説明

インナーライナージョイントテープ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】インナーライナーのジョイント部におけるタイヤ製造時の不具合に起因する故障を防止するとともに、ジョイントテープの耐熱性を改善することでタイヤの耐久性を向上し、更にタイヤ製造時におけるジョイントテープのポリエチレンシートからの剥がれ性を改善する。
【解決手段】ハロゲン化ブチルゴム又はこれとブチルゴムのブレンドからなる75〜95重量部、及びジエン系ゴム25〜5重量部をゴム成分として、カーボンブラックを含有してなり、ゴム成分100重量部に対して、脂肪酸金属塩及びしゃく解剤を含む加工助剤を1〜5重量部配合し、粘着付与剤を0〜5重量部配合したインナーライナージョイントテープ用ゴム組成物である。また、該ゴム組成物からなるジョイントテープ4で、タイヤ内面のインナーライナージョイント部3を被覆してなる空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブレスタイヤのインナーライナージョイント部のジョイントテープに用いられるゴム組成物、及びそのジョイントテープを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチューブレスタイヤには、タイヤ内部に充填された圧力空気がタイヤ外部に透過して内圧が低下するのを防止するために、タイヤ内面に非通気性を有するブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムを主なゴム成分とするゴム組成物からなるインナーライナーが設けられている。
【0003】
通常、チューブレスタイヤ は、成型ドラム上にインナーライナー 、カーカス、ベルト、トレッド等の部材を積層して未加硫タイヤを成型し、これをモールド内に装入し、ブラダーを用いたシェーピングによって拡張変形させてモールド成形面に押圧しつつ加熱することにより加硫して製品タイヤとする。その際、加硫後のブラダーからの離型性を向上させるために、未加硫タイヤ内面のインナーライナーに水溶性等の離型剤を塗布している。
【0004】
このように離型剤を未加硫タイヤの内面に塗布した場合、離型剤がインナーライナーのジョイント部に浸入したり、ジョイント部が離型剤を巻き込んだりして、加硫時にジョイント部が開いたり離型剤の浸入部にエアー溜まりが発生する等の不具合を生じ、チューブレスタイヤの空気漏れや耐久性を低下させる一因になっている。
【0005】
このジョイント部での問題に対して、インナーライナーのジョイント部にポリエチレンフィルム等からなる保護テープやゴムシートからなるジョイントテープを貼り付けることが行われている(特許文献1参照)。
【0006】
例えば、特許文献2には、ハロゲン化ブチルゴムにカーボンブラックと可塑剤、樹脂を含むゴム組成物からなるジョイントテープでインナーライナーのジョイント部を被覆した後、タイヤ内面に離型剤を塗布することでジョイント部への離型剤の浸入を防止することが開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、インナーライナーのゴム組成物を、ハロゲン化ブチルゴムとジエン系ゴムをゴム成分として、未加硫時の200%伸長時モジュラスを0.2〜0.4MPaとすることで、タイヤ製造時の上記ジョイント部の問題を解決することが提案されている。
【特許文献1】特開平4−247933号公報
【特許文献2】特開平7−9807号公報
【特許文献3】特開2007−9121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術では、ゴム成分としてハロゲン化ブチルゴムが単独で用いられるため、インナーライナーとジョイントテープとの粘着性(タッキネス)が悪く、加硫前のタイヤでジョイントテープが剥がれることがあり、その剥離部から離型剤が浸入してしまい上記問題を充分解消するには至っていない。
【0009】
また、特許文献3に記載の技術によっても、タイヤ加硫時の拡張変形により、インナーライナーが剥がれたり、それにより離型剤がジョイント部に侵入するという問題が解消されるに至っていない。
【0010】
そこで、本発明者は、本件出願時に未公開である特願2007−190497号において、ハロゲン化ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムとブチルゴムのブレンドからなる75〜95重量部、及びジエン系ゴム25〜5重量部をゴム成分としてカーボンブラックを含有してなり、未加硫時の200%伸長時モジュラスが0.2〜0.3MPaであり、かつ200%伸長状態での1分後のモジュラス保持率が30〜55%であるゴム組成物を提案している。このゴム組成物であると、インナーライナージョイント部からの離型剤の侵入を確実に防止し、タイヤ製造時の不具合に起因する故障を防止するとともに、ジョイントテープの耐熱性を改善することでタイヤの耐久性を向上することができる。
