インバータ制御装置及び冷凍空調装置
【課題】従来のインバータ制御装置は、インバータ駆動される機器の運転状態が変わってもインバータ装置におけるノイズ発生と損失発生の両方を考慮した最適なインバータ駆動を行うことが難しかった。
【解決手段】インバータ主回路を構成する複数のスイッチング素子をオン・オフ制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、インバータ主回路の直流母線電圧、インバータ主回路と負荷との間に流れるモータ電流、及び負荷に対する運転指令に基づいて、負荷の運転状態を検出する運転状態検出部と、運転状態に対応してゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部と、ゲート抵抗切替信号を用いて、インバータ主回路のスイッチング素子のゲート端子に接続されたゲート抵抗を切替えるゲート抵抗切替部とを備えた。
【解決手段】インバータ主回路を構成する複数のスイッチング素子をオン・オフ制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、インバータ主回路の直流母線電圧、インバータ主回路と負荷との間に流れるモータ電流、及び負荷に対する運転指令に基づいて、負荷の運転状態を検出する運転状態検出部と、運転状態に対応してゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部と、ゲート抵抗切替信号を用いて、インバータ主回路のスイッチング素子のゲート端子に接続されたゲート抵抗を切替えるゲート抵抗切替部とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機等の電気機器に搭載したインバータを制御するインバータ制御装置、及びこのインバータ制御装置を備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータでは一般に、インバータを構成するスイッチング素子のスイッチング動作に伴いスイッチングノイズが発生するとともに、スイッチング損失が発生する。インバータ制御においては、このスイッチングノイズとスイッチング損失を共に低減するのが好ましいが、ノイズ発生低減とスイッチング損失低減はインバータに対する相反した要求であるため、その実現は簡単ではない。
【0003】
これに対して、従来のインバータ制御装置には、インバータを搭載した機器の発熱量をモニターし、この発熱量に基づいてインバータのスイッチング素子に接続したゲート抵抗の抵抗値を切り替えることにより、インバータにおけるノイズ発生量とスイッチング損失量を調整しようとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−278584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータ装置を搭載した従来の空気調和機では、外気温度が低温時に暖房運転(低外気暖房)した場合には高暖房能力が必要となり、冷凍サイクルの圧縮機は最大回転数で運転するのでモータ電流が最大となるが、インバータ駆動素子には通常冷却フィンが取り付けられていて、室外機ファンによる強制空冷が実施されている為、モータ電流が最大であってもインバータ駆動素子の温度上昇は抑制される。この為、インバータ駆動素子におけるスイッチング損失量をスイッチング素子に対する検出温度から正しく把握することができない。従って、特許文献1のようにインバータ装置を搭載した機器の発熱量のみに基づいて、ゲート抵抗の抵抗値を切り替えるようにしたインバータ制御装置を空気調和機に適用しても、インバータの高効率な制御は実現できないという課題があった。
【0006】
また、空気調和機では運転状態によりインバータ装置より発生するノイズ発生量が変動する。例えば、冷房運転時で外気温度が低い場合、ドライ運転のように空調軽負荷運転である場合、又は受電電圧高(直流母線電圧が高い)場合に、発生ノイズが大きくなる傾向がある。この為、従来の空気調和機ではノイズ発生量を法規制等で定められた基準値以下に抑える必要から、ノイズ発生の主因であるインバータ駆動素子のスイッチング時間を大きい値に固定して設定することが行われていた。しかしながら、このようにスイッチング時間を大きい値に固定する調整を行うと、空気調和機を過負荷運転した時、スイッチング損失がより大きくなってしまい、空調運転能力の低下及びインバータ制御の効率低下が発生する。このスイッチング損失の増加に対応して、インバータ装置の熱冷却フィンをより大型化する必要も出てくる。また、法規制等基準値に対し十分マージンを持ったレベルに設計基準を設定しノイズ設計を行う場合、ノイズ対策部品の大型化、部品点数増、コスト高となる課題もある。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の目的は、インバータ駆動される機器の運転状態が変わってもインバータ装置におけるノイズ発生と損失発生の両方を考慮した最適なインバータ駆動を実現するインバータ制御装置を得ることである。また、第2の目的は、ノイズ発生と損失発生の両方を考慮した最適な運転を行うことができる冷凍空調装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインバータ制御装置は、直流電源の直流電力を交流電力に変換して電動機などの負荷を駆動するインバータ主回路を制御するインバータ制御装置であって、前記インバータ主回路を構成する複数のスイッチング素子をオン・オフ制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記インバータ主回路の直流母線電圧、前記インバータ主回路と前記負荷との間に流れるモータ電流、及び前記負荷に対する運転指令に基づいて、前記負荷の運転状態を検出する運転状態検出部と、前記運転状態に対応してゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部と、前記ゲート抵抗切替信号を用いて、前記インバータ主回路のスイッチング素子のゲート端子に接続されたゲート抵抗を切替えるゲート抵抗切替部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインバータ制御装置は、負荷の運転状態に応じて、インバータ装置のスイッチング素子を駆動するゲート抵抗を最適に切り替えることができるので、発生ノイズと損失(スイッチング損失)のトレードオフを最適にしたインバータ駆動が実現できる。また、これにより、ノイズフィルタ部品の削減が可能となり、負荷装置を含めた装置全体の小型化、低コスト化、及び消費電力低減の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1におけるインバータ制御装置の構成を示す図。
【図2】実施の形態1における下アームゲート抵抗切替部の構成を示す図。
【図3】実施の形態1における運転状態検出部の動作フロー図。
【図4】実施の形態1におけるスイッチング時間切替信号生成部の動作フロー図。
【図5】実施の形態1における運転状態動モードとスイッチ動作及びゲート抵抗値の関係を説明する図。
【図6】実施の形態1における運転状態動モード対応の制御の効果を説明する図。
【図7】実施の形態1における上アームゲート抵抗切替部の構成を示す図。
【図8】実施の形態1における運転状態モード1の制御を説明する図。
【図9】スイッチングノイズ発生量とゲート抵抗の関係を示す図。
【図10】スイッチングノイズ発生量とモータ電流の関係を示す図。
【図11】スイッチングノイズ発生量と直流母線電圧の関係を示す図。
【図12】スイッチング損失とゲート抵抗の関係を示す図。
【図13】実施の形態1における運転状態モード3の制御(発生ノイズ)を説明する図。
【図14】実施の形態1における運転状態モード3の制御(スイッチング損失)を説明する図。
【図15】実施の形態1におけるインバータ制御装置の構成(制御マイクロプロセッサ利用)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1におけるインバータ制御装置について、図に基づいて構成及び動作を説明する。図1は実施の形態1におけるインバータ制御装置を含む空気調和機の構成を示す図である。図1において、空気調和機は、交流電源1と、交流電源1の交流電力を直流電力に変換する整流回路2と、交流電源1と整流回路2を接続する電源線を伝わる電磁ノイズを除去するノイズフィルタ回路3と、整流回路2が出力する直流電力を三相交流電力に変換するインバータ主回路4と、インバータ主回路4が出力する三相交流電力により駆動される圧縮機5と、インバータ主回路4と圧縮機5との間に流れる電流を検出する電流センサ(例えばカレントトランス)6と、電流センサ6が出力する検出信号から圧縮機5に流れる電流値を算出する圧縮機モータ電流検出回路7と、整流回路2の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ8と、整流回路2の出力側である直流母線正側と負側との間の直流電圧を検出する電圧センサ9と、電圧センサ9が出力する検出信号から整流回路2の出力電圧値を算出する直流母線電圧検出回路10と、圧縮機モータ電流検出回路7の検出結果、直流母線電圧検出回路10の検出結果および外部から与えられる運転指令値に基づきインバータ主回路4を制御するためのPWM駆動信号を生成するインバータ制御装置11とを備えている。
【0012】
整流回路2は、ダイオードをブリッジ接続した全波整流回路等の公知技術で構成される。また、直流電圧の昇降若しくは降圧機能を有するコンバータを備えるように構成してもよい。
【0013】
