説明

インバータ装置

【課題】筐体の一部の板厚を薄くしたとしても、所望の規格の要求を満たす。
【解決手段】本実施形態のインバータ装置は、筐体の一部に所定の規格により定められた板厚よりも薄い板厚である薄肉部を有するインバータ装置であって、その薄肉部を金属製の板部材によって覆ったことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、外部からの配線が接続される配線口部などを、構造的な強度や電気的な安全性を確保すべくカバーによって覆うことが行われている。このような構造に係る安全性規格の1つである例えばUL規格(UL:Underwriters Laboratories)のTYPE1構造では、例えばインバータ装置のプラスチック製の筐体について、UL94−5VAという材料規格を満たしていること、筐体の板厚が所定値以上、例えば3mm以上であることが要求されている。
【0003】
ところで、近年では、インバータ装置の小型化などの要請により、より小さい筐体内に多数の部品をいかに納めるかが課題となっている。そのため、筐体の一部の板厚を薄くすることで、より小さい筐体内に多数の部品を納めることが考えられている。
しかしながら、筐体の一部の板厚を薄くしてしまうと、例えば上記のようなTYPE1構造を採用する場合に規格の要求を満たすことができなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6664682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、筐体の一部の板厚を薄くしたとしても、所望の規格の要求を満たすことができるインバータ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のインバータ装置は、筐体の一部に所定の規格により定められた板厚よりも薄い板厚である薄肉部を有するインバータ装置であって、その薄肉部を金属製の板部材によって覆ったことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係るインバータ装置の外観を概略的に示す斜視図
【図2】一般的な箱状カバー部材および板状カバー部材を取り付ける場合を説明するための図であり、(a)は各部材を取り付ける前の状態、(b)は各部材を取り付けた後の状態を示すインバータ装置の斜視図
【図3】第1実施形態に係る図2相当図
【図4】箱状カバー部材、板状カバー部材、および、ラベルを取り付けた状態を示すインバータ装置の斜視図
【図5】第2実施形態に係る箱状カバー部材および板状カバー部材を取り付ける場合を説明するための図であり、(a)は各部材を取り付ける前の状態、(b)は各部材を取り付けた後の状態を示すインバータ装置の斜視図
【図6】異なるインバータ装置に適用した場合を示す図5相当図
【図7】変形実施形態に係る図2相当図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を図1から図4を参照して説明する。図1は、インバータ装置10の外観を概略的に示す斜視図である。なお、説明の便宜のため、図1に示す上下方向、左右方向および前後方向を、インバータ装置10の上下方向、左右方向および前後方向として設定する。
図1に示すように、インバータ装置10は、その下部に、図示しない交流電源装置に接続される入力端子、並びに、例えば図示しない誘導電動機などの負荷に接続される出力端子などを備える。また、図示は省略するが、インバータ装置10は、例えばMOSFETやIGBTなどのスイッチング素子を3相ブリッジ接続して構成されるインバータ主回路、当該インバータ主回路を制御する制御部、その制御プログラムが格納された記憶手段などを備えている。こうして、インバータ装置10は、交流電源装置から電源が与えられ、制御プログラムに基づきインバータ主回路が制御されることにより、誘導電動機などの負荷を駆動するようになっている。
【0009】
このインバータ装置10の本体を構成する筐体11は、例えばプラスチック材料からなり、ほぼ矩形箱状をなす。そして、この筐体11は、詳しくは後述する開閉扉13の一部を除き、その全体が3mm以上の板厚を有している。この筐体11の手前側である前面側には、表示操作部12が備えられている。この表示操作部12は、インバータ装置10内の制御部に接続されており、運転状態、運転周波数指令値、電圧、電流、入出力端子状態、トリップ履歴など各種の情報を表示可能な表示パネル12a、運転の開始や停止などを入力したり運転周波数などの各種パラメータを設定したりするための操作ダイヤル12bや各種の操作ボタン12cなどを備えている。
【0010】
また、インバータ装置10の筐体11には開閉扉13が設けられており、この開閉扉13を開くことで、インバータ装置10の内部に設けられた配線口部14を操作可能となる。この配線口部14には、外部からの図示しない各種の配線が接続される。また、この場合、配線口部14の近傍には、リレーの供電部15が配置されている。この供電部15は、特許請求の範囲に記載した「筐体内の所定の部品」に相当する。そして、開閉扉13のうち当該開閉扉13を閉めたときにこの供電部15に対向する部分には、他の部分よりも板厚が薄い薄肉部13aが形成されている。つまり、この薄肉部13aは、この場合3mm以上の板厚を有していない。この薄肉部13aが存在することで、インバータ装置10の筐体11内に供電部15がコンパクトに収められている。また、この開閉扉13のうち供電部15に対向しない部分、この場合、開閉扉13の下部にも、他の部分よりも板厚が薄い薄肉部13bが形成されている。つまり、この薄肉部13bも、この場合3mm以上の板厚を有していない。この薄肉部13bは、供電部15に対向せず、閉じられた状態で配線口部14をインバータ装置10の下方に臨ませるようになっている。