【0011】
しかしながら、このゴム組成物を用いたジョイントテープには、実際のタイヤ製造において問題があることが判明した。すなわち、一般に、ジョイントテープはその製造時にポリエチレンシート等の非極性樹脂シートを挟み込んで巻き取られており、タイヤ製造時には、このジョイントテープを樹脂シートから剥がして、インナーライナージョイント部に貼り付けられる。このように樹脂シートから剥がす工程において、上記ゴム組成物を用いたジョイントテープであると、樹脂シートから剥がれにくく、作業性に劣るだけでなく、剥離時にジョイントテープが引き伸ばされて使い物にならなくなる、という不具合が散発することが判明した。
【0012】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、インナーライナーのジョイント部におけるタイヤ製造時の不具合に起因する故障を防止するとともに、ジョイントテープの耐熱性を改善することでタイヤの耐久性を向上しつつ、タイヤ製造時におけるジョイントテープの樹脂シートからの剥がれ性を改善してタイヤ製造作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るインナーライナージョイントテープ用ゴム組成物は、ハロゲン化ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムとブチルゴムのブレンドからなる75〜95重量部、及びジエン系ゴム25〜5重量部をゴム成分として、カーボンブラックを含有してなり、前記ゴム成分100重量部に対して脂肪酸金属塩及びしゃく解剤を含む加工助剤を1〜5重量部配合し、粘着付与剤を0重量部又は5重量部以下配合してなるものである。
【0014】
また、本発明に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物からなるジョイントテープで、タイヤ内面のインナーライナージョイント部を被覆してなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハロゲン化ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムとブチルゴムのブレンドからなるブチル系ゴムに所定量のジエン系ゴムをブレンドしたゴム成分を用い、粘着付与剤の配合量を抑えた上で、上記特定の加工助剤を配合したことにより、インナーライナーのジョイント部におけるタイヤ製造時の不具合に起因する故障を防止し、かつジョイントテープの耐熱性を改善することでタイヤの耐久性を向上しながら、タイヤ製造時におけるジョイントテープの樹脂シートからの剥がれ性を改善してタイヤ製造作業性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0017】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分は、ハロゲン化ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムとブチルゴムのブレンドからなるブチル系ゴム75〜95重量部、及びジエン系ゴム25〜5重量部とからなる100重量部が用いられる。
【0018】
ハロゲン化ブチルゴム(ハロゲン化IIR)としては、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)などが挙げられ、これらは1種類で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
ブチル系ゴムとしては、ハロゲン化IIRを単独で用いてもよく、また、ハロゲン化IIRとブチルゴム(IIR)とのブレンドを用いてもよい。ブチルゴムは、非通気性、耐熱性、耐候性等に優れる反面、加硫速度、他のゴムとの接着性に劣るので、IIRにハロゲン化IIRをブレンドすることで、IIRの非通気性、耐熱性、耐候性等を確保した上で加硫速度を速め、他のゴムとの共加硫性や接着性を向上することができる。IIRをブレンドする場合、ハロゲン化IIRを50重量%以上、即ち、ハロゲン化IIR:IIR=100〜50重量%:0〜50重量%であることが好ましい。
【0020】
