説明

インプリント装置及び物品の製造方法

【課題】 空気と置換するためのガスの供給量を必要最小限に低減したインプリント装置を提供する。
【解決手段】 インプリント装置は、テンプレートを保持する保持部と、基板を保持するステージと、前記テンプレートを囲むように配置された複数のガス供給開口を介して前記テンプレートと前記基板との間の空間に空気と置換するためのガスを供給するガス供給部と、前記複数のガス供給開口を囲むように前記保持部の前記ステージ側の表面に形成された第1ガス回収開口を介して前記ガスを回収する第1ガス回収部と、前記基板を囲むように前記ステージに形成された第2ガス回収開口から前記ガスを回収する第2ガス回収部と、前記第1ガス回収開口により囲まれる第1領域と、前記第2ガス回収開口により囲まれる第2領域とが重なり合う第3領域が形成される場合に、前記複数のガス供給開口のうち前記第3領域内に位置するガス供給開口のみから前記ガスを供給するように前記ガス供給部を制御する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原版となるテンプレートの微細パターンを基板等へ転写するインプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線、X線、又は、電子ビームによるフォトリソグラフィーを用いた半導体デバイスへの微細パターンの形成方法に代わる技術としてインプリント技術がある。インプリント技術は、電子ビーム露光等によって微細なパターンを形成した型(テンプレート)を、樹脂材料(レジスト)を塗布した基板等の基板に押し付けた状態で紫外線により硬化することによって、レジスト上にパターンを転写する。既に10nm程度の微細な形状の転写が可能であることが示されており、特に、磁気記録媒体の微細な周期構造の作成手法として注目されており、各地で盛んに研究開発が行われている。
【0003】
レジストを塗布した基板にテンプレートを押印する時に、テンプレートと基板表面のレジストとの間に気泡が残留すると、形成されるパターンが歪むことが知られている。その対策として、テンプレートと基板との間に残留しにくいように拡散性が高い、又はレジストに対して溶解性が高いヘリウムや二酸化炭素などのガスを流し込み、基板とテンプレートとの隙間の空気を置換する技術が特許文献1で開示されている。特許文献2には、テンプレート又はその周辺や基板ステージに設けたガス回収口から排気を行いながら、基板とテンプレートと間の空間にヘリウムや二酸化炭素などのガスを供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−509769号公報
【特許文献2】特表2009−532245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されている技術では、テンプレートと基板との間の空間全体に空気と置換するガスを供給しているので、ガスの供給量が多い。そこで、本発明は、空気と置換するためのガスの供給量を必要最小限に低減したインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板に塗布された樹脂とパターン面を有するテンプレートとを接触させて前記樹脂を硬化させることによりパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、テンプレートを保持する保持部と、基板を保持するステージと、前記テンプレートを囲むように配置された複数のガス供給開口を介して前記テンプレートと前記基板との間の空間に空気と置換するためのガスを供給するガス供給部と、前記複数のガス供給開口を囲むように前記保持部の前記ステージ側の表面に形成された第1ガス回収開口を介して前記ガスを回収する第1ガス回収部と、前記基板を囲むように前記ステージに形成された第2ガス回収開口から前記ガスを回収する第2ガス回収部と、前記第1ガス回収開口により囲まれる第1領域と、前記第2ガス回収開口により囲まれる第2領域とが重なり合う第3領域が形成される場合に、前記複数のガス供給開口のうち前記第3領域内に位置するガス供給開口のみから前記ガスを供給するように前記ガス供給部を制御する制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空気と置換するためのガスの供給量を必要最小限に低減したインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】インプリント装置の概略を示した図
