説明

ウイルス検査方法、及び、モデル動物

【課題】デングウイルスのワクチン及び治療薬を開発するために好適なウイルス検査方法を提供する。
【解決手段】マーモセット科のサルにデングウイルスを接種する接種工程と、前記サルの血液、尿などからデングウイルスを検出する検出工程とを有するデングウイルスの検出方法、及びデングウイルスを増殖するのに好適なモデル動物に関する。検出行程はリアルタイムRT−PCR法、RT−PCR法、ウイルス感染価測定法、プラーク形成法、PAP(Peroxidase Anti-Peroxidase)法、IgM捕捉ELISA法、IgG−ELISA法、又は、中和抗体価測定法のうち少なくともいずれかの1つの方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デングウイルスの検査方法及びモデル動物に関する。より詳しくは、デングウイルスをマーモセット科のサルに感染させ、該サルの尿、血液等から検出されたデングウイルスを検査する方法、及び、デングウイルスを増殖するのに好適なモデル動物に関する。
【背景技術】
【0002】
デングウイルスは、フラビウイルス科フラビウイルス属に属するウイルスである。デングウイルスは、世界の熱帯及び亜熱帯地域全体に広範に分布しており、媒介動物である蚊によりヒトに伝染する。ヒトはデングウイルスに最も感受性が高い宿主であり、デングウイルスはヒトにおいてデング熱・デング出血熱等を引き起こす。熱帯・亜熱帯地域においては、年間約2000万人のデングウイルス感染者が発生しており、特に出血熱・ショック症候群をきたすと致死的である。
【0003】
日本においても、海外渡航者の増加に伴い、海外渡航中にデングウイルスに感染し、帰国後に発病する輸入例が年間50例以上報告されており、診断されずに見逃されている例もかなりの数におよんでいると考えられる。2005年には74の輸入症例及び1の死亡例が報告され、近年デングウイルス感染者は増大していることから深刻な問題となっている。
【0004】
デングウイルスには、1型から4型までの4つの血清型が存在し、初期型と異なる型のデングウイルスに感染したときには出血熱・ショック症状などの重篤な症状を呈する。これは、初感染時に生成された抗デングウイルス抗体が異なる型のウイルス自体を増強する、いわゆるADE(Antibody-Dependent Enhancement)がウイルス増殖促進や病態悪化の一因となることが知られている。このため、感染発症を目的としたワクチン接種により誘導された抗デングウイルス抗体が、むしろ病態の増悪化をきたす可能性が危惧されている。
【0005】
かかる事情の下、ワクチンの臨床応用に当たっては、まず動物モデルを用いた前臨床試験において、その有効性や安全性を充分評価することが求められている。また、発症の機序を明らかにすることにより、病態解明及び治療法の確立が求められている。
【0006】
従来のモデル動物として、旧世界ザルのオナガザル科マカク属に属するアカゲザルを利用したものがある(例えば、特許文献1、2参照)。また、マウスを利用したものがある(例えば、特許文献3参照)。さらに、新世界ザルのオマキザル科ヨザル属に属するサルを利用したものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−540169
【特許文献2】特表2005−532044
【特許文献3】特表2007−524350
【非特許文献1】Vaccine 24, p.1427-1432 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2並びに非特許文献1に開示されている構成では、ヒトと同様の免疫機構を有する霊長類を用いた感染モデルであることからワクチン評価系として理想的であるが、個体内でのデングウイルス増殖が非常に低レベルであること、またヒトで見られるような病態を示さないことが問題となっている。
【0008】
また、特許文献3に開示されている構成では、ヒト臍帯血細胞や骨髄幹細胞を移植したヒト免疫システムとは異なる免疫不全マウスを利用しているため、有効性や安全性の評価には問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、デングウイルスのワクチン及び治療薬を開発するために好適なウイルス検査方法を提供することを目的とする。また、本発明は、デングウイルスの感染及び増殖に好適なモデル動物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るウイルス検査方法は、
マーモセット科に属するサルにデングウイルスを接種する接種工程と、
前記サルから前記デングウイルスを検出する検出工程と、を有する、
ことを特徴とする。
【0011】
前記サルは、コモンマーモセット、シルバーマーモセット、シロミミマーモセット、キアタママーモセット、シロガオマーモセット、シロカタマーモセット、クロミミマーモセット、サンタレムマーモセット、ピグミーマーモセット、ワタボウシタマリン、セマダラタマリン、ミダスタマリン、クロクビタマリン、クチヒゲタマリン、シロクチタマリン、エンペラータマリン、ハゲタマリン、ムネアカタマリン、ライオンタマリン、キンクロライオンタマリン、キンゴシライオンタマリンのいずれかである、ことも可能である。
