説明

ウインドウォッシャ装置

【課題】バッテリの負荷を増加させることなくウォッシャ液の解凍を行ない、乗員の確実な視界確保を可能とする。
【解決手段】ウインドウォッシャ装置32には、ウォッシャ液タンク34内及びウォッシャパイプ38内のウォッシャ液を加熱する熱線56が設けられており、この熱線には、オルタネータ44の発電電力がリレースイッチ58を介して供給される。コントローラ50は、液温センサ54によって検出するウォッシャ液の液温から、ウォッシャ液が凍結していると判断されると、エンジン12の暖機運転中か否かを確認し、暖機運転中であるときには、熱線へ通電してウォッシャ液の加熱を行う。これにより、エンジン12が暖機運転中にアイドルアップされることによる回転力の上昇分を電力に変換して、ウォッシャ液の加熱に用い、バッテリ46の負荷を増加させることなく、ウォッシャ液の解凍を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドガラスへ向けてウォッシャ液を噴出して、ウインドガラスの洗浄を行うウインドウォッシャ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地などにおいては、車両のフロントウインドガラスに降雪による蓄雪、外気温が低下することによる着霜が生じる。このために、車両の走行開始に先立ってフロントウインドガラスから蓄雪、着霜の除去を行う必要がある。
【0003】
一般に、少量の蓄雪や着霜であれば、ウインドウォッシャ装置によってフロントウインドガラスにウォッシャ液を吹付けながら、ワイパ装置を作動させてワイパブレードによって払拭するようにしているが、ウォッシャ液の液温が低いと払拭に時間を要する。
【0004】
ここから、特許文献1では、エンジンの排気熱を利用してウォッシャ液を昇温させることにより、蓄雪、着霜の除去効率の向上を図るように提案している。また、特許文献2では、ウォッシャ液タンク内にヒータを設けて、ウォッシャ液を加熱/保温しておくことにより、フロントウインドガラスの蓄雪や着霜の除去が容易となるように提案している。
【0005】
さらに、特許文献3では、ウォッシャ液タンクとウォッシャノズルの間のウォッシャ液の管路の一部に金属管を用いると共に、この金属管の周囲に加熱コイルを巻き付けておき、加熱コイルに高周波電力を供給することにより、ウォッシャノズルから吹き出すウォッシャ液を加熱して、蓄雪や着霜の除去促進を図るようにしている。
【0006】
一方、特許文献4では、フロントウインドガラスの下端部に配置したパイプに、エンジン冷却液を循環させることにより、フロントウインドガラスの融雪を行うと共に、エンジン冷却水の水温が低いときなどにおいては、デフォッガやデアイサーへ通電して融雪の促進を図る記載がある。
【0007】
また、特許文献4では、デフォッガやデアイサーは、バッテリに対して大きな負荷となることから、エンジン回転数がアイドル回転数より高い状態である時に、通電するように提案している。
【0008】
ところで、寒冷地などにおいては、外気温が低下することにより、ウォッシャ液タンク内に貯留されているウインドウォッシャ液や、ウォッシャ液タンクとウォッシャノズルの間の管路内のウインドウォッシャ液が凍結してしまうことがあるが、一般的車両は、前部にエンジンが配置された所謂フロントシップ方式であり、ウォッシャ液タンクは、車両前部のエンジンルーム内に設けられている。
【0009】
これにより、ウォッシャ液タンク内や管路内のウインドウォッシャ液が凍結していても、エンジンの暖機運転が行われてエンジンルーム内の温度が上昇することにより解凍され、フロントウインドガラスなどの洗浄が可能となる。
【0010】
しかしながら、車両には、車体中央部から後部にエンジンが配置された所謂ミッドシップ方式があり、このような車両では、エンジンの暖機を行っても、ウインドウォッシャ液の解凍が進まず、エンジンの暖機が終了しても、ウインドウォッシャ液が凍結したままとなっていることがある。また、外気温が極めて低い環境下では、車両走行中にウインドウォッシャ液が凍結してしまう可能性がある。
【0011】
このような状態で車両走行を行うと、前方車両が巻き上げた水滴が付着してフロントウインドガラスが汚れても、確実に汚れを払拭して十分な前方視界の確保が困難となる可能性がある。
【0012】
このようなウインドウォッシャ液を解凍する方法としては、電気ヒータなどの加熱手段を用いる方法があるが、温度が低い環境下では、バッテリの能力が低下しており、ウインドウォッシャ液の解凍がバッテリの大きな負荷となってしまう。
【特許文献1】実開平2−123452号公報
【特許文献2】実開平5−16524号公報
【特許文献3】特開2005−14787号公報
【特許文献4】特開平11−321490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、車両のバッテリに負荷をかけることなく、ウォッシャ液の解凍や凍結を防止して、寒冷地においても車両前方等の確実な視界確保を可能とするウインドウォッシャ装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、内燃機関の回転力によって発電するオルタネータ及び、内燃機関の暖機運転時に燃料供給量を増加するアイドルアップ制御を行う内燃機関制御手段を備えた車両に設けられて、ウインドガラスへウォッシャ液を噴出するウインドウォッシャ装置であって、前記ウォッシャ液が貯留されるウォッシャ液タンク内及び、ウォッシャ液タンクと前記ウォッシャ液が噴出されるウォッシャノズルとを接続するウォッシャパイプに設けられて、前記オルタネータの発電電力が供給されることによりウォッシャ液タンク内及びウォッシャパイプ内のウォッシャ液を加熱する加熱手段と、前記ウォッシャ液の液温を検出する液温検出手段と、前記内燃機関のアイドルアップ制御が行われているか否かと前記液温検出手段が検出する前記ウォッシャ液の液温とに基づいて、前記オルタネータの発電電力を前記加熱手段に供給してウォッシャ液の加熱を行なう加熱制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、ウォッシャ液タンク及びウォッシャパイプに加熱手段を設け、オルタネータの発電電力が供給されることにより、ウォッシャ液を加熱して、ウォッシャ液の解凍が可能となるようにしている。また、加熱手段への電力供給(通電)は、内燃機関の暖機運転などのアイドルアップ制御が行われている状態で行われる。
