説明

インプリント装置、および、物品の製造方法

【課題】スループットの点で有利なインプリント装置を提供する。
【解決手段】インプリント装置1は、保持部4を有し、保持部4に保持された基板11上のインプリント材13を型9により成形して硬化させ、離型して、基板11上にパターンを形成するインプリント処理を行う。このインプリント装置1は、型9により成形されたインプリント材13を離型の前に硬化させる第1硬化処理を実施する第1硬化手段2と、離型の後に保持部4から搬出された基板11上のインプリント材13を硬化させる第2硬化処理を実施する第2硬化手段6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および、物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加え、基板上の未硬化樹脂をモールド(型)で成形し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を採用したインプリント装置では、まず、基板(ウエハ)上のインプリント領域であるショットに紫外線硬化樹脂(インプリント樹脂、光硬化性樹脂)を塗布する。次に、この樹脂(未硬化樹脂)をモールドにより成形する。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させたうえで離型することにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
このインプリント装置では、あるショットにて樹脂が完全に硬化した後に離型を行い、その後、他のショットに対するインプリント処理に移行するのが一般的である。これに対して、一連のインプリント処理工程の時間を短縮させるために、あるショットにて樹脂が完全に硬化するのを待たず、半硬化の状態で離型を行い、他のショットに対するインプリント処理に移行する方法がある。例えば、特許文献1は、ある領域にて賦型フィルム(型)と基板上の未硬化樹脂とを接触させる押型を行った後、樹脂が完全に硬化する前に離型を行うポリエステル化粧板の製造方法を開示している。ただし、この製造方法は、赤外線を照射することにより樹脂を硬化させる熱サイクル法を採用している。また、特許文献2は、光照射を実施して重合を開始させた後、樹脂の重合が完了する前にモールドを離型させるインプリント方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−117201号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0230959号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1および2のように、半硬化の状態で離型を行う方法では、離型後の樹脂に対して再度光照射を実施して完全に硬化させる必要がある。しかしながら、特許文献1および2では、その後の光照射をどのような形態で実施するかについては言及されていない。
【0006】
本発明は、スループットの点で有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、保持部を有し、該保持部に保持された基板上のインプリント材を型により成形して硬化させ、離型して、基板上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、型により成形されたインプリント材を離型の前に硬化させる第1硬化処理を実施する第1硬化手段と、離型の後に保持部から搬出された基板上のインプリント材を硬化させる第2硬化処理を実施する第2硬化手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スループットの点で有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
【図2】光硬化性樹脂の受光量に対する硬さの変化を示すグラフである。
【図3】本発明の第2実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
【図5】第3実施形態に係る光照射モジュールの構成を示す図である。
【図6】第3実施形態に係る光照射モジュールの他の構成を示す図である。
