説明

インドシアニングリーン血中濃度力学を使用した組織潅流分析システム

本発明は、インドシアニングリーン(Indocyanine green)血中濃度力学を使用した組織潅流分析装置及び測定方法に関するもので、詳細には、生体内にインドシアニングリーンを注射してICG濃度の時間的空間的変化を探知した後、それを数値化して分析する組織潅流分析装置及び測定方法に関するものである。本発明の分析装置及び測定方法は、既存には測定することができなかった正常の10%以下に組織潅流が低下した場合から正常組織以上に増加した潅流程度まで、広い範囲の組織潅流を測定するのに使用することができる。また、潅流程度による組織壊死程度を提示することで、糖尿性の足などの潅流低下による組織壊死憂慮がある場合を診断することができ、また、臨床的に潅流低下に対する治療の効果をマップを通じて図示できる方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織潅流分析システム及びそれを使用した潅流程度測定方法に関するもので、より詳細には、生体内にインドシアニングリーンを注射して、ICG濃度の時間に対する変化を探知した後、それを分析して組織潅流を測定するためのシステム及びそれを使用した潅流程度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組織の潅流を測定する既存の方法として、「レーザードップラー映像術」は、皮膚表面の血流速度によってレーザーが散乱する程度を測定する方法であるが、血液の流れが正常の20%未満に落ちた場合、敏感度が低くて血流が低下した状態で変化程度を測定する方法に使用するには、不適合な短所があった。
【0003】
既存の血管映像術のもう一つの方法として、X線血管造影法は、血管造影剤を使用してレントゲン映像で現されるが、これは血液の実際の流れを見るのではなく、血管の内径構造を示す構造的な映像技法である(Helisch,A.,Wagner,S.,Khan,N.,Drinane,M.,Wolfram,S.,Heil,M.,Ziegelhoeffer,T.,Brandt,U.,Pearlman,J.D.,Swartz,H.M.& Schaper,W.Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,2006年,第26卷,520−526頁)。したがって、現在この方法では、臨床で正確な組織の潅流程度を測定することができない。
【0004】
既存のインドシアニングリーン(ICG)を使用した血管造影法は、すでに安全性の立証を受けて(Sekimoto,M.,Fukui,M.& Fujita,K.Anaesthesia,1997年,第52卷,1166−1172頁)移植された皮膚の血管形成(Holm,C.,Mayr,M.,Hofter,E.,Becker,A.,Pfeiffer,U.J.& Muhlbauer,W.,Br.J.Plast.Surg.,2002年,第55卷,635−644頁)や、糖尿患者の眼球新生血管程度測定(Costa,R.A.,Calucci,D.,Teixeira,L.F.,Cardillo,J.A.& Bonomo,P.P.,Am.J.Ophthalmol.,2003年,第135卷,857−866頁)に、臨床的に使用されている。ICGは、750〜790nmの近赤外線を受けて、さらに長い波長である800〜850nmの近赤外線領域の蛍光を出し、それをCCDカメラや分光計で測定することができる。近赤外線は、高い透過性を有していて、組織の数cm程度を透過して光の散乱が少なく、最近、人体映像技術のために多く研究されている分野である(Morgan,N.Y.,English,S.,Chen,W.,Chernomordik,V.,Russo,A.,Smith,P.D.& Gandjbakhche,A.,Acad.Radiol.,2005年,第12卷,313−323頁)。これまた、血管の構造的映像技法に使用され、糖尿患者の眼球新生血管の透過度程度の検査に使用され、組織潅流を測定する用途では使用されていない。
【0005】
