説明

ウイルス・微生物除去装置

【課題】ウイルスや微生物を捕捉する機能の低減の抑制をするウイルス・微生物除去装置を提供することを目的としている。
【解決手段】風路筐体10と、風路筐体10に空気を取り込む送風機1と、風路筐体10内に設けられ、送風機1によって空気とともに取り込まれる浮遊物を荷電させる荷電部60と、風路筐体10内に設けられ、荷電部60によって荷電された浮遊物を捕捉するフィルター6と、風路筐体10内であって荷電部60の下流側に設けられ、フィルター6を挟んで所定の間隙をあけて対向配置される2つの電極5、7を有し、2つの電極5、7に電圧が印加されることによりフィルター6を誘電し、フィルター6に捕捉された浮遊微生物を不活化する不活化部61と、フィルター6に捕捉された浮遊物を除去する自動清掃機構11と、自動清掃機構11を制御する制御部50とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に浮遊しているウイルスや微生物を捕捉し、不活化させるウイルス・微生物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空間に浮遊しているウイルスや微生物などを除去する浮遊ウイルス・浮遊微生物除去装置として、風上側から、コロナ荷電部、高圧電極、フィルター、及びフィルターに接した電極の順で配置されたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、風上側から、プレフィルター、荷電部、光触媒フィルター、紫外線ランプ、ウイルス捕捉フィルター(水滴下式フィルター)、静電フィルターの順で配置された浮遊微生物・浮遊ウイルス除去装置も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−512131号公報(たとえば、7頁17行〜10頁30行、及び第1図参照)
【特許文献2】特開平11−188214号公報(たとえば、7頁41行〜8頁51行、及び1図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、ウイルスや微生物と同時に塵埃もフィルターに捕捉されるが、ウイルスや微生物に比べると塵埃のサイズが大きいためフィルターに堆積し、フィルターとしてのウイルスや微生物を捕捉する機能が低減してしまう可能性がある。特許文献1に記載の技術は、この堆積した塵埃を取り除く機能を有するものではないため、ウイルスや微生物を安定的に捕捉しにくくなってしまう可能性があった。
また、特許文献1に記載の技術は、堆積した塵埃の除去やフィルターに捕捉された微生物やウイルスの増殖防止にあたり、ユーザーがフィルターを清浄化しなければならなかった。
【0006】
特許文献2に記載の技術は、ウイルスや微生物の除去のために、光触媒フィルター、水滴下式フィルター、及び静電フィルターと3枚のフィルターを設けている。これにより、特許文献2に記載の技術では、圧力損失が増大し、ウイルスや微生物が除去された空気を高効率に室内に供給することができなくなったり、騒音が発生してしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、メンテナンス性が損なわれないようにしながら、ウイルスや微生物を捕捉する機能の低減を抑制するウイルス・微生物除去装置を提供することを第1の目的としている。
また、本発明は、圧力損失の増大を抑制し、ウイルスや微生物が除去された空気の供給効率が低減したり、騒音が発生してしまうことを抑制するウイルス・微生物除去装置を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るウイルス・微生物除去装置は、風路筐体と、風路筐体に空気を取り込む送風機と、風路筐体内に設けられ、送風機によって空気とともに取り込まれる浮遊物を荷電させる荷電部と、風路筐体内に設けられ、荷電部によって荷電された浮遊物を捕捉するフィルターと、風路筐体内であって荷電部の下流側に設けられ、フィルターを挟んで所定の間隙をあけて対向配置される2つの電極を有し、2つの電極に電圧が印加されることによりフィルターを誘電し、フィルターに捕捉された浮遊微生物を不活化する不活化部と、フィルターに捕捉された浮遊物を除去する自動清掃機構と、自動清掃機構を制御する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウイルス・微生物除去装置によれば、フィルターに捕捉された浮遊物を掻き落とす清掃機構を備えているので、メンテナンス性が損なわれないようにしながら、ウイルスや微生物を捕捉する機能の低減を抑制することができる。
また、本発明に係るウイルス・微生物除去装置は、フィルターに浮遊物が堆積することが抑制され、圧力損失の増大を抑制し、ウイルスや微生物が除去された空気の供給効率が低減したり、騒音が発生してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図2】図1に図示されるウイルス・微生物除去装置の斜視図である。
【図3】図1に図示される荷電部高圧電極及び捕捉・不活化部高圧電極の構成例を説明する図である。
【図4】図1に図示される親水性フィルターの構成例を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るウイルス・微生物除去装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】図1に図示される親水性フィルターを誘電させた場合と、誘電させない場合におけるウイルス捕捉率を説明する図である。
【図7】捕捉したウイルスをオゾンガスのみで処理する場合と、オゾンガスに加えてプラズマ処理をする場合におけるウイルス生存率を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図9】図8に図示されるローラー及びダストボックスの近傍を上方から見た図である。
【図10】図8に図示されるウイルス・微生物除去装置の変形例の1つである。
【図11】図8に図示されるウイルス・微生物除去装置の変形例であって、図10とは異なるものである。
【図12】本発明の実施の形態3に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図14】図13に図示されるウイルス・微生物除去装置の水平断面図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態7に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態8に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態9に係るウイルス・微生物除去装置の概要構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1〜図4を参照してウイルス・微生物除去装置100の構成について説明する。
なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1及び図2に図示された矢印は、空気の流れを表している。また、以下の説明においては、ウイルス・微生物除去装置100を装置100と称するものとする。また、空気中には、浮遊物としてたとえばウイルス、微生物、塵埃などが存在している。ここで、ウイルス、微生物については、浮遊微生物とも称することもある。
本実施の形態1に係る装置100は、浮遊微生物を捕捉するフィルターを有し、捕捉した浮遊微生物を不活化するものである。そして、本実施の形態1に係る装置100は、浮遊微生物を捕捉するフィルターに、ウイルスや微生物などと比較するとサイズの大きい塵埃が捕捉されることにより、フィルターの機能が低下することを抑制する改良が加えられたものである。
【0012】
[装置100の構成]
装置100は、空気が流れ、各種機器が配置される風路筐体10を有している。この風路筐体10には、上流側(風上側)から、送風機1、荷電部高圧電極(第1高電圧印加電極)2、荷電部接地電極(第1対向電極)3、自動清掃機構11、捕捉・不活化部接地電極(第2対向電極)7、フィルター6、及び捕捉・不活化部高圧電極(第2高電圧印加電極)5が順に配置されている。
また、装置100は、荷電部高圧電極2に電圧を供給する電源8と、捕捉・不活化部高圧電極5に電圧を供給する電源4と、送風機1などの各種機器を制御する制御部50を有している。
なお、荷電部高圧電極2及び荷電部接地電極3によって、浮遊微生物や塵埃を荷電(帯電)させる荷電部60を構成している。また、捕捉・不活化部接地電極7及び捕捉・不活化部高圧電極5によって、浮遊微生物を不活化させる不活化部61を構成している。さらに、不活化部61とフィルター6とによって捕捉・不活化部を構成している。
【0013】
(送風機1)
送風機1は、風路筐体10内に空気を取り込むものである。送風機1は、荷電部高圧電極2の上流側に設けられている。なお、送風機1は、たとえばプロペラファンなどを採用するとよい。また、本実施の形態1では、送風機1を荷電部高圧電極2の上流側に設置し、不活化部61に空気を押し込むものとして説明するが、送風機1を捕捉・不活化部高圧電極5の下流側に設置し、不活化部61から空気を吸い込むようにしてもよい。
【0014】
(荷電部高圧電極2)
荷電部高圧電極2は、電源8に接続され、電源8から供給される電圧が印加される電極である。なお、荷電部高圧電極2は、荷電部接地電極3とともに、送風機1から送り込まれる浮遊微生物や塵埃を荷電させるものである。この荷電部高圧電極2は、送風機1の下流側であって、荷電部接地電極3の上流側に設けられている。
【0015】
荷電部高圧電極2は、たとえば、線径0.05mm〜0.5mm程度の細線を、略同一平面上に多数張ることで構成するとよい。ここで、荷電部高圧電極2は、上述の細線で構成することに限定されるものではなく、たとえば断面形状が0.1mm×0.5mm程度の長方形でもよいし、厚みが0.05mm〜0.5mm程度のリボン状の部材で構成してもよい。なお、荷電部高圧電極2の断面形状を長方形とする場合には、断面形状の短辺に対応する方の面が、荷電部接地電極3に向けて設けられていてもよいし、長辺に対応する方の面が、荷電部接地電極3に向けて設けられていてもよい。
【0016】
また、荷電部高圧電極2は、図3(a)に図示されるように、平板(厚み0.05〜0.5mm)を、エッチング、ワイヤー加工、レーザー加工等で幅0.3〜1.0mmの短冊が並ぶように形成して構成してもよい。この場合には、図3(b)に図示されるように荷電部高圧電極2の周囲をヘミング曲げなどの曲げ加工をする、もしくは、荷電部高圧電極2の周囲を絶縁物によって補強をするとよい。これにより、荷電部高圧電極2の張りを保つことができる。
【0017】
(荷電部接地電極3)
荷電部接地電極3は、接地電位に接続された電極である。荷電部接地電極3は、荷電部高圧電極2の下流側であって自動清掃機構11の上流側に設けられている。荷電部接地電極3は、たとえば、金属メッシュなどからなる電極で構成するとよい。
なお、荷電部高圧電極2と荷電部接地電極3との間に所定の電圧が印加されるのであれば、荷電部接地電極3は接地されていなくてもよい。
【0018】
(自動清掃機構11)
自動清掃機構11は、捕捉・不活化部接地電極7及びフィルター6に体積した浮遊微生物及び塵埃を除去するものである。自動清掃機構11は、荷電部接地電極3の下流側であって、捕捉・不活化部接地電極7の上流側に設けられている。
この自動清掃機構11は、捕捉・不活化部接地電極7の表面上を移動するブラシ12を有している。このブラシ12は、略円柱形状をしており、鉛直方向に平行な軸を中心に回転可能に設けられている。そして、ブラシ12は、荷電部接地電極3が設けられた側の捕捉・不活化部接地電極7の表面上を回転しながら、捕捉・不活化部接地電極7及びフィルター6に体積した浮遊微生物や塵埃を掻き取ることができるようになっている。このブラシ12は、表面が起毛しているため、捕捉・不活化部接地電極7から所定の間隔を空けて設けられているフィルター6の浮遊微生物及び塵埃も除去することができるようになっている。
なお、自動清掃機構11は、ブラシ12を回転させて浮遊微生物や塵埃を掻き取る構成であるものとして説明したが、それに限定されるものではなく、たとえば振動、吹き飛ばしなどによって浮遊微生物や塵埃を取り除く機構によって代用してもよい。
【0019】
(捕捉・不活化部接地電極7)
捕捉・不活化部接地電極7は、接地電位に接続された電極である。捕捉・不活化部接地電極7は、自動清掃機構11の下流側であってフィルター6の上流側に設けられている。捕捉・不活化部接地電極7は、たとえば、金属メッシュなどからなる電極で構成するとよい。
なお、捕捉・不活化部高圧電極5と捕捉・不活化部接地電極7との間に所定の電圧が印加されるのであれば、捕捉・不活化部接地電極7は接地されていなくてもよい。
【0020】
(フィルター6)
フィルター6は、浮遊微生物、塵埃などを捕捉するものである。フィルター6は、捕捉・不活化部接地電極7の下流側であって、捕捉・不活化部高圧電極5の上流側に設けられている。より詳細には、フィルター6は、絶縁物9を介して、捕捉・不活化部接地電極7と捕捉・不活化部高圧電極5とに挟み込まれるようにして設けられている。すなわち、フィルター6は、絶縁物9により絶縁接地されている。なお、絶縁物9は、たとえば絶縁ブッシングなどを採用するとよい。
