説明

インモールド成形用ラベル及び該ラベル付き成形体

【課題】特定のプラズマ処理をラベルのヒートシール層に施すことによって、耐水性、対薬品性、耐久性に優れ、且つ非極性樹脂のみならず極性樹脂であるポリエチレンテレフタレートなどの成形体に対しても接着力の優れたインモールド成形用ラベル、及びそのインモールド成形用ラベルが貼着されたインモールド成形体を提供する。
【解決手段】各種の熱可塑性樹脂よりなるブロー成形体に用いるインモールド成形用ラベルであって、該インモールド成形用ラベルが少なくともヒートシール層と基層とを含む積層樹脂フィルムからなり、該ヒートシール層に大気圧近傍の圧力下にてプラズマ処理を施し、ラベル付きブロー成形体を成形後の該インモールド成形用ラベルと該ブロー成形体との接着力が200〜500g/15mmの範囲であるインモールド成形用ラベル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成形用ラベルと、それを用いたインモールド成形用ラベル付きインモールド成形体に関する。より具体的には、基層とヒートシール層とを含む積層樹脂フィルムよりなるインモールド用ラベルにおいて、該ヒートシール層に特定の表面処理を行うことによって、種々広範な熱可塑性樹脂原料よりなるブロー成形体に対しても一様に高い接着力を実現できるインモールド用ラベルと、それを用いたラベル付きインモールド成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融した熱可塑性樹脂を筒状に押し出してパリソンとし、これを金属型内で空気圧により膨らませて、金型の形状に賦形するブロー成形の技術が良く知られている。この際、同金型内にラベルやブランクを固定し、樹脂の賦形に併せて溶融樹脂にラベルを貼着して、ラベルが一体となった成形体を得る技術も良く知られており、この様な金型内ラベルを「インモールドラベル」(In−Mold Label,IML)或いは「インモールド成形用ラベル」と呼んでいる。
樹脂成形体の耐水性、対薬品性、耐久性といった特徴に併せて、同じく耐水性、対薬品性、耐久性等が必要な用途に供し得るインモールド成形用ラベルの開発が従来から行われている。例えば、ポリオレフィン樹脂からなる延伸または無延伸の透明フィルムや、ポリオレフィン樹脂に無機微細粉末や有機フィラーを配合した延伸または無延伸の白色フィルム(合成紙)等、更にはこれらの片面に、各種のヒートシール層をフィルム製造の過程で共押し出ししたもの(特許文献1)、ヒートシール性樹脂フィルムを貼合またはラミネートしたもの、各種の塗工設備を用いてヒートシール性樹脂を表面にコートしたもの(特許文献2)等が提案され、一部で実用化されている。
【0003】
これら従来のインモールド成形用ラベルは、インモールド成形時に成形体とラベルの間に空気を閉じこめてフクレを生じることがないよう、ラベル製造過程においてヒートシール層面にエンボス加工したり(特許文献1)、予めエンボス加工されたフィルムを貼合またはラミネートしたり、塗工の際に台形型の凹凸パターンを設けるなど、ラベルのヒートシール層に凹凸を付与して成形体とラベルとの間に外部に連通する隙間を設けて空気を逃がす工夫がなされている。また、これら空気を逃がすための凹凸パターンを表面に形成しない場合は、ラベル自体を貫通する細孔を開けて空気を逃がす方法(特許文献3)、ラベル表面に基材内に連通する微細な開口部を設けたフィルムを用い、これに水性ヒートシール性樹脂コートを施す方法(特許文献4)などが提案されている。
【0004】
これらのうち、各種の塗工設備を用いてヒートシール性樹脂を表面にコートする従来法は、広範な熱可塑性樹脂原料よりなる成形体に対して高い接着力を発揮するよう、ヒートシール性樹脂組成を選択することができる。しかしながら、予めエンボス加工などを行った基材フィルムの表面にヒートシール性樹脂をコートするもの(特許文献5)では、基材フィルムの溶媒吸収性が低いために塗工剤の大半が基材フィルムにつけたエンボスの凹部に集まってしまい、コート表面にエンボス形状を再現しにくくなる問題があった。溶媒吸水性の無いフィルムを使用する場合は、ホットメルト型樹脂や溶剤系ヒートシール樹脂の塗工料を高粘度の状態で、グラビア塗工機により塗工して彫刻ロールセルの台形パターンを基材表面につける方法も採用されている。しかし、この場合は高粘度でのコートが必須であるため生産性低下による製造コストの上昇や、有機溶媒を用いることによる火災や環境汚染の問題があった。
【0005】
さらに、表面に微細な開口部を設けたフィルムに水性ヒートシール性樹脂を塗工する方法では、ラベル付き成形体の耐水性が弱く、成形体を水性液体に漬けた際のラベルと成形体との接着力、特に洗剤(界面活性剤溶液)に漬けた際の接着力が顕著に低下し、剥がれやすいという問題があった。
最も簡便なインモールド成形用ラベルの製造方法である、基材フィルムの製造過程で共押し出しまたはラミネートによりヒートシール層を設け、これにエンボス加工を施す従来法では、耐水性、対薬品性、耐久性に優れたラベルを供し得る。しかしながら、ヒートシール性樹脂を押出機にて溶融押出して使用するため、樹脂の耐熱性、機器腐食性、溶融時の粘度特性から自ずと使用可能な樹脂が制限され、主として、融点温度が60〜130℃のポリオレフィン系樹脂が用いられている。これらの樹脂からは同じく非極性のポリオレフィンよりなる成形体には高い接着力で密着するラベルが製造できても、ポリエチレンテレフタレートのような極性樹脂には高い接着力で密着するラベルを製造することができなかった。
【0006】
本発明者らは、基材フィルムの製造過程で共押し出しまたはラミネートによりヒートシール層を設け、これにエンボス加工を施す従来技術を基に、該ヒートシール層表面を化学的に修飾する処理を施すことで、耐水性、対薬品性、耐久性に優れ、且つ非極性樹脂のみならず極性樹脂の成形体にも適用可能なインモールド成形用ラベルを得るべく鋭意研究を行った。これら樹脂フィルムへのプラズマ処理については、塗工前、印刷前、および他の溶融樹脂との積層前に、親水性向上、密着性向上の目的で実施されている。しかしながら、一般的にポリオレフィン系フィルムの濡れ向上等を目的に行われるコロナ酸化処理をヒートシール層に施しては、元々良好であった非極性のポリオレフィン系樹脂よりなる成形体への接着力が著しく損なわれることが判明した。上記のコロナ処理以外のプラズマ処理には、低圧下にて反応性ガスを微量封入し処理する方法、大気圧下にてアルゴン、ヘリウム等の高価な希ガスに反応性ガスを微量混入し処理する方法、または窒素ガスに水蒸気を混入し処理する方法(特許文献6)などが報告されている。しかしいずれの方法によっても、処理環境圧力や封入ガスの管理が複雑になるといった問題を避けることができない。従って樹脂フィルムへの処理方法として上記のものは余り一般的ではなく、当業者であろうと容易に可否の試みができるほど普及していないのが実情である。
