説明

イーサネット転送装置

【課題】40GbEや100GbEのイーサネット転送装置において、転送するトラフィック量と連携させて、使用するインタフェースを適応的に制御することで無駄な消費電力を抑える装置を提供する。
【解決手段】低速イーサネットのトラフィック量を監視し、トラフィック量に応じ、40GbEや100GbEインタフェースの使用レーン数増減を決定する。削減の場合、40GbEや100GbEインタフェースの使用レーンを休止し、その後、対向装置の40GbEや100GbEインタフェースの使用レーンを休止させることでレーン数を削減する。増加の場合、40GbEや100GbEインタフェースインタフェースの不使用レーンを復旧し、その後、対向装置の40GbEや100GbEインタフェースインタフェースの不使用レーンを復旧させることでレーン数を増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信の分野において、イーサネット(登録商標)スイッチ装置が転送するトラフィック量に適応したインタフェース速度の制御、および省電力化に寄与する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状の光ネットワークでは、流れるトラフィック量に関わらずインタフェースは常時フル稼働で運用されている。そのため、トラフィック量が少ないインタフェースでは、装置の電力が無駄に消費されるという問題がある。この問題を解決する試みとして、非特許文献1では、トラフィック量に応じてイーサネットインタフェースの速度を変更することで省電力化を図る手法が検討されている。
【0003】
40ギガビットイーサネット(40GbE)、および100ギガビットイーサネット(100GbE)インタフェースについては、IEEE802.3ba Ethernet Task Forceにおいて規格化が進められており、2010年秋に規格化完了の予定である。しかし、IEEE802.3ba Ethernet Task Forceにおいては、トラフィックに応じたイーサネットインタフェース適応制御による省電力化に関しては検討されていない(非特許文献2)。
【0004】
ここで、現在規格化が検討中の40GbE/100GbEインタフェースのアーキテクチャについて説明する。図13は、40GbEおよび100GbEのインタフェースのアーキテクチャを示す。
【0005】
本アーキテクチャの位置づけは、OSI(Open Systems Interconnection)モデル上ではデータリンク層、および物理層にあたる。MAC(Media Access Control)副層がデータリンク層にあたり、それ以外の部分は物理層に相当する。なお図13中のFEC(Forward Error Correction)およびAN(Auto Negotiation)は、オプション機能であり必須ではない。
【0006】
図14はPCS(Physical Coding Sublayer)における機能ブロック図を示す。PCSは、イーサネットフレームを、データ転送時のビット列に変換する部分である。40GbE/100GbEのPCSでは、”Block Distribution”と”Alignment Insertion”という機能がある。これらは、従来のイーサネットにはなかった機能である。
【0007】
図15はBlock Distributionの機能を示す。図15に示すように、PCSにおいて64B/66B符号化された信号を、ラウンドロビン方式により各PCSレーンへ分配する。PCSレーン数は40GbEと100GbEにより異なっており、40GbEの場合のPCSレーン数は4本、100GbEの場合のPCSレーン数は20本となっている。
【0008】
図16はAlignment Insertionの機能を示す。図16aはAlignment Insertionの挿入を示し、図16bはAlignment Insertionの間隔を示す。図16に示すように、16383個の64B/66B符号化された信号ごとに、Alignment markerが挿入される。
【0009】
図17は、40GbEと100GbEのPMA(Physical Media Attachment)の構成を示す。40GbEの場合は、PCSにおいて4本のレーンへ分配された信号を、多重化せずにPMAを介して物理インタフェースへとデータを転送する。一方、100GbEの場合は、PCSにおいて20本のレーンへ分配された信号を、20本→10本に多重化して物理インタフェースへとデータ転送する。場合によっては、10本の信号から、さらに4本に多重化して物理インタフェースへとデータ転送する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】IEEE802.1az,“Energy Efficient Ethernet“ Draft 2.0