前記方法に使用されること以外に、「ICG除去試験」に使用されているが、ICGは、静脈血管内に注射されると、アルブミンなどの血管内タンパク質に付いて血管を通じて全身に早く広がって、肝に送られると肝でアルブミン等のタンパク質が分解しながら落ちたICGは、胆汁に排出されて体外に排泄される。したがって、血管では急激にその濃度が減って、4〜6分経てば、ICG蛍光信号は、初期の半分水準に落ちて、その後には蛍光信号の強さが弱くなって正確な測定範囲を逸脱する。このように、肝によって早く除去される「ICG力学」を使用したものには、肝機能検査があるが(Sinyoung Kim,等,Kor.J.Lab.Med.,2003年,第23卷,88−91頁)、体内映像の観点では、短所として知られてきた(Sekimoto,M.,Fukui,M.&Fujita,K.,Anaesthesia,1997年,第52卷,1166−1172頁)。
【0006】
それで、本発明者等は、ICGの生体内力学を使用して、正常潅流の10%以下に低下した潅流程度から正常潅流以上に増加した広い範囲で、正確な測定が可能であることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記で言及されたICGの生体内力学を使用して、既存技術では測定することができない正常潅流の10%以下に低下した潅流程度から正常潅流以上に増加した広い範囲で、各部位別に正確な測定が可能な生体潅流測定を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、生体内にインドシアニングリーン(ICG)を注射した後、濃度変化を測定して潅流程度を計算する組織潅流分析装置、組織潅流測定方法及び測定装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、レーザードップラー映像と組織壊死程度との間に関連性がないことを示した写真である。
【図2】図2は、ICG蛍光信号を探知するための全体的な模式図である。 1:光源 2:生体台 3:800〜850nmフィルター 4:ICG近赤外線蛍光探知機 5:ICG映像分析装置
【図3】図3は、生体中の血液で時間経過によって直接得たICG蛍光強度力学に対する実験結果を示したグラフ(上段)とインドシアニン蛍光分析写真(下段)である。
【図4】図4は、虚血組織に潅流程度によるICG蛍光力学に対するシミュレーショングラフである。
【図5】図5は、Tmaxと潅流程度との関係に対するシミュレーショングラフである。
【図6】図6は、ヌードマウスの尾静脈にICG注入後に得た血管造影図である。
【図7】図7は、大腿部動脈の片方が除去されたネズミで、虚血パターン分析方式を使用して潅流程度を色でマッピングして出力した図である。
【図8】図8は、手術後すぐ測定された虚血程度を図示した虚血足の潅流マップ (左)によって組織の壊死が起きる確率を図示した図(中間)及び手術後7日目の実際組織の壊死程度を示した写真(右)である。
【図9】図9は、生体から採取された血液中のICG蛍光強度力学に対する実験結果を示したグラフである。
【図10】図10は、潅流程度と色のマッチング原則を例示した図である。
【0010】
[発明の実施のための最善の形態]
以下、本発明を詳しく説明する。
【0011】
本発明は、生体内でインドシアニングリーン(ICG)を注射した後、濃度変化を測定して組織潅流程度を測定して組織の壊死可能性を提示する分析装置を提供する。
【0012】
前記分析装置は、
1)光探知機からの信号を入力受けるための入力手段、2)前記入力された信号を関心地域での時間による蛍光強度で処理するための数値化手段、3)前記数値から組織の部位別に潅流程度を求めるための潅流程度演算手段及び、4)前記演算結果を出力するための出力手段で構成される。
【0013】
前記分析装置において、前記光探知機は、通常の赤外線、可視光線または紫外線領域の蛍光を検出することができる装置を意味し、特別にこれに制限されるのではないが、フォトレジスタ、フォトボルタイックセル、フォトダイオード、光増幅チューブ(PMT)、光チューブ、フォトトランジスター、CCD、焦電検出器、ゴレイセル、サーモカップル、サーミスタ、相補性金属酸化物半導体(CMOS)検出器またはクライオジェニック検出器などの光探知素子を使用することができる。
【0014】
前記入力手段は、特別にこれに制限されるものではないが、RSC232、パラレルポート、IEEE1394または、USB(汎用直列バス)を使用することが好ましい。
【0015】
前記数値化手段は、前記入力手段と作動可能に連結され、マイクロプロセッサーとそれに組み込まれた演算ソフトウェアで構成される。