【0016】
内燃機関の暖機運転時には、燃料供給量が増加されて、これにより、内燃機関の発熱量を増加させるようにしており、燃料供給量が増加することにより、内燃機関の回転数も増加し、この回転数の増加分をオルタネータによって電力に変換することができ、この電力を用いてウォッシャ液の加熱を行う。
【0017】
これにより、ウォッシャ液を加熱摺る加熱手段が、バッテリの負荷となるのを防止しながら、ウォッシャ液の解凍を行い、ウォッシャ液が凍結しているために、乗員の視界確保が困難となってしまうのを確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明は、前記液温検出手段が検出する前記ウォッシャ液の液温に基づいて前記内燃機関制御手段へ、前記内燃機関のアイドルアップ制御を要求するアイドルアップ要求手段を、含むことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、内燃機関の暖機運転が終了した後などで、ウォッシャ液が凍結したり、凍結する可能性が高い温度となると、アイドルアップ制御を要求することにより、オルタネータの発電電力に余剰が生じるようにし、この電力を用いてウォッシャ液の加熱を行う。
【0020】
これにより、外気温が低い環境下で車両走行しているためにウォッシャ液が冷却されて凍結してしまうのを確実に防止することができる。
【0021】
このような本発明においては、前記内燃機関の前記アイドルアップ制御が行われているときに、前記ウォッシャ液の融点に基づいてウォッシャ液に凍結が生じている可能性があるかを判断可能となるように設定された第1の設定温度と、前記ウォッシャ液の液温に基づいて前記加熱手段を制御することができ、また、前記第1の設定温度より高い第2の設定温度が設定されているときに、前記ウォッシャ液の液温と前記第1の設定温度に基づいてウォッシャ液の加熱を開始した後、前記ウォッシャ液の液温が前記第2の設定温度を超えるまで前記加熱手段による前記ウォッシャ液の加熱を継続するものであっても良い。
【0022】
この発明によれば、第1の設定温度でウォッシャ液が凍結しているか否かや、ウォッシャ液の凍結が生じる可能性が高いか否かを判断し、凍結又は凍結する可能性が高いと判断されるときに、ウォッシャ液の加熱を行う。
【0023】
また、例えば、ウォッシャ液をウインドガラスに噴出したときに、ウォッシャ液がウインドガラス上で凍結してしまうことがない温度を第2の設定温度として、第1の設定温度に基づいて加熱を開始すると、液温が第2の設定温度に達するまで、ウォッシャ液の加熱を継続する。
【0024】
すなわち、ウォッシャ液に凍結が生じると判断されうる環境下では、ウインドガラスへ噴出したウォッシャ液も凍結しやすくなっており、このときに、ウォッシャ液を第2の設定温度に達するまで加熱することにより、ウインドガラスに噴出したウォシャ液が凍結して乗員の視界を妨げてしまうのを確実に防止することができる。
【0025】
さらに本発明は、前記ウォッシャパイプの前記ウォッシャノズル側とウォッシャパイプの前記ウォッシャ液タンク側又はウォッシャ液タンクとを連通させてウォッシャパイプ内のウォッシャ液を循環する循環手段を含むことを特徴とし、前記ウォッシャ液の液温が前記第1の設定温度を超え、前記第2の設定温度の以下であるときに、前記循環手段を作動させてウォッシャ液の循環を行う循環制御手段を含むことを特徴とする。
【0026】
ウォッシャパイプ内に滞留しているウォシャ液は、周囲から冷却されるために凍結が生じ易いが、ウォッシャパイプ内であっても流れることにより凍結が生じ難くなる。
【0027】
ここから、本発明では、循環手段を設けてウォッシャ液を循環することにより、ウォッシャパイプ内でウォシャ液が凍結して、ウォッシャ液の噴出が困難となってしまうのを防止する。
【0028】
このようなウォッシャ液の循環は、ウォッシャ液が凍結していない状態であることが必要であり、ここから、液温が第1の設定温度と第2の設定温度の範囲である時に、ウォッシャ液を循環し、ウォッシャポンプの空運転や、ウォッシャパイプ内でウォッシャ液が凍結していることによる圧力異常が起因したウォッシャパイプやウォッシャポンプの損傷を確実に防止できる。
【0029】
なお、このような循環手段を形成するウォッシャパイプは、インナチューブとアウタチューブの二重構造として、インナチューブ内及びアウタチューブ内のそれぞれをウォッシャ液が流れるようにすることが好ましく、これにより、ウォッシャ液の冷却(放熱)を抑えながら、加熱手段による効率的な加熱が可能となるようにすることができ好ましい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、内燃機関の暖機運転時に発生する余剰回転力によって発電した電力を用いて、ウォッシャ液の加熱を行うので、車両に設けられバッテリに大きな負荷をかけてしまうことなく、効率的にウォッシャ液の加熱を行い、乗員の確実な視界確保を可能とする優れた効果が得られる。
【0031】
また、本発明によれば、車両走行中においてもバッテリの負荷を増加させることなく、ウォッシャ液の凍結防止や、ウインドガラスに噴出したウォッシャ液の凍結を防止して、確実な視界確保を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
