インフレータ
【課題】 インフレータの設置環境温度に応じて発生ガスの温度を抑えて、発生ガスが導入される側のエアバッグのダメージを低減する。
【解決手段】 インフレータ内部に、ガス発生剤17が充填された燃焼空間15が形成されたハウジング10と、ハウジング10の先頭側空間に形成された噴出孔19と、先頭側空間と燃焼空間15とを区画するように収容されたフィルタ16とを備える。燃焼空間15とフィルタ16との間に、主オリフィス31と、追加オリフィスとを形成し、燃焼空間15内のガス圧力が設定圧力以下の場合、主オリフィス31のみからガスをフィルタ16側に通過させ、設定ガス圧力以上の場合、主オリフィス31と追加オリフィスとから通過させ、噴出ガス温度を低下させる。
【解決手段】 インフレータ内部に、ガス発生剤17が充填された燃焼空間15が形成されたハウジング10と、ハウジング10の先頭側空間に形成された噴出孔19と、先頭側空間と燃焼空間15とを区画するように収容されたフィルタ16とを備える。燃焼空間15とフィルタ16との間に、主オリフィス31と、追加オリフィスとを形成し、燃焼空間15内のガス圧力が設定圧力以下の場合、主オリフィス31のみからガスをフィルタ16側に通過させ、設定ガス圧力以上の場合、主オリフィス31と追加オリフィスとから通過させ、噴出ガス温度を低下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインフレータに係り、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等の、薄型のエアバッグモジュールに用いられ、噴出ガス温度を低下させることで、前記エアバッグの膨張時における展開出力を制御できるようにしたインフレータに関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置を展開させるために装備されるインフレータは、様々な設置環境において、噴出孔から適正な加圧ガスをほぼ一定な流量で噴出できるように、ガスの出力経路中に各種のスクリーンやフィルタを装着し、破裂板の破片を捕捉したり、ガス流の安定化を図る提案がなされている(特許文献1参照)。この特許文献1では、各種のフィルタを備えたインフレータのタンク試験結果(雰囲気温度23℃)をもとに、当該発明の有効性を確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のインフレータは、所定の設置環境温度(たとえば仕様温度として−40〜85℃)において、正常に動作することが要求されている。ところが、インフレータが正常動作した場合においても、環境温度差によってエアバッグ展開時の出力が変化することが、前記タンク試験等で確認されている。出願人が実施した試験結果によれば、インフレータが高温時(約80〜85℃)に動作した場合には常温時(23℃)に比べて、タンク出力が25%程度まで出力増加することが確認された。
【0005】
このため、従来のサイドエアバッグ、カーテンエアバッグ、ニーエアバッグ等では、高温時にインフレータが作動した際、常温時より高圧のガスがエアバッグ内に導入される。そのため、エアバッグ膨張時の信頼性確保のために、エアバッグ縫製を補強したり、高強度の縫製糸を使用したり、部分的にシール用補強材を追加する必要があった。このように補強部材、シール部材、特殊糸等の使用による材料コスト増、追加工程による製品コスト増等が問題となる。
【0006】
また、上述したように、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグは、搭載スペースが限られているため、薄型のエアバッグモジュールが求められている。このような要請に対して、補強部材、追加部材を付加するような対策は、部品の小型軽量化の方向に反し、商品競争力を低下させることとなる。
【0007】
したがって、エアバッグ側の補強対策を施すのでなく、インフレータ側でその設置環境温度に応じて、常温時との出力差を小さくすることが好ましいと考え、その点についての解析、開発を行った。インフレータ出力時における設置環境温度に応じてインフレータ内の圧力が変化(上昇)した際に、その圧力変化に応じてインフレータからのガス噴出量を制御することで、インフレータ内の火薬燃焼速度を低下させて発生ガスの温度を抑えるようにすれば、発生ガスが導入される側のエアバッグのダメージを低減することができる。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、ガス噴出量を調整して、インフレータ内の圧力調整を行って、噴出ガスの温度を低下させることで、通常の仕様のエアバッグに対しても膨張時において与えるダメージを小さくできるようにしたインフレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、内部に、ガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、前記燃焼空間とフィルタとの間に隔壁板を設け、該隔壁板に、第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定ガス圧力以上の場合、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とから通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。
【0009】
また、前記隔壁板に、第1のガス通過部と、該第1のガス通過部の周囲に第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、第2のガス通過部まで拡大してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。これにより、インフレータ内の圧力を確実に低下させることができ、噴出ガス温度も低下できるので、エアバッグへの負荷を抑えることができる。
【0010】
さらに、破裂板で閉塞された前記第1のガス通過部の周囲に、ノッチを介して第2のガス通過部を形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記燃焼空間内のガス圧力が設定ガス圧力以上の場合、前記ノッチを破断させて前記第1のガス通過部を第2のガス通過部まで拡径してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。これにより、簡易な構造により、ガス通過量を拡大できるので、インフレータ内の圧力を確実に低下させることができ、噴出ガス温度も低下できるので、エアバッグへの負荷を抑えることができる。
