説明

インプリント装置

【課題】高い精度および効率でパターン転写を行うインプリント装置を提供する。
【解決手段】被転写基板に転写するパターンの形状を有するテンプレートを前記被転写基板上に形成されたレジストに接触させた状態で前記レジストを硬化することによりレジストパターンを形成するインプリント装置は、アレイ状をなすように所望の間隔で複数のテンプレートを保持するテンプレート保持手段と、前記テンプレートの位置を個々に制御する位置制御手段と、を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリントリソグラフィ技術は、石英等の基板の表面に凹凸を形成してテンプレート(インプリント・マスク)を作製し、処理基板上に塗布された固化していないレジスト材にテンプレートを接触させ、その状態で、例えば光(UV(Ultra Violet)光)を照射することにより、レジスト材を固化し、さらに、テンプレートをレジスト材から上方へ引き上げて離すことにより、テンプレートに形成されたパターンの凹凸を反転したレジストパターンを形成する方法である。このようなインプリントリソグラフィ技術を光インプリントと呼ぶ。本明細書では、これら一連の工程による一回のレジストパターン形成の動作をインプリント動作と呼ぶこととする。
【0003】
1回のインプリント動作には、例えば次記するように多数の工程が含まれる。すなわち、レジスト剤の滴下、テンプレートの位置合わせ、下地パターンに対するテンプレートサイズや形状の補正、テンプレートのレジスト剤への接触とレジスト剤のテンプレート中への充填、レジスト剤の硬化、テンプレートの離型、次のインプリント位置への被転写基板の位置の移動などである。このため、従来から、1枚の被転写基板について複数回のインプリント動作を行なおうとすると、被転写基板にパターンを形成するための時間が長くなり、パターン形成のスループットが著しく低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い精度および効率でパターン転写を行うインプリント装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の一形態によれば、被転写基板に転写するパターンの形状を有するテンプレートを前記被転写基板上に形成されたレジストに接触させた状態で前記レジストを硬化することによりレジストパターンを形成するインプリント装置は、アレイ状をなすように所望の間隔で複数のテンプレートを保持するテンプレート保持手段と、前記テンプレートの位置を個々に制御する位置制御手段と、を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態によるインプリント装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】図1のアレイ状テンプレートホルダの平面図。
【図3】アレイの構成単位であるテンプレートホルダの平面図。
【図4】図3のテンプレートホルダの断面図。
【図5】ウェーハショットマップとショットシーケンスの説明図。
【図6】第2の実施の形態によるインプリント装置のテンプレートホルダの断面図。
【図7】テンプレート離型時の高さ調整方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)第1の実施の形態
図1は、第1の実施の形態によるインプリント装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すインプリント装置は、テンプレートへのレジスト剤の充填後に、光を照射することにより該レジストを硬化させる光硬化型のインプリント装置である。
【0009】
本実施形態のインプリント装置は、複数のテンプレートホルダTHai(iは自然数)と、テンプレートステージ40と、テンプレート保持・昇降機構10と、アライメントステージ50と、合わせズレ検査機構70と、アライメントセンサ80と、ウェーハWが載置されるウェーハステージ110と、UV光源90と、を備える。本実施形態において、ウェーハWは例えば被転写基板に対応する。
【0010】
