に重度の腫脹を有する多発性関節炎が誘発される。関節炎の臨床徴候はまず感作後7日目に表れ、急速に進行し、9日目に最大に達した(図12)。感作後18日目にマウスを塗擦した。
【0312】
7日目に処置を開始した後、注射10、13、16日後にマウス当たり合計880μgの試験抗体を投与した。TNFR−p75−IgFc(エンブレル)を陽性対照として用いた。エンブレルによる処置は、対照抗体(CT17)で処置した群における100%に対して、関節炎の罹患率を50%低下させた。A03処置は、関節炎の罹患率および重篤度に明らかな低下をもたらした(図12および13)。A03で処置したマウスは総て関節炎を発症し(9日目で罹患率100%)、その後、50%のマウスが回復し(p<0.05)(図13)、罹患率はエンブレル処置群と同レベルまで低下した(p=0.051)(図12)。図13は、各群の個体の関節炎スコアの平均として評価される関節炎の重篤度を示す。
【0313】
関節炎の試験中、全般的な疾病状態の指標としてマウスを秤量した。A03処置マウスは対照処置マウスに比べ、有意ではないが明らかな体重低下の減少を示した(p=0.08)(図14)。
【0314】
以下の表8は、これらの試験で調べた各群において発症した関節炎の罹患率(頻度)を示す。
【0315】
表8
【表9】
結論
【0316】
抗α11インテグリン抗体(A03)による処置は、多発性関節炎モデルであるグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(rhG6PI)誘発性関節炎において、関節炎マウスの関節の炎症を軽減する。発症日に試験抗体を投与し、その後、試験の終了時まで3日おきに投与する処置スキームを用いると、A03処置が50%の関節炎マウスに回復をもたらしたことが実証できる。関節炎の罹患率は試験群においては100から50%に低下し、エンブレル処置の場合の罹患率レベルを下回った。
【0317】
参照文献
実施例IV−例示的「A03」抗体と競合するモノクローナル抗体の作製
【0318】
本実施例の目的は、ハイブリドーマ技術を用い、例示的「A03」抗体と競合するマウスモノクローナル抗体を作製することである。
材料および方法
感作プロトコール
【0319】
HEK細胞により産生された組換えタンパク質を感作に用いる。このタンパク質は、α11インテグリンのスターク領域に対する抗体応答を命令するために、ヒトα11の上方−下方ウシドメイン(E−ULCD)を含む。
E−ULCDの配列は、
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDVVSINCNIRLV
PNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP
[配列番号19]
である。
【0320】
C57b1/6−α11ノックアウトマウス(詳細は、引用することにより本明細書の一部とされるWO03/101497に記載の通り)に感作させた。
【0321】
FACS分析によって免疫応答を追跡できるように、示された時点で採血を行った。次の感作スキームを適用した。
【0322】
0日目
0日目にFACS分析用の採血を行い、α11スタークタンパク質(このα11配列の種はヒトであり、Veiling et al. J. Biol. Chem. 1999, 274:25735-25742に記載されている) (Cartela AB, バッチ番号53; 070509; ピーク1+2をプール, E-ULCD)(80μg/マウス) を音波処理によりCFA(フロイントの完全アジュバント,Sigma)に乳化させ、4匹のC57b1/6−α11koマウスの尾の基部に注射した。
【0323】
14日目
FACS分析用に採血し、IFA(フロイントの不完全アジュバント,Sigma)中、α11スターク(E−ULCD)(50μg/マウス)で追加免疫した。
【0324】
22日目
FACS分析用に採血
【0325】
24日目
融合用にNS0融合相手を増殖
【0326】
31日目
予備融合 PBS中、α11スターク(バッチ番号53 E−ULCD;20mM Tris、1mM Ca2+、バッチI)(50μg/マウス)で追加免疫。
【0327】
34日目
B細胞と骨髄腫細胞系統NS0(ECACC)の融合
【0328】
34日目のNS0細胞(070625)との融合
3匹のC57b1/6−α11koマウスの脾臓を用いた。単細胞懸濁液を作製し、9mlの無菌ddH2Oを用い(10秒)溶解させた後、1mlの10倍PBSを加えて溶解を停止させた。細胞を血清不含D−MEMで洗浄し(2回)、50mlファルコン試験管内で、洗浄したNS0細胞のアリコートと混合した(PEGとの融合の際に有害となり得る遊離タンパク質を除去するため)。これらのペレットを水浴中で37℃に維持した。37℃にて攪拌しながら、ガラスピペットを用い、1分間かけてD−MEM中50%PEG(1500MW)1mlを滴下した。予温した2mlの血清不含D−MEM2分かけて加えた。予温した7mlの血清不含D−MEMを3分かけて滴下した。細胞を5分間500xgで遠心分離した。上清を廃棄し、予温した完全D−MEM(ピルビン酸塩、10%FCS、PEST)、3プレートにNr1 40ml)、4プレートにNr3 50ml)、4プレートにNr10 50mlを加えた。細胞を室温で10分間休止させた後、およそ100μlの細胞を10mlピペットで96ウェル細胞培養プレートに加えた(1ウェル当たり1滴)。
【0329】
融合は、引用することにより本明細書の一部とされる'Current Protocols in Immunology, Unit 2.5, "Production of Monoclonal antibodies" (ISBN ISSBN: 1934-3671, Wileyのプロトコールに従って行った。
【0330】
35日目
100μlの2倍HAT(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン、
Apoteket, Sweden)培地を選択用ウェルに加えた。
【0331】
38日目
死細胞からの有害な上清を除去し、新鮮なHT培地(ヒポキサンチン−チミジン, Apoteket, Sweden)を加えた。
【0332】
44日目
FACSスクリーニング用の100μl培地を除去し、ウェルにHT培地を加えた。
【0333】
FACSスクリーニングによるスターク特異的ハイブリドーマの同定
候補ハイブリドーマを含むウェルの上清を、フローサイトメトリー(FACS)を用い、スターク領域に対する反応性に関して調べる。これらのクローンをそれらのスターク反応性および抗α11インテグリンスターク候補ハイブリドーマの望ましくない潜在的交差反応性に関してさらに特性決定した。
スターク特異的ハイブリドーマの同定:
【0334】
抗α11インテグリンスターク候補ハイブリドーマの、関連のα10−インテグリンとの望ましくない交差反応性を、α10−インテグリンでトランスフェクトされたHEK細胞およびα10−インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞を用いて調べる。他種、すなわちマウス由来の相当するスタークに対する交差反応性は、マウスα11−インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞を用いて調べる。
【0335】
α11スタークハイブリドーマのサブクローニング
FACS陽性細胞を、制限希釈法(およそ0.3細胞/ウェル)を用いてサブクローニングする。ハイブリドーマの生存を確保するためのフィーダー細胞としてラット胸腺細胞を用いる。種々のサブクローニング段階でハイブリドーマ細胞を凍結させる。
【0336】
全長ヒトα11インテグリンに対する抗体の作製
全長ヒトα11インテグリンに対する抗体の作製。該全長α11インテグリンタンパク質は、細胞質テールに特異的なポリクローナル抗血清を用い、ヒトα11でトランスフェクトされたHEK細胞ライゼートからアフィニティー精製する(WO00/75187に記載の通り)。
【0337】
感作プロトコール:全長α11−インテグリンプロジェクト
0日目
4匹の雌C57b1/6−α11koマウスを用い、尾の基部にCFA中、40μg/マウスの全長α11タンパク質(バッチ番号070717)を感作させた。FACS分析用に採血した。
13日目
13日目にFACS分析用に採血した。
16日目
IFA中、10μg/マウスの全長α11タンパク質(バッチ番号070717)を追加投与した。
26日目
PBS中、10μg/マウスの全長α11インテグリンおよび40μgのスタークα11タンパク質(バッチ番号53 E−ULCD)/マウスをi.p.追加投与した。
29日目
脾臓およびリンパ節細胞とNS0細胞との融合。DNA用の尾の切片および血清を保存。
【0338】
29日目のNS0細胞との融合
3匹の感作α11koマウスの脾臓および排出リンパ節(LN)からの細胞を融合に用いた。単細胞懸濁液を作製し、脾細胞の赤血球を、0.84%塩化アンモニウムを用いて溶解させた。細胞を血清不含D−MEMで洗浄し(2回)、50mlファルコン試験管内で、洗浄したNS0細胞のアリコートと混合した。これらのペレットを水浴中で37℃に維持した。37℃にて攪拌しながら、DMEM中、50%PEG1500MW1mlを1分間かけて滴下した。予温した2mlの血清不含DMEM2分かけて滴下した。予温した7mlの血清不含DMEMを3分かけて滴下した。細胞を5分間500xgで遠心分離した。上清を廃棄した後、予温した完全DMEM(ピルビン酸塩、10%FCS、PS)をLNおよび脾臓調製物に加えた(Nr1では50ml、Nr3では50ml、Nr10では50ml)。1融合当たり4.5個のプレートに各ウェルに1滴(およそ100μl)ずつ加えた。4時間後に、100μlの2倍HAT培地を加えた。
融合は、引用することにより本明細書の一部とされる'Current Protocols in Immunology, Unit 2.5, "Production of Monoclonal antibodies" (ISBN ISSBN: 1934-3671, Wileyのプロトコールに従って行った。
【0339】
日
100μlの培地を除去し、ウェルにHT培地を加えた。
【0340】
融合後11日目に、上記のように陽性ウェルのFACSスクリーニングのために上清を採取する。陽性ウェルを同定した後、上清をヒトおよびマウスα11インテグリン間の交差反応性に関して調べた(C2C12野生型細胞ならびにヒトα11およびα10−インテグリンでトランスフェクトされた細胞を用いるハイブリドーマスクリーニング)。
【0341】
BMコンダイムH1添加培地(Roche, DE)中でハイブリドーマ細胞をサブクローニングした(0,3細胞/ウェル)。1コロニーのみが増殖しているウェルを特異性スクリーニングのために選択した。
【0342】
例示的抗体「A03」との競合に関するスクリーニング
さらに、新たに作製されたクローンを、例示的抗体「A03」の結合を遮断するその能力に関して調べる。FACSに基づく方法を用いる。ヒトα11インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞を、新たに作製された精製抗体とともに、細胞表面で発現されるα11−インテグリンに対するそれらのエピトープを占有するよう、1000ng/mlまでの約1.6の希釈系でインキュベートする。第二段階では、ビオチニル化された例示的抗体A03を加える。これらの抗体があるエピトープ領域を共有していれば、ヒトIgGの結合が減少する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグリンα11サブユニットまたはそれを含んでなるヘテロ二量体(例えば、α11β1ヘテロ二量体)に対して結合特異性を有する結合剤、および炎症性症状の処置におけるその使用に関する。具体的には、本発明は、関節炎疾患などの炎症性症状の処置に用いるための抗体および抗原結合フラグメント、その変異体、融合体および誘導体、ならびにそれを使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは細胞−細胞および細胞−マトリックス相互作用による多様な事象を調節する
インテグリンは、元々、内部の細胞骨格と隣接環境または細胞外細胞マトリックスとを結びつける介在細胞表面構造として定義されており、機能上「死んだ」分子と見なされていた。この理由は、1つには、ほとんどのインテグリンはシグナル伝達モチーフを欠いた極めて小さな細胞質テールだけを含むという知見に基づいていた。今日、インテグリンは、他の細胞表面受容体との相互作用および細胞内アダプタータンパク質の動員を介して、インサイドアウト(Phillips et ah, 1988, Blood 71:831-43.)、アウトサイドイン(Law et al, 1999, Nature 401:808-811.)の細胞シグナル伝達に関与する極めて複雑な構造であることが知られ、シグナルを細胞膜を横断して伝達することが示されている(Hynes, 2002, Cell 110:673-87;総説としては、Miranti & Brugge, 2002, Nat Cell Biol 4:E83-90.を参照)。
【0003】
最もよく研究されている数種のインテグリンを、モノクローナル抗体または小分子阻害剤を用いて遮断すると、細胞−細胞および細胞−マトリックスの接触が排除されて、発達、組織修復、脈管形成、炎症および止血を含む多様な生体プロセスの干渉が起こることが示されている。これらの抗体のいくつかは臨床段階治験の対象となっている(Shimaoka & Springer, 2003, Nat Rev Drug Discov 2:703-16)。
【0004】
このように、インテグリンが介在する免疫調節作用および細胞外マトリックス調節作用は、それらの天然ECMリガンドまたは抗β1インテグリン抗体を介したインテグリンの刺激にいっそう大きく限定されてきた(Loeser, 2002, Biorheology 39:119-24)。このような研究は、他のインテグリン受容体と同様に、軟骨細胞インテグリンのインサイドアウト、アウトサイドイン、側方シグナル伝達関与を実証した。
【0005】
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は、滑膜性関節を侵し、疼痛、腫脹を生じ、患者の運動を低下させる炎症性の自己免疫疾患である。総ての末梢関節がRAに侵される可能性があるが、罹患が最も多いのは手、足および膝の関節である。RAでは、未知の理由で免疫系が滑膜(関節包を裏打ちしている組織)を攻撃し、局部的炎症を起こす。炎症はやがてその関節内の軟骨および骨の破壊、ならびにその関節を支えている靱帯、腱および筋肉の破壊を引き起こす。リウマチ様の滑膜では、活性化されたT細胞、B細胞、マクロファージ、繊維芽細胞、内皮細胞および血漿細胞が確認できる。管系における処置の多くは、これらの特定の細胞のより標的化された阻害をねらいとしている。RAの実際の原因はまだ知られていないが、強い遺伝的要素がある。
【0006】
RAは世界の成人人口の0.5〜2.0%に見られ、患者の3人に1人が20年以内に重度の不能状態となっている。RAの罹患率は男性よりも女性で3倍高く、発症のピーク年齢は通常20〜45歳の間である。死亡率は、年齢および性別の合致した対照よりもRA罹患者で27%高く、女性のサブセットではいっそう高い。これは、研究によっておよそ5〜18年の余命の低下を表す。ラジオグラフィー的に明らかな関節疾患は、最初の2年では患者の>67%、最初の5年では患者の>72%に見られる。
【0007】
RAは、滑膜性関節を標的とする慢性の全身性炎症性疾患であり、一連の関節外徴候を伴うことが多い。この関節炎は、関節軟骨へのリンパ球および顆粒球の浸潤、滑膜繊維芽細胞およびマクロファージの増殖、ならびに関節を取り巻いている滑膜性内面の新血管新生という複数細胞の炎症プロセスを特徴とする。この増殖プロセスには、関節の腫脹、紅斑および疼痛が含まれるが、関節の破壊ならびに骨密度および構造の低下への進行も起こる。
【0008】
RAの病理学的メカニズムは十分理解されていない。しかしながら、マクロファージ、樹状細胞、繊維芽細胞様滑膜細胞、肥満細胞、T細胞およびB細胞などの多くの細胞種が関与していると考えられる。RA滑膜では、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−15などのサイトカインおよび種々のケモカインの放出が実在する。TNF−αおよびIL−1のレベルは疾病の症状および関節の損傷と強く相関している。血中のリウマチ様因子(RF)および抗シトルリン抗体などの自己抗体のレベルはRAに特徴的であり、この疾病の診断および予後マーカーとなる。
【0009】
関節リウマチはまず、いくつかの異なる細胞種の流入によって示唆される滑膜の炎症性応答を特徴とする。この内面は肥厚し、腫脹する。さらに、骨の破壊が見られる。
【0010】
RAでは疾病改善薬が利用できるが、それらは副作用のために使用が制限され、多くの患者は既存の治療に応答しない。過去20年の間、RA処置のもっと積極的なアプローチは、疾病の進行を休止させることを試みる疾病改善抗リウマチ薬(DMARDS)の開発に至った。最も処方されているDMARDは、元々は癌の処置に用いられていたメトトレキサートである。他のものとしては、金塩、抗マラリア薬、スルファサラジン、テトラサイクリンおよびシクロスポリンが含まれる。医師は通常、疾病の発症時にDMARDを処方するが、中度〜重度のRA罹患者にはNSAID、コルチコステロイドおよびDMARDが同時に与えられる。
【0011】
メトトレキサートは大多数のRA患者で効果的であるが、多くの人がこの薬剤の副作用に耐えられず、およそ50%の患者がついには処置が上手く行かず、その後は生物応答改質剤など、より最近の治療革新が望ましくなる。1998年に市場に出たレフルノミド(Arava; Aventis)はメトトレキサートとメカニズムおよび副作用が類似しており、メトトレキサート療法に失敗した患者の第二選択薬として用いられている。最も好結果の新規RA療法は、エタネルセプト(Eribrel; Amgen)、インフリキシマブ(Remicade; J&J/Centocor)およびアダリムマブ(Humira; Abbott)などの腫瘍壊死因子−α(TNFα)阻害剤である。しかしながら、TNFα阻害剤は、長期間の使用では、感染症および癌の増加などの副作用の可能性がある。
【0012】
骨関節炎
骨関節炎(OA)は、進行性の変性性関節疾患であり、最も多い形態の関節炎である。骨関節炎は加齢と強い関係があり、高齢者における疼痛および能力障害の主要な原因である。種々の機械的、代謝的または構成的傷害がOAを誘発し得る。これらの傷害は明らかにならないままである場合(「原発性」OA)が多いが、外傷などの明白な原因が明らかになる場合もある(「二次的」OA)。関節組織(軟骨、骨、滑膜、関節包、靱帯、筋肉)は総て、健康および機能に関して互いに依存し合っている。あるものに対する傷害は他に影響を及ぼし、関節全体に影響を及ぼす一般的なOA現象を招く。OAプロセスには、新しい組織、最も著しくは骨(「骨棘」の産生および関節形状のリモデリングが含まれる。多くの場合、OAはこれらの傷害を代償し、無痛であるが解剖学的に変化した機能性関節をもたらす(「代償性」OA)。しかしながら、これが上手く行かない場合もあり、進行性の損傷、関連の症状および「関節不全」を有するOA患者としての顕現に至る。このような見方は、OAの臨床的不均質性および変動のある臨床転帰を説明する。
【0013】
骨関節炎は、65歳を超える身体障害の主因であり、人口の推計10%に影響を及ぼしている。OA関連の身体障害の罹患率は男性よりも女性で高く、85歳を超える女性では常に25%にのぼる。予測では、2020年までにOA関連障害を有する人の数は66%増加することが示唆されている。もしOAの医学的治療および予防のための疾病改善戦略を見つけることができなければ、次の30年で、関節置換術を必要とする股関節部および膝の重度症候性OAを有する人の数にも同様の増加が予測される。
【0014】
骨関節炎(OA)は、単一の疾病またはプロセスではなく、1以上の滑膜性関節の構造的不全、そしてやがては症候的不全をもたらすある範囲のプロセスおよび障害の臨床的および病理学的転帰である。OAは、肋軟骨下の骨、靱帯、関節包、滑膜および関節周囲の筋肉ならびに関節軟骨を含む関節全体を含む。結局、関節軟骨は、繊維形成、亀裂、潰瘍形成および関節表面の全厚の減少を伴って退化する。
【0015】
骨関節炎の処置には広範囲のアプローチが含まれるが、手術を除いてほとんどの処置は待期的である。これは、ほとんどの処置が痛みを緩和し、それにより、患者の関節機能を高めるものであることを意味するが、これらの処置は疾病の経過を変化させない。外科的介入には、関節置換および骨切り術が含まれるが、これらは骨関節炎の進行を逆転させ、特定の関節に対して長期の機能改善および疼痛緩和をもたらし得る。
【0016】
従って、また、OAを処置するための選択肢を改善する差し迫った必要がある。OAに対する既存の薬物療法は症状(主として疼痛)を軽減し、ある程度の効果しかなく、患者は実質的な疼痛負荷があるままである場合も多い。このように、これまでにOAにおいて疾病改善効果が実証された薬剤はない。
【0017】
従って、本発明は、RAおよびOAなどの炎症性症状に対する新規な処置およびそれに用いるための新規な結合剤を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0018】
本発明の第一の態様は、炎症性症状を処置するための薬剤の製造における、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体の使用を提供し、ここで、該抗体もしくはフラグメントは以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHW[配列番号6]
を含んでなる。
【0019】
当業者であれば、上記配列番号1〜6のアミノ酸配列は相補性決定領域(CDR)を表すことが分かるであろう。
【0020】
本発明の第二の態様は、炎症性症状の診断薬または予後薬の製造における、上記の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用を提供する。
【0021】
本発明の第三の態様は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を検出および/または画像化するための薬剤の製造における、上記の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用を提供する。
【0022】
本発明の関連の態様は、
(a)炎症性症状を処置するための、上記の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用;
(b)炎症性症状を診断または予後するための、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用;
(c)インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を検出および/または画像化するための、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用
を提供する。
【0023】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する「結合特異性」とは、インテグリンα11サブユニット、またはα11β1ヘテロ二量体などのそのヘテロ二量体と結合することができる、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を意味する。
【0024】
一実施形態において、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体は、軟骨細胞、繊維芽細胞、間葉細胞(例えば、間葉幹細胞)または樹状細胞などの細胞の表面に存在する。
【0025】
さらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、in vivoにおいて、すなわち、インテグリンα11サブユニットが体内に存在する生理学的条件下で、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と結合することができる。このような結合特異性は、α11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現するトランスフェクト細胞を用い、例えば、ELISA、免疫組織化学、免疫沈降、ウエスタンブロット、クロマトグラフィーおよびフローサイトメトリーなどの当技術分野で周知の方法によって決定することができる(実施例参照)。抗体の特異性をどのように評価するかの例は、例えば、引用することにより本明細書の一部とされるHarlow & Lane, "Antibodies: A Laboratory", Cold Spring Habor Laboratory Press, New Yorkに示されている。
【0026】
当業者であれば、インテグリンα11サブユニットはヒトまたは動物インテグリンα11サブユニットであり得ることが分かるであろう。一実施形態において、インテグリンα11サブユニットはヒトである。既知のインテグリンα11サブユニットの例は、引用することにより本明細書の一部とされる国際特許出願(公報)WO00/75187(Cartela AB)に開示されている。
【0027】
もう1つの実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と選択的に結合することができる。「選択的に結合することができる」とは、別のタンパク質(特に、α11と最も高い同一性を有するα10、α1およびα2などの他のインテグリン)に対するよりもインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量と少なくとも10倍強く、例えば、少なくとも50倍強く、または少なくとも100倍強く結合するこのような抗体由来結合部分を含むものとする。この結合部分は生理学的条件下、例えば、in vivoでインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と選択的に結合し得る。相対的結合強度を評価するのに好適な方法としてイムノアッセイが含まれ、例えばこの場合、結合部分は抗体である(引用することにより本明細書の一部とされるHarlow & Lane, "Antibodies: A Laboratory", Cold Spring Habor Laboratory Press, New York参照)。あるいは、結合は競合アッセイを用いるか、またはBiacore(登録商標)分析(Biacore International AB, Sweden)を用いて評価することもできる。
【0028】
さらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と排他的に結合する。
【0029】
当業者であれば、抗体またはその抗原結合フラグメントの結合特異性は、成分である重鎖と軽鎖の可変領域内の相補性決定領域(CDR)の存在により付与されることが分かるであろう。本発明の使用では、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性は、上記の配列番号1〜6として定義されるCDRまたは同じ結合特異性を保持するその変異体配列の存在により付与される。
【0030】
「結合特異性を保持する」とは、該抗体またはその抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、インテグリンα11サブユニットとの結合に関して抗体「A03」と競合することができる(配列番号11および下記実施例を参照)。
【0031】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜6として特定されるCDRを含んでなる抗体と同じインテグリンα11サブユニット上のエピトープと結合し得る。
【0032】
「エピトープ」とは、本明細書において、抗体が結合する分子の部位、すなわち、抗原のある分子領域を意味するものとする。エピトープは、例えばアミノ酸配列によって決定される直鎖エピトープ、すなわち一次構造、または二次構造、例えば、ペプチド鎖のβシートもしくはαヘリックスへの折りたたみにより、または三次構造、例えば、ヘリックスもしくはシートが折りたたまれるか、または配列された抗原の三次元構造を与える方法により定義される三次元エピトープであり得る。
【0033】
インテグリンα11サブユニットの好適なエピトープ(またはその一部)の例は以下の通りである。
WNGCNEDEHCVPDLVLDARSDLPTAMEYCQRVLRKPAQDCSAYTLSF
DTTVFIIESTRQRVAVEATLENRGENAYSTVLNISQSANLQFASLIQKED
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDVVSINCNIRLV
PNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP
[配列番号7]
【0034】
インテグリンα11のさらなる好適なエピトープとしては、配列番号7のフラグメント、融合体または天然変異体が含まれ得る。
【0035】