【図2】従来のインプリント機構周辺を示した図
【図3】第1実施形態を示す図
【図4】第2実施形態を示す図
【図5】第3実施形態を示す図
【図6】第4実施形態を示す図
【図7】第4実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態として基板に塗布されたレジスト(樹脂)とテンプレート(型)とを接触させてレジストを硬化させることによりパターンを形成するインプリント処理を行う光硬化法を用いたインプリント装置10について説明する。なお、各図において、同一の部材については、同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。ここで、図1は、インプリント装置10の概略断面図である。インプリント装置10は、光源15、インプリント機構40、テンプレート11、基板21、基板21を保持するステージ23、レジスト供給口32と、その他の機構とを有する。基板21上のレジストは、テンプレート11を介してレジストに紫外線が照射されることによって硬化される。そのために、紫外線を発生するハロゲンランプなどからなる光源15と、照明光学系14とを有する。照明光学系14は、レジストを露光し、硬化させるための紫外線を整形してレジスト面に照射するためのレンズ、アパーチャ、照射か遮光かを切り替えるためのシャッタなどを含む。
【0010】
テンプレート11は、中心付近にパターン面12を有しており、レジストを硬化するために、露光光を透過する必要があるため、透明な部材で作られる。インプリント機構40は、テンプレート11を保持するためのテンプレート保持部(保持部)13を含む。テンプレート保持部13は、例えば、板状形状を有する。インプリント機構40は、上下動作をさせるだけでなくパターン面12と基板21とが密着するようにチルト制御機構や姿勢制御、回転方法の位置合わせ機能も有する。基板21は、テンプレート11のパターン面12に形成されている微細パターンが転写され、後の工程を経て半導体集積回路が形成される対象であり、従来の半導体プロセスに用いられているものと同様である。ステージ23は、基板21に加えて、基板21を包囲しかつ基板21と同等の厚さを持つリング状の同面板(包囲部材)22を保持し、x方向及びy方向に移動可能である。ステージ23は、精密な位置決めが可能であり、微細なパターンの重ね合せを達成できるように構成されている。ステージ23は、位置決めだけではなく、基板21の表面の姿勢を調整する機能も有している。ステージ23の端面に配置されたミラー71と干渉計73および光路72で構成される干渉計システムによりステージ23の位置計測が行われる。レジストは、タンク31からレジスト供給口32を介して基板21上に供給される。
【0011】
インプリント装置10は、さらに、定盤24、除振器25、フレーム26、アライメントスコープ27を含む。定盤24は、インプリント装置10全体を支えると共にステージ23の移動の基準平面を形成する。除振器25は、床からの振動を除去する機能を有し、フレーム26を支える。フレーム26は、基板21より上方に位置する、光源15からテンプレート11までの構成要素を支える。アライメントスコープ27は、基板21上のアライメントマークの位置を計測し、その結果に基づいてステージ23の位置決めが行われる。基板21は、不図示の基板搬送系によってステージ23上に載置される。基板21は、ステージ23上に構成された真空チャック(不図示)によって保持される。ステージ23を駆動しながら、アライメントスコープ27によって基板21上のアライメントマーク(不図示)を順次計測して、基板21の位置を高精度に計測する。制御部Cは、その計測結果から各転写位置の座標を演算し、演算結果に基づいて所定のショットごとに逐次転写(ステップアンドリピート)を行う。全てのショットに対して転写が完了したら、基板21がステージ23から搬出され、次の基板21がステージ23に搬入される。
【0012】
微細パターンを基板21に転写するインプリント処理について説明する。まず、制御部Cは、レジスト供給口32下に転写対象のショット42が位置するようにステージ23を位置決めする。そして、制御部Cは、レジスト供給口32から適量のレジストをショット42に滴下する。その後、制御部Cは、ショット42がパターン面12の直下に位置するようにステージ23を移動させ、位置決めを行う。位置決め完了後に、インプリント機構40がテンプレート11を下降させ、パターン面12をショット42上のレジストに押印する。押印完了の判断は、インプリント機構40の内部に設置された荷重センサによって行う。押印後に、制御部Cは、紫外線を照射し、レジストを硬化させる。レジスト硬化が終了した後、制御部Cは、テンプレート11を引き上げる。そして、ステージ23により、次のショット42がレジスト供給口32下に位置するように位置決めされる。
