説明

インバータトランス

【課題】 検出用の特別な部品を不要としてコストダウンを可能にするとともに、省スペース化も可能にしてユニットを小型化する。
【解決手段】 複数の巻枠とその間と両端が端子ピンが植設された鍔部を具えたボビン、一部がそのボビンに挿入されて磁気回路を構成するコア、それらのボビンに巻回される1次巻線と2次巻線とを具えたインバータトランスにおいて、中央の巻枠に1次巻線が巻回され、その両側の巻枠にそれぞれ2次巻線が巻回され、それぞれの2次巻線の1次巻線側の一部が検出巻線とされて、その検出巻線の検出出力が2次巻線のタップから得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルバックライトユニットに使用されるインバータモジュールに用いるインバータトランスに係るもので、特に、多灯点灯が必要な大型の液晶パネルのバックライトユニットに適したインバータトランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電管を点灯させるインバータモジュールは、共振特性を利用して高電圧を発生させて冷陰極蛍光管などを点灯させるものであり、液晶デイスプレイのバックライトなどに用いられている。液晶デイスプレイの画面の大型化に伴い、複数の冷陰極蛍光管を並列に点灯させる必要が生じている。
【0003】
複数の放電管を点灯させるためのインバータトランスとして、特開2003−309026号公報(特許文献3)などが開示されている。これは、一つの1次巻線に結合する二つの2次巻線を具えたインバータトランスを用い、二つの2次巻線にそれぞれ接続した放電管を点灯するものである。また、特開2005−276919号公報(特許文献4)には、二つの放電灯の輝度のバラつきを防止するために、2次巻線に作用する磁束量を調整するために補助巻線を具えるものが開示されている。
【0004】
高電圧を用いるインバータモジュールでは、負荷や回路に異常が発生した場合、想定以上の高電圧が発生して発煙等の事故に至る危険を有している。そのため、出力電圧を検出して、異常電圧(高電圧)が発生した場合にその出力電圧を検知して回路をシャットダウンして発振を停止するための保護回路を搭載することが必要となる。その検出方法を大別すると以下の三つになるが、一般的には(1)の方式が採用されている。
(1)高電圧を発生するトランスに高圧コンデンサを接続し、その分圧した電圧を検出する。この場合、高圧コンデンサを2次側の共振コンデンサとしても利用する。
(2)検出コイル(絶縁型トランス)を搭載し、高電圧を降圧して低圧出力として検出する。
(3)高耐圧の抵抗を搭載して、その分圧した電圧を検出する。
【0005】
上記のような方法では、出力ごとに検出部品を要し、高圧部と低圧部との絶縁距離も必要となり、複雑化、大型化をさけることができない。そこでインバータトランスの巻線の一部を検出素子とすることが考えられている。例えば、特開2003−309023号公報(特許文献1)には、2次巻線に生じた電圧を検出するために電圧検出巻線を2次巻線とは別個に設けるか2次巻線のタップにより形成し、その出力を1次側端子が配置された側に引き出すことが開示されている。そのような方法は、特開2007−141752号公報(特許文献2)にも記載されており、2次巻線を分割して異常検出用低圧を得て発振回路を制御することが開示されている。ただし、これにはトランスの構造については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−309023号公報
【特許文献2】特開2007−141752号公報
【特許文献3】特開2003−309026号公報
【特許文献4】特開2005−276919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなインバータトランスの巻線の一部を利用するものでは、巻線の接続が複雑になるとともに、工数が増加し、信頼性の低下の問題も生じる。本発明は、検出用の特別な部品を不要としてコストダウンを可能にするとともに、省スペース化も可能にしてユニットを小型化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インバータトランスの巻線の配置と端子の配置を改良することによって、上記の課題を解決するものである。すなわち、複数の巻枠とその間と両端が端子ピンが植設された鍔部を具えたボビン、一部がそのボビンに挿入されて磁気回路を構成するコア、それらのボビンに巻回される1次巻線と2次巻線とを具えたインバータトランスにおいて、中央の巻枠に1次巻線が巻回され、その両側の巻枠にそれぞれ2次巻線が巻回され、それぞれの2次巻線の1次巻線側の一部が検出巻線とされて、その検出巻線の検出出力が2次巻線のタップから得られることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特別な素子を必要とせず、トランスそのものに検出機能を持たせることができ、それによってコストの削減が可能になるとともにスペースファクターも改善される。コイルやトランスのタップ形成技術を利用するだけでよく、高圧と低圧の絶縁が容易になるとともに、端子と巻線の接続を最短距離で行うことができ、信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示す回路図