インバータ主回路4は、電力スイッチング素子SW1〜SW6と、これらの電力スイッチング素子SW1〜SW6にそれぞれ逆並列接続されたダイオードD1〜D6より構成される。ここで、整流回路2の出力側の直流母線正側Pに配置されたスイッチング素子SW1〜SW3で上アームスイッチング素子群を構成し、直流母線負側Nに配置されたスイッチング素子SW4〜SW6で下アームスイッチング素子群を構成する。また、圧縮機5との三相結線接続形態に対応してSW1をU相上アームスイッチング素子、SW2をV相上アームスイッチング素子、SW3をW相上アームスイッチング素子、SW4をU相下アームスイッチング素子、SW5をV相下アームスイッチング素子、SW6をW相下アームスイッチング素子ともいう。
【0014】
圧縮機5内には三相電動モータ(図示せず)が内蔵され、この三相電動モータのU相結線に流れる電流をU相電流Iu、V相結線に流れる電流をV相電流Iv、W相結線に流れる電流をW相電流Iwとする。なお、以下ではU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwを圧縮機モータ電流と記す。
【0015】
電流センサ6はW相結線に取り付けられW相電流Iwを検出する。なお、なお、電流センサ6を取り付ける結線はその他のU相若しくはV相の結線でもよい。電流センサ6としては直流電流も検出可能なDCカレントトランス(DCCT)を用いればよい。圧縮機モータ電流検出回路7は、電流センサ6が出力する電流信号をA/D変換してモータ電流IMとしてインバータ制御部11に出力する。なお、電流センサ6と圧縮機モータ電流検出回路7で圧縮機モータ電流検出手段を構成する。空調負荷のように急激な負荷変動(数百msレベル以下)が無い場合には、1相の相電流検出でモータ負荷の検出が可能だが、もちろん複数個の相電流を検出することにより負荷検出するようにしてもよい。
【0016】
電圧センサ9は、平滑コンデンサ8に印加される直流電圧を分圧して電圧信号として出力する。直流母線電圧検出回路10は電圧センサ9が出力する電圧信号をA/D変換して直流母線電圧VDCとしてインバータ制御部11に出力する。なお、電圧センサ9と直流母線電圧検出回路10で直流母線電圧検出手段を構成する。
【0017】
次に、インバータ制御装置11の構成ついて説明する。インバータ制御装置11は、圧縮機モータ電流検出回路7及び直流母線電圧検出回路10が出力する検出結果と、外部から与えられる運転指令とに基づいてインバータの運転状態を検出する運転状態検出部12と、運転状態検出部12が検出した運転状態に基づいてインバータ主回路4のスイッチング素子に接続されるゲート抵抗を切替える為のゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部13と、インバータ主回路4のスイッチング素子SW1〜SW6の駆動タイミング信号である6つのPWM信号を生成するPWM信号生成部14と、ゲート抵抗切替信号生成部13が出力するゲート抵抗切替信号とPWM信号生成部14が出力するPWM信号に基づいてスイッチング素子SW1〜SW6を駆動する駆動回路15とで構成される。
【0018】
駆動回路15は、ゲート抵抗切替信号生成部13が出力するゲート抵抗切替信号とPWM信号生成部14が出力するPWM信号に基づいて、スイッチング素子SW1〜SW3のゲート端子に接続されるゲート抵抗素子を切替えてスイッチング素子を駆動する上アームゲート抵抗切替部16,17,18と、スイッチング素子SW4〜SW6のゲート端子に接続されるゲート抵抗素子を切替えてスイッチング素子を駆動する下アームゲート抵抗切替部19,20,21からなる。
【0019】
次に、インバータ制御装置11の各ブロックの動作を説明する。最初に運転状態検出部12の動作を図3の動作フローに基づいて説明する。
運転状態検出部12は、外部からインバータ制御装置11に与えられる運転指令が拘束通電であるか否かを判定する(ステップS100)。ここで、拘束通電とは回転停止中の圧縮機5に対してインバータ主回路4をスイッチング動作させることにより、圧縮機が回転駆動されないような条件で圧縮機の巻き線に通電を行って、圧縮機を予備加熱する通電制御である。
【0020】
運転指令が拘束通電であった場合は、運転状態をモード4に設定する(ステップS101)。また、運転指令が拘束通電で無い場合には、運転指令が圧縮機運転(回転)であるか否かを判定する(ステップS102)。ここで、圧縮機運転(回転)とは圧縮機のモータを回転駆動させる運転を行うことを意味する。運転指令が圧縮機運転(回転)である場合は、圧縮機5に内蔵されているモータ(図示していない)に流れるモータ電流IMと、直流母線電圧VDCを検出する(ステップS103)。ここで、モータ電流IMは圧縮機モータ電流検出回路7が出力した値を取り込んで使用し、直流母線電圧VDCは直流母線電圧検出回路10が出力した値を取り込んで使用する。
【0021】
次に、モータ電流IMを過負荷運転電流閾値IOL(以下、電流閾値IOL[第1の閾値]と記す)と比較する(ステップS104)。ここで、電流閾値IOLはモータ電流IMが過負荷運転状態に対応した電流値であるか否かを判定する為に予め設定した閾値である。モータ電流IMが電流閾値IOLより大きい場合は運転状態をモード3に設定する(ステップS105)。運転状態のモード3は、過負荷運転状態に対応する。
【0022】
モータ電流IMが電流閾値IOL以下の場合は、モータ電流IMを軽負荷運転電流閾値ILL(以下、電流閾値ILL[第2の閾値]と記す)と比較する(ステップS106)。ここで、電流閾値ILLはモータ電流IMが所定値よりも小さいか否かを判定する為に予め設定した閾値である。モータ電流IMが電流閾値ILLより小さい場合は、直流母線電圧VDCと電圧閾値VDCH(第3の閾値とする。)と比較する(ステップS107)。ここで、電圧閾値VDCHは直流母線電圧VDCが所定値よりも高電圧であるか否かを判定する為に予め設定した閾値である。直流母線電圧VDCが電圧閾値VDCHより大きい場合は運転状態をモード1に設定する(ステップS108)。運転状態のモード1は、軽負荷運転状態で、かつ直流母線電圧が高い状態に対応する。
【0023】
他方、直流母線電圧VDCが電圧閾値VDCH以下の場合は運転状態をモード2に設定する(ステップS109)。ステップS106でモータ電流IMが電流閾値ILL以上の場合にも運転状態をモード2に設定する(ステップS109)。
【0024】
ステップS102で運転指令が圧縮機運転(回転)で無い場合は、拘束通電でも圧縮機運転していない場合であり、圧縮機モータの回転を停止させることを意味する。インバータ駆動を停止させるので、運転状態をモード0に設定する(ステップS111)。
【0025】
運転状態検出部12は以上の処理で確定した運転状態モードをゲート抵抗切替信号生成部13に出力する。
【0026】
次に、ゲート抵抗切替信号生成部13の動作を図4の動作フローに基づいて説明する。動作開始後、ゲート抵抗切替信号(切替信号1及び切替信号2)の値を初期値に設定する(ステップS200)。ここで切替信号1及び切替信号2はHigh(以下、Hと記す)またはLow(以下、Lと記す)の論理値をとる制御信号であり、初期値はLである。
【0027】
次に、運転状態検出部12が出力した運転状態のモード値に対応して処理を振り分ける。運転状態がモード3又は4の場合は、切替信号1=H、切替信号2=Hとし(処理結果1:ステップS204)、運転状態がモード1の場合は、切替信号1=H、切替信号2=Lとし(処理結果2:ステップS202)、運転状態がモード2の場合は、切替信号1=L、切替信号2=Hとし(処理結果3:ステップS203)とする。なお、運転状態がモード0の場合は、切替信号1及び切替信号2は初期値のままとする。
【0028】
ゲート抵抗切替信号生成部13は以上の処理で生成したゲート抵抗切替信号(切替信号1及び切替信号2)を駆動回路15に出力する。
【0029】
PWM信号生成部14は、圧縮機モータの回転状態、運転指令値に基づいてインバータ主回路4のスイッチング素子SW1〜SW6をオン/オフさせるタイミング信号であるPWM信号を生成する。ここで、PWM信号はスイッチング素子SW1〜SW6に対応して6つあり、上アームスイッチング素子SW1〜SW3に対応したPWM信号をそれぞれPWM(UP)信号、PWM(VP)信号、PWM(WP)信号とし、下アームスイッチング素子SW4〜SW6に対応したPWM信号をそれぞれPWM(UN)信号、PWM(VN)信号、PWM(WN)信号とする。また、PWM信号のH(High)でスイッチ素子のON状態のタイミングを示し、PWM信号のL(Low)でスイッチ素子のOFF状態のタイミングを示す。
【0030】
PWM信号生成の具体的な手段については、公知の技術であるので詳細をここでは説明しないが、例えば特開平11−4594に記載された構成のように、直流母線に設けたシャント抵抗を用いて圧縮機モータの回転状態を検出し、運転指令情報と組み合わせてベクトル制御によりPWM信号を生成すればよい。
【0031】
駆動回路15では、運転状態モードとPWM信号に応じてゲート抵抗を切替えて、スイッチング素子SW1〜SW6を駆動する。上アームゲート抵抗切替部16,17,18と、下アームゲート抵抗切替部19,20,21とでゲート抵抗切替部の構成が異なるので順に説明する。
【0032】
下アームゲート抵抗切替部19,20,21はいずれも同一構成であるので、下アームゲート抵抗切替部19の構成を説明する。図2に下アームゲート抵抗切替部19の詳細構成を示す。下アームゲート抵抗切替部19は、駆動ロジック回路22とゲート切替回路23から構成され、ゲート抵抗切替信号生成部13が生成した切替信号1及び切替信号2と、PWM信号生成部14が生成したPWM(UN)信号を用いて、下アームスイッチング素子SW4を駆動する駆動信号UNを生成する。
【0033】
