説明

インプリント装置およびデバイス製造方法

【課題】 インプリント装置に備えられた各種装置とパターン面Pとの距離が離れているため、基板ステージ14が移動する距離が長くなり、装置のスループットに影響を与える。
【解決手段】 本発明のインプリント装置は、パターンと、該パターンの外側の領域にある孔部及び切り欠き部の少なくとも一方とを有する型により、基板上のインプリント材を成形して前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、保持された型の前記孔部及び切り欠き部の少なくとも一方を介して前記インプリント材を前記基板上に供給する供給機構を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上のインプリント材を型により成形して基板上にパターンを形成するインプリント装置、および、デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、電子線描画装置等を用いて微細なパターンが形成された型(モールド)を原版としてシリコンウエハやガラスプレート等の基板上に微細なパターンを形成する技術である。インプリント装置は、基板上にインプリント材(樹脂)を供給(塗布)し、そのインプリント材に型のパターンを押し付けた状態でそのインプリント材を硬化させることによって微細なパターンを形成することができる。
【0003】
特許文献1は、インプリント技術を利用して基板上に半導体デバイスを製造する技術に関するものである。文献には、基板の一部の領域にパターンを形成する動作を繰り返すことによってウエハの全面にパターンを形成することが記載されている。その後、インプリントによって形成されたパターンを利用してエッチング処理や酸化処理、成膜処理などがなされる。以上の処理を繰り返すことによって多層構造の半導体デバイスが製造される。
【0004】
インプリントに用いるインプリント材は、空気中に放置すると、インプリント材の成分の一部が気化して、体積や成分が変化する場合がある。また、空気中の酸素や水蒸気などの影響でインプリント材の性質が変化する場合もある。このようなインプリント材の特性から、インプリント前に基板の広い範囲にインプリント材を予め塗布しておくと、樹脂の変化によってインプリントによるパターン形成に影響を与える恐れがある。このため、図7に示すようにインプリント材を基板上に塗布するための塗布機構Dをインプリント装置10内部に構成して、インプリント動作をおこなう直前に塗布機構Dによって基板13上のパターンを形成する領域にインプリント材を塗布する。インプリント材が塗布された後にパターンを形成する。これら、樹脂の塗布とパターン形成を基板上のパターンを形成する場所毎に繰り返す。
【0005】
また、インプリント装置で用いられる型は従来から半導体露光装置で用いられているマスク(レチクル)とほぼ同じ形状をしている。これは、従来のフォトリソグラフィー工程で用いられている、レチクル搬送装置などのレチクルに関わる設備をインプリント装置にも共用して使えるという利点がある。インプリントに用いられる型(モールド)を、微細なパターンが形成されている面から見た例を図8に示す。図8に示すように、モールド11の中央部に微細なパターンを有するパターン面Pが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−281072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8のようなモールド11を用いると、樹脂を塗布する塗布機構Dや基板上のマークを検出するアライメントスコープSなどの各種装置をモールド11よりも外側に配置する必要がある。このため、インプリント装置に備えられた各種装置とパターン面Pの位置が離れてしまう。各種装置とパターン面Pとの距離が離れていると、基板ステージ14が移動する距離が長くなるため、装置のスループットに影響を与える。
【0008】
本発明は、スループットの点で有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインプリント装置は、パターンと、該パターンの外側の領域にある孔部及び切り欠き部の少なくとも一方とを有する型により、基板上のインプリント材を成形して前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、保持された型の前記孔部及び切り欠き部の少なくとも一方を介して前記インプリント材を前記基板上に供給する供給機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、スループットの点で有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態を説明するインプリント装置を示す概略図である。
