説明

インバータ装置一体型電動圧縮機

【課題】開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができるインバータ装置一体型電動圧縮機の提供を目的とする。
【解決手段】インバータ装置にはインバータカバー213と、インバータカバーとともに電気部品を収納するインバータケース202とが備えられ、インバータカバーには低圧冷媒の吸入口38と低圧冷媒の通路である低圧冷媒通路33とが備えられ、インバータケースには電気部品を冷却するための冷却通路空間70が備えられて、低圧冷媒通路の出口は冷却通路空間の入口に接続される。これによって、吸入口38の位置が、配管レイアウトなどの事情により変更されたとしても、インバータケースの形状などの変更は必要なく、インバータカバーの変更のみを行えば良いので、開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷媒の吸入、圧縮および吐出を行う電動圧縮機部と、この電動圧縮機部の電動機を駆動するインバータ装置とを一体化した、インバータ装置一体型電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、吸入冷媒で冷却されるインバータ装置を搭載するインバータ装置一体型電動圧縮機が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。この1例を図4〜図6により説明する。
【0003】
図4においては、電動圧縮機1の胴部の周りにある取付け脚(図示せず)によって横向きに搭載される横型のインバータ装置一体型電動圧縮機の一例を示す。電動圧縮機1はその本体ケーシング3内に電動機5及び圧縮機構部4を内蔵する。電動機5はインバータ装置101によって駆動され、当該電動機5により駆動される圧縮機構部4は、インバータケース102に設けた吸入口8を通じ冷凍サイクルからの低圧冷媒を吸入して、圧縮し、吐出する。吐出された冷媒は電動機5側に入り、電動機5を冷却しながら本体ケーシング3の吐出口9から冷凍サイクルへ吐出される。
【0004】
インバータケース102は、ボルト56により本体ケーシング3に締結される。インバータケース102には、インバータカバー113がネジ55で固定される。インバータ装置101が外部コネクタ119との電気的な接続を行うための直付けコネクタ117がインバータ装置101に備えられる。
【0005】
図5はインバータケース102と圧縮機構部4とで構成される冷却通路空間の分解構造図である。インバータケース102と圧縮機構部4とを、Oリング92を用いて気密的に組み合せることにより吸入口8から通じる吸入通路が形成される。インバータケース102に設けた吸入口8から吸入された冷媒は、冷却通路空間70に拡散され、端部壁102aを冷却することで、背面に搭載されているスイッチング素子モジュール105等の発熱体を冷却したのち、圧縮機構部4の通路穴71より圧縮空間に流入する。
【0006】
インバータケース102には、圧縮機ターミナル106がトメワ80によって固定されている。また、直付けコネクタ117がインバータケース102の端部に直付け設置されている。直付けコネクタ117の端子118としては、電源用2本、通信用2本の例を示す。
【0007】
電動機5からのリード線81は圧縮機構部4の外周近傍に設けられた連絡通路82を通してハーネスコネクタ121に接続され、圧縮機ターミナル106に電気接続される。インバータケース102は、ボルト通し穴116を通るボルト56により、Oリング91をはさみ気密的に本体ケーシング3に機械接続される。前記Oリング92内は低圧に、Oリング91からOリング92までは高圧になる。
【0008】
図6は、インバータ装置101のインバータカバー113側の分解構造図である。インバータケース102の端部壁102cには、スイッチング素子モジュール105、電流平滑コンデンサ108が配置され、圧縮機ターミナル106も含めこれらの部品を回路基板103が覆うかたちでインバータ装置101を構成している。圧縮機ターミナル106と回路基板103とはピン端子、リード線などにより電気接続される。直付けコネクタ117の端子118は、電動圧縮機1の中心軸と垂直に配置されている回路基板103の端子