【0013】
インプリント処理を行うときに、パターン面12と基板21上のレジストとの間に気泡が残留すると、形成されるパターンが歪み、残留の程度によっては転写欠陥が発生してしまう。そのため、レジストに対して溶解性が高いヘリウムや二酸化炭素などのガス(パージガス)でテンプレート11と基板21との間の空気と置換させて、気泡の発生を抑える方式が知られている。パージガスは、ガス供給部60によって複数のガス供給開口43を介してテンプレート11と基板21との間の空間に供給される。複数のガス供給開口43は、テンプレート11を囲むように配置される。ガス供給開口43は、テンプレート11を囲むように配置されたノズルに設けられても、テンプレート保持部13に設けられても良い。
【0014】
図2A〜図2Dに本実施形態を示す。図2Aは、レジスト供給口32から基板21の対象ショット42上にレジストを供給する際の、テンプレート保持部13と同面板22との位置関係を示している。本実施形態では、テンプレート11と基板21との間にパージガスを供給するために、テンプレート保持部13に、テンプレート11を囲むようにガス供給開口43A〜43Dを配置している。本実施形態ではガス供給開口43A〜43Dの個数を4つとしているが、この限りではない。ガス供給開口43A〜43Dの供給動作は、ガス供給部60によってガス供給開口毎に制御される。テンプレート保持部13のステージ側の表面には、ガス供給開口43A〜43Dを囲むように第1ガス回収開口51が配置される。一方、ステージ23には、基板21を囲むように第2ガス回収開口52が配置される。パージガスは、第1ガス回収開口51を介して第1ガス回収部61により、また、第2ガス回収開口52を介して第2ガス回収部62により回収される。次に本実施形態におけるテンプレート11下と基板21又は同面板22との間にパージガスを高濃度に維持する方法に関して、図2B〜図2Dを使用して説明する。
【0015】
図2Bは、図2Aに示すショット42上に微細パターンを形成するために、ステージ23を−X方向に移動させる途中の状態を示す。このとき、第1ガス回収開口51に囲まれた領域(第1領域)53と、第2ガス回収開口52に囲まれた領域54(第2領域)とが重なり合う。領域53と領域54が重なりによって形成された部分を領域(第3領域)55とし、この領域55内(第3領域内)に位置するガス供給開口43Bのみからパージガスを供給する。この場合、領域55外のガス供給開口43A、43C、43Dからは、パージガスの供給を行わない。こうすることで、領域55内のみにパージガスを閉じ込めることが出来る。図2Cに、図2Bよりさらに−X方向にステージ23が移動し、ショット42上に、パターン面12が配置された状態を示す。この場合、領域55内に3つのガス供給開口43B、43C、43Dが含まれ、ガス供給開口43B、43C、43Dから領域55内にパージガスが供給される。その結果、パターン面12下にパージガスを高濃度に維持した状態で押印動作を行うことが出来、さらに領域55内にパージガスを閉じ込めることが出来る。押印(インプリント)が終了し、レジスト供給口32下に次のショットを移動する際には、すべてのガス供給開口43A〜43Dからのガスの供給を停止する。パージガスを供給するガス供給部60、パージガスを回収する第1、第2ガス回収部61,62は制御部Cにより制御されている。
【0016】
図2Dに、ステージ23がレジスト供給口32直下に次のショットを移動させるために、ステージ23を+X方向に移動している途中の状態を示す。この間もすべてのガス供給開口43A〜43Dからのガス供給を停止する。ステージ23が+X方向に移動するに従って、領域55の範囲が狭まり、領域55内に含まれるパージガスは、第1ガス回収開口51又は第2ガス回収開口52に回収される。押印後、すべてのガス供給開口43A〜43Dからのガス供給を停止することで、領域55内に含まれるパージガスを、第1ガス回収開口51又は第2ガス回収開口52で、すみやかに回収することが出来る。上述した方法により、領域55のみにパージガスを確実に閉じ込めることで、パージガスが干渉計73の光路等へ漏れるのを防止することができる。また、パージガスの漏れを防止できるので、パージガスの供給量を低減することが出来る。さらに、同面板22に頼らなくてもパージガスの漏れを低減できるので、同面板22を小型化することが可能となる。その結果、ステージ23に負荷される重量を軽減することが出来、またインプリント装置10のフットプリントを縮小することが出来る。