【0007】
【特許文献1】特開平02−084319号公報
【特許文献2】特開平02−122914号公報
【特許文献3】特開平02−108516号公報
【特許文献4】特開2004−255864号公報
【特許文献5】特開平05−249895号公報
【特許文献6】特開2003−155364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定のプラズマ処理をラベルのヒートシール層に施すことによって、耐水性、対薬品性、耐久性に優れ、且つ非極性樹脂のみならず極性樹脂であるポリエチレンテレフタレートなどの成形体に対しても接着力の優れたインモールド成形用ラベル、及びそのインモールド成形用ラベルが貼着されたインモールド成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、更に鋭意研究を行った結果、ヒートシール層と基層とを含む積層樹脂フィルムからなるインモールド成形用ラベルのヒートシール層に、大気圧近傍の圧力下にてプラズマ放電処理を施すことによって、従前の塗工設備を用いてヒートシール性樹脂を表面にコートする従来法や極性樹脂をヒートシール性樹脂に用いて共押出またはラミネートによりヒートシール層を設ける試みにおける生産時の諸問題が無く、耐水性、対薬品性、耐久性に優れ、なお且つ、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートの共重合体よりなる群より選ばれる1以上の熱可塑性樹脂よりなるブロー成形体に対して、優れた接着性を発揮するインモールド成形用ラベルを提供し得ることを見出し本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下のとおりの構成を有するインモールド成形用ラベル、およびインモールド成形用ラベル付き樹脂成型品に係るものである。
(1)高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートの共重合体、よりなる群より選ばれる1以上の熱可塑性樹脂よりなるブロー成形体に用いるインモールド成形用ラベルであって、該インモールド成形用ラベルが少なくともヒートシール層と基層とを含む積層樹脂フィルムからなり、該ヒートシール層が以下の要件を満足することを特徴とするインモールド成形用ラベル、
1)大気圧近傍の圧力下にてプラズマ処理が施され、成形後の該インモールド成形用ラベルと該ブロー成形体との接着力がドライ、耐水密着、対油密着のいずれにおいても200〜500g/15mmの範囲である、
2)表面粗さが、三次元中心面平均粗さ(SRa)として1〜10μmである、
3)融点60〜130℃の熱可塑性樹脂よりなる、、
【0011】
ここで、
(2)該プラズマ処理が、固体誘電体に覆われた一対の対向する電極を用い、この電極間に大気圧近傍の圧力下にてガスを満たした上で、この電極に高周波パルス状電圧を加えてガス中にプラズマを発生させ、この電極間にインモールド成形用ラベルを通過させることでヒートシール層の活性化処理を行なうものであることが好ましく、または
(3)該プラズマ処理が、少なくとも一方が固体誘電体に覆われた一対の対向する電極を用い、この電極間に大気圧近傍の圧力下にてガスを満たした上で、この電極に高周波電圧を加えてガス中にプラズマを発生させ、該プラズマガスを電極間より外に位置するインモールド成形用ラベルのヒートシール層へ電極より吹き出させて、ヒートシール層の活性化処理を行なうものであることが好ましい。
(4)該プラズマ処理において使用されるガスは、窒素ガスであることが好ましい。
【0012】
本発明のインモールド成形用ラベルは常圧窒素ガス下でプラズマ処理することにより、
(5)該ヒートシール層の表面から深さ10nmまでの原子構成比が、該プラズマ処理を施すことによって、ESCAを用いた1S軌道スペクトルのピーク面積より求めた窒素原子数及び炭素原子数の比(N/C)として0.02〜0.07の範囲であることが好ましく、更にインモールド成形時に成形体とラベルの間に空気を閉じこめてフクレを生じることがないよう、
(6)特に熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂よりなることがより好ましい。
【0013】
(7)該基層は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、更には、
(8)無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも1つを含み、且つこれを核として形成された空孔を含むことが好ましい。
(9)該ブロー成形用ラベル付きブロー成形体は、界面活性剤溶液に24時間浸漬した後の該インモールド成形用ラベルと該ブロー成形体との接着力が150〜300g/15mmに維持されていることが好ましく、また本発明は、
(10)上記のインモールド成形用ラベルを、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートの共重合体よりなる群より選ばれる1以上の熱可塑性樹脂よりなるブロー成形体に貼着してなるラベル付き樹脂成形体を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインモールド成形用ラベルは、非極性樹脂の成形体のみならずポリエチレンテレフタレートのような極性樹脂の成形体に対しても優れた接着力を有し、例え本発明のインモールド成形用ラベル付きのブロー成形品を界面活性剤溶液中に漬け込んでもラベルは容易には剥がれない、という顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明のヒートシール層表面処理インモールド成形用ラベル及び当該ラベル付きブロー成形体について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(1)基層