例えば、好適なフラグメントは、配列番号7で示されるヒトα11インテグリン配列のほぼアミノ酸778番〜アミノ酸1142番、またはヒトα11インテグリン配列のほぼアミノ酸804番〜ほぼアミノ酸826番のアミノ酸配列を本質的に含んでなるペプチドなどの細胞外延長領域、特に、アミノ酸配列EYCQRVLRKPAQDCSAYTLSFDT[配列番号8]を本質的に含んでなるペプチド、またはヒトα11配列のほぼアミノ酸(aa)番号:aa778〜aa800、ほぼaa800〜820番、ほぼaa820〜840番、ほぼaa840〜860番、ほぼaa860〜880番、ほぼaa880〜900番、ほぼaa900〜920番、ほぼaa920〜940番、ほぼaa940〜960番、ほぼaa960〜980番、ほぼaa980〜1000番、ほぼaa1020〜1040番、ほぼaa1040〜1060番、ほぼaa1080〜1100番、ほぼaa1100〜1120番、ほぼaa1120〜1142番を含んでなるか、またはそれからなるいずれかのポリペプチドフラグメントを含んでなるか、またはそれからなる。
【0036】
上記の総てのアミノ酸番号は、ヒトα11配列アミノ酸番号から算出され、WO00/75187(引用することにより本明細書の一部とされる)に開示されているヒトインテグリンα11のアミノ酸1番はMであり、aa2番はDであり、aa3番はLであり、aa4番はPであり、aa5番はRであり、aa6番はGであり、aa7番はLであるなどである。
【0037】
好適なエピトープ融合体としては、上記のペプチドとStrepTagテールの融合体が含まれる。
【0038】
上記のエピトープポリペプチド配列の、天然変異体などのエピトープ変異体としては、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも60%の同一性、好ましくは、前記配列と少なくとも70%または80%または85%または90%の同一性、より好ましくは、前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含んでなるポリペプチドを含む。
【0039】
同一性%は、例えば、Expasy facilityサイト:
(http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN_form.html)
のLALIGNプログラム(Huang and Miller, Adv. Appl. Math. (1991) 12:337-357)を用い、パラメーターとしてグローバルアライメントオプション、スコアリングマトリックスBLOSUM62、オープニングギャップペナルティー−14、エクステンディングギャップペナルティー−4を用いるなど、当技術分野で周知の方法によって決定することができる。
【0040】
あるいは、2つのポリペプチド間の配列同一性%は、例えば、ウイスコンシン大学ジェネティックコンピューティンググループのGAPプログラムなどの好適なコンピュータープログラムを用いて決定することもでき、同一性%は、その配列が最適にアラインされたポリペプチドに関して計算されると考えられる。
【0041】
抗体「A03」の結合特異性を保持する抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体はまた、抗体「A03」と同じ1以上の生物特性を保持していてもよい(下記参照)。
【0042】
試験抗体が結合に関して第二の抗体と競合することができるかどうかを判定するための方法は当技術分野で周知である。
【0043】
1つの好適な方法が、α11結合抗体A03の評価のためのサンドイッチELISAである。例えばポリクローナル抗体の好適な量は、ヒトα11の細胞質テールに対するポリクローナルウサギ抗体10μg/mlなどである。次に、この抗体は、例えばMaxisorp Nunc(商標)などの96ウェルプレートにコーティングされた場合、捕捉抗体として用いられる。コーティングは、例えばプレートを4℃で一晩インキュベートした後、例えばTBS−T(20mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaClおよび0.05%Tween−20)で3回洗浄することによるなど、当技術分野で公知の標準法に従って行う。ウェルを、例えば室温にて、TBS−T中3%のBSAで1時間ブロッキングすることができる。次に、ヒトα11発現ベクターで安定トランスフェクトされたHEK細胞からの細胞抽出液をアッセイバッファー(例えば、0.1%BSA、1mM MgCl2および10μM CaCl2を添加したTBS−T)で希釈する。次に、例えばウェル当たり50μlなどの好適な量の希釈細胞抽出液を加え、例えば室温で1時間、インキュベートして、コーティングされた抗体と結合させる。その後、プレートをTBS−Tで3回洗浄する。次に、ビオチンとコンジュゲートさせた一次抗体(A03または対照抗体)を、例えばアッセイバッファー中2μg/mlなどの好適な量で加える。次に、プレートを、例えば室温で1時間など、可能であれば、A03および対照抗体の結合を可能とするに十分な時間インキュベートした後、TBS−Tで3回洗浄する。ビオチニル化一次抗体を用いる場合には、ストレプトアビジン−HRP抗体(DAKO)を用い、アッセイバッファーで相応に希釈し(1:5000)、ウェルに加えればよい。その後、プレートを、例えば室温で1時間など、ストレプトアビジン−ビオチン複合体が形成するに十分にインキュベートする。例えばTBS−Tで3回などの洗浄の後、プレートをペルオキシダーゼ基質(例えば、OPD SigmaFast, Sigma)で現像する。比色定量変化の吸光度を好適な波長(この場合490nm)で測定する。
【0044】
一次抗体がコンジュゲートされない場合には、同じELISAを代わりに、例えばSerotecからの、例えばマウス抗ヒトIgG4−HRPなどの、HRPと直接コンジュゲートされたヒトIgG4に対する二次抗体とともに、あるいはコンジュゲートされない場合には、次いで例えばDAKOからのHRPコンジュゲート抗マウス抗体とインキュベートすることができる。その後、プレートを洗浄し、上記で概略を示したように現像する。
【0045】
さらなる方法としては、上記で概略を示したサンドイッチELISAを逆転させることを含み、代わりに、捕捉抗体としてα11抗体A03を用いる。この場合、α11を含む細胞抽出液を加え、以下の改変を施して上記で概略を示したようにELISAを行う。
【0046】
一次抗体として、ヒトα11の細胞質テールに対するポリクローナルウサギ抗体をアッセイバッファーで希釈する(1μg/ml)。二次抗体として、HRPコンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体を用いることができる(例えば、DAKO、1:5000希釈)。その後、プレートを洗浄し、上記で概略を示したように現像する。
【0047】
さらなるELISAアッセイでは、エピトープ修飾または遮断抗体を評価することができる。これは、例えば以下の改変を施して上記で詳細に示したサンドイッチELISAを用いるなど、いくつかの方法で行うことができる。
【0048】
捕捉抗体ならびにα11を上記で詳細に示したように96ウェルプレートに加える。一次抗体を適用する前に、プレートをアッセイバッファー中10μg/mlの試験抗体、例えば、エピトープ修飾または遮断抗体とともにインキュベートする。プレートを室温で15分間インキュベートし、その後、ビオチンとコンジュゲートさせた一次抗体(A03または対照抗体)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、上記で概略を示したように現像する。
【0049】
試験抗体、例えば、エピトープ修飾または遮断抗体を評価するために逆サンドイッチELISAも使用可能である。このELISAでは、α11抗体A03を捕捉抗体として使用することができる。次に、α11を含有する細胞抽出液を上記で概略を示したように加え、種々のコンジュゲート、可能性のある修飾抗体を一次抗体として用いることができる。
【0050】
試験抗体が結合に関して二次抗体と競合することができるかどうかを評価するためのさらなる方法は、下記の実施例IVに記載されているような蛍光活性化セルソーター(FACS(登録商標))などのフローサイトメトリーによる。
【0051】
競合抗体を同定するのに好適なさらなる方法は、引用することにより本明細書の一部とされるAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow & Lane, Cold Spring Habor Laboratory Press, New York, ISBN 0-87969-314-2(例えば、567〜569頁、574〜576頁、583頁および590〜612頁を参照)に開示されている。
【0052】
「抗体」とは、実質的に完全な抗体分子、ならびにキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(ここでは、天然ヒト抗体に対して、少なくとも1つのアミノ酸が突然変異している)、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、ならびにその抗原結合フラグメントおよび誘導体を含むものとする。例えば、この抗体はモノクローナル抗体であり得る。
【0053】
よって、一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる。
【0054】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は本質的に完全な抗体からなってよい。「本質的に〜からなる」とは、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、インテグリンα11サブユニットに対する結合特異性を保持するに十分な完全抗体の一部からなることを意味する。
【0055】
「抗体」とはまた、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEをはじめ、あらゆる抗体種を含む。しかしながら、一実施形態において、該抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子などのIgG分子である。
【0056】
一実施形態において、該抗体はIgG4分子である。
【0057】
さらなる実施形態において、該抗体は非天然抗体である。もちろん、抗体が天然抗体である場合、それは単離された形態(すなわち、天然に見られるものとは異なる)で提供される。
【0058】
抗体の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)ドメインは抗原認識に関与し、これは初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識された事実である。さらなる確証は齧歯類抗体の「ヒト化」により見出された。齧歯類起源の可変ドメインをヒト起源の定常ドメインに融合し、結果として得られる抗体が齧歯類により産み出された抗体の抗原特異性を保持するようにすることができる(Morrison et al (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851-6855)。
【0059】
総て1以上の可変ドメインを含む、抗体フラグメントの細菌発現を含む実験から知られているように、抗原特異性は可変ドメインにより付与され、定常ドメインとは独立である。これらの分子にはFab様分子(Better et al (1988) Science 240, 1041);Fv分子(Skerra et al (1988) Science 240, 1038);VHおよびVLパートナードメインがフレキシブルオリゴペプチドを介して連結されている単鎖Fv(ScFv)分子(Bird et al (1988) Science 242, 423; Huston et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879)および単離されたVドメインを含んでなるシングルドメイン抗体(dAb)(Ward et al (1989) Nature 341, 544)。特異的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関与する技術の一般的な総説はWinter & Milstein (1991) Nature 349, 293-299に見出される。
【0060】
よって、「抗原結合フラグメント」とは、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体と結合することができる抗体の機能的フラグメントを意味する。
【0061】
抗原結合フラグメントの例は、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択することができる。
【0062】
一実施形態において、抗原結合フラグメントはscFvである。
【0063】
完全抗体ではなく抗体フラグメントを用いる利点は数倍である。フラグメントが小さいほど、固体組織の浸透性が良好となるなど、薬理特性の向上をもたらすことができる。さらに、Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体フラグメントなどの抗原結合フラグメントを大腸菌(E. coli)内で発現させ、そこから分泌させることができ、よって、大量の該フラグメントを容易に生産することができる。
【0064】
また、修飾型の、例えば、ポリエチレングリコールまたはその他の好適なポリマーの共有結合によって修飾された、抗体およびその抗原結合フラグメントならびにその使用も本発明の範囲内に含まれる。
【0065】
抗体および抗体フラグメントを作製する方法は当技術分野で周知である。例えば、抗体は、抗体分子のin vivo産生の誘発、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(引用することにより本明細書の一部とされるOrlandi. et al, 1989. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:3833-3837; Winter et al, 1991, Nature 349:293-299)または培養細胞系統によるモノクローナル抗体分子の作製を用いるいくつかの方法のいずれか1つによって作製することができる。これらには、限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびエプスタイン−バーウイルス(EBV)−ハイブリドーマ技術が含まれる(引用することにより本明細書の一部とされるKohler et al, 1975. Nature 256:4950497; Kozbor et al, 1985. J Immunol. Methods 81:31-42; Cote et al, 1983. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030; Cole et al, 1984. Mol Cell. Biol. 62:109-120参照)。
【0066】
該抗体もしくは抗原結合フラグメントまたはその誘導体は組換え手段によって生産することができる。
【0067】
選択された抗原に対する好適なモノクローナル抗体は、例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、"Monoclonal Amtibodies: A manual of techniques", H Zola (CRC Press, 1988)および"Monoclonal Hybridoma Amtibodies: Techniques and Applications", J G R Hurrell (CRC Press, 1982)に開示されているものなどの既知の技術によって製造することができる。
抗体フラグメントはまた、当技術分野で周知の方法を用いて得ることもできる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Harlow & Lane, 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, New York参照)。例えば、本発明の抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解加水分解またはそのフラグメントをコードするDNAの大腸菌もしくは哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物またはその他のタンパク質発現系)での発現によって製造することができる。あるいは、抗体フラグメントは、常法により、完全抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることもできる。
【0068】
当業者であれば、ヒト療法または診断法にはヒト化抗体を使用可能であることが分かるであろう。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト抗体に由来する、好ましくは最小部分を有する、遺伝的に操作されたキメラ抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体には、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補性決定領域が、望ましい官能基を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域に由来する残基で置換されている抗体が含まれる。いくつかの例では、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒトヒト残基で置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも導入された相補性決定領域またはフレームワーク配列にも見られる残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に総てを含み、ここでは、相補性決定領域の総てまたは実質的に総てが非ヒト抗体のそれに相当し、フレームワーク領域の総てまたは実質的に総てが関連のあるヒトコンセンサス配列のそれに相当する。ヒト化抗体は最適には、一般にヒト抗体に由来する、Fc領域などの抗体定常領域の少なくとも一部も含む(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Jones et al, 1986. Nature 321:522-525; Riechmann et al, 1988, Nature 332:323-329; Presta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596参照)。
【0069】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基(導入残基と呼ばれることが多い)は一般に導入可変ドメインから取られる。ヒト化は、ヒト相補性決定領域を対応する齧歯類相補性決定領域で置換することにより、本質的に記載の通りに行うことができる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Reichmann et al, 1988. Nature 332:323-327; Verhoeyen et al, 1988, Science 239:1534-15361;米国特許第4,816,567号参照)。よって、このようなヒト化抗体は、完全なヒト可変ドメインよりも実質的に少ないドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は、いくつかの相補性決定領域残基および可能性としてはいくつかのフレームワーク残基が齧歯類抗体の類似部位由来の残基で置換されているヒト抗体であってよい。
【0070】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリーを含む当技術分野で公知の種々の技術を用いて同定することができる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Hoogenboom & Winter, 1991, J. Mol. Biol. 227:381; Marks et al, 1991, J. Mol. Biol. 222:581; Cole et al., 1985, In: Monoclonal antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77; Boerner et al, 1991. J. Immunol. 147:86-95, Soderlind et al., 2000, Nat Biotechnol 18:852-6およびWO98/32845参照)。
【0071】
一度、好適な抗体が得られれば、例えば、ELISA、免疫組織化学、フローサイトメトリー、免疫沈降、ウエスタンブロットなどにより、抗体の結合特異性または生物活性などの活性に関してそれらを試験することができる。生物活性は特定の特徴に関する読み取りを用いる種々のアッセイで試験することができる。本発明の抗体の1以上の生物活性の例としては次のものがある。
a)軟骨の退化からの保護(例えば、プロテオグリカン含量の減少)
b)関節の炎症(例えば、腫脹)の軽減;および/または
c)炎症性細胞の浸潤の軽減
【0072】
前記生物活性を試験するのに好適なアッセイの例は当技術分野で公知であり、本明細書の実施例でも示されている。
【0073】
本発明の第一の態様の一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜3で示されるCDRを含んでなる重鎖可変領域を含んでなる。例えば、該重鎖可変領域は、配列番号9:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGQGTLVTVSS[配列番号9]
のアミノ酸配列を含んでなり得るか、それから本質的になり得るか、またはそれからなり得る。
【0074】
本発明の第一の態様のさらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号4〜6で示されるCDRを含んでなる軽鎖可変領域を含んでなる。例えば、該軽鎖可変領域は、配列番号10:
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLI
YGYNERPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSG
HVVFGGGTKLTVLG
[配列番号10]
のアミノ酸配列を含んでなり得るか、それから本質的になり得るか、またはそれからなり得る。
【0075】
よって、一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる重鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0076】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号11のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか、またはそれからなる重鎖および/または配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか、またはそれからなる軽鎖を含んでなり得る。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAA
LGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSWTVPS
SSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFL
FPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK
PREEQFNSTYRWSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKA
KGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPE
NNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHY
TQKSLSLSLGK
[配列番号11]
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLI
YGYNERPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSG
HVVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPG
AVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRS
YSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
[配列番号12]
【0077】
さらなる例示的実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号13のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQWGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGOGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQSVLTQP
PSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGYNER
PSGWDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSGHWFGG
GTKLTVLG
[配列番号13]
【0078】
この配列は本発明の方法に用いるための例示的「A03」scFv分子に相当する(リンカー配列は下線で示される)。所望により、この配列はまた、例えばC末端にc−mycおよび/またはヒスチジンタグを含んでもよい。
EQKLISEEDLSGSAAAHHHHHH[配列番号14]
【0079】
本明細書において「アミノ酸」とは、標準的な20の遺伝的にコードされているアミノ酸およびそれらの対応する「D」型立体異性体(天然の「L」型に対して)ωアミノ酸他の天然アミノ酸、非通常アミノ酸(例えば、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸など)および化学的に誘導体化されたアミノ酸(下記参照)を含む。
【0080】
「アラニン」または「Ala」または「A」など、アミノ酸が具体的に挙げられている場合、この用語は、特に断りのない限り、L−アラニンとD−アラニンの双方を指す。他の非通常アミノ酸も、そのポリペプチドに所望の機能特性が保持されている限り、本発明のポリペプチドに好適な成分であり得る。示されているペプチドに関し、それぞれコードされているアミノ酸残基は、適当であれば、通常アミノ酸の通称に相当する一文字表記により表される。
【0081】
一実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド結合剤はL−アミノ酸を含んでなるか、またはそれからなる。
【0082】
当業者であれば、本発明は、定義されたポリペプチドの変異体、融合体および誘導体、ならびに該変異体または誘導体の融合体、ならびにその使用を、このような変異体、融合体および誘導体がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する限り、包含することが分かるであろう。
【0083】
変異体は、組換えポリヌクレオチドを用い、当技術分野で周知のタンパク質工学および部位指定突然変異誘発の方法を用いて作製することができる(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Molecular Cloning : a Laboratory Manual, 3rd edition, Sambrook & Russell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。
【0084】
該ポリペプチドの「融合体」とは、他のいずれかのポリペプチドと融合されたポリペプチドを含むものとする。例えば、該ポリペプチドは、該ポリペプチドの精製を容易にするために、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)またはAタンパク質などのポリペプチドと融合させることができる。このような融合体の例は当業者に周知である。同様に、該ポリペプチドは、His6などのオリゴ−ヒスチジンタグまたは周知のMycタグエピトープなどの、抗体により認識されるエピトープと融合させることができる。該ポリペプチドの任意の変異体または誘導体との融合体もまた、本発明の範囲に含まれる。インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持するなど、望ましい特性を保持する融合物が好ましいと考えられる。
【0085】