〔第1の実施の形態〕
図2には、本実施の形態に適用した車両10の概略構成が示されている。なお、図2では、車両前方側を矢印FR方向、車両上方側を矢印UP方向で示している。
【0034】
本実施の形態に適用した車両10は、一例としてミッドシップ方式が適用されており、走行用の駆動源となるエンジン12(図2では図示省略、図1参照)が前輪14と後輪(図示省略)の間に配置されている。これにより、車両10の前部は、エンジンの設けられていないフロントコンパートメント16となっており、車両10では、このフロントコンパートメント16内に、例えば、エンジン冷却水を冷却するエンジンラジエータ18などが配置されている。
【0035】
この車両10には、フロントウインドガラス20の表面の水滴などの付着物を払拭するワイパ装置22が設けられている。このワイパ装置22は、ワイパモータ24の回転がリンク機構26によってワイパアーム28の往復移動に変換され、ワイパアーム28が、フロントウインドガラス20の表面に沿って往復移動されることにより、ワイパアーム28に設けているワイパブレード30によってフロントウインドガラス20の表面に付着している水滴等が払拭される。
【0036】
一方、図1及び図2に示されるように、車両10には、ウインドウォッシャ装置32が設けられている。このウインドウォッシャ装置32は、洗浄液とするウォッシャ液が貯留されるウォッシャ液タンク34と、ウォッシャ液が噴出されるウォッシャノズル36、ウォッシャ液タンク34とウォッシャノズル36を接続するウォッシャパイプ38及び、ウォッシャ液タンク34内のウォッシャ液をウォッシャノズル36へ供給するウォッシャポンプ40を備えている。
【0037】
図2に示されるように、ウォッシャ液タンク34は、車両10の前部のフロントコンパートメント16内に配設されており、ウォッシャノズル36は、例えば、フロントコンパートメント16を覆うフロントフード42に、フロントウインドガラス20へ向けて取り付けられおり、ウォッシャパイプ38がフロントコンパートメント16内に敷設されている。
【0038】
これにより、ウインドウォッシャ装置32では、ウォッシャポンプ40が作動すると、ウォッシャ液タンク34内のウォッシャ液が、ウォッシャノズル36からフロントウインドガラス20へ向けて噴出される。
【0039】
車両10では、ウインドウォッシャ装置32によってフロントウインドガラス18へウォッシャ液を噴出しながら、ワイパ装置22を作動させることにより、フロントウインドガラス20の表面の付着物の払拭が促進される。
【0040】
なお、このようなワイパ装置22及びウインドウォッシャ装置32の基本的構成は、公知の構成を適用でき、詳細な説明を省略する。また、以下では、フロントウインドガラス20に対して設けるウインドウォッシャ装置32を例に説明するが、ワイパ装置及びウインドウォッシャ装置は、車両後部の図示しないリヤウインドガラスなどの洗浄を行うものであっても良く、また、ウインドウォッシャ装置は、ヘッドランプのレンズへ向けてウォッシャ液を噴出する構成を含むものであっても良い。
【0041】
一方、車両10には、エンジン12の駆動力が伝達されることにより回転駆動されて発電するオルタネータ44と、オルタネータ44の発電電力が蓄積されるバッテリ46が設けられており、車両10では、このバッテリ46に蓄積された電力によって各種の電装部品の駆動に用いるようになっている。なお、オルタネータ44としては、直流電力又は交流電力の何れを発生するものであっても良く、交流電力を発生するときには、整流器を介して直流(脈流を含む)に変換された電力がバッテリ46に供給されるものであれば良い。
【0042】
ところで、図1に示されるように、第1の実施の形態に適用したウインドウォッシャ装置32には、コントローラ50が設けられている。このコントローラ50は、CPU、ROM、RAMなどがバスに接続されたマイクロコンピュータ及び、各種の入出力インターフェイス、駆動回路などを含んで形成されており、ウォッシャポンプ40及びウォッシャスイッチ52が接続されている。
【0043】
これにより、コントローラ50は、ウォッシャスイッチ52がオン操作されることにより、バッテリ46の電力をウォッシャポンプ40へ供給して、ウォッシャノズル36からウォッシャ液を噴出する。
【0044】
一方、ウインドウォッシャ装置32では、ウォッシャ液タンク34内にウォッシャ液の温度を検出する液温センサ54が設けられており、この液温センサ54がコントローラ50に接続されている。
【0045】
これにより、コントローラ50は、ウォッシャ液の液温の検出が可能となっており、コントローラ50は、液温センサ54によって検出する液温から、ウォッシャ液が凍結しているか否かや、凍結しやすい状態となっているか否かの判定を行なう。
【0046】
また、ウインドウォッシャ装置32には、ウォッシャ液の加熱手段として熱線56が設けられている。この熱線56は、ウォッシャ液タンク34内に敷設されると共に、ウォッシャパイプ38の周囲に敷設されている。
【0047】
この熱線56は、リレースイッチ58を介してオルタネータ44とバッテリ46との間に接続されており、リレースイッチ58の接点が閉じられる(以下、リレースイッチ58のオンとする)ことにより、オルタネータ44の発電電力が供給される。すなわち、熱線56は、バッテリ46への充電系統に接続されており、オルタネータ44の発電電力に余剰が生じたときには、この余剰電力が供給されるようになっている。
【0048】
なお、加熱手段として用いる熱線56は、電熱線、コイルであっても良く、また、加熱手段としては、導電性チューブ、導電性布など、通電されることにより発熱して、ウォッシャ液を加熱可能であれば任意の構成を適用することができる。また、加熱手段としては、敷設場所に応じた形状、形態のものを適用することができる。