【0011】
前記隔壁板の前記燃焼空間側が、破裂板で閉塞された第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、前記第2のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とからガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。これにより、簡易な構造により、ガス通過量を増加させることができ、インフレータ内の圧力を確実に低下させることができ、噴出ガス温度も低下できるので、エアバッグへの負荷を抑えることができる。
【0012】
他の発明として、内部にガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間のハウジング側面に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、前記噴出孔は、ともに内面側が破裂板で閉塞された第1の噴出孔列と、第2の噴出孔列とが前記ハウジングの軸線方向に離れて形成され、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列のみからガスが噴出し、前記設定圧力以上の場合、前記第2の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列と第2の噴出孔列とからガスを噴出させ、噴出ガス温度を低下させるようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインフレータの内部構成、噴出孔列の例を示した断面図。
【図2】図1に示したインフレータの先頭管の構成例を示した斜視図。
【図3】図1に示したインフレータの先頭管、噴出孔列の構成例を示した拡大断面図。
【図4】図1に示したインフレータの通常温度環境における動作状態を示した模式説明図。
【図5】図1に示したインフレータの高温環境における動作状態を示した模式説明図。
【図6】他の発明のインフレータの内部構成、隔壁板の例を示した断面図。
【図7】図6に示した隔壁板の構成例を示した拡大断面図。
【図8】図7に示した隔壁板の変形例を示した断面図。
【図9】図6に示したインフレータの通常温度環境における動作状態を示した模式説明図。
【図10】図6に示したインフレータの高温環境における動作状態を示した模式説明図。
【図11】他の発明のインフレータの内部構成、隔壁板の例を示した断面図。
【図12】図1に示した隔壁板の構成例を示した斜視図。
【図13】図11に示したインフレータの通常温度環境における動作状態を示した模式説明図。
【図14】図11に示したインフレータの高温環境における動作状態を示した模式説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のインフレータの実施するための形態として、以下の複数の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図5は、実施例1の構成およびその動作状態を説明するための説明図である。図1は、サイドエアバッグ等のために装備される細長筒状のインフレータの断面図を示している。同図に示したように、インフレータ1のハウジング10は細長い円筒形状をなし、図中、ハウジング10の左端部には、内部にイニシエータ11を有する着火部12が設けられている。一方、ハウジング10の右端部には、先端が閉鎖したカップ状をなす先頭管20が嵌着されている。この先頭管20の周囲に、折り畳まれたエアバッグ(図示せず)の口元部が図示しない固定ボルト等を介して固定される。このインフレータ1全体は、図示しないリテーナを介して保持され、車体内の所定の収納位置に固定保持される。なお、ハウジング10の形状としては、図3(b)に示したように、先頭管20を用いず、先端部10aを閉塞させた単一管形状とすることもできる。
【0016】
ハウジング10の着火部12のカバー13の燃焼空間15側には複数の円孔13aが形成されている。イニシエータ11は、電極端子11aが外部に露出するようにホルダ14に保持され、装着されている。イニシエータ11の電極端子11aには、図示しないエアバッグ動作制御部(図示せず)からの着火電流が印加される。さらに燃焼空間15内には、ガス発生剤としてのプロペラント17が充填されている。本実施例では、一例として扁平なタブレット形状のプロペラント17が用いられている。
【0017】
さらに燃焼空間15内の先頭管20側には、フィルタ16が収容されている。このフィルタ16は、従来のインフレータ1と同様に、発生ガスに混在するスラグを除去する役割を果たすとともに、ガス温度の冷却効果も期待できる。本実施例のフィルタ16は、ハウジング10の内径に合致した、従来と同様の材質からなる金属メッシュあるいは細かくランダムに湾曲させたワイヤの束をプレス成形加工した筒状体からなる。フィルタ16の直径および長さは、インフレータ1の出力、ハウジング10の燃焼空間15の長さに応じて適宜設定される。
【0018】
ハウジングの先端に嵌着された先頭管20の側面には、断面A−A,B−B(図1(b))に示したように、それぞれ異なる孔径、ピッチに設定された発生ガスの噴出孔としてのオリフィス21,22が列設されている。本実施例では、断面A−Aには、周方向に等間隔(45°間隔)をあけて8個の円孔の主オリフィス21が、断面B−Bには、断面A−Aの主オリフィス21と同列位置で周方向に等間隔(45°間隔)をあけて8個の円孔の追加オリフィスが形成されている。主オリフィス21の孔径(φA)および個数は、上述したタンク試験等において、インフレータ1の常温の通常動作時での発生内圧で開口するように設定してある。追加オリフィス22は、インフレータ1内圧が環境温度が上昇した場合、その影響を受けて通常動作時より高圧になった際に、インフレータ1内圧を低下させるために機能する。したがって、追加オリフィス22の孔径(φB)および個数は、上述のタンク試験等のデータをもとに設定された限度圧力を超えたときに、追加オリフィス22が開口するように設定することが好ましい。なお、追加オリフィス22の開口条件は、開口位置(主オリフィスと同列、交互、所定角度ズレ等)、孔径及び個数を変化させて各種設定可能である。主オリフィス、追加オリフィスの孔径(φA,φB)の大小関係も、先頭管20での開口状況を想定して適宜決定できる。