【0017】
[第2実施形態]
第2実施形態のインプリント装置は、基本的に第1実施形態を引き継ぐものであり、第1実施形態と異なる箇所のみについて説明する。図3Aは、図2CのXZ断面図を示している。ガス供給開口43から供給されたパージガスが、第1及び第2ガス回収開口51、52により回収され、テンプレート11下に閉じ込められる様子を表している。図3Aにおいて、テンプレート保持部13と基板21又は同面板22との距離をAとしている。この距離Aがインプリント装置10の構成により狭まると、第1ガス回収開口51及び第2ガス回収開口52で発生する負圧が、お互いのガス回収動作に影響し合い、領域55内にパージガスを閉じ込めることが困難な状態となる。上述したような問題を解決するために、第1ガス回収開口51及び第2ガス回収開口52で発生する負圧を抑制する。本実施形態では図3Bに示すように、テンプレート保持部13及び同面板22の形状を変更する。
【0018】
第1ガス回収開口51側の外周部(第1領域の外側)に、テンプレート保持部13の表面とステージ23の表面との間隔が大きい領域が生成されるように、図3B中に示す距離Bの段差を設ける。こうすることで、テンプレート保持部13と基板21又は同面板22との距離Aが狭まっても、第2ガス回収開口52で発生する負圧の影響を受けることなく、第1ガス回収開口51を介してパージガスを回収することが出来る。また同面板22の第2ガス回収開口52側の外周部に、図3B中に示す距離Cの段差を設ける。すなわち、第2ガス回収開口52側の外周部(第2領域の外側)に、ステージ23の表面とテンプレート保持部13の表面との間隔が、基板21又は同面板22の表面とテンプレート保持部13の表面との間隔よりも大きい領域を生成する。こうすることで、テンプレート保持部13と基板21又は同面板22との距離Aが狭まっても、第1ガス回収開口51で発生する負圧の影響を受けることなく、第2ガス回収開口52を介してパージガスを回収することが出来る。
【0019】
[第3実施形態]
第3実施形態のインプリント装置は基本的に第1及び第2実施形態を引き継ぐものであり、第1及び第2実施形態と異なる箇所のみについて説明する。本実施形態では図4Aに示すように、第1ガス回収開口51を8つの部分51a〜51hに分割する。また第2ガス回収開口52も、8つの部分52a〜52hに分割する。第1ガス回収開口51の部分51a〜51h及び第2ガス回収開口52の部分52a〜52hは、それぞれ第1ガス回収部61、第2ガス回収部62によって、各部分からパージガスが回収可能に構成される。
【0020】
図4Bは、第1ガス回収開口51に囲まれた領域(第1領域)53と、第2ガス回収開口52に囲まれた領域54(第2領域)とが重なる領域(第3領域)55が形成され、領域55内にガス供給開口43Bからパージガスを供給している状態を示す。このとき領域55の境界は、第1ガス回収開口の分割部分51a〜51dと、第2ガス回収開口の分割部分52f、52gにより定められている。第1ガス回収開口の分割部分51a〜51dと、第2ガス回収開口の分割部分52f、52gにおいて、パージガスの回収を行い、第1及び第2ガス回収開口51、52のその他の部分での回収動作を止める。このような制御を行うことで、上述した第1ガス回収開口51と第2ガス回収開口52で発生する負圧の影響を受けることなく、パージガスを回収することが出来、領域55内にパージガスを閉じ込めることが出来る。このように、第1及び第2ガス回収開口51、52を複数の部分に分割し、パージガスの閉じ込めに大きく寄与しない第1及び第2ガス回収開口51、52の部分における回収を止めることで、インプリント装置10内の空調が乱れることを防ぐことが出来る。また、パージガスを回収することで発生する振動や、回収に費やされるエネルギに関しても軽減することが出来る。本実施形態では、第1及び第2ガス回収開口を各8分割としたが、この限りではなく、必要に応じて増減させても構わない。
【0021】
[第4実施形態]
