説明

ウイルス関連腫瘍の画像化および治療

本発明は、ウイルス感染症に関連する新生物を、検出するため、処置方法を選択するため、モニタリングするため、および処置するための、組成物および方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年4月10日出願の米国仮出願第60/922,755号および2007年5月25日出願の米国仮出願第60/931,921号の利益を主張し、これらの内容の全体は本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
連邦支援研究のもとでなされた発明に対する権利の申告
本研究は部分的にNIHの助成金US24 CA92871およびP50 CA96888により支援された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明背景
多くの人々がエプスタイン・バーウイルス(EBV)を感染性単核球症と関連付けるが、EBVは、バーキットリンパ腫、AIDS患者、および全てのホジキン病症例の半数におけるリンパ腫を含む、ヒトの種々の癌に関連する腫瘍ウイルスである。ヒトパピローマウイルス、B型肝炎ウイルスおよびEBVを含む腫瘍ウイルスは、ヒトにおける全ての癌の約15%に関連する。ウイルス関連新生物を診断、モニタリングおよび処置するための現在存在する方法は不適切であり、改善された方法が緊急に求められている。
【発明の概要】
【0004】
以下に記載するように、本発明は、ウイルス感染症または細菌感染症などの自然発生の感染症に関連する新生物を診断、モニタリングおよび処置するための組成物および方法を特徴とする。
1つの側面において、本発明は、ウイルスに自然感染した新生物の処置のために標識された医薬組成物を特徴とする。該組成物は、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤などのウイルス溶解誘発剤の有効量を、該組成物を投与する対象において、好ましくはウイルス遺伝子発現またはウイルス複製を誘発するのに十分な量で含む。さらに、ウイルス遺伝子発現またはウイルス複製を誘発するのに必要な量は、細胞障害性ではないのが好ましい。溶解誘発剤としては、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンが挙げられるが、これに限定されない。1つの態様において、医薬組成物は、2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド(FIAU)の放射標識類似体をさらに含むことができる。組成物は、例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスによる感染に関連する新生物の処置のために、例えばリンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌の処置のために、用いることができる。
【0005】
他の側面において、本発明は、例えばウイルスまたは細菌による感染症などの、自然発生の感染症に関連する新生物の診断のための医薬組成物を特徴とする。組成物は、2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド(FIAU)の有効量を含む。放射標識組成物は、SPECTまたはPETによる視覚化に対して標識されることができ、例えば、ヨウ素−123I、124I、または125Iを用いる。放射標識組成物は、組成物をウイルス溶解誘発剤と共に用いるための指示書を含むことができる。
【0006】
1つの側面において、本発明は、例えばウイルスまたは細菌による感染症などの、感染症に関連する新生物の処置のための医薬組成物を特徴とする。組成物は、2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を含む。標識は、α、β、またはγ線放射体であることができ、例えば、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、または133Iである。放射性核種は、好ましくは少なくとも約0.5〜2Gyを放射し、対象に対して、約0.001〜約0.1mg/kg、または約0.01〜約0.1mg/kgの濃度で投与される。組成物は、例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスによる感染に関連する新生物の処置のために、例えばリンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌の処置のために、用いることができる。放射標識組成物は、組成物をウイルス溶解誘発剤と共に用いるための指示書を含むことができる。
【0007】
1つの側面において、本発明は、ウイルス溶解誘発剤を同定するための方法を特徴とする。方法は、潜伏性ウイルス感染症を有する新生細胞を剤と接触させること、および細胞におけるウイルス溶解ポリペプチドの発現もしくは活性またはウイルス複製の増加を検出することを含む。細胞におけるウイルス溶解ポリペプチドまたは遺伝子の発現または活性は、ZTA発現、RTA発現、およびウイルスチミジンキナーゼ発現または活性の1つまたは2つ以上における増加により、検出することができる。ウイルス溶解ポリペプチドまたは遺伝子の活性もしくは発現は、レポーターポリペプチドまたは遺伝子の発現の増加を、例えば、BZLFIEプロモーター配列またはZtaプロモーター配列の制御下において検出することにより、分析可能である。レポーターとしては、限定することなく、ルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質が挙げられ、これらは、例えばマイクロプレートリーダーを用いて、対照と比較した相対蛍光単位(RFU)における増加を検出することにより、検出可能である。ウイルス溶解誘発剤は、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤を含むが、これに限定されない。
【0008】
他の側面において、本発明は、対象における、例えば細菌またはウイルス感染症などの感染関連新生物を検出するための方法を特徴とする。方法は、対象に対して、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与すること、および新生物を視覚化することを含む。放射標識類似体は、例えばヨウ素−123I、124I、または125Iを用いて標識され、例えばSPECTまたはPETを用いて視覚化される。方法は、例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスによる感染に関連する新生物の処置のために、例えばリンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌の処置のために、用いることができる。
【0009】
1つの側面において、本発明は、感染関連新生物を有する対象に対する治療を選択するための方法を特徴とする。方法は、対象に対し、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与すること;および、該対象において、溶解誘発の有無を検出することを含む。溶解誘発の増加は、対象が、溶解誘発剤による処置および酵素標的化放射線療法を適用可能であると同定する。
【0010】
他の側面において、本発明は、対象における、例えばウイルスまたは細菌感染症などの感染関連新生物を処置または予防する方法を特徴とする。方法は、対象に対し、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与することを含む。
1つの側面において、本発明は、ウイルスまたは細菌に感染した新生細胞を死滅させるための方法を特徴とする。方法は、該細胞をウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量と接触させることを含む。
【0011】
本発明の種々の態様において、溶解誘発剤は、例えば、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤である。本発明で用いる溶解誘発剤のさらなる例は、例えば、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンが挙げられる。
本発明の種々の態様において、本発明の治療法および組成物のための放射性核種標識は、α、β、またはγ線放射体であることができ、例えば、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、または133Iである。
【0012】
本発明の種々の態様において、SPECTまたはPETにおける画像化での使用についての放射性核種標識は、例えば、ヨウ素−123I、124I、または125Iである。
本発明の種々の態様において、例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスなどの感染に関連する新生物は、例えばリンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である。
【0013】
1つの側面において、本発明は、対象における感染関連新生物を診断またはモニタリングするためのキットを特徴とする。キットは、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量、およびこのキットを新生物の診断に用いるための指示書を含む。キットは、ウイルス感染または細菌感染を、例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスによる感染に関連する新生物、例えばリンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌を、診断またはモニタリングするために用いることができる。感染関連新生物は、SPECTまたはPETにより、ヨウ素−123I、124I、または125Iを放射性核種として、画像化することができる。溶解誘発剤は、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤であることができ、例えば、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンである。
【0014】
1つの側面において、本発明は、対象におけるウイルス関連新生物を処置するためのキットを特徴とする。キットは、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量、およびこのキットを新生物の診断に用いるための指示書を含む。溶解誘発剤は、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤であることができ、例えば、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンである。例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスなどの感染に関連する新生物は、例えばリンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である。
【0015】
1つの側面において、本発明は細菌を死滅させるための方法を特徴とし、これは、該細菌を2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体と接触させることを含む。放射標識は、α、β、またはγ線放射体であることができ、例えば、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、および133Iである。細菌は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方を含む。
他の側面において、本発明は、対象における細菌感染症を処置するための方法を特徴とする。方法は、対象に対して、2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与することを含む。放射標識は、α、β、またはγ線放射体であることができ、例えば、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、および133Iである。細菌は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方を含む。
【0016】
定義
「自然感染する」とは、人の介入の支援なしで起こる感染症を意味する。人の介入の例は、遺伝子療法、細胞形質転換、または細胞トランスフェクションが挙げられる。
「プロテアソーム阻害剤」とは、プロテアソーム活性を低下させる化合物、例えばユビキチン化タンパク質を分解する化合物を意味する。プロテアソーム阻害剤の例としては、ボルテゾミブ、ラクタシスチンおよびMG132が挙げられるが、これに限定されない。
【0017】
「微小管破壊剤」とは、生物学的機能、安定性、または微小管の成長に干渉する剤を意味する。剤の例としては、コルチシン、デメコルシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ポドフィロトキシンおよびノコダゾールが挙げられる。
「グルココルチコイド」とは、副腎により産生される内因性のグルココルチコイドの機能的または構造的類似体である、合成または天然のコルチコステロイド薬物またはホルモンを意味する。グルココルチコイドの例としては、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、βメタゾン、およびデキサメタゾンが挙げられる。
【0018】
「ステロイドホルモン」とは、四環性シクロペンタフェナントレン骨格を有する、合成または天然の薬物またはホルモンを意味する。
「ヌクレオシド類似体」とは、糖およびプリンまたはピリミジン塩基を有する、合成または天然の化合物を意味する。ヌクレオシド類似体の例としては、2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド、および種々のデオキシアデノシン類似体(例えばジダノシン、ビダラビン)、デオキシシチジン類似体(例えばシタラビン、エミトリシタビン、ラミブジン、ザルシタビン)、デオキシグアノシン類似体(例えばアバカビル)、デオキシチミジン類似体(例えばスタブジン、ジドブジン、アジドチミジン(AZT))、およびデオキシウリジン類似体(例えばイドクスウリジン、トリフルリジン)、レフルノミド、インドプロフェン、メベンダゾールが挙げられる。
【0019】
「抗炎症剤」とは、炎症またはその症状を抑制する剤を意味する。抗炎症剤の例としては、N−(3,4−ジメトキシシンナモイル)アントラニル酸(トラニラスト)、N−(4’−トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソキサゾール−4−カルボキサミド(レフルノミド)、および非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が挙げられるが、これに限定されない。
「改善する」とは、疾患の発症または進行を、減少する、抑制する、弱める、小さくする、止める、または安定化することを意味する。
【0020】
「類似体」とは、同一ではないが、しかし同様の機能または構造特性を有する分子を意味する。
「改変」とは、遺伝子またはポリペプチドの発現レベルまたは活性における変化(増加または減少)であって、本明細書に記載のものなどの当分野に周知の標準の方法により検出されるものを意味する。本明細書において、改変は、発現レベルの10%の変化、好ましくは25%の変化、より好ましくは40%の変化、および最も好ましくは50%またはこれ以上の発現レベルにおける変化を含む。
【0021】
用語「新生物」は、過剰な細胞増殖もしくは成長、または細胞死の減少を特徴とする、悪性疾患を含む。特定の態様において、用語「癌」は、癌腫、肉腫、白血病、およびリンパ腫を含むが、これに限定されない。用語「癌」はまた、原発性悪性腫瘍、例えば、対象の身体中の原発腫瘍の部位以外の部位にその細胞が移動していないもの、および、続発性悪性腫瘍、例えば、転移から生じたものであって、原発腫瘍の部位とは異なる二次部位への腫瘍細胞の移動なども含む。
【0022】
化合物の「治療有効量」または「治療有効用量」の用語は、処置される状態、障害または疾患に関連する、またはこれにより引き起こされる少なくとも1つの症状の、検出可能な改善を提供するのに必要な、または十分な量である。治療有効量は、単一用量として、または時間をかけて複数用量として投与することができる。2種または3種以上の化合物を一緒に用いて、検出可能な改善を提供する「治療有効量」を提供することができ、これは、いずれの化合物1つのみの同量では、治療有効量を提供するのに不十分な場合である。
【0023】
用語「イメージング化合物」とは、視覚化することができる化合物、または細胞、組織もしくは器官を視覚化するのに有用な化合物を含むことが意図される。例えば、平面ガンマ画像化により、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)またはポジトロン放出断層撮影(PET)による。化合物は、放射標識されるか、または蛍光性であってよい。特定の態様において、化合物は、キナーゼ、例えばチミジンキナーゼに結合するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体である。
【0024】
句「ウイルス溶解誘発剤」は、ウイルスにその遺伝子発現パターンを変化させて、ウイルス粒子の産生に関連するRNAおよびタンパク質の発現を開始させる剤と理解される。ウイルス溶解が誘発されるとは、ウイルスポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば溶解段階に関連するポリペプチド)の発現の増加、またはウイルス複製の増加を含むが、これに限定されない。ポリペプチド発現のレベルを検定するための方法は、ポリペプチドのレベルを測定するための免疫学的検定法(例えばELISA、ウェスタンブロット法、またはラジオイムノアッセイ)を含むが、これに限定されない。ポリヌクレオチド発現を検定するための方法は当分野に知られており、および/または本明細書に記載されている。かかる方法は、マイクロアレイ解析、ノーザンブロット解析、およびRT−PCRを含み、核酸分子から調製された任意の適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いる。候補化合物の存在下での遺伝子発現レベルを、候補分子不在の対照培養培地中で測定されたレベルと比較する。
【0025】
句「薬学的に許容し得る担体」は当分野で認識されており、例えば哺乳類などの対象に対して、本明細書に記載の方法で用いる化合物を投与するのに適切な、薬学的に許容し得る材料、組成物またはビヒクルを含む。担体は、対象剤を器官または身体の1部分から、他の器官または身体の部分へと運搬または移送することに関与する、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料を含む。各担体は、製剤の他の成分と適合的であり、患者に有害ではないとの意味において、「許容し得」なければならない。薬学的に許容し得る担体として作用可能ないくつかの物質の例は、以下を含む:糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン類、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび座剤用ワックス;油類、例えばピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油;グリコール類、例えばプロピレングリコール;ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル類、例えばオレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェン非含有水;等張食塩水;リンガー液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および医薬製剤に用いられるその他の非毒性適合性物質。
【0026】
本明細書において、用語「画像化(イメージング)」とは、細胞、組織、または器官に投与後に検出可能な化合物を視覚化する技術の使用を意味する。1つの態様において、画像化は、投与に続いて化合物が局在化した後に、化合物が放射したエネルギーを測定することにより行う。画像技術、例えばポジトロン放出断層撮影(PET)、SPECT−CTなどを適用する。
本明細書において、「ポジトロン放出断層撮影」または「PET」は、全てのポジトロン放出断層撮影システムまたはその均等物およびポジトロン放出断層撮影が可能な全ての装置を含む。本発明の方法は、任意のかかる装置、またはPET装置の変形物もしくは均等物を用いて、または任意の既知のPET方法論と組み合わせて、実施することができる。例えば、米国特許第6,151,377号、第6,072,177号、第5,900,636号、第5,608,221号、第5,532,489号、第5,272,343号、第5,103,098号を参照のこと;これらの各々は、本明細書に参照として組み込まれる。動物の画像化の種類は、例えばmicro−PET(Corcorde Microsystems, Inc.)に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1はAGS細胞でのルシフェラーゼ活性を定量化した4つのグラフである。
【図2】図2は組換えウイルスEBV誘発に続く、AKATA−BX1細胞におけるGFPシグナルを示す図である。
【図3】図3は5アザデオキシシチジンがAKATA−BX1細胞においてGFPシグナルの溶解感染を誘発したことを示すグラフである。
【図4A】図4AはGFP全ウイルスアッセイの代表的な読取りを示す表である。
【図4B】図4BはGFP全ウイルスアッセイの代表的な読取りを示す表である。