本発明のインモールド成形用ラベルを構成する積層樹脂フィルムにおいて、基層とはラベルの支持体として、ラベルに強度や印刷適性、耐水性、耐薬品性、場合により不透明性等を付与するものである。またラベルの成形に際してはヒートシール層を支持して成形しやすくするものである。
【0016】
基層は、熱可塑性樹脂を含むものである。基層に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、あるいは高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0017】
これらの中でも、耐薬品性や生産コスト等の観点から、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体またはシンジオタクティック重合体を用いることが好ましい。また、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとプロピレンとを共重合させた様々な立体規則性を有するプロピレンを主成分とする共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0018】
該基層は、不透明性や軽量化の観点から、熱可塑性樹脂の他に、無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも1つを含み、且つこれを核として形成された空孔を含むものであっても良い。
無機微細粉末としては、安定したフィルム延伸や均一な空孔形成の観点から、平均粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.01〜8μm、さらに好ましくは0.03〜4μmのものを使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等を使用することができる。
【0019】
有機フィラーとしては、無機微細粉末同様、分散後の平均粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.01〜8μm、さらに好ましくは0.03〜4μmのものを使用することができる。有機フィラーとしては、基層の主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、マトリクス樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で融点が120℃〜300℃、ないしはガラス転移温度が120℃〜280℃であるものを使用することができる。基層には、さらに必要により、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤、蛍光増白剤、着色剤等を配合してもよい。
【0020】
基層を構成するフィルムは、空孔形成による軽量化や分子配向による剛度向上の観点から、少なくとも一軸方向に延伸されたものであることが好ましい。基層が複数の層から構成されるときは、少なくともその一層が延伸されていることが好ましい。複数層を延伸する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後に延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸しても差し支えない。さらに、基層にヒートシール層を成形した後に全体を延伸してもよい。
【0021】
基層の延伸には、従来公知の種々の方法を使用することができる。例えば、スクリュー型押出機に接続されたTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出し成形した後、該シートを、ロール群の周速差を利用したロール間縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法、該シートをカットした後パンタグラフ型延伸装置を用いた同時二軸延伸法、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法などが挙げられる。
延伸の温度は、熱可塑性樹脂が非結晶樹脂の場合は使用するオレフィン系樹脂のガラス転移点以上、結晶性樹脂の場合には、非結晶部分のガラス転移点以上から結晶部の融点以下に設定することができる。具体的には使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは152〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)のときは110〜120℃が好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分が好ましい。
【0022】
(2)ヒートシール層
本発明のインモールド成形用ラベルを構成する積層樹脂フィルムにおいて、ヒートシール層とは、ラベルとブロー成形体とを接合する接着剤の働きをするものであり、常温では固体状であるが、金型内で樹脂成形体を成形する際に溶融した樹脂の熱で活性化し、樹脂成形体と溶融接合して、冷却後は再度固形状となり強固な接着力を発揮しえるものである。該ヒートシール層は、熱可塑性樹脂よりなり、本発明のインモールド成形用ラベルにおいて、上記基層に積層した積層樹脂フィルムの一部として設けられる。より具体的には、積層樹脂フィルムの製造過程において、基層と共押し出し、または基層に溶融ラミネートすることによりフィルムとしてヒートシール層を設ける。
【0023】
ヒートシール層を構成する熱可塑性樹脂は、インモールド成形により樹脂成形体を形成する際に加熱によりラベルを樹脂成形体に貼着する機能を有するものであればその種類は特に制限されない。
本発明におけるヒートシール層を構成する熱可塑性樹脂は、DSC測定によりピーク温度として求めた融点が60〜130℃であることが好ましい。60℃未満であると常温でのべた付きによりラベルのスベリ性が悪くなり、ブロッキング等を起こしやすい。その為ラベルを金型へインサートする際に、2枚挿し等のトラブルが多発しやすい。また130℃を超えて大きいとラベルと成形体との接着性が悪くなりやすいため、好ましくない。
【0024】
