説明

インモールドラベル容器

【課題】薄肉化されたインモールドラベル容器において、とりわけフランジの強度を上昇させることができるインモールドラベル容器を提供する。
【解決手段】インモールドラベル容器10は胴部1と、胴部1上端に設けられたフランジ4と、胴部1に連結された底部3とを備えている。帯状ラベル5は胴部1からフランジ4まで延び、ラベル5の非ヒートシール層5b、5cの厚さは、フランジ4の厚さの7%以下となっている。フランジ4の厚さは、胴部1の厚さの1.0〜1.4倍となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベル容器に関し、更に詳細には、軽量かつ薄肉であっても落下強度に優れるインモールドラベル容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料物や固形物を収容する為の容器としてインモールドラベル容器が広く使用されている。インモールドラベル容器は、他のガラス容器や金属容器に比較して軽量であり成形性に優れるといった多くの利点を有するが、更なる軽量化した容器の希求がある。
【0003】
インモールドラベル容器は、射出成形やブロー成形によって所望の形状に成形される。例えば、射出成形によって截頭錐体形状のプラスチック容器を成形する場合、溶融樹脂を金型に流し込み、樹脂を冷却固化させることにより、所望の形状の容器を形成できる。容器を軽量化するためには、射出成形機の金型に流し込む樹脂量を減らして容器を肉薄化することにより実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−315726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薄肉化したインモールドラベル容器は機械的強度に劣るという問題があった。とりわけ、インモールドラベル容器内に、内容物を収納した状態では容器重量が増加しているため、内容物を収納した状態で容器が落下すると、容器のうち、とりわけフランジ近傍が破損する場合があった。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、軽量かつ薄肉であっても落下強度に優れたフランジをもつインモールドラベル容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ラベルと、このラベル表面に射出された射出樹脂とからなるインモールドラベル容器において、胴部と、胴部上端に設けられたフランジと、胴部に連結された底部とを備え、ラベルは胴部からフランジまで延び、ラベルは射出樹脂側の内側に位置するヒートシール層と、外側に位置する非ヒートシール層とを有し、ラベルの非ヒートシール層の厚さはフランジの厚さの7%以下となり、フランジの厚さは、胴部の厚さの1.0〜1.4倍となることを特徴とするインモールドラベル容器である。
【0008】
本発明は、ラベルはヒートシール層としてのHSOPP層と、非ヒートシール層としてのVMPET層およびOPP層とを有することを特徴とするインモールドラベル容器である。
【0009】
本発明は、射出樹脂はポリプロピレン樹脂からなることを特徴とするインモールドラベル容器である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、フランジの厚さは胴部の厚さの1.0〜1.4倍となっているため、胴部を経てフランジに供給される射出樹脂が胴部からフランジ側に一気に供給されるので、フランジにヒケが生じることはない。また、ラベルの非ヒートシール層の厚さは、フランジの厚さの7%以下となっているため、フランジにおけるラベル端面と射出樹脂との接着性を維持することができ、落下試験の際にフランジにおける割れの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明によるインモールドラベル容器の一実施の形態を示す全体側断面図。
【図2】図2はインモールドラベル容器の胴部とフランジを示す拡大図。
【図3】図3はインモールドラベル容器に対して行われる落下試験を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1乃至図3は、本発明によるインモールドラベル容器の一実施の形態を示す図である。
【0014】
図1に示すように、インモールドラベル容器10は胴部1と、胴部1の上端に設けられたフランジ4と、胴部1に連結された底部3と、底部3の周縁3aから下方へ突出する糸尻部2とを備えている。
【0015】
このうち、胴部1は巻付けてなる帯状ラベル5と、帯状ラベル5の表面に射出された射出樹脂6とからなっている。また底部3は底部ラベル7と、底部ラベル7の表面に射出された射出樹脂6とからなっている。また帯状ラベル5は、胴部1から上方に向かってフランジ4側へ延びるとともに、糸尻部2側へも延びている。このように糸尻部2およびフランジ4は、帯状ラベル5と、帯状ラベル5上の射出樹脂6とからなっている。
【0016】
ところで帯状ラベル5および底部ラベル7は、いずれも同一の層構成を有している。
【0017】
すなわち帯状ラベル5および底部ラベル7として、以下の層構成のものを用いることができる。
OPP(延伸ポリプロピレン)20μ/VMPET(アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート)12μ/HSOPP(ヒートシール延伸ポリプロピレン)20μ
OPP 30μ/VMPET 12μ/HSOPP 30μ
【0018】
図2に示すように、帯状ラベル5はHSOPP層5aと、VMPET層5bと、OPP層5cとを有し、このうちHSOPP層5aはヒートシール層となっており、VMPET層5bおよびOPP層5cは非ヒートシール層となっている。
【0019】
また図2に示すように、帯状ラベル5の非ヒートシール層となるVMPET層5bとOPP層5cの合計厚さlは、フランジ4の厚さlに対して、
≦0.07×lとなっている。
【0020】
またフランジ4の厚さlと、胴部1の厚さlとの関係は、
1.0×l≦l≦1.4×lとなっている。
【0021】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0022】
図2に示すように、帯状ラベル5の非ヒートシール層5b、5cの厚さlは、フランジ4の厚さlに対して、l≦0.07×lとなっている。
【0023】
一般に非ヒートシール層5b、5cは、ガスバリア層および印刷層として機能する層であり、射出樹脂6との接着性は低い層である。したがってこの非ヒートシール層5b、5cの厚さlが、フランジ4の厚さlに対して大きくなると、帯状ラベル5のうちフランジ4側の端面9と射出樹脂6との間の接着不十分な領域が拡大してしまう。この場合、インモールドラベル容器10を落下させた場合、帯状ラベル5のうちフランジ4側の端面9と射出樹脂6との間に割れや亀裂が生じてしまう。
【0024】
これに対して本発明によれば、帯状ラベル5のうち非ヒートシール層5b、5cの厚さlがフランジ4の厚さlに対して、l≦0.07×lとなっているので、帯状ラベル5のフランジ4側の端面9と射出樹脂6との間で十分な接着機能を果たすことができる。このためインモールドラベル容器10を落下させても、フランジ4の帯状ラベル5の端面9に割れが生じることはない。
【0025】
また、フランジ4の厚さlは胴部1の厚さlに対して、1.0×l≦l≦1.4×lの関係をもつので、射出樹脂6を底部3側から射出し、胴部1を経てフランジ4まで供給する際、射出樹脂6が胴部1からフランジ4側へ一気に急速に流すことができ、しかも圧力を十分にかけることができる。このため、胴部1からフランジ4側へ射出樹脂6を供給する際に生じるフランジ4のヒケの現象を抑えることができる。
【実施例】
【0026】
次に本発明の具体的実施例について、以下説明する。
【0027】
まず表1に示す条件のもとで容器1−7を作製した。
【0028】
射出樹脂としてはメルトフローレート100g/10分のポリプロピレン(PMD81M サンアロマー株式会社製)のものを用いた。射出樹脂の温度は230℃であり、充填時間は0.18秒、最大充填圧力は175MPaであった。
【表1】