【図5】図5はEBVにおいて溶解感染を誘発することが知られている薬物が、2つのアッセイで確認されたことを示すベン図である。
【図6A】図6Aは化合物トラニラストがAGSにおいて15倍までのBZLF1プロモーターの誘発が可能であることを示す図である。
【図6B】図6Bは化合物レフルノミドがAGSにおいて15倍までのBZLF1プロモーターの誘発が可能であることを示す図である。
【図7A】図7AはAra−cの構造式を示す図である。
【図7B】図7BはAra−cがルシフェラーゼアッセイにおいてBZLF1プロモーターを誘発したことを示すグラフである。
【図7C】図7CはAra−cがLCL細胞においてZTA発現を誘発したことを示すウェスタンブロットである。
【図8】図8はAra−Cでの結果を示す図である。
【図9】図9はインドプロフェンでの結果を示す図である。
【0028】
【図10】図10はボルテゾミブでの結果を示す図である。
【図11A−11C】図11A−11Cはメベンダゾールでの結果を示す図である。
【図11D−11E】図11D−11Eはメベンダゾールでの結果を示す図である。
【図12A−12C】図12A−12CはボルテゾミブがEBV−TKおよびZta発現を誘発することを示す図である。
【図12D】図12DはボルテゾミブがEBV−TKおよびZta発現を誘発することを示す図である。
【図13A】図13AはボルテゾミブがGFP発現を上方調節したことを示す図である。
【図13B−13D】図13B−13DはボルテゾミブがGFP発現(13B)およびEBVウイルス負荷(13C)を上方調節したことを示す図である。
【図14】図14はボルテゾミブによる処置後のバーキットリンパ腫異種移植片による[125I]FIAUの経時的取り込みを、in vivoでの平面ガンマシンチグラフィーにより評価して示す画像である。
【図15】図15は別のEBV(+)バーキット異種移植片(Akata)による[125I]FIAU取り込みの時間変化を、in vivoで単光子放出コンピュータ断層撮影/コンピュータ断層撮影、SPECT/CT(SPECT−CT)により示す画像である。
【図16】図16はin vivoでSPECT/CT(SPECT−CT)による骨肉種における[125I]FIAU取り込みを示す画像である。
【図17】図17はマウス異種移植モデルにおける[125I]FIAU組織分布を示すグラフである。
【図18A−18B】図18A−18Bは腫瘍増殖曲線を示すグラフである。
【図18C】図18Cは腫瘍増殖曲線を示すグラフである。
【0029】
【図19A】図19Aはマウス異種移植片における腫瘍増殖曲線を示すグラフである。
【図19B−19C】図19B−19Cはマウス異種移植片における腫瘍増殖曲線を示すグラフである。
【図20】図20はボルテゾミブによる処置後の腫瘍の[125I]FIAU SPECT−CT画像を示す図である。
【図21】図21はKSHV腫瘍(BCBL1)に対する酵素分子放射線治療を示す図である。
【図22】図22は[131I]FIAUおよびボルテゾミブによる治療後の、KSHV腫瘍サイズの減少を示すグラフである。
【図23】図23は「バイスタンダー効果」を示す模式図である。
【図24】図24はモンテカルロ細胞レベル線量計測計算に用いる幾何学モデルの図である。
【図25】図25はトランスフェクトされた細胞の10%(上列)、50%(中列)、および100%(下列)に対する、250万131I崩壊から生じる、線量体積ヒストグラム(1番目の欄)および空間的吸収線量散布図(2番目の欄)を示すグラフである。
【図26A】図26Aは細菌およびそれらの対応するチミジンキナーゼの配列を示す図である。
【図26B】図26Bは細菌およびそれらの対応するチミジンキナーゼの配列を示す図である。
【図26C】図26Cは細菌およびそれらの対応するチミジンキナーゼの配列を示す図である。
【0030】
図1は、AGS細胞でのルシフェラーゼ活性を定量化した4つのグラフである。ルシフェラーゼはZtaプロモーター(−5787+13)の制御下で発現された。Ztaプロモーターは、AGS細胞中でTPA、酪酸塩、およびバルプロ酸塩により活性化された。これは、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である5’アザデオキシシチジンによっては活性化されなかった。
図2A〜2Cは、組換えウイルスEBV誘発に続く、AKATA−BX1細胞におけるGFPシグナルを示す。図2Aは、組換えEBVウイルスにおけるGFPシグナルは、抗IgGによる処置によって誘発されることを示す、4つの顕微鏡写真である。位相差およびGFP発現を、倒立蛍光顕微鏡を用いて検討した。AKATA−BX1でのGFPシグナルは、抗IgGにより誘発された場合に非常に明るかった。EBV溶解誘発によるGFPシグナルの強調は、マイクロプレートリーダーによって検出した。図2Bは、シグナル誘発が、溶解感染を阻害する薬物により抑制されることを示すグラフである。プルバラノールAはEBVの前初期遺伝子ZTA発現を阻害した。図2Cは、GFPにより駆動されるCMVプロモーターを有するHela細胞でのGFPシグナルは、TPA、抗IgG、または5’−アザデオキシシチジンによって活性化されなかったことを示すグラフである。
【0031】
図3は、5アザデオキシシチジンがAKATA−BX1細胞においてGFPシグナルの溶解感染を誘発したことを示すグラフである。
図4は、GFP全ウイルスアッセイの代表的な読取りを示す。真中の10個の欄はライブラリからの80種の薬物である。右の区画は、背景を低下させるための、細胞または薬物なしのプレーンな培地である。左の区画は、初めの4つのウェルは、陰性対照としての処置なしの細胞であり、下の4つのウェルは、陽性対照としての溶解誘発剤で処置された細胞である。GFPの読取りは、自動蛍光を有する薬物を消去するために0日目に行った。3日目にすでに、陽性対照ウェルはGFPシグナルの明白な増加を示し、これに匹敵する任意の読取りを、ヒットとする。より長いインキュベーションでは、いくつかのウェルが平均より下の読取りを有することを示した。抑制のヒットは、10日以後に見られた。
【0032】
図5は、EBVにおいて溶解感染を誘発することが知られている薬物が、2つのアッセイで確認されたことを示すベン図である。
図6は、化合物トラニラストおよびレフルノミドは、AGSにおいて15倍までのBZLF1プロモーターの誘発が可能であることを示す。
図7A〜7Cは、シタラビン(Ara−c)の結果を示す。Ara−cは、in vitroでB細胞および上皮細胞において溶解EBV感染を誘発した。図7Aは、Ara−cの構造式を示す。図7Bは、Ara−cがルシフェラーゼアッセイにおいてBZLF1プロモーターを誘発したことを示すグラフである。図7Cは、Ara−cがLCL細胞においてZTA発現を誘発したことを示すウェスタンブロットである。
【0033】
図8A〜8Dは、Ara−Cでの結果を示す。Ara−cは、in vitroでB細胞および上皮細胞において、溶解EBV感染を誘発した。図8Aは、1μMのAra−cで48時間処置し、続いてウェスタンブロットによりBZLF1タンパク質をアッセイすることによりEBVIE遺伝子発現についてアッセイした、EBV陽性細胞株であるAKATA、LCLおよびSNU719における結果を示す、ウェスタンブロットである。免疫ブロット法は、Ara−cがEBV陽性細胞株において、BZLF1タンパク質発現を誘発したことを示した。図8Bは、1μMのAra−cで48時間処置したEBV陽性リンパ芽球様細胞を示す、6枚の顕微鏡写真である。免疫蛍光アッセイを行って、BZLF1タンパク質を検出した。細胞をBZLF1(赤)について染色し、核をDAPI(青)で染色した。LCL細胞の40%は、1μMのAra−cにより溶解感染を誘発された。図8Cは、Ara−cが、EBVの初期溶解遺伝子TK発現を誘発したことを示す、ウェスタンブロットである。図8Dは、Ara−cがEBVのウイルス複製を活性化しなかったことを示す、2つのグラフである。LCLおよびSNU719細胞を、1μMのAra−cで48時間処置した。リアルタイムPCRは、EBVウイルスDNAコピー数は、Ara−cでの処置後に増幅されなかったことを示した。
【0034】
図9A〜9Dは、インドプロフェンでの結果を示す。図9Aは、インドプロフェンの構造式を示す。図9Bは、AGSでのルシフェラーゼアッセイの結果を定量化するグラフであり、インドプロフェンがBZLF1プロモーターを10μMにおいて誘発可能であることを示す。図9Cは、インドプロフェンがSNU719細胞においてZTA発現を誘発したことを示す、ウェスタンブロットである。図9Dは、インドプロフェンが、SNU719細胞においてEBVウイルス複製を誘発しなかったことを示すグラフである。
図10A〜10Cは、ボルテゾミブでの結果を示す。図10Aは2つのグラフを示す。図10A(左の図)は、AGS細胞でのルシフェラーゼアッセイ結果の定量化を示し、ボルテゾミブがBZLF1プロモーターを10nMにおいて誘発したことを示す。図10B(右の図)は、10nMにおいて、ボルテゾミブが、AKATA−BX1細胞でGFPアッセイにおいてGFPシグナルを誘発したことを示す。図10Bは、Rael細胞でのボルテゾミブ誘発性のZTA発現を示す。図10Cは、Rael細胞でのボルテゾミブ誘発性のEBVウイルス複製を示す。Rael細胞は、20nMのボルテゾミブで8時間処置し、DNAを48時間後に収集した。リアルタイムPCRは、EBVウイルスDNAコピー数が20倍に増加したことを示した。
【0035】
図11A〜11Eは、メベンダゾールでの結果を示す。図11Aはメベンダゾールの構造式を示す。図11Bは、AGS細胞でのルシフェラーゼアッセイ結果の定量化を示すグラフである。これらの結果は、メベンダゾールがBZLF1プロモーターを1μMにおいて誘発したことを示す。図11Cは、1μMにおいて、メベンダゾールが、AGS−BX1細胞でGFPアッセイにおいてGFPシグナルを誘発したことを示す。図11Dは、メベンダゾールがLCL細胞およびAKATA細胞においてZTA発現を誘発したことを示す、ウェスタンブロットである。メベンダゾールはまた、LCL細胞およびRael細胞においてEBVウイルス複製も誘発した。図11Eは、リアルタイムPCR結果の定量化を示す。細胞は、1μMのメベンダゾールで48時間処置し、DNAを収集した。リアルタイムPCRは、EBVウイルスDNAコピー数が20倍に増幅されたことを示した。
【0036】
図12A〜12Dは、ボルテゾミブがEBV−TKおよびZta発現を誘発することを示す。図12Aおよび12Bは、EBV(+)バーキット細胞株(Rael)をボルテゾミブで処置後の、EBV−TK(A)およびZta(B)発現を示す、免疫ブロットである。全細胞タンパク質を単離し、1レーン当たり10pgのタンパク質を12%SDS−PAGEで分離した。図12Cは、Ztaルシフェラーゼ活性が、ボルテゾミブの用量に依存的な様式で増加することを示すグラフである。Ztaプロモーターを発現するAGS−HC13細胞をボルテゾミブで処置し、ルシフェラーゼ活性を測定した(図12C)。図12Dは、[14C]FIAUの蓄積が、ボルテゾミブでの処置後に、EBV(+)バーキット[EBV(+)Akata、EBV(+)Rael]で増加したが、EBV(−)バーキット[EBV(−)Akata]では増加しなかったことを示す。「BL」は、バーキットリンパ腫を示す。
【0037】
図13A〜13Dは、ボルテゾミブがGFP発現(13Aおよび13B)およびEBVウイルス負荷(13C)を上方調節したことを示す。図13Aは、GFPを発現するBX−1細胞に対する、ボルテゾミブによる処置の効果を48時間時点において示すグラフである。図13Bは、Rael細胞での48時間におけるGFP発現を示す顕微鏡写真である。図13Cは、リアルタイムPCRにより測定したウイルス負荷の定量化を示すグラフである。図13Dは、IKBスーパーリプレッサーIKB(sr)を担持する発現ベクターおよび対照ベクターでトランスフェクトしたEBV(+)Rael細胞における、リアルタイムPCRにより測定した、ウイルス負荷の定量化を示すグラフである。
図14Aおよび14Bは、ボルテゾミブによる処置後のバーキットリンパ腫異種移植片による[125I]FIAUの経時的取り込みを、in vivoでの平面ガンマシンチグラフィーにより評価して示した画像である。大きな矢印は腫瘍を示す。暗い領域(図14A、小さな矢印)は、画像の動的範囲を改善するための、膀胱の鉛シールドを示す。各動物は、後肢に1つの腫瘍を有する。図14Aにおいて、PBSのみで前処置された動物(対照)において、腫瘍での取り込みはなかった。図14Bにおいて、腫瘍は前処置された動物(2μg/gボルテゾミブ)において遅い時点で視覚化された。画像は、ex vivo生体内分布のために犠牲にされた代表的な動物からのものであり、データは定量的に表1に示す。
【0038】
図15Aおよび15Bは、別のEBV(+)バーキット異種移植片(Akata)による[125I]FIAU取り込みの時間変化を、in vivoで単光子放出コンピュータ断層撮影/コンピュータ断層撮影、SPECT/CT(SPECT−CT)により示す。矢印は、腫瘍(直径−1cm)を示す。各動物は、脇腹に1つの腫瘍を有する。図15Aは、放射性医薬品注射72時間後の[125I]FIAUの腫瘍での取り込みを示す。図15Bは、96時間での、腫瘍における[125I]FIAU取り込みを示す。放射性医薬品投与の24時間前に、動物はボルテゾミブ(2μg/g、ix.)で処置した。腫瘍組織は青色で、骨(CTから)は赤色で示す。
【0039】
図16A〜16Dは、in vivoでSPECT/CT(SPECT−CT)による骨肉種における[125I]FIAU取り込みを示す画像である。図16Aおよび16Bは、EBV−TK(TK143b)を構造的に発現するよう操作された骨肉種143bを示す。図16Cおよび16Dは、空ベクター(empty vector)(V143b)で偽(sham)操作された骨肉種143b腫瘍を示す。大きな矢印で示すように、各動物に2つの腫瘍が存在する。暗い領域(図16A、小さな矢印)は、画像の動的範囲を改善するための、膀胱の鉛シールドを示す。図16Cおよび16Dに示す動物は、ボルテゾミブ(2μg/g)で前処置し、剤が、FIAUリン酸化を説明する可能性のある、細胞キナーゼの上方調節を導くかどうかを決定した。
【0040】
図17は、マウス異種移植モデルにおける[125I]FIAU組織分布を示すグラフである。[125μCi]FIAUを、EBV−TK(+)腫瘍を移植したSCIDマウスに静脈内投与した。動物(各時点で3〜4匹)を犠牲にし、組織分布を測定した。1gの組織当たりの注射用量(ID)のパーセントを示す。
図18A〜18Cは、腫瘍増殖曲線を示すグラフである。図18Aは、対照腫瘍(空ベクターのヒト骨肉種143B細胞)またはTK発現腫瘍(EBV TKを発現するヒト骨肉種143B細胞)を有する、1.6mCiの[131I]FIAUまたは緩衝食塩水でIV処置した、腫瘍増殖マウスを示す。図18Bは、腫瘍増殖の用量応答を示す。EBV−TK発現腫瘍を有するマウスを、緩衝食塩水、1mCiの[131I]FIAUまたは3mCiの[131I]FIAUで処置した。図18Cは、1.7mCiの[131I]FIAUで処置した、EBV−TK発現および対照の腫瘍細胞の混合を移植したものから生じる腫瘍における腫瘍増殖を示す。各時点は、3匹の動物に対応する。平均、SEMおよび最小2乗直線回帰をプロットした。腫瘍増殖曲線の最適直線回帰の傾きの信頼区間(CI、95%)は、凡例の括弧内に示す。
【0041】
図19A〜19Cは、マウス異種移植片における腫瘍増殖曲線を示す。図19Aは、EBV(+)バーキットリンパ腫(Rael)を示す。図19Bは、EBV(+)胃腺癌(KT)を示す。図19Cは、KSHV(+)原発性浸出リンパ腫(BCBL1)に対して、静脈内に緩衝食塩水を注入し、その24時間後に[131I]FIAU、ボルテゾミブ;またはボルテゾミブの24時間後に、[131I]FIAUを注入したものを示す。各時点は、3匹の動物に対応する。平均、SEMおよび最小2乗直線回帰をプロットした。腫瘍増殖曲線の最適直線回帰の傾きの信頼区間(CI、95%)は、凡例の括弧内に示す。
【0042】
図20Aおよび20Bは、ボルテゾミブによる処置後の腫瘍の[125I]FIAU SPECT−CT画像を示す。図20Aは、p.i.72時間におけるEBV(+)胃癌(KT)腫瘍を示す。図20Bは、p.i.48時間におけるKSHV(+)リンパ腫(BCBL1)を示す。黄色の矢印は腫瘍位置を示す。色付きバーは、[125I]FIAUの取り込みの範囲を%ID/gとして示す((a)において0.68%および(b)において1.53%)。
図21はKSHV腫瘍(BCBL1)に対する酵素分子放射線治療を示す。
図22は、[131I]FIAUおよびボルテゾミブによる治療後の、KSHV腫瘍サイズの減少を示すグラフである。
【0043】
図23は、「バイスタンダー効果」を示す模式図である。
図24は、モンテカルロ細胞レベル線量計測計算に用いる幾何学モデルの図である。細胞クラスターの中心を通る断面についての細胞レベル活性分布を、活性取り込み細胞の10、50、および100%について示す。全取り込みに対する活性分布の効果を検討するために、腫瘍における全活性は一定に維持する。したがって、カラースケールに示すように、10%のシナリオの細胞は、1細胞あたり、100%モデル(赤の強度対灰色)における細胞より多くの活性を有する;活性は、各細胞内に均一に分布している。
【0044】
図25は、トランスフェクトされた細胞の10%(上列)、50%(中列)、および100%(下列)に対する、250万131I崩壊から生じる、線量体積ヒストグラム(1番目の欄)および空間的吸収線量散布図(2番目の欄)を示す。線量体積ヒストグラム(1番目の欄)は、特定の吸収線量(x軸)を受け取った細胞数(y軸)を示す;縦の点線は分布の平均値に対応し、これは図の上にも記されている。散布図(2番目の欄)の各点は、その位置の個別の細胞が受け取った吸収線量に対応する;点線は、球状腫瘍表面の位置に対応する。
図26は、細菌およびそれらの対応するチミジンキナーゼの配列を示し、これは本発明の方法に有用である。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明は、腫瘍の画像化、感染症に関連する新生物の処置または予防(例えば、ウイルスまたは細菌感染症)、新生物を有する対象への効果的な治療法の選択、および治療有効性のモニタリングに有用な、組成物および方法を特徴とする。他の態様において、本発明は、細菌感染症の処置に有用である(例えば、細菌チミジンキナーゼを含む細菌の処置)。特定の態様において、本発明は、放射線療法を腫瘍組織に標的化するために、ウイルス遺伝子発現を調節する剤を提供する。本発明は、少なくとも部分的に多くの発見に基づいており、これらは以下にさらに詳細に報告される。これらの発見は、溶解相誘発化合物の同定、およびそれらの、腫瘍の画像化のための使用、潜伏性ウイルス感染症に関連する疾患を患い、かつ溶解療法を用いる処置に影響を受けやすい対象の同定、およびかかる患者における治療有効性のモニタリング、およびウイルスポリペプチドを発現する腫瘍を放射医学で処置可能であるとの発見を含む。
【0046】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、種々の悪性疾患に関連する。EBVチミジンキナーゼ(TK)は、EBV関連腫瘍において全く発現されないか、または非常に低レベルで発現される。本明細書に報告されているように、EBV−TK発現はin vitroで、ウイルス溶解誘発を促進する数種類の剤によって誘発することができる。[2〜14C]2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド([14C]FIAU)を用いたin vitroアッセイ、および[125I]FIAUを用いたex vivoの生体内分布研究は、放射標識FIAUの取り込みおよび維持が、EBV−TKを発現する細胞に特異的であることを示した。SCIDマウスにおけるEBV(+)バーキットリンパ腫異種移植片の平面ガンマ画像化により、1つのかかる誘発剤であるボルテゾミブによる処置後の、腫瘍内での[125I]FIAUの局在化が実証された。これらの結果は、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)およびポジトロン放出断層撮影(PET)などの放射性医薬品に基づく技術による、化学療法媒介性のウイルス溶解誘発の画像化の可能性を示唆する。
【0047】
さらに、本明細書に報告されているように、マウス異種移植モデルを用いて、[125I]2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド([125I]FIAU)は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)−チミジンキナーゼ(TK)を発現する腫瘍を標的化できることが見出された。このウイルスポリペプチドを発現する腫瘍は、治療放射性医薬品(例えば[131I]FIAU)に標的とされて、腫瘍増殖の緩和もしくは停止、または腫瘍の退縮が実現される。これらの結果は、EBV−TKを構成的に発現する腫瘍、および自然感染したEBV腫瘍細胞株での異種移植片において達成された。バーキットリンパ腫および胃癌は、ボルテゾミブによる前処置によるウイルス遺伝子発現の活性化が必要であった。腫瘍増殖における明白な変化はまた、自然感染カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)腫瘍においても、ボルテゾミブ活性化後に実現された。ボルテゾミブ誘発性の酵素標的化放射線(BETR)療法は、腫瘍遺伝子発現を薬理学的に調節することにより、標的化された放射線療法の有効化が可能であることを示す。具体的な例では、トラニラスト、レフルノミド、インドプロフェン、シタラビン、メベンダゾール、およびボルテゾミブはEBV溶解誘発剤として作用し、EBV関連腫瘍の処置に有用であることが示されたが、本発明はこれらに限定されない。本発明の方法は、任意のウイルス溶解誘発剤を用いて実践してよい。当業者は、EBV関連腫瘍で得られた結果は一般に、ウイルス感染症に関連する実質的に全ての新生物に適用可能であることを理解する。さらに、例においてはFIAUおよびウイルス(EBV/KSHV)チミジンキナーゼを用いて実現された結果を記載するが、かかる結果は他のウイルスおよびウイルスキナーゼにも外挿することができる。