【非特許文献2】IEEE802.3ba,“40Gb/s and 100Gb/s Ethernet Task Force” Draft 2.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1で検討が進められている手法が適用されるインタフェースは、(1)100BASE-T (Full duplex)、(2)1000BASE-T (Full duplex)、(3)1000BASE-KX、(4)10GBASE-T/KR/KX4(備考:KR,KXは装置バックプレーンを示す)に限られており、40ギガビットイーサネットや100ギガビットイーサネットへの適用は考慮されていない。また、非特許文献1のEnergy-Efficient Ethernet(EEE)で対象となるパラレルなイーサネット信号(例えば10GBASE-KX4)の速度変更手法は、マルチレーン信号の100GbEに対しては、そのままでは適用できない。
【0012】
そこで本発明は、40GbEや100GbEのイーサネット転送装置において、転送するトラフィック量と連携させて、使用するインタフェースを適応的に制御することで無駄な消費電力を抑える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を実現するため本発明によるイーサネット転送装置は、低速イーサネットを送受信する低速イーサネットインタフェースと、高速イーサネットを送受信するマルチレーンの高速イーサネットインタフェースを有するイーサネット転送装置において、前記低速イーサネットのトラフィック量を監視する手段と、前記トラフィック量に応じ、前記高速イーサネットインタフェースの使用レーン数増減を決定する手段と、使用レーン数削減の場合、前記高速イーサネットインタフェースの使用レーンを休止し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの使用レーンを休止させるレーン数削減手段と、使用レーン数増加の場合、前記高速イーサネットインタフェースの不使用レーンを復旧し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの不使用レーンを復旧させるレーン数増加手段とを備えている。
【0014】
また、前記レーン数削減手段は、使用レーン数削減の場合、前記高速イーサネットインタフェースの送信側使用レーン数を変更し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの受信側不使用レーンを休止させ、および送信側使用レーン数を変更させ、その後、前記高速イーサネットインタフェースの送信側不使用レーンおよび受信側不使用レーンを休止し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの送信側不使用レーンを休止させる手段であり、前記レーン数増加手段は、使用レーン数増加の場合、前記高速イーサネットインタフェースの送信側休止レーンおよび受信側休止レーンを復旧し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの送信側休止レーンおよび受信側休止レーンを復旧する手段であることも好ましい。
【0015】
また、前記レーン削減手段および前記レーン数増加手段は、使用レーン数に関する情報を含んだメッセージを前記対向装置と交換することも好ましい。
【0016】
また、前記メッセージは、イーサネットOAMフレームの動作コードであることも好ましい。
【0017】
また、前記レーン削減手段および前記レーン数増加手段は、前記高速イーサネットインタフェースのPCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を休止または復旧することも好ましい。
【0018】
また、前記高速イーサネットインタフェースは、40ギガビットイーサネットインタフェース、または100ギガビットイーサネットインタフェースであることも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、イーサネット信号のトラフィック量に応じて、使用するインタフェースの速度を適応的に制御することで、装置が消費する無駄な電力を抑えるイーサネット転送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のイーサネット転送装置の使用例を示す。
【図2】イーサネット転送装置の内部構成を示す。
【図3】40GbEインタフェースの構成を示す。
【図4】多重化後の信号数が10の場合の100GbEインタフェースの構成を示す。
【図5】多重化後の信号数が4の場合の100GbEインタフェースの構成を示す。
【図6】対向するイーサネット転送装置間におけるレーン数削減時のシーケンスを示す。
【図7】対向するイーサネット転送装置間におけるレーン数増加時のシーケンスを示す。
【図8】図6および図7のシーケンスのイニシエータ側の動作を詳細化したフローチャートを示す。
【図9】図6および図7のシーケンスのスレーブ側の動作を詳細化したフローチャートを示す。