【0012】
前記接種工程は、前記サルの皮下、非経口、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚部内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹膜内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、関節滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣内、直腸内、バッカル、舌下、鼻腔内、又は、経皮のうち少なくともいずれか1つを経由させて接種する、ことも可能である。
【0013】
前記検出工程は、リアルタイムRT−PCR(Reverse Transcriptase - Polymerase Chain Reaction)法、RT−PCR法、ウイルス感染価測定法、プラーク形成法、PAP(Peroxidase Anti-Peroxidase)法、IgM捕捉ELISA法、IgG−ELISA法、又は、中和抗体価測定法のうち少なくともいずれかの1つの方法を含む、ことも可能である。
【0014】
前記デングウイルスの血清型は1型から4型のいずれかである、ことも可能である。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るマーモセット科に属するモデル動物は、
デングウイルスが皮下に接種され、当該デングウイルスを増殖させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワクチン及び治療薬を開発するために、モデル動物においてデングウイルスを検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るウイルス検査方法について説明する。本発明は、新世界ザルのマーモセット科に属するコモンマーモセット(モデル動物)にデングウイルスを接種し、該コモンマーモセットの血液等からデングウイルスを検出する方法である。接種されたデングウイルスは当該サルの体内で増殖され、血液等から検出される。デングウイルスには、1型から4型(DEN−1からDEN−4)のすべての血清型が含まれる。
【0018】
まず、マーモセット科に属するサルが用意される。当該サルにウイルスを接種する前に、血液を採取し、血液検査(例えば、CBC(Complete Blood Count)、PCR(Polymerase Chain Reaction)等)を行うことにより、サルが正常状態であることを確認する。また、ウイルス抗体検出方法である後述するIgG−ELISA(Immunoglobulin G - Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法に用いる基準となる抗体量を測定する。
【0019】
次に、サルにデングウイルスを接種する方法について説明する。デングウイルスを含有する溶液を注射によりサルの皮下に投与する。デングウイルスは蚊を媒介として伝染するため、デングウイルスの接種は、好ましくは、サルの血液に行う。デングウイルスの力価は、1.0×10PFU/mlから1.0×10PFU/mlであり、好ましくは、1.0×10PFU/mlから1.0×10PFU/mlである。また、接種する溶液量は、0.01mlから10mlであり、好ましくは、0.5mlから1mlである。当該溶液は、例えば、生理食塩水、麻酔液等、任意の溶媒・溶液を含有することができる。なお、ウイルスの汚染やコンタミネーションを防止するための方法は、従来と同様である。
【0020】
次に、デングウイルスを検出する方法について説明する。検出方法には、ウイルス遺伝子の検出を行う遺伝子検査法(病原学的検査法)と、ウイルス感染後に体内で産生される抗体を検出する抗体価測定法(血清学的検査法)とがある。デングウイルスに感染したか否かの判断基準は、遺伝子検査法によりデングウイルスの特異的遺伝子が検出されること、又は、抗体価測定法によりデングウイルスの特異的抗体が認められること、若しくは、回復期のウイルス抗体価が急性期のウイルス抗体価の4倍以上の上昇が認められることである。さらに、平常時に比べ体温が上昇すること等が含まれる。
【0021】
まず、遺伝子検査法であるRT−PCR(Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction)法について説明する(国立感染症研究所 デングウイルス感染症診断マニュアル、衛生微生物技術協議会第26回研究会資料(デング熱/デング出血熱))。
【0022】
まず、血液、血清及び尿からRNAを抽出する方法を示す。抽出したRNAを逆転写によってcDNAに変換し、そのcDNAに対してPCR法を行うことにより、DNAを増幅させる。ここで、血清は、血液(全血)を凝固させ血小板や凝固因子を除いたものである。
【0023】