【0048】
ウイルス関連新生物
エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、種々のリンパ腫および癌腫に関連する。カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV、HHV−8)は、肉腫およびリンパ腫と関連する。これらの腫瘍を有する患者においては、ウイルスゲノムがほぼ腫瘍特異的標的として作用するが、ただしこれは、これらのウイルスがリンパ球の小さい部分のみに感染し、また患者においてほぼ全ての感染細胞が腫瘍細胞である限りにおいてである。したがって、ウイルス関連代謝経路が、ほぼ腫瘍特異的代謝経路となる。放射性同位体をヘルペスウイルス代謝経路に標的化させる能力は、研究者らにより、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子を用いて操作したベクターを用いて、放射標識ヌクレオシド類似体を用いた遺伝子療法セッティングにおける遺伝子発現をモニタリングすることにより実証された。細胞およびウイルス代謝経路を標的とする新しい治療法を開発する能力は、腫瘍細胞において、TKおよび、EBVゲノムによりコードされる他の多くの酵素の発現が実質的に存在しないことにより、制限されてきた。
【0049】
放射性医薬品を特定組織に標的化することは、悪性疾患の治療に対して重要なツールを提供する。標的指向性組織特異的表面抗原、例えばB細胞上のCD20とモノクローナル抗体放射複合体によるものは、治療用放射線を、外部ビームまたは他の空間的に有向性のアプローチによって達成できるものを超えて、その応用を拡大した。これらのアプローチは、発現のレベルまたは標的分子に対する抗体の親和性、または抗体の薬物動態により制限され得る。B細胞系統のリンパ腫の間でさえも、CD20発現は、抗体標的化療法には多くの場合不適切である。他の例において、抗体複合体の物理的特性が、大きな腫瘍内または中枢神経系などの保護された区画内の細胞への送達を妨害する。標的指向性の代謝経路、例えば甲状腺組織での同位体ヨウ素によるヨウ素の濃縮に関与するものなどは、よく確立された代替的アプローチであり、これのさらに一般的な適用は、適切な腫瘍特異的経路を同定する能力によって制限されてきた。
【0050】
本明細書において報告されているように、EBVを含む自然発生の腫瘍細胞は、ウイルスTKの薬理学的誘導物質を利用すれば、放射標識ヌクレオシド類似体を用いて画像化することができた(Fu, D.X., et al. Virus-associated tumor imaging by induction of viral gene expression. Clin Cancer Res 13, 1453-1458 (2007))。この所見は、in vivoでEBVおよびKSHV異種移植モデルにおけるウイルス含有腫瘍細胞を用いて実証されたように、ウイルスを含む新生物を処置するための新規な組成物および方法を提供することに拡張された。方法は、ウイルスを含む新生細胞を、放射線治療ヌクレオシド類似体を有する誘発剤で標的とすることを含む。
【0051】
本発明の組成物および方法で用いるための放射性核種の物理的および化学的特性は、放射線治療の選択に重要であり、例えば微粒子放射の種類を考慮すべきである。α粒子は、細胞を死滅させるのに有効な高い線エネルギー付与(LFT)および、数個の細胞の直径である40〜80μmの範囲を有する。β粒子はより密度が低いイオン化状態であり、α粒子放射よりも長い範囲を有し、そのため腫瘍分布の要求の制限は小さい。γ線エネルギーおよび同位体存在比もまた重要な物理特性であり、その理由は、γ線の存在は外部画像化の可能性を提供するが、しかし全身の放射線量を追加するからである。
【0052】
本発明の方法の新生物の処置への応用は、EBVおよびHSV関連新生物の処置に限定されず、しかし、新生物に関連する実質的に全てのウイルス感染での使用に適応可能である。例えば、ヒトパピローマウイルス感染症は子宮頸癌の発症に関連する;JCウイルスは大腸癌の発症に関連する;BおよびC型肝炎ウイルスは、肝癌に関連する;およびヒトTリンパ増殖性ウイルスは、T細胞白血病の発症に関連する。
【0053】
処置方法の選択
対象がウイルス感染症に関連する新生物を有すると診断されると、処置の方法が選択される。ウイルス感染症に関連する新生物を有する患者であって、溶解相に入るよう誘発可能であるものは、本発明の方法による処置が適用可能であると同定される。かかる対象は、その身体を走査して、該対象内の新生物(例えば腫瘍)におけるウイルス溶解の有無を同定することにより、同定できる。視覚化できる腫瘍、すなわち、ウイルス溶解が誘発された腫瘍を有する対象は、本発明の方法による処置を適用可能であると同定される。視覚化できない腫瘍、すなわち、ウイルス溶解が誘発されていない腫瘍を有する対象は、本発明の方法による処置に抵抗性であると同定される。
【0054】
患者のモニタリング
本発明の診断方法はまた、患者における新生物の経過をモニタリングするために、または、治療計画の有効性を評価するためにも有用である。1つの態様において、本発明の診断方法は、ウイルス関連腫瘍のサイズを定期的にモニタリングするために用いる。1つの例において、新生物は、本発明の診断アッセイを用いて、治療を行う前に特徴付けられる。このアッセイは、腫瘍のサイズを記載する、または腫瘍の、ウイルス溶解誘発剤による処置に対する感受性を記載するベースラインを提供する。治療の経過の間に追加の診断アッセイを行って、選択された治療計画の有効性をモニタリングする。治療は、本発明の診断アッセイが、腫瘍の細胞においてウイルス溶解誘発の増加を検出した場合に、または腫瘍サイズの減少を検出した場合に、有効であると同定される。
【0055】
本発明の溶解誘発化合物
ウイルス遺伝子は、種々の遺伝子療法モデルにおいてレポーターとして作用するように操作されてきた。単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)は特に、広く用いられている。HSV−TKの相同体を、次のウイルスによりコードする:エプスタイン・バーウイルス(EBV)、および、流行性バーキットリンパ腫、移植後リンパ腫、AIDSリンパ腫、ホジキンリンパ腫、上咽頭癌および胃癌を含む種々の腫瘍に関連するヘルペスウイルス。EBV−TKは、ヌクレオシド類似体、2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド(FIAU)を選択的にリン酸化する。しかし、EBV関連腫瘍のFIAUの放射標識類似体による直接的平面ガンマ画像化またはPET画像化は、酵素が発現されないか、または潜伏性ウイルス感染のために非常に低レベルでのみ発現されるため、可能ではない。
【0056】
溶解誘発は、細胞アポトーシスおよびウイルス産生をもたらす。意図的な溶解誘発は、EBV関連腫瘍の可能性のある治療法として提唱された。理論的には、この戦略はいくつかのレベルで作用可能である:EBVの溶解感染は、宿主細胞を直接死滅させることができ、発現された溶解遺伝子は、ガンシクロビルをその細胞障害性形態に変え、宿主細胞を死滅させ、溶解抗原はCTLにより認識可能であり、これは宿主細胞の身体からの除去を支援する。
【0057】
EBV溶解誘発療法を、EBV関連腫瘍の特異的治療法とするとのアイディアは、これ以上実践されておらず、その理由は、これらのEBV溶解サイクルを誘発すると報告された薬物が細胞障害性であり、治療効果を有するのに十分な数の細胞中においてEBV溶解サイクルを誘発するのに十分な用量で投与できないからである。従来の細胞障害性療法を用いて内因性EBVゲノムを再活性化することは、特異的治療法の元の目的を失わせ、正常細胞を痛めることなく、ウイルス/宿主腫瘍細胞を死滅させるという利点を失わせる。
【0058】
本発明は、ウイルス溶解誘発を引き起こす組成物および方法を提供する。上皮細胞のEBVによる感染は、ウイルスの複製および感染細胞の溶解を伴う増殖性の感染を生じさせる。前初期遺伝子は、BZLF1およびBRLF1タンパク質を含む、ウイルス遺伝子発現の制御因子をコードし、これらは溶解感染を開始させるスイッチとして作用する。BZLF1タンパク質は、インターフェロン−γ受容体の発現およびインターフェロン−γの活性を阻害する。初期遺伝子は、例えばウイルスDNAポリメラーゼおよびチミジンキナーゼなどの、ウイルスDNA合成に関与するタンパク質をコードする。後期遺伝子は、ウイルスカプシド抗原および主要エンベロープ糖タンパク質gp350などを含む、ウイルスの構造タンパク質をコードする。初期の感染ステージの後に、EBVウイルスおよびヘルペスウイルス、および他のウイルスは、潜伏ステージに入り、ここで活性なウイルス増殖は終わるが、ウイルスは存在し続ける。一定の条件のもとでウイルスは潜伏相を出て、溶解相に再度入る。
【0059】
本発明は、ウイルスの溶解ステージへの導入を誘発する剤を提供する。かかる剤を、「ウイルス溶解誘発剤」と呼ぶ。好ましくは、かかる剤は、宿主または正常組織に対して有害な細胞障害性効果を有することなく、ウイルス溶解を誘発するのに有効である。ウイルス溶解誘発剤は、プロテアソーム阻害剤、抗チューブリン薬物、グルココルチコイドおよびステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤を含む。かかる剤は、潜伏性ウイルス感染症に関連する新生物を有する対象に投与して、ウイルスを溶解相に導入することができる。
【0060】
ウイルスイメージング剤
ウイルス溶解ステージの誘発は、ウイルスポリペプチド産生をもたらす。かかるポリペプチドは、ウイルス関連新生物の診断および/またはモニタリングのための特異的マーカーとして機能する。特定の態様において、本発明は、ウイルス酵素の基質を提供する。基質は画像化に対して感受性が高いため、またはその画像化を可能とする部分を含むため、例えばPETまたはSPECT−CDなどの従来の画像化法によって視覚化することができる。ウイルス酵素は腫瘍細胞で基質を濃縮し、これによって腫瘍細胞の視覚化を可能とする。
【0061】
in vivoで腫瘍の代謝を画像化する能力は広い用途を有し、例としては、[18F]フルオロデオキシグルコース(FDG−PET)を用いるポジトロン放出断層撮影(PET)の臨床的使用の増加などがある。当然ながら、腫瘍組織に対するかかる走査の特異性は、多くの組織および悪性組織がグルコースを迅速に代謝する限りにおいて制限される。したがって、脳、心筋、および炎症病巣はすべて、FDG−PET画像化によりシグナルを生成する。化合物の「画像化に対する有効量」の言葉は、新生物の有無を視覚化するのに十分なシグナルを提供するのに必要な、または十分な量である。新生物は、当分野に知られた、また本明細書に記載された、任意の方法を用いて画像化でき、例えば平面ガンマ画像化、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)およびポジトロン放出断層撮影(PET)などである。有効量は、対象のサイズおよび重量、病気の種類、または特定の化合物などの要因によって変化し得る。例えば、化合物の選択は、何が「画像化に対する有効量」を構成するかに影響し得る。当業者は、本明細書に挙げられた要因を検討して、必要以上の実験なしに化合物の有効量を決定することができる。画像化は、例えばチミジンキナーゼに結合したイメージング剤の、存在および/または位置の検出を可能とする。存在は、検出限界より下、または不在を含み、位置は「なし」を含み得る。
【0062】
特に、本発明は剤を提供し、該剤とは、生物においてウイルスポリペプチド(例えばウイルスチミジンキナーゼポリペプチドに結合する、チミジンキナーゼ結合化合物)に特異的に結合し、対象の画像を得るために用いることができる検出可能なシグナルを生成して、対象におけるチミジンキナーゼ、好ましくはウイルスチミジンキナーゼの存在および位置を決定する前記剤を含む。チミジンキナーゼは本発明の方法に特に好適である。ウイルスチミジンキナーゼは、哺乳類のチミジンキナーゼのキナーゼ触媒ドメインには存在しない共通塩基配列を、そのキナーゼ触媒ドメインに有する。したがって、ウイルスチミジンキナーゼに対して高い親和性を有する化合物は、哺乳類チミジンキナーゼに対して大幅に低下した親和性を示す。
【0063】
本発明は、容易に合成され、かつPETまたはSPECTなどの画像化装置により検出可能な、チミジンキナーゼ結合化合物を利用する。1つの態様において、化合物はキナーゼに結合するヌクレオシド類似体である。特定の態様において、キナーゼはチミジンキナーゼである。本発明の方法において用いるためのチミジンキナーゼ結合化合物は、例えばWO2006/002142に提供されており、これは本明細書に参照として組み込まれる。
【0064】
画像化
一般に、画像技術は、対象に対して、対象の外側で検出可能な化合物を投与することを含む。画像は、対象の種々の部位に蓄積するイメージング剤の空間的分布における差によって生成される。本発明の方法では、画像技術は、例えばウイルスチミジンキナーゼなどの、対象において選択的に結合される化合物に依存する。対象において蓄積したイメージング剤の空間的分布、例えば腫瘍容積を、任意の好適な手段によって、例えば平面ガンマ画像化、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)およびポジトロン放出断層撮影(PET)によって測定することができる。代替的に、蛍光を検出する画像技術を本発明の方法で用いてもよい。
【0065】
本発明の方法で用いることができる例示の化合物は、2’−フルオロ−2’デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシル−5−ヨード−ウラシル([125I]FIAU)、2’−フルオロ−2’デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシル−5−ヨード−ウラシル([124I]FIAU)、9−(4−18F−フルオロ−3−[ヒドロキシメチル]ブチル)グアニン([18F]−FHBG)、(18)F−1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−d−アラビノフラノシル)チミン([18F]−FMAU)、18F−2’−フルオロ−2’デオキシ−1β−D−アラビノフラノシル−5−エチル−ウラシル([125F]FEAU)、および1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−[18F]ヨードウラシル([18F]−FIAU)を含む。
【0066】
本発明の方法において用いてよい例示の蛍光化合物は、Golankiewicz et al. ((2001) J. Med. Chem. 44:4284-7)およびGoslinski et al. ((2002) J. Med. Chem. 45:5052-7)に記載されている。Goslinski et al.に記載されている蛍光三環系アシクロビルおよびガンシクロビル類似体、特にGCV3は、クレームされている方法において、チミジンキナーゼ結合化合物として用いるために意図される。「チミジンキナーゼ結合化合物」の句は、チミジンキナーゼに対して、これらがイメージング剤、および/または治療剤としてとして用いることができる程度に十分な親和性を有する化合物として理解される。1つの態様において、チミジンキナーゼ結合化合物は、ウイルス性チミジンキナーゼ結合化合物である。ウイルス性チミジンキナーゼ結合化合物は、哺乳類のチミジンキナーゼに比べて、ウイルス性チミジンキナーゼに対して少なくとも10倍、好ましくは100倍、好ましくは1000倍高い親和性を有する。ウイルス性チミジンキナーゼ結合化合物は、例えば、FIAU、FHBG、FMAU、FEAU、三環系アシクロビルおよびガンシクロビル類似体、例えばGCV3を含む。チミジンキナーゼ結合化合物は、官能基を含むように改変でき、これらのイメージング剤および/または治療剤としての使用を促進する。
【0067】
特定の態様において、本発明は、例えば1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードウラシル(FIAU)などのヌクレオシド類似体を提供し、これらは、例えば米国特許第4,211,773号に、抗ウイルス剤および抗腫瘍剤として記載されている。基質が画像化のためであるか治療のためであるかは、用いる放射性核種に依存するのみであり、例えば、ヨウ素123、124、または125は画像化用であり、それに対して、ヨウ素131、またはアスタチン211は治療用である。ヌクレオシド類似体は放射性同位体で標識され、例えばヨウ素、フッ素、イットリウム、ビスマス、またはアスタチンの放射性同位体である。他の態様において、ヌクレオシド類似体は蛍光性であってもよい。本発明の好ましい放射標識化合物は、容易に合成され、in vivoでの異化に制限される、ヌクレオシド類似体である。米国特許第5,879,661号および第6,331,287号に記載された化合物などは、本発明の方法で用いることができる。
【0068】
PETにおいて最も一般に用いられるポジトロン放出核種には、11C、13N、15O、および18Fが挙げられる。電子捕捉および/またはガンマ放射により崩壊する同位体はSPECTで用いられ、例えば123Iおよび124Iを含む。
本発明の方法はPETを含む。特に、画像化は、検出システムを用いて、患者の全体または患者の特定領域をスキャンし、例えば放射性同位体シグナルなどのシグナルを検出する。検出したシグナルを次に、画像に変換する。得られた画像は、例えば内科医などの熟練した観察者により読み取られる。前述のプロセスを、本明細書において患者を「画像化する」と呼ぶ。一般に画像化は、本発明の方法で用いる化合物の投与後の約1分〜約48時間の間に行われる。正確な画像化のタイミングは、投与された化合物のクリアランス速度などの要因に依存し、これは当業者には容易に明らかである。
【0069】
画像が得られると、当業者は化合物の位置を決定することができる。この情報を用いて、当業者は例えば、腫瘍が存在するか、ウイルスが溶解相に入っているか、腫瘍の程度、または対象が受けている処置の有効性などを決定することができる。異なる時点で得た画像、例えば12、24、36、48時間またはそれ以上の間隔で得た画像は、処置の有効性、例えば溶解療法および/または化学療法の処置の有効性を決定するのに、特に有用である。
現在用いられている方法と違って、本明細書に記載の画像法は、臨床医に潜伏性ウイルスおよび溶解ウイルス感染時の腫瘍間の同定を可能とする。
【0070】
スクリーニングアッセイ
本発明は、ウイルス溶解誘発のため、新生物の画像化のために有用な剤、または新生物の処置用の剤(例えば、放射性医薬品として)として有用な剤を同定するための方法を提供する。本明細書に記載の例は、特にFIAUをウイルスチミジンキナーゼの基質として用いることについて記載しているが、当業者は、本発明の方法はこれに限定されないことを理解する。ウイルスポリペプチドの基質として作用し、画像技術においてその視覚化を提供する部分を含むように改変でき、または細胞死の誘発を、例えば放射線の致死的線量を新生細胞に放出することにより提供する、実質的に任意の剤を、本発明の方法において用いることができる。
【0071】
本発明の方法は、イメージング剤として有用な、ウイルス誘発剤として有用な、または放射性医薬品として有用な候補剤の、高スループット低コストスクリーニングに有用である。in vitroまたはin vivoアッセイにおいて単離され、活性について試験される剤は、本発明の方法に有用である。当業者は、候補剤の細胞に対する効果を、候補剤と接触していない対応する対照細胞と一般的に比較することを理解する。したがって、1つの態様において、スクリーニング法は、候補剤と接触した、潜伏性ウイルス感染症を有する細胞における溶解誘発を、未処置の対照細胞において観察される誘発と比較することを含む。
【0072】
他の態様において、候補剤で処置した細胞中のウイルスポリペプチドの発現または活性を、未処置の対照試料と比較して、ウイルスポリペプチドの発現または活性を増加させるか、または接触細胞でのウイルス複製を増加させる候補化合物を同定する。ポリペプチド発現または活性は、当分野によく知られた方法により比較でき、例えば、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリ、免疫細胞化学法、磁気および/またはCD137特異的抗体被覆ビーズへの結合、in situハイブリダイゼーション、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、ELISA、マイクロアレイ解析、RT−PCR、ノーザンブロット法、または比色アッセイ、例えばBradford AssayおよびLowry Assayなどである。
【0073】
1つの実用例においては、1または2以上の候補剤を異なる濃度で潜伏性ウイルス誘発を有する細胞を含む培養培地に加える。ウイルスポリペプチドまたはレポーター遺伝子の発現を、細胞中で発現されるウイルスプロモーターの制御下で促進する剤は、本発明において有用であると考えられる;かかる剤は、例えば、ウイルス感染関連の新生物性疾患を、予防、遅延、改善、安定化または処置する治療薬として用いることができる。一旦同定されると、本発明の剤(例えばウイルスポリペプチドに特異的に結合する、および/またはウイルス溶解誘発を刺激する剤)は、対象における腫瘍の画像化または処置に用いることができる。
【0074】
代替的に、または追加して、候補化合物は、ウイルスポリペプチドに特異的に結合して活性化させるものを最初にアッセイして、次に、それらのウイルス溶解誘発への効果を本明細書に記載のようにして試験することにより、同定してもよい。1つの態様において、候補剤の有効性は、チミジンキナーゼポリペプチドと相互作用する、またはその基質として作用する、その能力に依存する。かかる相互作用は、任意数の標準結合技術および機能性アッセイを用いて(例えば、上記Ausubel et al.に記載のもの)容易に分析することができる。例えば、候補化合物は、in vitroで本発明のポリペプチドとの相互作用および結合について、およびその潜伏性ウイルス感染を調節する能力について試験することができる。