具体的な熱可塑性樹脂の例としては、ポリオレフィン系樹脂である、低密度ないし中密度の高圧法ポリエチレン、直鎖線状ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1〜8)、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩(Zn、Al、Li、K、Naなど)等の融点が60〜130℃のポリエチレン系樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
ヒートシール層には、ヒートシール層に要求される性能を阻害しない範囲で、他の公知の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。そのような添加剤としては、染料、核剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0025】
ヒートシール層は、インモールド成形時のラベルと成形体間の空気巻き込みによるブリスター(フクレ)発生防止のため、JIS−B−0601:2001に基づく三次元中心面平均粗さ(SRa)が1〜10μmの凹凸形状を有することが好ましい。このような凹凸形状を付与するため、必要であればヒートシール層にはエンボス加工をすることができる。エンボス加工は積層樹脂フィルム成形時、もしくは成形後にエンボスロール等に圧着して該ロールパターンを転写することで実施できる。凹凸形状が1μmより小さくてはブロー成形時に成形体とラベルの間に空気が閉じこめられ、ブリスターという外観不良が発生しやすく好ましくない。また10μm以上であると凹凸が基層側の外観にも現われ、印刷時に印刷ムラが発生しやすく好ましくない。本発明の実施例に使用したエンボスロールには正四角錘の頂点を削った形の凸部(頭切ピラミッド形)を等間隔で並べた凹凸形状を賦形しており、逆グラビア型と表記した。
【0026】
(3)大気圧近傍の圧力下でのプラズマ処理
本発明で実施する大気圧近傍の圧力下でのプラズマ処理は、以下の2種類の方法が適用できる。一つは対向する電極間に発生させたプラズマに被処理基材を通過させることで処理を行う方法であり、ダイレクト方式、或いはプラナー方式などと呼ばれるものである。本明細書では以後、ダイレクト方式と表記する。
もう一つは電極間で発生したプラズマをガス流や電界配置等により、被処理基材に向かって電極から吹き付けることで処理を行う方法であり、リモート方式、ダウンストリーム方式、或いはプラズマジェット方式などと呼ばれているものである。本明細書では以後、リモート方式と表記する。
【0027】
ここで、大気圧近傍の圧力下とは、1.333×10〜10.397×10Paの範囲の圧力下を指す。中でも、圧力調整が容易で、装置が簡便になる9.331×10〜10.397×10Paの範囲が好ましい。大気圧(1気圧)は10.133×10Paとする。本発明にて用いるプラズマ処理は、大気圧近傍の圧力下で実施するため、従前のプラズマ処理に比べても作業性や安全性に優れている。
ダイレクト方式のプラズマ処理は、固体誘電体に覆われた一対の対向する電極を用い、被処理基材を当該電極間に配置した状態でこの対向電極間に大気圧近傍の圧力のガスを導入し、一方の電極にパルス状電圧を印加して他方を接地することで、ガス中にプラズマ放電を行い、該基材にプラズマを接触させて処理を行なう方法である。
この場合、本発明で用いられる一対の電極はどちらも平面板状のものでも良く、接地側電極がロール形状で印加側電極がロール曲面に沿う曲面板状のものでも良く、接地側電極が平板状で印加側電極が複数の細線状のものでも良い。
【0028】
上記電極としては、例えば、銅、アルミニウム等の単体金属、ステンレス、真鍮等の合金等、からなるものが挙げられる。また、固体誘電体の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複合酸化物(セラミックス)等が挙げられる。電極の間隔は、印加電圧の大きさ、処理ガスの種類にもよるが、1〜20mm程度が好ましい。1mm未満では、間隔内に被処理基材を設置し難くなり、20mmより大きいと均一な放電プラズマを発生し難くなる。
【0029】
本プラズマ処理では、対向電極間にはパルス状電圧を印加する。用いるパルス状電圧波形は、インパルス波形、方形波形又は変調波形の何れであっても良い。パルス電圧の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、100μs以下であることが好ましく、特には、50ns〜5μsであることが好ましい。100μsを超過すると、アーク放電に移行し易く、不安定な状態となり、50ns未満とするのは、装置上の制約から実現が困難である。
なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して増加する時間、立ち下がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して減少する時間を指すものとする。
【0030】
パルス状電圧の周波数は、0.5〜100kHzであることが好ましい(本明細書では同様の印加電圧を高周波パルス状電圧と表記する。)。該周波数が0.5kHz未満になると、プラズマ密度が低下して処理に時間がかかり、逆に100kHzを超えるとアーク放電に移行し易く、不安定な状態となり、何れも好ましくない。
また、パルス継続時間は1〜1000μsであることが好ましい。該時間が1μs未満であると放電が不安定となり、1000μsを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。より好ましくは3〜200μsである。ここで、ひとつのパルス継続時間とは、ON、OFFの繰り返しからなるパルス電圧における、ひとつのパルスの連続するON時間を言う。
【0031】
本発明のプラズマ処理と従前のコロナ処理との違いは、印加電極に、固体誘電体に覆われた電極を用いて、高周波パルス状電圧を印加することにある。
