説明

イージーピールフィルム及び蓋材フィルム

【課題】非吸着性とイージーピール性を兼ね備えるとともに、ヒートシールによるクラックを防ぐことが可能なイージーピールフィルム及びこれを用いた蓋材フィルムを提供する。
【解決手段】イソフタル酸成分の共重合比率が20%〜30モル%でガラス転移点(Tg)が70〜75℃のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂80〜99重量%と、ガラス転移点(Tg)が15〜30℃の非晶性ポリエステル樹脂1〜20重量%と、エポキシ基含有エチレン系共重合体0〜19重量%と、を含有することを特徴とするイージーピールフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルやガラス等の容器に好適なイージーピールフィルム及びこれを用いた蓋材フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポリオレフィン系樹脂をシーラントとしたラミネートフィルムは、低分子量の有機化合物に対する非吸着性およびバリア性が劣り、飲食物や化粧品等の香気成分が吸着して風味が変化したり、化粧品や薬剤等の微量な有効成分が浸透あるいは吸着して効能が低下したりする欠点がある。また、ラミネートフィルムに対する影響としては、内容品に含まれる香味成分やアルコール類、界面活性剤などが浸透することにより、包装フィルム内部の接着剤層やアンカー剤層、印刷層等に悪影響を及ぼして層間のラミネート強度を低下させ、デラミネーション(剥離)を起こすおそれがあるという問題もある。
【0003】
ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂は、透明性や耐薬品性などに優れているため、カップ容器やボトル容器などの成形材料として広く使用されている。しかし、通常のポリエステル樹脂は結晶性で融点が高く、ヒートシール性が劣るため、従来のイージーピールフィルムをシーラントとした蓋材フィルムでは、ポリエステル樹脂に対して安定したヒートシール強度が得にくいという問題があった。また、従来のイージーピールフィルムは粘着付与剤が添加されているものがあり、それが内容物に溶出するといった問題点があった。
【0004】
特許文献1には、ポリエステル樹脂用のイージーピールフィルムとして、ジオール成分の一部としてビスフェノール類のエチレンオキサイド付加物を用いた非晶性の共重合ポリエステルと、エポキシ基含有エチレン系共重合体とを含有する樹脂組成物からなるヒートシール性フィルムが記載されている。また、特許文献1には、このヒートシール性フィルムの特長について、ゼリーやプリン等のホット充填処理が行われてもヒートシール部の劣化を防ぐことができ、また、20℃、2週間の条件でd−リモネンの吸着が少なく、保香性に優れたものと説明されている。
【0005】
特許文献2には、無水マレイン酸変性LLDPE等の変性ポリオレフィン系樹脂層の一面に、イソフタル酸成分含有ポリエチレンテレフタレート等の共重合ポリエステル樹脂層からなるヒートシール層が積層されてなる易開封性フィルムが記載されている。また、特許文献2には、共重合ポリエステル樹脂層が内容物側にあるので保香性、耐油性を発揮し、蓋材に匂いの吸着がなく、内容物の変質もないので、ポリエステル等の成形容器の蓋材として好適なものであることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−49940号公報
【特許文献2】特開平7−137216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の非晶性の共重合ポリエステルベースのヒートシール性フィルムは、エポキシ基含有エチレン系共重合体を配合により柔軟性を付与するとともにシール強度を抑制しているが、ベースの共重合ポリエステルのガラス転移点が約50〜80℃と常温よりも高く剛性を有しているため、所定の温度(例えば180〜200℃)でのヒートシール後の冷却によりクラックが発生する場合がある。また、シール温度が低温ではシール性が悪く、シール温度を高温にするとシール強度が強くなりイージーピールでなくなってしまう。
【0008】
特許文献2の記載のイソフタル酸成分含有ポリエチレンテレフタレートからなるヒートシール層は、実施例の記載によればイソフタル酸変性率が10〜15モル%であり、PET容器に対する接着性が低い。また、シール温度を高温にするとシール強度が強くなりイージーピールでなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、非吸着性とイージーピール性を兼ね備えるとともに、ヒートシールによるクラックを防ぐことが可能なイージーピールフィルム及びこれを用いた蓋材フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、イソフタル酸変性率が20〜30モル%でガラス転移点(Tg)が70〜75℃のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂80〜99重量%と、ガラス転移点(Tg)が15〜30℃の非晶性ポリエステル樹脂1〜20重量%と、エポキシ基含有エチレン系共重合体0〜19重量%と、を含有することを特徴とするイージーピールフィルムを提供する。
また、本発明は、容器に接する側に、上記のイージーピールフィルムが設けられたことを特徴とする蓋材フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非吸着性とイージーピール性を兼ね備えるとともに、ヒートシールによるクラックを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