ハロゲン化IIRとIIRとしては、125℃でのムーニー粘度ML(1+8)が27〜52であるものが好ましく、より好ましくは27〜37であるものを用いることである。これにより、ゴム組成物の未加硫時のモジュラス(グリーンモジュラス)と伸長状態での応力緩和率をジョイントテープの使用条件に対して好適な範囲に調整することが容易になる。ここで、ムーニー粘度はJIS K6300に準拠して測定される値である。
【0021】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが使用でき、1種類で用いてもよく、2種類以上を併用することもできる。中でもグリーンモジュラスの適正化、タッキネスを良好にし、またブチル系ゴムの接着性や加工性を改善する点からNR又はIRが好ましい。
【0022】
本発明において、ゴム成分中のブチル系ゴムの配合量が75重量部未満であると、ジエン系ゴムが多くなるのでタッキネスは大きくなり改善されるが、耐熱性が低下して硬化しやすくなりタイヤの耐久性を低下させる。また、ブチル系ゴムが95重量部を超えてジエン系ゴムが減少すると、タッキネスが低下するのでタイヤ成型時や加硫前タイヤでのテープの剥がれ、浮きなどの不具合を起こしやすくする。
【0023】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。カーボンブラックとしては、通常ゴム用に使用されているものが用いられるが、ヨウ素吸着量(IA)が15〜55g/kg、DBP(ジブチルフタレート)吸収量が75〜125ml/100gであるカーボンブラックが、未加硫時におけるタッキネスと伸長特性の点から好ましく、例えば、FEF、GPF、SRFなどカーボンブラックが好適な例として挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、IAはJIS K6217−5に準拠して測定される値であり、DBP吸収量はJIS K6217−4に準拠して測定される値である。
【0024】
本発明のゴム組成物には、カーボンブラックとともに、ゴム用白色充填剤を配合してもよい。ゴム用白色充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、マイカなどが挙げられるが、中でもクレー、表面処理クレーが好ましい。
【0025】
上記カーボンブラックと白色充填剤の配合量は、両者の合計で、ゴム成分100重量部に対して40〜70重量部であることが好ましい。この量が40重量部未満であると、グリーンモジュラスが低く、貼り付け時に伸びやすくなり、ジョイント外れや作業性に悪影響を与え、加硫後のゴム強度も低下する。逆に、70重量部を超えると、未加硫時の強度やモジュラスが高くなることにより、やはり貼り付け作業性が低下するとともに、タッキネスが低下し、ジョイント部からのジョイントテープの剥がれを生じやすくし、また発熱により硬化しやすくなり走行によりジョイントテープに亀裂が発生しやすくなる。
【0026】
本発明のゴム組成物には、脂肪酸金属塩及びしゃく解剤を含む加工助剤を配合する。このように加工助剤として脂肪酸金属塩を用いることで、ポリエチレンシート等の樹脂シートからの剥がれ性を改善することができる。また、該脂肪酸金属塩とともにしゃく解剤を併用することで、素練りで切れたゴム成分ポリマーの分子鎖ラジアルの再結合を抑制してタッキネスを向上することができ、インナーライナーゴムに対する引っ付き性を維持することができる。すなわち、脂肪酸金属塩のみでは、樹脂シートからの剥がれ性は改善できても、タッキネスが低下してタイヤ成型時や加硫前タイヤでのテープの剥がれ、浮きなどの不具合を起こしやすくなるが、脂肪酸金属塩とともにしゃく解剤も含有することにより、タッキネスを保持しつつ、樹脂シートからの剥がれ性を改善することができる。
【0027】
該加工助剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して1〜5重量部である。この配合量が1重量部未満では、樹脂シートからの剥がれ性の向上効果がほとんど得られない。逆に、5重量部を超えると、タッキネスが低下して、タイヤ成型時や加硫前タイヤでのテープの剥がれ、浮きなどの不具合を起こしやすくする。
【0028】