また、絶縁物9の代わりに、図4(a)及び図4(b)に図示されるように、フィルター6の周囲に設けられる絶縁性の絶縁フレーム13を採用してもよい。
なお、フィルター6は、ハニカム構造や、四角形の穴が格子状に貫通した構造を有するフィルターを採用するとよい。これにより、フィルター6における圧力損失を低減することができる。また、フィルター6は、親水性の素材で構成するとよい。
【0021】
フィルター6は、捕捉・不活化部接地電極7と捕捉・不活化部高圧電極5との間に印加される電圧により、誘電作用が働き分極する。これにより、フィルター6の表面には、静電界が形成される。そして、荷電部高圧電極2及び荷電部接地電極3からなる荷電部60で電荷が付加された浮遊微生物は、フィルター6の表面に形成された電界に引き寄せられてフィルター6に衝突し、捕捉される。
なお、フィルター6には、浮遊微生物だけでなく、塵埃などの粒子も引き寄せられてフィルター6に衝突し、捕捉される。これは、浮遊微生物と同様に、塵埃などの粒子も、荷電部60で電荷が付加されるためである。この塵埃などの粒子は、一般的に浮遊微生物と比較するとサイズが大きいために、フィルター6に堆積しやすく、フィルター6の機能を低減させる可能性がある。そこで、このフィルター6に捕捉された塵埃などの粒子は、自動清掃機構11のブラシ12によって掻き落とされる。
【0022】
(捕捉・不活化部高圧電極5)
捕捉・不活化部高圧電極5は、電源4に接続され、電源4から供給される電圧が印加される電極である。なお、捕捉・不活化部高圧電極5は、捕捉・不活化部接地電極7とともに、フィルター6を分極させるものである。また、捕捉・不活化部高圧電極5は、捕捉・不活化部接地電極7とによって放電して、フィルター6に捕捉された浮遊微生物を不活化するものである。捕捉・不活化部高圧電極5は、フィルター6の下流側に設けられている。
【0023】
捕捉・不活化部高圧電極5は、たとえば、線径0.05mm〜0.5mm程度の細線を、略同一平面上に多数張ることで構成するとよい。ここで、捕捉・不活化部高圧電極5は、上述の細線で構成することに限定されるものではなく、たとえば断面形状が0.1mm×0.5mm程度の長方形でもよいし、厚みが0.05mm〜0.5mm程度のリボン状の部材で構成してもよい。なお、捕捉・不活化部高圧電極5の断面形状を長方形とする場合には、断面形状の短辺に対応する方の面が、捕捉・不活化部接地電極7に向けて設けられていてもよいし、長辺に対応する方の面が、捕捉・不活化部接地電極7に向けて設けられていてもよい。
【0024】
また、捕捉・不活化部高圧電極5は、図3(a)に図示されるように、平板(厚み0.05〜0.5mm)を、エッチング、ワイヤー加工、レーザー加工等で幅0.3〜1.0mmの短冊が並ぶように形成して構成してもよい。この場合には、図3(b)に図示されるように捕捉・不活化部高圧電極5の周囲をヘミング曲げ等の曲げ加工をする、もしくは、捕捉・不活化部高圧電極5の周囲を絶縁物9によって補強をするとよい。これにより、捕捉・不活化部高圧電極5の張りを保つことができる。
【0025】
(電源4及び電源8)
電源4は、捕捉・不活化部高圧電極5に電圧を供給するものであり、捕捉・不活化部高圧電極5に接続されている。電源4は、可変型高電圧電源であり、少なくとも2つ以上の異なる電圧を捕捉・不活化部高圧電極5に供給可能になっている。
電源8は、荷電部高圧電極2に電圧を供給するものである。電源8は、放電時に荷電部接地電極7に流れる電流を制御するため可変であり、荷電部高圧電極2に接続されている。
なお、電源4及び電源8は、風路筐体10を流れる圧力損失とならないように、装置100のうち風路筐体10の外部に設けられているとよい。
【0026】
(制御部50)
制御部50は、送風機1のファンの回転数、電源4の捕捉・不活化部高圧電極5への電圧供給、電源8の荷電部高圧電極2への電圧供給、及び自動清掃機構11の駆動を制御するものである。
また、制御部50は、荷電部高圧電極2と荷電部接地電極3との間で放電が起こることで荷電部接地電極3に流れる放電電流、及び捕捉・不活化部高圧電極5と捕捉・不活化部接地電極7との間で放電が起こることで捕捉・不活化部接地電極7に流れる放電電流を計測する電流判定部(図示省略)を有する。
さらに、制御部50は、タイマー機能を有しており、制御を開始してから経過した時間を計測する機能を有している。
なお、この制御部50は、制御基板上に設けられている、たとえばマイコンなどに対応するものである。
【0027】
本実施の形態1に係る装置100は、浮遊微生物を捕捉する部分であるフィルター6と、捕捉した浮遊微生物を不活化する不活化部61とを共通化した捕捉・不活化部を有している。すなわち、装置100は、浮遊微生物の捕捉処理と、捕捉した浮遊微生物の不活化処理とを捕捉・不活化部にて連続的に実行可能としたものであり、効率的に浮遊微生物を除去できるようになっている。
【0028】
[動作説明]
次に、装置100の動作例について図5を参照して説明する。
(ステップS0)
装置100を駆動すると、制御部50は浮遊微生物捕捉工程を開始する。なお、この浮遊微生物捕捉工程は、浮遊微生物を荷電させる浮遊微生物荷電工程と、荷電された浮遊微生物を捕捉する浮遊微生物誘電捕捉工程とから構成される。
【0029】
(ステップS101)
制御部50は、送風機1を駆動させる。
また、制御部50は、電源8から荷電部高圧電極2に電圧を供給するとともに、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に電圧を供給する。これにより、荷電部高圧電極2と荷電部接地電極3との間で放電が起こり、放電電流が荷電部接地電極3に流れる。一方、捕捉・不活化部高圧電極5と捕捉・不活化部接地電極7との間には所定の電圧が印加され、フィルター6を誘電し、分極させる。
【0030】
(ステップS102)
制御部50の電流判定部は、荷電部接地電極3に流れる放電電流を計測し、予め設定されている設定電流値と比較する。すなわち、電流判定部は、この放電電流と予め設定されている設定電流値とを比較し、当該比較結果が所定の条件を満たしているか否かを判定する。
制御部50は、電流判定部の比較結果が所定の条件を満たしていると判定した場合に、ステップS103に移行する。
制御部50は、電流判定部の比較結果が所定の条件を満たしていないと判定した場合に、ステップS101に移行する。
【0031】
(ステップS103)
ステップS103は、浮遊微生物荷電工程を開始するステップである。
制御部50は、荷電部接地電極3の放電電流値が設定電流値よりも低ければ、電源8から荷電部高圧電極2に供給される電圧が高くなるようにする。