複数のテンプレートホルダTHaiは、テンプレートTPj(jは自然数)をそれぞれ保持する。テンプレートステージ40は、真空チャック等によりテンプレートホルダTHaiを固定する。テンプレート保持・昇降機構10は、ベース60を介してテンプレートステージ40を支持し、ベース60およびテンプレートステージ40を介してテンプレートホルダTHaiを昇降することにより、テンプレートTPのレジスト剤への接触や離型を行なう。
【0011】
アライメントステージ50、合わせズレ検査機構70および、アライメントセンサ80は、インプリント時に、ウェーハW上に形成されたマークパターン(図示せず)に基づいてテンプレートTPjの水平面内での位置を調整する。
【0012】
ウェーハWは、ウェーハチャック100によりウェーハステージ110に固定される。ウェーハステージ110は、ステージ定盤120上を移動することにより、インプリント動作でパターンを形成する位置を調整する。
【0013】
UV光源90は、光(UV光)を照射することにより、ウェーハW上のレジストを硬化させる。
【0014】
本実施形態の第1の特徴は、それぞれがテンプレートTPjを保持する複数のテンプレートホルダTHaiをテンプレートステージ40に固定してインプリント動作を行い、これによりパターン形成のスループットを向上させる点にある。
【0015】
図2は、テンプレートステージ40に固定された複数のテンプレートホルダTHai(iは自然数)の一例を示す平明図である。図2に示す例では、4つのテンプレートホルダTHa1〜THa4(i=1〜4)がアレイ状に配置されている。これにより、4つのテンプレートTP1〜TP4を組み合わせて4ショット分を一括でウェーハWに転写することができる。テンプレートホルダTHa1〜THa4は、スペーサSP12,SP23,SP34,SP41が相互間に挿入されてテンプレートステージ40に固定される。これらのスペーサのサイズおよび形状は適宜選択可能であり、複数のテンプレートホルダTHaiを自由に組み合わせることができる。スベーサの材料としては、金属、セラミックスなどを使用することができる。なお、図1には、図2のテンプレートホルダTHa1〜THa4の正面図が示されているので、テンプレートホルダTHa4,THa3のみが描画されている。
【0016】
図2に示す4つのテンプレートホルダTHa1〜THa4のうち、テンプレートホルダTHa1を取り挙げてその詳細構造を説明する。図3は、テンプレートホルダTHa1の拡大平面図である。
【0017】
テンプレートホルダTHa1が保持するテンプレートTP1は、図3中に波線DLに示すように、パターン形成領域RPを有し、このパターン形成領域RPに、ウェーハWに転写するパターンの形状が凹凸で形成される。パターン形成領域RPのサイズは、1回のインプリント動作でパターンを転写することができる大きさとなっている。半導体リソグラフィにおいて通常使われている光露光方式のリソグラフィで使用されているマスク(=原版)パターンを被転写基板に転写するための一度の露光を「ショット」と呼び、一度に露光できるサイズを「ショットサイズ」と呼んでいる。これと同様に、インプリントリソグラフィにおいても、パターン形成領域RPのサイズは「ショットサイズ」と呼ばれる。このショットサイズは、作製するデバイス(半導体デバイスの場合は集積回路チップ)の大きさに依存して、デバイス毎に異なる。
【0018】
ここで、光露光方式のリソグラフィにおいて、光露光マスクのサイズは、装置の規格で決められた大きさで統一されている。従って、テンプレートホルダのサイズもテンプレートに合わせて一定の大きさとなっている。このようなテンプレート、またはテンプレートホルダをアレイ状に複数個並べて、これらのパターンを一括で転写する方式では、ショットサイズに応じて被転写基板にレイアウトされるショットマップに対応させて、または(ショットイメージと呼ばれる)ショットサイズやショットの繰り返しピッチに対応させて、アレイ状のテンプレートホルダをその都度用意する必要がある。
【0019】
本実施形態によれば、例えば図2に示すスペーサSP12,SP23,SP34,SP41のサイズおよび形状を、様々なショットマップに対応させて適宜選択することにより、各テンプレートホルダTHa1〜THa4の間の間隔を調整することができる。
【0020】
本実施形態の第2の特徴は、テンプレートホルダTHaiに複数個のアライメント用素子が設けられ、これにより、テンプレートTPjの大きさや形状をショット毎に調整できる点にある。