【図2】(A)孔部を有するモールドを示す図である。(B)複数の孔部を有するモールドを示す図である。
【図3】(A)切り欠き部を有するモールドを示す図である。(B)切り欠き部を複数有するモールドを示す図である。
【図4】(A)切り欠き部を有するモールドを示す図である。(B)切り欠き部を複数有するモールドを示す図である。
【図5】第2実施形態を説明するインプリント装置を示す概略図である。
【図6】第3実施形態を説明するインプリント装置を示す概略図である。
【図7】従来のインプリント装置を示す概略図である。
【図8】従来のインプリント装置に用いられる型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態のインプリント装置の断面図を示している。インプリント装置10は、モールド11(型)を保持するモールドチャック12(型保持機構)を備えている。モールド11にはパターンが形成されているパターン面Pを有する。モールドチャック12は構造体18に取り付けられ、不図示の駆動源と制御機構によって基板13とモールド11が近づいたり離れたりする方向に駆動することができる。
【0014】
ステージ定盤19上を駆動する基板ステージ14は基板13を保持する。基板13にインプリント材としての樹脂22を供給(塗布)するために、インプリント装置10内部に供給機構(塗布機構D)を備えている。塗布機構Dは樹脂22を供給する。基板ステージ14を駆動して基板13を塗布機構Dの下に移動させて樹脂22を塗布する。樹脂22を塗布したインプリント領域をモールド11の下へ移動させるために、基板ステージ14を駆動する。
【0015】
このとき、測長機器15を用いて基板ステージ14の位置を計測し、不図示の制御機構によって基板ステージ14の位置をナノメートルの精度で位置合わせ制御を行う。測長機器15としては、例えばレーザー干渉計やエンコーダーなどを用いることができる。さらに、インプリント装置10には、アライメントスコープSを備えている。アライメントスコープSによって、基板の上に形成されたアライメントマークを撮像し、画像処理によって位置を算出している。このようにして算出された位置を基にして、下地に対して高精度に重なるようにインプリントが実施される。
【0016】
上述のような位置合わせを行った後に、モールドチャック12を基板に向かって移動させることで、モールド11のパターン面Pを基板13上の樹脂22が塗布されたインプリント領域に押し付ける。パターン面Pを樹脂22に押し付けた状態で樹脂22を硬化させるために、インプリント装置10には光源16を備えている。本実施形態では光源16から紫外線を照射して樹脂22を硬化させる。モールド11は樹脂22を硬化させるための紫外光が透過するように、ガラス(石英)で製作されている。
【0017】
樹脂22が硬化した後、モールド11を樹脂22から引き離すことにより、基板上にパターンが形成される。パターンの転写が行われた後、次にパターンを形成するインプリント領域に樹脂を塗布するため、基板ステージ14が駆動して基板13が塗布機構Dの下へ移動する。このようにして、基板13上のインプリント材を成形して基板上にパターンを形成する。これら一連の動作を基板上で繰り返すことにより、複数のインプリント領域にパターンを形成することができる。このため、半導体デバイスを製造する際にも、従来の半導体露光装置と同様にこのインプリント装置を用いることができる。
【0018】
図2は第1実施形態において、パターンが形成されたパターン面Pを有する面から板状体のモールド11を見た図である。図2(A)の板状体のモールド11にはパターン面Pの周囲にモールドを貫通した孔部30が設けられている。本実施形態のインプリント装置10は、モールドチャック12の内部に塗布機構Dが配置されている。塗布機構Dには、実際に樹脂が吐出する不図示の吐出口(供給口)を有しており、この供給口の位置が孔部30の位置に対応している。この構成により、孔部30の位置から塗布機構Dによって基板13上に樹脂22を塗布することができる。
【0019】
本実施形態によれば、モールドチャック12に保持されたモールド11のパターン面Pと塗布機構Dとの距離が縮まるため、その間を移動する基板ステージ14の駆動距離が従来と比較して短くなる。従来のインプリント装置と同様に1つの領域ごとに樹脂22の塗布とパターンの形成を繰り返して、基板上の複数の領域にパターンの形成を行うときに、1往復毎に移動距離を短くすることができる。そのため、インプリント装置のスループットを向上させる効果が得られる。基板ステージ14が往復移動する回数が多いほど、その効果は大きくなる。
【0020】