【0029】
次に容器1−7についてフランジのヒケを観察し、その後フランジにヒケが生じた容器7を除いて、他の容器1−6に対して落下試験を行った。
【0030】
落下試験は図3に示すように、インモールドラベル容器10のフランジ4を支持台11の受治具11aにより支持しておき、インモールドラベル容器10の上方から重量260gの重り13を落下高さhから落下させることにより行った。落下試験の結果はインモールドラベル容器10の割れを観察することにより評価した。
【0031】
なお落下試験において、落下高さは10cmから始まり、フランジに割れが生じない場合、落下高さを+10cmずつ上げていった。落下高さを60cmまで上昇させて評価し、70cmでもフランジに割れが生じない場合、落下高さを80cmとした。
【0032】
各容器1-7のフランジのヒケ、ラベルの厚みおよび落下試験の結果を表2に示す。
【表2】

【0033】
表1および表2から、以下の点が判明した。
【0034】
(容器1、2)
容器1、2においてフランジ厚は、胴部厚×1.0〜1.4の範囲にあるためフランジにヒケは生じない。しかしながら非ヒートシール層の厚み(32μ、42μ)は、いずれもフランジ厚(0.4mm)×0.07=28μ以上となっている。このため落下試験では比較的低い落下高さでフランジに割れが生じた。
【0035】
(容器3、4)
容器3、4においてフランジ厚は、胴部厚×1.0〜1.4の範囲にあるためフランジにヒケは生じない。
【0036】
非ヒートシール層の厚み(32μ)がフランジ厚(0.5mm)×0.07=35μより小さな容器3は、落下試験でフランジに割れが生じにくい。しかしながら、容器4は非ヒートシール層の厚み(42μ)がフランジ厚(0.5mm)×0.07=35μより大きくなるため、落下試験で比較的低い落下高さでフランジに割れが生じた。
【0037】
(容器5、6)
容器5、6においてフランジ厚は、胴部厚×1.0〜1.4の範囲にあるためフランジにヒケは生じない。
【0038】
容器5、6の非ヒートシール層の厚み(32μ、42μ)は、いずれもフランジ厚(0.6mm)×0.07=42μ以下となっている。このため落下試験ではフランジに割れが生じにくくなっている。
【符号の説明】
【0039】
1 胴部
2 糸尻部
3 底部
3a 底部周縁
4 フランジ
5 帯状ラベル
5a ヒートシール層
5b、5c 非ヒートシール層
6 射出樹脂
7 底部ラベル
9 端面
10 インモールドラベル容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベルと、このラベル表面に射出された射出樹脂とからなるインモールドラベル容器において、
胴部と、
胴部上端に設けられたフランジと、
胴部に連結された底部とを備え、
ラベルは胴部からフランジまで延び、
ラベルは射出樹脂側の内側に位置するヒートシール層と、外側に位置する非ヒートシール層とを有し、
ラベルの非ヒートシール層の厚さはフランジの厚さの7%以下となり、フランジの厚さは、胴部の厚さの1.0〜1.4倍となることを特徴とするインモールドラベル容器。
【請求項2】
ラベルはヒートシール層としてのHSOPP層と、非ヒートシール層としてのVMPET層およびOPP層とを有することを特徴とする請求項1記載のインモールドラベル容器。
【請求項3】
射出樹脂はポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする請求項2記載のインモールドラベル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−73700(P2011−73700A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225217(P2009−225217)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】