デングウイルスを接種した被検体(サル)から血液、血清又は尿のサンプルを採取する。当該サンプル50μlにRNA抽出薬ISOGEN−LS(和光純薬社)200μlを加える。攪拌機で当該サンプルを撹拌する。クロロフォルム40μlを当該サンプルに加え、攪拌機で激しく撹拌する。4℃の下、遠心分離器により12000rpm以上で、10分間遠心する。上清150μlを採取し、当該上清にイソプロパノール150μlを加え、軽くかき混ぜて室温で5分間放置する。4℃の下、遠心分離器により12000rpm以上で、10分間遠心する。上清を捨てる。ペレットを約300μlの75%エタノールで洗浄する。4℃の下、遠心分離器により7500rpmで6分間遠心する。上清を捨て、室温で5分から6分間乾燥する。純水(DNase、RNase−none detected、0.2μm filtered HO)50μlで再浮遊する。再浮遊したサンプルを−80度で保存する。
【0024】
次に、1%Nonidet P−40 5μlと、リボヌクレアーゼ インヒビタ(宝酒造社)100Uとを混合する。当該混合液を500μlのチューブに5μlずつ分注する。分注した混合液5μlに、当該サンプル5μlを加え、精製RNA10μlとする。泡を立てないようにピペッティングして、RT−PCR mix(純水80μl、dNTP1μl(20mM)、プライマS1μl(100pM)、プライマC1μl(100pM)、10倍希釈のバッファ(トリス−塩酸100mM、塩化マグネシウム15mM、塩化カルシウム800mM、ビストリメチルシリルアセトアミド(BSA)5mg/ml、1%コール酸ナトリウム、1%TritonX−100を含む)10μl、逆転写酵素RTase(ライフサイエンス社)0.5μl(10U)、TTH DNA ポリメラーゼ(東洋紡社 TTH−104)0.5μl(4U)を含む)90μlを当該精製RNAに添加して、攪拌機で撹拌する。
【0025】
サーマルシーケンサ(ABI Prism 7000)を用いて、当該溶液について次のRT及びPCR反応を行う。48℃の下、30分間、RNAを逆転写する。95℃の下、600秒間、2本鎖DNA断片を熱変性する。57℃の下、60秒間、熱変性により生じた1本鎖鋳型DNAにプライマをアニーリングおよび相補鎖DNAを合成する。熱変性、アニーリング・合成の2つの工程を1サイクルとして、40サイクル繰り返す。72℃の下、300秒間、DNAを増幅する。反応産生物5μlをアガロース電気泳動し、エチジウムブロマイド染色により増幅されたDNA断片のバンドを確認することにより、デングウイルスの特異的遺伝子を検出する。
【0026】
次に、抗体価測定法であるIgG−ELISA法について説明する。デングウイルス感染後の体内で産生されるIgG抗体を検出することによりデングウイルスの感染を検出することができる。検査キットであるDengue IgG Indirect ELISAキット(PanBio社)の使用方法を説明する(Cat No.E−DEN01G)。
【0027】
まず、ポジティブコントロール、ネガティブコントロール、3つのカットオフキャリブレータが用意される。血清10μlに血清希釈液1000μlを加え、ウェルを撹拌する。または、血清10μlに血清希釈液90μlを加え、当該希釈した血清20μlに血清希釈液180μlを加え、ウェルを撹拌することも可能である。サンプル、2つのコントロール及び3つのカットオフキャリブレータ100μlを各ウェルにピペットする。プレートをカバーして、37℃において30分間、培養する。希釈バッファにより6回洗浄する。抗ヒトIgGを反応させたHRP(HorseRadish Peroxidase)100μlを各ウェルにピペットする。プレートをカバーして、37℃において30分間、培養する。希釈バッファにより6回洗浄する。発色剤TMB(Tetra Methyl Benzidine)100μlを各ウェルにピペットする。室温で10分間、培養する。全てのウェルの反応を中止させる。600nmから650nmの基準フィルタを用いて、波長450nmにおいて、各ウェルの吸光度を測定する。得られた吸光度よりIgG抗体量を測定する。なお、ウイルス接種前の基準値を1として正規化を行い、1.5をカットオフ値とする。
【0028】
また、当該検査キットを使用しないデングウイルスの抗体検出方法について説明する。
蔗糖密度勾配法により濃縮精製したウイルス抗原をコートした96穴プレートに血清希釈液(0.1%BSA、界面活性剤0.05%Tween−20(東京化成工業社製)、リン酸緩衝食塩水(PBS:Phosphate Buffered Saline)を含む)100μlを各ウェルに入れて、室温で5分間、反応させる。血清希釈液で100倍に希釈した血清を各ウェルに入れ、室温で90分間、培養する。希釈液を用いてプレートを6回洗浄する。抗ヒトIgG抗体を反応させたHRPを10000倍に希釈し、当該HRP100μlを各ウェルにピペットする。室温で60分間、反応させる。希釈液でプレートを4回洗浄する。発色剤TMB100μlを各ウェルにピペットする。遮光下で10分間、反応させる。硫酸を添加し、反応を停止させる。波長450nmにおいて、吸光度を測定する。HI(Hemagglutination Inhibition)抗体陰性血清の吸光度の平均値+3標準偏差の吸光度をカットオフとして、HI抗体養成検体を評価する。なお、ウイルス接種前の基準値を1として正規化を行い、1.5をカットオフ値とする。
【0029】