上記脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、炭素数6〜28の飽和又は不飽和脂肪酸で、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ネルボン酸等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。好ましくは、炭素数14〜20の飽和脂肪酸を用いることである。また、これらの脂肪酸の塩を形成する金属としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケル、モリブデン等が挙げられ、特に亜鉛が好ましい。これらの脂肪酸金属塩は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記しゃく解剤としては、切断されたゴム成分ポリマーの分子鎖ラジカルと反応して再結合を抑制することができるものであれば使用でき、例えば、2,2’−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)、2−ベンズアミドチオフェノールの亜鉛塩、キシリルメルカプタン、β−ナフチルメルカプタン等が挙げられ、特にDBDが好ましい。
【0030】
これらの脂肪酸金属塩及びしゃく解剤を含む加工助剤としては、脂肪酸金属塩としゃく解剤を別々にゴム組成物に添加してゴム組成物中で両者を併用した状態にすることもできるが、その場合、両者を同時に添加、即ちゴム組成物の混練時における同じ混合ステップにおいて添加することが、上記本発明の作用効果の点から好ましい。より好ましくは、単一の加工助剤に脂肪酸金属塩としゃく解剤が含有されているもの、即ち、しゃく解剤を含有した脂肪酸金属塩の加工助剤を用いることであり、これにより上記効果を一層高めることができるとともに、ゴム組成物の混練工程の管理上も有利である。このような加工助剤として、DBDを含有した脂肪酸亜鉛塩からなる加工助剤がラインケミー社より「アクチプラストMS」として販売されており、その使用が推奨される。
【0031】
脂肪酸金属塩及びしゃく解剤を含む上記加工助剤においては、しゃく解剤を5〜10重量%含有することが好ましい。しゃく解剤の含有量が5重量%未満では、タッキネスを保持することが難しくなり、また、10重量%を超えると、ゴム成分ポリマーの分子鎖切断が多くなりすぎてモジュラス(M300)が下がりすぎる。
【0032】
本発明のゴム組成物には、粘着付与剤を配合することができる。粘着付与剤を配合することにより、タッキネスを向上することができる。但し、粘着付与剤を多量に配合しすぎると、上記加工助剤を配合したとしても樹脂シートからの剥がれ性が悪くなるので、粘着付与剤は、ゴム成分100重量部に対して5重量部以下にて配合することが好ましい。なお、粘着付与剤は、必須成分ではなく、配合しなくてもよい。
【0033】
粘着付与剤としては、特に制限されるものではなく、石油系炭化水素樹脂、クロマン樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ロジン誘導体などの各種の粘着性樹脂を挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0034】
本発明のゴム組成物には、上記の各成分に加え、通常のゴム工業で使用されている亜鉛華、ステアリン酸、ワックスやオイルなどの軟化剤、老化防止剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などのゴム用配合剤を通常の範囲内で適宜配合することができる。該ゴム組成物は、通常のバンバリーミキサーやニーダーなどのゴム用混練機を用いて、常法に従い混練することで調製される。
【0035】
該ゴム組成物は、ゴム用ロールやカレンダー装置、裁断装置等を用いてテープ状に加工され、樹脂シートを挟み込んで巻き取られた状態にてジョイントテープが製造される。このようにして得られた未加硫のジョイントテープは、タイヤ成型工程にて、樹脂シートから剥がされて、タイヤ内面のインナーライナーのジョイント部を被覆するように貼付けられる。なお、ジョイントテープの厚みや幅は、特に制限されるものではないが、厚さは0.1〜2mm程度、幅が10〜30mm程度であり、タイヤサイズや用途に応じて適宜加工される。
【0036】
本発明の空気入りタイヤは、未加硫タイヤ内面のインナーライナーのジョイント部を、上記ジョイントテープで被覆し、ついでこの未加硫タイヤの内面に離型剤を塗布した後、常法によって加硫することによって製造される。
【0037】
その場合、インナーライナーのジョイント部が、図1に示すようにインナーライナー10の両端1,2を隣接して突き合わせて接合した、いわゆる突き合わせジョイント部3にジョイントテープ4を被覆するものであってもよく、また、図2に示すようにインナーライナー20の両端5,6を重ね合わせて接合した、いわゆる重ね合わせジョイント部8にジョイントテープ9を被覆するものであってもよい。
【0038】