取付穴104に直接はんだ接続している。ネジ55は、インバータカバー113のネジ通し穴114を通し、インバータケース102のネジ穴115に締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−101307号公報(第10頁、第1図〜第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のようなインバータ装置一体型電動圧縮機におけるインバータ装置に関しては、次のような課題がある。インバータ装置のインバータケース102には、吸入口8が設けられている。この吸入口8の位置は、配管レイアウトなどの事情により、開発段階などにおいて変更されることが多い。吸入口8の位置が変更されると、インバータケース102の形状、冷却通路空間の形状、インバータケース内の部品配置などの変更が必要となる。そのため、開発に多大の工数時間が必要となる。
【0011】
また、冷却通路空間での冷却能力を向上させたい場合には、冷凍サイクルの膨張弁、熱交換器の風量、電動圧縮機の回転数などの調節が必要になり、運転が複雑になる。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができるインバータ装置一体型電動圧縮機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のインバータ装置一体型電動圧縮機は、インバータ装置にはインバータカバーと、インバータカバーとともに電気部品を収納するインバータケースとが備えられ、インバータカバーには低圧冷媒の吸入口と低圧冷媒の通路である低圧冷媒通路とが備えられ、インバータケースには電気部品を冷却するための冷却通路空間が備えられて、低圧冷媒通路の出口は冷却通路空間の入口に接続されるものである。
【0014】
これにより、吸入口の位置が、配管レイアウトなどの事情により変更されたとしても、インバータケースの形状、冷却通路空間の形状、インバータケース内の部品配置などの変更は必要なく、インバータカバーの変更のみを行えば良い。
【0015】
また、インバータカバーも低圧冷媒通路により冷却されるため、インバータ装置の冷却が向上する。そのため、冷凍サイクルの膨張弁、熱交換器の風量、電動圧縮機の回転数などの調節は不要となる。
【0016】
従って、開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインバータ装置一体型電動圧縮機は、開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるインバータ装置一体型電動圧縮機の正面図、(b)同側面図
【図2】同インバータ装置の冷却通路空間の分解構造図
【図3】同インバータ装置のインバータカバー側の分解構造図
【図4】(a)従来のインバータ装置一体型電動圧縮機を示す正面図、(b)同側面図
【図5】同インバータ装置の冷却通路空間の分解構造図
【図6】同インバータ装置のインバータカバー側の分解構造図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、インバータ装置にはインバータカバーと、インバータカバーとともに電気部品を収納するインバータケースとが備えられ、インバータカバーには低圧冷媒の吸入口と低圧冷媒の通路である低圧冷媒通路とが備えられ、インバータケースには電気部品を冷却するための冷却通路空間が備えられて、低圧冷媒通路の出口は冷却通路空間の入口に接続されるものである。
【0020】
これにより、吸入口の位置が、配管レイアウトの事情などにより、変更されたとしても、インバータケースの形状、冷却通路空間の形状、インバータケース内の部品配置などの変更は必要なく、インバータカバーの変更のみを行えば良い。
【0021】
また、インバータカバーも低圧冷媒通路により冷却されるため、インバータ装置の冷却が向上する。そのため、冷凍サイクルの膨張弁、熱交換器の風量、電動圧縮機の回転数などの調節は不要となる。
【0022】
従って、開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができる。
【0023】
第2の発明は、第1の発明のインバータ装置一体型電動圧縮機において、低圧冷媒通路は、インバータカバーに一体として構成されるものである。これにより、低圧冷媒通路からインバータカバーが効果的に冷却できる。そのため、インバータケースの冷却通路空間による冷却を補強し、インバータ装置置の冷却を向上させることができる。
【0024】
第3の発明は、第1または第2の発明のインバータ装置一体型電動圧縮機において、インバータカバーの材質をアルミとするものである。これにより、熱伝導の良いアルミにより、低圧冷媒通路からインバータ装置を効果的に冷却できる。また、低圧冷媒通路と、インバータカバーとの一体化を容易に実現できる。