【0016】
蛍光強度の数値化は、図3及び図4に例示したように、蛍光強度をy軸で、測定時間をx軸にして、グラフ化することができるが、その他の方法でも数値化することが可能である。
【0017】
前記演算手段は、マイクロプロセッサーとそれに組み込まれており、前記数値化手段から求められた蛍光強度の数値及び測定時間を使用して、潅流を計算する算式を含むアルゴリズムが駆動される演算ソフトウェアで構成される。前記マイクロプロセッサーは、前記数値化手段に含まれたマイクロプロセッサーであり得、別途のマイクロプロセッサーもあり得る。
【0018】
前記計算は、正常組織の蛍光強度の場合、測定時間によって指数的に減少して、分析対象組織で虚血が起きた場合に、虚血組織が潅流する程度で正常組織にICG蛍光粒子が入り、同じ潅流程度で虚血組織のICG蛍光粒子が抜け出るという点を使用する。
【0019】
本発明では、組織潅流程度は、分析対象組織での蛍光強度が最大になる時の時間を使用して計算することができる。これは、分析対象組織で虚血が発生した場合、虚血組織のICG蛍光強度が最も高い時が、時間に対する微分値が0になる地点であるという点を使用したものである。本発明では、前記時間をTmaxと定義する。
【0020】
本発明の具体的な実施態様で、Tmaxは下記のような方法で求めた。まず、前記のような方法でICG注入後、これを時間の経過によって得た生体のICG蛍光映像を最も強い明るさを1として数値化したグラフ(図3参照)を作成した。これは、時間に対して指数関数で減少するグラフなので、下記の数式で計算することができる。
【0021】
【数1】

【0022】
前記数式で、FInor(Fluorescence Intensity normal)は、潅流が正常な組織のICG蛍光強度を意味し、Aは初め1分のICGイメージから得た蛍光の強度(本発明では、Aを1で計算する)を意味し、τは計算によってt1/2/ln2で定義され、t1/2はICGの蛍光の強度が最も高い値の半分になる時の時間を意味する。
【0023】
組織の潅流程度が正常に比べて落ちる虚血組織の時間に対するICG蛍光強度の変化程度は、「虚血組織が潅流する程度(P)で正常組織にICG蛍光粒子(FInor)が入り、同じ潅流程度(P)で虚血組織のICG蛍光粒子(FIisc)が抜け出す」という仮定下で次のような式で計算することができる。
【0024】
【数2】

【0025】
前記数式を使用して虚血組織の潅流程度が下がる場合、ICG蛍光強度力学の変化をシミュレーションし(図4参照)、組織の潅流程度が下がるほど蛍光強度が最大になる時の時間であるTmaxが大きくなる結果を得た(図5参照)。
【0026】
前記のように、Tmaxと血液潅流程度の相関関係は次のような式で表される。
【0027】
【数3】

【0028】
数式1によって、Tmaxを通じて組織潅流程度(P)を導出する。
【0029】
しかし、前記Tmaxによる組織の潅流程度の測定は、本発明の一実施態様に過ぎず、それに本発明の保護範囲が制限されないことは、当業者に明白な事項である。
【0030】
したがって、インドシアニングリーン注入後組織内でのインドシアニングリーンの濃度を時間によって測定して、組織でのインドシアニングリーンの蛍光強度力学を使用した組織の潅流程度を測定する分析装置は、使用されるアルゴリズムまたは計算式が何であっても、本発明の権利範囲に含まれる。一方、本発明では前記のように算出した潅流程度を特定色に対応させて潅流マップで出力した。潅流程度に対応する色は、グラジエント色を使用するのが好ましいが、特別にこれに制限されるものではなく、プログラマーが任意に選定することができる。前記潅流マップは、組織潅流程度を視覚化するための手段として、画面やプリンターなどに出力して、本発明の潅流程度分析装置のオペレータが組織の潅流程度を視覚的かつ直観的に把握するのに役立つ。
【0031】
実施例を通じて、前記方法を使用して測定された潅流程度と、後に組織が虚血状態によって壊死する確率の関係が導出されたが、具体的な一実施態様で組織の潅流程度が約50%/分の場合、潅流マップで黄色に表示され(図8の左側参照)、この黄色の場合は、組織が壊死する確率は、統計学的に0〜10%間と算出され、組織壊死確率マップでは、青色で塗ることができる(図8の中間参照)。実際、実験結果壊死確率が75〜80%以上の赤色(潅流程度では、15〜20%/分程度だった)で表示された部分だけが、腐ったことを確認した(図8の右側参照)。したがって、壊死する確率が75〜80%以上になると実際に虚血足組織の壊死を観察することができた。これは、「組織壊死確率マップ」(図8の中間参照)で提供される。