駆動ロジック回路22は、切替信号1及び切替信号2とPWM(UN)信号とに基づいて、ゲート切替回路23内のスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5を生成する。切替信号1、切替信号2、PWM(UN)信号とゲート制御信号の対応関係を図5に示す。図5には、運転状態のモード毎に、PWM信号の値(High又はLow)に対応してスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号の値(図5の「スイッチング素子動作」欄)が示されている。ここで、ゲート制御信号の値がONとはスイッチ素子Q2等がON状態となるゲート制御信号値を意味し、ゲート制御信号の値がOFFとはスイッチ素子Q2等がOFF状態となるゲート制御信号値を意味する。駆動ロジック回路22はこの論理表に対応したスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5を出力する。なお、図2に示した駆動ロジック回路22は4つAND素子と、2つのNOT素子で構成したものだが、もちろんそれ以外のロジック構成でも可能である。
【0034】
ゲート切替回路23は、トランジスタ等の4つのスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5と、これらスイッチ素子のコレクタ端子にそれぞれ接続された抵抗素子RON2、RON3、ROFF2、ROFF3と、スイッチ素子Q2,Q4のエミッタ端子に接続された抵抗素子RON1と、スイッチ素子Q3,Q5のコレクタ側に抵抗素子ROFF2、ROFF3を介して接続される抵抗素子ROFF1と、スイッチ素子SW4のゲート信号のプルダウン抵抗として機能する抵抗RPDとで構成される。スイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート端子には、ゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5がそれぞれ接続され、高圧電源端子VH、低圧電源端子VLには直流電源VCCP、グランド電位GNDNがそれぞれ接続される。
【0035】
次に、各運転状態対応で下アームゲート抵抗切替部19の動作を説明するが、説明を簡明にするために抵抗素子の値を図5に例示したように、RON2=2・RON,RON3=RON1=RON,ROFF2=2・ROFF,ROFF3=ROFF1=ROFFとする。ここで、RON,ROFFは所定値の抵抗値とする。
【0036】
運転状態がモード0(停止)の時は、PWM信号の値に係らず、スイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5全てがOFFとなり、ゲート抵抗値は無限大(∞)となる。この為、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4は駆動されない。
【0037】
運転状態がモード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)の時で、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合は、スイッチ素子Q2のみONで、他のスイッチ素子Q3,Q4,Q5はOFFとなるので、ゲート抵抗はRON1とRON2が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=3・RON)を介してPWM信号によりON状態に駆動される。
【0038】
一方、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合は、スイッチ素子Q3のみONで、他のスイッチ素子Q2,Q4,Q5はOFFとなるので、ゲート抵抗はROFF1とROFF2が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=3・ROFF)を介してPWM信号によりOFF状態に駆動される。
【0039】
運転状態がモード3(過負荷運転)の時で、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合は、スイッチ素子Q2,Q4がONで、スイッチ素子Q3,Q5がOFFとなるので、ゲート抵抗はRON2とRON3の並列接続にRON1を直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=1.7・RON)を介してPWM信号によりON状態に駆動される。
【0040】
一方、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合は、スイッチ素子Q3,Q5がONで、スイッチ素子Q2,Q4がOFFとなるので、ゲート抵抗はROFF2とROFF3の並列接続にROFF1を直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=1.7・ROFF)を介してPWM信号によりOFF状態に駆動される。
【0041】
運転状態がモード4(拘束通電)の時は、モード3(過負荷運転)の時と駆動ロジック回路20の出力信号の状態は同一な為、スイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5の状態も、モード3のケースと同様となる。すなわち、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合はゲート抵抗(=1.7・RON)でON駆動され、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合はゲート抵抗(=1.7・ROFF)でOFF駆動される。
【0042】
運転状態がモード2(通常運転)の時で、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合は、スイッチ素子Q4のみONで、他のスイッチ素子Q2,Q3,Q5はOFFとなるので、ゲート抵抗はRON1とRON3が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=2・RON)を介してPWM信号によりON状態に駆動される。
【0043】
一方、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合は、スイッチ素子Q5のみONで、他のスイッチ素子Q2,Q3,Q4はOFFとなるので、ゲート抵抗はROFF1とROFF3が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=2・ROFF)を介してPWM信号によりOFF状態に駆動される。
【0044】
各動作モードでのゲート抵抗値をモード2(通常運転)の場合を基準に比較すると、モード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)の場合にゲート抵抗値が大きくなり、モード3(過負荷運転)とモード4(拘束通電)の場合にゲート抵抗値を小さくすることができる。
【0045】
次に、上アームゲート抵抗切替部16,17,18の構成を説明するが、上アームゲート抵抗切替部16,17,18はいずれも同一構成であるので、上アームゲート抵抗切替部16の構成を図7に基づいて説明する。なお、下アームゲート抵抗切替部19の内部構成と同一部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
上アームゲート抵抗切替部16は、ゲート抵抗切替信号生成部13が生成した切替信号1及び切替信号2と、PWM信号生成部14が生成したPWM(UP)信号をフォトカップラPC1,PC2,PC3を介して駆動ロジック回路22に取り込む。フォトカップラPC1,PC2,PC3を用いることで、駆動ロジック回路22及びゲート切替回路23の電源系とゲート抵抗切替信号生成部13及びPWM信号生成部14の電源系とを電気的に絶縁することができる。駆動ロジック回路22、ゲート切替回路23は下アームゲート抵抗切替部19の駆動ロジック回路22、ゲート切替回路23とそれぞれ同一構成である。駆動ロジック回路22は図5の論理表に従ってゲート切替回路21内のスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5を生成する。ゲート切替回路23は、ゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5に基づいて、ゲート抵抗の切替を行う。ゲート切替回路23のゲート抵抗切替動作の詳細は、下アームゲート抵抗切替部19でのゲート切替回路23の動作と同一である。
【0047】
上アームゲート抵抗切替部16におけるゲート切替回路23の基準電位(VL)は、U相の上アームスイッチング素子SW1のエミッタ電位GNDP(U)と同電位となる為、ゲート切替回路23の出力信号で上アームスイッチング素子SW1を駆動することができる。
【0048】
図6は、インバータ制御装置11によるゲート抵抗切替制御の特性及び効果について運転状態モード毎に整理したものである。なお、図6には比較のためにゲート抵抗切替制御を実施しない場合の特性についても併記している。
【0049】
運転状態がモード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)の時は、ゲート抵抗を大きい抵抗値に切替えたので、スイッチング時間が増大し、スイッチングによる発生ノイズ量を抑制できる。また、以下に説明するように、ゲート抵抗を大きくしたことによるスイッチング損失の増加量を小さく抑制することが可能である。
【0050】