【0019】
これら主オリフィス21と追加オリフィス22とが形成された先頭管20の内周面には、図2,図3各図に示したように、破裂板(バーストシム)が貼着されている。この破裂板は箔状の薄い金属プレート(シムプレート)からなり、この金属プレートを図2,図3に示したように筒状にして先頭管20の内周面に貼着することにより、主オリフィス21と追加オリフィス22は内面側から閉塞される。
【0020】
破裂板25の厚さは、通常の環境温度にいては、図4に示したように、インフレータ1の作動時に、先頭管20内で作用するインフレータ1内圧によって主オリフィス21を覆った箇所のみが裂け、主オリフィス21が開口状態となる程度の厚さに設定されている。さらに、環境温度が上昇した状態でインフレータ1が動作した場合、その温度影響を受けて通常動作時(図4参照)よりインフレータ1内圧が高圧になり、設定された限度圧力を越えると、図5各図に示したように、主オリフィス21に加え、追加オリフィス22の各開孔を覆う破裂板25も裂けて追加オリフィス22が開口する。主オリフィス21と追加オリフィス22とが開口することにより、オリフィスの開口総面積が増加し、ガス噴出量が増加してインフレータ1内圧が低下し、インフレータ1内の火薬の燃焼速度を制御(低下)させることができる。この結果、インフレータ1からの発生ガス温度が低下し、ガスが導入され、膨張するエアバッグに加わる負荷を軽減させることができる。
【0021】
なお、インフレータ1の出力増加は、設置環境の温度変化以外にも、搭載されたエアバッグ装置に加わる機械的衝撃等によっても生じる可能性があるため、このような作動状態においてもインフレータ1の出力増加を的確に抑制することが好ましい。
【実施例2】
【0022】
図6〜図10は、実施例2の構成およびその動作状態を説明した説明図である。図6は、実施例1の図1に対応した細長筒状のインフレータ1の断面図を示している。このインフレータ1は、図1に示したインフレータ1とほぼ同様のハウジング形状をなし、ハウジング10左端部内部には、図1に示した着火部12と同一の構成の着火部12が設けられている。一方、ハウジング10右端部は、実施例1と異なり、その先端10aがそのまま閉鎖し、噴出孔19が形成された先端部となっている。また、ハウジング10内の燃焼空間15のガス噴出側は隔壁板30が取り付けられ、さらにその先端側にフィルタ16が収容され、フィルタ16の先端側のハウジング10の側面にガス噴出孔19が形成されている。なお、ハウジング10の形状、構造としては、図3(a)に示したような先頭管20を用いたタイプにしてもよい。
【0023】
隔壁板30は、ハウジング10内径に合致した外径を有する金属製円板で、ハウジング10内の燃焼空間15とフィルタ16収容部とを区画する役割を果たすとともに、燃焼空間15で発生したガスのガス通過量を制御するオリフィスが形成されるベース板として機能する。この円板状の隔壁板30は、図7(断面図)に示したように、中央に円孔(φ1)からなる主オリフィス31と、その周縁に沿って切欠断面が略V字形をなしたノッチ32で区画された、円孔と同心状に形成された外径(φ2)からなるリング状部33と、周縁がハウジング10の一部の保持固定された、最外周部34とからなる。隔壁板30の燃焼空間15側には、主オリフィス31を塞ぎ、ノッチ32の位置の内側の範囲にわたり、円形状に加工したシムプレートを貼着してなる破裂板35が設けられている。隔壁板30の厚さは、各環境温度においてインフレータ1動作時での燃焼空間15の圧力の作用で変形したり、保持固定部から脱落することないように設定されている。隔壁板30の保持固定部への固定手段としては、ハウジング10内周にカシメ部を(図示例)形成したり、固定用突起(図示せず)を形成したりしてもよい。
【0024】
図9各図は、通常温度でのインフレータ1の動作状態を示している。インフレータ1が動作した状態で第1のガス通過部としての主オリフィス31が開口し、白抜き矢印で模式的に示したように、発生ガスは主オリフィス31を通過後、フィルタ16内でガス内に混在するスラグ等が除去されて、筒先端側のガス噴出孔から噴出する。
【0025】
本実施例でも、実施例1と同様に、環境温度が上昇した状態でインフレータ1が動作した場合、その温度影響を受けて通常動作時(図9参照)よりインフレータ1内圧が高圧になり、設定された限度圧力を越えると、図10(b)に示したように上昇した内圧によりノッチ32の断裂部32aが破断し、リング状部33が脱落し、第2のガス通過部としてのガス通過部はφ2となる。すなわち第1のガス通過部が拡径(拡大)し、第2の通過部となる。すなわちオリフィスの開口総面積が増加することにより、図10(a)に白抜き矢印で示したように、隔壁板30でのガス通過量が増加してインフレータ1内圧が低下し、インフレータ1内の火薬の燃焼速度を制御(低下)させることができる。この結果、インフレータ1からの発生ガス温度が低下する。エアバッグ(図示せず)にはハウジング10に設けられたガス噴出孔19から温度低下して噴出したガスが導入されるため、膨張するエアバッグに加わる負荷を軽減させることができる。また、ガスはフィルタ16全体を分散して通過するため、スラグ等を除去するとともに、一層の温度低下が期待できる。
【0026】
図8各図は、隔壁板30の変形例を示している。図8(a)は、円板状の隔壁版30と破裂板35の形状を説明するために、図7に示した隔壁板30を半割して示した概略斜視図である。図8(b)は図7に示した隔壁板30のノッチ32を燃焼空間15側に配置し、破裂板35を円孔の燃焼空間15側(図6)に貼着した例を示している。この場合、ノッチ32が完全破断しないで、所定の形状まで折り曲がった状態でも、隔壁板30でのガス通過量を増加させることができるので、ガス圧の増加に可変的に対応できる。図8(c)は、板の両面側からノッチ32を形成し、断裂部を板厚の中央付近に設けた例を示している。
【実施例3】
【0027】