【0032】
また、本発明は、光の透過が可能な生体台、その上に上げられたICGが注入された生体に光を照射できるように位置調整が可能な光源、前記光源によって生体から出る蛍光信号の中で800〜850nmの近赤外線波長のみを通過するように位置調整されたフィルター、該フィルターを通過した蛍光光を探知する探知機及び該探知機と作動可能になるように連結され、前記探知機で感知した光を映像化して時間に対するICG力学分析を通じて組織潅流の程度を測定するための分析装置を含む、組織潅流測定装置を提供する。
【0033】
前記の光源は、ICG蛍光観察のために照査する光源として、770+/−20nmの発光ダイオード(LED)や白色光に770+/−20nmのフィルターを付着した光源、または、770+/−20nmのレーザー光源が使用可能である。
【0034】
前記のフィルターは、800〜850nm波長の光のみを通過させるもので、このフィルターを通過すると、生体自体で生成される蛍光は、探知機に探知されない。
【0035】
前記の探知機は、ICG蛍光信号である800〜850nm波長の近赤外線を探知するもので、赤外線感知カメラや分光測定機が使用可能で、ICG注入直後から継続して映像を探知して時間の経過に対するICG力学をみることができる信号を分析装置に転送する。
【0036】
本発明では、生体の潅流程度を測定しようとする関心部分(ROI)を指定すると、連続的なICG映像データで時間によるICG蛍光の強度を自動で数値化し、それを使用すると、図3のように測定されたICG蛍光強度は、時間的、空間的情報に処理される。前記データを基にTmaxを求めて図4のシミュレーションデータと図5のTmaxと組織潅流程度の相関関係と数式1を通じて組織の潅流程度を分析する。また、この結果を使用して、組織の潅流マップ(図7と図8の左側参照)を提供し、また、組織の壊死程度を予測するマップ(図8の中間参照)を提供する。この予測程度は、本発明の実施例を通じて高い予測率を示した(図8の右側参照)。
【0037】
上記の測定装置を使用して、生体内ICG力学を測定するためには、静脈注射を通じてICGを注入して、時間経過による組織内ICG濃度変化を前記方法で探知して分析しなければならない。組織内ICG濃度変化は、血液サンプルを得たり、直接組織の近赤外線映像を得たり、分光技法を使用して測定することができる。
【0038】
同時に、本発明は、
1)生体内にインドシアニングリーン(ICG)を注射して、光源を使用して前記生体に光を照査した後、光探知機を使用して前記生体から発生される蛍光強度を測定することで、ICG濃度が充分に低くなる時間まで連続的にICG濃度を探知する工程、
2)時間によって探知された連続的な生体内ICG濃度変化を分析して、部位別に時間別ICG蛍光強度を数値化する、データ処理工程、及び
3)前記数値化されたデータから潅流程度を計算する工程とを含む組織潅流程度の測定方法を提供する。
【0039】
ここで、前記組織の潅流程度測定方法は、前記計算された潅流程度を潅流マップ(perfusion map)に出力する工程をさらに含むことがより好ましく、前記潅流マップは、グラジエント色マップによって、前記分析されたデータを総合して計算された潅流程度に該当する色を該当のピクセルに被せることによって作成することが好ましい。
【0040】
また、他の実施態様によると、本発明は、1)生体内でインドシアニングリーン(ICG)を注射して光源を使用して前記生体に光を照査した後、光探知機を使用して前記生体から発生される蛍光強度を測定することで、ICG濃度が充分に低くなる時間まで連続的にICG濃度を探知する工程、2)時間によって得られたICG血管映像図で各ピクセル別にICG蛍光強度力学を分析してTmaxを得る工程、及び3)Tmaxによる潅流程度を計算する工程とを含む組織の潅流程度測定方法を提供する。
【0041】
ここで、前記組織の潅流程度測定方法は、前記計算された潅流程度を潅流マップに出力する工程をさらに含むことがより好ましく、前記潅流マップはグラジエント色マップによって、前記分析されたデータを総合して計算された潅流程度に該当する色を該当のピクセルに被せることで作成することが好ましい。