図8は運転状態がモード1でのゲート抵抗切替制御における発生ノイズ量と直流母線電圧との関係を説明したものである。図8で、2つの実線曲線はゲート抵抗切替制御を実施しない場合の特性であり、2つの点線曲線はゲート抵抗切替制御でゲート抵抗を大きくした場合の特性である。曲線が各々2本あるのは製品の個体ばらつきを考慮して特性の最大値と最小値に対応させたものである。
【0051】
ゲート抵抗切替制御を実施しない場合は、モータ電流が小さく、直流母線電圧が高い為、図10(発生ノイズ量とモータ電流の関係)及び図11(発生ノイズ量と直流母線電圧の関係)の特性図からわかるように、発生ノイズ量は大きくなる傾向がある。従って、図8に示すようにゲート抵抗切替制御を実施しない場合には、直流母線電圧がVDCH以上の場合に発生ノイズ量がノイズ基準を満たさない現象が起こりえることがわかる。ここで、ノイズ基準とは国内法規制や、製品出荷時の製品仕様などにより設定された発生ノイズ量の許容基準値である。一方、図9に示すように、ゲート抵抗を大きくした場合には発生ノイズ量が低下する為に、直流母線電圧が使用電圧最大値以下であれば、発生ノイズ量をノイズ基準以下に抑制することができる。そして、ゲート抵抗値を、ゲート抵抗切替後の特性が製品の個体ばらつきを考慮して発生ノイズ量の最大値がノイズ基準と一致するようにゲート抵抗値を設定すれば、ノイズ基準を満たす最小のゲート抵抗値にすることができるので、スイッチング損失の増加分を小さくすることができる。なお、ノイズ基準に対するマージンを考慮して、発生ノイズ量の最大値がノイズ基準以下となるようにゲート抵抗値を設定してもよい。
【0052】
運転状態がモード3(過負荷運転)の時は、ゲート抵抗を小さい抵抗値に切替えるので、スイッチング損失を抑制できる。なお、スイッチング損失は図12(スイッチング損失とゲート抵抗の関係)に示すように、ゲート抵抗が小さいほどスイッチング損失が低下する傾向がある。また、このスイッチング損失の低下は図14に示すようにモータ電流値の全領域で生じる。一方、図9に示すように、ゲート抵抗を小さくすると発生ノイズ量が増加するが、図13に示すように、ゲート抵抗切替後の発生ノイズ量がモータ電流が所定値IOL以上の領域でノイズ基準以下になるように切替後ゲート抵抗値を設定すれば、発生ノイズ量の増加分を抑制させることができる。具体的には、モータ電流がIOLの時の発生ノイズ量がノイズ基準と一致するようにゲート抵抗値を設定すれば、ノイズ基準を満たす最小のゲート抵抗値にすることができるので、ノイズ基準を満たす条件で最大限度のスイッチング損失の抑制が実現できる。なお、ノイズ基準に対するマージンを考慮して、発生ノイズ量の最大値がノイズ基準以下となるようにゲート抵抗値を設定してもよい。
【0053】
運転状態がモード4(拘束通電)の時は、スイッチング周波数が通常運転時よりも大きく(例えば5倍)、モータ電流が小さいことを除けば、運転状態がモード3(過負荷運転)の時と同様な制御となる。すなわち、発生ノイズ量の増加をできるだけ小さくしつつ、ゲート抵抗を小さい抵抗値に切替えるので、スイッチング損失を抑制できる。
【0054】
運転状態がモード2(通常運転)の時は、通常運転時の最適なゲート抵抗を用いるようにするので、スイッチング損失、発生ノイズ量とも問題ない範囲での運転を行うことができる。
【0055】
なお、以上の説明では、インバータ制御装置11内の各制御ブロックを個別に構成するようにしたが、インバータ制御部分を制御用のマイクロコンピュータを用いて構成するようにしてもよい。図15は運転状態検出部12、ゲート抵抗切替信号生成部13、PWM信号生成部14の機能を制御マイクロコンピュータ24を用いたソフトウェア制御で行うようにしたインバータ制御装置25を示したものである。
【0056】
インバータ制御装置25を用いれば、インバータ装置より発生するノイズに関し、ゲート抵抗(スイッチング動作速度:ターンon/off時間)と発生ノイズ量の関係、空調運転モード(直流母線電圧、電流)と発生ノイズ量の関係を予め測定しておき、この測定結果をデータテーブルとして制御マイクロコンピュータ24に接続した記憶媒体(ROM:図示していない)に記録しておくことにより、直流母線電圧検出回路10、圧縮機モータ電流検出回路7の各検出信号に基づいて空調機の運転状態モードを設定し、この運転状態モードと測定データに基づく前記のデータテーブルを参照して、最適なゲート抵抗を選択したインバータ駆動制御を実現することができる。
【0057】
また、本実施の形態で説明したインバータ制御装置はインバータ主回路4のスイッチング素子SW1〜SW6または、逆並列接続されたダイオードD1〜D6のいずれか又は両方をワイドバンドギャップ半導体により構成した場合に特に効果的である。
【0058】
インバータ制御装置を運転状態モード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)で制御した場合、スイッチング時間の増加に伴い、スイッチング損失が増加するがワイドバンドギャップ半導体はSi(シリコン)半導体に比べて損失が少ない特性を有するので、この損失低減分をスイッチング速度の低下(スイッチング時間の増加)分に対応させることにより、発生ノイズをさらに低下させることができる。これによりノイズフィルタ部品等のノイズ低減対策のコストをより削減することができる。
【0059】
また、インバータ制御装置を運転状態モード3(過負荷運転)またはモード4(拘束通電)で制御した場合、ワイドバンドギャップ半導体はSiデバイスよりも高周波動作が可能な特性を有するので、スイッチング時間の可変範囲(Si半導体の10倍以上)が大きくとれる。これにより、スイッチング時間のより柔軟な制御が可能となる。
【0060】
なお、ワイドバンドギャップ半導体には、SiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)、ダイヤモンド等がある。ワイドバンドギャップ半導体素子はSi半導体素子に比べると素子での損失が小さいため、素子から発生する発熱量が小さい。また、Si半導体素子に比べ融点が高く200℃以上であるので高温動作が可能である。また、熱伝導率も良いため、放熱用のフィンが無くても動作可能である。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態でのインバータ制御装置は、装置の使用環境(直流母線電圧)、運転状態の検出により、インバータ装置のスイッチング素子を駆動するゲート抵抗を運転状態に応じて最適に切り替えるように構成したので、発生ノイズと損失(スイッチング損失)のトレードオフを最適にしたインバータ駆動が実現できる。また、これにより、ノイズフィルタ部品の削減が可能となり、装置全体の小型化、低コスト化、及び装置の消費電力低減の効果が得られる。
【符号の説明】
【0062】
1 交流電源、2 整流回路、3 ノイズフィルタ回路、4 インバータ主回路、5 ラ圧縮機、6 電流センサ、7 圧縮機モータ電流検出回路、8 平滑コンデンサ、9 電圧センサ、10 直流母線電圧検出回路、11 インバータ制御装置、12 運転状態検出部、13 スイッチング時間切替信号生成部、14 PWM信号生成部、15 駆動回路、16〜18 上アームゲート抵抗切替部、19〜21 下アームゲート抵抗切替部、22 駆動ロジック回路、23 ゲート切替回路、24 制御マイクロコンピュータ、25 インバータ制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機等の電気機器に搭載したインバータを制御するインバータ制御装置、及びこのインバータ制御装置を備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータでは一般に、インバータを構成するスイッチング素子のスイッチング動作に伴いスイッチングノイズが発生するとともに、スイッチング損失が発生する。インバータ制御においては、このスイッチングノイズとスイッチング損失を共に低減するのが好ましいが、ノイズ発生低減とスイッチング損失低減はインバータに対する相反した要求であるため、その実現は簡単ではない。
【0003】
これに対して、従来のインバータ制御装置には、インバータを搭載した機器の発熱量をモニターし、この発熱量に基づいてインバータのスイッチング素子に接続したゲート抵抗の抵抗値を切り替えることにより、インバータにおけるノイズ発生量とスイッチング損失量を調整しようとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−278584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータ装置を搭載した従来の空気調和機では、外気温度が低温時に暖房運転(低外気暖房)した場合には高暖房能力が必要となり、冷凍サイクルの圧縮機は最大回転数で運転するのでモータ電流が最大となるが、インバータ駆動素子には通常冷却フィンが取り付けられていて、室外機ファンによる強制空冷が実施されている為、モータ電流が最大であってもインバータ駆動素子の温度上昇は抑制される。この為、インバータ駆動素子におけるスイッチング損失量をスイッチング素子に対する検出温度から正しく把握することができない。従って、特許文献1のようにインバータ装置を搭載した機器の発熱量のみに基づいて、ゲート抵抗の抵抗値を切り替えるようにしたインバータ制御装置を空気調和機に適用しても、インバータの高効率な制御は実現できないという課題があった。
【0006】