図11〜図10は、実施例3の構成およびその動作状態を説明した説明図である。図11は、実施例2の図6に対応した細長筒状のインフレータ1の断面図を示している。このインフレータ1は、図6に示したインフレータ1とほぼ同様のハウジング10形状をなし、筒左端部内部には、図1に示した着火部12と同一の構成の着火部12が設けられている。一方、筒右端部は、実施例2と同様に、ハウジング10の先端がそのまま閉鎖した先頭部形状となっている。また、ハウジング10内の燃焼空間15のガス噴出側には隔壁板40が設けられ、隔壁板40に密着して先端側にフィルタ16が収容され、フィルタ16の先端側のハウジング10にガス噴出孔19が形成されている。なお、この実施例においても、ハウジング10の形状、構造として図3(a)に示したような先頭管20を用いたタイプにしてもよい。また、隔壁板40とフィルタ16との間は密着させずに、所定の隙間を空けて配置して、その部分にガス滞留空間(図示せず)を形成してもよい。
【0028】
隔壁板40は、実施例2と同様に、ハウジング10内径に合致した外径を有する金属製円板で、ハウジング10内の燃焼空間15とフィルタ16収容部とを区画する役割を果たすとともに、燃焼空間15で発生したガスのガス通過量を制御するオリフィスとして機能する。この円板状の隔壁板40は、図12に示したように、中央に円孔(φ1)からなる主オリフィス41が、その外周に沿って、8個の小径(φ3)の追加オリフィス42が同心状になして配置形成され、外周リングの周縁がハウジング10の一部に保持固定されている。隔壁板40の燃焼室側には、図11(b)、図12に示したように、主オリフィス41と追加オリフィス42とを塞ぐように、円形状に加工したシムプレートを貼着してなる破裂板45が設けられている。隔壁板40の厚さは、通常温度においてインフレータ1動作時での燃焼空間15の圧力の作用で変形したり、保持固定部から脱落することない厚さに設定されている。また、破裂板45の厚さは、インフレータ1動作時に所定のガス噴出圧に達した時点で、裂けて主オリフィス41が開口する程度に設定されている。隔壁板40のハウジング10への保持固定手段としては、実施例2と同様に各種手段が適用可能である。さらに、追加オリフィス42の開口条件は、開口位置、孔径及び個数に加え、破裂板45の厚さも因子として考慮することが好ましい。
【0029】
図13各図は、通常温度でのインフレータ1の動作状態を示している。インフレータ1が動作した状態で主オリフィス41のみが開口(同図(b)A−A断面)し、白抜き矢印で模式的に示したように、発生ガスは主オリフィス41を通過後、フィルタ16内でガス内に混在するスラグ等が除去されて、筒先端側のガス噴出孔19から噴出する。
【0030】
本実施例でも、実施例1,2と同様に、環境温度が上昇した状態でインフレータ1が動作した場合、その温度影響を受けて通常動作時(図13参照)よりインフレータ1内圧が高圧になり、設定された限度圧力を越えると、図14(b)に示したように、上昇した内圧に応じて、適当数の追加オリフィス42の破裂板45が裂けて追加オリフィス42が開口する。よって、ガス通過面積は、主オリフィス41と追加オリフィス42との和となり、ガス通過部が拡大、すなわちオリフィスの開口総面積が増加することにより、図14(a)に白抜き矢印で示したように、隔壁板40でのガス通過量が増加してインフレータ1内圧が低下し、インフレータ1内の火薬の燃焼速度を制御(低下)させることができる。この結果、インフレータ1からの発生ガス温度が低下する。エアバッグ(図示せず)にはハウジング10に設けられたガス噴出孔19から温度低下して噴出したガスが導入されるため、膨張するエアバッグに加わる負荷を軽減させることができる。また、ガスはフィルタ16全体を分散して通過するため、スラグ等を除去するとともに、一層の温度低下が期待できる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 インフレータ
10 ハウジング
15 燃焼空間
16 フィルタ
19 ガス噴出孔
21,22,31,41,42 オリフィス
30,40 隔壁板
32 ノッチ
25,35,45 破裂板
【技術分野】
【0001】
本発明はインフレータに係り、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等の、薄型のエアバッグモジュールに用いられ、噴出ガス温度を低下させることで、前記エアバッグの膨張時における展開出力を制御できるようにしたインフレータに関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置を展開させるために装備されるインフレータは、様々な設置環境において、噴出孔から適正な加圧ガスをほぼ一定な流量で噴出できるように、ガスの出力経路中に各種のスクリーンやフィルタを装着し、破裂板の破片を捕捉したり、ガス流の安定化を図る提案がなされている(特許文献1参照)。この特許文献1では、各種のフィルタを備えたインフレータのタンク試験結果(雰囲気温度23℃)をもとに、当該発明の有効性を確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のインフレータは、所定の設置環境温度(たとえば仕様温度として−40〜85℃)において、正常に動作することが要求されている。ところが、インフレータが正常動作した場合においても、環境温度差によってエアバッグ展開時の出力が変化することが、前記タンク試験等で確認されている。出願人が実施した試験結果によれば、インフレータが高温時(約80〜85℃)に動作した場合には常温時(23℃)に比べて、タンク出力が25%程度まで出力増加することが確認された。
【0005】
このため、従来のサイドエアバッグ、カーテンエアバッグ、ニーエアバッグ等では、高温時にインフレータが作動した際、常温時より高圧のガスがエアバッグ内に導入される。そのため、エアバッグ膨張時の信頼性確保のために、エアバッグ縫製を補強したり、高強度の縫製糸を使用したり、部分的にシール用補強材を追加する必要があった。このように補強部材、シール部材、特殊糸等の使用による材料コスト増、追加工程による製品コスト増等が問題となる。
【0006】
また、上述したように、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグは、搭載スペースが限られているため、薄型のエアバッグモジュールが求められている。このような要請に対して、補強部材、追加部材を付加するような対策は、部品の小型軽量化の方向に反し、商品競争力を低下させることとなる。
【0007】