本発明のイージーピールフィルムは、下記の成分(A)〜(C)を含有する組成物からなるものである。
(A)イソフタル酸成分の共重合比率が20〜30モル%でガラス転移点(Tg)が70〜75℃のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂80〜99重量%
(B)ガラス転移点(Tg)が15〜30℃の非晶性ポリエステル樹脂1〜20重量%
(C)エポキシ基含有エチレン系共重合体0〜19重量%
【0013】
本発明のイージーピールフィルムにおいては、イソフタル酸成分の共重合比率が20〜30モル%でガラス転移点(Tg)が70〜75℃のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)がベースレジンとして用いられる。(A)の含有率は、80〜99重量%が好ましい。
【0014】
また、上記ベースレジンに対して、非晶性ポリエステル樹脂(B)およびエポキシ基含有エチレン系共重合体(C)が改質剤として添加される。非晶性ポリエステル樹脂(B)の含有率は、1〜20重量%が好ましい。また、エポキシ基含有エチレン系共重合体(C)の含有率は、0〜19重量%が好ましい。
ここで、(C)のエポキシ基含有エチレン系共重合体は0重量%(含まない)でもよく、その場合は、(A)と(B)とが必須成分として含有され、(A)が80〜99重量%、(B)が1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。
なお、(A)+(B)+(C)の合計量が100重量%を超えてはならないことは言うまでもない。例えば(C)が5重量%の場合には、(A)が80〜94重量%、(B)が1〜15重量%の範囲内であることが好ましい。また、(C)が10重量%の場合には、(A)が80〜89重量%、(B)が1〜10重量%の範囲内であることが好ましい。また、(C)が15重量%の場合には、(A)が80〜84重量%、(B)が1〜5重量%の範囲内であることが好ましい。
【0015】
《イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂》
本発明のイージーピールフィルムに用いられるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)は、ジカルボン酸成分とジオール成分との縮合重合によって得られる線状ポリエステル樹脂のうち、ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸を第1の主成分、イソフタル酸を第2の主成分とし、ジオール成分としてはエチレングリコールを主成分とする共重合体である。
ここで、ジカルボン酸成分のうちテレフタル酸とイソフタル酸の共重合比率の和は、95モル%〜100モル%が好ましく、99モル%〜100モル%がより好ましい。また、ジオール成分のうちエチレングリコールの共重合比率は、95モル%〜100モル%が好ましく、99モル%〜100モル%がより好ましい。
イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、低分子量成分の非吸着性に優れる上、ボトル等の成型用として一般的かつ大量に使用されているため安価に調達が可能であり、経済的に極めて合理的な原料樹脂である。
【0016】
イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂の極限粘度(IV)は、0.60〜0.85dl/gであることが好ましい。本発明における極限粘度は、JIS K 7367−5に準じ、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1/1)混合溶媒中、30℃で測定される値である。前記極限粘度が0.60dl/g未満の場合には、樹脂の分子量が低すぎて充分な非吸着性およびバリア性を得にくく、前記極限粘度が0.85dl/gを超える場合には、熱溶融時の粘度が高すぎて押出加工が困難になり、生産性が低下するため、好ましくない。
【0017】
イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂において、イソフタル酸成分の共重合比率(イソフタル酸変性率)は、20モル%〜30モル%が好ましい。ここで、イソフタル酸成分の共重合比率とは、ジカルボン酸成分のうちイソフタル酸成分が占めるモル百分率である。また、上述したように、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)が主成分となる。
本発明では、イージーピール性組成物に添加される後述の低Tgポリエステル樹脂(B)がポリエステル系であるため、イソフタル酸成分の共重合比率は通常より高くする必要がある。このため、イソフタル酸成分の共重合比率が20モル%未満の場合には、結晶化の速度が高すぎて的確な結晶化度の制御ができないので、適当なシール温度条件では充分なヒートシール性を示さず、実用的なものにはならない。また、イソフタル酸成分の共重合比率が30モル%を超える場合には耐熱性が低くなり、ヒートシール時にシール部の周囲がブロッキングしてしまう(加熱用部材からの熱伝導によって、意図した範囲よりも広い範囲でシールされてしまう現象)ため、適切なヒートシールが難しくなる。
【0018】
《非晶性ポリエステル樹脂》