以上説明したように、マーモセット科に属するサルにデングウイルスを接種し、該サルの血液等からデングウイルスを検出することにより、ワクチン及び治療薬を開発するためのウイルス検査を行うことができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0031】
マーモセット科に属するサル(モデル動物)は、コモンマーモセットに限定されず、例えば、シルバーマーモセット、シロミミマーモセット、キアタママーモセット、シロガオマーモセット、シロカタマーモセット、クロミミマーモセット、サンタレムマーモセット、ピグミーマーモセット、ワタボウシタマリン、セマダラタマリン、ミダスタマリン、クロクビタマリン、クチヒゲタマリン、シロクチタマリン、エンペラータマリン、ハゲタマリン、ムネアカタマリン、ライオンタマリン、キンクロライオンタマリン、キンゴシライオンタマリン等、任意である。
また、マーモセット科は、マーモセット属、ピグミーマーモセット属、ライオンタマリン属、タマリン属、ゲルディモンキー属から構成されるため、ゲルディモンキー属に属するサルも含まれる。
【0032】
デングウイルスを接種する箇所は、皮下に限定されず、非経口、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚部内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹膜内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、関節滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣内、直腸内、バッカル、舌下、鼻腔内、経皮等、任意である。
【0033】
接種方法は、注射に限定されず、噴霧、塗布等、任意である。また、接種工程において、血清型の異なるデングウイルスを混合したものをマーモセットに接種することもできる。
【0034】
接種回数は、1回に限定されず、複数回とすることもできる。また、複数回接種するときには、当初接種した血清型とは異なる血清型のデングウイルスを接種することもできる。
【0035】
デングウイルスの検出工程には、リアルタイムRT−PCR法等に限定されず、サルの体温(発熱)検査法、尿(血尿を含む)及び臓器の肉眼検査法等も含まれる。
【0036】
抗体検査キットは、Dengue IgG Indirect ELISAキットに限定されず、任意である。
【0037】
抗体価測定法において、IgA抗体、IgD抗体、IgE抗体、HI抗体及び中和抗体を検出することにより、デングウイルスの感染を検出することもできる。
【0038】
サルに接種する溶液量、及びサルから採取する血液等の量は、サルの個体サイズに応じて任意である。また、デングウイルスの検出方法において記載した濃度、容量、温度、反応時間等は、一例であり、適宜変更することができる。
【実施例】
【0039】
マーモセット科に属するサルであるコモンマーモセットにデングウイルスを接種した実施例を説明する。
【0040】
(実施例1)
従来のモデル動物であるオナガザル科に属するカニクイザルとマーモセット科に属するマーモセットとにおいて、デングウイルスの複製、免疫原性及び防御効力等を評価した。
【0041】
力価6.7×10PFU/mlのデングウイルス2型を2匹のカニクイザルと1匹のコモンマーモセットに0.5mlずつ皮下注射した。デングウイルスを接種した日を0日目とし、14日目までサルを毎日観察し、適宜採血及び採尿を行った。
【0042】
RT−PCR法により検出した血清中のウイルス量(copy/ml)を表1に示す。なお、以下に示す表中の「NT(Not Tested)」はウイルス検査を実施しなかったことを示し、「−」はウイルスを検出できなかったことを示す。
【0043】
【表1】

【0044】
カニクイザルと比較して、マーモセットの血清中から数百から数千倍高いウイルスを検出した。マーモセットの体内でデングウイルスが増殖することを実証した。
【0045】
(実施例2)
マーモセットにおいて、血清型の異なるデングウイルス1型から4型(DEN−1からDEN−4)の複製、免疫原性及び防御効力を評価した。デングウイルスの接種方法、検出方法等は、実施例1と同様である。
【0046】
1型から4型のデングウイルスをマーモセットに接種した。接種したデングウイルスの力価と接種量を表2に示す。
【表2】

【0047】
表2に示すデングウイルス1型から4型をマーモセットに接種した後、採取した血清中のウイルス量を表3に示す。また、尿中のウイルス量を表4に示す。さらに、IgG ELISA法により血清中から検出されたIgG抗体量を表5に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
表3から5に示すように、マーモセットはすべての血清型のデングウイルスに感染し、マーモセットの体内でデングウイルスが増殖することを実証した。
【0052】
また、5日目に採取した尿を図1に示す。肉眼検査において、デングウイルス2型を接種したマーモセットに血尿を確認した。マーモセットがヒトに近似した病態(血尿)を呈することを実証した。