【0011】
次に、このインバータ装置10において、所定の規格として安全性規格であるUL規格(UL:Underwriters Laboratories)のTYPE1構造を採用する場合について説明する。このUL規格のTYPE1構造は、主として、インバータ装置10の構造的な強度や電気的な安全性を確保すべく採用される構造である。また、この場合、インバータ装置10の筐体11は、構造的な強度の一つである燃焼に対する保護を規定したUL94−5VAという材料規格を満たしたプラスチック材料で構成されている。なお、本実施形態では、便宜上、板厚3mm以上でUL94−5VAを満足するプラスチック材料を採用した場合について説明するが、使用する材料の特性や適用する規格に応じて所望の板厚は異なるので、その場合は、その使用する材料の特性や適用する規格に応じた板厚に読み替えるものとする。
【0012】
図2に示すように、UL規格のTYPE1構造を採用する場合、図2では手前側となるインバータ装置10の下部、つまり、配線口部14が臨む部分には、金属製の箱状カバー部材21および金属製の板状カバー部材22が取り付けられ、これにより、構造的な強度や電気的な安全性が確保される。なお、板状カバー部材22は、複数の止め具23によって箱状カバー部材21に固定される。
【0013】
ところで、このUL規格のTYPE1構造では、インバータ装置10の筐体11の板厚が3mm以上であることが要求されている。しかし、上記したように、開閉扉13の一部、この場合、薄肉部13aおよび薄肉部13bは、他の部分よりも薄く形成されており、従って、このUL規格で要求される板厚、この場合、3mm以上の板厚を有していない。
そこで、本実施形態では、上記した板状カバー部材22に代えて、図3に示す金属製の板状カバー部材32を使用する。この板状カバー部材32は、特許請求の範囲に記載した板部材に相当する。この板状カバー部材32は、上記した板状カバー部材22よりも長い長方形状に形成され、開閉扉13に対向する部分に矩形状に開口した開口部32aを有する。なお、この場合も、板状カバー部材32は、複数の止め具23によって箱状カバー部材21に固定される。
【0014】
この板状カバー部材32の開口部32aは、少なくとも開閉扉13のうち薄肉部13aを除く部分に対向するように設けられている。従って、板状カバー部材32は、少なくとも薄肉部13a、つまり、開閉扉13のうち供電部15に対向する部分は覆うようになっている。この場合、上記したように、開閉扉13には、薄肉部13aのみならず、供電部15に対向しない薄肉部13bが形成されているが、この薄肉部13bの一部、この場合、開閉扉13の中央側に位置する部分は開口部32aに対向し、従って、板状カバー部材32によって覆われないようになっている。なお、薄肉部13bの残りの部分、この場合、開閉扉13の下端側に位置する部分は、開口部32aに対向せず、従って、板状カバー部材32によって覆われるようになっている。
【0015】
この実施形態によれば、筐体11の一部、この場合、開閉扉13の一部に他の部分よりも板厚が薄い薄肉部13aが存在していたとしても、その薄肉部13aを金属製の板状カバー部材32で覆うことによって構造的な強度や電気的な絶縁性を確保することができる。これにより、インバータ装置10の筐体11の一部の板厚を薄くしたとしても、TYPE1構造を採用する場合にUL規格の要求を満たすことができる。
【0016】
なお、この場合、薄肉部13aについては、その全体を板状カバー部材32で覆うが、薄肉部13bについては、その一部を板状カバー部材32で覆い、残りの部分を板状カバー部材32で覆わないように構成した。即ち、薄肉部13aは、筐体11内の供電部15に対向する部分であり、構造的な強度や電気的な絶縁性を確保する要請が強い部分である。そのため、本実施形態では、この薄肉部13aの全体を板状カバー部材32で覆うことにより、薄肉部13aにおける構造的な強度や電気的な絶縁性を確保するように構成した。これに対して、薄肉部13bは、筐体11内の供電部15に対向しない部分であり、構造的な強度や電気的な絶縁性を確保する要請がそれほど強くない部分である。そのため、本実施形態では、この薄肉部13bの全部ではなく一部を板状カバー部材32で覆うことにより、薄肉部13bの一部、この場合、外部に臨む下端側部分における強度や電気的な絶縁性を確保するように構成した。
【0017】
そして、板状カバー部材32に開口部32aを形成することで開閉扉13の全体ではなく一部を覆う構成を採用したことにより、当該開口部32aの内部、つまり、筐体11のうち板状カバー部材32に覆われていない部分にスペースが生じる。そこで、本実施形態では、図4に示すように、この開口部32a内のスペースに、インバータ装置10に関する情報、例えば、装置の識別番号や製造番号などを記載したラベル10Aを貼付することが可能である。
【0018】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5および図6を参照して説明する。図5に示すように、本実施形態は、金属製の板状カバー部材42を2つの部材で構成した実施形態である。この板状カバー部材42は、特許請求の範囲に記載した板部材に相当する。