本発明のイージーピールフィルムには、ガラス転移点(Tg)が15〜30℃の非晶性ポリエステル樹脂(B)が用いられる。このような低Tgのポリエステル樹脂(以下、「低Tgポリエステル樹脂」という。)としては、芳香族ジカルボン酸を主成分とする酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分と、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテル成分とを含有する共重合体が挙げられる。該共重合体中、酸成分とジオール成分及びポリエーテル成分は、エステル結合等を介して結合される。このため、酸成分の原料には、低級アルキルエステル(例えばメチルエステル)や酸ハロゲン化物等のエステル形成可能な誘導体を用いても良い。
【0019】
酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、トリメリット酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。
低Tgポリエステル樹脂の機械的特性の観点から、全酸成分中の芳香族ジカルボン酸の含有率は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。また、低Tgポリエステル樹脂に優れた透明性および柔軟性を付与し、かつ成形性を確保する観点から、全酸成分中のイソフタル酸の含有率は、5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%の範囲がより好ましい。
【0020】
ジオール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール化合物またはそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。全ジオール成分中のエチレングリコールの含有率は、60モル%以上が好ましく、さらに好ましくは70モル%以上である。
【0021】
ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられ、ポリエチレングリコールでは分子量300〜20000程度のもの、ポリオキシテトラメチレングリコールでは分子量300〜4000程度のものが好ましい。低Tgポリエステル樹脂が適度な長さ(分子量に比例)のポリエーテル成分を含有することにより、高分子中に、ポリエーテルによる柔軟なセグメントが形成される。優れた透明性および柔軟性を付与し、かつ成形性を確保する観点から、樹脂成分中のポリエーテル成分の含有率は、0.1〜40重量%の範囲が好ましく、0.5〜35重量%の範囲がより好ましい。
上記の低Tgポリエステル樹脂(B)は、オリゴマーや粘着付与剤を添加しなくても自己粘着性を有するため、これらの溶出による問題も少ない。
【0022】
《エポキシ基含有エチレン系共重合体》
本発明のイージーピールフィルムには、任意成分として、エポキシ基含有エチレン系共重合体(C)が用いられる。このエポキシ基含有エチレン系共重合体(C)は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を有するとともに、ポリエステル系樹脂の末端基である水酸基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)と反応することが可能な官能基として、エポキシ基(>O)を有する共重合体である。
【0023】
このようなエポキシ基含有エチレン系共重合体(C)としては、エチレンやプロピレン等のオレフィン(a)と、グリシジルメタクリレート(GMA)等のエポキシ基を有するモノマー(b)を少なくとも含む共重合体が挙げられる。他に共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボン酸等が挙げられる。
なかでも、エチレンとグリシジルメタクリレートの2成分からなるエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が好ましい。エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体において、グリシジルメタクリレートのモノマーとしての含有率は6〜12重量%(つまり、エチレンのモノマーとしての含有率は94〜88重量%)が好ましい。
【0024】
本発明のイージーピールフィルムにエポキシ基含有エチレン系共重合体(C)を添加してその効果を得るためには、エポキシ基含有エチレン系共重合体(C)をイージーピール性組成物中の1重量%以上、つまり1〜10重量%の添加が好ましい。この場合には、(A)+(B)の2成分のブレンドに比べて、d−リモネンの吸着量を低減する傾向がみられることや、組成物の相溶性が向上し、シール強度のばらつき(製造ロットが同一または異なる、複数のサンプルを同一条件でシールしたときにおける剥離強度の標準偏差の大きさ)を低減する傾向がみられる。
【0025】
《イージーピール性組成物》
本発明のイージーピールフィルムを構成する樹脂組成物(イージーピール性組成物)は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。本発明のイージーピールフィルムは、自己粘着性を有する低Tgポリエステル樹脂を含有するので、オリゴマーや粘着付与剤を添加する必要はない。