【0025】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のインバータ装置一体型電動圧縮機において、車両に搭載されるものである。車両においては、搭載スペースが狭く、配管レイアウトの見直しが多いため、吸入口の位置変更が容易な本インバータ装置一体型電動圧縮機は有用である。また、室外炎天下放置、エンジンからの熱など温度環境が厳しいため、インバータ装置の冷却を向上させることができる本インバータ装置一体型電動圧縮機は有用である。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインバータ装置一体型電動圧縮機である。従来のインバータ装置一体型電動圧縮機の図4との主な相違点は、インバータカバー113がインバータカバー213、インバータケース102がインバータケース202となっている点である。これにより、インバータ装置101がインバータ装置201となっている。同一箇所の符号は、そのまま適用する。
【0028】
図1においては、電動圧縮機1の胴部の周りにある取付け脚(図示せず)によって横向
きに搭載される横型のインバータ装置一体型電動圧縮機の一例を示す。電動圧縮機1はその本体ケーシング3内に電動機5及び圧縮機構部4を内蔵する。電動機5はインバータ装置201によって駆動され、当該電動機5により駆動される圧縮機構部4は、インバータ装置201に設けた吸入口38を通じ冷凍サイクルからの低圧冷媒を吸入して、圧縮し、吐出する。吐出された冷媒は電動機5側に入り、電動機5を冷却しながら本体ケーシング3の吐出口9から冷凍サイクルへ吐出される。
【0029】
インバータケース202は、ボルト56により本体ケーシング3に締結される。インバータケース202には、インバータカバー213がネジ55で固定される。インバータ装置201が外部コネクタ119との電気的な接続を行うための直付けコネクタ117がインバータ装置201に備えられる。
【0030】
インバータカバー213には、その外面側に吸入口38のある低圧冷媒通路33(図1(a)参照)が備えられており、この低圧冷媒通路33の中を低圧冷媒が通過することにより、インバータカバー213が冷却される。これにより、インバータカバー213とインバータケース202により収納される電気部品の収納空間が冷却され、以って電気部品が冷却される。また、インバータカバー213とインバータケース202とは接しているため、インバータケース202もインバータカバー213により冷却される。
【0031】
図2はインバータケース202と圧縮機構部4とで構成される冷却通路空間の分解構造図である。インバータケース202と圧縮機構部4とを、Oリング92を用いて気密的に組み合せることにより、冷却通路空間入口35から通じる吸入通路が形成される。インバータケース202に設けた冷却通路空間入口35から吸入された冷媒は、冷却通路空間70に拡散され、端部壁202aを冷却することで、その背面に搭載されているスイッチング素子モジュール105等の発熱体を冷却したのち、圧縮機構部4の通路穴71より圧縮空間に流入する。
【0032】
インバータケース202には、圧縮機ターミナル106がトメワ80によって固定されている。また、直付けコネクタ117がインバータケース202の端部に直付け設置されている。直付けコネクタ117の端子118としては、電源用2本、通信用2本の例を示す。
【0033】
電動機5からのリード線81は圧縮機構部4の外周近傍に設けられた連絡通路82を通してハーネスコネクタ121に接続され、圧縮機ターミナル106に電気接続される。インバータケース202は、ボルト通し穴116を通るボルト56により、Oリング91をはさみ気密的に本体ケーシング3に機械接続される。前記Oリング92内は低圧に、Oリング91からOリング92までは高圧になる。
【0034】
図3は、インバータ装置201のインバータカバー213側の分解構造図である。インバータケース202の端部壁202c(端部壁202aの背面)には、スイッチング素子モジュール105、電流平滑コンデンサ108などが配置され、圧縮機ターミナル106も含めこれらの部品を回路基板103が覆うかたちでインバータ装置201を構成している。回路基板103の周辺端部はネジにより、インバータケース202に固定されている。
【0035】
スイッチング素子モジュール105には、インバータ回路を構成するスイッチング素子が備えられている。このスイッチング素子モジュール105の両サイドに設けられている接続端子ピンは回路基板103にはんだ接続される。直付けコネクタ117の端子118は、電動圧縮機1の中心軸と垂直に配置されている回路基板103の端子取付穴104に直接はんだ接続している。
【0036】