【図10】40GbEの4波長装置において、1波長を利用する場合のデータ転送時のデータの流れを示す。
【図11】100GbEの4波長装置において、2波長を利用する場合のデータ転送時のデータの流れを示す。
【図12】100GbEの10波長装置において、1波長を利用する場合のデータ転送時のデータの流れを示す。
【図13】40GbEおよび100GbEのインタフェースのアーキテクチャを示す。
【図14】PCS(Physical Coding Sublayer)における機能ブロック図を示す。
【図15】Block Distributionの機能を示す。
【図16】Alignment Insertionの機能を示す。
【図17】40GbEと100GbEのPMA(Physical Media Attachment)の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のイーサネット転送装置の使用例を示す。イーサネット転送装置1間のリンクはポイント−ポイントで接続され、その間のリンクとして40GbEもしくは100GbEが使用される。イーサネット転送装置1は、1GbEや10GbE等を集約して40GbEや100GbEにて転送するものとする。
【0022】
図2は、イーサネット転送装置の内部構成を示す。図2aと図2bの差異はインタフェース部分である。図2aは、40GbEインタフェース14を有する場合、図2bは100GbEインタフェース16を有する場合を示している。
【0023】
低速イーサネットインタフェース11では、1GbEや10GbE等の高速インタフェースよりも低速なイーサネット信号を送受信する機能を有する。
【0024】
イーサネット信号集約部12では、イーサネットインタフェースで受信した1GbEや10GbE等の信号を集約する機能を有する。
【0025】
40GbE信号生成部13および100GbE信号生成部15では、イーサネット信号集約部12にて集約されたイーサネット信号を、40GbE信号および100GbE信号として生成する機能を有する。なお、本信号生成部は、Physical Coding Sublayer(PCS)に信号を分配する機能を有する。
【0026】
40GbEインタフェース14および100GbEインタフェース16では、PCSに分配された40GbE信号、もしくは100GbE信号を各メディアに変換して送受信する機能を有する。ここで、40GbEインタフェース14および100GbEインタフェース16は、マルチレーンインタフェースを有する。
【0027】
図3は40GbEインタフェースの構成を示す。40GbEの場合は、PCSレーン数0〜3の4本有しており、メディア変換(電気−光変換)後にインタフェースから転送される信号のレーン数も4本である。受信側では、4本の信号をそれぞれ受信し、メディア変換後にPCSレーンへ送る構成となっている。
【0028】
図4は、多重化後の信号数が10の場合の100GbEインタフェースの構成を示す。この場合は、PCSレーン数は20、PMA(Physical Media Attachment)においてPCS信号が多重化された後のインタフェースから転送される信号のレーン数は10である。ここでは、PCSレーン信号が2本ずつPMAにおいて交互に多重化され、10本の信号となる。それら10本の信号が、各転送メディアにあわせて光もしくは電気信号に変換後に、対向装置へ送信される。受信側では、送信側と逆の処理が行われる。すなわち、10本の信号を受信し、それぞれの信号を2本の信号に分離した後、PCSレーンへと送る。
【0029】
図5は、多重化後の信号数が4の場合の100GbEインタフェースの構成を示す。この場合は、PMA(Physical Media Attachment)においてPCS信号が多重化された後のインタフェースから転送される信号のレーン数は4である。ここでは、まず、PCSレーン信号が2本ずつPMAにおいて交互に多重化されて10本の信号となった後、さらに、それらの10本の信号がPMAで順番に多重化され、4本の信号となる。4本の信号が、各転送メディアにあわせて光もしくは電気信号に変換された後に、対向装置へ送信される。受信側では、送信側と逆の処理が行われる。すなわち、4本の信号を受信し、それらを10本の信号に分離した後、それぞれの信号を2本の信号に分離して、PCSレーンへと送る。
【0030】
ここで、イーサネット転送装置間の通知に用いられるイーサネットOAMフレームについて説明する(参考文献:特開2008−131614号公報およびITU-T T.1731勧告)。
【0031】