【図7】第3実施形態に係る光照射モジュールの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の一実施形態に係るインプリント装置の構成について説明する。図1は、本実施形態のインプリント装置の構成を示す図である。このインプリント装置は、半導体デバイスなどのデバイス製造に使用され、被処理体であるウエハ上(基板上)のインプリント材(典型的には未硬化樹脂)をモールド(型)で成形し、パターン(典型的には樹脂のパターン)を基板上に形成する装置である。なお、本実施形態のインプリント装置は、光硬化法を採用するものとする。また、以下の図においては、基板上の樹脂に対して紫外線を照射する各照射部の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内に互いに直交するX軸およびY軸を取っている。このインプリント装置1は、第1光照射部2と、モールド保持部3と、ウエハステージ4と、塗布部5と、第2光照射部6と、基板搬送部7と、制御部8とを備える。
【0012】
第1光照射部2は、モールド9とウエハ11上の樹脂とを接触させる押型処理の後に、樹脂を硬化させる第1硬化処理として、モールド9に対して紫外線10を照射する光照射装置(第1硬化手段)である。この第1光照射部2は、不図示であるが、光源と、該光源から射出される紫外線10を被照射面となる後述の凹凸パターン9aに対して所定の形状で均一に照射するための複数の光学素子とから構成される。特に、第1光照射部2による光の照射領域(照射範囲)は、凹凸パターン9aの領域と同程度、または凹凸パターン9aの領域よりもわずかに大きい広い領域であることが望ましい。これは、照射領域を必要最小限とすることで、照射に伴う熱に起因してモールド9またはウエハ11が膨張し、樹脂に転写されるパターンに位置ズレや歪みが発生することを抑えるためである。加えて、ウエハ11などで反射した紫外線10が後述の塗布部5に到達し、塗布部5の吐出部に残留した樹脂を硬化させてしまうことで後の塗布部の動作に異常が生じることを防止するためでもある。ここで、光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザーまたは発光ダイオードなどが採用可能である。なお、この光源は、被受光体である樹脂の特性に応じて適宜選択されるが、本発明は、光源の種類、数、または波長などにより限定されるものではない。また、モールド9は、ウエハ11に対向する面に所定のパターン(例えば、回路パターンに対応した凹凸パターン9a)が3次元状に形成された型である。なお、モールド9の材質は、紫外線を透過させることが可能な石英などである。
【0013】
モールド保持部(型保持部)3は、真空吸着力や静電力によりモールド9を引きつけて保持する型保持手段である。このモールド保持部3は、不図示であるが、モールドチャックと、ウエハ11上に塗布された紫外線硬化樹脂にモールド9を押し付けるためにモールドチャックをZ軸方向に駆動するモールド駆動機構とを含む。なお、インプリント装置1における押型および離型の各動作は、このようにモールド9をZ方向に移動させることで実現してもよいが、例えば、ウエハステージ4(ウエハ11)をZ方向に移動させることで実現してもよく、または、その両方を移動させてもよい。
【0014】
ウエハステージ4は、ウエハ11を例えば真空吸着により保持し、かつ、XY平面内を移動可能とする保持部である。ここで、ウエハ11は、例えば単結晶シリコンからなる被処理体であり、この被処理面には、モールド9により成形される紫外線硬化樹脂(以下、単に「樹脂」と表記する)が塗布される。また、インプリント装置1は、ウエハステージ4の位置決めのために各種計測を行う計測器12を備える。後述の制御部8は、この計測器12で計測された情報に基づいてウエハステージ4の位置決めを制御する。
【0015】
塗布部5は、ウエハ11上に樹脂(未硬化樹脂)13を塗布する塗布手段である。ここで、樹脂13は、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂であって、半導体デバイスの種類などにより適宜選択される。なお、塗布部5は、図1に示すようにインプリント装置1の内部に設置せず、別途外部に塗布装置を準備し、この塗布装置により予め樹脂を塗布したウエハ11をインプリント装置1の内部に導入する構成もあり得る。この構成によれば、インプリント装置1の内部での塗布工程がなくなるため、インプリント装置1での処理の迅速化が可能となる。また、塗布部5が不要となることから、インプリント装置1全体としての製造コストを抑えることができる。
【0016】