制御部50は、荷電部接地電極3の放電電流値が設定電流値よりも高ければ、電源8から荷電部高圧電極2に供給される電圧が低くなるようにする。
また、制御部50は、タイマーを作動させて、ステップS103に移行してからの経過時間を計測する。
【0032】
(ステップS104)
ステップS104は、浮遊微生物誘電捕捉工程を開始するステップである。
制御部50は、捕捉・不活化部接地電極7に流れる電流値が設定電流値よりも低ければ、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に供給される電圧が高くなるようにする。
制御部50は、捕捉・不活化部接地電極7に流れる電流値が設定電流値よりも高ければ、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に供給される電圧が低くなるようにする。
また、制御部50は、タイマーを作動させて、ステップS104に移行してからの経過時間を計測する。
【0033】
(ステップS105)
制御部50は、ステップS103の浮遊微生物荷電工程に移行してから設定された時間に達したか否か、及びステップS104の浮遊微生物誘電捕捉工程に移行してから設定された時間に達したか否かを判定する。
制御部50は、双方の工程ともに設定された時間に達したと判定した場合に、ステップS106に移行する。
制御部50は、少なくとも一方の工程が設定された時間に達していないと判定した場合に、ステップS105を繰り返す。
【0034】
(ステップS106)
ステップS106は、ステップS103の浮遊微生物荷電工程、及びステップS104の浮遊微生物誘電捕捉工程を終了するステップである。すなわち、ステップS106は、浮遊微生物捕捉工程を終了するステップである。
制御部50は、電源8から荷電部高圧電極2に電圧を供給することを停止し、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に電圧を供給することを停止する。その後、制御部50は、送風機1を停止する。
【0035】
(ステップS107)
ステップS107は、浮遊微生物を不活化する浮遊微生物不活化工程を開始するステップである。
制御部50は、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に電圧を供給する。これにより、捕捉・不活化部高圧電極5と捕捉・不活化部接地電極7の間で放電が起こり、放電電流が捕捉・不活化部接地電極7に流れる。
また、制御部50の電流判定部は、捕捉・不活化部接地電極7に流れる放電電流を計測し、予め設定されている設定電流値と比較する。すなわち、電流判定部は、この放電電流と予め設定されている設定電流値とを比較し、当該比較結果が所定の条件を満たしているか否かを判定する。
制御部50は、電流判定部の比較結果が所定の条件を満たすようになった後に、ステップS108に移行する。
さらに、制御部50は、タイマーを作動させて、ステップS107に移行してからの経過時間を計測する。
【0036】
(ステップS108)
ステップS108は、浮遊微生物不活化工程であって、浮遊微生物を不活化するオゾン発生工程を開始するステップである。
制御部50は、捕捉・不活化部接地電極7の放電電流値が設定電流値よりも低ければ、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に供給される電圧が高くなるようにする。
制御部50は、捕捉・不活化部接地電極7の放電電流値が設定電流値よりも高ければ、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に供給される電圧が低くなるようにする。
また、制御部50は、電源8から荷電部高圧電極2に電圧を供給させて、荷電部高圧電極2と荷電部接地電極3とを放電させ、オゾンを発生させる。この発生したオゾンは、フィルター6や捕捉・不活化部接地電極7などに至り、浮遊微生物の不活化に利用される。
さらに、制御部50は、タイマーを作動させて、ステップS108に移行してからの経過時間を計測する。
【0037】
(ステップS109)
制御部50は、ステップS107の浮遊微生物不活化工程に移行してから設定された時間に達したか否か、及びステップS108のオゾン発生工程に移行してから設定された時間に達したか否かを判定する。
制御部50は、双方の工程ともに設定された時間に達したと判定した場合に、ステップS110に移行する。
制御部50は、少なくとも一方の工程が設定された時間に達していないと判定した場合に、ステップS108に戻る。
【0038】
(ステップS110)
ステップS110は、ステップS108のオゾン発生工程を含む浮遊微生物不活化工程を終了するステップである。
制御部50は、電源8から荷電部高圧電極2に電圧を供給することを停止し、電源4から捕捉・不活化部高圧電極5に電圧を供給することを停止する。
【0039】
(ステップS111)
ステップS111は、フィルター6及び捕捉・不活化部接地電極7を清掃する清掃工程を開始するステップである。
制御部50は、自動清掃機構11を制御して、フィルター6及び捕捉・不活化部接地電極7を清掃する。
また、制御部50は、タイマーを作動させて、ステップS111に移行してからの経過時間を計測する。
【0040】
(ステップS112)
制御部50は、ステップS111の清掃工程に移行してから設定された時間に達したか否かを判定する。
制御部50は、設定された時間に達したと判定した場合に、ステップS113に移行する。
制御部50は、設定された時間に達していないと判定した場合に、ステップS112を繰り返す。
【0041】
(ステップS113)
ステップS113は、ステップS111の清掃工程を終了するステップである。
制御部50は、自動清掃機構11を停止する。
【0042】
(ステップS114)
ステップS101に戻り、再び浮遊微生物捕捉工程を行う。
【0043】
[圧力損失及びウイルス捕捉率の比較]
次に、表1を参照して、装置100の圧力損失及びウイルス捕捉率に関する性能について説明する。表1は、装置100と、装置100の荷電部60及び捕捉・不活化部に対応する構成をフィルター単体に置き換えたものと、における圧力損失(Pa)及び一過性ウイルス捕捉率(%)を比較したものである。
なお、フィルターのみの構成に置き換えた方式と述べたが、フィルターとして、HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)と、通常のフィルターとを採用して比較している。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、装置100の浮遊微生物の捕捉方式は、フィルター6に空気を線速度1(m/s)で流す場合、通常のフィルターと同等の10(Pa)程度の圧力損失であることがわかった。また、その時の一過性ウイルス捕捉率は95%程度であり、通常フィルターの一過性ウイルス捕捉率5%と比べて非常に高くなった。