したがって、エアバッグ側の補強対策を施すのでなく、インフレータ側でその設置環境温度に応じて、常温時との出力差を小さくすることが好ましいと考え、その点についての解析、開発を行った。インフレータ出力時における設置環境温度に応じてインフレータ内の圧力が変化(上昇)した際に、その圧力変化に応じてインフレータからのガス噴出量を制御することで、インフレータ内の火薬燃焼速度を低下させて発生ガスの温度を抑えるようにすれば、発生ガスが導入される側のエアバッグのダメージを低減することができる。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、ガス噴出量を調整して、インフレータ内の圧力調整を行って、噴出ガスの温度を低下させることで、通常の仕様のエアバッグに対しても膨張時において与えるダメージを小さくできるようにしたインフレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、内部に、ガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、前記燃焼空間とフィルタとの間に隔壁板を設け、該隔壁板に、第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定ガス圧力以上の場合、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とから通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。
【0009】
また、前記隔壁板に、第1のガス通過部と、該第1のガス通過部の周囲に第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、第2のガス通過部まで拡大してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。これにより、インフレータ内の圧力を確実に低下させることができ、噴出ガス温度も低下できるので、エアバッグへの負荷を抑えることができる。
【0010】
さらに、破裂板で閉塞された前記第1のガス通過部の周囲に、ノッチを介して第2のガス通過部を形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記燃焼空間内のガス圧力が設定ガス圧力以上の場合、前記ノッチを破断させて前記第1のガス通過部を第2のガス通過部まで拡径してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。これにより、簡易な構造により、ガス通過量を拡大できるので、インフレータ内の圧力を確実に低下させることができ、噴出ガス温度も低下できるので、エアバッグへの負荷を抑えることができる。
【0011】
前記隔壁板の前記燃焼空間側が、破裂板で閉塞された第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、前記第2のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とからガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする。これにより、簡易な構造により、ガス通過量を増加させることができ、インフレータ内の圧力を確実に低下させることができ、噴出ガス温度も低下できるので、エアバッグへの負荷を抑えることができる。
【0012】
他の発明として、内部にガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間のハウジング側面に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、前記噴出孔は、ともに内面側が破裂板で閉塞された第1の噴出孔列と、第2の噴出孔列とが前記ハウジングの軸線方向に離れて形成され、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列のみからガスが噴出し、前記設定圧力以上の場合、前記第2の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列と第2の噴出孔列とからガスを噴出させ、噴出ガス温度を低下させるようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインフレータの内部構成、噴出孔列の例を示した断面図。
【図2】図1に示したインフレータの先頭管の構成例を示した斜視図。
【図3】図1に示したインフレータの先頭管、噴出孔列の構成例を示した拡大断面図。
【図4】図1に示したインフレータの通常温度環境における動作状態を示した模式説明図。
【図5】図1に示したインフレータの高温環境における動作状態を示した模式説明図。
【図6】他の発明のインフレータの内部構成、隔壁板の例を示した断面図。
【図7】図6に示した隔壁板の構成例を示した拡大断面図。
【図8】図7に示した隔壁板の変形例を示した断面図。
【図9】図6に示したインフレータの通常温度環境における動作状態を示した模式説明図。
【図10】図6に示したインフレータの高温環境における動作状態を示した模式説明図。
【図11】他の発明のインフレータの内部構成、隔壁板の例を示した断面図。
【図12】図1に示した隔壁板の構成例を示した斜視図。
【図13】図11に示したインフレータの通常温度環境における動作状態を示した模式説明図。
【図14】図11に示したインフレータの高温環境における動作状態を示した模式説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のインフレータの実施するための形態として、以下の複数の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図5は、実施例1の構成およびその動作状態を説明するための説明図である。図1は、サイドエアバッグ等のために装備される細長筒状のインフレータの断面図を示している。同図に示したように、インフレータ1のハウジング10は細長い円筒形状をなし、図中、ハウジング10の左端部には、内部にイニシエータ11を有する着火部12が設けられている。一方、ハウジング10の右端部には、先端が閉鎖したカップ状をなす先頭管20が嵌着されている。この先頭管20の周囲に、折り畳まれたエアバッグ(図示せず)の口元部が図示しない固定ボルト等を介して固定される。このインフレータ1全体は、図示しないリテーナを介して保持され、車体内の所定の収納位置に固定保持される。なお、ハウジング10の形状としては、図3(b)に示したように、先頭管20を用いず、先端部10aを閉塞させた単一管形状とすることもできる。