該融合体は本発明のポリペプチドに望ましい特徴を付与するさらなる部分を含んでなることができ、例えば、該部分はポリペプチドの検出もしくは単離、またはポリペプチドの細胞取り込みの促進に有用であり得る。該部分は例えば、当業者に周知のような、ビオチン部分、放射性部分、蛍光部分、例えば、小蛍光団もしくは緑色蛍光タンパク質(GFP)蛍光団であり得る。該部分は、当業者に公知のような免疫原性タグ、例えば、Mycタグであってもよいし、あるいは当業者に公知のように、ポリペプチドの細胞取り込みを促進することができる親油性分子またはポリペプチドドメインであってもよい。
【0086】
「ポリペプチドの変異体」とは、保存性または非保存性のいずれかの、挿入、欠失および置換を含むものとする。特に、このような変化が該ポリペプチドの活性を実質的に変化させないポリペプチドの変異体を含むものとする。例えば、このような変化がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を実質的に変化させないポリペプチドの変異体を含むものとする。
【0087】
ポリペプチド変異体は、上記で示された1以上のアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性、例えば、上記で明示された1以上のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0088】
2つのポリペプチド間の配列同一性%は、例えば、ウイスコンシン大学ジェネティックコンピューティンググループのGAPプログラムなどの好適なコンピュータープログラムを用いて決定することができ、同一性%は、その配列が最適にアラインされたポリペプチドに関して計算されると考えられる。
【0089】
このアライメントはあるいは、Clustal Wプログラム(Thompson et al, 1994, Nuc. Acid Res. 22:4673-4680に記載の通り)を用いて行うこともできる。
【0090】
使用するパラメーターは次の通りであり得る:
ファースト・ペアワイズ・アライメント・パラメータ:K−タプル(ワード)サイズ;1、ウインドウサイズ;5、ギャップペナルティー;3、トップダイアゴナルの数;5。スコアリング法:x%。
マルチプル・アライメント・パラメーター:ギャップオープンペナルティー;10、ギャップエクステンションペナルティー;0.05。
スコアリング法:BLOSUM。
【0091】
あるいは、BESTFITプログラムを用いて、ローカル配列アラインメントを決定することもできる。
【0092】
本発明のポリペプチド、変異体、融合体または誘導体は、修飾または誘導体化された1以上のアミノ酸を含み得る。
【0093】
1以上のアミノ酸の化学誘導体は機能的側基との反応により達成することができる。このような誘導体化分子としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、塩酸アミン、p−トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成している分子が含まれる。遊離カルボキシル基は、誘導体化して、塩、メチルおよびエチルエステルまたはその他の種のエステルおよびヒドラジド基を形成し得る。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化して、O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成し得る。また、化学誘導体として、20の標準アミノ酸の天然アミノ酸誘導体を含むペプチドも含まれる。例えば、4−ヒドロキシプロリンはプロリンに取って代わることができ、5−ヒドロキシリシンはリシンに取って代わることができ、3−メチルヒスチジンはヒスチジンに取って代わることができ、ホモセリンはセリンに、また、オルニチンはリシンに取って代わることができる。誘導体としてはまた、必要な活性が維持される限り、1以上のさらなる付加または欠失を含むペプチドも含む。含まれる他の修飾としては、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化またはチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化(例えば、アンモニアまたはメチルアミンによる)などの末端修飾がある。
【0094】
当業者であれば、ペプチドミメティック化合物も有用であり得ることが分かるであろう。よって、「ポリペプチド」には、インテグリンα11サブユニットと結合することができるペプチドミメティック化合物を含むものとする。「ペプチドミメティック」とは、治療薬としての特定のペプチドのコンフォメーションおよび望ましい特徴を模倣する化合物を指す。
【0095】
例えば、本発明のポリペプチドは、アミノ酸残基がペプチド(−CO−NH−)結合によって連結されている分子だけでなく、このペプチド結合が逆転している分子も含む。このような逆ペプチドミメティックは、例えば、引用することにより本明細書の一部とされるMeziere et al. (1997) J. Immunol. 159, 3230-3237に記載されているものなど、当技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。このアプローチには、主鎖に関わるが、側鎖の配向には関わらない変化を含むシュードペプチドの作製が含まれる。CO−NHペプチド結合の代わりにNH−CO結合を含む逆ペプチドは、タンパク質分解に対して遙かに高い耐性を有する。あるいは、本発明のポリペプチドは、1以上のアミノ酸残基が通常のアミド結合の代わりに−y(CH2NH)−結合によって連結されているペプチドミメティック化合物であってもよい。
【0096】
さらに別法では、このペプチド結合は、これらのアミノ酸残基の炭素原子間にスペースを保持する適当な適当なリンカー部分が用いられる限り、一緒に分配することができ、このリンカー部分がペプチド結合と実質的に同じ電荷分布および実質的に同じ二次元配置を有していれば特に好ましい。
【0097】
このポリペプチドは、エキソ型タンパク質分解消化に対する感受性を低下させる助けとなるように、そのN末端またはC末端において便宜にブロッキングすることができると考えられる。
【0098】
D−アミノ酸およびN−メチルアミノ酸などの種々の非コードまたは修飾アミノ酸もまた、哺乳類ペプチドを修飾するために使用されてきた。さらに、推定される生活性コンフォメーションが、環化などの共有結合的修飾により、またはラクタムの組み込みにより、または他の種類の架橋により安定化され得る(例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Veber et al., 1978, Proc. Natl. Acad. ScLi. USA 75:2636およびThursell et al., 1983, Biochem. Biophys. Res. Comm. 111:166参照)。
【0099】
多くの合成戦略の中でも一般的な主題は、ペプチドに基づくフレームワークにいくつかの環状部分を導入することであった。この環状部分はペプチド構造のコンフォメーションスペースを制限し、多くの場合、そのペプチドの、特定の生物学的受容体に対する特異性の増強をもたらす。この戦略の付加的利点は、ペプチドに環状部分を導入すると、細胞ペプチダーゼに対する感受性が消失されたペプチドも得られるということである。
【0100】
よって、例示的ポリペプチドは末端システインアミノ酸を含んでなる。このようなポリペプチドは、末端システインアミノ酸におけるメルカプチド基のジスルフィド結合の形成によりヘテロデティック(heterodetic)形態で、または末端アミノ酸間のアミドペプチド結合の形成によりホモデティック(homodetic)形態で存在し得る。上記で示したように、N、末端システインとC末端システインの間のジスルフィド結合またはアミド結合によって小ペプチドを環化すると、タンパク質分解が低下し、また、構造の堅牢性が高まることで、直鎖ペプチドで見られることがある特異性および半減期の問題が回避され、より特異性の高い化合物が生じ得る。ジスルフィド結合によって環化されたポリペプチドは、タンパク質分解をなお受けやすい遊離のアミノ末端およびカルボキシ末端を有するが、N末端アミンとC末端カルボキシルの間でのアミド結合の形成により環化されたペプチドは、それゆえに、もはや遊離のアミノ末端またはカルボキシ末端を含まない。例えば、本発明のペプチドは、C−N結合またはジスルフィド結合のいずれかによって連結可能である。
【0101】
本発明は、ペプチドの環化の方法により何ら限定されるものではないが、その環状構造がいずれかの好適な合成方法によって達成され得るペプチドを包含する。よって、ヘテロデティック結合としては、限定されるものではないが、ジスルフィド橋、アルキレン橋またはスルフィド橋による形成を含み得る。ジスルフィド橋、アルキレン橋またはスルフィド橋を含む環状ホモデティックペプチドおよび環状ヘテロデティックペプチドの合成方法は、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第5,643,872号に開示されている。環化法の他の例は、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第6,008,058号に記載および開示されている。
【0102】
環状安定ペプチドミメティック化合物の合成のためのさらなるアプローチとして閉環メタセシス(RCM)がある。この方法はペプチド前駆体を合成する工程と、それをRCM触媒と接触させてコンフォメーション的に制限されたペプチドを得ることを含む。好適なペプチド前駆体は2以上の不飽和C−C結合を含み得る。この方法は固相ペプチド合成技術を用いて行うことができる。この実施形態では、固相支持体に固定されている前駆体をRCM触媒と接触させた後、生成物を固相支持体から切断し、コンフォメーション的に制限されたペプチドを得る。
【0103】
引用することにより本明細書の一部とされるD. H. RichによりProtease Inhibitors, Barrett and Selveson, eds., Elsevier (1986)に開示されているもう1つのアプローチ,は、酵素阻害剤の設計において遷移状態類似体の概念の適用によりペプチドミミックスを設計したものである。例えば、スタリンの第二級アルコールは、ペプシン基質の切れやすいアミド結合の四面体遷移状態を模倣することが知られている。
【0104】
要するに、末端修飾は周知のように、プロテイナーゼ消化のよる感受性を低下させるのに、従って、溶液中、特に、プロテアーゼが存在する可能性のある体液中のペプチドの半減期を延長するのに有用である。ポリペプチドの環化もまた有用な修飾であり、環化により形成される安定構造のために、また、環状ペプチドで見られる生物活性の点で好ましい。
【0105】
よって、一実施形態において、ポリペプチド結合部分は環状である。しかしながら、別の実施形態では、ポリペプチドは直鎖である。
【0106】
本発明はまた、本発明のポリペプチド結合部分の薬学上許容される酸または塩基付加塩を含んでなる組成物も含む。本発明において有用な上述の塩基化合物の薬学上許容される酸付加塩を作製するために使用される酸は、無毒な酸付加塩、すなわち、とりわけ塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、二硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、二酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩[すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3ナフトエート)]塩などの薬理学上許容される陰イオンを含む塩を形成するものである。
【0107】
薬学上許容される塩基付加塩もまた、本発明の化合物の薬学上許容される塩形態を作製するために使用可能である。
【0108】
本来酸性である本発明の化合物の薬学上許容される塩基塩を作製するために試薬として使用可能な化学塩基は、このような化合物と無毒な塩基塩を形成するものである。このような無毒な塩基塩としては、限定されるものではないが、とりわけ、アルカリ金属陽イオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)ならびにアルカリ土類金属陽イオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)、アンモニウムまたは水溶性アミン付加塩、例えば、N−メチルグルカミン−(メグルミン)、および低級アルカノールアンモニウムおよび薬学上許容される有機アミンの他の塩基塩などのような薬理学上許容される陽イオンに由来するものが挙げられる。
【0109】
本明細書に記載のポリペプチドは、保存のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。好適ないずれの凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーク乾燥)および/または再構成技術を使用してもよい。当業者であれば、凍結乾燥および再構成が様々な程度の抗体活性損失をもたらし得ること(例えば、通常の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも大きな活性損失を有する傾向がある)、および補償するために使用レベルは上方調整しなければならない場合があることが分かるであろう。一実施形態では、凍結乾燥(フリーズドライ)したポリペプチドは、再水和した際にその活性(凍結乾燥前)の約20%以下、または約25%以下、または約30%以下、または約35%以下、または約40%以下、または約45%以下、または約50%以下を失活する。
【0110】
当業者であれば、本明細書に記載の抗体および抗原結合フラグメント、その変異体、融合体および誘導体がその単量体形態、またはホモもしくはヘテロ多量体(例えば、二量体、三量体、四量体、五量体など)形態で存在し得ることが分かるであろう。
【0111】
本発明のさらなる実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、治療部分および/または検出可能部分を含んでなる。
【0112】
「検出可能部分」とは、その部分が、本発明の化合物を患者に投与した後に標的部位に局在した際に、一般には非侵襲的に身体および局在した標的の部位の外側から検出可能なものである。検出可能部分は、検出可能な種の産生に直接または間接的のいずれかで関与する単一の原子または分子であり得る。よって、本発明のこの実施形態の結合剤は画像化および診断に有用である。
【0113】
好適な検出可能部分は医化学では周知であり、これらの部分とポリペプチドおよびタンパク質との連結は当技術分野で周知である。検出可能部分の例としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる:放射性同位元素(例えば、3H、14C、35S、123I、125I、131I、99Tc、111In、90Y、188Re)、放射性核種(例えば、11C、18F、64Cu)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン、カルボシアニン)、酵素標識(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、化学発光剤、ビオチニル基および二次リポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、標識は、潜在的立体障害を軽減するための、様々な長さのスペーサーアームによって結合させる。
【0114】
放射性標識またはその他の標識は、既知の方法で本発明のポリペプチドに組み込むことができる。例えば、結合部分がポリペプチドであれば、生合成可能であるか、または例えば水素の代わりにフッ素−19を含む好適なアミノ酸前駆体を用いる化学アミノ酸合成によって合成することができる。99mTc、123I、186Rh、188Rhおよび111Inなどの標識は、結合部分内のシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム−90はリシン残基を介して結合させることができる。123Iを組み込むためにはヨードゲン法(引用することにより本明細書の一部とされるFraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Comm. 80, 49-57)を使用することができる。参照文献(引用することにより本明細書の一部とされる"Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy", J-F Chatal, CRC Press, 1989)は、他の方法を詳細に記載している。
【0115】
上記のような抗体および抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、炎症性症状の処置に有効性を有する。
【0116】
「処置」とは、対象/患者の治療的処置および予防的処置の双方を含むものとする。「予防的」とは、患者または対象における炎症性症状の見込みを予防または軽減する、本明細書に記載のポリペプチドまたは処方物の使用を包含するために用いる。
【0117】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される炎症性症状の処置に有効性を有し得る。
【0118】
一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、関節リウマチまたは骨関節炎などの関節疾患の処置において有効性を有する。このような有効性は、マウスにおける関節炎モデル(実施例参照)などの好適な動物モデルで決定することができる。
【0119】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、in vitroおよび/またはin vivoにおいてコラーゲンの分解を調整(例えば、阻害)する能力を持ち得る。
【0120】
「調整する」とは、コラーゲンの分解速度を高める、または低下させることを含むものとする。コラーゲンの分解の阻害は完全なものであっても部分的なものであってもよい。例えば、コラーゲンの分解は、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の不在下でのコラーゲン分解に比べて10%以上、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害され得る。
【0121】
該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、次の医学的に有用な特性の1以上を示し得る。
a)軟骨の退化からの保護(例えば、プロテオグリカン含量の減少)
b)関節の炎症(例えば、腫脹)の軽減;および/または
c)炎症性細胞の浸潤の軽減
【0122】
上記の特性の試験方法は下記の実施例に記載されている。
【0123】
ゆえに、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、同じ動物モデルで腫脹を軽減する(NSAID)または腫脹および細胞浸潤(抗TNF抗体)を軽減する関節疾患に対する確立された療法を超える有利な特性を有し得るが、3つのパラメーター総てには影響を及ぼすことはできない。
【0124】
よって、本発明は次の方法:
a)軟骨部位に上記のような抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、軟骨を分解から保護するための方法;
b)関節に上記のような抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、関節炎症を軽減するための方法;および
c)関節に上記のような抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、炎症性細胞の関節への浸潤を軽減するための方法
を提供する。
【0125】
特に、本発明の第四の態様は、炎症性症状を有する個体を処置するための方法を提供し、該方法は個体に有効量の上記で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む。
【0126】
本発明の第五の態様は、個体において炎症性症状を診断または予後するための方法を提供し、該方法は個体に有効量の上記で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む。
【0127】
第六の態様は、個体の身体において、炎症性症状に関連するインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を画像化するための方法を記載し、該方法は個体に有効量の上記で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む。
【0128】
本発明の上記態様の一実施形態では、該方法は、個体において該化合物の位置を検出する工程をさらに含む。
【0129】
本発明の第七の態様は、個体において炎症性症状の進行を監視するための方法を提供し、該方法は、
(a)第一の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、その中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;
(b)第二の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、インテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;および
(c)工程(a)と(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を比較すること
を含み、工程(a)と比べた場合の工程(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量の増加が炎症性症状の進行の指標となる。
【0130】
本発明の第八の態様は、炎症性症状と関連する細胞を同定する方法を提供し、該方法は供試細胞のサンプル中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること、およびそれを陽性対照および/または陰性対照に対するインテグリンα11サブユニットタンパク質の量と比較することを含む。
【0131】
該陽性対照は炎症性症状に罹患している対象由来の細胞を含んでよく、該陰性対照は炎症性症状に罹患していない健康な対象に由来する細胞を含んでよい。
【0132】
本発明の一実施形態において、該細胞は軟骨細胞、繊維芽細胞および間葉細胞(例えば、間葉幹細胞)からなる群から選択される。
【0133】
サンプル中のインテグリンα11サブユニットの量は、当技術分野で周知の方法を用いて決定することができる。生体サンプル中のインテグリンα11タンパク質レベルをアッセイするのに好適な方法には、抗体に基づく技術が含まれる。例えば、組織中のインテグリンα11タンパク質発現は、従来の免疫組織学的方法を用いて検討することができる。これらの場合、一次抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)によって特異的認識が提供されるが、二次検出系は蛍光、酵素またはその他のコンジュゲートされた二次抗体が利用可能である。結果として、病理学的検査用の組織切片の免疫組織学的染色が得られる。また、ウエスタンブロットまたはドット/スロットアッセイのためにインテグリンα11タンパク質を遊離させるために、例えば尿素および中性洗剤を用いて組織を抽出することもできる(引用することにより本明細書の一部とされるJalkanen et al, 1985, J. Cell. Biol. 101:976-985; Jalkanen et al, 1987, J. Cell. Biol 105:3087-3096)。陽イオン性固相の使用に基づくこの技術では、インテグリンα11タンパク質の定量は、標品として単離されたインテグリンα11タンパク質を用いて果たすことができる。この技術は体液にも適用することができる。
【0134】
一実施形態において、供試細胞は、対応する正常な健康細胞に比べての、インテグリンα11サブユニットタンパク質レベルのアップレギュレーションにより、炎症性症状と関連する細胞として同定される。「アップレギュレーションされる」とは、インテグリンα11サブユニットタンパク質が、正常(健康)細胞におけるインテグリンの発現に比べて少なくとも10%上昇していることを意味する。例えば、インテグリンα11サブユニットタンパク質のレベルは少なくとも20%、30%、40%、50%またはさらには100%もしくはそれを超えて上昇され得る。
【0135】
さらなる実施形態において、上記の方法は、個体において該化合物の位置を検出する工程をさらに含む。
【0136】
化合物または抗体の検出は、臨床的画像化および診断の技術分野で周知の方法を用いて果たすことができる。必要とされる特定の方法は、該化合物または抗体に結合される検出可能な標識の種類によって異なる。例えば、放射性原子はオートラジオグラフィーまたはあるいは場合によっては上記のような磁気共鳴画像法(MRI)を用いて検出可能である。
【0137】
本発明の上記方法のさらなる実施形態において、炎症性症状は、関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される。
【0138】
例えば、炎症性症状は関節リウマチまたは骨関節炎などの関節疾患であり得る。
【0139】
本発明の第九の態様は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、前記抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該その変異体もしくはその誘導体の融合体と競合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する(ただし、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は配列番号1〜6のアミノ酸配列の総ては含まない)。
【0140】
好適な抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は、本発明の使用および方法に関して上記されている。
【0141】
インテグリンα11サブユニットとの結合に関して、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合することができるこのような抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は、当技術分野で周知の技術を用いて同定することができる。例えば、まずファージディスプレー抗体ライブラリーをスクリーニングしてインテグリンα11サブユニットと結合する抗体を同定し、その後、これらの抗体を、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合するものを同定するためにさらに試験することができる。
【0142】
本発明の第九の態様の抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体の一実施形態において、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体は細胞(軟骨細胞または繊維芽細胞など)の表面に局在する。
【0143】
当業者ならば、本発明の第九の態様の抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は本発明の上記使用および方法において有用性を有することが分かるであろう。
【0144】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子「と競合することができる」とは、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体は、配列番号11のscFv分子とインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合を少なくとも部分的に阻害する、または干渉することができることを意味する。競合結合は、ELISA(上記の通り)などの当業者に周知の方法によって決定することができる。
【0145】
例えば、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該その変異体もしくは誘導体の融合体は、配列番号11のscFv分子とインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合を、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、35%、またはさらには100%阻害することができる。
【0146】
一実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子と同じエピトープと結合することができる。
【0147】
もう1つの実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するscFv分子が結合するものとは異なるエピトープと結合することができる。