さらに、基板ステージ14の移動距離が短縮されることで、樹脂22を塗布してからインプリントまでの時間も短縮されるので、樹脂22が気化したり変質したりする影響を低減する効果が得られる。
【0021】
本実施形態のモールド11は、従来のモールドと同じ外形を持つものを用いることで、従来から半導体製造工場で使用されているレチクル搬送装置を使うことができる。
【0022】
モールド11に有する孔部30は図2(A)のように一つでも良いし、図2(B)のように複数の孔部30を設けても良い。複数形成された孔部にそれぞれ、塗布機構Dを配置することも可能である。こうすることで、基板ステージの駆動方向に応じて塗布機構Dを使い分けることが可能になり、基板ステージの移動距離をさらに短くすることができる。
【0023】
孔部30の形状は図2に示されたものに限らず、丸形、楕円形、角形などいかなる形状でも良い。また孔部30の長さを、少なくともパターンが形成されているパターン面Pの1辺の長さよりも長くし、孔部の長さに合わせて供給口を配置することで、インプリント領域に効率良く樹脂を塗布できる。また、孔部30はパターンが形成されている領域の1辺と平行に形成するのが望ましい。
【0024】
図3はモールド11に孔部30の代わりに切り欠き部31が設けられたものを示している。モールド11の切り欠き部31に塗布機構Dが配置されるように構成しても良い。この場合も、切り欠き部31は図3(A)のようにひとつでも、図3(B)のように複数でも良い。図3の切り欠き部31は図2の孔部30と形状が異なるだけで、同様にパターン面Pと塗布機構Dの距離が短くなり、インプリント装置のスループットが向上する。
【0025】
また、モールド11の切り欠き部31は図4に示すようにモールド11の角に有し、モールドの角に有する切り欠き部31に塗布機構Dが配置されるように構成しても良い。この場合も、切り欠き部31は図4(A)のようひとつでも、図4(B)のように複数でも良い。
【0026】
モールド11はモールドチャック12で保持される。モールドチャック12のチャック形状は、上述の孔部や切り欠き部が設けられたモールド11の形状に応じた形状にする必要がある。また、孔部のあるモールドの場合、モールド11を保持したとき、パターン面Pの形状が好ましくない形状(非対称)に変形する可能性がある。そのため、複数の孔部を持つモールドは、モールド11の外形またはパターン面Pに対して対称となるように孔部30を形成することが望ましい。パターン面の中心に対して点対称としても良いし、パターン面の中心線から線対称としても良い。これにより、モールド11を保持したときに生じるパターン面Pの変形は対称形になるため、インプリントパターンにおける変形の管理や補正が容易になる効果が得られる。
【0027】
例えば、モールド側面を保持する機構でモールド11に外力を加え、積極的にパターン面Pを変形させることでインプリントパターン形状を補正や制御する場合を考える。
【0028】
この場合、モールド11の孔部30の形状または配置によって外力とパターン面Pの変形量との関係をコントロールすることが可能である。ここでも、モールド11の孔部30の形状をパターン面Pに対して対称な配置や形状とすることで、パターン面Pの変形量の制御は容易になる。また、モールド11の孔部30がパターン面に対して対称であれば、モールド11が熱変形した場合でも、変形量が均一になる効果も期待できる。
【0029】
本実施形態では、塗布機構Dがモールドチャック12の内部に配置されるとして説明してきたが、モールド11の内部に設けた上述のような孔部に塗布機構Dが存在する構成であれば良く、モールドチャック12の内部に限定されるものではない。例えば、塗布機構Dの実際に樹脂が吐出される供給口が孔部30に対応していれば良く、モールドチャック12の外に配置された塗布機構Dの本体と供給口とを樹脂が通る管でつなぐことができる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のインプリント装置について説明する。図5は第2実施形態を示したインプリント装置を示す図である。
【0031】
半導体の製造工程においては、基板に形成されたレイヤーに重ね合わせて新たなレイヤーを形成することが特徴であるため、下地のレイヤーに対して高精度に位置合わせをしてインプリントする必要がある。高精度の位置合わせを可能にするために、下地となるレイヤーにアライメントマークを形成しておく。また、グローバルアライメント計測を行なうにはベースラインを計測する必要がある。基板上に形成されたマークの他に、基板ステージ上に基板13の表面と同じ高さに基準マークが形成されている。
【0032】