以上説明したゴム組成物であると、ゴム成分としてブチル系ゴムとジエン系ゴムを所定の割合でブレンドしたものを用いることにより、タイヤ成型工程や未加硫タイヤ保管中でのジョイントテープのインナーライナージョイント部からの剥がれを確実に防止して、ジョイント部への離型剤の侵入に起因するエアー溜まり等の不具合を解消し、タイヤの耐久性を向上することができる。また、ジョイントテープの耐熱性の向上により、ゴムの硬化を抑制して、ジョイントテープのクラック発生や剥離に伴う故障を防いでタイヤの耐久性を向上することができる。しかも、粘着付与剤の配合量を抑えた上で、上記特定の加工助剤を配合したことにより、これらの効果を損なうことなく、タイヤ製造時におけるジョイントテープの樹脂シートからの剥がれ性を改善することができ、タイヤ製造作業性を向上することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
下記表1,2に示す配合に従い各実施例及び比較例のゴム組成物を、通常の容量20リットルのバンバリーミキサーを用いて混練して調製した。表中の各成分の詳細は、次の通りである。
【0041】
・NR(天然ゴム):RSS#3、
・IR(ポリイソプレンゴム):JSR(株)製「IR2200」、
・BIIR(臭素化ブチルゴム):エクソンモービル製「ブロモブチル2222」(31ML(1+8)125℃)、
・IIR(ブチルゴム):エクソンモービル製「ブチル268」(50ML(1+8)125℃)、
・CB(カーボンブラック):GPF、東海カーボン(株)製「シーストV」(IA=26g/kg、DBP吸収量=87ml/100g)、
・クレー:白石カルシウム(株)製「ハードトップクレー」、
・粘着付与剤:石油系炭化水素樹脂、エクソンモービル製「エスコレッツ1102」、
・加工助剤1:飽和脂肪酸亜鉛塩、ラインケミー社製「アクチプラストPP」、
・加工助剤2:しゃく解剤としてDBDを5〜10重量%含有する脂肪酸亜鉛塩(構成脂肪酸は炭素数18の飽和脂肪酸を主成分とする。)、ラインケミー社製「アクチプラストMS」、
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」、
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」、
・加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDM−P」、
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「5%油処理粉末硫黄」。
【0042】
得られた各ゴム組成物について、タッキネス(粘着性)、テープ剥がれ性、テープ剥がれ不具合に関するタイヤ成型性(1)、ジョイント開き不具合に関するタイヤ成型性(2)、耐熱硬化性、及び、実車走行後のテープ状態を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0043】
・タッキネス(指数):試験用ロールを用いて厚み1mmの未加硫ゴムシートを作製し、このシートを用いてタックテスター(東洋精機製作所製)により、粘着力を測定し、タッキネスを評価した。実施例4の値を100とする指数で示し、値が大きいほどタッキネスが良好である。
【0044】
・テープ剥がれ性:試験用ロールを用いて幅25mm×厚み1mmのジョイントテープを作製し、ポリエチレンシートを重ね合わせた。1日放置後、オートグラフを用いて、ジョイントテープとポリエチレンシート間の剥離試験を行って、剥離強度を測定し、実施例1の値を100とした指数で示した。値が小さいほど剥がれ性が良好である。
【0045】
・タイヤ成型性(1):ゴム用ロールを用いて、幅25mm×厚み1mmのジョイントテープを、ポリエチレンシートを挟み込んだ状態に巻き取って作製した。このジョイントテープを用いて、タイヤサイズ11R22.5 14PRの未加硫タイヤを100本ずつ成型した。そして、成形時におけるジョイントテープとポリエチレンシートとの剥がれ不具合を調べ、タイヤ100本成型時に不具合が1本以下の場合を「○」、2〜4本を「△」、5本以上を「×」とした。
【0046】
・タイヤ成型性(2):上記未加硫タイヤを成型した後、24時間以内にインナーライナージョイント部の開きによる不具合を調べ、タイヤ100本成型時に不具合が1本以下の場合を「○」、2〜4本を「△」、5本以上を「×」とした。
【0047】
・耐熱硬化性:上記未加硫ゴムシートを140℃に調整した熱風循環式乾燥機内に放置した。取り出したシートを折り曲げた時にシート表面にクラックが発生するまでの日数を測定し、耐熱硬化性の評価とした。
【0048】
・実車走行後のテープ状態:上記タイヤ成型性評価において製造した空気入りタイヤ6本を2本ずつ複数の大型トラックの後輪に装着し、一般路を10万km走行させた後、タイヤを取り出し、ジョイントテープの亀裂発生の有無を目視にて観察した。亀裂の発生がタイヤ6本の全てに無いものを「○」、1本でも亀裂が発生したものを「×」と評価した。