また、空気調和機では運転状態によりインバータ装置より発生するノイズ発生量が変動する。例えば、冷房運転時で外気温度が低い場合、ドライ運転のように空調軽負荷運転である場合、又は受電電圧高(直流母線電圧が高い)場合に、発生ノイズが大きくなる傾向がある。この為、従来の空気調和機ではノイズ発生量を法規制等で定められた基準値以下に抑える必要から、ノイズ発生の主因であるインバータ駆動素子のスイッチング時間を大きい値に固定して設定することが行われていた。しかしながら、このようにスイッチング時間を大きい値に固定する調整を行うと、空気調和機を過負荷運転した時、スイッチング損失がより大きくなってしまい、空調運転能力の低下及びインバータ制御の効率低下が発生する。このスイッチング損失の増加に対応して、インバータ装置の熱冷却フィンをより大型化する必要も出てくる。また、法規制等基準値に対し十分マージンを持ったレベルに設計基準を設定しノイズ設計を行う場合、ノイズ対策部品の大型化、部品点数増、コスト高となる課題もある。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の目的は、インバータ駆動される機器の運転状態が変わってもインバータ装置におけるノイズ発生と損失発生の両方を考慮した最適なインバータ駆動を実現するインバータ制御装置を得ることである。また、第2の目的は、ノイズ発生と損失発生の両方を考慮した最適な運転を行うことができる冷凍空調装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインバータ制御装置は、直流電源の直流電力を交流電力に変換して電動機などの負荷を駆動するインバータ主回路を制御するインバータ制御装置であって、前記インバータ主回路を構成する複数のスイッチング素子をオン・オフ制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記インバータ主回路の直流母線電圧、前記インバータ主回路と前記負荷との間に流れるモータ電流、及び前記負荷に対する運転指令に基づいて、前記負荷の運転状態を検出する運転状態検出部と、前記運転状態に対応してゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部と、前記ゲート抵抗切替信号を用いて、前記インバータ主回路のスイッチング素子のゲート端子に接続されたゲート抵抗を切替えるゲート抵抗切替部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインバータ制御装置は、負荷の運転状態に応じて、インバータ装置のスイッチング素子を駆動するゲート抵抗を最適に切り替えることができるので、発生ノイズと損失(スイッチング損失)のトレードオフを最適にしたインバータ駆動が実現できる。また、これにより、ノイズフィルタ部品の削減が可能となり、負荷装置を含めた装置全体の小型化、低コスト化、及び消費電力低減の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1におけるインバータ制御装置の構成を示す図。
【図2】実施の形態1における下アームゲート抵抗切替部の構成を示す図。
【図3】実施の形態1における運転状態検出部の動作フロー図。
【図4】実施の形態1におけるスイッチング時間切替信号生成部の動作フロー図。
【図5】実施の形態1における運転状態動モードとスイッチ動作及びゲート抵抗値の関係を説明する図。
【図6】実施の形態1における運転状態動モード対応の制御の効果を説明する図。
【図7】実施の形態1における上アームゲート抵抗切替部の構成を示す図。
【図8】実施の形態1における運転状態モード1の制御を説明する図。
【図9】スイッチングノイズ発生量とゲート抵抗の関係を示す図。
【図10】スイッチングノイズ発生量とモータ電流の関係を示す図。
【図11】スイッチングノイズ発生量と直流母線電圧の関係を示す図。
【図12】スイッチング損失とゲート抵抗の関係を示す図。
【図13】実施の形態1における運転状態モード3の制御(発生ノイズ)を説明する図。
【図14】実施の形態1における運転状態モード3の制御(スイッチング損失)を説明する図。
【図15】実施の形態1におけるインバータ制御装置の構成(制御マイクロプロセッサ利用)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1におけるインバータ制御装置について、図に基づいて構成及び動作を説明する。図1は実施の形態1におけるインバータ制御装置を含む空気調和機の構成を示す図である。図1において、空気調和機は、交流電源1と、交流電源1の交流電力を直流電力に変換する整流回路2と、交流電源1と整流回路2を接続する電源線を伝わる電磁ノイズを除去するノイズフィルタ回路3と、整流回路2が出力する直流電力を三相交流電力に変換するインバータ主回路4と、インバータ主回路4が出力する三相交流電力により駆動される圧縮機5と、インバータ主回路4と圧縮機5との間に流れる電流を検出する電流センサ(例えばカレントトランス)6と、電流センサ6が出力する検出信号から圧縮機5に流れる電流値を算出する圧縮機モータ電流検出回路7と、整流回路2の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ8と、整流回路2の出力側である直流母線正側と負側との間の直流電圧を検出する電圧センサ9と、電圧センサ9が出力する検出信号から整流回路2の出力電圧値を算出する直流母線電圧検出回路10と、圧縮機モータ電流検出回路7の検出結果、直流母線電圧検出回路10の検出結果および外部から与えられる運転指令値に基づきインバータ主回路4を制御するためのPWM駆動信号を生成するインバータ制御装置11とを備えている。
【0012】
整流回路2は、ダイオードをブリッジ接続した全波整流回路等の公知技術で構成される。また、直流電圧の昇降若しくは降圧機能を有するコンバータを備えるように構成してもよい。
【0013】
インバータ主回路4は、電力スイッチング素子SW1〜SW6と、これらの電力スイッチング素子SW1〜SW6にそれぞれ逆並列接続されたダイオードD1〜D6より構成される。ここで、整流回路2の出力側の直流母線正側Pに配置されたスイッチング素子SW1〜SW3で上アームスイッチング素子群を構成し、直流母線負側Nに配置されたスイッチング素子SW4〜SW6で下アームスイッチング素子群を構成する。また、圧縮機5との三相結線接続形態に対応してSW1をU相上アームスイッチング素子、SW2をV相上アームスイッチング素子、SW3をW相上アームスイッチング素子、SW4をU相下アームスイッチング素子、SW5をV相下アームスイッチング素子、SW6をW相下アームスイッチング素子ともいう。
【0014】
圧縮機5内には三相電動モータ(図示せず)が内蔵され、この三相電動モータのU相結線に流れる電流をU相電流Iu、V相結線に流れる電流をV相電流Iv、W相結線に流れる電流をW相電流Iwとする。なお、以下ではU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwを圧縮機モータ電流と記す。
【0015】
電流センサ6はW相結線に取り付けられW相電流Iwを検出する。なお、なお、電流センサ6を取り付ける結線はその他のU相若しくはV相の結線でもよい。電流センサ6としては直流電流も検出可能なDCカレントトランス(DCCT)を用いればよい。圧縮機モータ電流検出回路7は、電流センサ6が出力する電流信号をA/D変換してモータ電流IMとしてインバータ制御部11に出力する。なお、電流センサ6と圧縮機モータ電流検出回路7で圧縮機モータ電流検出手段を構成する。空調負荷のように急激な負荷変動(数百msレベル以下)が無い場合には、1相の相電流検出でモータ負荷の検出が可能だが、もちろん複数個の相電流を検出することにより負荷検出するようにしてもよい。
【0016】
電圧センサ9は、平滑コンデンサ8に印加される直流電圧を分圧して電圧信号として出力する。直流母線電圧検出回路10は電圧センサ9が出力する電圧信号をA/D変換して直流母線電圧VDCとしてインバータ制御部11に出力する。なお、電圧センサ9と直流母線電圧検出回路10で直流母線電圧検出手段を構成する。
【0017】
次に、インバータ制御装置11の構成ついて説明する。インバータ制御装置11は、圧縮機モータ電流検出回路7及び直流母線電圧検出回路10が出力する検出結果と、外部から与えられる運転指令とに基づいてインバータの運転状態を検出する運転状態検出部12と、運転状態検出部12が検出した運転状態に基づいてインバータ主回路4のスイッチング素子に接続されるゲート抵抗を切替える為のゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部13と、インバータ主回路4のスイッチング素子SW1〜SW6の駆動タイミング信号である6つのPWM信号を生成するPWM信号生成部14と、ゲート抵抗切替信号生成部13が出力するゲート抵抗切替信号とPWM信号生成部14が出力するPWM信号に基づいてスイッチング素子SW1〜SW6を駆動する駆動回路15とで構成される。
【0018】
駆動回路15は、ゲート抵抗切替信号生成部13が出力するゲート抵抗切替信号とPWM信号生成部14が出力するPWM信号に基づいて、スイッチング素子SW1〜SW3のゲート端子に接続されるゲート抵抗素子を切替えてスイッチング素子を駆動する上アームゲート抵抗切替部16,17,18と、スイッチング素子SW4〜SW6のゲート端子に接続されるゲート抵抗素子を切替えてスイッチング素子を駆動する下アームゲート抵抗切替部19,20,21からなる。
【0019】
次に、インバータ制御装置11の各ブロックの動作を説明する。最初に運転状態検出部12の動作を図3の動作フローに基づいて説明する。
運転状態検出部12は、外部からインバータ制御装置11に与えられる運転指令が拘束通電であるか否かを判定する(ステップS100)。ここで、拘束通電とは回転停止中の圧縮機5に対してインバータ主回路4をスイッチング動作させることにより、圧縮機が回転駆動されないような条件で圧縮機の巻き線に通電を行って、圧縮機を予備加熱する通電制御である。
【0020】