即ち、板状カバー部材42は、開口部42aを有する第1カバー部材42Aと、当該第1カバー部材42Aとは別体であり開口部42aを有しない第2カバー部材42Bとに分離して設けられている。この第1カバー部材42Aは、特許請求の範囲に記載した「薄肉部を覆う部材」に相当し、第2カバー部材42Bは、特許請求の範囲に記載した「薄肉部を覆わない部材」に相当する。
【0019】
第1カバー部材42Aは、開閉扉13のうち少なくとも薄肉部13aを覆うように取り付けられる。一方、第2カバー部材42Bは、箱状カバー部材21の開口部を塞ぐように取り付けられ、薄肉部13aおよび薄肉部13bを含む開閉扉13を覆わないように取り付けられる。なお、第1カバー部材42Aと第2カバー部材42Bは、止め具43によって相互に固定され、第2カバー部材42Bは、複数の止め具23によって箱状カバー部材21に固定される。
【0020】
この実施形態によっても、薄肉部13aの構造的な強度や電気的な絶縁性を確保することができ、TYPE1構造を採用する場合にUL規格の要求を満たすことができる。
また、板状カバー部材42を、薄肉部13aを覆う第1カバー部材42Aと薄肉部13aを覆わない第2カバー部材42Bとに分離して設けたので、図6に示すように、インバータ装置10とは外形や大きさが異なるインバータ装置100に対しても、第1カバー部材42Aを共通に用いることができる。なお、この場合、第2カバー部材および箱状カバー部材については、インバータ装置100の外形や大きさに応じた第2カバー部材42Cおよび箱状カバー部材44を用いる。なお、第2カバー部材42Cは、特許請求の範囲に記載した「薄肉部を覆わない部材」に相当する。
【0021】
(その他の実施形態)
本実施形態は、上述の各実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば、次のように変形または拡張することができる。
図7に示すように、開閉扉13に薄肉部が存在するか否かに関わらず、当該開閉扉13の全体を、開口部を有しない板状カバー部材52で覆う構成としてもよい。この板状カバー部材52は、特許請求の範囲に記載した板部材に相当する。
筐体11内の所定の部品は、上述の実施形態では供電部15を例示したが、これに限られるものではなく、構造的な強度や電気的な絶縁性を確保することが求められる部品であれば、その他の部品も含まれる。
【0022】
金属製の箱状カバー部材や金属性の板状カバー部材を構成する材料は、例えば、ステンレス、鉄、合金など種々の金属材料を採用することができる。
所定の規格としてUL規格を例示したが、本実施形態は、その他の規格を採用する場合にも適用可能である。
薄肉部を板部材で覆うことで、当該部分の板厚を、規格が要求する所定の板厚以上とするようにしてもよいし、所定の板厚以下とするようにしてもよい。
板状カバー部材に形成する開口部の形状は、矩形状に限られるものではなく、例えば、円形状、楕円形状、多角形状であってもよい。要は、板状カバー部材が筐体11内の所定の部品に対応する部分を覆うことができる形状となるのであれば、開口部の形状としては種々の形状を採用することができる。
【0023】
以上に説明した少なくとも何れか1つの実施形態によれば、インバータ装置は、筐体の一部に所定の規格により定められた板厚よりも薄い板厚である薄肉部を有しており、その薄肉部を金属製の板部材によって覆う構成である。この構成によれば、筐体の一部に板厚の薄い部分が存在しているとしても、所望の規格の要求を満たすことができる。
上述の各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
図面中、10はインバータ装置、10Aはラベル、11は筐体、13a,13bは薄肉部、15は供電部(所定の部品)、32,42,52は板状カバー部材(板部材)、42Aは第1カバー部材(薄肉部を覆う部材)、42B,42Cは第2カバー部材(薄肉部を覆わない部材)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の一部に所定の規格により定められた板厚よりも薄い板厚である薄肉部を有するインバータ装置において、
前記薄肉部を金属製の板部材によって覆ったことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記板部材は、前記薄肉部を覆う部材と前記薄肉部を覆わない部材とに分離して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記板部材は、前記薄肉部のうち前記筐体内の所定の部品に対応する部分を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記筐体のうち前記板部材に覆われていない部分に、前記インバータ装置に関する情報を記載したラベルを貼付することを特徴とする請求項3に記載のインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−55807(P2013−55807A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192725(P2011−192725)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(302038844)東芝シュネデール・インバータ株式会社 (78)
【Fターム(参考)】