第2光照射部6は、モールド9と樹脂13とが非接触となったとき、すなわち、モールド9と樹脂13とを引き離す離型処理の後に、再度、樹脂13を硬化させる第2硬化処理としてウエハ11に対して紫外線14を照射する光照射装置(第2硬化手段)である。この第2光照射部6が有する光源は、第1光照射部6が有する光源と同様に高圧水銀ランプなどが採用可能である。なお、この第2光照射部6については、以下で詳説する。
【0017】
基板搬送部7は、インプリント装置1の外部、またはインプリント装置1の内部に設置された基板収容部などからウエハステージ4へウエハ11を搬送する搬送手段である。なお、本実施形態のインプリント装置1では、基板搬送部7を1つ設置するものとしているが、生産性を高めるために、ウエハ11の供給(搬入)と回収(搬出)とをそれぞれ行う2つの基板搬送部を設置する構成もあり得る。
【0018】
制御部8は、インプリント装置1の各構成要素の動作および調整などを制御し得る。この制御部8は、例えば、コンピュータなどで構成され、インプリント装置1の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムなどにしたがって各構成要素の制御を実行し得る。本実施形態では、制御部8は、モールド保持部3やウエハステージ4などの動作に加え、少なくとも第1光照射部2および第2光照射部6による紫外線照射を制御する。なお、制御部8は、インプリント装置1の他の部分と一体で構成してもよいし、インプリント装置1の他の部分とは別の場所に設置してもよい。
【0019】
次に、インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。まず、制御部8は、基板搬送部7によりウエハ11をウエハステージ4に搬送し、このウエハ11を載置および固定させた後、計測器12にウエハ11に対するアライメント計測を実施させる。次に、制御部8は、ウエハステージ4を塗布部5の塗布位置へ移動させ、その後、塗布部5は、塗布工程としてウエハ11の所定のショット(インプリント領域)に樹脂(未硬化樹脂)13を塗布する。次に、制御部8は、ウエハ11上の当該ショットがモールド9の直下に位置するように、ウエハステージ4を移動させる。次に、制御部8は、モールド9とウエハ11上の当該ショットとの位置合わせ、および不図示の倍率補正機構によるモールド9の倍率補正などを実施した後、モールド駆動機構を駆動させ、ウエハ11上の樹脂13にモールド9を押し付ける(押型工程)。このとき、樹脂13は、押型によりモールド9に形成された凹凸パターン9aの凹部に充填される。この状態で、第1光照射部2は、第1硬化処理(第1硬化工程)としてモールド9の背面(上面)から紫外線10を照射して、モールド9を透過した紫外線10により樹脂13を硬化させる。ただし、この第1硬化処理では、樹脂13を完全に硬化させるまで紫外線10を照射することはせず、制御部8は、樹脂13が半硬化の状態のまま、モールド駆動機構を再駆動させ、モールド9をウエハ11から引き離す(離型工程)。
【0020】
図2は、光照射による受光量Eに対する光硬化性樹脂の硬度Hを示すグラフである。図2に示すように、硬度Hは、受光量Eの増加と共に増加し、受光量Es以上では硬度Hsからほとんど変化しなくなる。この硬度がHsからほとんど変化しなくなった状態を以下「完全硬化状態」と呼ぶ。一方、硬度Hが、モールドと樹脂とを離型させても樹脂に形成されたパターン形状が維持される最低限の硬度Hr(<Hs)よりも低いと、離型後に樹脂が流動してパターン形状が壊れてしまう。すなわち、硬度HがHr≦H<Hsの範囲にあれば、離型を実施しても樹脂のパターン形状が維持される。この硬度HがHr≦H<Hsの範囲にある状態を以下「半硬化状態」と呼ぶ。この場合、硬度HをHrとするのに必要な受光量をEr(<Es)とすると、樹脂を半硬化状態にすることができる受光量Eの範囲は、Er≦E<Esとなる。このように、離型した際に樹脂に形成されたパターン形状が維持されるためには、樹脂を必ずしも完全硬化状態にする必要はなく、半硬化状態でもよい。したがって、樹脂をこの半硬化状態で離型することにより、完全硬化状態で離型させるよりも光の照射時間を短くすることができる。
【0021】