【0148】
本明細書において「エピトープ」とは、抗体が結合する分子の部位、すなわち、抗原のある分子領域を意味するものとする。エピトープは、例えばアミノ酸配列、すなわち一次構造により決定される直鎖エピトープ、または二次構造、例えば、ペプチド鎖の、βシートまたはαヘリカルへの折りたたみにより、またははヘリックスもしくはシートが折りたたまれ、または配列されて抗原の三次元構造を与える方法である三次構造により定義される三次元エピトープであってよい。
【0149】
本発明の第九の態様の一実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる。
【0150】
本発明の第九の態様のもう1つの実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、およびFab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)からなる群から選択される)抗原結合フラグメントを含んでなるか、またはそれからなる。
【0151】
該抗体はモノクローナル抗体などの組換え抗体であり得ると考えられる。例えば、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントはヒトまたはヒト化されていてもよい。
【0152】
本発明の第九の態様のさらなる実施形態において、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、in vitroおよび/またはin vivoにおいてコラーゲンの分解を調整(例えば、阻害)することができる。
【0153】
本発明の第九の態様の抗体、抗原結合フラグメント、変異体、融合体および誘導体は、例えば、関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される炎症性症状の処置において有用性を有し得る。
【0154】
本発明の第九の態様のさらなる実施形態では、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、治療部分および/または検出可能部分(上記の通り)をさらに含んでなる。
【0155】
本発明の第十の態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体をコードする核酸分子、またはその成分ポリペプチド鎖を提供する。
【0156】
単離された核酸分子は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を発現するのに好適である。「発現するのに好適とは、その核酸分子が、翻訳されてポリペプチド、例えばRNAを形成し得るポリヌクレオチドであること、または本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(好ましくはDNAである)がプラスミドなどの発現ベクターに、発現に適切な配向および適正なリーディングフレームで挿入されることを意味する。このポリヌクレオチドは、任意の所望の宿主によって認識される適当な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列と連結することができ、このような制御を発現ベクターに組み込むことができる。
【0157】
よって、該核酸分子はDNAまたはRNAであり得る。
【0158】
該核酸分子(またはポリヌクレオチド)は、本発明のポリペプチド産物を産生するのに好適な宿主で発現させることができる。よって、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、本明細書に含まれる教示に照らして適宜改変された、発現ベクターを構築するための既知の技術に従って使用することができ、次にこれを用いて、本発明のポリペプチドの発現および産生に適当な宿主細胞を形質転換する(例えば、引用することにより本明細書の一部とされるSambrook & Russell, 2000, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor, New York参照)。
【0159】
ポリペプチドをコードする核酸分子は、適当な宿主へ導入するための広範な他のポリヌクレオチド配列と連結させることができる。この付随ポリヌクレオチドは、宿主の性質、宿主へのポリヌクレオチドの導入様式、およびエピソーム維持が望ましいか組み込みが望ましいかによって異なる。
【0160】
要するに、適当な宿主内で、その核酸分子によりコードされているポリペプチド結合部分または化合物を発現することができる核酸分子を含んでなる発現ベクターを構築すればよい。
【0161】
例えば相補性付着末端を介して核酸分子、特にDNAを作動可能なようにベクターに連結するための種々の方法が開発されている。例えば、ベクターDNA中に挿入されるDNAセグメントに相補的ホモポリマートラクトを付加することができる。次に、このベクターおよびDNAセグメントを相補的ホモポリマーテール間の水素結合によって連結し、組換えDNA分子を形成する。
【0162】
1以上の制限部位を含有する合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに連結する別法を提供する。例えばエンドヌクレアーゼ制限消化によって作製されたDNAセグメントをバクテリオファージT4 DNAポリメラーゼまたは大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIで処理する(この酵素はそれらの3’−5’−エキソヌクレオ分解活性を有する、突出した3’一本鎖末端を除去し、それらの重合活性を有する陥凹した3’末端を埋める)。
【0163】
従って、これらの活性の組合せで平滑末端DNAセグメントが生じる。次に、この平滑末端セグメントを、バクテリオファージT4 DNAリガーゼなどの、平滑末端DNA分子の連結を触媒し得る酵素の存在下、よりモル過剰のリンカー分子とともにインキュベートする。よって、この反応の生成物は、それらの末端にポリマーリンカー配列を有するDNAセグメントである。その後、これらのDNAセグメントを適当な制限酵素で切断し、そのDNAセグメントのものに適合する末端を作り出す酵素で切断した発現ベクターに連結する。
【0164】
種々の制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーが、International Biotechnologies Inc., New Haven, CN, USAをはじめとするいくつかの供給者から市販されている。
【0165】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾するための望ましい方法がPCRの使用である。この方法は、例えば、好適な制限部位における操作によって好適なベクターにDNAを導入するために使用可能であるか、または当技術分野で知られているように、他の有用な方法でDNAを修飾するために使用可能である。
【0166】
この方法において、酵素的に増幅させるDNAを、それ自体増幅されたDNAに組み込まれる2つの特異的プライマーに隣接させる。該特異的プライマーは、当技術分野で公知の方法を用い、発現ベクターにクローニングするために使用可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。
【0167】
次に、このDNA(またはレトロウイルスベクターの場合にはRNA)を好適な宿主内で発現させて、本発明の化合物またはその結合部分を含んでなるポリペプチドを産生させる。よって、該ポリペプチドをコードするDNAを、本明細書に含まれる教示に照らして適宜改変された既知の技術に従って用いて発現ベクターを構築することができ、次に、これを用いて本発明の化合物またはその結合部分の発現および産生に適当な宿主細胞を形質転換させる。このような技術としては、1984年4月3日にRutter et alに対して発行された米国特許第4,440,859号、1985年7月23日にWeissmanに対して発行された米国特許第4,530,901号、1986年4月15日にCrowlに対して発行された米国特許第4,582,800号、1987年6月30日にMark et alに対して発行された米国特許第4,677,063号、1987年7月7日にGoeddel対して発行された米国特許第4,678,751号、1987年11月3日にItakura et alに対して発行された米国特許第4,704,362号、1987年12月1日にMurrayに対して発行された米国特許第4,710,463号、1988年7月12日にToole, Jr. et alに対して発行された米国特許第4,757,006号、1988年8月23日にGoeddel et alに対して発行された米国特許第4,766,075号および1989年3月7日にStalkerに対して発行された米国特許第4,810,648号に開示されているものが含まれる(これらは総て引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0168】
本発明の方法に用いるためのポリペプチド結合部分をコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合にはRNA)は、適当な宿主に導入するための広範な他のDNA配列と連結させることができる。この付随DNAは、宿主の性質、宿主へのポリヌクレオチドの導入様式、およびエピソーム維持が望ましいか組み込みが望ましいかによって異なる。
【0169】
一般に、該DNAは、プラスミドなどの発現ベクターに、発現に適切な配向および適正なリーディングフレームで挿入される。必要に応じて、該DNAは、所望の宿主によって認識される適当な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列と連結することができ、このような制御は発現ベクター内で一般に利用可能である。次に、このベクターを、標準的な技術によって宿主へ導入する。一般に、総てではないが、種祝はこのベクターによって形質転換される。よって、形質転換された宿主細胞を選択する必要がある。ある選択技術には、発現ベクターに、抗生物質耐性など、形質転換細胞において選択可能な形質をコードするDNA配列を、必要な制御配列とともに組み込むことを含む。あるいは、このような選択可能な形質の遺伝子は別のベクター上にあってもよく、これを用いて所望の宿主細胞同時形質転換する。
【0170】
次に、本発明の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を、そのポリペプチドの発現を可能とする十分な時間、本明細書に開示されている教示に照らして当業者に公知の適当な条件下で培養し、その後それを回収することができる。
【0171】
多くの発現系が知られており、細菌(例えば、大腸菌および枯草菌(Bacillus subtilis))、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、糸状真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞および昆虫細胞が含まれる。
【0172】
これらのベクターは一般に、そのベクターが他の非原核細胞種での発現に用いられるとしても、原核生物での増殖のためのColE1 oriなどの原核生物レプリコンを含む。これらのベクターはまた、それで形質転換された大腸菌などの細菌宿主細胞内でそれらの遺伝子の発現(転写および翻訳)を命令し得る原核生物プロモーターなどの適当なプロモーターも含み得る。
【0173】
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写を起こさせるDNA配列により形成される発現制御エレメントである。例示的細菌宿主に適合するプロモーター配列は一般に、本発明のDNAセグメントの挿入に便宜な制限部位を含むプラスミドベクターで提供される。
【0174】
典型的な原核生物ベクタープラスミドは、Biorad Laboratories (Richmond, CA, USA)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329、ならびにPharmacia, Piscataway, NJ, USAから入手可能なpTrc99AおよびpKK223−3である。
【0175】
典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia, Piscataway, NJ, USAから入手可能なpSVLである。このベクターは、クローニングされた遺伝子の発現を駆動するためにSV40後期プロモーターを使用し、COS−1細胞などのT抗原産生細胞で最大発現レベルが見られる。
【0176】
誘導型の哺乳類発現ベクターの例は、これもまたPharmaciaから入手可能なpMSGである。このベクターは、クローニングされた遺伝子の発現を駆動するためにマウス乳癌ウイルスの長い末端反復配列のグルココルチコイド誘導型プロモーターを用いる。
【0177】
有用な酵母プラスミドベクターはpRS403−406およびpRS413−416であり、一般に、Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA 92037, USAから入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は酵母組み込みプラスミド(YIp)であり、酵母選択マーカーHIS3、TRP1、LEU2およびURA3を組み込む。プラスミドpRS413−416は酵母セントロメアプラスミド(Ycp)である。
【0178】
多様な宿主細胞とともに用いるための他のベクターおよび発現系も当技術分野で周知である。
【0179】
宿主細胞は原核生物または真核生物のいずれであってもよい。細菌細胞は好ましい原核宿主細胞であり、一般に、例えば、Bethesda Research Laboratories Inc., Bethesda, MD, USAから入手可能な大腸菌株DH5およびRockville, MD, USAのthe American Type Culture Collection (ATCC)から入手可能なRR1(No. ATCC 31343)などの大腸菌株である。例示的真核生物の宿主細胞としては、酵母、昆虫および哺乳類細胞が挙げられ、マウス、ラット、サルまたはヒト繊維芽細胞系統および腎臓細胞系統などの脊椎動物細胞が好ましい。酵母宿主細胞としては、Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA 92037, USAから一般に入手可能なYPH499、YPH500およびYPH501がある。例示的哺乳類宿主細胞としてが、ATCCからCRL 1658として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびヒト胎児腎臓細胞である293細胞が挙げられる。例示的昆虫細胞としては、バキュロウイルス発現ベクターでトランスフェクト可能なSf9細胞がある。
【0180】
本発明のDNA構築物による適当な細胞宿主の形質転換は周知の方法によって達成され、その方法は用いるベクターの種類によって異なる。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69, 2110およびSambrook et al (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY参照。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al (1986) Methods In Yeast Genetics, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY(これらは総て引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されている。引用することにより本明細書の一部とされるBeggs (1978) Nature 275, 104-109の方法も有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞をトランスフェクトするのに有用な試薬、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE−デキストランまたはリポソーム製剤は、Stratagene Cloning SystemsまたはLife Technologies Inc., Gaithersburg, MD 20877, USAから入手可能である。
【0181】
エレクトロポレーションも細胞を形質転換および/またはトランスフェクトするのに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。
【0182】
例えば、多くの細菌種が、引用することにより本明細書の一部とされるLuchansky et al (1988) Mol. Microbiol. 2, 637-646に記載されている方法により形質転換可能である。25μFDにて6250V/cmを用いる2.5PEBに懸濁させたDNA−細胞混合物のエレクトロポレーション後に、一貫して最大数の形質転換体が回収される。
【0183】
エレクトロポレーションにより酵母を形質転換するための方法は、引用することにより本明細書の一部とされるBecker & Guarente (1990) Methods Enzymol. 194, 182に開示されている。
【0184】
首尾よく形質転換された細胞、すなわち、本発明のDNA構築物を含む細胞は、周知の技術によって同定することができる。例えば、本発明の発現構築物の導入から得られた細胞を増殖させて、本発明のポリペプチドを産生することができる。細胞を採取し、溶解させ、それらのDNA内容物を、引用することにより本明細書の一部とされるSouthern (1975) J. Mol. Biol. 98, 503またはBerent et al (1985) Biotech. 3, 208によって記載されているものなどの方法を用い、DNAの存在に関して調べることができる。あるいは、上清におけるタンパク質の存在を下記のような抗体を用いて検出することもできる。
【0185】
組換えDNAの存在に関して直接アッセイする他、その組換えDNAがタンパク質の発現を命令することができる場合には、周知の免疫学的方法によって形質転換の成功を確認することができる。例えば、発現ベクターで首尾よく形質転換された細胞は、適当な抗原性を示すタンパク質を産生する。
【0186】
形質転換されたと思われる細胞のサンプルを採取し、好適な抗体を用い、タンパク質に関してアッセイする。
【0187】
宿主細胞は非ヒト動物体内の宿主細胞であってもよい。よって、導入遺伝子の存在のために本発明のポリペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。一実施形態において、トランスジェニック非ヒト動物は、マウスなどの齧歯類である。トランスジェニック非ヒト動物は、当技術分野で周知の方法を用いて作製することができる。
【0188】
宿主細胞を培養し、組換えタンパク質を単離する方法は当技術分野で周知である。産生される本発明の化合物(またはその結合部分)は宿主細胞によって異なると考えられる。例えば、酵母または細菌細胞などのある種の宿主細胞は、違ったように翻訳後修飾され得る本発明の化合物(またはその結合部分)の形態の産生をもたらし得る異なった翻訳後修飾系を持っていても持っていなくてもよい。
【0189】
一実施形態では、宿主細胞は細菌細胞である。あるいは、宿主細胞は哺乳類細胞、例えばヒト細胞、例えばヒト細胞または類人猿細胞などの霊長類目由来の細胞、またはラット細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、リス細胞、モルモット細胞、マーモット細胞もしくはビーバー細胞などの齧歯目由来の細胞であり得る。
【0190】
さらなる実施形態では、宿主細胞はCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞またはHEK(ヒト胎児腎臓)細胞である。
【0191】
よって、本発明の第11の態様は、本発明の第十の態様の核酸分子を含んでなるベクターを提供する。
【0192】
同様に、本発明の第12の態様は、本発明の第十の態様の核酸分子または本発明の第11の態様のベクターを含んでなる組換え宿主細胞を提供する。
【0193】
本発明の第13の態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を作製する方法を提供し、該方法は、コードされている抗体もしくはその抗原結合フラグメントの発現を可能とする条件下で本発明の第12の態様の宿主細胞を培養することを含む。このような方法はまた、本発明の方法で用いるための抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を産生するために使用することもできる。
【0194】
このようなポリペプチドは、ウサギ網状赤血球ライゼートまたは麦芽ライゼート(Promegaから入手可能)などの市販のin vitro翻訳系を用いてin vitroで産生することができる。例えば、この翻訳系はウサギ網状赤血球ライゼートであり得る。便宜には、TNT転写−翻訳系(Promega)のように、この翻訳系を転写系と組み合わせることができる。この系により、コードDNAポリヌクレオチドから好適なmRNA転写物を翻訳と同じ反応で生産することができる。
【0195】
当業者であれば、上記の医薬および薬剤が医学および獣医学双方の分野で有用性を有することがさらに分かるであろう。よって、これらの医薬および薬剤はヒトおよび非ヒト動物(ウマ、イヌ、マウス、ラット、霊長類、サル、ブタおよびネコなど)の双方の処置に使用可能である。しかしながら、好ましくは、患者はヒトである。
【0196】
本発明の第14の態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体と薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0197】
本明細書において「医薬組成物」とは、治療上有効な処方物を意味する。
【0198】
本明細書において「治療上有効な量」または「有効量」または「治療上有効」とは、与えられた条件および投与計画に対して治療作用をもたらす量(例えば、コラーゲンの分解を阻害するのに十分な量)を指す。これは、必要とされる添加剤および希釈剤、すなわち、担体または投与ビヒクルをともに所望の治療作用をもたらすように計算された有効物質の所定の量である。さらに、それは宿主の活動、機能および応答において臨床上有意な欠損を軽減または回避するのに十分な量を意味するものとする。あるいは、治療上有効な量は、宿主において臨床上有意な症状における改善をもたらすに十分なものである。当業者であれば分かるように、化合物の量はその具体的活性によって異なり得る。好適な用量は、必要とされる希釈剤とともに所望の治療作用をもたらすように計算された有効組成物の所定量を含み得る。本発明の組成物の製造のための方法および使用では、治療上有効な量の有効成分が提供される。治療上有効な量は、当技術分野で周知のように、齢、体重、性、症状、合併症、他の疾病などの患者の特徴に基づき、熟練の医師または獣医師によって決定することができる。
【0199】
当業者であれば、このような有効量の該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体、その処方物は、単回のボーラス投与(すなわち、急性投与)として送達することもでききるし、あるいはより好ましくは、経時的な一連の投与(すなわち、慢性投与)としても送達することもできることが分かるであろう。
【0200】
当業者であれば、本発明の方法で用いるための抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、炎症性症状の処置のための1以上の他の慣例薬と組み合わせて投与できることがさらに分かるであろう。
【0201】
例えば、関節リウマチの場合、好適な慣例薬としては、限定されるものではないが、疾病改善抗リウマチ薬(DMARDS、例えば、メトトレキサート)、金塩、抗マラリア薬、スルファサラジン、テトラサイクリン、シクロスポリン、NSAID、コルチコステロイド、レフルノミド(Arava; Aventis)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)阻害剤、例えば、エタネルセプト(エンブレル;Amgen)、インフリキシマブ(Remicade; J&J/Centocor)およびアダリムマブ(Humira; Abbott)が挙げられる。
【0202】
OAの場合、好適な慣例薬としては、限定されるものではないが、アセトアミノフェン(パラセタモールとしても知られる)などの鎮痛薬または抗炎症薬、またはCOX2阻害剤などのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、MMP阻害剤などの疾病改善骨関節炎薬(DMOAD)、またはインターロイキン1(IL−1)阻害剤が挙げられる。
【0203】
本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、用いる化合物の有効性/毒性に応じて種々の濃度で処方することができる。一実施形態では、この処方物は本発明の薬剤を0.1μM〜1mMの間、例えば1μM〜100μMの間、5μM〜50μMの間、10μM〜50μMの間、20μM〜40μMの間、または約30μM濃度で含んでなる。in vitro適用では、処方物はより低濃度の、例えば0.0025μM〜1μMの間の本発明の化合物を含み得る。
【0204】
よって、炎症性症状の処置に有効な量(上記の通り)の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を含んでなる医薬処方物が提供される。
【0205】
当業者であれば、これらの医薬および薬剤は一般に、意図される投与経路および標準的な薬務に関して選択された好適な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与されることが分かるであろう(例えば、引用することにより本明細書の一部とされるRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995, Ed. Alfonso Gennaro, Mack Publishing Company, Pennsylvania, USA参照)。
【0206】
例えば、これらの医薬および薬剤は、即放出、遅延放出または徐放性適用のための、香味剤または着色剤を含み得る錠剤、カプセル剤、小卵剤(ovule)、エリキシル剤、溶液または懸濁液の形態で経口投与、頬側投与または舌下投与することができる。これらの医薬および薬剤はまた陰茎海綿体注射によって投与することもできる。
【0207】
このような錠剤は、微晶質セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、デンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合体シリケートなどの崩壊剤、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ−プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアラビアガムなどの造粒結合剤を含み得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの滑沢剤も含み得る。
【0208】
ゼラチンカプセル剤中の増量剤と類似の種の固体組成物も使用可能である。これに関する例示的賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液および/またはエリキシル剤では、本発明の化合物は種々の甘味剤または香味剤、着色物質または色素と、また乳化剤および/または沈殿防止剤と、また水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤、ならびにその組合せと組み合わせることができる。
【0209】
これらの医薬および薬剤はまた、非経口投与、例えば、静脈内投与、関節内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与または皮下投与することもできるし、あるいは注入技術により投与することもできる。それらは、例えば血液と等張な溶液を作製するために十分な塩またはグルコースなどの他の物質を含んでもよい無菌水溶液の形態で最良に用いられる。これらの水溶液は必要であれば適宜緩衝させなければならない(例えば、pH3〜9)。無菌条件下での好適な非経口処方物の作製は、当業者に周知の標準的な製薬技術により容易に達成される。
【0210】
非経口投与に好適な処方物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および意図するレシピエントの血液と等張の処方物とする溶質を含み得る水性および非水性無菌注射溶液、ならびに沈殿防止剤および増粘剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁液が含まれる。これらの処方物は、例えば密閉アンプルおよびバイアルなどの単位用量または多回用量容器で提供することができ、注射直前に例えば注射水などの無菌液体担体を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。即時調合注射溶液および懸濁液は、これまでに記載されている種の無菌粉末、顆粒および錠剤から作製し得る。