図7に示すように、従来のインプリント装置10にはマイクロスコープ(顕微鏡)と撮像素子と画像処理装置からなるアライメントスコープSをモールドチャック12の外側に備えていた。前のレイヤーに重ね合わせてインプリントを行う時には、このアライメントスコープSによって下地のアライメントマークを撮像し、画像処理によって位置を算出している。このようにして算出された位置を基にして、下地のレイヤーに対して高精度に重なるようにインプリントが実施される。
【0033】
モールドチャック12に保持されたモールド11のパターン面Pと、基板上のマークを検出するアライメントスコープSとの位置関係(ベースライン)は厳密に管理する必要がある。ベースラインが変動すると、アライメント計測結果にその変動分が誤差として入ってくるため、重ね合わせインプリントの位置誤差となる。
【0034】
ベースライン変動の主な要因となるのが、アライメントスコープS、モールド11、モールドチャック12、構造体18のそれぞれの熱膨張による相対位置の変動である。従って、アライメントスコープSとモールド11のパターン面Pとの距離が大きいほど、熱膨張による位置変動量が大きくなる。このため、パターン面PとアライメントスコープSの距離が短いほど相対位置の変動を小さくすることができる。また、基板上のマークや基板ステージ上に設けられた基準マークを検出する位置と、パターンの転写を行なう位置が近付くため、基板ステージの移動距離を小さくすることができる。
【0035】
そこで、図5に示すように本実施形態のインプリント装置10は、モールドチャック12内部にアライメントスコープSを構成することを特徴としている。モールド11は第1実施形態で説明したものと同様であり、図2〜4で示すような孔部30が設けられている。第1実施形態で説明した図2〜4のいずれのモールドも適用可能である。本実施形態では図2に示した孔部30が設けられたモールドを適用した場合について説明する。
【0036】
モールドチャック12でモールド11を保持したときに、モールド11の孔部30に対応する部分にアライメントスコープSを配置する。アライメントスコープSによってモールド11の孔部30から基板13上のアライメントマークを観察して基板13の位置を算出する。
【0037】
本実施形態によれば、モールドチャック12に保持されたモールド11のパターン面PとアライメントスコープSとの距離が短くなるため、ベースライン変動を低減することが可能になり、基板上でパターンを形成する位置の精度を向上することができる。また、パターン面PとアライメントスコープSとの距離を短くすることができるため、第1実施形態で説明したことと同様に基板ステージ14がこれらの間を移動する時間も短縮されるため、インプリント装置のスループットを向上することができる。
【0038】
なお、モールド11と基板13の高さや傾き方向の相対位置を計測する高さセンサFをインプリント装置10に構成しても良い。高さセンサFには、例えばレーザー光を基板13に投光し、その反射光を検出することで高さや傾きを計測するセンサなどを用いることができる。アライメントスコープSと同様に、モールド11の孔部30に対応する場所に高さセンサFを配置する形態とすれば、アライメントスコープSの場合と同様に精度や生産性を向上することができる。
【0039】
また、図2(B)のように孔部30が複数形成されていればアライメントスコープSと高さセンサFを両方ともパターン面Pに近づけることが可能である。さらに、第1実施形態で説明した塗布機構Dを同時に備えることも可能である。
【0040】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態のインプリント装置について説明する。図6は第3実施形態のインプリント装置を示す図である。本実施形態のインプリント装置10は、モールド11のパターン面Pの近傍に、気体を供給あるいは回収できるノズルNをモールドチャック12内部に構成していることを特徴とする。また、第1実施形態と同じくモールドには貫通した孔を設けている。
【0041】
インプリント時に基板13に塗布された樹脂22の周囲を、特定の気体で置換することで転写の不良を低減させることができる。これは、インプリントに用いられる樹脂の性質によっては、大気中の酸素の影響により、樹脂の特性が変質する恐れがあるためである。また、モールドを樹脂に押し付ける工程で、凝縮性の気体を用いることで樹脂がパターンの凹凸に充填しやすくなる。そのため、例えば低酸素状態にするための窒素やヘリウム、また各種機能性ガスの使用が検討されている。
【0042】
樹脂22の周囲に気体を供給するときに、モールド11の外周から気体を供給しても、モールド中心部のパターン面P部分の気体濃度を上げるのは効率的ではない。さらに、モールド11の周辺空間には供給した気体が大量に漏洩することとなる。従って、できるだけ効率良く気体を供給するには、パターン面Pの近くから気体を供給する方が良いと考えられる。
【0043】