LAN(Local Area Network)用のレイヤ2ネットワークとして、イーサネット技術が普及している。ネットワークのサービス事業者は、加入者に対して常に安定したサービスを提供するために、遠隔から接続線路の運用・保守・管理(OAM:Operation Administration and Maintenance)をする必要がある。そのために、ITU-T Y.1731またはIEEE802.1ag“Connectivity Fault Management”によって、イーサネットOAMフレームが規定されている。特に、ITU-T Y.1731“OAM functions and Mechanisms for Ethernet based Networks”は、イーサネット網にSONET/SDH(Synchronous Optical NETwork / Synchronous Digital Hierarchy)とほぼ同等の運用保守管理機能を実現する規格である。下記に一般的なイーサネットOAMフレーム構成を示す。
【表1】

【0032】
イーサネットOAMフレームは、到達性管理(CFM:Connectivity Fault Management)や、エラー通知、リンク(回線)パフォーマンスモニタ等の機能やその情報を伝達する機能を有するフレームである。イーサネットOAMフレームは、宛先MAC(Media Access Control)アドレスと、送信元MACアドレスと、Ethernet OAM TLV(Type Length Value)と、FCS(Frame Check Sequence)とを含む。MACアドレスは、運用保守管理対象となるレイヤ2ネットワーク装置固有の、又はネットワークインタフェースカード固有の48ビットの識別番号である。Ethernet OAM TLVは、例えば、制御情報(要求/応答)、ステータス(電源状態、受信光状態、リンク断、故障等)、ベンダコード、モデルコード等を含む。
【0033】
図6は、対向するイーサネット転送装置間におけるレーン数削減時のシーケンスを示し、図7は、対向するイーサネット転送装置間におけるレーン数増加時のシーケンスを示す。図8は、図6および図7のシーケンスのイニシエータ側(レーン数制御を開始する装置)の動作を詳細化したフローチャートを示し、図9は、図6および図7のシーケンスのスレーブ側(イニシエータ側の動作に応答して、レーン数制御を実行する装置)の動作を詳細化したフローチャートを示す。
【0034】
図8に従って、イニシエータ側の動作を以下に示す。
S1.トラフィック量監視:LAN側のトラフィック量を監視し、トラフィック量に応じて、40GbE/100GbE信号のレーン数増減を決定する。レーン数を削減の場合、ステップ2に進み、増加の場合はステップ9に進む。なお、トラフィック量の監視、およびリンク数増減の判断手法については、L2SW間の転送パケット数のMIB(Management Information Base)情報を基に算出することとする(参考文献:特開2006−157102号公報)。ここで、流入トラフィックの割合を下記のように表す。
流入トラフィック[%]=(流入バイト数x8)x100/(インタフェース速度x監視時間間隔[s])
【0035】
ここでは、インタフェース速度は、40Gb/s、もしくは100Gb/sとする。表2に、トラフィック量に応じてレーン数を決定する一例を示す。例えば、トラフィックが20%以上30%未満の場合は、40GbEのレーン数は2本、100GbEのレーン数は3本(10レーンの場合)、もしくは2本(4レーンの場合)とする。
【表2】

【0036】
なお、トラフィックに応じて割り当てるレーン数については、トラフィック対して収容帯域に余裕を持たせるために、レーン数を上記の表よりも余分にとる方法も有効である。これは運用ポリシーに応じて決定する。
【0037】
「レーン数削減の場合」
S2.送信側使用レーン変更:ステップ1により判断した使用レーンにデータを分配する。ここでは、ステップ1で監視したトラフィック量に応じて、データを流すレーン数を制御する。例えば、表2の100GbE(10レーンの場合)において、トラフィック量が45%になった場合、レーン数は5になる。このとき、64B/66B符号化された信号をラウンドロビン方式によりPCSレーンの0〜9に分配する。次に、PCSレーン0〜9の信号を多重化して送信される5つのレーンを用いてデータを転送する。残りのレーンでは、空のデータを転送する。
【0038】
ここで、40GbE(4レーン)、および100GbE(4レーンもしくは10レーン)の場合について、各レーン数の場合の使用PCSレーンを下記示す。
【0039】
例えば、表3「40GbE(4レーン)の場合」では、使用レーン(波長)が(1,2)の場合には、使用するPCSレーンは(0,1)となる。同様に、表4「100GbE(10レーン)の場合」では、例えば使用レーン(波長)が(1,2,3,4,5)の場合には、使用するPCSレーンは(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9)となる。表5「100GbE(4レーン)の場合」では、各使用レーン(波長)に応じて、使用するPCSレーンが表に記載されているように不規則となる。
【表3】

【表4】

【表5】

【0040】
S3.使用レーン数通知:使用レーン数を対向装置に通知する。本通知には、前述したイーサネットOAMフレームのOpCodeを用いる。