運転指令が拘束通電であった場合は、運転状態をモード4に設定する(ステップS101)。また、運転指令が拘束通電で無い場合には、運転指令が圧縮機運転(回転)であるか否かを判定する(ステップS102)。ここで、圧縮機運転(回転)とは圧縮機のモータを回転駆動させる運転を行うことを意味する。運転指令が圧縮機運転(回転)である場合は、圧縮機5に内蔵されているモータ(図示していない)に流れるモータ電流IMと、直流母線電圧VDCを検出する(ステップS103)。ここで、モータ電流IMは圧縮機モータ電流検出回路7が出力した値を取り込んで使用し、直流母線電圧VDCは直流母線電圧検出回路10が出力した値を取り込んで使用する。
【0021】
次に、モータ電流IMを過負荷運転電流閾値IOL(以下、電流閾値IOL[第1の閾値]と記す)と比較する(ステップS104)。ここで、電流閾値IOLはモータ電流IMが過負荷運転状態に対応した電流値であるか否かを判定する為に予め設定した閾値である。モータ電流IMが電流閾値IOLより大きい場合は運転状態をモード3に設定する(ステップS105)。運転状態のモード3は、過負荷運転状態に対応する。
【0022】
モータ電流IMが電流閾値IOL以下の場合は、モータ電流IMを軽負荷運転電流閾値ILL(以下、電流閾値ILL[第2の閾値]と記す)と比較する(ステップS106)。ここで、電流閾値ILLはモータ電流IMが所定値よりも小さいか否かを判定する為に予め設定した閾値である。モータ電流IMが電流閾値ILLより小さい場合は、直流母線電圧VDCと電圧閾値VDCH(第3の閾値とする。)と比較する(ステップS107)。ここで、電圧閾値VDCHは直流母線電圧VDCが所定値よりも高電圧であるか否かを判定する為に予め設定した閾値である。直流母線電圧VDCが電圧閾値VDCHより大きい場合は運転状態をモード1に設定する(ステップS108)。運転状態のモード1は、軽負荷運転状態で、かつ直流母線電圧が高い状態に対応する。
【0023】
他方、直流母線電圧VDCが電圧閾値VDCH以下の場合は運転状態をモード2に設定する(ステップS109)。ステップS106でモータ電流IMが電流閾値ILL以上の場合にも運転状態をモード2に設定する(ステップS109)。
【0024】
ステップS102で運転指令が圧縮機運転(回転)で無い場合は、拘束通電でも圧縮機運転していない場合であり、圧縮機モータの回転を停止させることを意味する。インバータ駆動を停止させるので、運転状態をモード0に設定する(ステップS111)。
【0025】
運転状態検出部12は以上の処理で確定した運転状態モードをゲート抵抗切替信号生成部13に出力する。
【0026】
次に、ゲート抵抗切替信号生成部13の動作を図4の動作フローに基づいて説明する。動作開始後、ゲート抵抗切替信号(切替信号1及び切替信号2)の値を初期値に設定する(ステップS200)。ここで切替信号1及び切替信号2はHigh(以下、Hと記す)またはLow(以下、Lと記す)の論理値をとる制御信号であり、初期値はLである。
【0027】
次に、運転状態検出部12が出力した運転状態のモード値に対応して処理を振り分ける。運転状態がモード3又は4の場合は、切替信号1=H、切替信号2=Hとし(処理結果1:ステップS204)、運転状態がモード1の場合は、切替信号1=H、切替信号2=Lとし(処理結果2:ステップS202)、運転状態がモード2の場合は、切替信号1=L、切替信号2=Hとし(処理結果3:ステップS203)とする。なお、運転状態がモード0の場合は、切替信号1及び切替信号2は初期値のままとする。
【0028】
ゲート抵抗切替信号生成部13は以上の処理で生成したゲート抵抗切替信号(切替信号1及び切替信号2)を駆動回路15に出力する。
【0029】
PWM信号生成部14は、圧縮機モータの回転状態、運転指令値に基づいてインバータ主回路4のスイッチング素子SW1〜SW6をオン/オフさせるタイミング信号であるPWM信号を生成する。ここで、PWM信号はスイッチング素子SW1〜SW6に対応して6つあり、上アームスイッチング素子SW1〜SW3に対応したPWM信号をそれぞれPWM(UP)信号、PWM(VP)信号、PWM(WP)信号とし、下アームスイッチング素子SW4〜SW6に対応したPWM信号をそれぞれPWM(UN)信号、PWM(VN)信号、PWM(WN)信号とする。また、PWM信号のH(High)でスイッチ素子のON状態のタイミングを示し、PWM信号のL(Low)でスイッチ素子のOFF状態のタイミングを示す。
【0030】
PWM信号生成の具体的な手段については、公知の技術であるので詳細をここでは説明しないが、例えば特開平11−4594に記載された構成のように、直流母線に設けたシャント抵抗を用いて圧縮機モータの回転状態を検出し、運転指令情報と組み合わせてベクトル制御によりPWM信号を生成すればよい。
【0031】
駆動回路15では、運転状態モードとPWM信号に応じてゲート抵抗を切替えて、スイッチング素子SW1〜SW6を駆動する。上アームゲート抵抗切替部16,17,18と、下アームゲート抵抗切替部19,20,21とでゲート抵抗切替部の構成が異なるので順に説明する。
【0032】
下アームゲート抵抗切替部19,20,21はいずれも同一構成であるので、下アームゲート抵抗切替部19の構成を説明する。図2に下アームゲート抵抗切替部19の詳細構成を示す。下アームゲート抵抗切替部19は、駆動ロジック回路22とゲート切替回路23から構成され、ゲート抵抗切替信号生成部13が生成した切替信号1及び切替信号2と、PWM信号生成部14が生成したPWM(UN)信号を用いて、下アームスイッチング素子SW4を駆動する駆動信号UNを生成する。
【0033】
駆動ロジック回路22は、切替信号1及び切替信号2とPWM(UN)信号とに基づいて、ゲート切替回路23内のスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5を生成する。切替信号1、切替信号2、PWM(UN)信号とゲート制御信号の対応関係を図5に示す。図5には、運転状態のモード毎に、PWM信号の値(High又はLow)に対応してスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号の値(図5の「スイッチング素子動作」欄)が示されている。ここで、ゲート制御信号の値がONとはスイッチ素子Q2等がON状態となるゲート制御信号値を意味し、ゲート制御信号の値がOFFとはスイッチ素子Q2等がOFF状態となるゲート制御信号値を意味する。駆動ロジック回路22はこの論理表に対応したスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5を出力する。なお、図2に示した駆動ロジック回路22は4つAND素子と、2つのNOT素子で構成したものだが、もちろんそれ以外のロジック構成でも可能である。
【0034】
ゲート切替回路23は、トランジスタ等の4つのスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5と、これらスイッチ素子のコレクタ端子にそれぞれ接続された抵抗素子RON2、RON3、ROFF2、ROFF3と、スイッチ素子Q2,Q4のエミッタ端子に接続された抵抗素子RON1と、スイッチ素子Q3,Q5のコレクタ側に抵抗素子ROFF2、ROFF3を介して接続される抵抗素子ROFF1と、スイッチ素子SW4のゲート信号のプルダウン抵抗として機能する抵抗RPDとで構成される。スイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート端子には、ゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5がそれぞれ接続され、高圧電源端子VH、低圧電源端子VLには直流電源VCCP、グランド電位GNDNがそれぞれ接続される。
【0035】
次に、各運転状態対応で下アームゲート抵抗切替部19の動作を説明するが、説明を簡明にするために抵抗素子の値を図5に例示したように、RON2=2・RON,RON3=RON1=RON,ROFF2=2・ROFF,ROFF3=ROFF1=ROFFとする。ここで、RON,ROFFは所定値の抵抗値とする。
【0036】
運転状態がモード0(停止)の時は、PWM信号の値に係らず、スイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5全てがOFFとなり、ゲート抵抗値は無限大(∞)となる。この為、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4は駆動されない。
【0037】
運転状態がモード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)の時で、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合は、スイッチ素子Q2のみONで、他のスイッチ素子Q3,Q4,Q5はOFFとなるので、ゲート抵抗はRON1とRON2が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=3・RON)を介してPWM信号によりON状態に駆動される。
【0038】
一方、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合は、スイッチ素子Q3のみONで、他のスイッチ素子Q2,Q4,Q5はOFFとなるので、ゲート抵抗はROFF1とROFF2が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=3・ROFF)を介してPWM信号によりOFF状態に駆動される。
【0039】