従前のコロナ処理では、高周波の交流(正弦波、サイン波)電圧を用いてコロナを発生させるが、アーク放電が発生しやすく、被処理基材に均一な処理を施し得る処理強度、すなわち設定電圧、の範囲が狭い。例えば、同コロナ処理において充分な処理効果を得るべく、例えば窒素ガス雰囲気下で被処理基材に窒素原子を導入するべく、電圧を上げても、均一で安定したコロナは生じにくくアーク放電が多く発生して、窒素原子導入効果は低く、また表面欠陥が多くなる。また被処理基材表面に低分子量の酸化物(劣化物)が多く発生して接着性を阻害する要因となることや、被処理基材のマイグレーションにより処理のライフが短いことが問題であった。本プラズマ処理は広範な処理強度で安定したプラズマを発生でき、被処理基材へ均一な活性化処理が可能なものであり、例えば、窒素ガス雰囲気下では高効率に窒素原子を導入することができ、結果としてインモールド成形時に成形体への高い接着力が得られる。
【0032】
本発明のプラズマ処理にて導入されるガスとしては空気を用いることも可能であるが、インモールド成形用ラベル付き成形体を界面活性剤溶液に浸漬した後のラベルと成形体との接着力、即ち耐洗剤性、をより向上させるために、窒素原子を積極的に被処理基材に導入できる窒素ガスを用いることが本発明の目的上好ましい。また本処理は、ロール形状の被処理基材を連続的に処理することが可能であり、窒素ガスが導入された場合には、被処理基材表面の同伴空気中の微量な酸素により、窒素原子だけでなく酸素原子も被処理基材表面に導入される。
本発明において、窒素ガスを用いてプラズマ処理を施すことによって、多孔質接着層の表面から深さ10nmまでの原子構成比は、ESCAを用いた1S軌道スペクトルのピーク面積より求めた窒素原子数及び炭素原子数の比(N/C)として、0.015〜0.070の範囲であることが好ましい。
【0033】
リモート方式のプラズマ処理は、被処理基材が対向する一対の電極間の外にあるのが特徴である。
電極間の外にあるため、強い電界の影響を受けて被処理基材がダメージを受けることはない。そのため印加エネルギーに応じた高い処理効果が得られる。その装置形状および方法としては、平行に並んでいる板状の電極の平行する2辺が密封されて略筒状となり、密封されていない一端よりガスが導入され、他方の端から被処理基材に向けてプラズマを吹き付ける方法、印加側、接地側の電極がどちらも円筒形状であり、一方が他方の内側に位置し、円筒の端から円筒間にガスが導入され、他方の端から被処理基材に向けてプラズマを吹き付ける方法、または、板状の固体誘電体の中に板状の印加側、接地側の電極が埋め込まれており、この平板に複数の貫通孔が開いており、被処理基材は接地側電極の下方に位置し、印加側よりガスを導入し貫通孔内にてプラズマ化させ、被処理基材に吹き付ける方法などが挙げられるが、これらの中でもより好ましくは、処理面積を大きくできる板状の電極を使用した方式である。
【0034】
このリモート方式の固体誘電体は少なくとも一方に被覆されていればよく、電極、固体誘電体の材質は前者のダイレクト方式と同様のものが用いられる。電極間距離は0.1〜50mmであることが好ましい。0.1mm未満であると間隔を置いて電極を設置するのが困難であり、50mmを超えると均一な放電プラズマが発生し難くなる。さらに、電極端部と被処理基材との間隔は、印加電圧、ガスの流速にもよるが、1〜50mmが好ましい。1mm未満であると電極端部より被処理基材へアーク放電が発生し易くなり、50mmを超えると被処理基材表面のプラズマ密度が低くなり処理に時間がかかる。また、同電極に印加する電圧は高周波電圧である。その波形は正弦波形又はサイン波形を有する交流波でも良く、またインパルス波形、方形波形又は変調波形を有するパルス化されたものでもよい。
【0035】
このリモート方式は電極間で発生したプラズマを被処理基材のある電極外に吹き出させるものであり、導入するガスに幾分か圧を掛けてガス流とし被処理基材側にプラズマを流す方法、またはプラズマを発生させるために電極間に印加した電圧により発生した電界にてプラズマを吹き出させる方法、もしくは両者を組み合わせる方法があるが、好ましくは印加電圧が変更できるガス流による方法である。本プラズマ処理にて導入されるガスもまた空気を用いることが可能であるが、窒素原子を被処理基材に導入できる窒素ガスを用いることが本発明の目的上好ましい。
【0036】
本発明におけるプラズマ処理には高周波電圧、または高周波パルス状電圧が印加されるが、これらの波形電圧は共に直流電源から変換されるため、被処理基材(ヒートシール層)への表面処理の強さは、この元の直流電源の電力(ワット数)を被処理基材の単位時間当たりの処理面積(処理速度×処理幅)で除した値から求めた処理強度(kJ/m)として求めることができる。該処理強度の最適範囲は各処理方式、被処理基材、クリアランス(ギャップ距離)によって異なるが、被処理基材にアーク放電による傷、熱による変形、収縮等がなければよく、1〜300kJ/mが好ましい。
【0037】
本発明のヒートシール層は、上記のプラズマ処理により、インモールド成形用ラベル付き樹脂成形体とした時のラベルと樹脂成形体との接着力(後述の〔ラベル接着性〕の項における、ドライ、耐水密着、対油密着の接着力)が200〜500gf/15mm、好ましくは250〜500gf/15mm、特に好ましくは350〜500gf/15mmとなるように構成する。接着力が200gf/15mmよりも低いと、ラベル付き樹脂成形体の内容物充填後の搬送中や商品陳列時に与えられた衝撃によりラベルが剥がれることがある。
また、本発明においてラベル付き樹脂成形体を界面活性剤溶液に24時間浸漬した後(後述の〔ラベル接着性〕の項における、対洗剤密着の接着力)のラベルと樹脂成形体との接着力が150〜300g/15mmであることが好ましく、170〜290g/15mmであることがより好ましい。接着力が150gf/15mmよりも低いと、成形体が例えば容器でありボディーソープやシャンプー等の界面活性剤を内容物として使用する際、長期の使用に耐えられずラベルが剥がれることがある。
【実施例】
【0038】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0039】
(実施例1)
<積層樹脂フィルムの製造>
プロピレン単独重合体(商品名「ノバテックPPMA−8」、融点164℃、日本ポリプロ(株)製)67重量%、高密度ポリエチレン(商品名「ノバテックHDHJ580」、融点134℃、日本ポリエチレン(株)製)10重量%、および平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末23重量%よりなる樹脂組成物(C)を、押出機を用いて250℃で溶融混練したのち、ダイよりフィルム状に押し出し、約50℃の温度となるまでフィルムを冷却した。このフィルムを約150℃に再度加熱したのち、ロール群の周速度を利用して縦方向に4倍延伸して、コア層となる一軸延伸フィルムを得た。