S4.通知待ち:対向装置からの設定完了通知を待つ。通知が確認できた場合は、次の処理へ進む。一定時間内に通知が確認できなかった場合は、障害発生とみなして、上位装置等に障害通知を行い、本制御を停止する。
S5.送信側不使用レーン休止:ステップ2の使用レーン数変更により、使われなくなった送信側レーンを休止させる。なお、レーン休止の場合、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を休止させる。
S6.受信側不使用レーン休止:使われなくなった受信側レーンを休止させる。この場合も、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を休止させる。
S7.設定完了通知:設定が完了したことを対向装置に通知する。
S8.通知待ち:対向装置からの設定完了通知を待つ。通知が確認できた場合は、レーン数削減の処理を終了する。一定時間内に通知が確認できなかった場合は、障害発生とみなして、上位装置等に障害通知を行い、本制御を停止する。
【0041】
「レーン数増加の場合」
S9.送信側休止レーン復旧:ステップ1において監視したトラフィック量に応じて、復旧させるレーンを決定し、そのレーンを復旧させる。この時点では、空データの送信を行う。なお、レーン復旧の場合、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を復旧させる。
S10.受信側休止レ―ン復旧:ステップ1において監視したトラフィック量に応じて、復旧させるレーンを決定し、そのレーンを復旧させる。この場合も、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を復旧させる。
S11.使用レーン数通知:使用レーン数を対向装置に通知する。本通知には、前述したイーサネットOAMフレームのOpCodeを用いる。
S12.通知待ち:対向装置からの設定完了通知を待つ。通知が確認できた場合は、次の処理へ進む。一定時間内に通知が確認できなかった場合は、障害発生とみなして、上位装置等に障害通知を行い、本制御を停止する。
S13.受信側復旧レーン受信開始:ステップ10で復旧させたレーンを用いた受信を開始する。
S14.送信側復旧レーン送信開始:ステップ9にて復旧させたレーンについても64B/66B符号化された信号をラウンドロビン方式により分配する。
S15.設定完了通知:設定が完了したことを対向装置に通知する。
S16.通知待ち:対向装置からの設定完了通知を待つ。通知が確認できた場合は、レーン数増加の処理を終了する。一定時間内に通知が確認できなかった場合は、障害発生とみなして、上位装置等に障害通知を行い、本制御を停止する。
【0042】
図9に従って、スレーブ側の動作を以下に示す。
S21.動作コード監視:40GbEもしくは100GbEインタフェースのトラフィックを監視し、受信したパケットのうちイーサネットOAMフレームのOpCodeを確認する。なお、イーサネットOAMフレームの識別は、パケットのLength/Typeフィールドの値、およびSubtypeフィールドの値を確認することで可能である(各フィールドの値は、ITU-T Y.1731 “OAM functions and Mechanisms for Ethernet based Networks”において規定されている)。受信したOpCodeで規定されている動作に従い、使用するレーン数の制御に移る。レーン数を削減の場合、ステップ22に進み、増加の場合はステップ29に進む。
【0043】
「レーン数削減の場合」
S22.下りトラフィック量減少確認:下りトラフィック量が上りトラフィック量と同様に減少しているか確認する。イーサネットは上下非対称であるため、上りトラフィック量が減少していても、下りトラフィック量も減少しているとは限らない。下りトラフィック量が減少していない状態でレーン数を削減した場合、帯域減少によりネットワークの輻輳、またはパケットロス等が発生する可能性がある。そのため、レーン数の削減を行わずに、対向装置にリセット信号を送信して、本制御を停止する。なお、リセット信号を受信した対向装置(イニシエータ側)も同様にレーン数の削減を停止する。下りトラフィック量が上りトラフィック量と同等以上に減少している場合、次の処理に進む。
S23.受信側不使用レーン休止:ステップ21で確認した動作コードに従い、受信側の不使用レーンを休止させる。なお、レーン休止の場合、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を休止させる。
S24.送信側使用レーン変更:ステップ21で確認した動作コードに従い、送信側の使用レーン数を変更する。レーン数の変更処理はイニシエータ側のステップ2の処理と同様に行われる。
S25.設定完了通知:設定が完了したことを対向装置に通知する。
S26.通知待ち:対向装置からの設定完了通知を待つ。通知が確認できた場合は、次の処理へ進む。一定時間内に通知が確認できなかった場合は、障害発生とみなして、上位装置等に障害通知を行い、本制御を停止する。
