説明

インモールド加飾成形装置及びその成形方法

【課題】本発明は、深いキャビティの内壁にフィルムを密着固定するインモールド加飾成形装置及びその成形方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るインモールド加飾成形装置は、雄金型と、キャビティを有する雌金型と、フィルムと、前記雄金型と前記雌金型との間に設置され、前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に押圧する押圧ブロックと、を備え、前記雌金型には、前記押圧ブロックが前記フィルムを押圧する前に、前記雌金型の金型分割面より突出して前記フィルムを支持する支持部材が設けられている。本発明は、インモールド加飾成形方法を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置及びその成形方法に関し、特に製品成形と同時に成形品の表面にフィルムを付着させる加飾加工を行うインモールド加飾成形装置及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機、冷蔵庫、電気炊飯器、エアコンなどの家電製品の表面加飾技術として、一般的にインモールド加飾成形技術が採用されている。
【0003】
図1及び図2に示されるように、従来のインモールド加飾成形装置は、フィルム100と、雄金型20と、キャビティ31を有する雌金型30と、2つの押圧ブロック40と、を備える。前記フィルム100は、フィルム移送装置10によって前記雄金型20と前記雌金型30との間に移送される。射出成形を行う前に、前記2つの押圧ブロック40で前記フィルム100の両端を前記雌金型30の金型分割面に押圧している。前記2つの押圧ブロック40間のフィルム100の長さは、Lである。射出成形を行う時、前記キャビティ31内の空気を真空引きして、前記2つの押圧ブロック40間のフィルム100を引き伸ばして前記キャビティ31の内壁に付着させる。
【0004】
しかし、前記フィルム100が破断伸び限界を有するため、前記キャビティ31の深さが深すぎると、前記フィルム100を前記キャビティ31の内壁に密着固定することができなくなったり、前記フィルム100が破れたりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第一の目的は、前記課題を解決し、深いキャビティの内壁にフィルムを密着固定するインモールド加飾成形装置を提供することにある。
【0006】
本発明の第二の目的は、前記課題を解決し、深いキャビティの内壁にフィルムを密着固定するインモールド加飾成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第一の目的を達成するため、本発明に係るインモールド加飾成形装置は、雄金型と、キャビティを有する雌金型と、フィルムと、前記雄金型と前記雌金型との間に設置され、前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に押圧する押圧ブロックと、を備え、前記雌金型には、前記押圧ブロックが前記フィルムを押圧する前に、前記雌金型の金型分割面より突出して前記フィルムを支持する支持部材が設けられている。
【0008】
前記第二の目的を達成するため、本発明に係るインモールド加飾成形方法は、雄金型を提供するステップと、キャビティを有する雌金型を提供するステップと、フィルムを提供するステップと、押圧ブロックを提供するステップと、前記フィルムを前記雄金型と前記雌金型との間に移送して前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に接近させるステップと、前記雄金型に向けて前記フィルムを支持するステップと、前記押圧ブロックで前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に押圧して、前記支持されているフィルム部分を前記キャビティと前記押圧ブロックとの間に位置させるステップと、前記雄金型と前記雌金型とを型閉じして、前記支持されていたフィルム部分の支持を解除するステップと、前記フィルムを前記キャビティの内壁に密着固定させてから射出成形を行うステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るインモールド加飾成形装置及びその成形方法においては、支持部材でフィルムを支持するため、2つの押圧ブロック間のフィルムの長さが長くなり、深いキャビティの内壁にフィルムを確実に密着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のインモールド加飾成形装置の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示すインモールド加飾成形装置において、フィルムが引き伸ばされた状態を示す図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るインモールド加飾成形装置の構造を示す断面図である。
【図4】図3に示したインモールド加飾成形装置の雌金型の局部拡大図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るインモールド加飾成形装置の雌金型の局部拡大図である。
【図6】図3に示すインモールド加飾成形装置において、フィルムが引き伸ばされた状態を示す図である。