【0040】
一方、プロピレン単独重合体(商品名「ノバテックPPMA−3」、日本ポリプロ(株)製)51.5重量%、高密度ポリエチレン(商品名「ノバテックHDHJ580」、日本ポリエチレン(株)製)3.5重量%、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末42重量%、平均粒径0.8μmの酸化チタン粉末3重量%よりなる樹脂組成物(D)を別の押出機を用いて240℃で溶融混練し、これを前記一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、表面層/コア層(D/C)の積層体を得た。
【0041】
さらに、それぞれ別々の押出機を用い、プロピレン単独重合体(商品名「ノバテックPPMA−3」、日本ポリプロ(株)製)51.5重量%、高密度ポリエチレン(商品名「ノバテックHDHJ580」、日本ポリエチレン(株)製)3.5重量%、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末42重量%および平均粒径0.8μmの酸化チタン粉末3重量%よりなる樹脂組成物(E)と、ヒートシール層として、直鎖線状ポリエチレン(樹脂a)(商品名「ノバテックLLUJ580」、融点123℃、日本ポリエチレン(株)製)80重量%とエチレン・酢酸ビニル共重合体(樹脂b)(融点63℃)20重量%よりなる樹脂組成物(B)を200℃で溶融混練し、一台の共押出ダイに供給してダイ内で積層し、ダイよりそれぞれフィルム状に押し出し、前記積層体(D/C)のコア層側の面にヒートシール層が最外層となるように積層して、表面層/コア層/裏面層/ヒートシール層の四層構造の積層体(D/C/E/B)を得た。得られた積層体のヒートシール層側を金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロール(1インチあたり150線、深さ40μm、逆グラビア型)に通し、ヒートシール層(B)側に0.17mm間隔のパターンをエンボス加工した。上記四層構造の積層体においては、表面層/コア層/裏面層(D/C/E)が本発明の基層に該当するものである。このエンボス面の三次元中心面平均粗さ(SRa)は2μmであった。
【0042】
この四層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向に5倍延伸し、次いで164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃迄冷却し耳部をスリットした後に、表面層(D)側にコロナ放電処理を施した。その際の高周波へ変換前の直流電源の電力量を被処理基材の面積で除した値を処理強度とすると、1.5kJ/mであった。その後、ワインダーにてロール状に巻き取り、実施例1の積層樹脂フィルムとした。
【0043】
<プラズマ処理>
上記積層樹脂フィルムに、下記条件の大気圧近傍の圧力下でのダイレクト方式プラズマ処理を施した。
一対の電極はそれぞれ板状で、各々長さ100mm、幅150mm、厚さ20mmとなるようステンレス鋼にて製作し、固体誘電体であるセラミックスで被覆した。この電極内部には冷却用の媒体を流すことのできる空洞が設けられており、放電処理中は冷却媒体を循環圧送して一定温度を保つことが出来るようにした。これらの一対の電極は20mmの距離を保持するように固定した。これらの電極間に被処理基材(積層樹脂フィルム)のヒートシール層側が印加側電極に向くように通し、印加側電極と基材間との距離は10mmとなるように調整した。更に電極間に窒素ガスを10.133×10Pa、100l/minにて導入し、基材ロールを30m/minの速度で巻き取ながら、印加側電極に周波数50kHz、パルス継続時間100μsのパルス電圧を印加して被処理基材のヒートシール層にプラズマ放電処理を施した。パルス化前の直流電源の電力量を被処理基材の面積で除した値を処理強度とすると、同プラズマ処理の強度は12kJ/mであった。
【0044】
<印刷>
このようにして得られたプラズマ処理基材の表面層側の表面に、高速凸版ラベル印刷機((株)志機製)およびUVオフセットインキ(商品名「ベストキュアー」、(株)T&K TOKA社製)を使用し、26.4m/minの速度で、商品名、製造元、販売会社名、キャラクター、バーコード、使用方法等をUVシール4色印刷した。更に離型剤を添加したUVグロスOPニスをコートし、紫外線照射して乾燥させた。
<打抜き加工>
このようにして得られた印刷品を一旦、ロール状からシート状に断裁後、長さ11cm、幅9cmのラベル形状に打抜き、インモールド成形用ラベルを得た。
【0045】
<貼着−1>
このインモールド成形用ラベルをブロー成形用割型の一方に真空を利用して表面層側が金型と接するように固定した後、高密度ポリエチレン(商品名「ノバテックHDHB330」、融点133℃、日本ポリエチレン(株)製)を220℃で溶融押出しパリソンとし、割型間に導入後に割型を型締めし、0.4MPaの圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨脹させて容器状に賦形すると共にインモールド成形用ラベルと熱融着させた。該金型は10℃に冷却しており、約10秒後、型開きをして内容量1,000mlのラベルを貼着した樹脂製容器(本発明のラベル付きインモールド成形体)を得た。樹脂製容器に貼着したラベルの印刷に退色はなく、ラベルの収縮やブリスターの発生も見られなかった。
【0046】
<貼着−2>
また、このインモールド成形用ラベルをブロー成形用割型の一方に真空を利用して表面層側が金型と接するように固定した後、ポリエチレンテレフタレート(商品名「ユニペットRD383」、融点235℃、日本ユニペット(株)製)を260℃で溶融押出しパリソンとし、割型間に導入後に割型を型締めし、0.5MPaの圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨脹させて容器状に賦形すると共にインモールド成形用ラベルと熱融着させた。該型は15℃に冷却しており、約10秒後、型開きをして内容量1,000mlのラベルを貼着した樹脂製容器(本発明のラベル付きインモールド成形体)を得た。樹脂製容器に貼着したラベルの印刷に退色はなく、ラベルの収縮やブリスターの発生も見られなかった。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、プラズマ処理の処理強度が半分の6kJ/mとなるよう、処理速度を実施例1の2倍の60m/minにしたこと以外は、実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