【0042】
併せて、本発明は、前記測定方法を通じて導出された組織の潅流程度を基に組織が壊死する確率を提示する組織壊死確率マップを結果として表示する工程を含む、組織の壊死程度予測方法を提供する(図8右側参照)。
【0043】
前記測定方法において、光源は、ICG蛍光観察のために照査される光源としては、770+/−20nmの発光ダイオード(LED)や白色光に770+/−20nmのフィルターを付着した光源、または、770+/−20nmのレーザー光源が使用可能で、光探知機は、上述した光探知素子を採用したものならどれでも使用することができ、特別にこれに制限されるものではないが、ICG蛍光信号である800〜850nm波長の近赤外線を探知することで赤外線感知カメラや分光測定機が使用可能で、ICG注入直後から継続して映像を探知して時間経過に対するICG力学を示すことができる信号を分析装置に転送する。
【0044】
一方、生体から放出される蛍光は、800〜850nm波長の光のみを通過させることができるフィルターを使用することで、生体自体で生成される蛍光は、探知されないようにすることが好ましい。
【0045】
前記データ処理工程及び潅流程度を分析する工程は、マイクロプロセッサーとこれに組み込まれていたり、ハードディスクドライブ、光ドライブまたはフラッシュメモリのような外部記憶装置に保存されているソフトウェアを通じて遂行することが好ましく、前記ソフトウェアは、上述したように、特定アルゴリズムに制限されず、Microsoft Windows(登録商標) XP、2000、Me、98、95等のWindows(登録商標)系列のOS、Linux、OS/2、Unix(登録商標)などの多様なプラットホームを通じて具現することができる。
【0046】
前記潅流程度を分析する工程で相関係数は、特別にこれに制限されるものではないが、分析対象組織(虚血組織)のICG蛍光強度が最高値になる時の時間であることが好ましい。
【0047】
前記分析対象組織(虚血組織)のICG蛍光強度力学から潅流程度を計算する過程で、Tmaxを求めるのが、特別に潅流程度の分析方法をこれに制限するものではないが、分析対象組織で蛍光強度の微分値が0になる時間(Tmax)と潅流程度が比例する原理を使用して計算されることが好ましい。
【0048】
前記結果を表示する工程は、分析される関心部分(Region of interest,ROI)を特定部分のピクセルの平均的なデータ、2)ピクセル単位または、3)各関心部分別で潅流程度を求めて、この値に対してそれぞれ決められた色を指定して領域別に彩色して部分別で潅流の程度を図示することで、潅流マップとして具現することができる。前記過程は、適切なアルゴリズムを採用したソフトウェアによってマイクロプロセッサーを通じて演算され、コンピューターの出力装置を使用して表示することで、遂行することができる。図7は、前記潅流マップの例示であり、ICG注入後の時間経過による蛍光イメージを連続して得て、各ピクセルのICG蛍光力学を分析して潅流程度を測定した後、測定された潅流程度に符合する色をピクセルに被せることで求めることができ、潅流程度と色のマッチング原則は、図10を参照する。
【0049】
前記出力装置は、特別にこれに制限されないが、モニター、プリンターまたはプロッターであることが好ましく、外部記憶装置を通じて各種グラフィックフォーマットのファイルで保存することも可能である。
【0050】
本発明者等は、ヌードマウスの片方の足の大腿部動脈と静脈を除去する手術を行なって、前記説明した方法でICG映像を得て、これを通じてTmax値を求めた。組織の壊死程度は、組織潅流の程度に大きく影響を受けるので、正確な「潅流程度」が測定されたかどうかは、組織壊死程度の観察によって評価した。その結果、図8に示したように、本発明に潅流測定値と組織の壊死程度に有意な関係を示した。これは、比較例であるドップラー映像術による測定(図1参照)で顕著に落ちた「潅流程度」の微妙な差を測定することができなかったのとは異なり、0.04〜50%/分(正常足の潅流程度:300%/分)まで潅流程度が下がった場合も、その測定が可能であることを示した。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
【0052】