これは、浮遊微生物が、静電気の力によりフィルター6に高効率に引き寄せられるためであると考えられる。一方、HEPAフィルターは、装置100の浮遊微生物の捕捉方式よりも、一過性ウイルス捕捉率を高くすることはできるが、圧力損失が大幅に増加することがわかった。
以上のことから、装置100は、圧力損失を通常のフィルターと同等に保ちながら、HEPAフィルターと同レベルの一過性ウイルス捕捉率を達成できることが明らかになった。
【0046】
[ウイルス捕捉率について]
次に、図6を参照して、フィルター6が誘電されると、浮遊微生物の捕捉効率にどの程度の影響があるかについて説明する。なお、図6では、横軸が荷電部60に供給する電圧(kV)を示し、縦軸が一過性ウイルス捕捉率(%)を示している。
なお、荷電部高圧電極2及び捕捉・不活化部高圧電極5の線径や、荷電部高圧電極2と荷電部接地電極3との電極間距離及び捕捉・不活化部高圧電極5と捕捉・不活化部接地電極7との電極間距離により、電極間の電位差が変化する。
そこで、図6では、荷電部高圧電極2及び捕捉・不活化部高圧電極5には、断面形状が0.1mm×0.5mmの細線を採用した。また、荷電部高圧電極2は荷電部接地電極3に対して長方形断面の短辺に対応する面が向くように設置し、同様に、捕捉・不活化部高圧電極5は捕捉・不活化部接地電極7に対して長方形断面の短辺に対応する面が向くように設置した。さらに、荷電部高圧電極2と荷電部接地電極3との電極間距離及び捕捉・不活化部高圧電極5と捕捉・不活化部接地電極7との電極間距離は、10mmとした。
【0047】
図6に図示されるように、フィルター6を誘電させた場合と、誘電させない場合ともに荷電部60の印加電圧の増加とともに、一過性ウイルス捕捉率は上昇する。しかし、フィルター6を誘電させない場合には、一過性ウイルス捕捉率は20%程度である(白抜き四角)のに対して、フィルター6を帯電させた場合には、一過性ウイルス捕捉率は96%(黒塗り丸)まで上昇する。
以上のことから、フィルター6を誘電することは、浮遊微生物の捕捉率の向上という観点から非常に重要であることがわかった。これにより、一般的に浮遊微生物の除去効果があると認められる90%以上の捕捉を行なうには、フィルター6を誘電することが必要であることが明らかになった。
【0048】
[ウイルス生存率について]
次に、図7を参照して、装置100に捕捉された浮遊微生物の不活化性能について説明する。すなわち、図7は、捕捉した浮遊微生物を、オゾンガスのみで処理する場合と、装置100のように、オゾンガスのみならず、その他の放電生成物も用いて処理する(プラズマ処理)場合と、におけるウイルス生存率の比較をグラフにしたものである。なお、図7では、横軸がオゾン濃度×時間積(ppm・min)を、縦軸が生存率(無次元)を、それぞれ示している。
ウイルスは、基本的に電圧を印加し、各電極を分極させるだけでは不活化しない。そこで、装置100は、電圧印加で生じる放電由来の放電生成物により、ウイルスを不活化する構成となっている。
【0049】
図8に図示されるように、オゾン濃度が同じであっても、ウイルスをプラズマ場で処理することにより、短時間に不活化することができた。これは、捕捉したウイルスがプラズマ場にさらされることにより、プラズマ場に生成された電子、ラジカル、イオンなどによって、ウイルスが不活化されたためであると考えられる。
以上のことから、装置100のように、ウイルスを捕捉するフィルター6を、プラズマ場に設置する構成とすることで、短時間にウイルスを不活化することができる。これにより、装置100では、不活化に要する時間を短くすることができる分、浮遊微生物を捕捉する時間を長くすることができ、より効率的にウイルスを除去することができる。
【0050】
また、塵埃などの浮遊粒子がフィルター6の表面に付着すると、フィルター6の分極が阻害されて粒子の捕捉率が低下する。また、塵埃の付着量が多くなると圧力損失の増加も懸念される。そこで、装置100は、自動清掃機構11によってフィルター6(捕捉・不活化部接地電極7を含む)に付着した塵埃を取り除くことにより、粒子捕捉率の回復および圧力損失を低下させることが可能になる。
なお、自動清掃機構11は、不活化部61への電圧印加が停止したときに行われる。これにより、フィルター6の分極が元に戻り、塵埃の捕捉力が低下する。この塵埃の捕捉力が低下しているときに、ブラシ12がフィルター6及び捕捉・不活化部接地電極7に沿って移動させられるので、フィルター6に付着した塵埃をすみやかに除去することができる。
【0051】
[装置100の有する効果]
本実施の形態1に係る装置100は、構成面において、不活化部61にフィルター6を設け、そのフィルター6を誘電することにより、荷電した浮遊微生物を効率よく誘導し、フィルター6の表面に衝突させて保持させるものである。
また、本実施の形態1に係る装置100は、制御面において、浮遊微生物を荷電する浮遊微生物荷電工程と、荷電した浮遊微生物を誘電されたフィルター6で捕捉する浮遊微生物誘電捕捉工程と、フィルター6で捕捉した浮遊微生物をプラズマで不活化する浮遊微生物不活化工程と、不活化した浮遊微生物を塵埃等と一緒に清掃する清掃工程と、を実行するものである。
【0052】
これにより、本実施の形態1に係る装置100は、浮遊微生物を捕捉した部分(フィルター6及び捕捉・不活化部接地電極7)を衛生的に保つことができるため、メンテナンス性が損なわれないようにしながら、浮遊微生物を捕捉する機能が低減してしまうことを抑制することができる。すなわち、装置100が設置される空間(たとえば、居住空間等)の空気を衛生的に保つことができる。
また、本実施の形態1に係る装置100は、フィルター6及び捕捉・不活化部接地電極7に堆積する浮遊微生物や塵埃を、自動清掃機構11によって除去することができるので、圧力損失が増大し、浮遊微生物が除去された空気の供給効率が低減したり、騒音が発生してしまうことを抑制することができる。
さらに、本実施の形態1に係る装置100は、荷電部60で荷電された浮遊微生物を、誘電されたフィルター6によって捕捉するものであるので、浮遊微生物が再飛散してしまうことを抑制することができる。
【0053】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100aと称する)の概要構成の一例を示す図である。図9は、図8に図示されるローラー16a及びダストボックス15の近傍を上方から見た図である。図8及び図9を参照して、装置100aの構成及び動作について説明する。なお、実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付している。また、図8に図示された矢印は、空気の流れを表している。