【0049】
また、ウォッシャパイプ38に設ける熱線56は、ウォッシャパイプ38の外周部にウォッシャパイプ38を包むように同軸的も配置することが好ましく、これにより、ウォッシャパイプ38内のウォッシャ液の放熱を抑えることができると共に、周囲の冷気によってウォッシャ液が冷却されるのを抑えることができる。
【0050】
また、オルタネータ44の発電電力の制御は、コントローラ50、次に示すエアコンECUの何れで行うものであっても良い。
【0051】
一方、車両10には、エンジン12の作動を制御するエンジンECU60が設けられており、コントローラ50に、リレースイッチ58及びエンジンECU60が接続されている。
【0052】
エンジンECU60では、エンジン始動時にエンジン冷却液の液温が低いと、エンジン12の暖機運転を行う。この暖機運転時には、アイドル時よりもエンジン12へ供給する燃料(ガソリン)が増加され、これに伴って、エンジン回転数を高くなる(アイドルアップ)と共に、エンジン12の発熱量が大きくなり、エンジン12及びエンジン冷却液の温度上昇が促進される。
【0053】
コントローラ50は、エンジンECU58と接続されていることにより、エンジン12の暖機中か否かの判断が可能となっている。また、エンジンECU58は、エンジン12の暖機運転が終了している状態で、コントローラ50からエンジン12のアイドル回転数の上昇(アイドルアップ)要求があると、この要求に基づいてエンジン12のアイドルアップを行う。このとき、エンジンECU60では、エンジン12の暖機運転時と同様に、エンジン12への燃料の供給量を増加させるようにしている。なお、エンジンECU60によるエンジン12の基本制御は、公知の制御方法を適用できる。
【0054】
コントローラ50は、エンジン12の暖機中に、液温センサ54によって検出するウォッシャ液に基づいてリレースイッチ58のオン/オフを行う。また、コントローラ50は、エンジン12の暖機運転が終了しているときに、液温センサ54によって検出するウォッシャ液の液温に基づいて、エンジンECU58にエンジン12のアイドルアップ要求を行いながら、リレースイッチ58のオン/オフを行う。
【0055】
これにより、コントローラ50では、エンジン12がアイドルアップされている状態で熱線56への通電を行い、ウォッシャ液タンク34、ウォッシャパイプ38内のウォッシャ液を加熱し、ウォッシャ液の解凍、凍結防止を図るようにしている。
【0056】
このように構成されている車両10では、図示しないワイパスイッチを操作してワイパ装置22を作動することにより、フロントウインドガラス20に付着した雨滴などをワイパブレード30によって払拭して乗員の視界を確保することができる。
【0057】
また、車両10には、ウインドウォッシャ装置32が設けられている。このウインドウォッシャ装置32は、ウォッシャスイッチ52がオン操作されると、ウォッシャポンプ40が駆動され、ウォッシャ液タンク34内のウォッシャ液が、ウォッシャノズル36からフロントウインドガラス20へ向けて噴出される。
【0058】
これにより、車両10では、前方車両が巻き上げた雨水などが、フロントウインドガラス20に付着しても、ワイパ装置22によってこの付着物を確実に払拭することができる。
【0059】
すなわち、前方車両が巻き上げた水滴などには、土や埃が多く含まれており、ワイパ装置22を作動させただけでは、フロントウインドガラス20から確実に払拭することができない場合がある。
【0060】
このようなときに、例えば、ウインドウォッシャ装置32によってフロントウインドガラス20にウォッシャ液を噴出させながら、ワイパ装置22を作動することにより、フロントウインドガラス20やワイパブレード30を損傷することなく、フロントウインドガラス20上から確実に払拭して、乗員の良好な視界確保が可能となる。
【0061】
ところで、ウォッシャ液は、一般に、水よりも融点(融解点、凝固点)が低い(例えば−5°C程度)が、寒冷地などで外気温が極めて低くなると、駐車中に凍結してしまうことがある。また、外気温が極めて低い環境下で走行すると、ウォッシャ液が冷却されて凍結が生じることがある。
【0062】
ウォッシャ液が凍結すると、ウォッシャスイッチ52をオンしても、ウォッシャノズル36からウォッシャ液がフロントウインドガラス20に噴出されなくなる。
【0063】
これにより、車両10では、ウォッシャ液が噴出されないために、フロントウインドガラス20の付着物の確実な払拭がなされなくなると、乗員の視界確保が困難となることがある。
【0064】
ここから、ウインドウォッシャ装置32では、ウォッシャ液が凍結したときの解凍を図ると共に、ウォッシャ液の凍結防止を図り、乗員の確実な視界確保が可能となるようにしている。
【0065】
ここで、第1の実施の形態に適用したウインドウォッシャ装置32でウォッシャ液の解凍促進及び凍結防止を図るウインドウォッシャ液の加熱制御を説明する。
【0066】
図3には、ウインドウォッシャ装置32のコントローラ50でエンジン12の始動時に実行されるウォッシャ液の加熱制御の一例を示している。このフローチャートでは、最初のステップ100で、図示しないイグニッションスイッチ(IG)がオンされたか否かを確認し、車両走行のために、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、ステップ100で肯定判定してステップ102へ移行する。
【0067】
このステップ102では、液温センサ54によって検出するウォッシャ液の液温WTを読込み、次のステップ104では、液温WTが、ウォッシャ液の凍結が生じていない第1の設定温度として設定している設定温度TS1を越えているか否かから、ウォッシャ液が凍結していないか否かを確認する。