第4実施形態のインプリント装置は、基本的に第1〜3実施形態を引き継ぐものであり、第1〜3実施形態と異なる箇所のみについて説明する。本実施形態は、第3実施形態で説明したテンプレート保持部13と基板21又は同面板22とが近接した場合、第1ガス回収開口51及び第2ガス回収開口52の負圧がお互い影響し合う問題に対して、異なる解決方法を示す。図5に本実施形態の構成を示す。テンプレート保持部13の第1ガス回収開口51より外側の外周部に、第1空気噴出開口44を設ける。第1空気噴出開口44から供給されるガスは、ガス供給開口43から供給されるパージガスとは異なり、インプリント装置10内の雰囲気ガスである空気とする。こうすることで、テンプレート保持部13と、基板21又は同面板22との距離Aが狭まっても、第2ガス回収開口52で発生する負圧の影響を受けることなく、第1ガス回収開口51でパージガスを回収することが出来る。
【0022】
同面板22の第2ガス回収開口52の外側の外周部に、第2空気噴出開口45を設ける。第2空気噴出開口45から供給されるガスは、ガス供給開口43から供給されるパージガスとは異なり、インプリント装置10内の雰囲気ガスである空気とする。こうすることで、テンプレート保持部13と、基板21又は同面板22との距離Aが狭まっても、第1ガス回収開口51で発生する負圧の影響を受けることなく、第2ガス回収開口52を介してパージガスを回収することが出来る。空気は、第1空気噴出開口44と第2空気噴出開口45を介して空気噴出部46によって供給される。また、図6Aに示すように第1空気噴出開口44、第2空気噴出開口45を複数の部分44a〜44h、45a〜45hに分割しても構わない。こうすることで、図6Bに示すように、空気噴出部46により、領域55の境界付近に位置する第1空気噴出開口44a〜44d及び第2空気噴出開口45f、45gからのみ、空気を噴出可能に構成することが出来る。その結果、インプリント装置10内の空調の乱れを防ぐことが出来る。更に、第1,2空気噴出開口44,45から供給される空気の供給量を減らすことで消費量を減らすことができるとともに、第1,2空気噴出開口44,45から供給される空気を供給することで発生する振動も軽減することが出来る。
【0023】
本実施形態では、第1空気噴出開口44、第2空気噴出開口45から、空気を供給する構成を説明した。しかし、必ずしも第1空気噴出開口44、第2空気噴出開口45から、空気を強制的に供給する必要はない。図7に示すように、テンプレート保持部13に第1貫通穴47、ステージ23に第2貫通穴48を設ける構成としても構わない。第1貫通穴47は、テンプレート保持部13の表面に形成された第1開口を有しテンプレート11と基板21との隙間で構成される空間とインプリント装置10内とを連通させる。第2貫通穴48は、第2ガス回収開口52を囲むようにステージ23の表面に形成された第2開口を有し、テンプレート11と基板21との隙間で構成される空間とインプリント装置10内とを連通させる。こうすることで、第1ガス回収開口51、及び第2ガス回収開口52で発生する負圧により、第1及び第2貫通穴47、48からインプリント装置10内の雰囲気ガスである空気をテンプレート11下に供給することが出来る。
【0024】
以上、第3〜第5実施形態において、テンプレート保持部13と基板21又は同面板22とが近接した場合、第1ガス回収開口51及び第2ガス回収開口52の負圧がお互い影響し合う問題に対する解決方法を示した。この問題に対する解決方法はこの限りではなく、第3〜第5実施形態をそれぞれ組み合わせても構わない。例えば、テンプレート保持部13には図3Bに示す距離Bによる段差を設け、同面板22には図5に示す第2空気噴出開口45を設けても構わない。
【0025】
[物品の製造方法]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを転写(形成)する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを転写された基板を加工する他の処理を含みうる。以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変形及び変更が可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された樹脂とパターン面を有するテンプレートとを接触させて前記樹脂を硬化させることによりパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、
テンプレートを保持する保持部と、
基板を保持するステージと、
前記テンプレートを囲むように配置された複数のガス供給開口を介して前記テンプレートと前記基板との間の空間に空気と置換するためのガスを供給するガス供給部と、