【図2】本発明によるインバータトランスを使用した例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は本発明の実施例を示す平面図である。いわゆる横型のインバータトランスで鍔によって3つの巻枠に分割されたボビンを用いるものである。3つの巻枠のうち中央の巻枠には1次巻線13が巻回され、その端末は中央の二つの鍔の右端側に植設された端子ピン27、28に接続されている。一般に、この1次巻線は巻数が少ないので比較的太い線材が用いられる。
【0012】
3つの巻枠の両端側には1次巻線を挟んで二つの2次巻線11、12がそれぞれ巻回される。この2次巻線は高い昇圧比を得るために大きな巻数が必要であるため非常に細い線材が用いられ、また、耐圧を向上させるために巻枠に仕切りを設けて分割巻きとするのが一般的である。2次巻線の端末はそれぞれ2次巻線を挟む鍔の左端側に植設された端子ピンに接続される。
【0013】
2次巻線は1次巻線から遠い側が高圧に、1次巻線に近い側が低圧になるように、1次巻線側の端子ピンが接地されるようにして用いられる。すなわち、図において、端子ピン21、26には2次巻線の高圧側の端末が接続され、端子ピン23、24には2次巻線の低圧側の端末が接続される。本発明においては、2次巻線の1次巻線側の一部を検出巻線として使用するために、低電圧側の端末に近い位置からタップを引き出し、端子ピン22、25に接続する。分割巻きされる2次巻線の1次巻線に最も近い区画の部分を検出巻線とするとよい。
【0014】
上記の構造を採用することによって、1次巻線の両側に2次巻線が配置され、2次巻線の高圧側は1次巻線から遠い位置になる。また、検出巻線は、1次巻線に最も近い位置に低圧の巻線として配置される。巻線の端末も、右側に1次巻線、左側に2次巻線が接続され、2次側の高圧の端末と低圧の端末は別個の鍔に植設された端子ピンに接続される。各々の巻線の端末が最短距離で端子ピンと接続することができる。
【0015】
高電圧を発生する2次巻線に対し、検出巻線は巻数比を下げることによって低電圧にすることができる。例えば高圧の2000Vが発生した場合、巻数比を400:1にすると検出巻線に発生する電圧は5Vとなり、安価な低圧部品を使用できる。また、2次巻線と検出巻線は直列に接続されて同じ巻線の一部となっているので、巻数比以外の要素で電圧が変動することはなく、正確な電圧検出が可能となる。
【0016】
インバータトランスとして用いる際にはボビンに磁性体のコアを挿入し、外部のコアと接続して磁気ループを形成して1次巻線と2次巻線を結合させる。巻線端末が接続された端子ピンは配線基板に装着されてインバータモジュールを構成する。
【0017】
本発明によるインバータトランスを用いた回路例を図2に示す。図2において図1の端子ピンと接続される部分を同符号で示した。1次巻線の両端は端子27、28に接続されスイッチング回路に接続されて間欠的にオンオフされる。その動作によって2次巻線に高圧の出力が発生し、2つの2次巻線に接続された2つの放電管2が点灯される。ここで、端子21、26側が高圧となり、端子23、24側が接地されて低圧となる。低圧側に設けられた巻線のタップの端子22、25は電圧検出回路に入力され、検出出力が一定値以上に高くなったときは制御ICに発振の停止の信号を出力してトランスの動作を停止させる。このような回路構成によって、いずれかの放電管に異常があった場合には動作を停止させることができる。
【0018】
上記の例では1入力、2出力のインバータトランスの例で説明したが、1入力、4出力など複数出力全般に応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるインバータトランスは、大型液晶画面を用いる液晶テレビ、ナビゲーションシステム、アミューズメント機器のバックライトのインバータユニット等に広く利用できる。
【符号の説明】
【0020】
11、12:2次巻線
13:1次巻線
14、15:検出巻線
21〜26:2次巻線(検出巻線)用端子ピン
27、28:1次巻線用端子ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻枠とその間と両端が端子ピンが植設された鍔部を具えたボビン、一部がそのボビンに挿入されて磁気回路を構成するコア、それらのボビンに巻回される1次巻線と2次巻線とを具えたインバータトランスにおいて、
中央の巻枠に1次巻線が巻回され、その両側の巻枠にそれぞれ2次巻線が巻回され、
それぞれの2次巻線の1次巻線側の一部が検出巻線とされて、その検出巻線の検出出力が2次巻線のタップから得られることを特徴とするインバータトランス。
【請求項2】
それぞれの2次巻線の巻枠が複数の部分に区切られた分割巻きとされ、それぞれの2次巻線の1次巻線側の区画に巻回された部分の巻線が検出巻線とされた請求項1記載のインバータトランス。
【請求項3】
1次巻線の端末がボビンの鍔のボビンの巻軸に対して一方の側に植設された端子ピンに接続され、2次巻線と検出巻線の端末がその反対側に植設された端子ピンに接続された請求項1記載のインバータトランス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−177491(P2010−177491A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19231(P2009−19231)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】