【0021】
図3の符号PZa1〜PZa16に示すように、アライメント用素子は、金属やガラス等で作られた固い材料によるテンプレートホルダTHaiの内縁部分に所定間隔で設けられたピエゾ素子(PZT)等の圧電体で構成される。各アライメント用素子は、図示しない電気回路により、電圧が印加され、または電流が流されることにより、テンプレートTPjに加える圧力が制御される。これにより、パターンを転写するウェーハWに作り込まれている下層パターンに対してテンプレートTPjのサイズや形状が、大面積のテンプレートを使用する場合や複数のテンプレートをテンプレートホルダに固定する場合と比較して高い精度で調整される。
【0022】
なお、ウェーハWとテンプレートTPjとの概略的な位置合せは、ウェーハWに形成されたアライメントマークとテンプレートTPjとの重なり具合から、ウェーハWとテンプレートTPjとを機械的に移動させることにより行なわれる。
【0023】
これに対して、本実施形態のアライメント用素子PZa1〜PZa16は、テンプレートTPjに圧力を印加することにより、ppmのオーダーでテンプレートTPjを変形させる。例えば全てのアライメント用素子PZa1〜PZa16がテンプレートTPjに対して均等に圧力を印加するとテンプレートTPjを縮小させることができる。また、例えばアライメント用素子PZa1〜PZa4,PZa9〜PZa12のみに均等に圧力を印加させると、テンプレートTPjの幅を狭くすることができる。さらに、例えばアライメント用素子PZa1とPZa12のみに圧力を印加させると、テンプレートTPjの形状を台形に変化させることもできる。その他、アライメント用素子PZa1〜PZa16は微妙な位置合わせも併せて行なう。本実施形態において、アライメントステージ50、合わせズレ検査機構70、アライメントセンサ80、およびアライメント用素子PZa1〜PZa16は、例えばアライメント手段に対応する。
【0024】
図4は、図3のA−A断面図である。転写するパターン面がウェーハWに対向するようにテンプレートTP1をテンプレートホルダTHa1内に収納し、アライメント素子PZa1〜PZa16にて横方向の固定がなされる。図4では、テンプレートTP1は三段の凸形状になっている。これは、小さい中央の凸部PT1には被転写基板に転写するパターン形状の凹凸が形成されており、この部分がパターン転写領域RP(=ショットサイズ)をなす。周縁部の段差SP2は、テンプレートホルダTHa1にて垂直方向に固定するために形成されている。テンプレートホルダの背面(テンプレートTP1のウェーハ対向面とは逆の面)には、テンプレートTP1を垂直方向に固定する治具Jがさらに設置されている。
【0025】
本実施形態のインプリント装置によるショットシーケンスとウェーハショットマップとの関係について図5を参照しながら説明する。
【0026】
本実施形態では、ショットサイズとウェーハW上に転写するショットのピッチとに応じてテンプレートホルダTHai間の距離を調整して複数のテンプレートTPjをアレイ状に配置している。このため、一度のインプリントにより、テンプレートTPjの数量に応じたショットのパターンをウェーハWに一括転写する。図5の紙面左上に示すケースAでは、ウェーハW上のショットマップに合わせて、1〜4の数字で示したショットをそれぞれ一括して順次に行なうことにより、16ショットのパターンを4回のインプリント動作で転写することができる。なお、図5の紙面左下に示すケースBは、6個(=3×2)のテンプレートTP5〜TP10を組み合わせた例である。
【0027】
テンプレートTPjは、ウェーハW上に同一のデバイスを作製する場合はすべて同じ形状のテンプレートを複数個用意することとなる。これには、マスターテンプレートを原版として複数のレプリカテンプレートを作製する方法により、同じテンプレートを精度よく用意することが可能である。
【0028】