また、イージーピールフィルムのベース樹脂として、イソフタル酸成分の共重合比率が20〜30モル%でガラス転移点(Tg)が70〜75℃のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)をベースレジンとしているので、ホモPET等のポリエステル製容器に対する接着性が向上する。柔軟性・自己粘着性を有する非晶性ポリエステル樹脂(B)をベースレジンとした場合と比べると、Tgが高いので非吸着性に優れるものとなり、巻き取りにおけるブロッキングを防ぐことができる。
【0026】
《蓋材フィルム》
本形態例の蓋材フィルムは、その容器に接する側に設けられるシーラント層として、上記形態例のイージーピールフィルムを用いたものである。
本形態例の蓋材フィルムは、基材とシーラント層、必要に応じて他の中間層を積層したラミネートフィルム(積層フィルム)として構成することが好ましい。すなわち、蓋材フィルムの一方の最表面となるシーラント層と基材、必要に応じて他の中間層、接着剤層やアンカー剤層などの複数の層を有する。そして、シーラント層は、上述するイージーピール性組成物からなるイージーピールフィルムであることを特徴とする。
基材または他の中間層とシーラント層との積層は、接着剤層又はアンカー剤層を介しても良いし、基材に直接積層されていても良い。前記中間層としては、補強層、ガスバリア層、遮光層、印刷層など、適宜、一層または複数層を選択することができる。
【0027】
蓋材フィルムの基材としては、耐熱性や強度などの機械的特性、印刷適性に優れた延伸フィルムが好ましく、具体的には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O−PET)フィルム、2軸延伸ナイロン(O−Ny)フィルム、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム等を挙げることができる。前記基材の厚さは通常10〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0028】
シーラント層の内側には、シーラント層を基材または他のフィルムと接着するため、アンカー剤層または接着剤層が介在されることが好ましい。シーラント層を押出ラミネート法で形成する場合には、シーラント層の内側に接するアンカー剤層が形成される。基材としてO−PETを用いる場合にはアンカー剤層を用いなくとも良い。予め単層フィルムとして作製したシーラント層をドライラミネート法によって基材または他のフィルムと接着する場合には、シーラント層の内側に接する接着剤層が形成される。また、共押出法を用いる場合は酸変性ポリオレフィンなどの接着性樹脂を用いても良い。
前記アンカー剤層を構成するアンカー剤としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系、アルキルチタネート(有機チタン化合物)系等、一般的に押出ラミネート法に使用されるアンカー剤が使用でき、蓋材フィルムの用途に合わせて選択可能である。
前記接着剤層を構成する接着剤としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系等、一般的にドライラミネート法に使用される接着剤を使用でき、蓋材フィルムの用途に合わせて選択可能である。
【0029】
前記シーラント層の内側のアンカー剤層または接着剤層と前記基材との間には、中間層としてガスバリア層や補強層などが存在していても構わない。
補強層は蓋材フィルムの強度特性を補完する役割をもつ。補強層を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O−PET)、2軸延伸ナイロン(O−Ny)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)等を挙げることができる。補強層の厚みは、通常5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0030】
ガスバリア層は、酸素や水蒸気等のガスが蓋材フィルムを透過することを遮断するためガスバリア性を付与する機能を有する。このようなガスバリア層としては、金属箔、アルミニウムや無機酸化物の蒸着層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン等のガスバリア性樹脂層が挙げられる。なお、バリア層を補強層として共用しても構わない。これらのガスバリア層は、基材または補強層を構成するフィルムの片面に設けることができ、一般には基材とシーラント層との間の中間層として設けられる。無機酸化物蒸着層の場合は、基材よりも外側の最外層(蓋材フィルムにおいてシーラント層の反対側の最表層)としても利用できる。
ガスバリア層の厚みは、金属箔またはガスバリア性樹脂層による場合は通常5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。ガスバリア層として金属蒸着層または無機酸化物蒸着層を用いる場合には、これより薄くすることができる。
【0031】
本発明の蓋材フィルムを製造する方法としては、特に限定されることなく、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共押出法またはこれらの併用により、蓋材フィルムを構成する各層を適宜積層すればよい。
本形態例の蓋材フィルムにおいて、シーラント層の厚さは、包装材料の用途にも依存し、特に限定されるものではないが、通常は5〜150μm程度であり、好ましくは15〜80μmである。
【0032】