【0053】
さらに、14日目に4匹すべてのマーモセットを解剖し、肝臓、腎臓、脾臓、腋下リンパ節、鼠径リンパ節から採取した細胞についてPCR検査を行った。
【0054】
デングウイルス1型を接種したマーモセットの腋下リンパ節、2型を接種したマーモセットの脾臓及び鼠径リンパ節、並びに、3型を接種したマーモセットの腎臓の各細胞からデングウイルスを検出した。また、肉眼検査では、2型を接種したマーモセットの腎臓について、退色変化と表面の凹凸を確認した。
【0055】
(実施例3)
デングウイルス3型を接種したマーモセットをコントロールとして、4匹のマーモセットにデングウイルス2型を接種した。デングウイルスの接種方法、検出方法等は、実施例1と同様である。また、接種したデングウイルスの力価及び摂取量は、実施例2と同様である。
【0056】
各マーモセットにデングウイルスを接種した後、採取した血清中のウイルス量を表6に示す。また、尿中のウイルス量を表7に示す。さらに、IgG ELISA法により血清中から検出されたIgG抗体量を表8に示す。
【0057】
また、デングウイルス2型を接種したマーモセットを順次解剖した。マーモセットの臓器別のウイルス量(copy/100μl)を表9に示す。なお、以下の表中の斜線部はマーモセットを解剖したことにより、解剖以後のウイルス検査を実施しなかったことを示す。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
表6から8に示すように、マーモセットはデングウイルスに感染し、マーモセットの体内でデングウイルスが増殖することを実証した。また、表9に示すように、マーモセットの各臓器からデングウイルスを検出した。
【0063】
以上に示すように、マーモセットはデングウイルスの感染及び増殖に好適なモデル動物であることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】デングウイルスを接種したマーモセットから採取した尿を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーモセット科に属するサルにデングウイルスを接種する接種工程と、
前記サルから前記デングウイルスを検出する検出工程と、を有する、
ことを特徴とするウイルス検査方法。
【請求項2】
前記サルは、コモンマーモセット、シルバーマーモセット、シロミミマーモセット、キアタママーモセット、シロガオマーモセット、シロカタマーモセット、クロミミマーモセット、サンタレムマーモセット、ピグミーマーモセット、ワタボウシタマリン、セマダラタマリン、ミダスタマリン、クロクビタマリン、クチヒゲタマリン、シロクチタマリン、エンペラータマリン、ハゲタマリン、ムネアカタマリン、ライオンタマリン、キンクロライオンタマリン、キンゴシライオンタマリンのいずれかである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス検査方法。
【請求項3】
前記接種工程は、前記サルの皮下、非経口、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚部内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹膜内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、関節滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣内、直腸内、バッカル、舌下、鼻腔内、又は、経皮のうち少なくともいずれか1つを経由させて接種する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のウイルス検査方法。
【請求項4】
前記検出工程は、リアルタイムRT−PCR(Reverse Transcriptase - Polymerase Chain Reaction)法、RT−PCR法、ウイルス感染価測定法、プラーク形成法、PAP(Peroxidase Anti-Peroxidase)法、IgM捕捉ELISA法、IgG−ELISA法、又は、中和抗体価測定法のうち少なくともいずれかの1つの方法を含む、
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のウイルス検査方法。
【請求項5】
前記デングウイルスの血清型は1型から4型のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウイルス検査方法。
【請求項6】
デングウイルスが皮下に接種され、当該デングウイルスを増殖させる、
ことを特徴とするマーモセット科に属するモデル動物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−189327(P2009−189327A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35178(P2008−35178)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】