但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容を限定するものではない。
<比較例1>ドップラー映像術による組織壊死予測
本発明者の実験データである図1の左側の図三つは、血液潅流低下モデルを作るためにネズミの片方の足の大腿部動脈と静脈を除去する手術の1〜4日後に、レーザードップラー映像術で得たデータであり、右側の図は、各々の一週間後の足組織の壊死程度を示している。組織の壊死程度は、Aの場合全くなく、Bは足裏の中間、Cは足首まで進行していて、壊死程度は組織の潅流程度と比例するが(Helisch,A.等,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,2006年,第26卷,520−526頁、Aは正常の160%、Bは正常の20%、Cは正常の5%の潅流)、各々に該当するレーザードップラー映像術データは、全く各個体間の組織潅流の差を示すことができなかった。
<実施例1>ICGによる潅流測定方法確立
本発明者等は、血液内ICG濃度力学による潅流測定方法を確立するために下記のような工程を経て数式を導出した。
【0053】
図9は、ICG(1.5mg/kg,Sigma,米国)を静脈注入後、時間経過にしたがって血液を採取してICG蛍光強度を測定して、その値を血液内ICG濃度に換算したグラフである。グラフの黒い四角はICG蛍光強度、白い四角は血液中のICG濃度を表示する。図3は、ICG注入後1分から12分までのICG蛍光変化推移を示したものである。すなわち、図3では時間の経過によって得た生体のICG蛍光映像を最も強い明るさを1にして数値化してグラフに表現した。図3のように正常組織から得られたグラフを使用して、正常組織でのICG変化様相を数式化すると、時間に対して指数関数で減少するグラフなので、それを次のように数式化することができる。
【0054】
【数4】

【0055】
ここで、FInorは、潅流が正常な組織のICG蛍光強度、Aは初め1分のICGイメージから得た蛍光の強度(本発明では、Aを1で計算する)、τは計算によってt1/2/ln2で定義された。t1/2は、ICGの蛍光の強度が最も高い値の半分になる時の時間である。
【0056】
組織潅流が落ちると、ICGの広がる速度が遅くなってこれにより時間に対するICG蛍光強度の変化様相が正常組織とは変わることを期待して、それをシミュレーションした。ここで、「潅流程度」(perfusion rate)は「関心部分で全体血液量に対して1分当り血液が関心部分外の血液と交換される程度」で、単位は%/分で、正常足の「潅流程度」は300%/分と計算された。組織の潅流程度が正常に比べて落ちる虚血組織の時間に対するICG蛍光強度の変化程度は、「虚血組織が潅流する程度(P)で正常組織にICG蛍光粒子(FInor)が入って、同じ潅流程度(P)で虚血組織のICG蛍光粒子(FIisc)抜け出る」という仮定の下に次のような式で表した。
【0057】
FIisc(FIischemia)に対して整理すると、次のようになる。
【0058】
【数5】

【0059】
ここで、Pに20〜300%/分の潅流程度の数値を入れて、図4のシミュレーショングラフを得た。このグラフで、潅流程度が低くなるほどICG蛍光強度の最大値は低くなってICG蛍光強度が最大になる時間も遅くなる様相がみられる。
【0060】
実際、ICG蛍光強度グラフは、シミュレーションされたグラフとは差を示す。正常組織のICG蛍光強度の減少は、生体の状態などによって変わり、それによって虚血組織の蛍光も補正することにより絶対的比較が可能である。したがって、各実験データから「潅流程度」を得るための標準尺度になる「相関係数」が必要で、本発明ではこの相関係数にTmaxを選定した。Tmaxは、虚血組織のICG蛍光強度力学式の微分値が0になる時間を意味する。
【0061】
虚血組織のICG蛍光強度が最も高い時のTmaxは、時間に対する微分値が0になる地点なので、次のように表わすことができる。
【0062】
【数6】

、および
【0063】
【数7】

【0064】
これを簡単にすると、次のように整理することができる。
【0065】
【数8】

【0066】
maxと「潅流程度」に関するグラフは、図5である。
<実施例2>インドシアニングリーンを使用した潅流測定及び相関係数による潅流マップの作成と組織壊死確率マップ作成