そのため、本実施形態のインプリント装置10の構成においては、モールドチャック12内部に構成したノズルNから気体を供給することを特徴としている。モールドチャック12でモールド11を保持したときに、モールド11の孔部30部分にノズルNが存在する配置としている。本実施形態では図2のモールドを用いた例について説明するが、図2〜4のいずれのモールドも適用可能である。
【0044】
ノズルNによってモールド11の孔部30から気体を供給することで、モールド11の周辺空間へ気体が漏洩する量を最小限に抑えつつ、気体を樹脂22周囲へ効率良く供給できる。こうすることにより、例えば低酸素状態にすることができれば、樹脂の酸素による変質を抑えることが可能になり、形成されたパターンの不良を低減することが可能になる。
【0045】
また、型を樹脂に押し付けた時、樹脂の周囲を減圧することによりモールドのパターンに樹脂が充填しやすくなる。基板に塗布された樹脂の周囲を減圧することで、パターン形成の不良を低減させることも提案されている。
【0046】
樹脂周囲の気体を吸引するときに、モールド11の外周から気体を吸引しても、モールド11の外部周辺空間の気体を吸引してしまい効率的ではない。このため、ノズルNには気体を吸引する機能をもたせることができる。そこで、ノズルNによってモールド11の孔部30から気体を吸気する構成としても良い。この構成により、容易にパターン面P周囲を減圧することが可能になる。また、樹脂22の周囲で発生した樹脂の蒸気などの気体を排気する目的で、ノズルNによって吸気しても良い。
【0047】
また、複数の孔部を有していれば、気体の供給、回収を行うノズルを複数有する構成とすることができる。複数のノズルのうち少なくとも1つを気体供給ノズルとし、少なくとも1つを気体回収ノズルとすることで、樹脂22上に気体の流れを発生させて効率良く気体を供給することも可能である。また、この方法により、モールド11の周辺空間へ気体が漏洩することを低減することができる。
【0048】
さらに、複数の孔部または切り欠き部を有していれば、気体の供給、回収を行なうノズルに加えて第1実施形態で説明した塗布機構Dや第2実施形態で説明したアライメントスコープS、高さセンサFを同時に備えることも可能である。また、孔部及び切り欠き部を同時に有するモールドを用いても良い。
【0049】
また、インプリントを繰り返し実施しているときには、モールド11と樹脂22が接触と剥離を繰り返しているため、モールドが帯電することが懸念される。例えばモールド11が帯電すると周辺に存在したパーティクルをパターン面Pに吸着してしまう可能性がある。吸着してしまったパーティクルはパターン形成の不良の原因となる。そこで、ノズルNからイオン化した気体を供給する構成としても良い。
【0050】
例えば、空気をイオン化するイオナイザーをモールドチャック12内部に構成することが可能である。このような構成により、パターン面Pの近傍にノズルNによってイオン化した気体を供給でき、効果的にパターン面Pの除電をおこなうことが可能になる。そのため、モールドのパターン面Pにパーティクルが吸着するのを抑えることができ、パターン形成の不良を低減する効果が得られる。
【0051】
第3実施形態では孔部30を有するモールド11用いた例を説明したが、第1実施形態と同様に切り欠き部31を有するモールド11を用いても良い。
【0052】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態のインプリント装置について説明する。本実施形態のインプリント装置10は、モールド保持機構(型保持部)を有しており、モールド保持機構はモールドに有する孔部でモールドを保持している。本実施形態におけるモールド11には第1実施形態と同じくモールドには孔部を設けている。モールドの形状は図2〜4のいずれも適用可能である。
【0053】
モールドチャック12はモールド11を真空吸着によって保持することができた。他にもモールド11を保持する方法としては、例えばモールド保持機構によりモールド11の側面などパターン面P以外の部分を挟んだり掴んだりすることでモールド11を保持することも可能である。
【0054】
そこで、モールドチャック12による真空吸着とモールド保持機構によるモールドの保持を共存させる。こうすることにより、真空吸着が故障した場合でも、モールドを保持し続けることができる。さらに、モールド保持機構によってモールド11の対向する両側面を押してモールド11を変形させることで、パターン面Pに形成された、インプリントパターンを変化させることができる。このように、モールド保持機構にインプリントパターンを補正する補正機構としての機能を持たせても良い。この時、モールドのパターンを挟むようにパターンの両側に孔部が形成されている(図2(B)、図3(B))と大きな力を加えなくても、容易にパターンを補正することができる。