(実施例3)
実施例1において、プラズマ処理の処理強度が4分の1の3kJ/mとなるよう、処理速度を実施例1の4倍の120m/minにしたこと以外は、実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
(実施例4)
実施例1において、プラズマ処理の窒素ガスの替わりに空気を導入すること以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0048】
(実施例5)
実施例1において、プラズマ処理をダイレクト方式からリモート方式に変えるべく、実施例1と同様な電極を用い、電極間距離を1mmに固定し、電極の平方する2辺を密封して筒状にし、被処理基材である積層樹脂フィルムのロールを一対の電極の外に配置し、これらの電極側に被処理基材(積層樹脂フィルム)のヒートシール層側が向くように配置し、電極と被処理基材との距離を3mmに調整した。更に電極間に窒素ガスを10.133×10Pa、300l/minの流量にてロールの接着層側に吹き付けるように導入した。ロールを5m/minの速度で巻き取りながら、高周波変換前の直流電源の電力量が1kwとなるよう電極に高周波電圧を印加し、処理強度80kJ/mのプラズマ処理を施したこと以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0049】
(実施例6)
実施例1において、ヒートシール層のエンボス面の三次元中心面平均粗さ(SRa)が9μmとなるように、エンボスロール(1インチあたり150線、深さ130μm、逆グラビア型)を変更し、エンボス加工を施したこと以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0050】
(比較例1)
実施例1において、ヒートシール層にプラズマ処理を施していない以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
(比較例2)
実施例1において、ヒートシール層(B)を設けない以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0051】
(比較例3)
実施例1において、プラズマ処理の替わりに、コロナ放電処理を用いた。同装置の放電電極の周りを囲い、囲いの中に窒素ガスを10.133×10Pa、80l/minの流量にて導入し、ロールを20m/minの速度で巻き取りながら、高周波へ変換前の直流電源の電力量を被処理基材の面積で除した処理強度が3kJ/mとなるように電極に高周波電圧を印加することで、積層樹脂フィルムのヒートシール層へコロナ放電処理を施したこと以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0052】
(比較例4)
実施例1において、エンボスロールによるエンボス加工を施さないこと以外は実施例1と同じく製造して、ヒートシール層のエンボス面の三次元中心面平均粗さ(SRa)が0.5μmのインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
(比較例5)
実施例1において、ヒートシール層のエンボス面の三次元中心面平均粗さ(SRa)が12μmとなるように、エンボスロール(1インチあたり150線、深さ170μm、逆グラビア型)を変更し、エンボス加工を施したこと以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0053】
(比較例6)
実施例1において、ヒートシール層に用いる熱可塑性樹脂として、直鎖線状ポリエチレン(樹脂a)(商品名「ノバテックLLUJ580」、融点123℃、日本ポリエチレン(株)製)80重量%とエチレン・酢酸ビニル共重合体(樹脂c)(融点44℃)20重量%よりなる樹脂組成物を使用したこと以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0054】
(比較例7)
実施例1において、ヒートシール層に用いる熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン(樹脂d)(商品名「ノバテックHDHJ360」、融点132℃、日本ポリエチレン(株)製)80重量%とエチレン・酢酸ビニル共重合体(樹脂b)(融点63℃)20重量%よりなる樹脂組成物を使用したこと以外は実施例1と同じく製造してインモールド成形用ラベルおよびラベル付きインモールド成形体を得た。
【0055】
〔試験例〕
上記実施例1〜6および比較例1〜7で製造したインモールド成形用ラベルとラベル付きインモールド成形体について、以下の物性の測定と評価を行った。
〔ヒートシール層の三次元中心面平均粗さ(SRa)〕
JIS−B−0601:2001に基づき、インモールド成形用ラベルのヒートシール層の表面の三次元中心面平均粗さ(SRa)を、三次元粗さ測定機(商品名「SE−3AK」、小坂研究所製)および解析装置(商品名「ModelSPA−11」、小坂研究所製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0056】
〔原子数構成数比〕
ESCAスペクトロメーター(商品名「ESCA3200型」、島津製作所製)を用いて、入射X線:Mg−Kα線(1250eV)、X線出力:8kv×30mA(出力240W)、測定環境は真空度:約10E−5Paの条件下で、インモールド成形用ラベルのヒートシール層の表面から深さ10nmまでの表層部の炭素の1S軌道スペクトルから求めたピーク面積、同様に求めた窒素の1S軌道スペクトルから求めたピーク面積を測定した。また、この各元素の検出強度から、窒素原子数と炭素原子数の比(N/C)を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