【図7】図3に示すインモールド加飾成形装置において、雄金型と雌金型とを型閉じした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3に示されるように、本発明の第一実施形態に係るインモールド加飾成形装置は、射出成形と同時にキャビティの内壁にフィルムを付着させる加飾加工を行うことに用いられ、フィルム移送装置50と、雄金型60と、雌金型70と、2つの押圧ブロック80と、を備える。前記雌金型70における前記雄金型60との対向面には、1つのキャビティ71及び2つの収容スロット74が設けられている。前記2つの収容スロット74は、それぞれ前記キャビティ71の両側に位置し、且つ前記2つの押圧ブロック80の押圧位置間に位置する。前記雌金型70の内部には、複数の排気スロット73が設けられている。各排気スロット73の両端は、それぞれ真空引き装置(図示せず)及び前記キャビティ71の底面に接続されている。
【0012】
図4をさらに参照すると、前記収容スロット74の内部には、貫通孔752を有する支持部材75が弾性的に設けられている。固定部材90が前記支持部材75の貫通孔752を貫いて前記雌金型70の収容スロット74の底部に固定されている。本実施形態において、前記固定部材90は、ねじである。前記収容スロット74の底面とその内部に設置された支持部材75との間に弾性部材92が設置されている。本実施形態において、前記弾性部材92は、前記ねじ(固定部材90)を覆う螺旋スプリングである。
【0013】
前記雄金型60と前記雌金型70とを型開きしている時、前記支持部材75は、前記弾性部材92の弾力作用によって前記収容スロット74から前記雌金型70の金型分割面より突出して、前記フィルム移送装置50によって前記雄金型60と前記雌金型70との間に移送されたフィルム500を支持している。前記雄金型60と前記雌金型70とを型閉じしている時、前記雄金型60が前記支持部材75を押圧して前記弾性部材92を圧縮し、前記支持部材75が前記収容スロット74の内部に収容され、前記支持部材75の頂面と前記雌金型70の金型分割面とが同一平面上に位置する。前記支持部材75には、前記貫通孔752と同一軸線上に収容穴754が設けられているため、前記雄金型60と前記雌金型70とを型閉じしている時、前記固定部材90が前記収容穴754に収容されており、前記雌金型70の金型分割面より突出しないので、前記雄金型60と干渉しない。
【0014】
図5に示されるように、本発明の第二実施形態に係るインモールド加飾成形装置においては、前記雌金型70の収容スロット74内部の固定部材90に、スリーブ93を被せることができる。前記固定部材90及びそのスリーブ93が共に前記支持部材75の貫通孔752を貫いて、前記固定部材90の端部が前記雌金型70の収容スロット74の底部に固定されている。前記スリーブ93を採用することにより、前記雌金型70の金型分割面より突出する前記支持部材75の高さを正確に調整することができる。
【0015】
前記支持部材75の前記雄金型60に対向する表面が球面であるため、該球面を経過するフィルム500を傷付けない。
【0016】
前記雄金型60における前記雌金型70との対向面には、前記キャビティ71に対応する突出部61及び前記2つの押圧ブロック80を収容するための2つの収容スロット65が設けられている。前記雄金型60と前記雌金型70とを型閉じしている時、前記2つの押圧ブロック80がそれぞれ対応する収容スロット65に収容されるため、前記雄金型60と干渉しない。
【0017】
前記フィルム移送装置50は、2つのフィルム移送ローラー53と、前記フィルム500の移送方向を規制する2つのガイドローラー55と、を備えている。前記金型の上側に1つの移送ローラー53及び1つのガイドローラー55が設置され、前記金型の下側に他の1つの移送ローラー53及び他の1つのガイドローラー55が設置されている。
【0018】
前記フィルム500は、基材層と、該基材層に印刷された転写層と、を備えている。前記基材層は、PC/PBTなどの高分子材料からなり、前記転写層は、印刷用インク又は塗料で前記基材層に印刷されたパターン又は文字である。前記フィルム500は、前記雌金型70のキャビティ71の内壁に付着することができ、前記フィルム500における前記雄金型60との対向面には、パターン又は文字を有する転写層が設けられている。
【0019】
図6に示されるように、前記フィルム移送装置50が前記フィルム500を前記雄金型60と前記雌金型70との間に移送し、前記2つの押圧ブロック80で前記フィルム500を前記雌金型70の金型分割面の辺縁(図中、上辺縁、及び下辺縁)に押圧する。
【0020】
図7をさらに参照すると、前記雄金型60と前記雌金型70とを型閉じしている時、前記雄金型60の金型分割面が前記支持部材75を押圧して前記弾性部材92を圧縮し、前記支持部材75が前記雌金型70の収容スロット74の内部に完全に収容されており、前記支持部材75の頂面と前記雌金型70の金型分割面とが同一の平面上に位置する。真空引き装置で前記排気スロット73から前記キャビティ71内の空気を真空引きすると、前記2つの押圧ブロック80間のフィルム500が引き伸ばされて前記キャビティ71の内壁に付着する。その後に、前記キャビティ71に向けて射出成形を行うことができる。
【0021】
本発明において、前記2つの押圧ブロック80間の距離が従来の技術のようにLである時、前記支持部材75の支持作用によって、前記2つの押圧ブロック80間のフィルム500の長さが必ず従来の技術におけるフィルムの長さより長くなるので、深いキャビティの内面であっても、フィルムを確実に密着固定することができる。
【0022】
本発明において、前記支持部材75によるフィルム500の支持高さ位置を調節することにより、前記2つの押圧ブロック80間のフィルム500の長さを調節することができる。従って深いキャビティの内面であっても、フィルムを確実に密着固定することができる。
【0023】