【表1】

【表2】

【0049】
上記表に示すように、実施例1〜10のものでは、タッキネスを良好に維持しながら、ポリエチレンシートに対する剥がれ性を向上することができた。そのため、ジョイント部の開きによる不具合を回避してタイヤ耐久性を向上させながら、ジョイントテープをポリエチレンシートから剥がしやすく製造作業性に優れていた。また、耐熱硬化性にも優れていた。
【0050】
これに対し、上記特定の加工助剤2を配合していない比較例1,2では、ポリエチレンシートからのジョイントテープの剥がれ性が悪く、製造作業性(タイヤ成型性(1))に劣っていた。また、加工助剤2を配合しているものの、粘着付与剤の配合量が多すぎる比較例3,4でも、同様に、ポリエチレンシートからのジョイントテープの剥がれ性が悪く、製造作業性に劣っていた。一方、加工助剤2の配合量が多すぎる比較例5,6では、タッキネスが低く、ジョイント部の開きによる不具合が見られた。また、しゃく解剤を含有しない加工助剤1を用いた比較例7では、ポリエチレンシートからのジョイントテープの剥がれ性は改善されたものの、タッキネスが低く、ジョイント部の開きによる不具合が見られた。
【0051】
また、ジエン系ゴムをブレンドしていない比較例8でも、タッキネスが低く、ジョイント部の開きによる不具合が見られた。逆に、ジエン系ゴムの配合量が大きい比較例8では、耐熱硬化性が悪化し、タイヤ耐久性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のインナーライナージョイントテープ用ゴム組成物は、乗用車、ライトトラック、トラック・バス等のチューブレス空気入りタイヤにおいて、そのインナーライナーのジョイントテープに使用することができる。中でも、使用条件が過酷な重荷重用タイヤに好適に用いられ、その耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】突き合わせジョイントを説明するジョイント部断面図である。
【図2】重ね合わせジョイントを説明するジョイント部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10…インナーライナー、1,2…インナーライナー端部、3…ジョイント部、4…ジョイントテープ
20…インナーライナー、5,6…インナーライナー端部、8…ジョイント部、9…ジョイントテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムとブチルゴムのブレンドからなる75〜95重量部、及びジエン系ゴム25〜5重量部をゴム成分として、カーボンブラックを含有してなり、前記ゴム成分100重量部に対して脂肪酸金属塩及びしゃく解剤を含む加工助剤を1〜5重量部配合し、粘着付与剤を0重量部又は5重量部以下配合したことを特徴とするインナーライナージョイントテープ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分100重量部に対し、ヨウ素吸着量が15〜55g/kg、DBP吸収量が75〜125ml/100gのカーボンブラックと、ゴム用白色充填剤とを、合計で40〜70重量部含有してなる、請求項1記載のインナーライナージョイントテープ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記しゃく解剤が2,2’−ジベンズアミドジフェニルジスルフィドであり、前記加工助剤が該しゃく解剤を5〜10重量%含有する、請求項1又は2記載のインナーライナージョイントテープ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム又はポリイソプレンゴムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインナーライナージョイントテープ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物からなるジョイントテープで、タイヤ内面のインナーライナージョイント部を被覆してなる、空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−242538(P2009−242538A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90159(P2008−90159)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】