〔印刷時のムラ〕
上記印刷を施した後、ヒートシール層の粗さの基層側(表面層側)表面への影響による印刷のムラを目視にて観察して以下の評価を行った。結果を表1に示す。
○:注意深く観察しても全く問題がない。
△:注意深く観察するとムラがわかる。
×:通常の目視でもムラがわかる。
【0058】
〔成形金型へのインサート適性〕
上記貼着−1、貼着−2のそれぞれのプロセスにおいて、各100ショットの中空成形におけるラベルの金型への装着状況を以下に示す基準で評価判定した。結果を表1に示す。
○:全て指定された位置に問題なく装着した。
×:装着時にラベルの落下、ラベルの2枚挿し、ラベル指定位置のズレ等の問題がみられた。
【0059】
〔ブリスターの発生有無〕
上記貼着−1、貼着−2のそれぞれのプロセスにおいて、得られた容器各20個の貼着されたラベルのブリスター発生状況を以下に示す基準で判定した。
○:全ての容器のブリスター発生がラベル面積の20%未満。
×:1つでもブリスター発生がラベル面積の20%以上の容器がある。
【0060】
〔ラベル接着力〕
ラベルが貼着された容器のラベル部分を15mm幅に4点切り取り、そのまま又は下記の条件で浸漬処理した後、貼着したラベル端部の一部を剥がし、引張試験機(商品名「オートグラフAGS−D形」、島津製作所製)を用いて、ラベル部と容器部を200mm/分の引張速度で引き剥がした際の剥離強度(g)を測定し、その平均値を求めて以下に示す基準で判定した。
◎:200g以上
○:150〜200g未満
△:100〜150g未満
×:100g未満
【0061】
15mm幅に切り取った同サンプルを、そのまま又は下記の各種液体に室温にて24時間漬け込んだ後、評価に支障がないよう、各種液体を拭き落とし、上記手法で接着性(剥離強度)の確認を行い、上記の基準での評価を実施した。
ドライ :漬け込み無し
耐水密着 :水(蒸留水)
耐油密着 :食用油(商品名「日清べに花油」、日清オイリオグループ(株)製)
耐洗剤密着:食器用洗剤(商品名「チャーミーグリーン」、ライオン(株)製)
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、インモールド成形用ラベルと、それを用いたインモールド成形用ラベル付きインモールド成形体の技術分野で好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートの共重合体、よりなる群より選ばれる1以上の熱可塑性樹脂よりなるブロー成形体に用いるインモールド成形用ラベルであって、該インモールド成形用ラベルが少なくともヒートシール層と基層とを含む積層樹脂フィルムからなり、該ヒートシール層が以下の要件を満足することを特徴とするインモールド成形用ラベル。
(1)大気圧近傍の圧力下にてプラズマ処理が施され、成形後の該インモールド成形用ラベルと該ブロー成形体との接着力がドライ、耐水密着、対油密着のいずれにおいても200〜500g/15mmの範囲である、
(2)表面粗さが、三次元中心面平均粗さ(SRa)として1〜10μmである、
(3)融点60〜130℃の熱可塑性樹脂よりなる。
【請求項2】
該プラズマ処理が、固体誘電体に覆われた一対の対向する電極を用い、この電極間に大気圧近傍の圧力下にてガスを満たした上で、この電極に高周波パルス状電圧を加えてガス中にプラズマを発生させ、この電極間にインモールド成形用ラベルを通過させることでヒートシール層の活性化処理を行なうものであることを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項3】
該プラズマ処理が、少なくとも一方が固体誘電体に覆われた一対の対向する電極を用い、この電極間に大気圧近傍の圧力下にてガスを満たした上で、この電極に高周波電圧を加えてガス中にプラズマを発生させ、該プラズマガスを電極間より外に位置するインモールド成形用ラベルのヒートシール層へ電極より吹き出させて、ヒートシール層の活性化処理を行なうものであることを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項4】
該プラズマ処理において使用されるガスが、窒素ガスであることを特徴とする請求項2又は3のいずれか一項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項5】
該ヒートシール層の表面から深さ10nmまでの原子構成比が、該プラズマ処理を施すことによって、ESCAを用いた1S軌道スペクトルのピーク面積より求めた窒素原子数及び炭素原子数の比(N/C)として0.02〜0.07の範囲であることを特徴とした請求項4に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項6】
該熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項7】
該基層が、ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項8】
該基層が、無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも1つを含み、且つこれを核として形成された空孔を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項9】
該インモールド成形用ラベル付きブロー成形体を界面活性剤溶液に24時間浸漬した後の該インモールド成形用ラベルと該ブロー成形体との接着力が、150〜300g/15mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のインモールド成形用ラベルを、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートの共重合体、よりなる群より選ばれる1以上の熱可塑性樹脂よりなるブロー成形体に貼着してなるラベル付きブロー成形体。

【公開番号】特開2009−40038(P2009−40038A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178544(P2008−178544)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】