前述の通り、テンプレートサイズを大きくして転写面積を大きくすることにより、スループットの向上を企図する方法は既に提案されている。しかしながら、この方法では、転写するパターンの凹凸形状を、大面積のテンプレートの全体に亘って精度よく作製する必要がある。この一方、本実施形態のインプリント装置を用いたインプリントでは、同じテンプレートを自由に組み合わせることにより、ウェーハWの全領域にわたって、高いパターンの転写精度を得ることができる。さらに、個々のテンプレートTPjはショット毎に独立してアライメントの調整をすることができるため、被転写基板に形成されている下地パターンに対する合わせ精度も、被転写基板全体に亘って得られることとなる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、インプリントリソグラフィのスループットを、組み合わせたテンプレートTPjの数に応じて短縮することができ、さらに、パターンの転写も精度よく行なうことができるので、デバイス製品の歩留まりの劣化を抑制できる。これらにより、インプリントによるデバイス生産において、高性能のデバイスの生産数を増大させ、コストを低減することが可能となる。
【0030】
なお、上記説明では複数のテンプレートホルダ間の間隔をスベーサ材により調整可能である場合を取り挙げたが、テンプレート間の間隔を調整できないテンプレートホルダを使用することも可能である。この場合は、インプリントによるショットサイズ毎、および、ショットピッチ毎に、このようなテンプレートホルダを用意すればよい。
【0031】
(2)第2の実施の形態
次に、第2の実施の形態によるインプリント装置について説明する。本実施形態の特徴は、前述した第1の実施の形態と同様に複数のテンプレートTPjを使用したインプリントにおいて、ショットマップに対応させてテンプレートTPjの高さを制御する高さ調整用の素子をさらに備える点にある。本実施形態のインプリント装置の他の構成については、図1に示す第1の実施の形態と実質的に同一である。
【0032】
図6は、本実施形態によるインプリント装置の要部を示す断面図である。図6に示すように、本実施形態のインプリント装置は、第1の実施の形態におけるテンプレートホルダTHaiに代えてテンプレートホルダTHbi(iは自然数)を備える。図4との対比により明らかなように、テンプレートホルダTHbiは、テンプレートホルダTHaiの構成に加えて高さ調整を行う素子PZg1,PZg2をさらに含む。高さ調整用素子30a,30bは、各テンプレートTPjの上面および下面に接するようにテンプレートホルダTHbiに配設される。図3のアライメント用素子PZa1〜PZa16と同様に、高さ調整用素子PZg1,PZg2は、ピエゾ素子(PZT)等の圧電体で構成され、それぞれ、図示しない電気回路により、電圧が印加され、または電流が流されることにより、テンプレートTPjに加える圧力が制御される。これにより、テンプレートTPjとウェーハWとの距離が調整される。このように、高さ調整用素子PZg1,PZg2を用いることにより、ショットマップに対応するように、テンプレートTPj毎にその高さ方向の位置を制御することができる。本実施形態において、高さ調整用素子PZg1,PZg2は、例えば高さ調整手段に対応し、テンプレートステージ40、ベース60、およびテンプレート保持・昇降機構10と共に、例えば位置制御手段に対応する。
【0033】
このような高さ調整の必要性と利点について図5に示すショットマップを参照しながら説明する。
【0034】
例えば図5中に一点鎖線で示したショット1とショット2に着目すると、ショット1のテンプレートTP1はウェーハWの外側に出てしまっているため、この部分でのインプリントは行なわない。この一方、ショット2のテンプレートTP1は、通常通りにウェーハW内でショットを行なうこととする。本実施形態によれば、ショットマップにおいてショット不要の場所に位置するテンプレートTPjに対して、高さ調整用素子PZg1,PZg2によりその高さ方向の位置をパターン形成用の位置よりも高くなるように引き上げることができる。例えば図6においては、パターン形成用のテンプレートTP2については、ウェーハWに対向する転写面をパターン形成位置h1に一致させる一方、ショット不要の場所にあるテンプレートTP1については転写面をテンプレート待避位置h2に一致するように引き上げる。
【0035】
第1の実施の形態のように、テンプレートTPjの高さ方向の位置を個別に調整する機構が無い場合は、例えば図5でショット1の全体についてショットを行わないようにするなど、ウェーハWの面積を充分に有効活用できない可能性があった。
【0036】