S27.送信側不使用レーン休止:空のデータを転送しているレーンのインタフェースを休止させる。この場合も、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を休止させる。
S28.設定完了通知:設定が完了したことを対向装置に通知し、レーン数削減の処理を終了する。
【0044】
「レーン数増加の場合」
S29.受信側休止レーン復旧:ステップ21の動作コードに応じて、受信側の休止レーンを復旧させる。なお、レーン復旧の場合、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を復旧させる。
S30.送信側休止レーン復旧:ステップ21の動作コードに応じて、送信側の休止レーンを復旧させる。この時点では、空データの送信を行う。この場合も、PCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を復旧させる。
S31.設定完了通知:設定が完了したことを対向装置に通知する。
S32.通知待ち:対向装置からの設定完了通知を待つ。通知が確認できた場合は、次の処理へ進む。一定時間内に通知が確認できなかった場合は、障害発生とみなして、上位装置等に障害通知を行い、本制御を停止する。
S33.受信側復旧レーン受信開始:受信側の復旧させたレーンを用いたデータ受信を開始する。
S34.設定完了通知:設定が完了したことを対向装置に通知し、レーン数削減の処理を終了する。
【0045】
装置間の状態通知手段について、以下で説明する。本発明では、イーサネットOAM(Operation Administration and Maintenance)フレームに、動作コード、および使用レーン数を示すコードを含む。なお、コードは、イーサネットOAMフレームのOpCodeにおいて、将来用いるために予約されているコードを用いる。現在2,4,7−31,64−255がIEEE用として予約されている。また、33−63がITU用として予約されている。このイーサネットOAMフレームを用いて装置間の状態通知を行う。
【0046】
動作コードの種別例を以下に示す。以下は一例であり、動作コードは、空きコードであればどれを用いても良い。
動作コード: 動作 : 使用波長数
33:使用レーン数変更 使用波長数 40GbEの4波長のうち波長1を使用
34:使用レーン数変更 使用波長数 40GbEの4波長のうち波長1−2を使用
35:使用レーン数変更 使用波長数 40GbEの4波長のうち波長1−3を使用
36:使用レーン数変更 使用波長数 40GbEの4波長のうち波長1−4を使用
37:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの4波長のうち波長1を使用
38:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの4波長のうち波長1−2を使用
39:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの4波長のうち波長1−3を使用
40:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの4波長のうち波長1−4を使用
41:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1を使用
42:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−2を使用
43:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−3を使用
44:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−4を使用
45:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−5を使用
46:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−6を使用
47:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−7を使用
48:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−8を使用
49:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−9を使用
50:使用レーン数変更 使用波長数 100GbEの10波長のうち波長1−10を使用
51:設定完了通知
52:リセット
【0047】
状態通知時におけるスイッチ動作について、以下で説明する。
(I)40GbEの4波長装置の場合
4波長のうち1波長を利用する場合(動作コード33の場合)
この場合は、以下のような動作を行う。
送信側:PCSレーンの0にデータを転送する。