【0068】
このような設定温度TS1としては、ウォッシャ液の融点MTに基づいて設定することができる。すなわち、ウォッシャ液の液温が融点MTに達している場合、ウォッシャ液が凍結しているか、少なくとも凍結し易い状態となっており、この融点MTから所定の温度αだけ高くして、ウォッシャ液に凍結が生じていないと確実に判断しうる温度を、設定温度TS1として適用することが好ましい(TS1 =MT+α)。
【0069】
例えば、温度αを5°C(α=5°C)として、ウォッシャ液の融点MTが−5°C(MT=−5°C)であったときには、設定温度TS1を0°C(TS1=0°C)とすることができる。
【0070】
ここで、ウォッシャ液の液温WTが、設定温度TS1を超えているとき(WT>TS1)には、ステップ104で否定判定して、エンジン始動時の加熱制御を終了する。
【0071】
これに対して、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS1に達していないとき(WT≦TS1)には、ステップ104で肯定判定してステップ106へ移行する。このステップ106では、エンジン12の暖機運転が行われているか否かを確認する。
【0072】
車両10に設けられているエンジンECU60では、イグニッションスイッチがオンされてエンジン12を始動した時に、エンジン12が冷却状態にあり、エンジン冷却液の液温も低くなっている。このときに、エンジンECU60では、エンジン12の暖機運転を行う。
【0073】
このエンジン12では、アイドル時よりも燃料供給量(噴射量)が増加され、これによりアイドルアップと共に、発熱量の増加が図られる。
【0074】
ここで、エンジン12の暖機運転が行われていると、ステップ106で肯定判定してステップ108へ移行し、リレースイッチ58をオンして、熱線56への通電を開始する。
【0075】
これにより、熱線56が発熱して、ウォッシャ液タンク34、ウォッシャパイプ38内のウォッシャ液が加熱され、ウォッシャ液が凍結しているときには、ウォッシャ液の解凍が行われ、また、ウォッシャ液が凍結し易い状態であれば、凍結し難くなるように加熱される。
【0076】
この後、ステップ110では、ウォッシャ液の液温WTを検出し、ステップ112では、液温WTが設定温度TS1より高い第2の設定温度としている設定温度TS2(TS1<TS2)を超えたか否かを確認する。
【0077】
熱線56によってウォッシャ液が加熱されて解凍されると、ウォッシャ液の液温WTが上昇する。このときに、液温WTが、設定温度TS1より高い設定温度TS2を超え、液温WTが凍結の生じていない状態と判断されると、ステップ112で肯定判定してステップ114へ移行する。
【0078】
このステップ114では、リレースイッチ58をオフすることにより熱線56への通電を停止し、ウォッシャ液の解凍を終了する。
【0079】
このときの設定温度TS2としては、ウォッシャ液をフロントウインドガラス20へ噴出しても、フロントウインドガラス20に付着したウォッシャ液に凍結が生じない温度ないし、フロントウインドガラス20に付着した水滴が凍結しているときに、解凍可能となる温度、すなわち、フロントウインドガラス20へ噴出するのに適切な温度としている。
【0080】
なお、ここでは、液温WTが設定温度TS2に達したときに、加熱を終了するようにしたが、液温WTが少なくとも設定温度TS1を超えたときに終了するものであっても良く、また、エンジン12が暖機されることによりエンジンラジエータ18から発せられる熱によってフロントコンパートメント16の雰囲気温度Taが上昇することから、この雰囲気温度Taを検出して、液温WTが雰囲気温度Taに達したタイミングで、ウォッシャ液の加熱を終了するようにしても良い。
【0081】
一般に、前部にエンジンが設けられているフロントシップ方式の車両では、エンジンが発する熱によってウォッシャ液タンクやウォッシャパイプが設けられているエンジンコンパートメント(エンジンルーム)内の温度が上昇し、これにより、ウォッシャ液が凍結していても、エンジンの暖機運転によって解凍が可能となる。
【0082】
これに対して、ミッドシップ方式が適用されている車両10では、前部のフロントコンパートメント16内の熱源がエンジンラジエータ20のみとなっている。車両10では、このエンジンラジエータ18から発せられる熱によって外気温が低い環境下でも、約30°C程度まで上昇する。
【0083】
しかし、エンジンラジエータ18のみ加熱されるフロントコンパートメント16内の雰囲気温度Taは、温度上昇が緩やかであると共に、で図2に二点鎖線で示されるように、この温度上昇は緩やかであり、また、定常状態となったときの温度Taもそれほど高くない(例えばTa=30°C程度)。このために、図4に破線で示されるように、ウォッシャ液の温度WTの上昇は緩やかであり、ウォッシャ液が凍結している場合には、解凍に時間を要する。
【0084】
ここで、ウインドウォッシャ装置32では、ウォッシャ液タンク34及びウォッシャパイプ38に熱線56を設けて、この熱線56へ通電することにより、ウォッシャ液を加熱することができるようになっている。
【0085】
これにより、ウォッシャ液が凍結していても、ウォッシャ液を迅速に解凍することができるので、図4に実線で示されるように、ウォッシャ液の液温WTは、短時間で確実に上昇される。
【0086】
したがって、ウインドウォッシャ装置32では、ウォッシャ液が凍結しているために、フロントウインドガラス20の汚れを除去できずに、乗員の視界が確保できなくなってしまうのを確実に防止することができる。
【0087】
一方、ステップ116では、エンジン12の暖機運転が終了したか否かを確認し、ステップ118では、エンジン12を停止するために、イグニッションスイッチがオフされたか否かを確認する。