上記構成において、インバータカバー213には、すでに記述した通り吸入口38のある低圧冷媒通路33が備えられており、この低圧冷媒通路33の中を低圧冷媒が通過することにより、インバータカバー213が冷却される。これにより、インバータカバー213とインバータケース202により収納されるスイッチング素子モジュール105、電流平滑コンデンサ108などなどの電気部品の収納空間が冷却され、以って電気部品が冷却される。また、インバータカバー213とインバータケース202とは接しているため、インバータケース202もインバータカバー213により冷却される。
【0037】
吸入口38から吸入された低圧冷媒は、低圧冷媒通路33を通過し低圧冷媒通路出口34に至る。そして、低圧冷媒通路出口34は、インバータケース202に設けられた冷却通路空間入口35に接続される。そのため、低圧冷媒は、冷却通路空間70に拡散され、端部壁202aを冷却することで、背面に搭載されているスイッチング素子モジュール105等の発熱体を冷却する。これにより、インバータケース202の冷却通路空間70に加え、インバータカバー213も低圧冷媒通路33により冷却されるため、インバータ装置201の冷却が向上する。そのため、冷凍サイクルの膨張弁、熱交換器の風量、電動圧縮機の回転数などの調節は不要となる。
【0038】
ここで、吸入口38の位置が、配管レイアウトなどの事情により変更された場合、低圧冷媒通路出口34の位置は変更せず、吸入口38の位置のみを変更するようにインバータカバー213を修正する。これにより、インバータケース202の形状、冷却通路空間70の形状、インバータケース202内のスイッチング素子モジュール105、電流平滑コンデンサ108、回路基板103など部品配置の変更は必要なく、インバータカバー213の変更のみを行えば良い。
【0039】
従って、本発明のインバータ装置一体型電動圧縮機は、開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができる。
【0040】
尚、横向きに搭載される横型のインバータ装置一体型電動圧縮機の例を示したが、縦型でも良い。電動圧縮機の形態、インバータ装置冷却の形態なども、実施例に限るものではない。例えば、インバータケースと圧縮機構部とで構成される冷却通路空間の例を示したが、インバータケースのみで構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかるインバータ装置一体型電動圧縮機は、開発工数を低減できるとともにインバータ装置の冷却を向上させることができるので、民生用、産業用、各種インバータ装置一体型電動圧縮機に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 電動圧縮機
3 本体ケーシング
4 圧縮機構部
5 電動機
33 低圧冷媒通路
34 低圧冷媒通路出口
35 冷却通路空間入口
38 吸入口
70 冷却通路空間
103 回路基板
105 スイッチング素子モジュール
201 インバータ装置
202 インバータケース
202a 端部壁
202c 端部壁(インバータカバー側)
213 インバータカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動圧縮機にインバータ装置が搭載されるインバータ装置一体型電動圧縮機において、前記インバータ装置にはインバータカバーと当該インバータカバーとともに電気部品を収納するインバータケースとが備えられ、前記インバータカバーには低圧冷媒の吸入口と当該低圧冷媒の通路である低圧冷媒通路とが備えられ、前記インバータケースには前記電気部品を冷却するための冷却通路空間が備えられて、前記低圧冷媒通路の出口は前記冷却通路空間の入口に接続されることを特徴とするインバータ装置一体型電動圧縮機。
【請求項2】
前記低圧冷媒通路は、前記インバータカバーに一体として構成されることを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置一体型電動圧縮機。
【請求項3】
前記インバータカバーの材質はアルミであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインバータ装置一体型電動圧縮機。
【請求項4】
前記インバータ装置一体型電動圧縮機は、車両に搭載されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインバータ装置一体型電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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