【0055】
また、モールド11とモールドチャック12あるいは構造体18との相対位置を計測するセンサやモールドの変形量を計測するセンサをモールド保持機構と同時に構成しても良い。このような構成とすることで、モールド11を機械的に保持しながら倍率を補正することが可能になる。また、パターン面Pの付近を保持することが可能になる。
【0056】
さらに、第1実施形態または第2実施形態に記載された塗布機構DまたはアライメントスコープSを同時に構成しても良い。こうすることで、スループットの向上に加えて、モールドのパターンを補正することができる。
【0057】
本実施形態の孔部は必ずしも貫通している必要はなく、くぼみや段差が形成されているモールドとしても良い。例えば、モールドの下面にモールドの外縁から延びたくぼみや段差が形成されたモールドを用いてもよい。この場合、モールドチャック12に保持されたモールドのくぼみや段差の中に位置するように前述の塗布機構Dの供給口、または、ノズルNの供給口もしくは回収口を配置することができる。このようにしても、孔部が貫通しているのと同様の効果が得られる。
【0058】
上記のいずれの実施形態もモールドの大きさについてはどのようなものを用いても良いが、例として従来の露光装置で用いられているテンプレートと同じ大きさのものを用いることができる。例えば、152mm×152mmのモールド11の中央付近にパターン面Pが形成され、その周囲に孔部を有する型を用いる。パターン面Pは基板上にパターンを形成するショットの領域と同じか、それよりも大きなパターンを形成する。
【0059】
上記いずれの実施形態も孔部30を有するモールド11として説明したが、図3、4のように切り欠き部31を有してもよい。また、モールド11に孔部30と切り欠き部31を同時に有してもよく、孔部30及び切り欠き部31の少なくとも一方を有していれば良い。さらに、上記のいずれの実施形態もモールドの形状は図2〜図4に記載されたものに限定されない。本発明はパターンPの領域より外側で、モールド11を取り囲むように外接する矩形の領域の内側で、樹脂22が通過するように塗布機構Dを配置すればよい。また、外形が非矩形のモールド11の外側で、かつ当該モールド11の外形に外接する矩形の内部の領域を介して樹脂が通過するように(または当該領域に)塗布機構Dの供給口を配置してもよい。また、塗布機構に限らず、前述のアライメントスコープS、高さセンサF、ノズルNのいずれかを配置してもよい。ここで、モールド11に外接する矩形の領域とは図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)の点線で囲まれる切り欠き部31を含むモールド11を取り囲む矩形状の領域を示す。
【0060】
この矩形の領域が従来の露光装置で用いられているテンプレートと同じ大きさとすることができる。こうすることにより、従来の露光装置で用いられているテンプレートを搬送するための装置などを利用することができる。また、従来の露光装置で用いられているテンプレートと同じ大きさにしなくても、上述した矩形の領域の大きさを異なる型の形状毎に揃えることができる。
【0061】
上記のいずれの実施形態もパターンが形成されたモールドを駆動させて樹脂が塗布された基板に押し付ける場合について説明したが、樹脂が塗布された基板を駆動させてモールドに押し付ける構成とすることもできる。また、モールドと基板を互いに押し付けあう構成としてもよい。このように、基板とモールドの少なくとも一方を他方に押し付ければよい。
【0062】
上記のいずれの実施形態も光を照射することによって硬化する樹脂を用いた光硬化法について説明した。光硬化法に限らず、熱可塑性の樹脂を用いてパターンの形成を行う熱サイクル法によるインプリントを行っても良い。その場合、インプリント装置には樹脂に熱を与えるため、モールドチャック12や基板ステージ14などにヒーターなどの熱源を備えている。熱サイクル法では、熱可塑性のナノインプリント樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂を介して基板にモールドが押し付けられる。そして、冷却した後に樹脂からモールドを引き離すことによりパターンが形成される。
【0063】
[デバイス製造方法]
デバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該デバイス製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを形成された基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組み合わせ、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 インプリント装置