【0075】
1つの特定の例において、ウイルスポリペプチドに結合する候補化合物は、クロマトグラフィに基づく技術を用いて同定することができる。例えば、組換えウイルスポリペプチドは、ポリペプチドを発現するよう操作された細胞から標準技術により精製でき、または化学的に合成でき、一旦精製すると、ペプチドをカラム上に不動化する。次に候補剤の溶液をカラムに通し、ウイルスポリペプチドに特異的に結合する剤またはその断片を、ウイルスポリペプチドに結合してカラム上で不動化されるその能力に基づいて、同定する。剤の単離には、カラムを洗浄して非特異的に結合した分子を除去し、目的の剤を次にカラムから放出して収集する。この方法(または任意の他の適切な方法)で単離された剤は、必要に応じてさらに精製してもよい(例えば、高性能液体クロマトグラフィにより)。さらに、候補剤はウイルス誘発剤としてまたはウイルスポリペプチド用の基質として(例えば、本明細書に記載のように)作用するその能力について、試験することができる。このアプローチで単離された剤もまた、例えば、ウイルス関連新生物を処置またはその発症を予防する治療薬として用いることができる。親和性定数が1nM、5nM、10nM、100nM、1mMまたは10mM以下でウイルスポリペプチド結合するとして同定された化合物は、本発明に特に有用であると考えられる。
【0076】
かかる剤は、例えば、新生物と戦う治療薬として用いることができる。任意に、上述の任意のアッセイにおいて同定された剤は、任意の標準動物モデル(例えばげっ歯類異種移植)において有効であると確認することができ、成功すれば、抗新生物治療薬として用いてよい。
【0077】
試験化合物および抽出物
一般に、ウイルス溶解誘発剤として作用する剤、ウイルスポリペプチドに対する基質として作用する剤、またはウイルスポリペプチドに特異的に結合する剤は、天然産物または合成(もしくは半合成)抽出物の大きなライブラリ、または化学ライブラリから、またはポリペプチドもしくは核酸ライブラリから、当分野に知られた方法によって同定される。薬物の発見および開発分野の当業者は、試験抽出物または化合物の正確な給源は本発明のスクリーニング方法(単数または複数)に重要ではないことを理解する。スクリーンに用いる剤は、病原体感染の処置のための治療薬として知られているものを含んでよい。代替的に、実質的に任意の数の未知の化学抽出物または化合物を、本明細書に記載の方法を用いてスクリーニングすることができる。かかる抽出物または化合物の例としては、植物、真菌、原核生物または動物ベースの抽出物、発酵ブロス、および合成化合物、および存在するポリペプチドの改変物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形態における、天然のポリペプチドのライブラリは、多くの供給元から市販されており、これらはBiotics (Sussex, UK)、Xenova (Slough, UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute (Ft. Pierce, Fla.)およびPharmaMar, U.S.A. (Cambridge, Mass.)を含む。かかるポリペプチドは、当分野に知られた本明細書に記載されている方法を用いて、タンパク質の形質導入ドメインを含むように改変することができる。さらに、必要に応じて、天然および合成的に産生したライブラリを、当分野に知られた方法により、例えば標準の抽出および分画法により、作製する。分子ライブラリの合成のための方法の例は、当分野に見出すことができ、例えば、以下に見出すことができる:DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909, 1993;Erb et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994;Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678, 1994;Cho et al., Science 261:1303, 1993;Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994;Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061, 1994;およびGallop et al., J. Med. Chem. 37:1233, 1994。さらに、必要に応じて、任意のライブラリまたは化合物を、標準の化学的、物理的、または生化学的方法により、容易に改変する。
【0079】
任意数のポリペプチドや化学化合物であって、限定することなく多糖類、脂質、ペプチド、および核酸ベースの化合物を含むものの、ランダムまたは指向性の合成(例えば半合成または全合成)をもたらす多数の方法が利用可能である。合成化合物のライブラリは、Brandon Associates (Merrimack, N.H.)およびAldrich Chemical (Milwaukee, Wis.)から市販されている。代替的に、候補化合物として用いる化学化合物は、容易に利用可能な開始材料から、当業者に知られた標準の合成技術および方法論を用いて合成することができる。本明細書に記載の方法により同定される化合物を合成するのに有用な、合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は、当分野に知られており、例えば、以下に記載されたものを含む:R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989);T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley and Sons (1991);L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)、ならびにそれらの続版。
【0080】
化合物のライブラリは、溶液中に存在してよく(例えばHoughten, Biotechniques 13:412-421, 1992)、またはビーズ上(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌(Ladner, U.S. Patent No. 5,223,409)、胞子(Ladner U.S. Patent No. 5,223,409)、プラスミド(Cull et al., Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869, 1992)、またはファージ上(Scott and Smith, Science 249:386-390, 1990;Devlin, Science 249:404-406, 1990;Cwirla et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382, 1990;Felici, J. Mol. Biol. 222:301-310, 1991;Ladner、上記)に存在してもよい。
【0081】
さらに、薬物発見および開発の分野の当業者は、脱複製(例えば、分類学上の脱複製、生物学的脱複製、および化学的脱複製、またはこれらの任意の組合せ)または複製の消去、またはその活性が既知である材料の繰返しのための方法を、可能な場合には用いるべきであることを、容易に理解する。
【0082】
粗抽出物が、ウイルスポリペプチド結合および/またはウイルス溶解誘発活性を有すると見出された場合、陽性のリード抽出物(positive lead extract)のさらなる分画が、観察された効果の原因である分子成分を単離するために必要である。したがって、抽出、分画、および精製プロセスの目的は、イメージング剤として、ウイルス溶解誘発剤として、または新生物の治療薬として有用な、粗抽出物内の化学的実体の注意深い特徴づけおよび同定である。かかる異種抽出物の分画および精製の方法は、当分野に知られている。必要に応じて、治療薬として有用であることが示された化合物を、当分野に知られた方法により、化学的に修飾する。
【0083】
治療法
ウイルス溶解誘発剤として作用する、ウイルスポリペプチドに対する基質として作用する、ウイルスポリペプチドを結合する、および/または放射性医薬品として作用するとして同定された剤は、ウイルス感染症(例えば潜伏性ウイルス感染症)に関連する新生物疾患を予防する、または改善するのに有用である。ウイルス感染に関連する癌は以下を含むが、これに限定されない:エプスタイン・バーウイルス(EBV)に関連する流行性バーキットリンパ腫、移植後リンパ腫、AIDSリンパ腫、ホジキンリンパ腫、上咽頭癌および胃癌、およびヘルペスウイルスに関連するカポジ肉腫腫瘍。ウイルスに関連する新生物は、本発明の方法および組成物を用いて、処置、診断、画像化、またはモニタリングすることができる。
【0084】
1つの治療アプローチにおいては、本明細書に記載のようして同定した剤を、潜在的または実際の疾患に影響された組織に投与するか、または全身的に投与する。投与剤の用量は、個々の患者のサイズおよび健康状態を含む多くの要因に依存する。任意の特定の対象に対して、具体的な投与計画は、個別の必要性および組成物を投与する、または投与を監督する人の専門的判断にしたがって、時間的に調節すべきである。
【0085】
医薬治療法
本発明は、ウイルスポリペプチドに対する基質に結合するかまたは基質として作用することができる、ウイルス溶解相を誘発することができる、または新生物の処置または予防のための療法として作用する組成物(核酸、ペプチド、小分子阻害剤、および抗体)を同定するための、簡単な方法を提供する。したがって、本明細書に記載の方法を用いて医学的価値を有すると発見された化学的実体は、例えば合理的な薬物設計により、薬物として、または存在する化合物の構造的修飾のための情報として有用である。かかる方法は、ウイルス感染症に関連する種々の新生物に対する効果を有する剤をスクリーニングするために有用である。
【0086】
治療的使用について、本明細書に開示された方法を用いて同定された組成物または剤は、全身的に投与してよく、例えば、生理食塩水などの薬学的に許容し得る緩衝液中に製剤化してよい。好ましい投与経路は、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、または皮内注射を含み、これらは患者において連続的に薬物の維持されたレベルを提供するものである。ヒト患者または他の動物の処置は、生理学的に許容し得る担体中での、本明細書で同定された治療薬の治療的有効量を用いて行われる。好適な担体およびそれらの製剤形態は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences by E. W. Martinに記載されている。投与される治療剤の量は、投与の様式、患者の年齢および体重、および病原体感染または新生物の臨床的症状に依存して変化する。一般に、量は、病原体感染または新生物に関連する他の疾患の処置において用いる他の剤に対して用いられる範囲であり、ただしある例においては、化合物の特異性の増加のために、より低い量が必要である。化合物は、ウイルス溶解を効果的に誘発する用量(例えば、溶解を、感染した腫瘍細胞の少なくとも約3〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜30、30〜50、50〜75、または75〜100%において誘発する)において投与され、これらの量は、当業者に知られた方法により決定されるか、またはウイルスプロモーター、ウイルスポリペプチドまたはウイルス複製の発現または生物学的活性を測定するアッセイを用いて決定される。
【0087】
新生物の処置のための化合物の投与は、他の成分と混合されて、新生物を改善、低減または安定化するのに有効な治療薬の濃度をもたらす、任意の好適な手段により行うことができる。化合物は、任意の好適な担体物質において、任意の適切な量で含まれることができ、一般に組成物の全重量の1〜95%の量で存在する。組成物は、非経口投与経路(例えば皮下、静脈内、筋肉内、または腹腔内)に好適な剤形において提供されてよい。医薬組成物は、従来の薬学的慣例にしたがって製剤化することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), ed. A. R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照)。
【0088】
細菌感染
ウイルスは、チミジンキナーゼを発現する唯一つの病原体ではない。多くの細菌性病原体も、かかるキナーゼを発現する。したがって、細菌感染症もまた、放射標識FIAU類似体を含むFIAUによる処置に感受性である。グラム陽性細菌はパスツレラ(Pasteurella)種、ブドウ球菌種、および連鎖球菌種を含むが、これに限定されない。グラム陰性細菌は、大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)種およびサルモネラ種を含むが、これに限定されない。感染性細菌の具体的な例としては以下が挙げられるが、これに限定されない:ヘリコバクターピロリ、Borelia burgdorferi、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア種(例えば結核菌、鳥結核菌、M. intracellulare、M. kansaii、M. gordonae)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(ビリダンス群)、糞便連鎖球菌、ウシ型連鎖球菌、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター種、腸球菌種、インフルエンザ菌、炭疽菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム種、豚丹毒菌、ウェルチ(ウェルシュ)菌、破傷風菌、Enterobacter aerogenes、肺炎桿菌、Pasturella multocida、バクテロイデス種、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、レプトスピラ、リケッチア、およびイスラエル放線菌。
【0089】
他の細菌性病原体は以下を含む:アエロバクター、アエロモナス、アシネトバクター、イスラエル放線菌、アグロバクテリウム、桿菌、炭疽菌、バクテロイデス、バルトネラ、ボルデテラ、Bortella、ボレリア、ブルセラ、Burkholderia、カリマトバクテリウム、カンピロバクター、シトロバクター、クロストリジウム、ウェルチ(ウェルシュ)菌、破傷風菌、Cornyebacterium、ジフテリア菌、コリネバクテリウム種、エンテロバクター、Enterobacter aerogenes、腸球菌、豚丹毒、大腸菌属、フランキセラ属、Fusobacterium nucleatum、Gardnerella、ヘモフィールス、ハフニア属、ヘリコバクター、クレブシエラ、肺炎桿菌、乳酸桿菌、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、Morganella、モラクセラ、マイコバクテリウム、ナイセリア、パスツレラ、Pasturella multocida、プロテウス属、プロビデンシア属、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、セラチア、赤痢菌、ブドウ球菌、Stentorophomonas、連鎖球菌、Streptobacillus moniliformis、トレポネーマ属、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、キサントモナス属、ビブリオ、およびエルシニア。
【0090】
非経口組成物
医薬組成物は、注射、注入または移植(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内など)により、従来の非毒性の薬学的に許容し得る担体およびアジュバントを含有する剤形、製剤、または好適な送達装置または移植片により、投与することができる。かかる組成物の製剤および調製物は、医薬製剤の当業者によく知られている。製剤は、上記Remington: The Science and Practice of Pharmacyに見出すことができる。
【0091】
非経口使用のための組成物は、単位剤形(例えば単回用量アンプル)、または好適な保存剤が添加されていてもよい、複数回の用量を含有するバイアル(下記参照)において、提供することができる。組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、注入装置、または移植用の送達装置の形態であってよく、または使用前に水または他の好適なビヒクルと再構成される、乾燥粉末として提供してもよい。病原体感染症または新生物を低減または改善する活性剤とは別に、組成物は、好適な非経口的に許容し得る担体および/または賦形剤を含んでもよい。活性治療剤(単数または複数)は、制御放出のために、微小球、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込まれてもよい。さらに、組成物は懸濁剤、溶解剤、安定化剤、pH調節剤、等張化剤、および/または分散剤を含んでもよい。
【0092】
上述のように、本発明の医薬組成物は、無菌注射に適した形態でもよい。かかる組成物を調製するために、好適な活性な炎症性腸疾患治療薬(単数または複数)を、非経口的に許容し得る液体ビヒクル中に溶解または懸濁させる。用いてもよい、許容し得るビヒクルおよび溶媒は、水、適切量の塩酸の添加により好適なpHに調節された水、水酸化ナトリウムまたは好適な緩衝液、1,3−ブタンジオール、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液、およびデキストロース溶液である。水性の製剤はまた、1または2以上の保存剤(例えばメチル、エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸塩)を含んでもよい。化合物の1つが、水に少量またはわずかにのみ溶解する場合、溶解増強剤または溶解剤を加えることができ、または溶媒は、10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含んでもよい。
【0093】
制御放出非経口組成物
制御放出非経口組成物は、水性懸濁液、微小球、マイクロカプセル、磁気微小球、油性溶液、油性懸濁液、または乳濁液の形態であってもよい。代替的に、活性薬物は生体適合性担体、リポソーム、ナノ粒子、移植片、または注入装置に組み込まれていてもよい。
【0094】
微小球および/またはマイクロカプセルの調製において用いる材料は、例えば、生分解性/生侵食性ポリマー、例えばポリガラクチン、ポリ−(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−L−グルタム−ニン)および、ポリ(乳酸)である。制御放出非経口製剤を製剤化する場合に用いてよい、生体適合性担体は、炭水化物(例えばデキストラン)、タンパク質(例えばアルブミン)、リポタンパク質、または抗体である。移植片において用いるための材料は、非生分解性(例えばポリジメチルシロキサン)、または生分解性(例えばポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはポリ(オルトエステル)、またはこれらの組合せ)であることができる。
【0095】
経口使用のための固体剤形
経口使用のための製剤は、活性成分(単数または複数)を、非毒性の薬学的に許容し得る賦形剤との混合物で含有する錠剤を含む。かかる製剤は、当業者に知られている。賦形剤は、例えば不活性の希釈剤または増量剤(例えばスクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、セルロース誘導体類であって、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、またはアルギン酸など);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール);および潤滑剤、流動促進剤(glidant)、および抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油、またはタルク)である。他の薬学的に許容し得る賦形剤は、着色剤、香味剤、可塑剤、湿潤薬、緩衝剤などであることができる。
【0096】
錠剤は、被覆なしでもよく、または、任意に胃腸管での分解および吸収を遅延させ、これにより長い期間持続性の作用を提供するために、既知の技術により被覆されてもよい。被覆は、活性薬物を、所定のパターンで放出するよう適合させてもよく(例えば、制御放出製剤を実現するため)、または、活性薬物を、胃を通過した後まで放出しないように適合させてもよい(腸溶コーティング)。被覆は、糖衣、薄膜コーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、および/またはポリビニルピロリドンに基づくもの)、または、腸溶コーティング(例えばメタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、セラック、および/またはエチルセルロースに基づくもの)であってよい。さらに、時間遅延材料、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを用いてもよい。
【0097】
固体錠剤組成物は、組成物を望ましくない化学的変化(例えば、活性な抗病原体または抗新生物治療物質の放出前の化学的分解)から保護するよう適合されたコーティングを含んでよい。コーティングは、上記Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されているものと同様の様式において、固体剤形に適用してもよい。