運転状態がモード3(過負荷運転)の時で、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合は、スイッチ素子Q2,Q4がONで、スイッチ素子Q3,Q5がOFFとなるので、ゲート抵抗はRON2とRON3の並列接続にRON1を直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=1.7・RON)を介してPWM信号によりON状態に駆動される。
【0040】
一方、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合は、スイッチ素子Q3,Q5がONで、スイッチ素子Q2,Q4がOFFとなるので、ゲート抵抗はROFF2とROFF3の並列接続にROFF1を直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=1.7・ROFF)を介してPWM信号によりOFF状態に駆動される。
【0041】
運転状態がモード4(拘束通電)の時は、モード3(過負荷運転)の時と駆動ロジック回路20の出力信号の状態は同一な為、スイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5の状態も、モード3のケースと同様となる。すなわち、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合はゲート抵抗(=1.7・RON)でON駆動され、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合はゲート抵抗(=1.7・ROFF)でOFF駆動される。
【0042】
運転状態がモード2(通常運転)の時で、PWM信号=H(PWMのONタイミング)の場合は、スイッチ素子Q4のみONで、他のスイッチ素子Q2,Q3,Q5はOFFとなるので、ゲート抵抗はRON1とRON3が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=2・RON)を介してPWM信号によりON状態に駆動される。
【0043】
一方、PWM信号=L(PWMのOFFタイミング)の場合は、スイッチ素子Q5のみONで、他のスイッチ素子Q2,Q3,Q4はOFFとなるので、ゲート抵抗はROFF1とROFF3が直列接続したものとなる。このようにして、インバータ主回路4のスイッチング素子SW4はゲート抵抗(=2・ROFF)を介してPWM信号によりOFF状態に駆動される。
【0044】
各動作モードでのゲート抵抗値をモード2(通常運転)の場合を基準に比較すると、モード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)の場合にゲート抵抗値が大きくなり、モード3(過負荷運転)とモード4(拘束通電)の場合にゲート抵抗値を小さくすることができる。
【0045】
次に、上アームゲート抵抗切替部16,17,18の構成を説明するが、上アームゲート抵抗切替部16,17,18はいずれも同一構成であるので、上アームゲート抵抗切替部16の構成を図7に基づいて説明する。なお、下アームゲート抵抗切替部19の内部構成と同一部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
上アームゲート抵抗切替部16は、ゲート抵抗切替信号生成部13が生成した切替信号1及び切替信号2と、PWM信号生成部14が生成したPWM(UP)信号をフォトカップラPC1,PC2,PC3を介して駆動ロジック回路22に取り込む。フォトカップラPC1,PC2,PC3を用いることで、駆動ロジック回路22及びゲート切替回路23の電源系とゲート抵抗切替信号生成部13及びPWM信号生成部14の電源系とを電気的に絶縁することができる。駆動ロジック回路22、ゲート切替回路23は下アームゲート抵抗切替部19の駆動ロジック回路22、ゲート切替回路23とそれぞれ同一構成である。駆動ロジック回路22は図5の論理表に従ってゲート切替回路21内のスイッチ素子Q2,Q3,Q4,Q5のゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5を生成する。ゲート切替回路23は、ゲート制御信号CTL2,CTL3,CTL4,CTL5に基づいて、ゲート抵抗の切替を行う。ゲート切替回路23のゲート抵抗切替動作の詳細は、下アームゲート抵抗切替部19でのゲート切替回路23の動作と同一である。
【0047】
上アームゲート抵抗切替部16におけるゲート切替回路23の基準電位(VL)は、U相の上アームスイッチング素子SW1のエミッタ電位GNDP(U)と同電位となる為、ゲート切替回路23の出力信号で上アームスイッチング素子SW1を駆動することができる。
【0048】
図6は、インバータ制御装置11によるゲート抵抗切替制御の特性及び効果について運転状態モード毎に整理したものである。なお、図6には比較のためにゲート抵抗切替制御を実施しない場合の特性についても併記している。
【0049】
運転状態がモード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)の時は、ゲート抵抗を大きい抵抗値に切替えたので、スイッチング時間が増大し、スイッチングによる発生ノイズ量を抑制できる。また、以下に説明するように、ゲート抵抗を大きくしたことによるスイッチング損失の増加量を小さく抑制することが可能である。
【0050】
図8は運転状態がモード1でのゲート抵抗切替制御における発生ノイズ量と直流母線電圧との関係を説明したものである。図8で、2つの実線曲線はゲート抵抗切替制御を実施しない場合の特性であり、2つの点線曲線はゲート抵抗切替制御でゲート抵抗を大きくした場合の特性である。曲線が各々2本あるのは製品の個体ばらつきを考慮して特性の最大値と最小値に対応させたものである。
【0051】
ゲート抵抗切替制御を実施しない場合は、モータ電流が小さく、直流母線電圧が高い為、図10(発生ノイズ量とモータ電流の関係)及び図11(発生ノイズ量と直流母線電圧の関係)の特性図からわかるように、発生ノイズ量は大きくなる傾向がある。従って、図8に示すようにゲート抵抗切替制御を実施しない場合には、直流母線電圧がVDCH以上の場合に発生ノイズ量がノイズ基準を満たさない現象が起こりえることがわかる。ここで、ノイズ基準とは国内法規制や、製品出荷時の製品仕様などにより設定された発生ノイズ量の許容基準値である。一方、図9に示すように、ゲート抵抗を大きくした場合には発生ノイズ量が低下する為に、直流母線電圧が使用電圧最大値以下であれば、発生ノイズ量をノイズ基準以下に抑制することができる。そして、ゲート抵抗値を、ゲート抵抗切替後の特性が製品の個体ばらつきを考慮して発生ノイズ量の最大値がノイズ基準と一致するようにゲート抵抗値を設定すれば、ノイズ基準を満たす最小のゲート抵抗値にすることができるので、スイッチング損失の増加分を小さくすることができる。なお、ノイズ基準に対するマージンを考慮して、発生ノイズ量の最大値がノイズ基準以下となるようにゲート抵抗値を設定してもよい。
【0052】
運転状態がモード3(過負荷運転)の時は、ゲート抵抗を小さい抵抗値に切替えるので、スイッチング損失を抑制できる。なお、スイッチング損失は図12(スイッチング損失とゲート抵抗の関係)に示すように、ゲート抵抗が小さいほどスイッチング損失が低下する傾向がある。また、このスイッチング損失の低下は図14に示すようにモータ電流値の全領域で生じる。一方、図9に示すように、ゲート抵抗を小さくすると発生ノイズ量が増加するが、図13に示すように、ゲート抵抗切替後の発生ノイズ量がモータ電流が所定値IOL以上の領域でノイズ基準以下になるように切替後ゲート抵抗値を設定すれば、発生ノイズ量の増加分を抑制させることができる。具体的には、モータ電流がIOLの時の発生ノイズ量がノイズ基準と一致するようにゲート抵抗値を設定すれば、ノイズ基準を満たす最小のゲート抵抗値にすることができるので、ノイズ基準を満たす条件で最大限度のスイッチング損失の抑制が実現できる。なお、ノイズ基準に対するマージンを考慮して、発生ノイズ量の最大値がノイズ基準以下となるようにゲート抵抗値を設定してもよい。
【0053】
運転状態がモード4(拘束通電)の時は、スイッチング周波数が通常運転時よりも大きく(例えば5倍)、モータ電流が小さいことを除けば、運転状態がモード3(過負荷運転)の時と同様な制御となる。すなわち、発生ノイズ量の増加をできるだけ小さくしつつ、ゲート抵抗を小さい抵抗値に切替えるので、スイッチング損失を抑制できる。
【0054】
運転状態がモード2(通常運転)の時は、通常運転時の最適なゲート抵抗を用いるようにするので、スイッチング損失、発生ノイズ量とも問題ない範囲での運転を行うことができる。
【0055】
なお、以上の説明では、インバータ制御装置11内の各制御ブロックを個別に構成するようにしたが、インバータ制御部分を制御用のマイクロコンピュータを用いて構成するようにしてもよい。図15は運転状態検出部12、ゲート抵抗切替信号生成部13、PWM信号生成部14の機能を制御マイクロコンピュータ24を用いたソフトウェア制御で行うようにしたインバータ制御装置25を示したものである。
【0056】
インバータ制御装置25を用いれば、インバータ装置より発生するノイズに関し、ゲート抵抗(スイッチング動作速度:ターンon/off時間)と発生ノイズ量の関係、空調運転モード(直流母線電圧、電流)と発生ノイズ量の関係を予め測定しておき、この測定結果をデータテーブルとして制御マイクロコンピュータ24に接続した記憶媒体(ROM:図示していない)に記録しておくことにより、直流母線電圧検出回路10、圧縮機モータ電流検出回路7の各検出信号に基づいて空調機の運転状態モードを設定し、この運転状態モードと測定データに基づく前記のデータテーブルを参照して、最適なゲート抵抗を選択したインバータ駆動制御を実現することができる。
【0057】