【0054】
実施の形態2に係る装置100aは、フィルター14と、ブラシ12a、ダストボックス15、ローラー16a及びローラー16bからなる自動清掃機構11aとを、捕捉・不活化部接地電極7の上流側に備えている。すなわち、実施の形態1に係る装置100は浮遊微生物や塵埃がフィルター6及び捕捉・不活化部接地電極7に堆積する構成であったが、実施の形態2にかかる装置100aはフィルター6とは異なるフィルター14を備え、このフィルター14にて塵埃を捕捉する。なお、フィルター14でも浮遊微生物が捕捉されるが、塵埃に比べると浮遊微生物は小さいため、大部分がこのフィルター14を通過して、不活化部61に設けられたフィルター6にて捕捉される。
【0055】
フィルター14は、塵埃を捕捉するものである。このフィルター14は、塵埃を捕捉することができ、浮遊微生物については通過することができる程度の目の粗さのフィルターを採用するとよい。
フィルター14は、一端側がローラー16aに巻き取られており、他端側がローラー16bに巻き取られて設けられている。なお、フィルター14の背面側に、ローラー16a及びローラー16bが設けられている。また、フィルター14の一端側は、ダストボックス15に隣接配置されており、フィルター14の前面側であってローラー16aの対向位置には、ブラシ12aが接触して設けられている。
【0056】
自動清掃機構11aは、塵埃を捕捉するフィルター14、フィルター14に堆積した塵埃などを除去するブラシ12a、ブラシ12aによってフィルター14から掻き出された塵埃などが廃棄されるダストボックス15、フィルター14の一部分が巻き取られているローラー16a及びローラー16bを有している。
【0057】
ブラシ12aは、フィルター14に堆積した塵埃などを除去するものである。ブラシ12aは、フィルター14の前面側であってローラー16aの対向位置に、フィルター14と接触するように固定されて設けられている。また、ブラシ12aは、図9に図示されるように、掻き出した塵埃などをダストボックス15に廃棄できるように、ダストボックス15に隣接配置されている。より詳細には、ブラシ12aは、ダストボックス15の開口部80にて、フィルター14の表面に接するように設けられている。
【0058】
ダストボックス15は、ブラシ12aによってフィルター14から掻き出された塵埃などが廃棄されるものである。ダストボックス15の開口部80には、接触して設けられたブラシ12aとフィルター14が設けられている。なお、ダストボックス15に塵埃などが一定量溜まった場合には、ユーザーなどが廃棄すればよい。
【0059】
ローラー16aはフィルター14の一端側を巻き取るものであり、ローラー16bはフィルター14の他端側を巻き取るものである。このローラー16aとローラー16bとは、水平方向において対向するように設けられている。なお、ローラー16aについては、ダストボックス15及びブラシ12aに近接配置されている。
【0060】
ローラー16a及びローラー16bがフィルター14を巻き取る動作について説明する。フィルター14に堆積した塵埃などを除去する際には、ローラー16a及びローラー16bを回転させて、ローラー16aでフィルター14を巻き取るようにする。これは、ローラー16bから見ると、フィルター14をローラー16aに送り出すことに対応する。これにより、フィルター14に堆積した塵埃などは、ブラシ12aによって掻き出される。そして、ローラー16aに巻き取られたフィルター14を戻す際には、逆方向にローラー16a及びローラー16bを回転させればよい。
【0061】
図10は、図8に図示されるウイルス・微生物除去装置100aの変形例の1つ(以下、装置100bと称する)である。図10に図示される装置100bのように、送風機1の上流側に、フィルター14及び自動清掃機構11が設けられていてもよい。これにより、送風機1より下流のものを、塵埃などの粒子が付着してしまうことを抑制することができる。
図11は、図8に図示されるウイルス・微生物除去装置100aの変形例(以下、装置100cと称する)であって、図10とは異なるものである。また、図11に示す装置100cのように、荷電部高圧電極2の上流側であって送風機1の下流側に、フィルター14及び自動清掃機構11が設けられていてもよい。
図10及び図11に図示されるように、フィルター14及び自動清掃機構11を配置しても、装置100や装置100aと同等の効果を得ることができる。
【0062】
実施の形態2に係る装置100a、100b、100cも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。
【0063】
実施の形態3.
図12は、本発明の実施の形態3に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100dと称する)の概要構成の一例を示す図である。図12を参照して、装置100dの構成及び動作について説明する。なお、実施の形態3では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1、2と同一部分には、同一符号を付している。また、図12に図示された矢印は、空気の流れを表している。
【0064】
実施の形態3に係る装置100dの自動清掃機構11dは、実施の形態2にかかるフィルター14が、捕捉・不活化部接地電極7をも兼ねるようにしたものである。そこで、本実施の形態3に係る装置100dにおいては、実施の形態2に係るフィルター14に対応するものを、フィルター接地電極7aと称するものとする。
このフィルター接地電極7aは、導電性樹脂などで構成するとよい。これにより、フィルター接地電極7aに、柔軟性及び導電性を持たせることができるので、フィルターとしての機能及び電極としての機能を兼ね備えさせることができる。
このフィルター接地電極7aは、浮遊微生物荷電工程及び浮遊微生物誘電捕捉工程において、浮遊微生物とともに送り込まれる塵埃などを捕捉する。そして、浮遊微生物不活化工程を終えて捕捉・不活化部高圧電極5に電圧が供給されることが停止した後に、ローラー16が回転し、フィルター接地電極7aに付着した塵埃などがブラシ12によって掻き出されてダストボックス15に廃棄されるようになっている。
【0065】
実施の形態3に係る装置100dも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。
【0066】
実施の形態4.