11 モールド
P パターン面
30 孔部
D 塗布機構
S アライメントスコープ
F 高さセンサ
N ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンと、該パターンの外側の領域にある孔部及び切り欠き部の少なくとも一方とを有する型により、基板上のインプリント材を成形して前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、
保持された型の前記孔部及び切り欠き部の少なくとも一方を介して前記インプリント材を前記基板上に供給する供給機構
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記型は、少なくとも前記パターンが形成されている領域の1辺の長さより長い辺を有する孔部及び切り欠き部の少なくとも一方を有し、
前記供給機構は、少なくとも前記パターンが形成されている領域の1辺の長さ以上の長さを有する供給口を有し、前記保持された型の孔部及び切り欠き部の少なくとも一方の領域に前記供給口が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記型を保持する型保持機構を有し、
前記供給機構に含まれる前記インプリント材の供給口が前記型保持機構に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記型保持機構は前記孔部及び前記切り欠き部の少なくとも一方を介して前記型を保持することを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記型保持機構は、前記パターンを挟むように前記パターンの両側にそれぞれ設けられた前記孔部及び前記切り欠き部の少なくとも一方を介して前記型を保持し、前記孔部及び前記切り欠き部の少なくとも一方に力を加えて前記パターンを変形させることを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
パターンと、該パターンの外側の領域にある孔部及び切り欠き部の少なくとも一方とを有する型により、基板上のインプリント材を成形して前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、
保持された型の前記孔部及び前記切り欠き部の少なくとも一方を介してアライメントマークを検出するスコープ
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項7】
前記保持された型に設けられた孔部及び切り欠き部の少なくとも一方を介して基板上の領域に対して気体の供給及び気体の回収の少なくとも一方を行なうノズルを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記型に孔部および切り欠き部の少なくとも一方が複数形成され、前記孔部または切り欠き部の少なくとも1つを介して前記基板上の領域に気体の供給を行なうノズルと、前記孔部または切り欠き部の少なくとも他の1つを介して前記基板上の領域から気体の回収を行なうノズルと
を有することを特徴とする請求項7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
基板上のインプリント材を型により成形して前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、
孔部及び切り欠き部の少なくとも一方が設けられた板状体の形状をなす型を保持する型保持機構と、
前記形状をなす型を保持した前記型保持機構の前記孔部及び切り欠き部の少なくとも一方に対応する部分に設けられた供給口を含み、該供給口を介して前記基板にインプリント材を供給する供給機構と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項10】
基板上のインプリント材を型により成形して前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、
保持された非矩形の外形を有する型の外側で、かつ、該外形に外接する矩形の内側の領域を介して前記インプリント材を前記基板上に供給する供給機構
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−124390(P2012−124390A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275140(P2010−275140)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】