本形態例の蓋材フィルムは、ポリエステル樹脂製容器やガラス製容器に好適である。容器を構成するポリエステル樹脂(ホモポリマーやコポリマーなど)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の一般的なポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
ガラス転移点(Tg)は、JIS K 7121に準じ、中間点ガラス転移温度として示差走査熱量測定(DSC)法で測定した値(℃)である。
融点(Tm)は、JIS K 7121に準じ、融解ピーク温度として示差走査熱量測定(DSC)法で測定した値(℃)である。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準じ、190℃、2.16kg荷重で測定した値(g/10分)である。
極限粘度(IV)は、JIS K 7367−5に準じ、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンを質量比=1/1で混合した混合溶媒中、30℃で測定した値(dl/g)である。
なお、以下の説明において、「IPA変性PET」とは「イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート」の略であり、「GMA」とは「グリシジルメタクリレート」の略である。
【0034】
(実施例1)
IPA変性PET(イソフタル酸成分(IPA)の共重合比率25mol%、Tmなし、極限粘度IV=0.68dl/g)を80重量%、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製の非晶性ポリエステル「FLX92」(商品名。IV=0.92dl/g、MFR=7g/10分、Tg=27℃、Tmなし)を20重量%の比率で溶融混練後、押出成形により、厚さ50μmのシーラント(イージーピールフィルム)を作製した。このシーラントをPETフィルムおよびAl箔とドライラミネートにより貼り合わせ、PET12μm/Al箔7μm/シーラント50μmの層構成を有する積層フィルムを得た。
【0035】
(実施例2)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)80重量%、「FLX92」10重量%、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA6重量%、MFR=3)10重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(実施例3)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)80重量%、「FLX92」15重量%、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA6重量%、MFR=3)5重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0036】
(実施例4)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)80重量%、「FLX92」15重量%、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA12重量%、MFR=3)5重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(実施例5)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)80重量%、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製の非晶性ポリエステル「FLX86」(商品名。IV=0.86dl/g、MFR=5g/10分、Tg=18℃、Tmなし)20重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(実施例6)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)80重量%、「FLX92」5重量%、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA6重量%、MFR=3)15重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0037】
(比較例1)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)70重量%、「FLX92」を30重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(比較例2)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)70重量%、「FLX92」20重量%、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA6重量%、MFR=3)10重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(比較例3)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)70重量%、「FLX92」20重量%、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA12重量%、MFR=3)10重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(比較例4)