【0088】
コントローラ50は、ウォッシャ液の解凍が終了していないと判断しうるときでも、エンジン12の暖機運転が終了するか、イグニッションスイッチがオフされてエンジンが停止されることにより、熱線56への通電を停止して、ウォッシャ液の解凍を終了する。
【0089】
また、ステップ104で肯定判定されて、ウォッシャ液に凍結が生じている可能性があっても、エンジン12の暖機運転がなされていないときには、ステップ106で否定判定して、ウォッシャ液の加熱を行わずに、このフローチャートを終了する。
【0090】
すなわち、ウインドウォッシャ装置32のコントローラ50では、エンジン12の暖機運転中にのみ、熱線56への通電を行ってウォッシャ液の加熱を行うようにしており、これにより、ウォッシャ液の解凍が、バッテリ46の大きな負荷となってしまうのを防止するようにしている。
【0091】
車両10では、エンジン12の回転力をオルタネータ44に伝達して、オルタネータ44を回転駆動することにより発電を行い、発電した電力をバッテリ46へ供給することによりバッテリ46の充電を行ない、車両10内の各補機などの電装部品が、バッテリ46に充電された電力の使用が可能となるようにしている。
【0092】
図5には、エンジン入力エネルギーに対する出力エネルギーの概略を示している。ここで、エンジン入力エネルギーは、ガソリン噴射量に相当する。
【0093】
ここで、図5では、二点鎖線で効率100%の時のエンジン入力エネルギーに対する出力エネルギーを示しており、通常のエネルギー効率は、実線で示されるように30%程度となっており、これが、軸回転力Poutとしてエンジン12の駆動力として出力される。また、軸回転力Poutを除いたエンジン出力エネルギーが、熱などとなって放出される(放出エネルギーとする)。
【0094】
ここで、アイドル状態では、オルタネータ44の回転駆動などに必要な軸回転力Poutが得られるようにしており、暖機運転時に、燃料噴射量が増加されることにより、軸回転力Poutが増加されると共に、放出エネルギーが増加される。
【0095】
このときの放出エネルギーの増加分には、発熱量の増加分ΔQが含まれ、この発熱量の増加分ΔQがエンジン暖機運転時におけるエンジン12やエンジン冷却水の加熱促進に用いられる。
【0096】
また、アイドル時に対する暖機運転時の軸回転力Poutの増加分である余剰回転力Psは、通常、エンジン12の駆動軸の回転抵抗として破棄されるようになっているが、オルタネータ44の発電電力を制御することにより、この余剰回転力Psをオルタネータ44で回収して電力に変化する。このときに回収される電力の増加分は、余剰電力となっており、コントローラ50では、暖機時に発生する余剰電力を用いるように、エンジン12の暖機運転中に熱線56への通電を行う。
【0097】
これにより、ウォッシャ液を加熱する熱量が、バッテリ46の負荷となるのを防止している。
【0098】
一方、3000cc(3×10−3)のウォッシャ液を解凍するのに必要な
熱量Qは、ウォッシャ液の液温WTを−30°Cとして、目標温度を0°Cとした場合、固体係数Cを0.5(C=0.5)、ウォッシャ液の比熱を水と同じと仮定すると、
=3000(cc)×30(°C)×C
=45(Kcal)=188(KJ)
となり、また、0°Cの固体(氷)を0°Cの水にするのに必要な熱量Qは、
Q2=1(MJ)(1MJ/3000cc)
となり、ここから、
Q=Q1+Q2=1188(KJ)
となる。
【0099】
また、1188(KJ)=19.8(KW*min)から、熱線56を4KWとすると、5分(5min)を要することになる。また、4KWの熱線56を用いて−10°Cに凍結したウォッシャ液を解凍するためには、約4分半を要し、0°Cのウォッシャ液を解凍するには、約4分を要する。
【0100】
この4KWの負荷は、例えば、車両用の空調装置(エアコン)で冷房に用いるコンプレッサの容量に相当する。エアコンでは、外気温が低く冷房能力が必要とされない状態では、コンプレッサの駆動が停止されるようになっており、このために、車両10がエアコンを備えて要れば、熱線56を設けるために、オルタネータ44の容量を増加する必要がないことになる。
【0101】
したがって、ウインドウォッシャ装置32では、エンジン12の暖機運転時にウォッシャ液を加熱するために、オルタネータ44の容量を大きくすることなく、また、バッテリ46に負荷をかけることがない。
【0102】
一方、外気温が極めて低い環境下で車両10が走行していると、フロントコンパートメント16内に配置されているウォッシャ液タンク34やウォッシャパイプ38内のウォッシャ液が冷却されて、凍結してしまうことがある。
【0103】
ここから、ウインドウォッシャ装置32では、エンジン12の暖機運転が終了した後にも、熱線56を用いたウォッシャ液の加熱制御を行うことにより、ウォッシャ液の凍結防止を図るようにしている。
【0104】
図6には、このときの処理の概略を示しており、このフローチャートは、エンジン12の暖機運転が終了すると実行され、最初のステップ120では、液温センサ54によって検出するウォッシャ液の液温WTを読込み、ステップ122では、液温WTが設定温度TS1を超えているか否かを確認している。
【0105】
ここで、液温WTが設定温度TS1以下となると(WT≦TS1)、ステップ122で否定判定してステップ124へ移行する。このステップ124では、エンジンECU60にエンジン12のアイドルアップを要求し、次のステップ126では、リレースイッチ58をオンすることにより熱線56へ通電して、ウォッシャ液の加熱を開始する。
【0106】
ここで、エンジンECU60が、コントローラ50のアイドルアップ要求に基づいてエンジン12のアイドルアップを行うことにより、余剰電力を用いたウォッシャ液の加熱が可能となる。
【0107】