少なくとも2種の抗病原体または抗新生物治療薬を、錠剤中に一緒に混合してもよく、または分割してもよい。1つの例においては、第1の活性な抗病原体または抗新生物治療薬を、錠剤の内側に含有させ、第2の活性な抗病原体または抗新生物治療薬を外側に、第2の活性な抗病原体または抗新生物治療薬の大部分が、第1の活性な抗病原体または抗新生物治療薬の放出前に放出されるような様式で、含有させる。
【0098】
経口使用のための製剤はまた、咀嚼錠として、または硬質ゼラチンカプセルとして活性成分を不活性の固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリン)と混合して、または軟質ゼラチンカプセルとして活性成分を水または油性の媒体、例えばピーナツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合して、提供してもよい。散剤および顆粒物も、上述の成分を用いて、錠剤およびカプセルとして、従来の様式で例えば撹拌機、流動床装置またはスプレー乾燥装置を用いて、調製することができる。
【0099】
制御放出経口剤形
経口用の制御放出組成物は、例えば、抗新生物治療薬を、活性物質の溶解および/または拡散を制御して放出するよう、構成することができる。溶解または拡散による制御放出は、化合物の錠剤、カプセル、ペレットまたは顆粒製剤の適切なコーティングにより、または化合物を適切なマトリクス内に組み込むことにより、達成することができる。制御放出コーティングは、上述の1種または2種以上のコーティング物質、および/または、以下を含んでよい:例えばセラック、蜜ろう、糖ろう、ヒマシろう、カルナウバろう、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセロール、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl−ポリ乳酸、酢酸酪酸セルロース、塩化ポリビニル、酢酸ポリビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートヒドロゲル、1,3ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート、および/またはポリエチレングリコール。制御放出マトリクス製剤において、マトリクス材料はまた、例えばメチルセルロース水和物、カルナウバろう、およびステアリルアルコール、カルボポール934、シリコーン、トリステアリル酸グリセリル、メチルアクリレート−メチルメタクリレート、塩化ポリビニル、ポリエチレン、および/またはハロゲン化フルオロカーボンを含んでよい。
【0100】
1または2種以上の治療化合物を含有する制御放出組成物はまた、浮遊錠剤(buoyant tablet)またはカプセル(すなわち経口投与時に、一定時間胃内容物の上に浮遊する錠剤またはカプセル)の形態であってもよい。化合物(単数または複数)の浮遊錠剤製剤は、化合物(単数または複数)の混合物を、賦形剤および20〜75%w/wのヒドロコロイド、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースと、顆粒化することにより、調製することができる。得られた顆粒は次に、錠剤に押圧することができる。胃液と接触すると、錠剤は、その表面の回りに実質的に水不透過ゲルのバリアを形成する。このゲルバリアは、1より小さい密度を維持する役目を果たし、これによって錠剤が胃液中に浮遊することを可能とする。
【0101】
組合せ療法
任意に、抗新生物治療薬は、任意の他の標準の抗新生物治療と組み合わせて投与してよい;かかる方法は当業者に知られており、Remington's Pharmaceutical Sciences by E. W. Martinに記載されている。
【0102】
キット
本発明は、ウイルス関連新生物の、診断的画像化、処置、予防、またはモニタリングのためのキットを提供する。1つの態様において、キットは、新生物の処置のための剤の有効量(例えば単位剤形における)を含有する組成物を含む。他の態様において、キットは、ウイルス溶解誘発剤を含む組成物を含む。さらに他の態様において、キットは、新生物を画像化するための剤を含む。いくつかの態様において、キットは、治療または予防用の細胞組成物を含む、無菌の容器を含む;かかる容器は、箱、アンプル、ビン、バイアル、チューブ、袋、パウチ、ブリスター包装、または当分野に知られたその他の好適な容器であることができる。かかる容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属フォイル、または医薬を保持するのに好適な他の材料から作ることができる。
【0103】
必要に応じて、本発明の剤は、新生物を有するか、その発症のリスクを有する対象に剤を投与するための指示書と一緒に提供される。指示書は一般に、組成物を新生物の画像化のために、または新生物の処置もしくは予防のために用いることについての情報を含む。他の態様において、指示書は、以下の少なくとも1つを含む:治療剤またはイメージング剤の説明;新生物またはその症状の処置または予防のための投与計画および投与;用法注意;警告;効能・効果;過量投与の情報;副作用;動物薬理学;臨床試験;および/または参考文献。指示書は、容器(ある場合には)に直接印刷してもよく、または容器に貼付されたラベルとして、または容器中もしくは容器と共に提供される、別の紙、パンフレット、カード、もしくはフォルダーとして提供されてもよい。
【0104】
本発明の実践は、他に記載のない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を用い、これらは当業者の範囲内である。かかる技術は文献に完全に説明されており、その例としては以下である:“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, second edition ;“Oligonucleotide Synthesis” ;“Animal Cell Culture” ;“Methods in Enzymology” “Handbook of Experimental Immunology” ;“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells” ;“Current Protocols in Molecular Biology” ;“PCR: The Polymerase Chain Reaction”, ;“Current Protocols in Immunology” 。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの製造に適用可能であり、したがって本発明の製造および実践おいて考慮することができる。特定の態様のために特に有用な技術は、以下の節で議論される。
【0105】
以下の例は、当業者に対して、本発明のアッセイ、スクリーニングおよび治療法をいかにして作製して用いるかについての完全な開示および説明を提供するものであり、発明者がその発明と考えるものの範囲を限定することは意図していない。
本発明は、以下の例によりさらに説明され、これは限定とみなされるべきではない。
【0106】

例1:ルシフェラーゼアッセイは、Ztaプロモーターを活性化する試薬を同定した
Ztaは、EBV溶解感染の誘発における主なトランス活性化因子である。報告されている全ての溶解誘発剤は、Ztaの転写を活性化する。EBVの前初期遺伝子発現を誘発する薬物を同定するために、胃癌細胞株背景でのZtaプロモータールシフェラーゼレポーターを、EBV溶解遺伝子発現の既知の誘導物質を検出するその能力について評価した。このプロモーター−上皮細胞アッセイにおいて、ホルボール12−テトラデカノエート13−アセテート(TPA)およびブチレート(TPA/ブチレート)およびバルプロ酸による処置は、図1に示すように、用量依存性の様式でルシフェラーゼの発現の増加をもたらし、一方で5’−アザデオキシシチジンはこのプロモーターを活性化しなかった(図1)。
【0107】
プロモーター−レポーター系は、ウイルスエピソームの文脈におけるZtaプロモーターの調節を反映しない可能性がある。ZTAプロモーター−上皮アッセイは、単一ウェルで定義されたウイルスなしの系によるEBV複製の側面に焦点を当てる。EBV溶解感染は、溶解プロモーターの後成的修飾および潜伏性タンパク質阻害を含む、多くのレベルにおいて調節されている。ZTAルシフェラーゼアッセイは、5’−アザデオキシシチジンなどの薬物を同定しなかった。そこで、高スループットスクリーニングのための、相補的ウイルス−細胞ベースのアッセイが開発された。
【0108】
例2:EBV溶解誘発試薬を同定するためのGFP−ウイルスベースのアッセイの開発
BX−1は、BXLF1 ORFが破壊されたGFPをコードする組換えEBVであり、AKATA−BX1細胞はこの組換えEBVを有するAkata陰性細胞である。顕微鏡観察により、抗−IgGによりAKATA−BX1細胞においてEBV溶解感染が誘発された場合に、GFPシグナルは溶解感染とともに増加することが示された(図2A)。GFPはEBV組換えウイルスによりコードされたため、ウイルス複製はより多くのGFPを産生し、より強い蛍光シグナルを生成する。このGFPシグナルを、マイクロプレートリーダーにより検出した。相対蛍光単位(RFU)の増加を、溶解誘発後に検出した(図2A)。GFPシグナルは、S相CDK阻害剤プルバラノールAによって特異的に阻害され、これは、EBV溶解誘発を抑制すると報告されている[7](図2B)。GFPシグナル誘発がCMVプロモーター活性化のためであるか、または溶解複製を反映するのかを決定するために、CMVプロモーター駆動GFPプラスミドを有する安定なHela細胞株を、対照として用いた。試験した溶解誘発剤のいずれもが、この対照細胞株においてGFPシグナルの増加を示さなかった(図2C)。
ルシフェラーゼアッセイとは対照的に、Akata−BX1細胞では、GFPシグナルは5’−アザデオキシシチジンにより用量依存性の様式で誘発された(図3)。96ウェルフォーマットにおいて、GFPアッセイは高スループットアッセイに容易に適合された。
【0109】
例3:臨床化合物ベースのライブラリの薬物スクリーン
ジョーンズホプキンス臨床化合物ライブラリ(JHCCL)は、2720種の化合物から構成され、これらは最終濃度10uMにおいてスクリーニングされている。化合物はDMSOまたはPBSに溶解され、96ウェルプレートにフォーマットされていた。GFP全ウイルスアッセイの典型的な読取りを図4に示す。200以上の化合物が、可能性のある溶解誘発剤として1つまたは2つのアッセイにおいて同定された。活性を有すると同定されたほとんどの剤は、5つのファミリーに分類できた:プロテアソーム阻害剤、抗チューブリン薬物、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤。多くのヒットは共通であったが、グルココルチコイド活性は肉腫細胞株/全ウイルスアッセイにおいて最も頻繁に同定され、抗チューブリン薬物は、上皮プロモーターレポーターアッセイにおいて最も頻繁に見出された。興味深いことには、多くの抑制ヒットは、伝統的に細胞障害性薬物として知られていない薬物である。これらのヒットのうちにはシンバスタチンおよびロバスタチンがあり、これら2つの薬物は、近年、EBV形質転換されたリンパ芽球腫細胞株のアポトーシスを誘発すると報告されたものである(Katano et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 2004. 101(14):4960-5)。これら試薬のさらなる研究は、EBV関連腫瘍に対するいくつかの腫瘍特異的治療を明らかにするであろう。
【0110】
前にEBV溶解サイクルを誘発することが示された薬物の再同定は、2つのアッセイで用いられたアプローチの重要な確認を表わす。上皮プロモーターレポーターアッセイのみによって確認された薬物は、メトトレキセート、シスープラチナム、5−FU、およびタキソールであった。リンパ腫細胞株/全ウイルスアッセイのみから確認された薬物は、ほとんどのグルココルチコイド薬および抗IgGであった。両方で確認された薬物は、ドキソルビシン、PMA、およびいくつかのグルココルチコイド薬であった。両方のアッセイで確認されなかった薬物は、酪酸ナトリウム、酪酸アルギニン、および塩化コバルトであった(図5)。
【0111】
ヒットは次に、5μM、1μM、100nMおよび10nMで実施した同じアッセイによってさらに試験し、溶解感染を誘発するEC50を決定した。期待できるヒットを次にEBV陽性細胞株において試験した。これらのさらなる検討について、化合物はライブラリから独立して得た。これらの選択は、一部には剤のさらなる分析に対する使用可能性に基づき、また、一部には最初のスクリーンにおいて同定された化合物の多様性を提示するためになされた。低いマイクロモル濃度で活性な化合物および、伝統的細胞障害性薬物ではない化合物については、より興味が低かった。
【0112】
例4:ボルテゾミブ、メベンダゾール、シタラビンは溶解誘発試薬として同定された
プロモーター−上皮アッセイにより、BZLFプロモーターを誘発可能な多くの薬物が明らかにされた。トラニラストは、肥満細胞の脱顆粒化、ヒスタミン放出および線維増多プロセスを抑制する抗アレルギー薬である(図6)。抗炎症効果は、NF−KB機能の阻害を通してのものである。レフルノミドは、ピリミジン生合成経路の第4の酵素であるジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼを阻害し、in vitroでの成長因子媒介性の平滑筋細胞増殖に拮抗する。これは、関節リューマチの処置に用いられる。
【0113】
トラニラストおよびレフルノミドは、BZLFプロモーターを治療的血清濃度において15倍まで誘発した(図6)。前初期タンパク質BZLFのみで、溶解カスケードの全体のトリガーとなるのに十分であることが報告されている。しかし、ルシフェラーゼアッセイにおいてBZLFプロモーターを誘発可能な薬物は、必ずしもBZLFタンパク質発現を誘発するわけではない。上記の試薬は、EBV陽性細胞株、例えばSNU719、AKATA、Raji、LCLおよびRael細胞などにおいて、BZLFタンパク質発現を誘発しなかった。
ルシフェラーゼアッセイでの他のヒットは、BZLF1タンパク質を誘発したが、ウイルス複製は誘発しなかった。この部類の薬物は、シタラビン(Ara−C)(図7A)およびインドプロフェン(図9A)を含む。Ara−cは、ルシフェラーゼアッセイにおいてBZLFIプロモーターを誘発し(図7B)、およびLCL細胞においてZTA発現を誘発した(図7C)。
【0114】
シタラビンおよびインドプロフェンは、EBV前初期遺伝子発現のトリガーとなったが、しかし後のステージで溶解カスケードを停止させた。シタラビンは前初期タンパク質ZTAを、SNU719、LCL、AKATA−BX1細胞において誘発し(図8Aおよび8B)、また溶解遺伝子RPAおよびTK発現を誘発したが(図8C)、しかしウイルス複製は誘発しなった(図8D)。インドプロフェンはSNU719においてZTAを誘発したが、ウイルス複製は誘発しなった(図9A〜9D)。
ボルテゾミブは両方のアッセイにおける最も顕著なヒットであった(図10A)。ボルテゾミブのEC50は、アッセイにおいてナノモルの桁であり、これは治療的血清濃度と整合する。EBV(+)B細胞において試験した場合に、ボルテゾミブはZTA(図10B)、RTAおよびEBV−TKなどの溶解遺伝子を誘発したのみでなく、EBV複製も誘発した(図10C)。メベンダゾールはまた、EBV+細胞株において、BZLF1タンパク質発現およびウイルス複製を誘発することができる(図11)。
【0115】
まとめると、臨床化合物ライブラリに2つのアッセイを適用することにより、スクリーニングは、FDA承認の多くの剤を、強力なEBV溶解誘発活性を有するとして同定した。
安定にトランスフェクトされたプラスミドにおける、ZtaプロモーターのoriPによる調節は、EBVにおける内因性Ztaプロモーター調節と同様であることが報告されている(Jenkins et al., J Virol, 2000. 74(2): p. 710-20)。oriPプラスミドにおいて、クロマチン構造はアセチル化に関して維持されているが、Zpプロモーター領域はメチル化されていない。本報告では「通常の」pGL2プラスミドを薬物スクリーニングに用いているが、同様のクロマチン構造が観察された。ZpプロモーターはHDAC阻害剤である酪酸塩により誘発されたが、メチル化阻害剤である5−アザデオキシシチジンによっては誘発されなかった。
【0116】
観察されたGFPシグナルは、ウイルス複製に対応し、EBV溶解誘発の信頼できるレポーターである。複製の間でのその連続的産生および定量化の容易さは重要な力である。GFPは、結核菌(Collins et al., Antimicrob Agents Chemother, 1998. 42(2): p. 3447)、HIV(Daelemans et al., Mol Pharmacol, 2005. 67(5): p. 1574-80)、CMVおよびHCV(Lee et al., J Virol Methods, 2004. 116(1): p. 27-33)などの多くの病原体に対する薬物スクリーニングアッセイにおいて、レポーターとして用いられてきた。本発明は、細胞内EBV複製のリアルタイムモニタリングのための新規なアッセイを確立し、このアッセイを高スループットスクリーニングに適合させた。
【0117】
GFPおよびルシフェラーゼアッセイにおいて見出された異なるヒットは、2つのアッセイの異なる性質を反映する。また、任意の他の高スループットスクリーンにおけるのと同様に、アッセイの感受性および特異性は、スクリーンで用いる薬物の濃度により制限される。酪酸アルギニンおよび酪酸ナトリウムは、両方のスクリーンにおいてヒットとしては見過ごされ、その理由は、試験された濃度(10μM)が、報告されている有効濃度(0.5〜2mM)よりはるかに低かったためである。
本明細書で実証されるように、本発明は、EBVの溶解感染を誘発する剤を提供する。EBV溶解感染はまた、移植後リンパ球増殖性疾患(PTLD)においても役割を果たすと考えられる。EBV複製を再活性化することができる種々の試薬の理解は、これらの疾患の処置に有用となり得る。
【0118】
トラニラストおよびレフルノミドは、溶解プロモーターを治療的血清濃度において活性化した。これらはB細胞または胃上皮細胞(SNU719)において、溶解タンパク質発現またはウイルス複製を誘発しないが、インドプロフェンは、SNU719細胞において高用量でZtaタンパク質を誘発することに有望性を示す。我々のヒットのほとんどは細胞障害性薬物であり、これはストレスへの応答としてウイルスが再活性化するとの注釈と整合しているようである。1つの特異的な薬物群は、微小管障害薬である。
シタラビンは、前初期および初期遺伝子発現を誘発可能な特別なクラスの薬物を表わすが、しかし完全な溶解複製は誘発しない。その作用は、ウイルスDNAポリメラーゼの阻害による可能性がある。この薬物クラスは、ウイルス血症を引き起こすことなく、宿主細胞アポトーシスに必要な主なステップを達成できることから、興味深い。これらにより、前初期遺伝子BZLF1およびBRLF1が誘発されるだけでなく、溶解カスケードをTKに対して実施でき、これは、ガンシクロビルおよびウイルス画像化の作用を可能とする。存在する薬物に対して新しい使用を見つけることは、有望なアプローチである。存在する化合物のスクリーニングは、いくつかの既知の薬物の新規な活性/効能を同定する可能性がある。このライブラリの1つの明白な利点は、スクリーンの追跡臨床試験では、毒性および薬物動態を確立するために必要な、時間およびコストのかかるプロセスを回避できることである。
【0119】
例5:ボルテゾミブはEBV−TKを誘発した
ボルテゾミブ処置は、免疫ブロット法(図12Aおよび12B)、ZTA/ルシフェラーゼ活性(図12C)、および[14C]FIAUの蓄積に反映されたTK機能活性(図12D)の評価からわかるように、EBV−TKおよびEBV−ZTA発現を誘発した。ボルテゾミブの不在またはEBV(−)細胞株においては、抗原または機能活性は検出されなかった。ボルテゾミブの効果は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するBX−1細胞株において示されるように、用量依存性であった(図13Aおよび13B)。リアルタイムDNA PCRにより測定したウイルスコピー数も、処置と共に増加した(図13C)。よく認識されているボルテゾミブの作用の1つは、IκBの安定化および、その結果としてのNF−κBの阻害である。溶解遺伝子発現の誘発においてこの経路も同様に重要であるかどうかを決定することを試みて、ボルテゾミブの効果を、バーキット細胞株でのトランスフェクション実験でIκBのスーパーリプレッサー(IκB(sr))において検討した。図13Dに示すように、EBVウイルス負荷はトランスフェクション後に約12倍に増加した。さらに、EBV(+)Akata細胞を20nMのボルテゾミブの存在下で48時間インキュベートすると、67%の細胞が溶解サイクルに入り、誘発が用量依存性であることが証明された。
【0120】