しかしながら、樹脂を半硬化状態としたまま、その後の半導体デバイス製造工程、例えばエッチング工程に移行すると、エッチング耐性などに影響が出る場合がある。そこで、インプリント装置1では、第2光照射部6は、第2硬化処理として、離型された樹脂13に対して総受光量EtotalがEs≦Etotalとなるように紫外線14の追加照射(第2硬化工程)を実施することで、最終的に樹脂13を完全硬化状態とする。この場合、まず、ウエハ11上の全てのショットに対して半硬化状態でのパターン形成工程が完了した後、制御部8は、基板搬送部7により処理済みのウエハ11を回収させ、ウエハステージ4に対して次に処理されるウエハ11を供給する。次に、制御部8は、回収したウエハ11を第2光照射部6の照射領域に搬送し、その照射領域下に位置したウエハ11に対して光照射を実施させることで、樹脂13を完全硬化状態とする。これにより、ウエハ11上の各ショットの表面には、凹凸パターン9aに倣った完全硬化状態の樹脂13の層が形成される。一方、ウエハステージ4上には、次に処理されるウエハ11が基板搬送部7により供給されている。したがって、インプリント装置1は、第2光照射部6によりウエハ11上の樹脂13に追加照射を実施している間に、ウエハステージ4上のウエハ11に対してパターン形成工程を実施することができる。すなわち、インプリント装置1は、1つの装置にて、押型処理、第1硬化処理(半硬化工程)、および離型処理の一連のパターン形成工程と、半硬化状態の樹脂を完全硬化状態とする第2硬化処理(完全硬化工程)とを平行して実施することができる。
【0022】
ここで、第2光照射部6による照射領域は、第1光照射部2による照射領域と同様、すなわち、凹凸パターン9aの領域と同程度の領域としてもよいが、望ましくは、より広い領域、例えば、ウエハ11全体を一括して照射可能な領域とするのがよい。また、第2光照射部6が照射する光の強度は、第1光照射部2による光の強度と同程度としてもよいが、望ましくは、第1光照射部6による光の強度よりも強い強度とするのがよい。これは、第2光照射部6による追加照射を狭い照射領域または弱い光強度で実施することによる生産性の低下を避けるためである。なお、第2光照射部6の照射領域は、例えばウエハ11の直径と同程度、またはそれ以上の長さを有するスリット形状とする構成もあり得る。このような第2光照射部6を、上記のように基板搬送部7がウエハ11を回収する搬送経路上に配置することで、第2光照射部6は、ウエハ11の回収と並行してウエハ11の表面全体に効率良く追加照射を行うことができる。さらに、第2光照射部6は、樹脂が完全硬化状態になるように、すなわち、樹脂の受光量EがEs以上になるように光を照射できればよいので照射量の制御には高い精度を必要としない。したがって、第2光照射部6は、高価な光学素子などの構成要素を用いず、第1光照射部6よりも簡素な構成とすれば、インプリント装置1全体の製造コストを抑えることもできる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、半硬化状態のインプリント材の硬化処理を、基板保持部(ウエハステージ)からの基板の搬出後に(好ましくは、他の処理と並行して)行うことで生産性を向上させることができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るインプリント装置について説明する。図3は、本実施形態のインプリント装置20の構成を示す図である。なお、図3において、図1におけるものと同一の構成要素には同一の符号を付し、説明は省略する。本実施形態のインプリント装置20の特徴は、第1実施形態のウエハステージ4に対応する第1ウエハステージ(第1基板保持部)21と、もう1つの第2ウエハステージ(第2基板保持部)22を有し、並行してウエハを処理することができる点にある。第1ウエハステージ21と第2ウエハステージ22とは、モールド保持部3の下と、第2光照射部6の下とに交互に移動可能である。また、インプリント装置20は、第2光照射部6に隣接してウエハに対するアライメント計測を行う計測器23を有する。さらに、第1実施形態の基板搬送部7の替わりに基板搬送部24が、第2光照射部6に隣接して、第1ウエハステージ21または第2ウエハステージ22にウエハを搬送可能に設置されている。
【0025】
ここで、制御部8は、第1ウエハステージ21上の第1ウエハ25に対してパターン形成工程を実施している間に、第2光照射部6の付近にある第2ウエハステージ22上の第2ウエハ26に対して計測器23によりアライメント計測を実施させる。次に、制御部8は、第1実施形態と同様に半硬化状態で離型を実施した後に第1ウエハステージ21を第2光照射部6の照射位置に移動させる。並行して、制御部8は、アライメント計測が完了した第2ウエハステージ22をモールド9による押型位置に移動させる。そこで、制御部8は、第2ウエハ26に対して、パターン形成工程を開始させる。一方、制御部8は、第2光照射部6に、第1ウエハ25上の樹脂27を完全硬化状態とする第2硬化処理を実施させる。そして、この第2硬化処理が完了した後、制御部8は、基板搬送部24に、第1ウエハ25を回収させ、その後、次にインプリント処理するウエハを第1ウエハステージ21上に供給させる。制御部8は、以上のような処理を複数のウエハに対して繰り返す。