【0211】
ヒト患者への経口および非経口投与では、これらの医薬および薬剤の一日用量レベルは通常、成人1人当たり1〜1000mg(すなわち、約0.015〜15mg/kg)であり、単回用量または分割用量で投与される。
【0212】
疾病の予防または治療のための、抗体の適当用量は処置される疾病の種類、その疾病の重篤度および経過、抗体またはそのフラグメントが予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、従前の療法の経過、および患者の臨床歴および抗体またはそのフラグメントに対する応答によって異なる。本発明の抗体、抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体は、1回で、または一連の処置にわたって患者に適宜投与される。疾病の種類および重篤度によって、抗体またはそのフラグメント約0.015〜15mg/患者体重kgが患者への投与のための初期用量である。投与は例えば1回以上の独立した投与によってもよいし、あるいは持続的注入によってもよい。症状によって数日またはそれ以上にわたる反復投与では、病徴の望ましい抑制または緩和が起こるまで処置を繰り返す。しかしながら、他の投与計画が有用である場合もあり、それらを排除するものではない。
【0213】
症状の緩和、疾病の予防または治療における抗体、抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体の有効性は、本発明の抗体のものとは異なるエピトープに対する別の抗体またはそのフラグメント、または意図する治療適応に関して知られている1以上の慣例治療薬など、同じ臨床適応に有効な別の薬剤との連続投与または組合せ投与により改善し得る。
【0214】
このような適応に影響を及ぼす好適な薬学上許容される薬剤は、例えば骨関節炎、関節リウマチなどの関節疾患のような炎症性疾患の処置のための、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症薬;例えば抗TNF抗体、インターロイキン受容体アンタゴニスト、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤または骨形態形成タンパク質(BMP)などの抗シトルチン薬;疼痛管理処置のための整形外科術後の術後使用のための局部麻酔薬またはアテローム斑の処置のための抗高脂血症薬、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤または骨形態形成タンパク質(BMP)といった抗炎症薬であり得る。
【0215】
これらの医薬および薬剤はまた鼻内投与または吸入による投与が可能であり、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロ−メタン、ジクロロテトラフルオロ−エタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A3または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の好適なガスなどの好適な噴射剤を用いて、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、ドライパウダー吸入器またはエアゾールスプレー剤形の形態で便宜に送達される。加圧エアゾールの場合、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えば、エタノールと噴射剤の混合物を溶媒として用い(さらに、例えばトリオレイン酸ソルビタンなどの滑沢剤を含んでもよい)、有効化合物の溶液または懸濁液を含み得る。吸入器または通気器に用いるためのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチン製)は、本発明の化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含むように処方することができる。
【0216】
エアゾールまたはドライパウダー処方物は、各計量量または「ひと吹き」が患者に送達するための本発明の化合物を少なくとも1mg含むように調整することができる。エアゾールによる一日総量は患者ごとに異なり、1回またはそれを超える回数、通常には、1日にさたる分割量で投与することができると考えられる。
【0217】
あるいは、これらの医薬および薬剤は、坐剤または膣坐剤の形態で投与することもできるし、あるいはローション、溶液、クリーム、軟膏またはダスティングパウダーの形態で局所適用することもできる。本発明の化合物はまた、例えば皮膚パッチの使用により経皮投与することもできる。それらはまた、眼内経路によって投与することもできる。
【0218】
皮膚への局所適用では、これらの医薬および薬剤は、例えば以下:鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水の1以上の混合物に懸濁または溶解させた有効化合物を含有する好適な軟膏として処方することができる。あるいは、それらは、例えば以下:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水の1以上の混合物に懸濁または溶解させた好適なローションまたはクリームとして処方することもできる。
【0219】
口内局所投与に好適な処方物としては、香味基剤、通常はスクロースおよびアラビアガムまたはトラガカントガム中に有効成分を含んでなるトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアガムなどの不活性基剤中に有効成分を含んでなる香錠;ならびに好適な液体担体中に有効成分を含んでなるマウスウォッシュがある。
【0220】
これらの医薬または薬剤がポリペプチドである場合には、マイクロスフェアなどの徐放性薬物送達系を用いるのが好ましい場合がある。これらは特に注射頻度を減らすために設計される。このような系の一例として、生分解性マイクロスフェア中に組換えヒト成長ホルモン(rhGH)を封入するNutropin Depotがあり、一度注射すると、長時間かけてゆっくりrhGHを放出する。
【0221】
徐放性免疫グロブリン組成物はまた、リポソームに捕捉された免疫グロブリンも含む。免疫グロブリンを含有するリポソームは、それ自体公知の方法によって作製される。例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Epstein et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 3688-92 (1985); Hwang et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4030-4 (1980);米国特許第4,485,045号;同第4,544,545号;同第6,139,869号および同第6,027,726号参照。通常には、これらのリポソームは、液体含量が約30モル%(mol%)コレステロールよりも高い小型(約200〜約800オングストローム)の単層種であり、選択された割合は最適な免疫グロブリン療法向けに調整される。
【0222】
あるいは、ポリペプチド医薬および薬剤は、必要な部位に直接薬剤を放出する外科的に埋め込んだデバイスにより投与することもできる。
【0223】
また、タンパク質およびポリペプチドの投与のためにエレクトロポレーション療法(EPT)系も使用可能である。細胞にパルス電場を送達するデバイスは薬剤に対する細胞膜の浸透性を高め、細胞内薬物送達の著しい増強をもたらす。
【0224】
また、タンパク質およびポリペプチドは、エレクトロインコーポレーション(EI)によって送達することもできる。EIは、皮膚の表面で直径30ミクロンまでの小粒子がエレクトロポレーションで用いられるものと同一または類似の電気パルスを受ける場合に生じる。EIでは、これらの粒子は角質層を経て皮膚のより深部に送られる。これらの粒子には薬剤または遺伝子を付加またはコーティングすることができ、あるいは単に皮膚に化合物が侵入可能な孔を開ける「弾丸」としても働き得る。
【0225】
タンパク質およびポリペプチド送達の別法は、温度感受性ReGel注入である。体温より低いとReGelは注入可能な液体であるが、体温ではすぐにゲルリザーバーを形成し、これはゆっくり浸食し、既知の安全な生分解性ポリマーへと溶解する。このバイオポリマーが溶解するにつれ、有効薬剤が経時的に送達される。
【0226】
タンパク質およびポリペプチド医薬はまた経口送達することもできる。このような1つの系では、タンパク質およびポリペプチドを同時送達するために、身体のビタミンB12の経口取り込みの天然プロセスを用いる。ビタミンB12取り込み系を付加することで、これらのタンパク質またはポリペプチドは腸管壁を経て移動可能である。ビタミンB12類似体と薬剤の間で複合体が形成され、この複合体のビタミンB12部分における内性因子(IF)に対する有意な特異性と複合体の薬剤部分の有意な生活性が保持される。
【0227】
本発明の第九の態様の抗体および抗体由来結合剤は、上記のような医薬組成物を含んでなるキットの形態で提供され得る。よって、炎症性症状の処置に用いるためのキットが提供され得る。
【0228】
あるいは、キットは、診断において用いるのに好適な、本発明の検出可能な抗体または抗原結合フラグメントもしくは誘導体を含み得る。このような診断キットは、個包装試薬としての診断薬を少なくとも1回のアッセイに十分な量で含み得る。包装試薬の使用説明書も一般に含まれる。このような説明書は一般に、試薬濃度および/または混合する試薬とサンプルの相対量、試薬/サンプル混合物の持続時間、温度、バッファー条件などの少なくとも1つのアッセイ法パラメーターを記載した有形表示物を含む。
【0229】
本発明のさらなる態様は、炎症性症状を処置するための候補化合物を同定するための方法を提供し、該方法は、
a)供試化合物を準備する工程;
b)該化合物の、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、以下のCDR配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくは誘導体の融合体と競合する能力を試験する工程
を含み、
【0230】
該試験化合物がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して競合することができれば、それは炎症性症状を処置するための候補化合物として同定される。
【0231】
競合結合はELISAなど、当技術分野で周知の方法を用いてアッセイすることができる(上記参照)。
【0232】
一実施形態において、本方法は、コラーゲンの分解を調整(例えば、阻害)する化合物の能力を試験する工程をさらに含む。
【0233】
「調整する」とは、コラーゲンの分解速度を高める、または低下させることを含む。コラーゲンの分解の阻害は完全であっても部分的であってもよいと考えられる。例えば、コラーゲン分解は、試験化合物の不在下でのコラーゲンの分解と比べて、10%またはそれ以上、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害され得る。
【0234】
便宜には、試験工程のいくつかまたは総てがin vivoで行われる。
【0235】
あるいは、試験工程のいくつかまたは総てが、例えば、免疫組織化学法(例えば、サフラニンでの染色)を用いてin vitroで行ってもよい(下記の実施例参照)。
【0236】
例示的試験化合物としては、ポリペプチド、またはその融合体もしくは誘導体、または該誘導体の融合体が含まれる。例えば、試験化合物は抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体、またが該変異体もしくはその誘導体の融合体であり得る。
【0237】
一実施形態において、試験化合物は完全な抗体である。
【0238】
あるいは、試験化合物は、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択される抗原結合フラグメントであり得る。
【0239】
本発明のさらなる態様は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体により定義されるエピトープを提供し、ここで、該抗体またはフラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる。
【0240】
一実施形態において、該エピトープは以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEEKRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDVVSINCNIRLV
PNQEΓNFHLLGNLWLRSLICALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP[配列番号15]
またはそのフラグメント、融合体もしくは変異体を含んでなるか、またはそれからなる。
【0241】
その例示的変異体、融合体およびフラグメントは上記に開示されている。
【0242】
よって、さらなる態様として、本発明はまた、以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDWSINCNIRLV
PNQEΓNFHLLGNLWLRSLKALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP[配列番号15]
またはそのフラグメント、融合体もしくは変異体を含んでなるか、またはそれからなる単離されたポリペプチドを提供する。
【0243】
該ポリペプチドは免疫応答を刺激し得るので、免疫原性エピトープとして働く。
【0244】
一実施形態において、該ポリペプチド、フラグメント、その融合体または変異体は、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくは抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体と結合することができ、
【0245】
ここで、該抗体またはフラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号I];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる。
【0246】
本発明のさらなる態様は、本発明の第九の態様の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を同定または産生するための、上記のエピトープおよび単離されたポリペプチドの使用を提供する。
【0247】
本発明はまた、上記のエピトープおよび単離されたポリペプチドをコードする単離された核酸分子ならびにベクター、宿主細胞およびそれを作製する方法を包含する。
【0248】
本明細書において、単数形「a」、「and」および「the」は、特に断りのない限り、複数形を含む。よって、例えば、「ある抗体」という場合には、複数のこのような抗体を含み、「その用量」という場合には、1以上の用量および当業者に公知のその等価物を含むなどである。
【0249】
以下、本発明のある特定の態様を用いる限定されない例を、次の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】抗α11インテグリン結合剤に関するn−CoDeR(登録商標)抗体ライブラリーのスクリーニング。スクリーニングされた192のα11インテグリン活性scFvクローンをα11インテグリンでトランスフェクトされた293細胞と結合するかどうかを確認したが、大腸菌により発現されるHisタグscFvクローンを、インテグリントランスフェクト細胞(図面に示されている通り)、マウス抗His mAb、Cy5コンジュゲート抗マウスmAb試薬と同時インキュベーションした後、FMATマクロコンフォーカルによるスクリーニング装置でスクリーニングすることによっては、α10インテグリントランスフェクト293細胞との結合は見られなかった。スクリーニングされたscFvを、α11インテグリン特異的結合剤に関してn−CoDeR(登録商標)抗体ライブラリーをパンニングした後に賦活させる。このアプローチを用い、172のscFvクローンを選択的α11インテグリン結合剤として確認した。
【図2】抗インテグリンscFvの標的インテグリン特異性。ヒトα10インテグリン(左のグラフ)またはヒトα11インテグリン(右のグラフ)でトランスフェクトされたHek293細胞を抗α10インテグリンscFv(対照、標識付きのグレーのピーク)、抗α11インテグリンscFv(標識付きのグレーのピーク)または無関係の対照scFv(黒塗りのピーク)とともにインキュベートした。scFvと細胞の結合を、二次フィコエリトリンコンジュゲート抗His mAbで検出した後、フローサイトメトリーにより分析した。
【図3】抗α11インテグリンscFvの、α11β1インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞の、コラーゲンIIコーティングプレートへの接着を選択的に阻害する能力。α10インテグリンでトランスフェクトされたC2C12マウス繊維芽細胞(A)またはα11インテグリンでトランスフェクトされたC2C12マウス繊維芽細胞(B)を、10μg/mlの抗α11インテグリンscFv、FITC−8対照scFV、抗α10インテグリンモノクローナル抗体またはIgG2aイソ型対照抗体とともにプレインキュベートした。次に、細胞を、コラーゲンIIをコーティングしたマイクロタイタープレートに加え、接着させた。結合しなかった細胞を洗い流し、結合細胞の数を酵素アッセイにより決定した。グラフは3回の独立した実験からのデータを合わせたものを表し、各実験からのデータは抗体を含まない対照に対してノーマライズした。(上)α10トランスフェクト細胞の細胞接着に対するScFvの効果。(下)α11トランスフェクト細胞の細胞接着に対するScFvの効果。平均値と標準誤差(s.e.m.)。有意性は一元配置Anovaおよびダネットの多重比較検定を用いて算出した。白いバー:α11−scFv。縞のバー;対照。
【図4】n−CoDeR(登録商標)抗α11インテグリンscFvと末梢血白血球部分集団との結合の欠如。精製ヒトPBLを、異なる蛍光団とコンジュゲートさせた細胞部分集団特異的モノクローナル抗体の存在下で、抗α11インテグリンscFv α11_A_001−A03−MH(グレーの線)、陽性対照scFv C11(黒い点線)または陰性対照scFv FITC−8(黒塗りのピーク)とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、1/20 PEコンジュゲート抗His抗体(R&D Systems)とともにインキュベートした。抗α11β1インテグリン特異的scFvの陽性結合を、陰性対照CT17 scFvで染色した細胞の97〜99%で見られるものよりも大きなFL2蛍光強度として記録した。マウス抗His抗体とのインキュベーションの前に、細胞を予めブロッキングし、200μg/mlのマウスIgG/2×106全白血球の存在下で維持し、T細胞、B細胞およびNK細胞をCD3+、CD19+、CD3−CD56+細胞(左のグラフのそれぞれゲート5、4および3)として同定した。単球(R2)および顆粒球(R1)は、独特な前方分散および側方分散特性によって定義され、さらにはCD3−CD19−CD56−として定義された。
【図5】mBSAの関節内注射後3日目の誘発および非誘発膝におけるTc−99m取り込みにより測定される関節腫脹の比。凡例:「CT17」=対照Ab(コレラ毒素に対する)、「A03」=例示的抗α11全IgG抗体。
【図6】膝関節全体の切片における滑膜空間の浸潤細胞としての炎症の組織学的スコア。0〜3の任意の尺度:0−炎症無し、1−軽度の炎症、2−中度の炎症、3−重度の炎症。凡例:「CT17」=対照Ab、「A03」=例示的抗α11抗体。
【図7】膝関節全体の切片における関節空間への細胞の滲出、浸潤の組織学的スコア。0〜3の任意の尺度:0−炎症無し、1−軽度の炎症、2−中度の炎症、3−重度の炎症。凡例:「CT17」=対照Ab、「A03」=例示的抗α11抗体。
【図8】画像解析によって測定された膝蓋軟骨における関節炎誘発後15日目のプロテオグリカン(PG)の枯渇。凡例「CT17」=対照Ab、「A03」=例示的抗α11抗体。
【図9】PG枯渇−A03は最初の実験において関節炎誘発後15日目のPG枯渇を軽減する。図11Aは膝蓋からの組織学的スコアリングを示し(図10に0おける画像解析によりスコアリングとして示される)、図11Bは外側脛骨の組織学的スコアリングを示し、図11Cは膝の全体像を示す。
【図10】PG枯渇−A03は第2の実験における関節炎誘発後15日目のPG枯渇を軽減する。図12Aは膝蓋骨からの組織学的スコアリングを示し、図12Bは外側脛骨の組織学的スコアリングを示す(外側脛骨に関してp=0.02)。
【図11】A03は関節炎誘発後15日目に測定される骨棘の大きさを減少させる。
【図12】G6PIにより誘発された関節炎における関節炎の罹患率(頻度)。処置はG6PI感作後7、10、13および16日目に行った。
【図13】G6PIにより誘発された関節炎における関節炎に平均臨床スコア。処置はG6PI感作後7、10、13および16日目に行った。
【図14】G6PI感作後13日目の体重変化(%)。対照抗体で処置したマウスは平均10%体重が低下した。A03処置マウスは平均5%体重が低下し、対照群と比べて体重低下は明らかに減少した(p=0.08)。
【実施例】
【0251】
実施例1−本発明の例示的抗体(「A03と呼ぶ」)の生産
α11β1インテグリンに特異的なn−CoDeR(登録商標)由来ヒト抗体の同定
全ヒト抗体ライブラリーn−CoDeR(登録商標)(引用することにより本明細書の一部とされるSoderlind et al, 2000, Nat Biotechnol 18:852-6およびWO98/32845参照)を、α10β1インテグリンまたはα11β1インテグリンに対して特異性を有する抗体フラグメント(scFv)に関してスクリーニングした。標的インテグリン特異性の高い抗体の賦活を最大にするため、一連の陽性およびサブトラクティブパンニング法を合わせたものを考案した(下記付録参照)。scFv形式へ変換した後、抗体フラグメントを大腸菌で発現させ、適当であれば、FMAT技術(図1、FMAT分散プロット)を用い、α10β1インテグリンまたはα11β1インテグリンを発現するHek−293細胞との結合に関して陽性および陰性スクリーニングを行った。このようにして、α10β1インテグリンまたはα11β1インテグリンに特異的な遺伝子型が独特な数百の抗体フラグメントが同定された(表1)。
【0252】
抗体パンニング手順
PBS中、3%BSA、0.02%アジ化ナトリウム、0.1%NP40、10mM MgCl2および0.01mM CaCl2のバッファー中、n−CoDeR(登録商標)scFvライブラリーのファージ原株を、Dynalsの説明書に従い、ウサギ−抗α10インテグリンおよびウサギ−抗α11インテグリンポリクローナル抗体を結合させた免疫チューブおよびトシル活性化ダイナビーズM−280(Dynalカタログ番号142.04)でのBSAコーティングを用い、4℃で一晩予備選択した。最初のパンニングは4℃で一晩、ウサギ−抗α11ポリクローナル抗体を結合させた(上記の通り)磁気ビーズに付加した、α11β1を発現する15×106のHEK293細胞のライゼートに対して行った。ビーズを9×1mlのバッファーで洗浄し、結合しているファージをトリプシンで溶出させ、他所に記載されているように増幅させた(Hallborn & Carlsson, 2002, Biotechniques Dec;Suppl:30-37)。
【0253】
1回目のパンニングから増幅したファージを上記のように緩衝させ、1回目のパンニングの場合と同様にポリクローナル結合ダイナビーズに対して予備選択を行った後、ウサギ−抗α11ポリクローナル抗体を有するダイナビーズに付加された10×106 HEK293 α11β1細胞のライゼートを用いて1回目のパンニングと同様に選択を行った。洗浄後(9×1mlバッファー)、結合しているファージをトリプシンで溶出させ、増幅させた。
【0254】
2回目のパンニングから増幅させたファージを、10%FCS、10mM MgCl2および10μM CaCl2を含有するDMEM細胞培地で希釈し、α10β1を発現する45×106 C2C12細胞およびα10β1を発現する13×105 HEK細胞に対して4℃で一晩、予備選択を行った。次に、ファージを4℃で4時間α11β1とともにインキュベートし、組換えC2C12細胞(5×106細胞を使用)上に展示させた。結合していないファージを除去するために40%フィコール(2%FCS、10mM MgCl2および10μM CaCl2を含有)による密度勾配遠心分離を行った後、残った結合剤を76mMクエン酸pH2.5および200mMトリエタノールアミンの双方で溶出させた。溶出したファージのプールをscFv形式へ変換させるため、大腸菌HB101Fで増幅させた。
【0255】
scFv形式への変換
c−myc/6xhis scFv形式への変換(EagI変換)
タンパク質IIIは、scFvとファージ粒子の間の機能的連結であり、遺伝子IIIを除去すると、可溶性scFvが産生される。n−CoDeR Lib2000選択からのファージミドDNAをEagIde消化して遺伝子IIIを除去し、6×hisタグをscFvフラグメントおよびc−mycタグに隣接させた。このプラスミドを連結し、遺伝子III内に制限部位を有するEcoRIで「キラーカット(killer-cut)」を行い、再連結したファージミドを排除した。このプラスミドDNAを化学コンピテント大腸菌TOP10に形質転換させた。
【0256】
n−CoDeR(登録商標)ライブラリーから単離されたユニークな遺伝子型を有するα11インテグリン特異的抗体フラグメントの数
【表1】
【0257】
標的化されたインテグリンα鎖に対する抗原の特異性
これまでにインテグリンヘテロ二量体と結合する4つの異なるコラーゲン、すなわち、α1β1、α2β1、α10β1およびα11β1が同定されている。異なる種類のコラーゲンに対する結合に関するそれらの個体間選択性は完全には特徴付けられてない。コラーゲン結合インテグリンの中でも、α10β1 α11βlインテグリンおよびα11β1インテグリンは高い相同性を示す(リガンド結合I−ドメインのアミノ酸レベルで60%の同一性)(Gullberg et al, 2003, Structure and function of alphalpha11beta1 integrin. In: D. Gullberg (Ed) I Domains in Integrins.参照)。結論として、これらのインテグリンヘテロ二量体のいずれかに対するいくつかの抗体は他のものと交差反応性がある可能性がある。
【0258】
細胞外マトリックスのターンオーバーに対する単離された抗α11β1インテグリン抗体の、見られた推定効果が、α11β1インテグリンヘテロ二量体との排他的相互作用によるものであるとすることができるように、この複合体に対する抗体の詳細な特異性を調べた。このように、抗α11β1インテグリンscFvを、フローサイトメトリーを用い、α10β1インテグリンでトランスフェクトされた、またはα11β1インテグリンでトランスフェクトされたHek−293細胞との結合に関して調べた。このアプローチにより、29の抗α11β1インテグリンscFv(検討した38のうち)がα11β1インテグリントランスフェクト細胞と強く結合したが、α10β1インテグリントランスフェクト細胞とは結合しないことが確認された(図2)。
【0259】
抗インテグリン抗体の詳細な特異性を、抗α11β1インテグリンscFvの、α11β1インテグリンでトランスフェクトされた(α10β1インテグリンでトランスフェクトされたものではない)C2C12細胞のコラーゲンIIコーティングプレートへの接着を選択的に阻害する能力によりさらに示す(図3)。インテグリンの構造とインテグリンの活性化および結合の際に起こる構造変化を考えれば、細胞接着(すなわち、インテグリンの結合)を妨げる薬剤が潜在的に興味深い。リガンド結合部位(すなわち、MIDAS)において、またはその付近で結合する抗体またはscFvはリガンドの相互作用を物理的に妨げることができる。MIDAS付近で結合しないが(例えば、非I−ドメイン結合剤)、細胞接着に対してなお作用を有する抗体またはscFvは、インテグリンα鎖構造、インテグリンの活性化またはα/β鎖の相互作用を妨げる可能性がある。
【0260】
最後に、in vitroおよびin vivo試験系において機能を検討する前に、抗α11β1インテグリン抗体クローンは、顆粒球、単球、Tリンパ球、Bリンパ球およびナチュラルキラー細胞を含む定義された末梢血白血球部分集団と交差反応しないことが示された(図4)。
【0261】
例示的抗α11抗体に関する配列情報
抗α11完全IgG抗体(A03)の重鎖−アミノ酸配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAA
LGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSWTVPS
SSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFL
FPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK
PREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKA
KGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPE
NNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHY
TQKSLSLSLGK
[配列番号11]
【0262】
抗α11完全IgG抗体(A03)の軽鎖−アミノ酸配列
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLI
YGYNERPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSG
HVVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPG
AVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRS
YSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
[配列番号12]
【0263】
ScFv形式の抗α抗体(A03)−アミノ酸配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYYMHWVRQVPGKGLEW
VSGVSWNGSRTHYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVY
YCARVSGDGYNFGAWGOGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQSVLTQP
PSASGTPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGYNER
PSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCAAWDDSLSGHWFGG
GTKLTVLG
[配列番号13]
【0264】
抗α11完全IgG抗体(A03)の重鎖−ヌクレオチド配列
GAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGG
GGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTCGTT
ACTACATGCACTGGGTCCGCCAAGTTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTG
GGTATCGGGTGTTAGTTGGAATGGCAGTAGACGCACTATGCAGAC
TCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACAC
GCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACTGCCGTG
TATTACTGTGCGAGAGTAAGTGGAGATGGCTACAATTTTGGCGCCTG
GGGCCAGGGTACACTGGTCACCGTGAGCTCAGCTTCCACCAAGGGC
CCATCCGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAG
CACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGG
TGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACAC
CTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCG
TGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGC
AACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTG
AGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCATCATGCCCAGCACCTGAGTTC
CTGGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACAC
TCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACG
TGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGG
CGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTC
AACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGA
CTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGC
CTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGC
CCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGAT
GACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACC
CCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAA
CAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCT
TCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGG
GAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACT
ACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTAAA
[配列番号16]
【0265】
抗α11完全IgG抗体(A03)の軽鎖−ヌクレオチド配列
CAGTCTGTGCTGACTCAGCCACCCTCAGCGTCTGGGACCCCCGGGCA
GAGGGTCACCATCTCCTGCACTGGGAGCAGCTCCAACATCGGGGCA
GGTTATGATGTACACTGGTATCAGCAGCTCCCAGGAACGGCCCCCAA
ACTCCTCATCTATGGTTATAATGAGCGGCCCTCAGGGGTCCCTGACC
GATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACCTCAGCCTCCCTGGCCATCAGT
GGGCTCCGGTCCGAGGATGAGGCTGATTATTACTGTGCAGCATGGG
ATGACAGCCTGAGTGGTCATGTGGTATTCGGCGGAGGAACCAAGCT
GACGGTCCTAGTCAGCCCAAGGCTGCCCCCTCGGTCACTCTGTTCC
CGCCCTCCTCTGAGGAGCTTCAAGCCAACAAGGCCACACTGGTGTGT
CTCATAAGTGACTTCTACCCGGGAGCCGTGACAGTGGCCTGGAAGG
CAGATAGCAGCCCCGTCAAGGCGGGAGTGGAGACCACCACACCCTC
CAAACAAAGCAACAACAAGTACGCGGCCAGCAGCTATCTGAGCCTG
ACGCCTGAGCAGTGGAAGTCCCACAGAAGCTACAGCTGCCAGGTCA
CGCATGAAGGGAGCACCGTGGAGAAGACAGTGGCCCCTACAGAATG
TTCA
[配列番号17]
【0266】
ScFv形式の抗α11抗体(A03)−ヌクレオチド配列
GAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGG
GGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTCGTT
ACTACATGCACTGGGTCCGCCAAGTTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTG
GGTATCGGGTGTTAGTTGGAATGGCAGTAGACGCACTATGCAGAC
TCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACAC
GCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACTGCCGTG
TATTACTGTGCAAGAGTAAGTGGAGATGGCTACAATTTTGGCGCCTG
GGGCCAGGGTACACTGGTCACCGTGAGCAGCGGTGGAGGCGGTTCA
GGCGGAGGTGGATCCGGCGGTGGCGGATCGCAGTCTGTGCTGACTC
AGCCACCCTCAGCGTCTGGGACCCCCGGGCAGAGGGTCACCATCTCC
TGCACTGGGAGCAGCTCCAACATCGGGGCAGGTTATGATGTACACT
GGTATCAGCAGCTCCCAGGAACGGCCCCCAAACTCCTCATCTATGGT
TATAATGAGCGGCCCTCAGGGGTCCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAA
GTCTGGCACCTCAGCCTCCCTGGCCATCAGTGGGCTCCGGTCCGAGG
ATGAGGCTGATTATTACTGTGCAGCATGGGATGACAGCCTGAGTGGT
CATGTGGTATTCGGCGGAGGAACCAAGCTGACGGTCCTAGGT
[配列番号18]
【0267】
最初のスクリーニング実験は、scFv形式の例示的抗体「A03」を用いて行った。
【0268】
in vivo試験は、完全IgG形式の例示的抗体「A03」を用いて行った。
付録I.−抗α11β1インテグリンscFvを単離するために用いた選択戦略
【0269】
選択戦略E〜G(下のグラフ)を、α11β1インテグリン特異的抗体を賦活する目的で行う選択により例示する。
【0270】
【表2】
【0271】
実施例II−抗原誘発性関節炎に対する本発明の例示的抗体の効果
この研究の目的は、C57B1/6マウスにおいてmBSA抗原による誘発された関節炎(AIA)における、本発明の例示的完全IgG抗体(「A03」と呼ぶ)の効果を調べることであった。
【0272】
材料および方法
試験施設
Experimental Rheumatology & Advanced Therapeutics, University Medical Center Nijmegen, Geert Grooteplain 26-28, 6525 GA Nijmegen, The Netherlands
【0273】
実験計画
実験プロトコールを下記の表2および3に示す。
【0274】
表2
【表3】
【0275】
表3
【表4】
動物
【0276】
10週齢の雄C57B1/6マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME, USA) (23〜25g)を研究に用いた。マウスは到着後少なくとも1週間馴化させた。食物および酸性水は自由に摂らせた。マウスは毎週秤量した。
抗原誘発性関節炎の誘発
【0277】
抗原誘発性関節炎は、記載のもの(1)と同様のプロトコールを用いて誘発した。要するに、−21日目に、フロイントノ完全アジュバント(CFA)中に乳化させた100μgのメチル化BSA(mBSA, Sigma)(100μl mg/ml)をマウスに感作させた。注射は側腹部と後脚の足蹠の双方に分割した。熱失活させた百日咳菌(Bordetella pertussis)(RIVM, Bilthoven, The Netherlands)1mlを付加的アジュバントとして腹腔内(i.p.)投与した。最初の感作から7日後に動物の頚部にCFA中、100μg(100μl mg/ml)のmBSAおよび1mlの百日咳菌(i.p.)を追加投与した。追加注射から2週間後に、マウスの右膝関節に60μg mBSA(mBSA)を関節内注射することで関節炎を誘発させた。
抗体
【0278】
抗体はBiolnvent International AB (Lund, Sweden)のよって生産されたものである。
試験抗体の投与
【0279】
抗体は、Cartela AB (Lund, Sweden)から試験施設に到着した後、4℃で保存した。適正な濃度を得るために抗体を無菌PBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶解させ、無菌条件下、4℃で保存した。1日目に抗体薬剤の投与を開始し、13日目に終了した。抗体投与は1、5、9および13日目に行った。抗体は200μl/マウスをi.p.投与した。抗体の投与は常に1日の同じ時間−/+1時間に行った。以下のスキームで各マウスに合計900μgの抗体を投与した。
【0280】
表4
【表5】
同位元素取り込みの指標としての炎症スコアリング
【0281】
関節の腫脹は3日目と10日目に膝関節における99Tcペルテケート(pertechate)取り込みを用いて測定した。要するに、マウスに12μCiの99Tcをi.p.注射した後、クロルアルドヒドレートで鎮静させた。30分後、膝を固定位に保ちつつ、視準されたNa−I−シンチレーションクリスタルを用いて、γ線照射を評価した。関節炎は右膝(注射)と左膝(注射無し)における99Tc取り込みの比率としてスコアリングした。比率が1.1より大きい場合に、右膝関節の炎症を示すものとした。この方法はこれまでに、組織学的所見とよく相関することが示されている(2)。
組織学
【0282】
右および左双方の膝関節全体を、従前に記載されたように(1)、組織学向けに切開および処理した。要するに、膝をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で3日間固定し、5%緩衝ギ酸中で脱石灰した後、パラフィンワックス中に包埋した。ミクロトームで半連続の冠状7μm切片を作製した。これらの切片をヘマトキシリンでおよびエオジン(H&E)で、またはサフラニン−O(Safranin O: Merck #1.15948)およびFastgreen(Fast Green FCF: Merck # 1.04022)で染色した。組織学的パラメーター(関節炎症、プロテオグリカン枯渇、骨棘形成)を光学顕微鏡によりスコアリングした。また、膝蓋におけるプロテオグリカン枯渇はデジタル画像解析を用いてスコアリングした。
炎症のスコアリング
【0283】
膝全体の前面切片をH&Eで染色した。炎症の組織学的スコアリングは光学顕微鏡によった。炎症の程度を滑膜空間中の浸潤細胞の量として、また、関節空間中の細胞の滲出量としてスコアリングした。滲出および浸潤は双方とも、0〜3の任意の尺度:0−炎症無し、1−軽度の炎症、2−中度の炎症、3−重度の炎症を用いてスコアリングした(1)。
【0284】
軟骨損傷のスコアリング
プロテオグリカンの欠如の指標として、膝関節全体の切片をサフラニン−OおよびFastgreenで染色した。種々の軟骨層(膝蓋骨、膝蓋大腿骨、外側脛骨、外側大腿、内側脛骨、内側大腿)の6部位からの赤色染色の欠如を、0〜3の任意の尺度:0−プロテオグリカン枯渇無し、1−軽度のプロテオグリカン枯渇、2−中度のプロテオグリカン枯渇、3−重度のプロテオグリカン枯渇を用いて評価した(1)。また、膝蓋におけるプロテオグリカン枯渇はデジタル画像解析を用いてスコアリングした。
骨棘のスコアリング
【0285】
骨棘の大きさは、H&E染色した内側大腿からの切片に対して、0〜3の任意の尺度:0−骨棘無し、1−軟骨形成の徴候、2−小さな骨棘、3−大きな骨棘を用いてスコアリングした。
統計学
【0286】
軟骨のプロテオグリカン枯渇損傷は、ノンパラメトリックKruskal−Wallis検定およびダンの事後検定を用いて分析した。群間差異はマン・ホイットニー検定を用いて検定した。総ての部位を個別に検定した。テクネチウムの取り込みは、スチューデントのt検定を用いて検定した。統計学的計算を行うため、グラフパッドプリズム4ソフトウエアを用いた。
【0287】
結果
関節炎マウスにおいてα11インテグリンに対する抗体による処置は炎症を軽減した
【0288】
膝関節へのmBSAのi.a.注射により1つの関節炎を誘発した。この疾病は発症が早く、i.a.注射後1日目に関節の腫脹が最大に達し、7日まで徐々に低下した。さらに8日後(i.a.注射から15日後)、疾病がより慢性化した際にマウスを屠殺した。関節炎マウスを抗α11インテグリン抗体(A03)で処置すると、マウスの膝関節の腫脹程度ならびに関節中への炎症性細胞の浸潤程度として評価される炎症に有意な軽減がもたらされた。抗α11インテグリン抗体(A03)で処置したマウスでは、mBSAのi.a.注射3日後に、誘発された膝関節の腫脹に対照抗体(CT17)で処置したマウスに比べて有意な軽減が見られた(P=0.035、T検定)(図5)。その後の2回の実験でも同様の結果が示された。
【0289】
抗α11インテグリンで処置したマウスは、実験の終了時(i.a.注射15日後)における滑膜空間(図6)および関節空間(滲出)(図8)中の浸潤細胞の量が、対照抗体で処置したマウスに比べて少なかったが、この違いは統計学的に有意な差ではなかった。
関節炎マウスにおいてα11に対する抗体による処置は軟骨を破壊から保護する
【0290】
抗α11インテグリン抗体で処置されたマウスでは、対照抗体で処置されたマウスに比べ軟骨の破壊が少なかった(P=0.015)(図8)。軟骨破壊の量は、0〜3の任意の尺度を用いて、ならびに画像解析を用いて、組織切片におけるプロテオグリカンの欠如としてスコアリングした。プロテオグリカン枯渇に対する抗α11インテグリン抗体による処置の保護効果は膝においてスコアリングされた6箇所総てで見られた。
【0291】
図9および10は、任意の尺度評価を用いてプロテオグリカン(PG枯渇)およびその低下として評価される膝蓋および外側脛骨に対する抗α11インテグリン抗体による処置の効果をさらに示す。2つの異なる実験を表しているこれら2つの図面で分かるように、A03による処置は膝蓋および外側脛骨の双方においてPG枯渇を軽減する。実験2にいける外側脛骨のA03でのPG枯渇の軽減は有意である(p=0.02)。これら2つの図9および10は、膝蓋の画像解析(図9に相当、任意の尺度で分析された膝蓋)と比較しなければならず、その結果が図8に示されている(P=0.015)。
【0292】
図11は、骨棘の大きさに対する抗α11インテグリン抗体により処置の効果を示している。この図面で分かるように、対照抗体(CT17)による処置に比べ、A03抗体で処置した後に骨棘の大きさの低下が見られる。
【0293】
結論
本発明の例示的抗α11インテグリン抗体(A03)による処置は、関節の腫脹および炎症性細胞の浸潤として評価される、抗原誘発性関節炎(AIA)で誘発された関節炎マウスの関節の炎症を軽減する。さらに、抗α11インテグリン処置はAIAマウスにおいて軟骨を退化から保護し、これはプロテオグリカン分解の低下として示される。本発明者らの結果は、3日目の炎症(TC取り込み)と15日目の軟骨退化(PG枯渇)の間に明白な相関を示す。
【0294】
現在確立されているRAに対する処置は、同じAIAモデルで腫脹を軽減する(NSAIDS)か、または腫脹と浸潤細胞の量を軽減する(抗TNFα)が、軟骨に対して保護効果を有するものはない(6〜9)。これは、抗α11インテグリン処置が単独療法としての、または他の療法との併用としてのRA療法に大きな可能性を有することを示唆する。
【0295】
参照文献
【0296】
実施例III−グルコース−6−リン酸誘発性関節炎に対する本発明の例示的抗体の効果
この研究の目的は、DBA/1マウスにおいて例示的完全IgG抗体(「A03と呼ぶ」)の作用を試験することであった。
【0297】
材料および方法
試験施設
Cartela AB, Scheelvagen 22, 223 63 Lund, Sweden
【0298】
実験計画
実験プロトコールを下記表5および6に示す。
【0299】
表5
【表6】
【0300】
表6
【表7】
【0301】
動物
雌DBA1マウスをTaconic M&B, Denmarkから入手した。マウスにEMI Expanded(special Diet Services Ltd, UK)および水を自由に摂らせた。マウスには少なくとも1週間、新しい環境に対する馴化期間を設けた。水およびケージは1週間に2回交換した。必要に応じて餌を満たした。マウスは蓋を強化したMac3ケージ当たり7匹を飼育した。
抗原
【0302】
組換えヒトグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(G6PI)は、Kamradt (Deutches Rheumaforschungszentrum Berlin, Berlin, Germany)から、従前に記載されているように(3)製造されたものを購入した。
グルコース−6−リン酸イソメラーゼ誘発性関節炎の誘発
【0303】
マウスにCFA(Difco, Detroit, MI, USA)中に1:1比で乳化させた200μgの組換えヒトG6PIを感作させた。100μl量を尾の基部に皮下注射した(3)。
試験薬の投与
【0304】
抗体は4℃で保存した。抗体を無菌PBSに溶解させ、無菌条件下4℃で保存した。抗体の投与はhG6PI注射後、7、10、13、16日目に行った。抗体は200μl/マウスをi.p.投与した。抗体の投与は常に1日の同じ時間−/+1時間に行った。以下のスキームで各マウスに合計880μgの抗体を投与した。
【0305】
表7
【表8】
炎症のスコアリング
【0306】
各脚について1〜15の範囲の拡張スコアリングプロトコールを用い、これまでに記載されているような(4)関節炎のマウス1匹につき最大スコア60とした。各関節炎(発赤および腫脹)の足指および指を1とし、影響を受けた足首を5とした。
組織学
【0307】
後足および足首をリン酸緩衝ホルマリン(pH7.4)中で3日間固定し、EDTA中で脱石灰した後、パラフィンワックスに包埋した。ミクロトームで半連続の5μm切片を作製した。前足をEDTA中で脱石灰した後、OCTに包埋し、凍結させた。クリオスタットで半連続の5μm切片を作製した。
軟骨損傷および骨破壊のスコアリング
【0308】
後足および足首のパラフィン切片をヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)またはサフラニン−Oで染色した。切片を、勾配作製系(5)を用いたプロテオグリカン枯渇に関して、さらにはまた光学顕微鏡による骨棘形成および骨破壊に関して等級付けした。プロテオグリカン枯渇はまた、デジタル画像解析を用い、赤色染色の欠損としてスコアリングした。
免疫染色
【0309】
凍結切片を室温まで温めた後、アセトン中、−20℃で10分間固定した。スライドをPBSで5分3回洗浄した後、37℃で30分間、ヒアルロニダーゼ(PBS中2mg/ml;Sigma)とともにインキュベートした。もう一度、PBS中で5分3回洗浄した後、切片をPBS中に希釈した4%ヤギ血清(Sigma, G-9023)ととともに30分間インキュベートして遮断した。切片を室温で60分間、PBS中4%ヤギ血清中に1:100希釈したビオチニル化IgG4−抗α11インテグリンAb(=20μg/ml)とともにインキュベートした後、PBS中で5分3回洗浄した。その後、切片を蛍光(Alexa Fluor 448またはCy3)コンジュゲートストレプトアビジンとともにさらに60分間インキュベートした。PBS中でさらに5分3回洗浄した後、スライドにVectashieldを取り付け、蛍光顕微鏡下で観察した。
結果
【0310】
マウスにおいてα11インテグリンに対する抗体による処置はG6PI誘発性関節炎の罹患率および重篤度を軽減した
【0311】
組換えヒトグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(rhG6PI)を感作させると、前足と後足の双方に重度の腫脹を有する多発性関節炎が誘発される。関節炎の臨床徴候はまず感作後7日目に表れ、急速に進行し、9日目に最大に達した(図12)。感作後18日目にマウスを塗擦した。
【0312】
7日目に処置を開始した後、注射10、13、16日後にマウス当たり合計880μgの試験抗体を投与した。TNFR−p75−IgFc(エンブレル)を陽性対照として用いた。エンブレルによる処置は、対照抗体(CT17)で処置した群における100%に対して、関節炎の罹患率を50%低下させた。A03処置は、関節炎の罹患率および重篤度に明らかな低下をもたらした(図12および13)。A03で処置したマウスは総て関節炎を発症し(9日目で罹患率100%)、その後、50%のマウスが回復し(p<0.05)(図13)、罹患率はエンブレル処置群と同レベルまで低下した(p=0.051)(図12)。図13は、各群の個体の関節炎スコアの平均として評価される関節炎の重篤度を示す。
【0313】
関節炎の試験中、全般的な疾病状態の指標としてマウスを秤量した。A03処置マウスは対照処置マウスに比べ、有意ではないが明らかな体重低下の減少を示した(p=0.08)(図14)。
【0314】
以下の表8は、これらの試験で調べた各群において発症した関節炎の罹患率(頻度)を示す。
【0315】
表8
【表9】
結論
【0316】
抗α11インテグリン抗体(A03)による処置は、多発性関節炎モデルであるグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(rhG6PI)誘発性関節炎において、関節炎マウスの関節の炎症を軽減する。発症日に試験抗体を投与し、その後、試験の終了時まで3日おきに投与する処置スキームを用いると、A03処置が50%の関節炎マウスに回復をもたらしたことが実証できる。関節炎の罹患率は試験群においては100から50%に低下し、エンブレル処置の場合の罹患率レベルを下回った。
【0317】
参照文献
実施例IV−例示的「A03」抗体と競合するモノクローナル抗体の作製
【0318】
本実施例の目的は、ハイブリドーマ技術を用い、例示的「A03」抗体と競合するマウスモノクローナル抗体を作製することである。
材料および方法
感作プロトコール
【0319】
HEK細胞により産生された組換えタンパク質を感作に用いる。このタンパク質は、α11インテグリンのスターク領域に対する抗体応答を命令するために、ヒトα11の上方−下方ウシドメイン(E−ULCD)を含む。
E−ULCDの配列は、
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIFLHHLE
IELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSSLSHYEVKLN
SSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPIATRSGNRLLKLRDF
LTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRAPQLNHSNSDVVSINCNIRLV
PNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKSMKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDP
SRQIVFEISKQEDWQVP
[配列番号19]
である。
【0320】
C57b1/6−α11ノックアウトマウス(詳細は、引用することにより本明細書の一部とされるWO03/101497に記載の通り)に感作させた。
【0321】
FACS分析によって免疫応答を追跡できるように、示された時点で採血を行った。次の感作スキームを適用した。
【0322】
0日目
0日目にFACS分析用の採血を行い、α11スタークタンパク質(このα11配列の種はヒトであり、Veiling et al. J. Biol. Chem. 1999, 274:25735-25742に記載されている) (Cartela AB, バッチ番号53; 070509; ピーク1+2をプール, E-ULCD)(80μg/マウス) を音波処理によりCFA(フロイントの完全アジュバント,Sigma)に乳化させ、4匹のC57b1/6−α11koマウスの尾の基部に注射した。
【0323】
14日目
FACS分析用に採血し、IFA(フロイントの不完全アジュバント,Sigma)中、α11スターク(E−ULCD)(50μg/マウス)で追加免疫した。
【0324】
22日目
FACS分析用に採血
【0325】
24日目
融合用にNS0融合相手を増殖
【0326】
31日目
予備融合 PBS中、α11スターク(バッチ番号53 E−ULCD;20mM Tris、1mM Ca2+、バッチI)(50μg/マウス)で追加免疫。
【0327】
34日目
B細胞と骨髄腫細胞系統NS0(ECACC)の融合
【0328】
34日目のNS0細胞(070625)との融合