EBV(+)バーキットリンパ腫異種移植片を有するマウスを、ボルテゾミブまたはリン酸緩衝食塩水(PBS)のどちらかで処置し、[125I]FIAUの注射後の種々の時点で画像化した(図14)。ボルテゾミブは常に[125I]FIAUの24時間前に、同じく静脈内に投与した。早い時点で得た画像は、心血液プール、肝臓、膀胱および甲状腺のみを示し、これは[125I]FIAUの確立された生体内分布と整合した。放射性医薬品の注射後1日までに、ボルテゾミブで処置した動物の腫瘍は視覚化することができ、注射後4日までには、膀胱内での豊富な放射活性にも関わらず、処置した動物の腫瘍は明確に見ることができた。2μg/gのボルテゾミブは、この細胞株での処置後96時間において、最大の標的対非標的シグナル比率を刺激した。図14Bに矢印で示した96時間時点での放射活性は、同時に行ったex vivoでのガンマカウントが示すように、腫瘍内にあった。同様の結果が、他のEBV(+)バーキット細胞株(Rael)異種移植片を有する動物においても得られた。PBSでなく、ボルテゾミブによる処置の後、放射性医薬品の注射後30時間までに、腫瘍は明白に視覚化された。図15は、放射性医薬品の投与の72および96時間後における、EBV(+)Akata細胞株から得た異種移植片のSPECT−CT画像を示す。画像から得た1g当たりの注射線量の百分率(%ID/g)は、72および96時間後においてそれぞれ1.13±0.01および0.70±0.01であった。1匹のマウスのみをSPECT−CTで画像化したため、標準偏差(SD)値は各画像の複数切片から導出した。
【0121】
例6:ex vivo生体内分布
図14および15の画像において一見腫瘍内に示された放射活性が、実際に腫瘍内であることを確認し、取込み量を定量するために、追加の実験でEBV(+)異種移植片を有する動物においてex vivo生体内分布アッセイを行った。[125I]FIAU取り込みの増加は初期には明白であったが、ボルテゾミブで前処置された動物の腫瘍において、注射後96時間でこれはピークを示した。図14Aは、PBSで前処置されたマウスにおいて、96時間での腫瘍での取込みの欠如(0.039%ID/g)を示し、一方、図14Bは、ボルテゾミブで前処置された動物の腫瘍での取込みの時間変化を示す。腫瘍での放射性医薬品の取り込みは、0.039%から0.85%ID/gまで、ボルテゾミブでの前処置の後に、基底値のほぼ22倍に増加した(表1)。
【0122】
【表1】

他の組織内、すなわち、肝臓、脾臓、腎臓および筋肉内で検出された放射活性は、24時間時点と96時間時点の間で消滅した。
【0123】
ボルテゾミブ処置後の腫瘍を画像化する能力が、FIAU蓄積を導くヒト細胞キナーゼの誘発を反映していないことを確認するために、EBV(−)骨肉種異種移植片も画像化した。ボルテゾミブの有無に関わりなく、腫瘍での取り込みは明らかでなかった。しかし、構成的にEBV−TKを発現するよう操作された同じ細胞株は、容易に画像化された(図16)。これらの結果は、画像化に関連する薬理学的誘発の効果は、細胞キナーゼの活性化によるよりも、ウイルスTKによって媒介されることを示した。
【0124】
レポータートランス遺伝子を用いて、目的の内因性遺伝子の発現を決定することは、細胞および分子生物学での中心となっている。以前にはin vitroで行われる作業用であったこれらの技術は、in vivoでの画像化に拡張されている。in vivo分子遺伝学的画像化の比較的新しい領域では、種々のモダリティが用いられ、これらの多くは診療室でも用いられるものと平行しており、磁気共鳴画像法およびPETを含む。細胞を適切な画像化用レポーター(主としてHSV1−TKであるがこれに限定されない)でトランスフェクトすることにより、および、種々の放射標識基質およびリガンドを用いて、研究者は、T細胞輸送、免疫活性化、メカニズム特異的抗癌剤、およびタンパク質相互作用ネットワークのアセンブリを含む、種々の細胞プロセスを測定することができる。2つの報告においては、分子遺伝学的画像化を用いて、患者における抗腫瘍遺伝子療法への準備のために、HSV1−TKで生産的にトランスフェクトされた細胞が同定された。本発明者らは、内因性TK発現を画像化して、結腸癌および一般の細菌感染の実験モデルにおいて組合せ溶菌療法を検討した(Bettegowda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2005;102:1145、これは本明細書に参照として組み込まれる)。本明細書においては、分子遺伝学的画像化を用いて、ウイルス溶解サイクルの代理マーカーとしての、遺伝子EBV−TKの発現を検討し、これは遺伝子トランスフェクションのステップの回避を可能とした。
【0125】
EBVバーキットおよびAkataリンパ腫異種移植片を、[125I]FIAUと専用ガンマカメラを用いて、ウイルスTK発現の薬理学的誘発後に画像化した。病因学的ウイルス関連腫瘍そのものが、腫瘍を直接画像化するためのレポーター遺伝子を提供した。この方法は非常に高感度であり、腫瘍量でのたったの5%という少ない細胞のみが、あるEBV(+)細胞株での画像化による検出のために、溶解サイクルに誘発される必要がある。用いた腫瘍モデルは皮下のものであったが、γ線の顕著な減衰の欠如は、この方法が、身体内部の深い位置の腫瘍に対して適用可能であることを示唆する。
【0126】
上述のように、ボルテゾミブは米国食品医薬品局が承認した2700種の薬物のスクリーンにおいて、EBV溶解サイクル誘発において最も活性であるとして同定され、本研究の論理的根拠を提供した。NF−κB経路の阻害は、EBV溶解サイクルを誘発した。ボルテゾミブは、IκBの分解の阻害による抗NFκB活性を有することが知られている。本明細書に報告された結果は、抗NFκB活性と溶解誘発の間のリンクを明らかにし、研究されたEBV関連リンパ腫において観察された結果についてのメカニズムを提供する。これらの所見に基づくと、画像化に対する腫瘍のウイルス性の関連を、癌療法のために利用できるようである。特に、腫瘍におけるウイルス遺伝子発現の調節が関与する、いくつかの治療戦略を調査した(Jacobs et al., Lancet 2001;358:727 -9; Yaghoubi et al., J Nucl Med 2006; 47:706-15)。かかる療法を、本報告に記載のように前臨床モデルにおいて、または患者において、すでに臨床使用されている放射標識ヌクレオシド類似体を用いて、非侵襲的にモニタリングすることができる(Jacobs et al., Lancet 2001;358:727 -9; Yaghoubi et al., J Nucl Med 2006; 47:706-15)。あるウイルス関連腫瘍の処置を最適化する方法はルーチンであり、当業者に知られている。ボルテゾミブは、溶解感染を誘発するのに有効な、新規のまた以前から知られている剤のアレイの1つであり、特定の剤を、特定の患者において、画像化を介する使用に適合させることができる。例えば、腫瘍が、治療を開始した直後に[124I]FIAU−PET走査上で陽性的に表わせない場合、その患者においては他の潜在的により有益なアプローチを支持して、溶解誘発療法は中止すべきである。画像化試験において、治療法の有益な効果を示す陽性シグナルの実証は、ウイルスゲノムに天然に関連する特異的遺伝子の誘発とメカニズム的に結合して、ウイルスまたは画像化レポーターの別のトランスフェクションを必要とすることなく、抗癌療法に対して容易に翻訳可能な利点を提供することができる。
【0127】
例7:操作された構成的EBV TK発現
腫瘍組織における、2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド(FIAU)の濃度に関して、ウイルスTK誘発により達成可能な特異性を評価するために、EBV−TKを発現するように前に操作されたヒト骨肉種細胞株を用いた(Moore, S.M., Cannon, J.S., Tanhehco, Y.C., Hamzeh, F.M. & Ambinder, R.F. Induction of Epstein-Barr virus kinases to sensitize tumor cells to nucleoside analogues. Antimicrob Agents Chemother 45, 2082-2091 (2001))。腫瘍細胞を、SCIDマウスの脇腹に皮下移植した。腫瘍が触診可能になった後に、[125I]FIAUを静脈内投与し、マウスを種々の時点で組織内分布試験のために犠牲にした(図17)。TK(+)腫瘍での放射活性の選択的濃縮は2時間後までに明らかとなり、腫瘍での放射活性レベルは96時間の最終時点まで一定を保ち、一方非標的組織でのレベルは低下した。より遅い時点まで行われた平行実験において、腫瘍の放射活性は2時間から4日後の最終時点まで安定であった。腫瘍の筋肉に対する比率は、注入2時間後の4.6から、注入24時間後の205でピークとなり、注入96時間後に114まで低下した。
【0128】
腫瘍細胞における放射性同位体のEBV−TK媒介性の濃縮が、治療効果を達成するのに適当であるかどうかを決定するために、腫瘍を有するマウスを、[131I]FIAUまたは緩衝食塩水で処置した(図18A〜18C)。緩衝食塩水注入マウスの対照およびTK腫瘍、および[131I]FIAU注入マウスの対照腫瘍は、類似の増殖曲線を示し、重要なことは、これらの増殖曲線の傾き(直線回帰により決定)の95%信頼区間は重なっていた。[131I]FIAU注入マウスのTK腫瘍の増殖の傾きは平らであり(すなわち、[131I]FIAUを有するTKの傾きの信頼区間は特に、ゼロの傾きの推定を含み、他の増殖曲線の信頼区間と重ならない)、増殖速度がこの処置により、劇的に遅延されたことを示す。別の実験において、[131I]FIAUの用量の増加は、腫瘍増殖に対する効果の増加と関連した(図18B)。TKおよび対照腫瘍細胞の混合物を移植して、キメラ腫瘍を発生させた場合、混合物でのTK発現腫瘍細胞のパーセンエージの増加はまた、腫瘍増殖に対する効果の増加に関連した(図18C)。
【0129】
例8:EBV−バーキットリンパ腫に対するボルテゾミブ誘発性酵素標的化放射線療法
上述のように、プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブは、in vitroにおけるバーキットリンパ腫細胞系、およびマウス異種移植モデルの細胞株において、溶解EBV感染の強力な誘発因子として同定された。自然感染した腫瘍組織において薬理学的誘発により達成可能な特異性を評価するために、EBV(+)バーキットリンパ腫細胞を、SCIDマウスの脇腹に皮下移植した。腫瘍が触診可能になった後に、ボルテゾミブ投与の24時間後に[125I]FIAUを静脈内投与し、マウスを組織内分布試験のために犠牲にした。組織1グラム当たりで測定された、放射活性の選択的濃縮は、これらの腫瘍において明らかであった(表1)。
【0130】
【表2】

【0131】
したがって、治療同位体の評価を行った。上述のように、EBVバーキットリンパ腫異種移植片を移植したSCIDマウスは、緩衝液またはボルテゾミブを、そしてこれに続いて次の日に[131I]FIAUの処置または無処置を受けた。図19Aに見られるように、緩衝液に続いて[131I]FIAUを注射したマウスの腫瘍増殖曲線は、緩衝液のみを注射したマウスの腫瘍増殖曲線と同様であった。ボルテゾミブに[131I]FIAUなしの場合は、腫瘍増殖を遅延させた。ボルテゾミブに続いて[131I]FIAUの場合は、腫瘍増殖を停止させた(95%信頼区間は0に重なったが、緩衝液のみまたは緩衝液と[131I]FIAUに関連する増殖曲線の傾きの95%信頼区間とは重ならなかった)。第2EBV(+)バーキットリンパ腫細胞株(Akata)での実験においては、平行した結果が得られた。したがって、ボルテゾミブは、治療効果を有して[131I]FIAUの標的化を可能とした。他のプロテアソーム阻害剤も活性のようである。いくつかは臨床試験中である。
【0132】
例9:EBV胃癌に対するボルテゾミブ誘発性酵素標的化放射線療法
EBVはアフリカ人のバーキットリンパ腫において発見され、多くのAIDS関連リンパ腫およびホジキンリンパ腫に関連しているが、数値的に最も重要な関連は上皮癌とのものである。EBVは実質的に全ての上咽頭癌(〜80,000の新例/年)および胃癌の約10%(〜93,000の新例/年)に関連する。ボルテゾミブ誘発戦略が、上皮悪性疾患にも適用可能であるかどうかを決定するために、ボルテゾミブ誘発性FIAU標的化を、移植可能なヒトEBV関連胃癌(KT)異種移植モデル(Chong, J.M., et al. Interleukin-1beta expression in human gastric carcinoma with Epstein-Barr virus infection. J Virol 76, 6825-6831 (2002))において検討した。KT腫瘍の移植に続いて、SCIDマウスを、ボルテゾミブ、次に[125I]FIAUで誘発し、腫瘍を単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)で画像化した(図20A)。組織分布試験により、腫瘍組織において[125I]FIAUの選択的濃縮が示されたが、腫瘍組織の他の組織に対する比率は、バーキット系でのように顕著ではなかった(表1)。誘発に続いて[131I]FIAUを用いると、腫瘍増殖速度は低下した(図19B)。
【0133】
例10:KSHV悪性疾患におけるボルテゾミブ誘発性酵素標的化放射線療法
EBV関連腫瘍において観察されたアプローチは、KSHVを有する2種の原発性浸出リンパ腫(PEL)細胞株において示されるように、他のKSHV関連腫瘍にも適用可能である。SCID異種移植モデルにおいて、ボルテゾミブは、BCBL1およびBC3の[125I]FIAUによる画像化を可能とした(図20B)。ボルテゾミブ後の組織分布試験は、腫瘍組織での選択的濃縮を示した(表1)。最後に、ボルテゾミブによる誘発後に[131I]FIAUの処置を行うと、腫瘍は退縮した(図19C)。
HSV1−TKは、癌に対する遺伝子療法アプローチにおいてツールとして用いられてきた。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、その他による腫瘍細胞への導入は全て、臨床試験および動物モデルにおいて研究されている。同様に、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と、続くKSHVによる処置によるEBV−TKの誘発は、幾人かの患者において寛解をもたらしたことが報告された。本明細書に報告される結果は、新しいアプローチである、ボルテゾミブ誘発性の放射性核種の酵素標的化(BETR)療法を提供する。BETR療法は、ヒト腫瘍のマウス異種移植片における、リンパ性および上皮性悪性疾患の退縮を誘発するのにより効果的であることが示された。
【0134】
患者におけるリンパ種に対する131I標識抗体を用いた結果は、臨床反応が、腫瘍に対して0.5〜2Gyで達成可能であることを実証する。図17に示す生体内分布データは、腫瘍および生体器官に投与された活性当たりの吸収された線量の推定値を可能とし、腎臓および赤色骨髄が、[131I]FIAUに対する線量制限器官であることを示唆する。オンラインの補足に詳述されているように、体重70kgの患者の腫瘍1g当たり限界器官線量で0.5〜2Gyの送達は、大幅に毒性より下である。
【0135】
BETR療法の可能性のある臨床的使用について、FIAU関連毒性は議論を必要とする。FIAUは以前に抗ウイルス剤として検討された。FIAUの慢性の投与には肝障害が付随し、いくつかの例においては致死的であり、これは明らかにミトコンドリア障害による。これらの試験において、4週間より短く、累積用量が200mg未満の処置は、臨床的または生化学的な毒性の証拠と関連しなかった。したがって、FIAUの「無効用量(no-effect dose)」は、投与当たり0.1mg/kgの桁であることが控えめに推定される。[124I]FIAUは、肝機能への副作用なしに、患者に対して画像化のために投与されている(Diaz et al., PLoS ONE 2, e1007 (2007))。異種移植実験から外挿すると、放射線療法効果も、ヒトにおける無効FIAU用量より何桁か低い程度におけるFIAUの用量において、達成されるであろう。
【0136】
上に報告した結果は、ボルテゾミブ処置がリンパ腫および癌腫異種移植モデルにおいてFIAUの濃縮をもたらし、試験した腫瘍それぞれの腫瘍増殖曲線に影響することを示す(図19)。リンパ腫モデルにおいて増殖は停止し、胃癌モデルにおいて増殖は遅延した。ルーチンの方法を用いた、胃癌におけるボルテゾミブの投薬および[131I]FIAU投与の最適化は、リンパ腫で観察されたのと同様レベルの有効性を達成するであろう。
【0137】
FIAUは安全に対する関心の傾向が薄く、これは他の放射性医薬品に影響し、その理由は、FIAUの生体内変化が、アラビノシル(「アップ」)構造における2’−フルオロ置換基を含有するピリミジンヌクレオシドにおけるN−グリコシルリンケージの、高い化学的および代謝安定性によって制限されているためである(Jacobs et al., J Nucl Med 42, 467-475 (2001))。24時間にわたる血清および全血の検査により、その良好な安定性と脱イオン化への低い感度が示され、標識化合物の97.8%±0.1%が変化なく維持された。FIAUはまた、血漿からより迅速に排出される。脱イオン化の低いレベルおよび、より迅速なクリアランスを考えると、健康な組織への副作用は最小であることが期待される。さらに、放射の潜在的な副作用も、放射が、胃癌、上咽頭癌、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含む多くのEBV関連腫瘍の処置の中心であることを理解する文脈において、評価すべきである。腫瘍組織に特異的な放射の代謝性標的化では、正常組織の暴露に関連する副作用を最小化すべきである。
【0138】
BETR療法は、他の溶解誘発性自己不活化(lytic induction-suicide)プロドラッグアプローチに対して利点を提供する。全ての溶解誘発性アプローチは、ガンマヘルペスウイルスの潜伏傾向のために制限される。ガンシクロビルまたは類似の剤が細胞死滅を媒介する場合、治療効果には、腫瘍細胞の大部分がウイルス酵素を発現することが必要となることが多い。細胞間でのギャップ結合を介してのリン酸化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体の交換による、バイスタンダー(第三者)死滅現象が認識されてはいるが、かかる死滅は限定されている。遺伝子療法の設定においては、遺伝子療法ベクターでのコネクシンタンパク質の発現の増加を操作して、かかる死滅を増加させる試みが行われている。しかし、バイスタンダー死滅を増加させるこのアプローチは、遺伝子療法が関与しないアプローチにおいては容易に適用できない。事実、腫瘍を処置するために用いるいくつかの治療剤は、かかるバイスタンダー死滅を妨害する。[131I]FIAUバイスタンダー死滅は、コネクシン発現またはギャップ結合により制限されず、しかし、β放射の関数であって、最大エネルギーは0.61MeVであり、これはエネルギーの90%を、半径0.7mmの球内に蓄積する。この「十字火」効果は、リンパ腫における放射免疫療法の有効性に重要な寄与をなす可能性がある。[131I]FIAUでの「十字火」は図19Cから見ることができ、ここで、腫瘍細胞の10%がEBV−TK細胞を含む場合でも、腫瘍増殖速度は大幅に遅延した。細胞レベル線量計測モデルを図24に示す。
【0139】
溶解誘発性自己不活性化プロドラッグアプローチの第2の制限は、ガンシクロビル媒介性の死滅が、細胞サイクルに依存性であることである。いくつかの研究者グループによる報告によれば、EBVおよびKSHV感染細胞における溶解感染の活性化は、細胞サイクルの停止を導き、したがって、細胞サイクル依存性の腫瘍死滅を危うくする可能性がある。対照的に、放射の効果は、溶解誘発により同様に低減はされない。
【0140】
BETR療法はまた、放射免疫療法アプローチに対しても利点を提供する。放射免疫複合体の内部化は、遊離の同位体の分解および放出と、その結果として特異性の損失とを導き得る。対照的にFIAUの注射後、同位体は安定してEBV−TK発現腫瘍と共にある(図17a)。酵素性のリン酸化およびDNAへの取り込みは(HSV1−TK発現細胞において報告されたように)、濃度勾配に制限されることなく、腫瘍組織で高濃度を達成する可能性を提供する。最後に、FIAUおよびボルテゾミブの両方は小分子であり、したがって抗体複合体と比べて、より良好な腫瘍への透過が予想される。FIAUは血液脳関門を通過しないが、脳腫瘍へは到達し、血液脳関門の破壊を反映する。より広く、小分子を用いて組織または腫瘍特異的代謝経路を活性化することは、放射の代謝性標的化が、甲状腺癌を超えた用途を有する可能性を示唆する。
【0141】
例11:KSHV腫瘍の処置
図22〜24は、KSHV腫瘍のボルテゾミブおよび[131I]FIAUによる処置を示す。
例12:マウスの生体内分布データのヒトへの拡大、およびOLINDAソフトウェアを用いたMIRD線量測定計算
マウスの生体内分布データを、マウスにおける器官または腫瘍の全身に対する濃度比率が、ヒトにおけるそれらと等しいとの仮定のもとに、線量測定のために対応するヒトデータへ変換した。重要な正常器官についての吸収線量の推定値を表3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
1.95%ID/gという、マウス腫瘍における初期(すなわち2時間)活性濃度は、ヒトにおいて1gmの腫瘍を仮定すると、7×10−4%ID/gとなる。この濃度で、また生体内分布データに見られるように131Iの無視できる生物学的クリアランスを仮定すると、70kgのヒトでの1gmの腫瘍に投与された活性当たりの吸収線量は、0.1mGy/MBq(0.38rad/mCi)である。患者におけるリンパ腫に対する131I標識抗体での経験から、反応は、腫瘍に対して0.5〜2Gyで達成可能である。この線量範囲を送達するのに必要な5〜20GBq(135〜540mCi)は、表に示した、正常器官が吸収する線量の推定値を仮定すると、正常な器官の許容範囲内である。20GBqの全投与活性は、腎臓および骨髄へはそれぞれ0.2および0.02Gyをもたらす。外部のビームおよび放射性ペプチドの経験に基づき、腎臓は毒性発症の前に、25〜27Gyを耐容できる;赤色骨髄の最大耐容線量は2Gyである。540mCiの線量の投与は、運搬上の問題を生じる可能性があるが、しかしこれは、投与を3〜4回の注射に分割することにより対応可能である。
【0144】
例13:細胞レベルの線量測定分析