本実施形態によれば、高さ調整用素子PZg1,PZg2により、各テンプレートTPjに対して、個々に高さを制御できるので、ウェーハ上のショット位置(ショットマップ)に対応して、ウェーハWの外側に出てしまうショット、または、事前にレジストパターンが形成されている位置に当たるショットについて、対応するテンプレートTPjをショット時にテンプレート待避位置h2に移動させてショットを行なわないように制御することができる。これにより、ウェーハW内にショット可能なエリアが増加してウェーハの面積を有効活用することができる。この結果、1枚のウェーハから取得できる半導体デバイスのチップ数が増加し、製造コストを低減させることができる。また、ウェーハの外や外周部分など、ウェーハ中央部から不連続な面へのインプリントを行なわないため、装置の他の構造における部材やウェーハエッジでのテンプレートTPjの破損を抑制することができ、テンプレートTPjの寿命を長くすることが可能になる。この結果、より少ないテンプレート数での半導体デバイスの製造が可能となるため、これも製造コストの低減に寄与できる。
【0037】
上述した高さ調整用素子PZg1,PZg2を用いたテンプレート個別の高さ制御を、レジストからのテンプレート離型に利用することにより、インプリント動作のスループットおよび精度をさらに向上させることができる。
【0038】
通常、テンプレートTPjをレジスト剤に接触させてレジストパターンを形成した後に、テンプレートTPjをレジストパターンから離型する際、テンプレートTPjとレジストパターンとの接触面積が大きくなるほど、離型に必要となる力が増加する。上述した第1の実施の形態においてアレイ状に構成された4個のテンプレートTP1〜TP4を保持するテンプレートホルダTHa1〜4の全体をTHaと総称すると、このテンプレートホルダTHaを離型時に持ち上げるためには、テンプレートホルダTHi単体の場合の4倍の力が必要となる。この力が大きすぎると、テンプレートホルダTHaを持ち上げる際にテンプレートホルダTHaがテンプレートステージ40(図1参照)から脱落することがあり、場合によっては、逆に、レジストパターンを形成したウェーハWがテンプレートTPjと接触したまま持ち上がってしまうことがある。その理由は、ウェーハW上で一度にパターンを形成する面積、さらに一度にテンプレートを離型することができるテンプレートの数を増やすことにより、テンプレートの離型に必用な力が、テンプレートステージ40とテンプレートTPjの吸着力、ウェーハWとウェーハステージ110との間の吸着力、および、ウェーハWとレジストとの吸着力等よりも大きくなってしまうためである。
【0039】
そこで、テンプレートTPjごとにそれぞれの高さを制御する高さ調整用素子PZgk(kは自然数)を含むようにそれぞれ構成されたテンプレートホルダTHbi(その全体をTHbと称する)を用意し、テンプレートホルダTHbの全体を一括してレジストから離型する前に、各テンプレートTPjを順次に若干量だけ持ち上げることで、テンプレート表面がレジストと接触している面積を減らすことができる。図7に示す例で説明すると、テンプレートホルダTHb1を含むテンプレートホルダTHbの全体をレジストRGから一括して離型する前に、テンプレートTP1を若干量だけ持ち上げれば、テンプレートTP1の表面の分だけレジストRGと接触している面積が低減し、テンプレートTP2の円滑な離型が可能になる。本実施形態によれば、複数テンプレートの同時インプリントにおいて、従来の技術では困難であった個々のインプリント動作のタイミング制御が簡易な構成で実現される。なお、個々のテンプレートTPjを持ち上げる高さは、レジストの厚さ以下でもよい。
【0040】
本実施形態では、テンプレートホルダTHb全体での離型動作の前に、個々のテンプレートTPjの高さ制御を行なうための時間がショット時間に加わる。このため、ショットに要する時間が若干長くなることが懸念される。しかしながら、複数テンプレートでのインプリント1ショット分の時間の増加は、複数個のテンプレートの一括インプリントによるショット時間の短縮効果を考慮すると、不利な点は非常に小さい。
【0041】
例えば、1ショットのインプリント動作にかかる時間を1.2秒とすると、ウェーハW全体でのショット時間の合計は、例えば図5のショットマップを取り挙げると、従来の1テンプレートによるインプリントでは、ウェーハ全体で184ショットあるため、3.7分かかる。これに対して、図5のケースAのように4ショット分を一括でインプリントすると、44ショットでウェーハ全体にパターンを形成できる。したがって、ウェーハ全体のインプリントにかかる時間は0.88分(52.8秒)と、4.2分の1に削減される。