3匹のC57b1/6−α11koマウスの脾臓を用いた。単細胞懸濁液を作製し、9mlの無菌ddH2Oを用い(10秒)溶解させた後、1mlの10倍PBSを加えて溶解を停止させた。細胞を血清不含D−MEMで洗浄し(2回)、50mlファルコン試験管内で、洗浄したNS0細胞のアリコートと混合した(PEGとの融合の際に有害となり得る遊離タンパク質を除去するため)。これらのペレットを水浴中で37℃に維持した。37℃にて攪拌しながら、ガラスピペットを用い、1分間かけてD−MEM中50%PEG(1500MW)1mlを滴下した。予温した2mlの血清不含D−MEM2分かけて加えた。予温した7mlの血清不含D−MEMを3分かけて滴下した。細胞を5分間500xgで遠心分離した。上清を廃棄し、予温した完全D−MEM(ピルビン酸塩、10%FCS、PEST)、3プレートにNr1 40ml)、4プレートにNr3 50ml)、4プレートにNr10 50mlを加えた。細胞を室温で10分間休止させた後、およそ100μlの細胞を10mlピペットで96ウェル細胞培養プレートに加えた(1ウェル当たり1滴)。
【0329】
融合は、引用することにより本明細書の一部とされる'Current Protocols in Immunology, Unit 2.5, "Production of Monoclonal antibodies" (ISBN ISSBN: 1934-3671, Wileyのプロトコールに従って行った。
【0330】
35日目
100μlの2倍HAT(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン、
Apoteket, Sweden)培地を選択用ウェルに加えた。
【0331】
38日目
死細胞からの有害な上清を除去し、新鮮なHT培地(ヒポキサンチン−チミジン, Apoteket, Sweden)を加えた。
【0332】
44日目
FACSスクリーニング用の100μl培地を除去し、ウェルにHT培地を加えた。
【0333】
FACSスクリーニングによるスターク特異的ハイブリドーマの同定
候補ハイブリドーマを含むウェルの上清を、フローサイトメトリー(FACS)を用い、スターク領域に対する反応性に関して調べる。これらのクローンをそれらのスターク反応性および抗α11インテグリンスターク候補ハイブリドーマの望ましくない潜在的交差反応性に関してさらに特性決定した。
スターク特異的ハイブリドーマの同定:
【0334】
抗α11インテグリンスターク候補ハイブリドーマの、関連のα10−インテグリンとの望ましくない交差反応性を、α10−インテグリンでトランスフェクトされたHEK細胞およびα10−インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞を用いて調べる。他種、すなわちマウス由来の相当するスタークに対する交差反応性は、マウスα11−インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞を用いて調べる。
【0335】
α11スタークハイブリドーマのサブクローニング
FACS陽性細胞を、制限希釈法(およそ0.3細胞/ウェル)を用いてサブクローニングする。ハイブリドーマの生存を確保するためのフィーダー細胞としてラット胸腺細胞を用いる。種々のサブクローニング段階でハイブリドーマ細胞を凍結させる。
【0336】
全長ヒトα11インテグリンに対する抗体の作製
全長ヒトα11インテグリンに対する抗体の作製。該全長α11インテグリンタンパク質は、細胞質テールに特異的なポリクローナル抗血清を用い、ヒトα11でトランスフェクトされたHEK細胞ライゼートからアフィニティー精製する(WO00/75187に記載の通り)。
【0337】
感作プロトコール:全長α11−インテグリンプロジェクト
0日目
4匹の雌C57b1/6−α11koマウスを用い、尾の基部にCFA中、40μg/マウスの全長α11タンパク質(バッチ番号070717)を感作させた。FACS分析用に採血した。
13日目
13日目にFACS分析用に採血した。
16日目
IFA中、10μg/マウスの全長α11タンパク質(バッチ番号070717)を追加投与した。
26日目
PBS中、10μg/マウスの全長α11インテグリンおよび40μgのスタークα11タンパク質(バッチ番号53 E−ULCD)/マウスをi.p.追加投与した。
29日目
脾臓およびリンパ節細胞とNS0細胞との融合。DNA用の尾の切片および血清を保存。
【0338】
29日目のNS0細胞との融合
3匹の感作α11koマウスの脾臓および排出リンパ節(LN)からの細胞を融合に用いた。単細胞懸濁液を作製し、脾細胞の赤血球を、0.84%塩化アンモニウムを用いて溶解させた。細胞を血清不含D−MEMで洗浄し(2回)、50mlファルコン試験管内で、洗浄したNS0細胞のアリコートと混合した。これらのペレットを水浴中で37℃に維持した。37℃にて攪拌しながら、DMEM中、50%PEG1500MW1mlを1分間かけて滴下した。予温した2mlの血清不含DMEM2分かけて滴下した。予温した7mlの血清不含DMEMを3分かけて滴下した。細胞を5分間500xgで遠心分離した。上清を廃棄した後、予温した完全DMEM(ピルビン酸塩、10%FCS、PS)をLNおよび脾臓調製物に加えた(Nr1では50ml、Nr3では50ml、Nr10では50ml)。1融合当たり4.5個のプレートに各ウェルに1滴(およそ100μl)ずつ加えた。4時間後に、100μlの2倍HAT培地を加えた。
融合は、引用することにより本明細書の一部とされる'Current Protocols in Immunology, Unit 2.5, "Production of Monoclonal antibodies" (ISBN ISSBN: 1934-3671, Wileyのプロトコールに従って行った。
【0339】
日
100μlの培地を除去し、ウェルにHT培地を加えた。
【0340】
融合後11日目に、上記のように陽性ウェルのFACSスクリーニングのために上清を採取する。陽性ウェルを同定した後、上清をヒトおよびマウスα11インテグリン間の交差反応性に関して調べた(C2C12野生型細胞ならびにヒトα11およびα10−インテグリンでトランスフェクトされた細胞を用いるハイブリドーマスクリーニング)。
【0341】
BMコンダイムH1添加培地(Roche, DE)中でハイブリドーマ細胞をサブクローニングした(0,3細胞/ウェル)。1コロニーのみが増殖しているウェルを特異性スクリーニングのために選択した。
【0342】
例示的抗体「A03」との競合に関するスクリーニング
さらに、新たに作製されたクローンを、例示的抗体「A03」の結合を遮断するその能力に関して調べる。FACSに基づく方法を用いる。ヒトα11インテグリンでトランスフェクトされたC2C12細胞を、新たに作製された精製抗体とともに、細胞表面で発現されるα11−インテグリンに対するそれらのエピトープを占有するよう、1000ng/mlまでの約1.6の希釈系でインキュベートする。第二段階では、ビオチニル化された例示的抗体A03を加える。これらの抗体があるエピトープ領域を共有していれば、ヒトIgGの結合が減少する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性症状を処置するための薬剤の製造における、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体の使用
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1;
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる)。
【請求項2】
炎症性症状を処置するための薬剤の製造における、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体の使用
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合することができ、
ただし、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜6のアミノ酸配列の総ては含まない)。
【請求項3】
炎症性症状の診断薬または予後薬の製造における、請求項1または2で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項4】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を検出および/または画像化するための薬剤の製造における、請求項1または2で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項5】
前記インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体が細胞の表面に局在している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記細胞が軟骨細胞または繊維芽細胞である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記抗原結合フラグメントがscFvである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記抗体が組換え抗体である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒトまたはヒト化されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が以下のCDR:
a)配列番号1;
b)配列番号2;および
c)配列番号3
を含んでなる重鎖可変領域を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記重鎖可変領域が配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が以下のCDR:
a)配列番号4;
b)配列番号5;および
c)配列番号6
を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記軽鎖可変領域が配列番号10のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、請求項12または13で定義された重鎖可変領域と請求項14または15で定義された軽鎖可変領域を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1または3〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号11のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる重鎖を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる軽鎖を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、請求項17で定義された重鎖と請求項18で定義された軽鎖を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1または3〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号13のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1または3〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記抗体もしくはその抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と同じエピトープと結合することができる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子が結合するものとは異なるエピトープと結合することができる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、治療部分および/または検出可能部分をさらに含んでなる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
検出可能部分が放射性同位元素(例えば、3H、14C、35S、123I、125I、131I、99Tc、111In、90Y、188Re)、放射性核種(例えば、11C、18F、64Cu)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド、リン、カルボシアニン)、酵素標識(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、化学発光剤、ビオチニル基および二次リポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
炎症性症状の診断または画像化のための診断薬の製造における、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項1〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記炎症性症状が関節疾患である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記関節疾患が関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体がコラーゲンの分解を調整し得る、請求項1〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体がコラーゲンの分解を阻害し得る、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体がin vivoにおいてコラーゲンの分解を調整し得る、請求項1〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
炎症性症状を有する個体を処置するための方法であって、その個体に有効量の、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、方法。
【請求項34】
個体において炎症性症状を診断または予後する方法であって、その個体に有効量の請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、含む方法。
【請求項35】
個体の身体において炎症性症状に関連するインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を画像化するための方法であって、その個体に有効量の請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、方法。
【請求項36】
個体において前記化合物の位置を検出する工程をさらに含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項33〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記炎症性症状が関節炎疾患である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記関節炎疾患が関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
個体において炎症性症状の進行を監視するための方法であって、
(a)第一の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、その中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;
(b)第二の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、その中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;および
(c)工程(a)と(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を比較すること
を含み、工程(a)と比べた場合の工程(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量の増加が炎症性症状の進行の指標となる、方法。
【請求項41】
炎症性症状と関連する細胞を同定する方法であって、供試細胞のサンプル中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること、およびそれを陽性対照および/または陰性対照に対するインテグリンα11サブユニットタンパク質の量と比較することを含む、方法。
【請求項42】
前記陽性対照が炎症性症状に罹患している被験体由来の細胞を含んでなる、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記陰性対照が炎症性症状に罹患していない健康なヒトに由来する細胞を含んでなる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記炎症性症状が関節炎疾患である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症性症状が関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
炎症性症状を処置するための候補化合物を同定するための方法であって、
a)供試化合物を準備すること;
b)該化合物の、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、以下のCDR配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくは誘導体の融合体と競合する能力を試験すること
を含み、
該試験化合物がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して競合することができれば、それは炎症性症状を処置するための候補化合物として同定される、方法。
【請求項48】
前記化合物の、コラーゲンの分解を調整する能力を試験する工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物の、コラーゲンの分解を阻害する能力を試験する工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記試験工程がin vivoで行われる、請求項47〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記試験化合物がポリペプチド、またはその融合体もしくは誘導体、または該その誘導体の融合体である、請求項47〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記試験化合物が抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体の融合体もしくはその誘導体である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記試験化合物が完全な抗体である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記試験化合物が、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択される抗原結合フラグメントである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記試験化合物がscFvである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合することができる抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または
インテグリンα11サブユニットもしくはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体
(ただし、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜6のアミノ酸配列の総ては含まない)。
【請求項57】
配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と同じエピトープと結合することができる、請求項56に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項58】
配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子が結合するものとは異なるエピトープと結合することができる、請求項56に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項59】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体が細胞の表面に局在する、請求項56〜58のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項60】
前記細胞が軟骨細胞または繊維芽細胞である、請求項60に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項61】
完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる、請求項56〜60のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項62】
Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含んでなるか、またはそれからなる、請求項56〜60のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項63】
前記抗原結合フラグメントがscFvである、請求項62に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項64】
前記抗体が組換え抗体である、請求項56〜63のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項65】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項56〜64のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項66】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒトまたはヒト化されている、請求項56〜65のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項67】
コラーゲンの分解を調整することができる、請求項56〜66のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項68】
コラーゲンの分解を阻害することができる、請求項67に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項69】
in vivoでコラーゲンの分解を阻害することができる、請求項67または68に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項70】
炎症性症状の処置に有効性を有する、請求項56〜69のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項71】
前記炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項70に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項72】
前記炎症性症状が関節リウマチである、請求項71に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項73】
前記炎症性症状が骨関節炎である、請求項71に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項74】
治療部分および/または検出可能部分をさらに含んでなる、請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項75】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体をコードする核酸分子、またはその成分ポリペプチド鎖。
【請求項76】
請求項75に記載の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項77】
発現ベクターである、請求項76に記載のベクター。
【請求項78】
請求項75に記載の核酸分子または請求項76もしくは77に記載のベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項79】
前記宿主細胞が細菌細胞である、請求項78に記載の宿主細胞。
【請求項80】
前記宿主細胞が哺乳類細胞である、請求項78に記載の宿主細胞。
【請求項81】
前記宿主細胞がヒト細胞である、請求項80に記載の宿主細胞。
【請求項82】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントを製造するための方法であって、請求項78〜81のいずれか一項で定義された宿主細胞を、コードされている抗体またはその抗原結合フラグメントの発現を可能とする条件下で培養することを含む、方法。
【請求項83】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項84】
非経口投与に好適な請求項83に記載の医薬組成物。
【請求項85】
医薬に用いるための、請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項86】
請求項83または84に記載の医薬組成物を含んでなるキット。
【請求項87】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体により定義されるエピトープ
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる)。
【請求項88】
以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIF
LHHLEIELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSS
LSHYEVKLNSSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPI
ATRSGNRLLKLRDFLTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRA
PQLNHSNSDVVSINCNIRLVPNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKS
MKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDPSRQIVFEISKQEDWQVP
[配列番号15]
を含んでなるか、またはそれからなる請求項87に記載のエピトープ、またはそのフラグメント、融合体もしくは変異体。
【請求項89】
以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIF
LHHLEIELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSS
LSHYEVKLNSSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPΓHGMMMKITIPI
ATRSGNRLLKLRDFLTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRA
PQLNHSNSDWSINCNIRLVPNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKS
MKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDPSRQIVFEISKQEDWQVP[配列番号15]
を含んでなるか、またはそれからなる単離されたポリペプチド。
【請求項90】
免疫応答を刺激することができる、請求項89に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項91】
前記ポリペプチドが、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体と結合することができる、請求項89または90に記載の単離されたポリペプチド
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる)。
【請求項92】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を同定または製造するための、請求項87もしくは88に記載のエピトープ、または請求項89〜91のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチドの使用。