【0026】
このように、本実施形態によれば、1つのウエハに対するパターン形成工程と、別のウエハに対する第2硬化処理、搬送、またはアライメント計測などとを並行して実施することができるので、さらに生産性を向上させることができる。また、この場合、1つのウエハに対するパターン形成の間に、別のウエハに対するアライメント計測を実施することができる。したがって、例えば、ウエハステージを1つしか持たないインプリント装置と比較して、アライメント計測時間を長くとることができるため、アライメント計測精度の向上、ひいては製造されるデバイスの歩留まりの向上にもつながる。
【0027】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るインプリント装置について説明する。図4は、本実施形態のインプリント装置30の構成を示す平面図である。本実施形態のインプリント装置30の特徴は、このインプリント装置30全体をクラスタ構成とし、複数のインプリントモジュールIMに加えて、上記実施形態の第2光照射部6に対応する光の追加照射を実施する光照射モジュールILMを設置する点にある。なお、本実施形態における「クラスタ構成」とは、同様のインプリントモジュールIMを複数台、同一固定台(または床面)内に集合させる構成を示す。このクラスタ構成のメリットの1つは、複数のインプリントモジュールIM間でウエハを搬送する搬送路を共有することにより、フットプリントを削減できる点である。また、もう1つのメリットは、複数のインプリントモジュールIMを統合して制御することにより、生産性が高い1台のインプリント装置として管理することができる点である。一般に、インプリント装置は、露光装置などのリソグラフィー装置と比較して、押型や離型などの処理が加わるため、生産性がおよそ4分の1以下と低い。このようにインプリント装置と他のリソグラフィー装置とで装置1台当たりの生産性の差が大きいと、例えばデバイス製造工程にて両者を混在させて使用する場合に管理が難しくなる。そこで、リソグラフィー装置1台と同等の生産性を有するようにインプリント装置をクラスタ構成とすれば、両者を混在させて使用する場合でも管理が比較的容易となる。
【0028】
インプリント装置30は、6台のインプリントモジュール(インプリント部)IM〜IMと、光照射モジュールILMと、これらの各モジュールIM〜IM、ILMに隣設された基板搬送システム31と、制御部32とを含む。各インプリントモジュールIM〜IMは、それぞれ第2光照射部6が存在しないことを除いて、第1実施形態のインプリント装置1と基本的に同一構成である。なお、本実施形態では、インプリントモジュールIMの設置台数を6台としているが、これは一例であり、限定するものではない。
【0029】
図5は、光照射モジュールILMの構成を示す図である。この独立モジュールである光照射モジュールILMは、光照射部40と、基板格納庫41と、基板搬送部42とを有する第2硬化部である。まず、光照射部40は、第1実施形態の第2光照射部6と同一構成であり、ウエハ43上の半硬化状態にある樹脂を完全硬化させるために、ウエハ43に対して紫外線44を照射する照明手段である。基板格納庫41は、基板搬送システム31により搬送されたウエハ43を複数枚格納可能とするウエハ保持部41aを有する格納手段である。なお、基板格納庫41の構成または形状は、特に限定するものではなく、例えばFOUPのようなSEMI規格に準拠した基板搬送用ケースでもよく、この場合、基板搬送システム31によりFOUP自体を光照射モジュールILM内に搬入する構成もあり得る。また、基板搬送部42は、光照射部40と基板格納庫41との間でウエハ43の受け渡しを実施する搬送手段(搬送部)である。なお、生産性を高めるために、ウエハ43の供給(搬入)と回収(搬出)とをそれぞれ行う2つの基板搬送部を設置する構成もあり得る。なお、本実施形態では、光照射モジュールILMをインプリント装置30に1台設置する構成としているが、複数台設置する構成もあり得る。
【0030】