本発明に係わるインモールド加飾成形方法は、雄金型を提供するステップと、キャビティを有する雌金型を提供するステップと、フィルムを提供するステップと、押圧ブロックを提供するステップと、前記フィルムを前記雄金型と前記雌金型との間に移送して前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に接近させるステップと、前記雄金型に向けて前記フィルムを支持するステップと、前記押圧ブロックで前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に押圧して、前記支持されているフィルム部分を前記キャビティと前記押圧ブロックとの間に位置させるステップと、前記雄金型と前記雌金型とを型閉じして前記支持されていたフィルム部分の支持を解除するステップと、前記フィルムを前記キャビティの内壁に密着固定させてから射出成形を行うステップと、を備える。
【0024】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは勿論であり、本発明の権利範囲は、以下の特許請求の範囲により定められる。
【符号の説明】
【0025】
10,50 フィルム移送装置
20,60 雄金型
30,70 雌金型
31,71 キャビティ
40,80 押圧ブロック
53 フィルム移送ローラー
55 ガイドローラー
61 突出部
65,74 収容スロット
73 排気スロット
75 支持部材
90 固定部材
92 弾性部材
93 スリーブ
100,500 フィルム
752 貫通孔
754 収容穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄金型と、
キャビティを有する雌金型と、
フィルムと、
前記雄金型と前記雌金型との間に設けられ、前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に押圧する押圧ブロックと、
を備えてなるインモールド加飾成形装置であって、
前記雌金型には、前記押圧ブロックが前記フィルムを押圧する前に、前記雌金型の金型分割面より突出して前記フィルムを支持する支持部材が設けられていることを特徴とするインモールド加飾成形装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記キャビティと前記押圧ブロックの押圧位置との間に位置することを特徴とする請求項1に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項3】
前記雌金型の金型分割面には、前記支持部材を収容するための収容スロットが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項4】
前記支持部材には、貫通孔が開設され、固定部材が前記貫通孔を貫いて前記雌金型の前記収容スロットの底部に固定されていることを特徴とする請求項3に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項5】
前記支持部材と前記収容スロットの底面との間には、前記支持部材を前記雌金型の金型分割面より突出させる弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項6】
前記固定部材がねじであって、前記弾性部材が前記ねじを覆うスプリングであることを特徴とする請求項5に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項7】
前記支持部材には、前記貫通孔と同一軸線上に収容穴が設けられ、前記雄金型と前記雌金型とを型閉じする時、前記雌金型の金型分割面より突出していた固定部材が前記収容穴に収容されることを特徴とする請求項4に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項8】
前記固定部材がスリーブに覆われ、前記固定部材及び前記スリーブが共に前記支持部材の貫通孔を貫いて、前記固定部材の端部が前記雌金型の前記収容スロットの底部に固定されることを特徴とする請求項4に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項9】
前記雄金型における前記雌金型との対向面には、前記キャビティに対応する突出部が設けられ、前記雄金型の金型分割面の辺縁と前記突出部との間には、収容スロットが設けられ、前記雄金型と前記雌金型とを型閉じする時、前記押圧ブロックが前記雄金型の収容スロットに収容されることを特徴とする請求項1に記載のインモールド加飾成形装置。
【請求項10】
雄金型を提供するステップと、
キャビティを有する雌金型を提供するステップと、
フィルムを提供するステップと、
押圧ブロックを提供するステップと、
前記フィルムを前記雄金型と前記雌金型との間に移送して、前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に接近させるステップと、
前記雄金型に向けて前記フィルムを支持する支えるステップと、
前記押圧ブロックで前記フィルムを前記雌金型の金型分割面に押圧して、前記支持されているフィルム部分を前記キャビティと前記押圧ブロックとの間に位置させるステップと、
前記雄金型と前記雌金型とを型閉じして前記支持されていたフィルム部分の支持を解除するステップと、
前記フィルムを前記キャビティの内壁に密着固定させてから射出成形を行うステップと、
を備えたことを特徴とするインモールド加飾成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−18029(P2010−18029A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161160(P2009−161160)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】