また、本実施の形態で説明したインバータ制御装置はインバータ主回路4のスイッチング素子SW1〜SW6または、逆並列接続されたダイオードD1〜D6のいずれか又は両方をワイドバンドギャップ半導体により構成した場合に特に効果的である。
【0058】
インバータ制御装置を運転状態モード1(軽負荷運転かつ直流母線電圧が高い)で制御した場合、スイッチング時間の増加に伴い、スイッチング損失が増加するがワイドバンドギャップ半導体はSi(シリコン)半導体に比べて損失が少ない特性を有するので、この損失低減分をスイッチング速度の低下(スイッチング時間の増加)分に対応させることにより、発生ノイズをさらに低下させることができる。これによりノイズフィルタ部品等のノイズ低減対策のコストをより削減することができる。
【0059】
また、インバータ制御装置を運転状態モード3(過負荷運転)またはモード4(拘束通電)で制御した場合、ワイドバンドギャップ半導体はSiデバイスよりも高周波動作が可能な特性を有するので、スイッチング時間の可変範囲(Si半導体の10倍以上)が大きくとれる。これにより、スイッチング時間のより柔軟な制御が可能となる。
【0060】
なお、ワイドバンドギャップ半導体には、SiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)、ダイヤモンド等がある。ワイドバンドギャップ半導体素子はSi半導体素子に比べると素子での損失が小さいため、素子から発生する発熱量が小さい。また、Si半導体素子に比べ融点が高く200℃以上であるので高温動作が可能である。また、熱伝導率も良いため、放熱用のフィンが無くても動作可能である。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態でのインバータ制御装置は、装置の使用環境(直流母線電圧)、運転状態の検出により、インバータ装置のスイッチング素子を駆動するゲート抵抗を運転状態に応じて最適に切り替えるように構成したので、発生ノイズと損失(スイッチング損失)のトレードオフを最適にしたインバータ駆動が実現できる。また、これにより、ノイズフィルタ部品の削減が可能となり、装置全体の小型化、低コスト化、及び装置の消費電力低減の効果が得られる。
【符号の説明】
【0062】
1 交流電源、2 整流回路、3 ノイズフィルタ回路、4 インバータ主回路、5 ラ圧縮機、6 電流センサ、7 圧縮機モータ電流検出回路、8 平滑コンデンサ、9 電圧センサ、10 直流母線電圧検出回路、11 インバータ制御装置、12 運転状態検出部、13 スイッチング時間切替信号生成部、14 PWM信号生成部、15 駆動回路、16〜18 上アームゲート抵抗切替部、19〜21 下アームゲート抵抗切替部、22 駆動ロジック回路、23 ゲート切替回路、24 制御マイクロコンピュータ、25 インバータ制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の直流電力を交流電力に変換して電動機などの負荷を駆動するインバータ主回路を制御するインバータ制御装置において、
前記インバータ主回路を構成する複数のスイッチング素子をオン・オフ制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、
前記インバータ主回路の直流母線電圧、前記インバータ主回路と前記負荷との間に流れるモータ電流、及び前記負荷に対する運転指令に基づいて、前記負荷の運転状態を検出する運転状態検出部と、
前記運転状態に対応してゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部と、
前記ゲート抵抗切替信号を用いて、前記インバータ主回路のスイッチング素子のゲート端子に接続されたゲート抵抗を切替えるゲート抵抗切替部と、
を備えたことを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
前記運転状態検出部は、前記運転状態として通常運転状態、軽負荷かつ直流母線電圧が高い運転状態、過負荷運転状態、拘束通電状態、停止状態のいずれかを検出し、
前記ゲート抵抗切替信号生成部は、
前記運転状態が軽負荷かつ直流母線電圧が高い運転状態の時は、通常運転時のゲート抵抗よりも抵抗値が大きいゲート抵抗に切替えるように、
前記運転状態が過負荷運転状態または拘束通電状態の時は、通常運転時のゲート抵抗よりも抵抗値が小さいゲート抵抗に切替えるように、
前記運転状態が停止状態の時は、前記ゲート端子を開放するように、前記ゲート抵抗切替信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記運転状態検出部は、前記運転指令が拘束通電である場合に運転状態を拘束通電状態とし、前記運転指令が拘束通電以外の回転運転であって、前記モータ電流が予め設定した第1の閾値より大きい場合に運転状態を過負荷運転状態とし、前記運転指令が拘束通電以外の回転運転であって、前記モータ電流が予め設定した第2の閾値より小さく、かつ前記直流母線電圧が予め設定した第3の閾値より大きい場合に運転状態を軽負荷かつ直流母線電圧が高い運転状態とし、前記運転指令が拘束通電及び回転運転のいずれでもない場合に前記運転状態を停止状態とし、前記のいずれの運転状態でもない場合に運転状態を通常運転状態であると検出することを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記インバータ回路を構成するスイッチング素子とダイオード素子のうち少なくとも1個以上の素子がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインバータ制御装置。
【請求項5】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項4に記載のインバータ制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のインバータ制御装置と、このインバータ制御装置によって制御されるインバータ主回路と、このインバータ主回路によって駆動される電動機などの負荷装置と、を備えたことを特徴とする冷凍空調装置。
【請求項1】
直流電源の直流電力を交流電力に変換して電動機などの負荷を駆動するインバータ主回路を制御するインバータ制御装置において、
前記インバータ主回路を構成する複数のスイッチング素子をオン・オフ制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、
前記インバータ主回路の直流母線電圧、前記インバータ主回路と前記負荷との間に流れるモータ電流、及び前記負荷に対する運転指令に基づいて、前記負荷の運転状態を検出する運転状態検出部と、
前記運転状態に対応してゲート抵抗切替信号を生成するゲート抵抗切替信号生成部と、
前記ゲート抵抗切替信号を用いて、前記インバータ主回路のスイッチング素子のゲート端子に接続されたゲート抵抗を切替えるゲート抵抗切替部と、
を備えたことを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
前記運転状態検出部は、前記運転状態として通常運転状態、軽負荷かつ直流母線電圧が高い運転状態、過負荷運転状態、拘束通電状態、停止状態のいずれかを検出し、
前記ゲート抵抗切替信号生成部は、
前記運転状態が軽負荷かつ直流母線電圧が高い運転状態の時は、通常運転時のゲート抵抗よりも抵抗値が大きいゲート抵抗に切替えるように、
前記運転状態が過負荷運転状態または拘束通電状態の時は、通常運転時のゲート抵抗よりも抵抗値が小さいゲート抵抗に切替えるように、
前記運転状態が停止状態の時は、前記ゲート端子を開放するように、前記ゲート抵抗切替信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記運転状態検出部は、前記運転指令が拘束通電である場合に運転状態を拘束通電状態とし、前記運転指令が拘束通電以外の回転運転であって、前記モータ電流が予め設定した第1の閾値より大きい場合に運転状態を過負荷運転状態とし、前記運転指令が拘束通電以外の回転運転であって、前記モータ電流が予め設定した第2の閾値より小さく、かつ前記直流母線電圧が予め設定した第3の閾値より大きい場合に運転状態を軽負荷かつ直流母線電圧が高い運転状態とし、前記運転指令が拘束通電及び回転運転のいずれでもない場合に前記運転状態を停止状態とし、前記のいずれの運転状態でもない場合に運転状態を通常運転状態であると検出することを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記インバータ回路を構成するスイッチング素子とダイオード素子のうち少なくとも1個以上の素子がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインバータ制御装置。
【請求項5】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項4に記載のインバータ制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のインバータ制御装置と、このインバータ制御装置によって制御されるインバータ主回路と、このインバータ主回路によって駆動される電動機などの負荷装置と、を備えたことを特徴とする冷凍空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−200042(P2012−200042A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60752(P2011−60752)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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