受信側:PCSレーンの0にデータを転送する。
図10に、データ転送時のデータの流れを示す。濃灰色部分はデータ転送のために使用している箇所を示す。薄灰色部分は、休止箇所を示す
(II)100GbEの4波長装置の場合
4波長のうち2波長(波長1&2)を利用する場合(動作コード38の場合)
この場合は、以下のような動作を行う。
送信側:PCSレーンの0,1,4,5,8,9,12,13,16,17にデータを転送する。
受信側:PCSレーンの0,1,4,5,8,9,12,13,16,17にデータを転送する。
図11に、データ転送時のデータの流れを示す。
(III)100GbEの10波長装置の場合
10波長のうち1波長(波長1)を利用する場合(動作コード41の場合)
この場合は、以下のような動作を行う。
送信側:PCSレーンの0,1にデータを転送する。
受信側:PCSレーンの0,1にデータを転送する。
図12に、データ転送時のデータの流れを示す。
【0048】
以上のような制御により、トラフィック量と連携させて、イーサネット転送装置の使用インタフェースを制御することで無駄な消費電力を抑えることができる。
【0049】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 イーサネット転送装置
11 低速イーサネットインタフェース
12 イーサネット信号集約部
13 40GbE信号生成部
14 40GbEインタフェース
15 100GbE信号生成部
16 100GbEインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速イーサネットを送受信する低速イーサネットインタフェースと、高速イーサネットを送受信するマルチレーンの高速イーサネットインタフェースを有するイーサネット転送装置において、
前記低速イーサネットのトラフィック量を監視する手段と、
前記トラフィック量に応じ、前記高速イーサネットインタフェースの使用レーン数増減を決定する手段と、
使用レーン数削減の場合、前記高速イーサネットインタフェースの使用レーンを休止し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの使用レーンを休止させるレーン数削減手段と、
使用レーン数増加の場合、前記高速イーサネットインタフェースの不使用レーンを復旧し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの不使用レーンを復旧させるレーン数増加手段と、
を備えていることを特徴とするイーサネット転送装置。
【請求項2】
前記レーン数削減手段は、
使用レーン数削減の場合、前記高速イーサネットインタフェースの送信側使用レーン数を変更し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの受信側不使用レーンを休止させ、および送信側使用レーン数を変更させ、その後、前記高速イーサネットインタフェースの送信側不使用レーンおよび受信側不使用レーンを休止し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの送信側不使用レーンを休止させる手段であり、
前記レーン数増加手段は、
使用レーン数増加の場合、前記高速イーサネットインタフェースの送信側休止レーンおよび受信側休止レーンを復旧し、その後、対向装置の高速イーサネットインタフェースの送信側休止レーンおよび受信側休止レーンを復旧する手段で
あることを特徴とする請求項1に記載のイーサネット転送装置。
【請求項3】
前記レーン削減手段および前記レーン数増加手段は、使用レーン数に関する情報を含んだメッセージを前記対向装置と交換することを特徴とする請求項1または2に記載のイーサネット転送装置。
【請求項4】
前記メッセージは、イーサネットOAMフレームの動作コードであることを特徴とする請求項3に記載のイーサネット転送装置。
【請求項5】
前記レーン削減手段および前記レーン数増加手段は、前記高速イーサネットインタフェースのPCSレーン、PMA部分、PMD部分、およびMDI部分を休止または復旧することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項にイーサネット転送装置。
【請求項6】
前記高速イーサネットインタフェースは、40ギガビットイーサネットインタフェース、または100ギガビットイーサネットインタフェースであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のイーサネット転送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−77795(P2011−77795A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226655(P2009−226655)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】