基板搬送システム31は、各インプリントモジュールIM〜IM、および光照射モジュールILMの所定のウエハ搬入口に対して、処理前のウエハ43を搬入し、かつ、処理済みのウエハ43を搬出する不図示の搬送ロボットを有する。基板搬送システム31は、インプリント装置30が設置されるデバイス製造工場内の他の設備(処理装置)との間のウエハ43の搬入出も実施する。さらに、制御部32は、各インプリントモジュールIM〜IM、光照射モジュールILM、および基板搬送システム31のそれぞれに対して回線33を介して接続されており、その全てを統合的に制御し得る。なお、制御部32は、インプリントモジュールIMのいずれかに含まれる制御部と併用してもよいし、インプリント装置30の他の部分とは別の場所に設置してもよい。
【0031】
次に、インプリント装置30によるインプリント処理について説明する。まず、制御部32は、基板搬送システム31により、デバイス製造工場内の他の設備から、各インプリントモジュールIM〜IMに適宜ウエハ43を搬送させる。ここで、各インプリントモジュールIM〜IMは、ウエハ43に対して、第1実施形態における押型処理、第1硬化処理、および離型処理をそれぞれ実施する。次に、制御部32は、基板搬送システム31により、各インプリントモジュールIM〜IMから半硬化状態にある樹脂のパターンが形成されたウエハ43を回収し、光照射モジュールILMに搬送させる。次に、この光照射モジュールILMでは、まず、基板搬送部42は、基板搬送システム31からウエハ43を受け取り、一旦基板格納庫41に格納する。次に、基板搬送部42は、基板格納庫41からウエハ43を適宜取り出し、このウエハ43を光照射部40の照射領域に移動させる。このとき、光照射部40は、第1実施形態の第2硬化処理と同様に、ウエハ43に対して紫外線44を照射することで、ウエハ43上の樹脂を完全硬化状態とする。次に、基板搬送部42は、樹脂が完全硬化状態となったウエハ43を再度基板格納庫41に格納する。光照射モジュールILMは、このような処理を基板格納庫41に格納されたウエハ43の枚数に応じて繰り返す。そして、制御部32は、光照射モジュールILMにて処理が完了したウエハ43を基板搬送システム31によりデバイス製造工場内の他の設備へ搬出させる。このように、本実施形態は、複数のインプリントモジュールIMによるパターン形成工程、光照射モジュールILMによる第2硬化処理、基板搬送システム31による搬送などを並行して実施することができる。したがって、生産性の点で有利である。
【0032】
なお、光照射モジュールILMの構成は、上記に限らず以下のような構成もあり得る。図6は、図5に示す光照射モジュールILMの構成を変更した第1例としての光照射モジュールILMの構成を示す図である。この光照射モジュールILMの特徴は、紫外線を発する光源50と、上記基板格納庫41と同様にウエハ43を複数枚格納可能とする基板格納庫51とを有し、光源50からの紫外線を、光ファイバ52を介して基板格納庫51の内部に導く点にある。光源50は、上記の光照射部40が有する光源と同様に高圧水銀ランプなどが採用可能である。この光源50から発せられた紫外線は、光ファイバ52により基板格納庫51内の複数のウエハ保持部51aそれぞれに導かれ、射出光学系53によりウエハ43に対して照射される。この光照射モジュールILMによれば、図5に示す光照射モジュールILMよりも、基板格納庫41内の全てのウエハ43上の半硬化状態の樹脂を完全硬化させるのに要する時間を短縮することができる。また、光照射モジュールILMは、光照射モジュールILMが有するような基板搬送部42を必要としないため、製造コストの点でも有利である。
【0033】
図7は、図5に示す光照射モジュールILMの構成を変更した第2例としての光照射モジュールILMの構成を示す図である。この光照射モジュールILMの特徴は、基板格納庫60内のウエハ保持部60a毎に、光照射部61を設置する点にある。この場合、光照射部61は、例えば発光ダイオード(LED)などが採用可能であり、ウエハ保持部60aに保持されたウエハ43に対して紫外線を照射可能としている。なお、光照射部61の数は、ウエハ保持部60aの設置数と同じである必要はなく、1つの照射部が複数のウエハ43に対して紫外線を照射することができるようになっていてもよい。その場合、適当な光学系がさらに追加されていてもよい。この光照射モジュールILMは、図6に示す光照射モジュールILMに含まれるような光源や光ファイバなどの導光光学系を必要としないため、実装上有利となり得る。
【0034】
(物品の製造方法)