本発明者等は、実際の虚血組織でのICGイメージを得るために血液潅流低下モデルを作った。50匹のヌードマウス(Charlse liver Japan,Inc.)の片方の足の大腿部動脈と静脈を除去する手術を施行して、手術当日の4時間後、図2に示した測定装置を使用してICG映像を得て、前記方法を通じて組織の潅流程度を求めた。
【0067】
求められた組織の潅流程度は、潅流マップに導出した(図8左側)。図8で潅流程度300%/分が潅流マップの9に対応して、0%/分が0に対応する。
【0068】
組織の壊死程度は、組織潅流の程度に大きく影響を受けるので、正確な「潅流程度」が測定されたかどうかは、組織壊死程度の観察によって評価することができる。50匹の実験用ネズミは、手術後7日以後に組織の壊死程度を観察した(図8右側)。この統計資料を通じて、手術後4時間後に得た潅流程度と組織の壊死程度の関係を統計学的に分析した。分析の結果、潅流程度50%/分に当たる組織壊死確率は、0〜10%間で確認され、潅流程度15〜20%/分に当たる組織壊死確率は、75〜80%程度で確認された。本発明者等は、組織壊死確率が1の場合に赤色を割当して、組織壊死確率が0の場合に青色を割当して、これらの間のグラジエント色(color gradient)を使用して、組織の壊死確率マップを作成した(図8中間)。前記のように製作された組織壊死確率マップは、実際の組織壊死程度と一致する結果を得た。
【0069】
その結果は、前記方法を通じて測定された潅流程度が低いほど組織が壊死する確率が高くなることを示すことで、前記方法を通じて求められた「潅流程度」の正確度を立証する。これは、図1と同じように、既存技術では著しく落ちた「潅流程度」の微妙な差を測定することができなかったが、本発明の方法は、0.04〜50%/分(正常足の潅流程度:300%/分)まで潅流程度が下がった場合もその測定が可能で、これは組織の壊死程度と一致して組織壊死程度に対する予測力を有することを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の方法によると、正常潅流の10%以下に低下した潅流程度から正常潅流以上に増加した潅流まで、広い範囲で正確な潅流程度の測定が可能で、潅流程度を通じて組織壊死程度の予測が可能である。また、組織の壊死を示さない範囲での血液潅流の変化程度も測定可能で、実際の臨床で血液潅流程度診断や手術後の潅流程度変化の測定に使用可能であり、正常状態の血管に注入されたICG蛍光力学と血管内皮細胞活性を誘導する薬物や外部圧力によって変化したICG蛍光力学を比較することで、血管内皮細胞の機能検査(endothelial cell function test)に使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インドシアニングリーン(ICG)蛍光イメージを使用した組織潅流程度分析装置。
【請求項2】
1)光探知機からの信号入力を受けるための入力手段、2)前記入力された信号を関心地域での時間による蛍光強度に処理するための数値化手段、3)前記数値から組織の部位別に潅流程度を求めるための潅流程度演算手段及び、4)前記演算結果を出力するための出力手段からなることを特徴とする、請求項1に記載の組織潅流程度分析装置。
【請求項3】
前記潅流程度が、特定時間で測定した組織での蛍光強度力学を通じて計算されることを特徴とする、請求項2に記載の組織潅流程度分析装置。
【請求項4】
前記潅流程度が、下記数式によって求められることを特徴とする、請求項3に記載の組織潅流程度分析装置:
【数1】

[前記数式で、FIisc(Fluorescence Intensity ischemia)は、測定しようとする組織のICG蛍光強度、Pは潅流程度、Aは初めて得たICGイメージから得た蛍光の強度、τはt1/2/ln2であり、t1/2は潅流が正常組織のICG蛍光強度が初めの半分になる時の時間である]。
【請求項5】
前記潅流程度が、下記数式によって計算されることを特徴とする、請求項3に記載の組織潅流程度分析装置:
【数2】

(前記数式で、Pは潅流程度で、τはt1/2/ln2である)。
【請求項6】