【0016】
ハウジング10の着火部12のカバー13の燃焼空間15側には複数の円孔13aが形成されている。イニシエータ11は、電極端子11aが外部に露出するようにホルダ14に保持され、装着されている。イニシエータ11の電極端子11aには、図示しないエアバッグ動作制御部(図示せず)からの着火電流が印加される。さらに燃焼空間15内には、ガス発生剤としてのプロペラント17が充填されている。本実施例では、一例として扁平なタブレット形状のプロペラント17が用いられている。
【0017】
さらに燃焼空間15内の先頭管20側には、フィルタ16が収容されている。このフィルタ16は、従来のインフレータ1と同様に、発生ガスに混在するスラグを除去する役割を果たすとともに、ガス温度の冷却効果も期待できる。本実施例のフィルタ16は、ハウジング10の内径に合致した、従来と同様の材質からなる金属メッシュあるいは細かくランダムに湾曲させたワイヤの束をプレス成形加工した筒状体からなる。フィルタ16の直径および長さは、インフレータ1の出力、ハウジング10の燃焼空間15の長さに応じて適宜設定される。
【0018】
ハウジングの先端に嵌着された先頭管20の側面には、断面A−A,B−B(図1(b))に示したように、それぞれ異なる孔径、ピッチに設定された発生ガスの噴出孔としてのオリフィス21,22が列設されている。本実施例では、断面A−Aには、周方向に等間隔(45°間隔)をあけて8個の円孔の主オリフィス21が、断面B−Bには、断面A−Aの主オリフィス21と同列位置で周方向に等間隔(45°間隔)をあけて8個の円孔の追加オリフィスが形成されている。主オリフィス21の孔径(φA)および個数は、上述したタンク試験等において、インフレータ1の常温の通常動作時での発生内圧で開口するように設定してある。追加オリフィス22は、インフレータ1内圧が環境温度が上昇した場合、その影響を受けて通常動作時より高圧になった際に、インフレータ1内圧を低下させるために機能する。したがって、追加オリフィス22の孔径(φB)および個数は、上述のタンク試験等のデータをもとに設定された限度圧力を超えたときに、追加オリフィス22が開口するように設定することが好ましい。なお、追加オリフィス22の開口条件は、開口位置(主オリフィスと同列、交互、所定角度ズレ等)、孔径及び個数を変化させて各種設定可能である。主オリフィス、追加オリフィスの孔径(φA,φB)の大小関係も、先頭管20での開口状況を想定して適宜決定できる。
【0019】
これら主オリフィス21と追加オリフィス22とが形成された先頭管20の内周面には、図2,図3各図に示したように、破裂板(バーストシム)が貼着されている。この破裂板は箔状の薄い金属プレート(シムプレート)からなり、この金属プレートを図2,図3に示したように筒状にして先頭管20の内周面に貼着することにより、主オリフィス21と追加オリフィス22は内面側から閉塞される。
【0020】
破裂板25の厚さは、通常の環境温度にいては、図4に示したように、インフレータ1の作動時に、先頭管20内で作用するインフレータ1内圧によって主オリフィス21を覆った箇所のみが裂け、主オリフィス21が開口状態となる程度の厚さに設定されている。さらに、環境温度が上昇した状態でインフレータ1が動作した場合、その温度影響を受けて通常動作時(図4参照)よりインフレータ1内圧が高圧になり、設定された限度圧力を越えると、図5各図に示したように、主オリフィス21に加え、追加オリフィス22の各開孔を覆う破裂板25も裂けて追加オリフィス22が開口する。主オリフィス21と追加オリフィス22とが開口することにより、オリフィスの開口総面積が増加し、ガス噴出量が増加してインフレータ1内圧が低下し、インフレータ1内の火薬の燃焼速度を制御(低下)させることができる。この結果、インフレータ1からの発生ガス温度が低下し、ガスが導入され、膨張するエアバッグに加わる負荷を軽減させることができる。
【0021】
なお、インフレータ1の出力増加は、設置環境の温度変化以外にも、搭載されたエアバッグ装置に加わる機械的衝撃等によっても生じる可能性があるため、このような作動状態においてもインフレータ1の出力増加を的確に抑制することが好ましい。
【実施例2】
【0022】
図6〜図10は、実施例2の構成およびその動作状態を説明した説明図である。図6は、実施例1の図1に対応した細長筒状のインフレータ1の断面図を示している。このインフレータ1は、図1に示したインフレータ1とほぼ同様のハウジング形状をなし、ハウジング10左端部内部には、図1に示した着火部12と同一の構成の着火部12が設けられている。一方、ハウジング10右端部は、実施例1と異なり、その先端10aがそのまま閉鎖し、噴出孔19が形成された先端部となっている。また、ハウジング10内の燃焼空間15のガス噴出側は隔壁板30が取り付けられ、さらにその先端側にフィルタ16が収容され、フィルタ16の先端側のハウジング10の側面にガス噴出孔19が形成されている。なお、ハウジング10の形状、構造としては、図3(a)に示したような先頭管20を用いたタイプにしてもよい。
【0023】
隔壁板30は、ハウジング10内径に合致した外径を有する金属製円板で、ハウジング10内の燃焼空間15とフィルタ16収容部とを区画する役割を果たすとともに、燃焼空間15で発生したガスのガス通過量を制御するオリフィスが形成されるベース板として機能する。この円板状の隔壁板30は、図7(断面図)に示したように、中央に円孔(φ1)からなる主オリフィス31と、その周縁に沿って切欠断面が略V字形をなしたノッチ32で区画された、円孔と同心状に形成された外径(φ2)からなるリング状部33と、周縁がハウジング10の一部の保持固定された、最外周部34とからなる。隔壁板30の燃焼空間15側には、主オリフィス31を塞ぎ、ノッチ32の位置の内側の範囲にわたり、円形状に加工したシムプレートを貼着してなる破裂板35が設けられている。隔壁板30の厚さは、各環境温度においてインフレータ1動作時での燃焼空間15の圧力の作用で変形したり、保持固定部から脱落することないように設定されている。隔壁板30の保持固定部への固定手段としては、ハウジング10内周にカシメ部を(図示例)形成したり、固定用突起(図示せず)を形成したりしてもよい。