モンテカルロシミュレーションパッケージGEANT4を用いて、球状細胞の球状腫瘍モデルを、種々の大きさ(1辺当たり〜10個の細胞、〜20個の細胞、〜50個の細胞、〜150個の細胞、)の六方格子(立方格子に対して74%占有容積対52%)に構築した(直径15μm)。131Iを、3つの異なるパターンに従ってランダムに崩壊させた:
−全細胞が131Iを含有
−50%の細胞が131Iを含有
−10%の細胞が131Iを含有。
各細胞に蓄積されたエネルギーを収集し、各細胞への線量を(通常)1000万回のモンテカルロ履歴後に計算した。細胞クラスター内の活性分布を図24に示す。
【0145】
TKを発現する細胞のパーセンテージに関わらず、腫瘍細胞クラスターへの平均の吸収線量は250万回の崩壊当たり約4.3〜4.4Gyである。細胞当たりの線量はTK発現細胞の低いパーセンテージにおいてわずかに増加し、これは、全活性が少数の(ランダムに選択された)細胞に配分されるからである。細胞当たりの平均線量は、断片取り込み活性からは独立しており、これは、腫瘍細胞サイズに対して131Iβ粒子放出の範囲が長いためである。
【0146】
TK発現細胞の異なるパーセンテージの、腫瘍内の吸収線量プロファイルへの影響を、下の図に示す。TK発現細胞のパーセンテージに関わらず、腫瘍細胞クラスターへの平均吸収線量は、250万回の崩壊当たり約4.3〜4.4Gyである。細胞当たりの線量はTK発現細胞の低いパーセンテージにおいて、わずかに増加し、これは、全活性が少数の(ランダムに選択された)細胞に配分されるからである。細胞当たりの平均線量は、断片取り込み活性からは独立しており、これは、腫瘍細胞サイズに対してI−131β粒子放出の範囲が長いためである。
例1〜6に記載の実験は、次の方法および材料を用いて行った。
【0147】
細胞株およびプラスミド
2種のEBV(+)バーキットリンパ腫細胞株およびEBVを欠いた1つのサブクローン(Rael、AkataEBV(+)、AkataEBV(−))を試験した(Ambinder et al., Hematol Oncol Clin North Am 2003;17:697-702, v - vi; and Feng et al., J Virol 2004;78:1893-902)。腫瘍細胞株は、10%ウシ胎仔血清、100U/mlのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および100mMのL−グルタミンを有する1640RPMI(Life Technologies)に維持した。ヒト骨肉種細胞株(143B)を、前に記載のようにして()、EBV−TKを発現するプラスミドおよび対照ベクター(PCDNA3)で安定にトランスフェクトした。143B細胞株を、15ng/mLのブロモデオキシウリジン(BrdU、Sigma, St. Louis, MO)に通して、細胞TK(−)表現型を維持した。TK−143BおよびV143B細胞を、37℃および5%COにおいて、10%ウシ胎仔血清(Gemini BioProducts, Calabasas, CA)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン2mM、L−グルタミン400μg/mL、選択用のG418を補足したダルベッコ修飾基本培地(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)中に維持した。BX−1は、BXLF1 ORFが破壊された、GFPをコードする組換えEBV細胞株である。GFPはCMVプロモーターから転写された。Akata−BX1およびAGS−BX1細胞は、それぞれこの組換えEBVを含むAkata細胞およびAGS細胞である(Wang et al. J Virol 77, 9590-9612 (2003))。IκBαベースのNF−κBスーパーレプレッサー(sr)である、IκBα(sr)を、IκBキナーゼの標的であるセリン32および36を変異させるか、またはこれらの標的を含有するIκBのN末端部分を除去することにより、作製した。IκBα(sr)は、刺激誘発性のNF−κBの活性化を、そのリン酸化および続く分解を妨害することにより阻害する。DNA断片を発現ベクターpEVRFにクローニングした(Wang et al., (1999) Nat Med 5, 412-7; Fu et al., (2004) J Biol Chem 279, 12819-26)。
【0148】
化学物質
ボルテゾミブは、Millennium Predictive Medicine Inc.(Cambridge, MA)から提供された。5−アザ−2’−デオキシシチジン、酪酸ナトリウムおよびガンシクロビル(GCV)は、Sigma(St. Louis, MO)から購入した。[2−14C]2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド([14C]FIAU)、FIAUおよび2’−フルオロ−2’−デオキシ−ウラシル−β−D−アラビノフラノシド(FAU)は、Moravek Biochemicals (Brea, CA)から入手した。[125I]NaIは、MP Biomedicals (Costa Mesa, CA)から購入した。[125I]FIAUは、Jacobs et al., (2001) J Nucl Med 42の方法に従って合成した。簡潔に述べると、30μgのFAU(1.22mmol)を170μLの2MのHNOに溶解した。この溶液に、1〜5mCiの[125I]NaIを加え、内容物を130℃で45分間加熱した。反応物を次に、150μLの高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の移動相(20:79.9:0.1比率のMeCN:HO:トリメチルアミン)で急冷した。得られた[125I]FIAUを次に、逆相HPLCにてPhenomenex Luna C18 semi-prepカラム(Phenomenex, Torrance, CA)(10μm、4.6×250mm)を用いて、上述の均一溶媒移動相を流速2mL/分で用いて精製した。産物は減圧下で濃縮し、0.9%生理食塩水中に製剤化し、0.22μmシリンジフィルターを通して滅菌ろ過した。製剤は〜1mCi/mLに維持して、マウス尾静脈への注射容積を最小化した。最終の放射性化学物質の収率は〜50%であり、放射化学的純度は>99%であった。具体的な放射活性は常に≧2,000Ci/mmolであった。
【0149】
in vitro細胞内取り込み
in vitroでの[14C]FIAU取り込み試験のために、細胞を5×10細胞/mLで播種し、10nMのボルテゾミブと共に37℃で6〜12時間インキュベートした。これらを洗浄し、次に0.04μCi/mLの[14C]FIAUと共に、37℃で2、4、8、24、48、および72時間インキュベートした。細胞を遠心分離によりペレット化し、非標識FIAUで洗浄した。単離細胞およびプールされた培地および洗浄液の放射活性を、Beckman Coulter LS5000TAシンチレーションカウンター(Fullerton, CA)を用いたシンチレーション計数により、別々に計数した。全細胞タンパク質を、溶解緩衝液中(0.05Mのトリス、pH7.6、0.15MのNaCl、1%トリトン−X100、2mMのEDTA)でインキュベートすることにより抽出し、細胞片は遠心分離により除去した。上清を収集し、タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce, Rockford, IL)により製造業者の指示に従って決定した。細胞取り込みは、蓄積比、すなわち細胞1g当たり1分当たりのカウント数(cpm/g)を、培地のcpm/g(mL)で割ったものにより表わした。
【0150】
腫瘍の発生
5×10の細胞を、200μLのMatrigel Matrix (ED Biosciences, Bedford, MA)に再懸濁させ、6〜7週齢の重症複合免疫不全(SCID)マウスの肩近くに皮下注射した。続く試験は、腫瘍が直径約1cmになった時に実施した。
【0151】
免疫ブロット解析
EBV−TKまたはEBV−ZTAの発現を検出するために、全細胞タンパク質を最初に、プロテーアーゼ阻害剤を含有する溶解緩衝液(0.05Mのトリス、pH7.6、0.15MのNaCl、1%トリトン−X100、2mMのEDTA)で細胞を10分間4℃で処置することにより抽出した。次の試薬を、1mLの溶解緩衝液に10分間4℃にて加えた:2μLのロイペプチン(5mg/mL)、1μLの0.2MのNaVO、1μLのNaF、1μLのアプロチニン(10mg/ml)、1μLのペプスタチン(2mM)、および10μLのPMSF(100mM)。遠心分離後、上清を収集し、−80℃で保管した。タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce, Rockford, IL)により製造業者の指示に従って決定した。全細胞タンパク質の10μgのアリコートを、7.5%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分画した。タンパク質をPROTRANニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell, Keene, NH)に移した。膜は、PBS中のブロットグレードの5%脱脂粉乳(Bio-rad, Hercules, CA)で0.1%TWEEN−20(PBS−T)と共に4℃で一晩ブロックした。膜を次にPBS−Tで2回洗浄し、次いで、合成EBV−TKペプチド(GRHESGLDAGYLKSVNDAC)で免疫化したウサギからの1/1,000希釈のウサギ抗TK血清、または、抗ZTAモノクローナル抗体(Argene, North Massapequa, NY))と共に、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、膜を、PBS−T中に1/5,000希釈した、HRP複合ヤギ抗ウサギIgG抗体、またはHRP複合ヤギ抗マウスIgG抗体(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)と共に、室温で1時間インキュベートした。膜を2回洗浄し、タンパク質をECLウェスタンブロット検出試薬(Amersham Pharmacia Biotech)で検出した。膜はX−OMATフィルム(Kodak, Rochester, NY)に室温で暴露した。
【0152】
EBVコピー数のためのリアルタイムPCR
処置した細胞からのゲノムDNAを、QIAamp DNA mini kit (Qiagen, CA)を用いて、製造業者の指示に従って抽出した。PCRを、TaqManPCRコア試薬キット(Perkin-Elmer Corp., Branchburg, NJ)を用いて50μL容積にセットした。蛍光プローブは、Perkin-Elmer Applied Biosystemsで特注合成した。PCRプライマーはGibco BRL(Frederick, Md.)で合成した。各反応物は、5μLの10×緩衝液A(4mMMgCl)、増幅プライマー(300nM)、蛍光プローブ(25nM)、dATP、dCTP、およびdGTP(それぞれ200μM)、dUTP(400uM)、1.25UのAmpliTaq Gold、および0.5UのAmpEraseウラシルN−グリコシラーゼを含有した。抽出したゲノムDNAを増幅に用いた。DNA増幅は、96ウェル反応プレートでPerkin-Elmer Applied Biosystems 7700配列検出器にて行った。各試料はデュプリケートで分析し、多重陰性の水のブランクを、各分析に加えた。較正曲線は平行して、各分析についてデュプリケートで走らせ、EBV陽性細胞株ナマルバ(Namalwa)から抽出したDNAを標準とした。
【0153】
動物の準備
全ての作業は、Johns Hopkins Animal Care and Use Committeeの規則に従って実施した。雄の成体SCIDマウス(5〜6週齢)は、National Cancer Institute (Frederick, MD)から購入した。画像化の3日前に、全てのマウスに、0.9%NaI溶液1mLの腹腔内(i.p.)注射を3日間毎日与えて、遊離の放射性ヨウ素の甲状腺取り込みをブロックした。[125I]FIAU注射の24時間前に、ボルテゾミブにより溶解誘発を開始させた。各マウスには、2μg/gのボルテゾミブの用量をi.p.で注射した。ボルテゾミブは、PBS中に新鮮に作製し、各注射の直前に、0.2μmシリンジフィルター(Millipore, Billerica, MA)により滅菌ろ過した。対照マウスには、PBSのみをi.p.で注射した。放射性トレーサーの注射の日に、動物を25mg/mLのケタミンと2mg/mLのアセプロマジンの0.9%生理食塩水中の混合物2.3mL/kgによりi.p.注射で麻酔した。イソフルラン(0.5〜1L/分で0.5%〜1%)を投与して、麻酔を維持した。次に、線量キャリブレータ(CRC-15R, Capintec, Ramsey, NJ)を用いて測定した4.44MBq(1.2mCi)の[125I]FIAUを、各マウスの尾静脈に注射した。
【0154】
ex vivoでの生体内分布
ボルテゾミブによる処置の後、PBS中の0.074MBq(2μCi)の[125I]FIAUを尾静脈を介して注射した。4匹のマウスを各指示時点において頚椎脱臼により犠牲にした。腫瘍、肝臓、脾臓、腎臓、脂肪、血液および筋肉を取り出して計量し、その後組織の放射活性を自動ガンマカウンターを用いて測定した。0.1mLの血液試料も収集した。組織1グラム当たりの注射線量(%ID/g)を、初期線量の標準希釈試料との比較により計算した。標準偏差(SD)も計算した。
【0155】
平面ガンマ画像化およびSPECT−CT
画像化を、ex vivo生体内分布試験に付随して行った。定量的データは、SPECT−CTを用いた場合を除いて、画像からは取得しなかった(次を参照)。X−SPECT(Gamma Medica Instruments, Northridge, CA)は、20.5cm×15cm×9cmの寸法のガンマ線検出器ヘッド、および120mm×125mmの視野(FOV)を有する。本研究で用いた高解像度平行コリメータは、次の仕様である:穴の直径1.22mm、隔壁厚さ0.20mm、穴の長さ25.4mm。検出器の材料またはシンチレーター結晶は、NaI[TI]からなり、これは2mm×2mm×6mmのピクセルサイズを有する。マウスを平行コリメータ上に腹臥位で配置し、イソフルランによる麻酔下に維持し、イソフルランは精密噴霧器(VetEquip, Pleasanton, CA)を用いて送達した。X−SPECTと共に提供されたLumaGEM(登録商標)ソフトウェアの静的取得プロトコルを用いた。各マウスについて、10分間の高解像度走査を得た。SPECT−CTは、上記のガンマ線検出器とCT検出器を順番に用いて、マウスをガントリーから動かすことなく実施した。
【0156】
画像化データの解析
画像は、ImageJ 1.30v((http://rsb.info.nih.gov/ij, National Institutes of Health, Bethesda, MD)またはAMIDE(A Medical Image Data Examiner)を用いて、SPECT−CTに対してはSource Forge(http://amide.sourceforge.net)から提供されているフリーソフトウェアを用いて解析した。
【0157】
細胞株
Akata−BX−1細胞は、組換えGFPEBVを有するAkataEBV(−)細胞に由来する。AGS−BX−1細胞は、組換えGFP−EBVを有するAGS細胞である(Haubner, R., Avril, N., Hantzopoulos, P.A., Gansbacher, B. & Schwaiger, M. In vivo imaging of herpes simplex virus type 1 thymidine kinase gene expression: early kinetics of radiolabelled FIAU. Eur J Nucl Med 27, 283-291 (2000))。GFPはCMV前初期プロモーターから転写する。CMVプロモーターの非特異的活性化を制御するために、CMVプロモーター駆動GFPとPegfp Niプラスミド(CLONTECH)を有する安定なHela細胞株を用いた。細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)および0.8mg/mlのG418を補足したRPMI 1640培地(Akata)、DMEM(Hela)またはハムのF−12培地(AGS−BX1)中で増殖させた。プラスミドHC131は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に結合したBZLF1 IEプロモーター配列(mRNA開始部位に対して−578−+13)を含む。HC131プラスミドを含む安定な細胞株は、HC131およびpBabe−puroのAGS細胞への共トランスフェクションにより確立し、1μg/mlプロマイシンにより選択した。ルシフェラーゼの適当な基底レベルを安定に発現するAGS細胞のクローンを、薬物スクリーンに用いた。AGSHC131は、10%FBSおよび1ug/mlのプロマイシンを含むハムF−12中で増殖させた。LCL、RajiおよびSNU−719は、10%FBSを含むRPMI1640培地中で増殖させた。全ての細胞は、37℃で5%COおよび100%の湿度にて増殖させた。
【0158】
化学物質およびライブラリ
ジョーンズホプキンス臨床化合物ライブラリ(JHCCL)は、2720種の化合物から構成される。全ての臨床化合物はDMSOまたはPBSに溶解され、200μMにおいて96ウェルプレートにフォーマットされていた。各プレートは、80の薬物ウェルおよび16のブランク対照ウェル(各側に1カラム)を含んでいた。抗IgGは、ABIから得た。トラニラスト、メベンダゾール、インドプロフェン、Ara−c、酪酸塩、バルプロエート、レフルノミドおよびTPAは、Sigma (St. Louis, MO)から得た。ボルテゾミブはMillennium Predictive Medicine Inc. (Cambridge, MA)から得た。プルバラノールAはCalbiochemから得た。
溶解誘発試験のために、細胞は10/mlで播種し、試験化合物で48時間処置した。対照の処置なし細胞は平行してインキュベートした。
【0159】
GFP−マイクロプレート読み取り
GFP蛍光走査については、AKATA−BX−1細胞のアリコートを、通常の96ウェルプレート(Costar3595)に1ウェル当たり2×10細胞/200μlで入れた。次に各セルに対して、試験する薬物(10μl、200μM)を薬物プレートから細胞プレートへと移して混合し、濃度10μMとした。試験薬物に加えて、プレートには細胞なしまたは薬物なしの培地のウェル、および細胞は有するが薬物なしのウェルも含めた。抗IgGを陽性対照として4つのウェルに加えた。プレートは30日後まで維持した。読み取りは隔日で行った。プレートは蛍光マイクロプレート蛍光光度計(Packard Bioscience Company, Wellesley, MA)で走査した。GFPの励起は485nmで行い、一方、発光は530nmで測定した。読み取りはスプレッドシート解析用にExcelに変換した。最初の読み取りは、ライブラリ薬物添加の30分後に行って、自己蛍光を有する薬物を消去した。3日目に、陽性対照はGFPシグナルの増加を示し、陽性対照の読み取りの2/3を超える読み取りをヒットとした。
【0160】
フシフェラーゼレポーターアッセイ
ルシフェラーゼアッセイに対して、AGS−HC131細胞を、4×10/200μlの濃度で96ウェルプレートに一晩前に播種した。各ウェルに対して、10μlの200μMの薬物を、薬物プレートから細胞プレートへと移して混合した。酪酸塩を各プレートの1つのブランクカラムに陽性対照として加えた。次にプレートを、ルシフェラーゼアッセイ前の48時間、インキュベートした。ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ試薬はPromegaから入手し、アッセイは製造業者の指示に従って行った。
【0161】
ウェスタンブロット解析
細胞はPBSで2回洗浄した。全細胞タンパク質を溶解緩衝液で抽出した。タンパク質をポリアクリルアミド中で電気泳動にかけ、次にPROTRANニトロセルロース膜(Schleicher&Schuell, Keene, NH)に移した。ブロットを一次抗体(Ab)で一晩4℃にてプローブした。HRP複合二次Abを洗浄後に加え、強調化学発光システム(ECL)(Amersham)で検出した。次の抗体を用いた:抗ZTA(Argene)、抗f3アクチン(Sigma)、抗マウス(Sigma)。
【0162】
IFA
LCL細胞は、1μMのAra−cで48時間処置した。細胞を次にPBSで洗浄し、再懸濁させ、ポリリジンガラススライド上にプレートした。間接免疫蛍光アッセイおよび蛍光顕微鏡法を実施した。スライドをメタノール中に−20℃で固定し、PBSで洗浄し、次に一次抗体抗ZTA(1:200)(Argen)でインキュベートし、PBSで洗浄し、次にロバローダミン複合IgG(Jackson Pharmaceuticals, west Grove, Pa)の二次抗体インキュベーションを行った。4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)(Vector Shield)を有する封入溶液を用いて、細胞の核をマークした。次にスライドを観察して、40×対物レンズでCCDカメラ(Princeton Instruments)を備えたE800顕微鏡(NIKON)により、Metamorphソフトウェア(Universial Imaging-Molecular Devices)を用いて写真撮影した。
【0163】
定量的PCR