この後、ステップ128では、加熱されているウォッシャ液の液温WTを検出し、次のステップ130では、液温WTが設定温度TS2を超えたか否かを確認する。
【0108】
ここで、液温WTが設定温度TS2を超えると(WT<TS2)、ステップ130で肯定判定してステップ132へ移行し、リレースイッチ58をオフして熱線56への通電を停止することにより、ウォッシャ液の加熱を停止し、ステップ134では、エンジンECU60に対してエンジン12のアイドルアップ要求を停止する。
【0109】
なお、ステップ136では、図示しないイグニッションスイッチがオフされたか否かを確認し、イグニッションスイッチがオフされてエンジン12が停止されると、ステップ136で肯定判定してステップ132へ移行して、ウォッシャ液の加熱制御を終了する。
【0110】
これにより、車両10が走行中にウォッシャ液が凍結したために、フロントウインドガラス20の汚れの確実な払拭が困難となってしまうのを防止し、乗員の的確な視界確保が可能となる。
【0111】
このときに、ウォッシャ液を設定温度TS2となるまで加熱することにより、ウォッシャ液をフロントウインドガラス20へ噴出したときに、フロントウインドガラス20の表面で凍結して、乗員の視界を妨げてしまうのを防止することができる。
【0112】
すなわち、車両10が走行中に、ウォッシャ液が凍結する環境下では、フロントウインドガラス20に付着したウォッシャ液は勿論、前方車両が巻き上げた水滴なども凍結することが想定される。
【0113】
このときに、ウォッシャ液の液温WTを設定温度TS2まで上昇させておくことにより、乗員の確実な視界確保が可能となる。なお、ここでは、ウォッシャ液の液温WTは設定温度TS2を超えるまで加熱するようにしているが、少なくとも、ウォッシャ液の液温が設定温度TS1を超えるように加熱するものであれば良い。
【0114】
〔第2の実施の形態〕
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、第2の実施の形態の基本的構成は、前記した第1の実施の形態と同じであり、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の部品には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0115】
図7には、第2の実施の形態に係るウインドウォッシャ装置70の概略構成を示している。このウインドウォッシャ装置70では、ウォッシャ液タンク34とウォッシャポンプ40の間に三方弁72が設けられ、また、ウォッシャパイプ74には、ウォッシャノズル36の近傍に三方弁76が設けられており、三方弁72、76がリターンパイプ78によって接続されている。
【0116】
これにより、ウォッシャパイプ74とリターンパイプ78との間で、ウォッシャ液の循環路80が形成されている。なお、熱線56は、ウォッシャパイプ74内のウォッシャ液とリターンパイプ78内のウォッシャ液のそれぞれの加熱が可能となっている。
【0117】
このような循環路80は、例えば、図8に示される二重管構造を適用することができる。すなわち、アウタチューブ82とインナチューブ84を同軸的に配置した二重管86を用いる。このとき、インナチューブ84をウォッシャパイプ74として、アウタチューブ82をリターンパイプ78として用いる。
【0118】
また、この二重管86では、インナチューブ84を熱線56が設けられ発熱体88で被覆すると共に、発熱体を内部外装材90によって覆う。
【0119】
これにより、発熱体88内に設けられる熱線56によってアウタチューブ82内及びインナチューブ84内のウォッシャ液を効率的に加熱しながら、ウォッシャ液の放熱、特にウォッシャノズル36へ供給されるウォッシャ液の放熱を抑えることができる。
【0120】
図7に示されるように、三方弁72、76は、コントローラ50Aに接続されており、コントローラ50Aによって、ウォッシャ液の流路が切換えられる。すなわち、ウォッシャ液タンク34内のウォッシャ液を、ウォッシャパイプ74を介してウォッシャノズル36へ供給する状態と、ウォッシャパイプ74、リターンパイプ78内のウォッシャ液を循環する状態の間で切換えられる。
【0121】
なお、ここでは、ウォッシャ液タンク34とウォッシャポンプ40の間に三方弁72を設けたが、この三方弁72を省略し、リターンパイプ78をウォッシャ液タンク34に連結して、ウォッシャ液タンク34内のウォッシャ液も含めて循環されるようにしても良い。
【0122】
コントローラ50Aは、液温センサ54で検出するウォッシャ液の液温が、例えば、ウォッシャ液の融点MTに近い温度まで低下して、ウォッシャ液が凍結し易い状態となっていると判断されるときに、三方弁72、76を作動すると共に、ウォッシャポンプ40を作動させて、ウォッシャパイプ74内のウォッシャ液が凍結してしまうのを抑えるようにしている。
【0123】
図9には、このコントローラ50Aによる凍結防止制御の概略を示している。なお、エンジン12の始動時(暖機運転時)においては、前記した図3と同等の処理を行うものであって良い。
【0124】
このフローチャートは、エンジン12の暖機運転が終了すると実行される。最初のステップ140では、液温センサ54によって検出されるウォッシャ液の液温WTを読込み、次のステップ142では、先ず、液温WTが設定温度TS2を超えているか否かを確認する。
【0125】
ここで、外気温が高いかフロントコンパートメント16内の雰囲気温度Taが高く、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS2を超えているとき(WT>TS2)には、ウォッシャ液の加熱が不要であるとしてステップ142で肯定判定する。このときに、ステップ144ウォッシャ液の循環が行われているか否かを確認し、ウォッシャ液の循環が行われているときには、ステップ144で肯定判定して、ステップ146へ移行し、ウォッシャ液の循環を停止して、ウォッシャ液の凍結防止制御を終了する。