【0024】
図9各図は、通常温度でのインフレータ1の動作状態を示している。インフレータ1が動作した状態で第1のガス通過部としての主オリフィス31が開口し、白抜き矢印で模式的に示したように、発生ガスは主オリフィス31を通過後、フィルタ16内でガス内に混在するスラグ等が除去されて、筒先端側のガス噴出孔から噴出する。
【0025】
本実施例でも、実施例1と同様に、環境温度が上昇した状態でインフレータ1が動作した場合、その温度影響を受けて通常動作時(図9参照)よりインフレータ1内圧が高圧になり、設定された限度圧力を越えると、図10(b)に示したように上昇した内圧によりノッチ32の断裂部32aが破断し、リング状部33が脱落し、第2のガス通過部としてのガス通過部はφ2となる。すなわち第1のガス通過部が拡径(拡大)し、第2の通過部となる。すなわちオリフィスの開口総面積が増加することにより、図10(a)に白抜き矢印で示したように、隔壁板30でのガス通過量が増加してインフレータ1内圧が低下し、インフレータ1内の火薬の燃焼速度を制御(低下)させることができる。この結果、インフレータ1からの発生ガス温度が低下する。エアバッグ(図示せず)にはハウジング10に設けられたガス噴出孔19から温度低下して噴出したガスが導入されるため、膨張するエアバッグに加わる負荷を軽減させることができる。また、ガスはフィルタ16全体を分散して通過するため、スラグ等を除去するとともに、一層の温度低下が期待できる。
【0026】
図8各図は、隔壁板30の変形例を示している。図8(a)は、円板状の隔壁版30と破裂板35の形状を説明するために、図7に示した隔壁板30を半割して示した概略斜視図である。図8(b)は図7に示した隔壁板30のノッチ32を燃焼空間15側に配置し、破裂板35を円孔の燃焼空間15側(図6)に貼着した例を示している。この場合、ノッチ32が完全破断しないで、所定の形状まで折り曲がった状態でも、隔壁板30でのガス通過量を増加させることができるので、ガス圧の増加に可変的に対応できる。図8(c)は、板の両面側からノッチ32を形成し、断裂部を板厚の中央付近に設けた例を示している。
【実施例3】
【0027】
図11〜図10は、実施例3の構成およびその動作状態を説明した説明図である。図11は、実施例2の図6に対応した細長筒状のインフレータ1の断面図を示している。このインフレータ1は、図6に示したインフレータ1とほぼ同様のハウジング10形状をなし、筒左端部内部には、図1に示した着火部12と同一の構成の着火部12が設けられている。一方、筒右端部は、実施例2と同様に、ハウジング10の先端がそのまま閉鎖した先頭部形状となっている。また、ハウジング10内の燃焼空間15のガス噴出側には隔壁板40が設けられ、隔壁板40に密着して先端側にフィルタ16が収容され、フィルタ16の先端側のハウジング10にガス噴出孔19が形成されている。なお、この実施例においても、ハウジング10の形状、構造として図3(a)に示したような先頭管20を用いたタイプにしてもよい。また、隔壁板40とフィルタ16との間は密着させずに、所定の隙間を空けて配置して、その部分にガス滞留空間(図示せず)を形成してもよい。
【0028】
隔壁板40は、実施例2と同様に、ハウジング10内径に合致した外径を有する金属製円板で、ハウジング10内の燃焼空間15とフィルタ16収容部とを区画する役割を果たすとともに、燃焼空間15で発生したガスのガス通過量を制御するオリフィスとして機能する。この円板状の隔壁板40は、図12に示したように、中央に円孔(φ1)からなる主オリフィス41が、その外周に沿って、8個の小径(φ3)の追加オリフィス42が同心状になして配置形成され、外周リングの周縁がハウジング10の一部に保持固定されている。隔壁板40の燃焼室側には、図11(b)、図12に示したように、主オリフィス41と追加オリフィス42とを塞ぐように、円形状に加工したシムプレートを貼着してなる破裂板45が設けられている。隔壁板40の厚さは、通常温度においてインフレータ1動作時での燃焼空間15の圧力の作用で変形したり、保持固定部から脱落することない厚さに設定されている。また、破裂板45の厚さは、インフレータ1動作時に所定のガス噴出圧に達した時点で、裂けて主オリフィス41が開口する程度に設定されている。隔壁板40のハウジング10への保持固定手段としては、実施例2と同様に各種手段が適用可能である。さらに、追加オリフィス42の開口条件は、開口位置、孔径及び個数に加え、破裂板45の厚さも因子として考慮することが好ましい。
【0029】
図13各図は、通常温度でのインフレータ1の動作状態を示している。インフレータ1が動作した状態で主オリフィス41のみが開口(同図(b)A−A断面)し、白抜き矢印で模式的に示したように、発生ガスは主オリフィス41を通過後、フィルタ16内でガス内に混在するスラグ等が除去されて、筒先端側のガス噴出孔19から噴出する。
【0030】
本実施例でも、実施例1,2と同様に、環境温度が上昇した状態でインフレータ1が動作した場合、その温度影響を受けて通常動作時(図13参照)よりインフレータ1内圧が高圧になり、設定された限度圧力を越えると、図14(b)に示したように、上昇した内圧に応じて、適当数の追加オリフィス42の破裂板45が裂けて追加オリフィス42が開口する。よって、ガス通過面積は、主オリフィス41と追加オリフィス42との和となり、ガス通過部が拡大、すなわちオリフィスの開口総面積が増加することにより、図14(a)に白抜き矢印で示したように、隔壁板40でのガス通過量が増加してインフレータ1内圧が低下し、インフレータ1内の火薬の燃焼速度を制御(低下)させることができる。この結果、インフレータ1からの発生ガス温度が低下する。エアバッグ(図示せず)にはハウジング10に設けられたガス噴出孔19から温度低下して噴出したガスが導入されるため、膨張するエアバッグに加わる負荷を軽減させることができる。また、ガスはフィルタ16全体を分散して通過するため、スラグ等を除去するとともに、一層の温度低下が期待できる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 インフレータ
10 ハウジング
15 燃焼空間
16 フィルタ
19 ガス噴出孔
21,22,31,41,42 オリフィス
30,40 隔壁板
32 ノッチ