【0042】
これに対して、本実施形態のように、離型動作前にテンプレートTPjの高さ制御を順次行なう場合、1個のテンプレートにつき、0.05秒(50ms)で高さを制御すると、4テンプレートの場合は1ショットのインプリント時間が1.4秒となる。実際には図5のショット1のようにインプリント動作を行なわないテンプレートもあるため、1枚のウェーハ全体のインプリントにかかる時間は1.0分(612秒)となる。これは、従来と比べるとり3.7倍の速さとなり、図5のケースAと比べると16%程度の時間増加に止まる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、テンプレートTPj個別の高さ制御をテンプレートホルダTHb全体の離型動作の前に行なうので、離型に必要となる力を減少させることができ、テンプレートTPjの脱落やウェーハWの持ち上がりなどの事故を抑制することができる。これにより、テンプレートTPjやウェーハWの利用効率が高まり、半導体デバイス生産における歩留まりの向上、生産数の向上、事故によるテンプレート破損によるテンプレートの再作製によるコスト増加等を抑制することができる。この結果、より多くの半導体デバイスを低コストで製造することが可能となる。
【0044】
なお、上記実施形態では、光を照射してレジストを硬化させる光硬化型のインプリント装置を一例に取り挙げて説明したが、これに限ることなく、熱硬化型のインプリント装置にも勿論適用可能である。その場合は、UV光源90に代えて加熱手段および圧力印加手段をインプリント装置に設ければよい。
【0045】
(3)その他
以上説明した実施の形態によれば、高い精度および効率でパターン転写を行うインプリント装置が提供される。
【符号の説明】
【0046】
10:テンプレート保持・昇降機構
40:テンプレートステージ
50:アライメントステージ
60:ベース
70:合わせズレ検査機構
80:アライメントセンサ
PZa1〜PZa16:アライメント用圧電素子
PZg1,PZg2:高さ調整用圧電素子
THai,THbi:テンプレートホルダ
TPj:テンプレート
W:ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写基板に転写するパターンの形状を有するテンプレートを前記被転写基板上に形成されたレジストに接触させた状態で前記レジストを硬化することによりレジストパターンを形成するインプリント装置であって、
アレイ状をなすように所望の間隔で複数のテンプレートを保持するテンプレート保持手段と、
前記テンプレートの位置を個々に制御する位置制御手段と、
を備えるインプリント装置。
【請求項2】
前記位置調整手段は、各テンプレートの高さを調整する高さ調整手段をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記位置調整手段は、形成すべきレジストパターンの有無に応じて各テンプレートの前記レジスト材への接触・非接触が制御されるように前記高さ調整手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記位置調整手段は、硬化されたレジストから、各テンプレートが互いに異なる複数のタイミングで離隔するように前記高さ調整手段を制御することを特徴とする請求項2または3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記被転写基板には下層パターンが予め形成されており、
前記下層パターンに応じて各テンプレートのサイズおよび形状の少なくともいずれかを調整するアライメント手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49370(P2012−49370A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190852(P2010−190852)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】