光の透過が可能な生体台、その上に載せられたICGが注入された生体に光を照射することができるように位置調整可能な光源、該光源によって生体から出る蛍光信号中で800〜850nmの近赤外線波長のみが通過するように位置調整されたフィルター、該フィルターを通過した蛍光光を探知する探知機及び該探知機と作動可能に連結されて前記探知機で感知した光を映像化して時間に対するICG力学分析を通じて組織潅流の程度を測定するための請求項1の分析装置を含む組織潅流測定装置。
【請求項7】
前記光源が、770+/−30nmの発光ダイオード(LED)や白色光に770+/−30nmのフィルターを付着した光源、または、770+/−30nmのレーザー光源であることを特徴とする、請求項6に記載の組織潅流測定装置。
【請求項8】
探知機が、赤外線感知カメラや分光測定機であることを特徴とする、請求項6に記載の組織潅流測定装置。
【請求項9】
1)生体内でインドシアニングリーン(ICG)を注射して光源を使用して前記生体に光を照査した後、光探知機を使用して前記生体から発生する蛍光強度を測定することで、ICG濃度が充分に低くなる時間まで連続的にICG濃度を探知する工程と、
2)時間によって探知された連続的な生体内ICG濃度変化を分析して、部位別に時間別ICG蛍光強度を数値化するデータ処理工程、及び
3)前記数値化されたデータから潅流程度を計算する工程とを含む、組織潅流程度の測定方法。
【請求項10】
前記計算された潅流程度を潅流マップ(perfusion map)に出力する工程をさらに含む、請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
前記潅流マップが、グラジエント色マップ(colorgradient map)によって、前記分析されたデータを総合して計算された潅流程度に該当する色を該当のピクセルに被せることで作成されることを特徴とする、請求項10に記載の測定方法。
【請求項12】
1)生体内でインドシアニングリーン(ICG)を注射して光源を使用して前記生体に光を照査した後、光探知機を使用して前記生体から発生する蛍光強度を測定することで、ICG濃度が充分に低くなる時間まで連続的にICG濃度を探知する工程と、
2)時間によって得られたICG血管映像図で各ピクセル別にICG蛍光強度力学を分析してTmaxを得る工程、及び
3)Tmaxによる潅流程度を計算する工程とを含む、組織の潅流程度測定方法。
【請求項13】
前記計算された潅流程度を潅流マップに出力する工程をさらに含む、請求項12に記載の測定方法。
【請求項14】
前記潅流マップが、グラジエント色マップによって、前記分析されたデータを総合して計算された潅流程度に該当する色を該当のピクセルに加えることにより作成されることを特徴とする、請求項13に記載の測定方法。
【請求項15】
請求項9または請求項12の測定方法を通じて導出された組織の潅流程度を基に、組織の壊死する確率を提示する組織壊死確率マップを結果として表示する工程を含む、組織の壊死程度予測方法。
【請求項16】
前記潅流程度が、測定組織での蛍光力学パターンを使用して得たICG蛍光強度が最高になる時の時間を使用して計算されることを特徴とする、請求項9または請求項12に記載測定方法。
【請求項17】
前記潅流程度が、下記数式を使用して計算されることを特徴とする、請求項16に記載の測定方法:
【数3】

(前記数式で、Pは潅流程度で、τはt1/2/ln2である)。
【請求項18】
前記潅流マップが、関心部分(Region of interest,ROI)を、1)特定部分のピクセルの平均的なデータ、2)ピクセル単位または、3)各関心部分別に潅流程度を求めてその値に対してそれぞれ決まった色を指定して領域別に彩色して、部分別に潅流程度を図示する方法を選択的に導入することを特徴とする、請求項10または請求項13に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−505582(P2010−505582A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532280(P2009−532280)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003355
【国際公開番号】WO2008/044822
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(508047668)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】