25,35,45 破裂板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に、ガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、
前記燃焼空間とフィルタとの間に隔壁板を設け、該隔壁板に、第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定ガス圧力以上の場合、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とから通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とするインフレータ。
【請求項2】
前記隔壁板に、第1のガス通過部と、該第1のガス通過部の周囲に第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、第2のガス通過部まで拡大してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする請求項1に記載のインフレータ。
【請求項3】
破裂板で閉塞された前記第1のガス通過部の周囲に、ノッチを介して第2のガス通過部を形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記燃焼空間内のガス圧力が設定ガス圧力以上の場合、前記ノッチを破断させて前記第1のガス通過部を第2のガス通過部まで拡径してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする請求項2に記載のインフレータ。
【請求項4】
前記隔壁板の前記燃焼空間側が、破裂板で閉塞された第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、前記第2のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とからガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする請求項1に記載のインフレータ。
【請求項5】
内部にガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間のハウジング側面に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、
前記噴出孔は、ともに内面側が破裂板で閉塞された第1の噴出孔列と、第2の噴出孔列とが前記ハウジングの軸線方向に離れて形成され、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列のみからガスが噴出し、前記設定圧力以上の場合、前記第2の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列と第2の噴出孔列とからガスを噴出させ、噴出ガス温度を低下させるようにしたことを特徴とするインフレータ。
【請求項1】
内部に、ガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、
前記燃焼空間とフィルタとの間に隔壁板を設け、該隔壁板に、第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定ガス圧力以上の場合、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とから通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とするインフレータ。
【請求項2】
前記隔壁板に、第1のガス通過部と、該第1のガス通過部の周囲に第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、第2のガス通過部まで拡大してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする請求項1に記載のインフレータ。
【請求項3】
破裂板で閉塞された前記第1のガス通過部の周囲に、ノッチを介して第2のガス通過部を形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記燃焼空間内のガス圧力が設定ガス圧力以上の場合、前記ノッチを破断させて前記第1のガス通過部を第2のガス通過部まで拡径してガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする請求項2に記載のインフレータ。
【請求項4】
前記隔壁板の前記燃焼空間側が、破裂板で閉塞された第1のガス通過部と第2のガス通過部とを形成し、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部のみからガスを前記フィルタ側に通過させ、前記設定圧力以上の場合、前記第2のガス通過部の破裂板を開口させ、前記第1のガス通過部と第2のガス通過部とからガスを通過させ、噴出ガス温度を低下させたことを特徴とする請求項1に記載のインフレータ。
【請求項5】
内部にガス発生剤が充填された燃焼空間が形成されたハウジングと、前記ハウジングの先頭側空間のハウジング側面に形成された噴出孔と、前記先頭側空間と前記燃焼空間とを区画するように収容されたフィルタとを備えてなるインフレータであって、
前記噴出孔は、ともに内面側が破裂板で閉塞された第1の噴出孔列と、第2の噴出孔列とが前記ハウジングの軸線方向に離れて形成され、前記燃焼空間内のガス圧力が設定圧力以下の場合、前記第1の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列のみからガスが噴出し、前記設定圧力以上の場合、前記第2の噴出孔列の破裂板を開口させ、前記第1の噴出孔列と第2の噴出孔列とからガスを噴出させ、噴出ガス温度を低下させるようにしたことを特徴とするインフレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−43595(P2013−43595A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183801(P2011−183801)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】
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