前記複数のガス供給開口を囲むように前記保持部の前記ステージ側の表面に形成された第1ガス回収開口を介して前記ガスを回収する第1ガス回収部と、
前記基板を囲むように前記ステージに形成された第2ガス回収開口から前記ガスを回収する第2ガス回収部と、
前記第1ガス回収開口により囲まれる第1領域と、前記第2ガス回収開口により囲まれる第2領域とが重なり合う第3領域が形成される場合に、前記複数のガス供給開口のうち前記第3領域内に位置するガス供給開口のみから前記ガスを供給するように前記ガス供給部を制御する制御部と、
を備える、ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記保持部は、その表面と前記ステージの表面との間隔が前記第1領域より大きい領域を前記第1領域の外側に含む、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記ステージは、その表面と前記保持部の表面との間隔が前記第2領域より大きい領域を前記第2領域の外側に含む、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記第1ガス回収開口を囲むように前記保持部の前記表面に形成された第1空気噴出開口と、前記第2ガス回収開口を囲むように前記ステージの前記表面に形成された第2空気噴出開口とを介して空気を噴き出す空気噴出部をさらに備える、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1ガス回収開口を囲むように前記保持部の前記表面に形成された第1開口を有し前記保持部を貫通する第1貫通穴と、
前記第2ガス回収開口を囲むように前記ステージの前記表面に形成された第2開口を有し前記ステージを貫通する第2貫通穴と、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第1ガス回収開口及び前記第2ガス回収開口は、それぞれ複数の部分に分割され、前記第1ガス回収部及び前記第2ガス回収部は、前記第1ガス回収開口の各部分及び前記第2ガス回収開口の各部分から前記ガスをそれぞれ回収可能に構成され、
前記制御部は、前記第3領域が形成される場合に、前記第1ガス回収開口の前記複数の部分及び前記第2ガス回収開口の前記複数の部分のうち、前記第3領域の境界を定めている部分のみから前記ガスを回収するように前記第1ガス回収部及び前記第2ガス回収部を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第1ガス回収開口を囲むように前記保持部の前記表面に形成された第1空気噴出開口と、前記第2ガス回収開口を囲むように前記ステージの前記表面に形成された第2空気噴出開口とを介して空気を噴き出す空気噴出部をさらに備え、
前記第1空気噴出開口及び前記第2空気噴出開口は、それぞれ複数の部分に分割され、前記空気噴出部は、前記第1空気噴出開口の各部分及び前記第2空気噴出開口の各部分から空気をそれぞれ噴出可能に構成され、
前記制御部は、前記第3領域が形成される場合に、前記第1空気噴出開口の前記複数の部分及び前記第2空気噴出開口の前記複数の部分のうち、前記第3領域の境界を定めている前記部分の外側の部分のみから空気を噴出するように前記空気噴出部を制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記ステージは、該ステージに保持された基板を包囲する包囲部材を含み、
前記第2ガス回収開口及び前記第2空気噴出開口は、前記包囲部材に形成されている、ことを特徴とする請求項4又は請求項7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記ステージは、該ステージに保持された基板を包囲する包囲部材を含み、
前記第2ガス回収開口及び前記第2開口は、前記包囲部材に形成されている、ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてインプリント処理を基板に対して行う工程と、
前記工程で前記インプリント処理の行われた基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80015(P2012−80015A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226060(P2010−226060)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】