シーラントの組成を、IPA変性PET(実施例1と同じもの)70重量%、「FLX92」20重量%、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA19重量%、MFR=380)10重量%とした以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0038】
(評価方法)
上記各実施例および比較例に係るシーラントおよび積層フィルムについて、下記に説明する評価を行った。
【0039】
(1)PETに対する剥離強度
JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)の180°引きはがし試験法に準じて、積層フィルムのシーラントをPETシート(厚さ100μm)に向かい合わせてヒートシールし、引張速度300mm/分、幅15mmにて測定した。ヒートシール条件は、100℃、120℃、150℃、180℃、200℃のうちのいずれかの温度において、圧力0.2MPaで1秒間加熱および加圧するものである。評価は、剥離強度が少なくともいずれかの温度で10〜20N/15mmとなったものを「○」とし、剥離強度がいずれもその範囲外のものを「×」と評価した。
【0040】
(2)巻取後のブロッキング
押出成形で作製したシーラントをロールに巻き取って回収した。そして、このロールからシーラントを再び繰り出そうとしたときに、ブロッキング(間の貼り付き)が発生しないのを「◎」、若干のブロッキングは発生するが使用において問題がないのを「○」、ブロッキングのために繰り出し不能で使用が困難であるのを「×」と評価した。
【0041】
(3)酢酸α−トコフェロールの残存率
積層フィルムを用いてパウチを作製し、有効成分として酢酸α−トコフェロール(ビタミンEアセテート)を含む市販の化粧水2.5mlをパウチに入れ、パウチの開口部を圧力0.2MPa、時間1秒、温度180℃でヒートシールして密封した。密封したパウチを40℃で1ヶ月及び3ヶ月保管した後に開封し、化粧水中の酢酸α−トコフェロールの残存量を高速液体クロマトグラフィ法で定量し、前記残存量をもとに有効成分の残存率(%)を算出した。
【0042】
(4)d−リモネン吸着量
シーラントのフィルム(厚さ50μm)から幅20mm、長さ50mmの試験片を作製し、試験片を容器に入れ、この容器に香気成分であるd−リモネンを加えて試験片をd−リモネン中に40℃で1週間(7日間)浸漬した。その後、試験片を容器から取り出し、20℃で2時間風乾したのちの浸漬前後の試験片との重量差を求めることにより吸着重量を計算し、浸漬前の試験片に対して増加した割合を重量%で示した。
【0043】
以上の各実施例および比較例について、シーラントの組成を表1に、積層フィルムの構成を表2に、(1)の評価結果を表3に、(2)〜(4)の評価結果を表4に示す。
表1において、「IPA変性PET」は「イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート」を表し、「軟質PET」は本実施例および比較例で用いた非晶性ポリエステルを表し、「EGMA」は「エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体」を表し、「GMA」は「グリシジルメタクリレート」を表す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
実施例1〜5では、ポリエステル用シーラントとしてPETに対する剥離強度(0.2MPa、1秒間)が十分高いシール条件が見出され、ブロッキングの問題もなく、酢酸α−トコフェロールの残存率が高い(80%以上)上に、d−リモネン吸着量も低い(2%未満)という、優れた結果を示した。
また、IPA変性PET(A)と軟質PET(B)との2種ブレンドである実施例1,5では、(A)の配合比が80%と高いにもかかわらず、180℃でシールしたときの剥離強度と200℃でシールしたときの剥離強度との差が小さく、シール温度の変動に対してもより安定的なシールが可能である。
これに対して、比較例1〜4では、酢酸α−トコフェロールの残存率が1ヶ月後ではやや低く、3ヶ月後ではより低下する傾向が見られる上に、d−リモネン吸着量が高くなった(2%以上)。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、特に、飲食物や化粧品、薬剤等、香料や有効成分を含有する内容品の包装に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソフタル酸成分の共重合比率が20〜30モル%でガラス転移点(Tg)が70〜75℃のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂80〜99重量%と、
ガラス転移点(Tg)が15〜30℃の非晶性ポリエステル樹脂1〜20重量%と、
エポキシ基含有エチレン系共重合体0〜19重量%と、
を含有することを特徴とするイージーピールフィルム。
【請求項2】
容器に接する側に、請求項1に記載のイージーピールフィルムが設けられたことを特徴とする蓋材フィルム。

【公開番号】特開2011−144353(P2011−144353A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252002(P2010−252002)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】