【請求項93】
実質的に本明細書に記載されている薬剤の製造における、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項94】
実質的に本明細書に記載されている診断薬または予後薬の製造における、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項95】
実質的に本明細書に記載されている細胞を検出および/または画像化するための薬剤の製造における、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項96】
実質的に本明細書に記載されている炎症性症状を有する個体を処置する方法。
【請求項97】
実質的に本明細書に記載されている炎症性症状を診断または予後する方法。
【請求項98】
実質的に本明細書に記載されているインテグリンα11サブユニットを発現する細胞を画像化する方法。
【請求項99】
実質的に本明細書に記載されている候補化合物を同定するための方法。
【請求項100】
実質的に本明細書に記載されている抗体もしくはその抗原結合フラグメント。
【請求項101】
実質的に本明細書に記載されている医薬組成物。
【請求項102】
実質的に本明細書に定義されている核酸分子。
【請求項103】
実質的に本明細書に定義されているベクター。
【請求項104】
実質的に本明細書に定義されている宿主細胞。
【請求項105】
実質的に本明細書に定義されている抗体またはその抗原結合フラグメントを製造する方法。
【請求項106】
実質的に本明細書に定義されているキット。
【請求項107】
本明細書に定義されているエピトープ。
【請求項108】
本明細書に記載されている単離されたポリペプチド。
【請求項109】
本明細書で定義されている抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を同定または製造するための、エピトープまたは単離されたポリペプチドの使用。
【請求項1】
炎症性症状を処置するための薬剤の製造における、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体の使用
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1;
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる)。
【請求項2】
炎症性症状を処置するための薬剤の製造における、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体の使用
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合することができ、
ただし、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜6のアミノ酸配列の総ては含まない)。
【請求項3】
炎症性症状の診断薬または予後薬の製造における、請求項1または2で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項4】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を検出および/または画像化するための薬剤の製造における、請求項1または2で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項5】
前記インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体が細胞の表面に局在している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記細胞が軟骨細胞または繊維芽細胞である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記抗原結合フラグメントがscFvである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記抗体が組換え抗体である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒトまたはヒト化されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が以下のCDR:
a)配列番号1;
b)配列番号2;および
c)配列番号3
を含んでなる重鎖可変領域を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記重鎖可変領域が配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が以下のCDR:
a)配列番号4;
b)配列番号5;および
c)配列番号6
を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記軽鎖可変領域が配列番号10のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、請求項12または13で定義された重鎖可変領域と請求項14または15で定義された軽鎖可変領域を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1または3〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号11のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる重鎖を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる軽鎖を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、請求項17で定義された重鎖と請求項18で定義された軽鎖を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1または3〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号13のアミノ酸配列を含んでなるか、またはそれからなる、請求項1または3〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記抗体もしくはその抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と同じエピトープと結合することができる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子が結合するものとは異なるエピトープと結合することができる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体が、治療部分および/または検出可能部分をさらに含んでなる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
検出可能部分が放射性同位元素(例えば、3H、14C、35S、123I、125I、131I、99Tc、111In、90Y、188Re)、放射性核種(例えば、11C、18F、64Cu)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド、リン、カルボシアニン)、酵素標識(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、化学発光剤、ビオチニル基および二次リポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
炎症性症状の診断または画像化のための診断薬の製造における、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項1〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記炎症性症状が関節疾患である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記関節疾患が関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体がコラーゲンの分解を調整し得る、請求項1〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体がコラーゲンの分解を阻害し得る、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体がin vivoにおいてコラーゲンの分解を調整し得る、請求項1〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
炎症性症状を有する個体を処置するための方法であって、その個体に有効量の、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、方法。
【請求項34】
個体において炎症性症状を診断または予後する方法であって、その個体に有効量の請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、含む方法。
【請求項35】
個体の身体において炎症性症状に関連するインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体を発現する細胞を画像化するための方法であって、その個体に有効量の請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体、融合体もしくは誘導体を投与することを含む、方法。
【請求項36】
個体において前記化合物の位置を検出する工程をさらに含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項33〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記炎症性症状が関節炎疾患である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記関節炎疾患が関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
個体において炎症性症状の進行を監視するための方法であって、
(a)第一の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、その中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;
(b)第二の時点で個体から採取された細胞のサンプルを準備し、その中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること;および
(c)工程(a)と(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を比較すること
を含み、工程(a)と比べた場合の工程(b)で測定されたインテグリンα11サブユニットタンパク質の量の増加が炎症性症状の進行の指標となる、方法。
【請求項41】
炎症性症状と関連する細胞を同定する方法であって、供試細胞のサンプル中のインテグリンα11サブユニットタンパク質の量を、請求項1〜32のいずれか一項で定義された抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を用いて測定すること、およびそれを陽性対照および/または陰性対照に対するインテグリンα11サブユニットタンパク質の量と比較することを含む、方法。
【請求項42】
前記陽性対照が炎症性症状に罹患している被験体由来の細胞を含んでなる、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記陰性対照が炎症性症状に罹患していない健康なヒトに由来する細胞を含んでなる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記炎症性症状が関節炎疾患である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症性症状が関節リウマチまたは骨関節炎である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
炎症性症状を処置するための候補化合物を同定するための方法であって、
a)供試化合物を準備すること;
b)該化合物の、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、以下のCDR配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、その変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくは誘導体の融合体と競合する能力を試験すること
を含み、
該試験化合物がインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して競合することができれば、それは炎症性症状を処置するための候補化合物として同定される、方法。
【請求項48】
前記化合物の、コラーゲンの分解を調整する能力を試験する工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物の、コラーゲンの分解を阻害する能力を試験する工程をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記試験工程がin vivoで行われる、請求項47〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記試験化合物がポリペプチド、またはその融合体もしくは誘導体、または該その誘導体の融合体である、請求項47〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記試験化合物が抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体の融合体もしくはその誘導体である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記試験化合物が完全な抗体である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記試験化合物が、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、シングル抗体鎖(例えば、重鎖または軽鎖)、シングル可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、シングルおよびダブル形式[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択される抗原結合フラグメントである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記試験化合物がscFvである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体との結合に関して、配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と競合することができる抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または
インテグリンα11サブユニットもしくはそのヘテロ二量体に対する結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体
(ただし、該抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体は、配列番号1〜6のアミノ酸配列の総ては含まない)。
【請求項57】
配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子と同じエピトープと結合することができる、請求項56に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項58】
配列番号13のアミノ酸配列を有するscFv分子が結合するものとは異なるエピトープと結合することができる、請求項56に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項59】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体が細胞の表面に局在する、請求項56〜58のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項60】
前記細胞が軟骨細胞または繊維芽細胞である、請求項60に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項61】
完全な抗体を含んでなるか、またはそれからなる、請求項56〜60のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項62】
Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含んでなるか、またはそれからなる、請求項56〜60のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項63】
前記抗原結合フラグメントがscFvである、請求項62に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項64】
前記抗体が組換え抗体である、請求項56〜63のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項65】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項56〜64のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項66】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒトまたはヒト化されている、請求項56〜65のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項67】
コラーゲンの分解を調整することができる、請求項56〜66のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項68】
コラーゲンの分解を阻害することができる、請求項67に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項69】
in vivoでコラーゲンの分解を阻害することができる、請求項67または68に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項70】
炎症性症状の処置に有効性を有する、請求項56〜69のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項71】
前記炎症性症状が関節疾患(関節リウマチおよび骨関節炎など)、関節炎症、炎症により誘発される軟骨破壊、慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、歯周炎、乾癬、喘息、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症および慢性自己炎症性疾患からなる群から選択される、請求項70に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項72】
前記炎症性症状が関節リウマチである、請求項71に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項73】
前記炎症性症状が骨関節炎である、請求項71に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項74】
治療部分および/または検出可能部分をさらに含んでなる、請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項75】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体をコードする核酸分子、またはその成分ポリペプチド鎖。
【請求項76】
請求項75に記載の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項77】
発現ベクターである、請求項76に記載のベクター。
【請求項78】
請求項75に記載の核酸分子または請求項76もしくは77に記載のベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項79】
前記宿主細胞が細菌細胞である、請求項78に記載の宿主細胞。
【請求項80】
前記宿主細胞が哺乳類細胞である、請求項78に記載の宿主細胞。
【請求項81】
前記宿主細胞がヒト細胞である、請求項80に記載の宿主細胞。
【請求項82】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントを製造するための方法であって、請求項78〜81のいずれか一項で定義された宿主細胞を、コードされている抗体またはその抗原結合フラグメントの発現を可能とする条件下で培養することを含む、方法。
【請求項83】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項84】
非経口投与に好適な請求項83に記載の医薬組成物。
【請求項85】
医薬に用いるための、請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体。
【請求項86】
請求項83または84に記載の医薬組成物を含んでなるキット。
【請求項87】
インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体により定義されるエピトープ
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる)。
【請求項88】
以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIF
LHHLEIELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSS
LSHYEVKLNSSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPIHGMMMKITIPI
ATRSGNRLLKLRDFLTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRA
PQLNHSNSDVVSINCNIRLVPNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKS
MKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDPSRQIVFEISKQEDWQVP
[配列番号15]
を含んでなるか、またはそれからなる請求項87に記載のエピトープ、またはそのフラグメント、融合体もしくは変異体。
【請求項89】
以下のアミノ酸配列:
SDGSIECVNEERRLQKQVCNVSYPFFRAKAKVAFRLDFEFSKSIF
LHHLEIELAAGSDSNERDSTKEDNVAPLRFHLKYEADVLFTRSSS
LSHYEVKLNSSLERYDGIGPPFSCIFRIQNLGLFPΓHGMMMKITIPI
ATRSGNRLLKLRDFLTDEANTSCNIWGNSTEYRPTPVEEDLRRA
PQLNHSNSDWSINCNIRLVPNQEINFHLLGNLWLRSLKALKYKS
MKIMVNAALQRQFHSPFIFREEDPSRQIVFEISKQEDWQVP[配列番号15]
を含んでなるか、またはそれからなる単離されたポリペプチド。
【請求項90】
免疫応答を刺激することができる、請求項89に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項91】
前記ポリペプチドが、インテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量に対して結合特異性を有する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはインテグリンα11サブユニットまたはそのヘテロ二量体に対する該抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合特異性を保持する、該抗体もしくは抗原結合フラグメントの変異体、融合体もしくは誘導体、または該変異体もしくはその誘導体の融合体と結合することができる、請求項89または90に記載の単離されたポリペプチド
(ここで、該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下のアミノ酸配列:
FSRYYMHWVRQVPG[配列番号1];
SGVSWNGSRTHYADSVKGR[配列番号2];
ARVSGDGYNFGA[配列番号3];
CTGSSSNIGAGYDVH[配列番号4];
GYNERPS[配列番号5];および
CAAWDDSLSGHVV[配列番号6]
を含んでなる)。
【請求項92】
請求項56〜74のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を同定または製造するための、請求項87もしくは88に記載のエピトープ、または請求項89〜91のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチドの使用。
【請求項93】
実質的に本明細書に記載されている薬剤の製造における、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項94】
実質的に本明細書に記載されている診断薬または予後薬の製造における、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項95】
実質的に本明細書に記載されている細胞を検出および/または画像化するための薬剤の製造における、抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体の使用。
【請求項96】
実質的に本明細書に記載されている炎症性症状を有する個体を処置する方法。
【請求項97】
実質的に本明細書に記載されている炎症性症状を診断または予後する方法。
【請求項98】
実質的に本明細書に記載されているインテグリンα11サブユニットを発現する細胞を画像化する方法。
【請求項99】
実質的に本明細書に記載されている候補化合物を同定するための方法。
【請求項100】
実質的に本明細書に記載されている抗体もしくはその抗原結合フラグメント。
【請求項101】
実質的に本明細書に記載されている医薬組成物。
【請求項102】
実質的に本明細書に定義されている核酸分子。
【請求項103】
実質的に本明細書に定義されているベクター。
【請求項104】
実質的に本明細書に定義されている宿主細胞。
【請求項105】
実質的に本明細書に定義されている抗体またはその抗原結合フラグメントを製造する方法。
【請求項106】
実質的に本明細書に定義されているキット。
【請求項107】
本明細書に定義されているエピトープ。
【請求項108】
本明細書に記載されている単離されたポリペプチド。
【請求項109】
本明細書で定義されている抗体もしくは抗原結合フラグメント、またはその変異体、融合体もしくは誘導体を同定または製造するための、エピトープまたは単離されたポリペプチドの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−514413(P2010−514413A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542211(P2009−542211)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004886
【国際公開番号】WO2008/075045
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508157842)カルテラ、アールアンドデー、アクチボラグ (1)
【氏名又は名称原語表記】CARTELA R&D AB
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004886
【国際公開番号】WO2008/075045
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508157842)カルテラ、アールアンドデー、アクチボラグ (1)
【氏名又は名称原語表記】CARTELA R&D AB
【Fターム(参考)】
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