図13は、実施の形態4に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100eと称する)の概要構成の一例を示す図である。図14は、図13に図示される装置100eの水平断面図である。なお、実施の形態4では実施の形態1〜3との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜3と同一部分には、同一符号を付している。また、図13及び図14に図示された矢印は、空気の流れを表している。
【0067】
装置100eは、フィルター6の上流側に設けられるローラー16c、及びフィルター6の下流側であってローラー16cの対向位置に設けられるローラー16d、及び風路筐体10外に設けられたブラシ12eを有している。
【0068】
ローラー16e1及びローラー16e2は、回転することで、図14に図示されるように、フィルター6を空気流れ方向に対して略垂直な方向にスライド移動させることができるようになっている。
ブラシ12eは、風路筐体10外に設けられている。このブラシ12eは、フィルター6が水平方向に移動した際に、フィルター6の前面と接触するように設けられている。これにより、フィルター6が水平方向に移動すると、それに伴ってブラシ12eも回転するようになっている。すなわち、フィルター6が水平方向に移動時において、フィルター6とブラシ12eとの間で生じる摩擦によりブラシ12eが回転する。このため、ブラシ12eは、たとえばモーターなどの動力をあたえることなく回転し、フィルター6を清掃することができるようになっている。
【0069】
装置100eは、浮遊微生物不活化工程の終了後の清掃工程において、図14に図示されるように、ローラー16e1及びローラー16e2の回転により、フィルター6を水平方向に移動させる。このフィルター6の移動時に、ブラシ12eによってフィルター6に堆積した塵埃などが掻き出されるようになっている。
【0070】
実施の形態4に係る装置100eも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。
【0071】
実施の形態5.
図15は、本発明の実施の形態5に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100fと称する)の概要構成の一例を示す図である。なお、実施の形態5では実施の形態1〜4との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜4と同一部分には、同一符号を付している。また、図15では、空気の流れを矢印で示している。
表2は、素材に応じて正に帯電しやすいか、負に帯電しやすいかを示す表である。たとえば、表2に示された素材において、一番ガラスが正に帯電しやすく、次に、ナイロンが正に帯電しやすい。
【0072】
【表2】

【0073】
装置100fは、自動清掃機構11fが、2本以上のブラシを備えたものである。図15に図示されるように、実施の形態5では、自動清掃機構11fが、2つのブラシ12f1、12f2を備えている場合を例に説明する。
自動清掃機構11fは、接地されて除電されるブラシ12f1と、フィルター6を構成する素材に対して異極となる素材で構成されたブラシ12f2からなる。すなわち、ブラシ12f2は、たとえば、フィルター6が負に帯電しやすい素材であるポリプロピレンで構成された場合、ブラシ12f2は、ガラス、ナイロン、セロハン、ビニロンなどの正に帯電しやすい素材で構成することが好ましいということである。
【0074】
表2のB群に示される素材は、一般には電流を通すため帯電をし難い物質である。そこで、フィルター6はA群に示されるいずれかの素材で構成し、ブラシ12f2はC群に示されるいずれかの素材で構成することにより、フィルター6とブラシ12f2とに接触帯電が生じやすくなる。これにより、たとえば清掃行程後において、フィルター6表面に電荷が生じているため、浮遊微生物荷電工程及び浮遊微生物誘電捕捉工程に移行前、すなわち、フィルター6が分極される前であっても、浮遊微生物を捕捉することができる。
【0075】
実施の形態5に係る装置100fも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。
【0076】
実施の形態6.
図16は、実施の形態6に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100gと称する)の概要構成の一例を示す図である。なお、実施の形態6では実施の形態1〜5との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜5と同一部分には、同一符号を付している。また、図16では、空気の流れを矢印で示している。
装置100gは、荷電部接地電極3の下流側であって、捕捉・不活化部接地電極7の上流側に微生物・ウイルスを不活化させる粒子を放出する不活化物質発生装置17が設けられている。
この不活化物質発生装置17は、たとえば、霧状にした粒子を荷電させて放出する機構を備えたものである。不活化物質発生装置17が粒子を霧状にする方法や、荷電させる方法は、特に限定されるものではないが、たとえば粒子を含む水槽、当該水槽に空気を吹き付けて霧状にするファン、霧状になった粒子を荷電させる電極などによって構成するとよい。また、粒子は、水分を含んでいれば特に限定されるものではない。
この不活化物質発生装置17は、浮遊微生物不活化工程の後において、フィルター6の表面の電位と逆極性の電荷の粒子を放出する。すなわち、フィルター6の表面がプラスに帯電している場合には、マイナスの電荷を持つ粒子を放出するということである。これにより、清掃工程において、フィルター6の表面の電荷が中和されるため、静電気力で付着している塵埃や、不活化後の浮遊微生物をフィルター6の表面から引き離すことが容易になる。
【0077】
実施の形態6に係る装置100gも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。
【0078】
実施の形態7.
図17は、本発明の実施の形態7に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100hと称する)の概要構成の一例を示す図である。なお、実施の形態7では実施の形態1〜6との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜6と同一部分には、同一符号を付している。また、図17では、空気の流れを矢印で示している。
【0079】
装置100hは、荷電部接地電極3の下流側であって、捕捉・不活化部接地電極7の上流側に加湿器18を設けたものである。この加湿器18は、浮遊微生物不活化工程において、加湿器18により風路筐体10の湿度を上昇させるものである。
これにより、風路筐体10内の水分を含んだ粒子が基になり、放電で、強い酸化力を持つ水酸化ラジカル(OH・)が発生し、短時間で、浮遊微生物の不活化を行うことができる。また、フィルター6の表面電位は、極性分子である水の影響により下がるため、フィルター6に付着した、不活化後の浮遊微生物や塵埃などを容易に取り除きやすくすることができる。
【0080】
実施の形態7に係る装置100hも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。
【0081】
実施の形態8.