EBVゲノムをICyclerシステム(Biorad, Hercules, CA)を有するリアルタイムPCRにより定量化した。テンプレートDNAをmini blood DNA Kit(Qiagen,Valencia, CA)で抽出した。BamHI−Wプライマーは、BamH5'(5'- CCCAACACTCCACCACACC-3 ')およびBamH3'(5 '-TCTTAGGAGCTGTCCGAGGG3')および蛍光プローブ(5'-(FAM)CACACA CTACACACACCCACCCGTCTC3')であった。較正曲線は、各解析について、細胞当たり2つの組込みウイルスゲノムを含む2倍体EBV陽性細胞株ナマルバから抽出したDNAを標準として用いて、平行してデュプリケートで走らせた。増幅データはMyiQ単色リアルタイムPCR検出器(Biorad)により収集し、Bioradが開発したMyiQソフトウェアにより解析した。
例7〜10に報告の結果は、次の方法および材料を用いて行った。
【0164】
細胞株およびプラスミド
リンパ腫細胞株を、10%ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および100mmol/LのL−グルタミンを含むRPMI1640(Life Technologies, Gaithersburg, MD)中の懸濁培養物中に維持した(上述の通り)。TK−143BおよびV143B細胞は、前に記載のように(Moore et al., Antimicrob Agents Chemother 45, 2082-2091 (2001))、EBV−TKを発現するプラスミドまたは対照ベクター(PCDNA3)のどちらかを担持する、ヒト骨肉種(143B)細胞株由来の安定にトランスフェクトされた株である。これらを、10%ウシ胎仔血清(Gemini BioProducts, Calabasas, CA)、100単位/mLのペニシリン、100Ag/mLのストレプトマイシン、2mmol/LのL−グルタミン、および選択用の400Ag/mLのG418を補足した、DMEM(Life Technologies)中に維持した。KT移植可能EBV(+)胃腺癌をSCIDマウスに継代した(Chong et al., J Virol 76, 6825-6831 (2002))。
【0165】
化学物質
ボルテゾミブを静脈内に1.67μg/グラムで投与した。FIAU、および2’−フルオロ−2’−デオキシ−ウラシル−β−D−アラビノフラノシドは、Moravek Biochemicals (Brea, CA)から入手した。[125I]および[131I]NaIは、MP Biomedicals (Costa Mesa, CA)から購入した。[125I]FIAUおよび[131I]FIAUは、上に記載のようにして合成した。画像化または処置のために、FIAUをボルテゾミブの24時間後に投与した。記載の各実験において、ボルテゾミブは単一用量として投与した。
【0166】
腫瘍発生
培養細胞株をマイコプラズマについて試験し、陰性であることを見出した。細胞(5×10)を、200μLのMatrigel Matrix(BD Biosciences, Bedford, MA)中に再懸濁させ、6〜7週齢の雄の重症複合免疫不全マウスにSC注射した。最長の垂直方向腫瘍直径のキャリパーによる測定を隔日で行った。腫瘍容積を3次元楕円に関する式に従って推定した:4π/3×(幅/2)×(長さ/2)(LeBlanc et al., Cancer Res 62, 4996-5000 (2002))。処置および画像化試験は、腫瘍が直径〜1cmのサイズに達した時に行った。
【0167】
ex vivo生体内分布
上に記載したように、PBS中の[125I]FIAUを尾静脈に注射し、3〜4匹のマウスを各指示された時点で犠牲にし、器官を取り出して計量し、組織の放射活性を自動ガンマカウンターで測定した。組織1グラム当たりの注射線量のパーセント(%ID/g)を、初期線量の標準希釈試料との比較により計算した。
【0168】
平面ガンマ画像化、SPECT−コンピュータ断層撮影および画像解析
本明細書に既に記載のように、画像化を、ex vivo生体内分布試験に付随して行った。X−SPECT(Gamma Medica Instruments, Northridge, CA)は、20.5×15×9cmの寸法のガンマ線検出器ヘッド、および120mm×125mmの視野を有する。本研究で用いた高解像度平行コリメータは、次の仕様である:穴の直径1.22mm、隔壁厚さ0.20mmの、穴の長さ25.4mm。検出器の材料はNaI[TI]からなり、これはピクセルサイズ2×2×6mmを有する。マウスを平行コリメータ上に腹臥位で配置し、イソフルランによる麻酔下に維持した。各マウスについて、10分間の高解像度走査を得た。SPECT−CTを、上記のガンマ線検出器とCT検出器を順番に用いて、マウスをガントリーから動かすことなく実施した。画像データの解析は、ImageJ v1.30(NIH, Bethesda, MD)またはAMIDE(A Medical Image Data Examiner)により、SPECT−CTについては(SourceForgeから提供されているフリーソフトウェア)を用いて行った。
生物統計。直線回帰および曲線適合は、ウィンドウズ(登録商標)のGraphPad Prism software version 5.00, GraphPad Software, San Diego California USA, www.graphpad.comを用いて行った。
【0169】
その他の態様
前述の説明から、本明細書に記載の発明に対し変更および改変を行い、これを種々の用途および条件に適合させられることが明らかである。かかる態様もまた、以下のクレームの範囲内である。
本明細書の変数の任意の定義における要素のリストの記述は、その変数の、リストに挙げられた要素の任意の単一要素としての、またはその組合せ(または副組合せ(subcombination))としての定義も含む。本明細書の態様の記述は、その態様の、単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはその一部との組合せとしての態様を含む。
本明細書で言及された全ての特許および刊行物は、各独立した特許および刊行物が具体的および個別に参照として組み込まれると指示されるのと同様に、同一の程度において、本明細書に参照として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスで自然感染した新生物の処置用に標識された医薬組成物であって、前記組成物はウイルス溶解誘発剤の有効量を含み、ここで前記剤は、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤からなる群から選択される、前記組成物。
【請求項2】
ウイルスに関連する新生物の処置のための医薬組成物であって、前記組成物は、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンからなる群から選択される剤の有効量を含む、前記組成物。
【請求項3】
組成物が、2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド(FIAU)の放射標識類似体をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
有効量が、対象においてウイルス遺伝子発現またはウイルス複製を誘発するのに十分である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
有効量が細胞障害性ではない、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
新生物が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスに自然感染している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
新生物が、リンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
自然発生の感染症に関連する新生物の診断用の医薬組成物であって、前記組成物は、2’−フルオロ−2’−デオキシ−β−D−5−ヨードウラシル−アラビノフラノシド(FIAU)の放射標識類似体の有効量を含む、前記組成物。
【請求項10】
感染症が、ウイルス感染症または細菌感染症である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
組成物が、該組成物を請求項1〜6にいずれかに記載のウイルス溶解誘発剤と共に用いるための指示書を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
放射標識が、SPECTまたはPETを用いて視覚化される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
類似体が、ヨウ素−123I、124I、または125Iである放射性核種を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
感染症に関連する新生物の処置のための医薬組成物であって、前記組成物は、2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を含む、前記組成物。
【請求項15】
放射性核種が、α、β、またはγ線放射体である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
放射性核種が、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、および133Iからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
放射性核種が、少なくとも約0.5〜2Gyを放射する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
FIAUの有効量が、約0.001〜0.1mg/kgである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
FIAUの有効量が、約0.01〜0.1mg/kgである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
新生物が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスに自然感染している、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
新生物が、リンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
組成物が、該組成物を請求項1〜6にいずれかに記載のウイルス溶解誘発剤と共に用いるための指示書を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項23】
ウイルス溶解誘発剤を同定するための方法であって、前記方法は、潜伏性ウイルス感染症を有する新生細胞を剤と接触させること、および前記細胞におけるウイルス溶解ポリペプチドの発現もしくは活性またはウイルス複製の増加を検出することを含む、前記方法。
【請求項24】
方法が、ZTA発現、RTA発現、ウイルスチミジンキナーゼ発現または活性、およびウイルス複製の1つまたは2つ以上における増加を同定する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ウイルス溶解ポリペプチドの発現または活性を、レポーターポリペプチドの発現の増加を検出することにより分析する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
レポーターが、BZLFIEプロモーター配列またはZtaプロモーター配列の制御下にある、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
レポーターが、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
方法が、ウイルス複製の増加を検出することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
レポーターが、マイクロプレートリーダーにより検出される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
マイクロプレートリーダーが、相対蛍光単位(RFU)の増加を検出し、これが剤を溶解誘発剤として同定する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
剤が、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
対象における感染関連新生物を検出するための方法であって、前記方法は、該対象に対し、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与すること、および新生物を視覚化することを含む、前記方法。
【請求項33】
放射標識類似体を、SPECTまたはPETにより視覚化する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
類似体が、ヨウ素−123I、124I、または125Iである放射性核種で標識されている、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
感染症が、ウイルス感染症または細菌感染症である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
新生物が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスに自然感染している、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
新生物が、リンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
感染関連新生物を有する対象への治療を選択するための方法であって、前記方法は、該対象に対し、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与すること;および
該対象において、溶解誘発の有無を検出することを含み、ここで溶解誘発の増加により、対象が溶解誘発剤による処置および酵素標的化放射線療法を適用可能であるとして同定される、前記方法。
【請求項39】
対象における感染関連新生物を処置または予防する方法であって、前記方法は、該対象に対し、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
感染症が、ウイルス感染症または細菌感染症である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ウイルスまたは細菌に感染した新生細胞を死滅させるための方法であって、前記方法は、該細胞を、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量と接触させることを含む、前記方法。
【請求項42】
溶解誘発剤が、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤からなる群から選択される、請求項38〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
溶解誘発剤が、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンからなる群から選択される、請求項38〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
放射標識が、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、および133Iからなる群から選択される、請求項38〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
新生物が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスに自然感染している、請求項38〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
新生物が、リンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である、請求項38〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
対象における感染関連新生物を診断またはモニタリングするためのキットであって、前記キットは、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量、およびこのキットを新生物の診断に用いるための指示書を含む、前記キット。
【請求項48】
感染症が、ウイルス感染症または細菌感染症である、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
新生物が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスに自然感染している、請求項47に記載のキット。
【請求項50】
新生物が、リンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である、請求項47に記載のキット。
【請求項51】
放射標識類似体を、SPECTまたはPETにより視覚化する、請求項47に記載のキット。
【請求項52】
類似体が、ヨウ素−123I、124I、または125Iである放射性核種で標識されている、請求項47に記載のキット。
【請求項53】
溶解誘発剤が、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤からなる群から選択される、請求項47に記載のキット。
【請求項54】
溶解誘発剤が、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンからなる群から選択される、請求項47に記載のキット。
【請求項55】
対象におけるウイルス関連新生物を処置するためのキットであって、前記キットは、ウイルス溶解誘発剤および2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量、およびこのキットを新生物の診断に用いるための指示書を含む、前記キット。
【請求項56】
溶解誘発剤が、プロテアソーム阻害剤、微小管破壊剤、グルココルチコイドまたはステロイドホルモン、ヌクレオシド類似体、および抗炎症剤からなる群から選択される、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
溶解誘発剤が、ボルテゾミブ、トラニラスト、レフルノミド、メベンダゾール、シタラビンおよびインドプロフェンからなる群から選択される、請求項55に記載のキット。
【請求項58】
新生物が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)またはカポジ肉腫ヘルペスウイルスに自然感染している、請求項55に記載のキット。
【請求項59】
新生物が、リンパ腫、胃癌、カポジ肉腫、または上咽頭癌である、請求項55に記載のキット。
【請求項60】
細菌を死滅させるための方法であって、該細菌を2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体と接触させることを含む、前記方法。
【請求項61】
放射標識が、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、および133Iからなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
対象における細菌感染症を処置するための方法であって、前記方法は、該対象に対して、2’−デオキシ−5−ヨード−I−β−D−アラビノフラノシルウラシル(FIAU)の放射標識類似体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
放射標識が、90Y、186Re、188Re、64Cu、67Cu、212Pb、212Bi、123I、211At、213Bi、および133Iからなる群から選択される、請求項62に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A−11C】
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【図11D−11E】
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【図12A−12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B−13D】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A−18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B−19C】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【公表番号】特表2010−524856(P2010−524856A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503087(P2010−503087)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/004811
【国際公開番号】WO2008/124197
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(398076227)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー (35)
【Fターム(参考)】