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含み得る。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりにパターンを形成された基板を加工する他の処理を含み得る。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態では、インプリント装置が光硬化法を採用するものとして説明したが、本発明はこれに限定されず、熱サイクル法などの他の方式を採用するものであってもよい。例えば、熱サイクル法を採用する場合には光硬化性樹脂に換わって熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を使用する。この場合、第1硬化手段および第2硬化手段としては、紫外線を照射する光照射装置の替わりに、樹脂を加熱する加熱装置または樹脂を冷却する冷却装置を使用する。また、この第2硬化手段による単位時間当たりの処理領域の量、すなわち、加熱領域または冷却領域などの処理面積(ショット数の考慮も含む)は、第1硬化手段による量よりも広い領域とすることがスループットの点からは望ましい。また、第2硬化手段による加熱能力または冷却能力は、第1硬化手段による加熱能力または冷却能力よりも高い能力とすることがスループットの点からは望ましい。
【符号の説明】
【0037】
1 インプリント装置
2 第1光照射部
4 ウエハステージ
6 第2光照射部
9 モールド
11 ウエハ
13 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部を有し、該保持部に保持された基板上のインプリント材を型により成形して硬化させ、離型して、前記基板上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記型により成形されたインプリント材を前記離型の前に硬化させる第1硬化処理を実施する第1硬化手段と、
前記離型の後に前記保持部から搬出された前記基板上のインプリント材を硬化させる第2硬化処理を実施する第2硬化手段と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
離型しても成形されたインプリント材の形状が維持されるインプリント材の所定の硬度をHr、Hrより大きいインプリント材の硬度をHsとして、
前記第1硬化手段は、前記インプリント材の硬度HがHr≦H<Hsを満たすように前記インプリント材を硬化させ、
前記第2硬化手段は、前記インプリント材の硬度Hが硬度Hsとなるように前記インプリント材を硬化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記第2硬化手段は、前記基板の搬送と並行して前記第2硬化処理を実施する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記第2硬化手段は、前記第1硬化処理を含む1つの基板に対する前記インプリント処理と並行して、他の基板に対する前記第2硬化処理を実施する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項5】
それぞれ、前記第1硬化処理を含む前記インプリント処理を実施する複数のインプリント部と、
前記第2硬化手段を含む第2硬化部と、
前記複数のインプリント部と前記第2硬化部との間で前記基板の搬送を実施する搬送部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第2硬化部は、前記搬送部により搬送された基板を格納する格納庫を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第2硬化手段は、前記格納庫に設けられ、前記格納庫に格納された基板上のインプリント材を硬化させる、
ことを特徴とする請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記第2硬化手段による単位時間当たりの処理領域の量は、前記第1硬化手段による単位時間当たりの処理領域の量より大きい、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板上に樹脂のパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−164809(P2012−164809A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23984(P2011−23984)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】