図18は、本発明の実施の形態8に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100iと称する)の概要構成の一例を示す図である。なお、実施の形態8では実施の形態1〜7との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜7と同一部分には、同一符号を付している。また、図18では、空気の流れを矢印で示している。
装置100iは、実施の形態1の装置100における捕捉・不活化部高圧電極5の下流側に、フィルター6の浮遊微生物の捕捉性能の低下を検出するためのダストセンサー19を備えたものである。
このダストセンサー19がフィルター6の浮遊微生物の捕捉性能の低下を検出する方法は、たとえば、所定波長に光りをフィルター6に照射し、その反射光を受光素子などで受け取ることで実現するとよい。
フィルター6は、浮遊微生物や塵埃などが付着することにより、分極しにくくなり、浮遊微生物の捕捉率が低下したり、圧力損失が増大する。そこで、装置100iは、ダストセンサー19に、この捕捉性能を検出させる。そして、ダストセンサー19が受け取る反射光の出力値が決まった値を超えたときに、自動清掃機構11を運転させることで、消費電力を低減し、効率良く運転することができる。
【0082】
実施の形態8に係る装置100iも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。
【0083】
実施の形態9.
図19は、本発明の実施の形態9に係るウイルス・微生物除去装置(以下、装置100jと称する)の概要構成の一例を示す図である。なお、実施の形態9では実施の形態1〜8との相違点を中心に説明し、実施の形態1〜8と同一部分には、同一符号を付している。また、図19では、空気の流れを矢印で示している。
装置100jは、浮遊微生物の捕捉する領域15aと、不活化する領域であるダストボックス15bとに跨がって設けられたフィルター6jを備えている。そして、このフィルター6jは、軸(図示省略)を中心に回転することで、領域15aに位置していた部分がダストボックス15bに移動し(交替し)、ダストボックス15bに位置していた部分が領域15aに移動する(交替する)。なお、フィルター6jは、連続的に回転させてもよいし、間欠的に回転させてもよい。間欠的に回転させる一例としては、浮遊微生物不活化工程の時間や領域15a及びダストボックス15bの大きさを考慮した上で、フィルター6jの回転を所定時間停止してから、所定角度回転させるというものがある。
【0084】
なお、領域15aは、フィルター6jのうち風路筐体10内に位置する部分を指すものとする。また、ダストボックス15bは、風路筐体10外に設けられており、たとえばフィルター6jが設けられる開口部15jが形成された略箱状の部材によって構成するとよい。
ダストボックス15bには、フィルター6jの前面側と接触するようにブラシ12jが設けられている。また、ダストボックス15bには、不活化物質発生装置17が設けられている。これにより、ブラシ12jによって掻き出された浮遊微生物は、不活化物質発生装置17から放出される粒子によって不活化される。
【0085】
実施の形態9に係る装置100jも、実施の形態1に係る装置100と同様の効果を奏する。また、実施の形態1〜9に記載された事項は、適宜組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1 送風機、2 荷電部高圧電極、3 荷電部接地電極、4 電源、5 捕捉・不活化部高圧電極、6 フィルター、6j フィルター、7 捕捉・不活化部接地電極、7a フィルター接地電極、8 電源、9 絶縁物、10 風路筐体、11、11a、11d、11f 自動清掃機構、12、12a、12e、12f、12j ブラシ、13 絶縁フレーム、14 フィルター、15、15b ダストボックス、15a 領域、15j 開口部、16a〜16e ローラー、17 不活化物質発生装置、18 加湿器、19 ダストセンサー、50 制御部、60 荷電部、61 不活化部、80 開口部、100、100a〜100j 装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風路筐体と、
前記風路筐体に空気を取り込む送風機と、
前記風路筐体内に設けられ、前記送風機によって空気とともに取り込まれる浮遊物を荷電させる荷電部と、
前記風路筐体内に設けられ、前記荷電部によって荷電された浮遊物を捕捉するフィルターと、
前記風路筐体内であって前記荷電部の下流側に設けられ、前記フィルターを挟んで所定の間隙をあけて対向配置される2つの電極を有し、前記2つの電極に電圧が印加されることにより前記フィルターを誘電し、前記フィルターに捕捉された浮遊微生物を不活化する不活化部と、
前記フィルターに捕捉された浮遊物を除去する自動清掃機構と、
前記自動清掃機構を制御する制御部とを備えた
ことを特徴とするウイルス・微生物除去装置。
【請求項2】
前記自動清掃機構は、
前記風路筐体内に設けられ、
前記不活化部の上流側に設けられ、表面が起毛しているブラシを少なくとも1つ有し、
前記ブラシが、
前記不活化部の前記電極のうちいずれか一方の前記電極に沿って移動して、前記フィルターに捕捉された浮遊物を掻き出し除去する
ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項3】
前記自動清掃機構は、
前記風路筐体外に設けられ、
前記フィルターによって捕捉された浮遊物を、前記風路筐体外の空間で掻き出し除去するブラシを有し、
前記フィルターは、
前記風路筐体内と前記風路筐体外の空間とに回転自在に跨がって設けられ、
前記風路筐体内に位置する領域と、前記空間に位置する領域とが交替可能となっている
ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項4】
前記フィルターを空気流れ方向に対して略垂直にスライド移動させるローラーを備え、
前記自動清掃機構は、
前記風路筐体外に設けられるものにおいて、
前記ローラーによってスライド移動する前記フィルターに接触するように設けられ、前記フィルターによって捕捉された浮遊物を、前記風路筐体外の空間で掻き出し除去するブラシを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項5】
前記自動清掃機構は、複数の前記ブラシを有し、
前記ブラシの少なくとも1つは接地されている
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項6】
前記自動清掃機構の有する複数の前記ブラシの1つは、
前記フィルターを構成する素材の帯電傾向に反する帯電傾向の素材によって構成された
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項7】
前記不活化部の下流側に設けられ、前記フィルターに捕捉された浮遊物量を検出するダストセンサーを備え、
前記制御部は、
前記ダストセンサーの検出結果に基づいて、前記自動清掃機構を制御する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記自動清掃機構を運転している時には、前記不活化部に電圧を印加しない
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項9】
空気を加湿する加湿機構を備え、
前記制御部は、
前記自動清掃機構を運転している時には、前記加湿機構によって前記風路筐体内の空気を加湿させる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項10】
不活化物質を放出する不活化物質発生装置を備え、
前記制御部は、
前記自動清掃機構の運転を停止した後に、前記不活化物質発生装置によって前記自動清掃機構に向かって不活化物質を放出させる
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のウイルス・微生物除去装置。
【請求項11】
前記ブラシが除去した浮遊物を溜めるダストボックスを備えた
ことを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載のウイルス・微生物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−43114(P2013−43114A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181866(P2011−181866)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】