【0126】
なお、ウォッシャ液を循環するときには、三方弁72、76を操作して、ウォッシャパイプ74とリターンパイプ78との間でウォッシャ液の循環路80を形成し、ウォッシャポンプ40を作動させるようにしており、ウォッシャ液の循環を停止するときには、ウォッシャポンプ40を停止すると共に、三方弁72、76をオフして、ウォッシャ液タンク34からウォッシャノズル36へのウォッシャ液の流路を形成し、ウォッシャポンプ40が作動したときに、ウォッシャノズル36からウォッシャ液が噴出されるようにする。
【0127】
一方、ウォッシャ液の液温WTが設定液温TS2を超えていないとき(WT≦TS2)には、ステップ142で否定判定してステップ148へ移行する。このステップ148では、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS1を超えているか否かを確認する。
【0128】
ここで、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS1を超えているとき(WT>TS1、すなわち、TS1<WT≦TS2)には、ステップ148で肯定判定してステップ150へ移行し、ウォッシャ液の循環を開始する。すなわち、三方弁72,76をオンすることにより、ウォッシャパイプ74とリターンパイプ78とによってウォッシャ液の循環路80を形成し、ウォッシャポンプ40を作動させる。
【0129】
一般に、パイプ内に滞留している液体は、パイプ内を流れる液体に比較して凍結が生じ易くなっている。ここから、ウインドウォッシャ装置70では、ウォッシャ液の液温WTが低くなったときには、ウォッシャパイプ74内のウォッシャ液を流すことにより、凍結が生じ難くなるようにして、ウォッシャパイプ74内でウォッシャ液が凍結してしまうことによる目詰まりを防止し、ウォッシャスイッチ52がオンされたときに、ウォッシャノズル36から確実にウォッシャ液が噴出されるようにしている。
【0130】
なお、ウォッシャ液の循環を行っているときにウォッシャスイッチ52がオンされたときには、三方弁72、76をオフした状態で、ウォッシャポンプ40を作動させる。
【0131】
これに対して、ウォッシャ液の液温WTが、設定温度TS1以下となっているときには、ステップ148で否定判定してステップ152へ移行する。このステップ152では、ウォッシャ液の循環を停止し、次のステップ154では、エンジンECU60に対してエンジン12のアイドルアップを要求する。この後に、ステップ156では、リレースイッチ58をオンすることにより、オルタネータ44で発電された余剰電力を熱線56へ供給し、余剰電力によるウォッシャ液の加熱を開始する。
【0132】
これにより、ウォッシャ液が凍結しているときには、解凍がなされ、また、ウォッシャ液が凍結し易い時には、凍結防止がなされる。なお、ここでは、ウォッシャ液の循環を停止し、ウォッシャ液が凍結している状態でウォッシャポンプ40を駆動して所謂空運転が行われるのを防止するようにしているが、ウォッシャ液に凍結が生じていないと判断しうるときには、ウォッシャ液の循環を継続するようにしても良い。
【0133】
このようにしてウォッシャ液の加熱を開始すると、ステップ158では、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS1を超えたか否かを確認し、ステップ160では、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS2を超えたか否かを確認する。
【0134】
ここで、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS1を超えたが、設定温度TS2を超えていないとき(TS1<WT≦TS2)には、ステップ160で否定判定されてステップ162へ移行し、ウォッシャ液の循環を開始する。すなわち、ウォッシャ液を加熱しながら循環することにより、ウォッシャ液の凍結を防止する。
【0135】
なお、ここでは、ウォッシャ液を循環しながら加熱を行うようにしているが、これに限らず、エンジンECU60へのアイドルアップ要求を停止すると共にリレースイッチ58をオフして、ウォッシャ液の加熱を停止した状態でウォッシャ液の循環のみを行うようにしても良い。
【0136】
一方、ウォッシャ液の液温WTが設定温度TS2を超える(WT>TS2)とステップ160で肯定判定されてステップ164へ移行する。このステップ164では、ウォッシャ液の加熱を停止すると共に、ウォッシャ液の循環を停止し(ステップ166)、この後に、ステップ168でエンジンECU60に対するアイドルアップ要求を停止して、ウォッシャ液の凍結防止制御を終了する。なお、ステップ170では、イグニッションスイッチがオフされたか否かを確認しており、イグニッションスイッチがオフされたときには、ステップ170で肯定判定してステップ164へ移行することにより、ウォッシャ液の加熱及び循環を終了する。
【0137】
このように、第2の実施の形態に適用したウインドウォッシャ装置70では、凍結が生じ易いウォッシャパイプ74内のウォッシャ液を、ウォッシャパイプ70内で流すようにすることにより、ウォッシャパイプ74内でウォッシャ液が凍結してしまうことにより、ウォッシャ液タンク34内のウォッシャ液が凍結していないにもかかわらず、ウォッシャ液が噴出されずに、乗員の視界確保が困難となってしまうのを確実に防止するようにしている。
【0138】
なお、以上説明した本実施の形態では、エンジン12の暖機運転終了後のウォッシャ液の加熱においても、オルタネータ44の発電電力を用いるようにしたが、本発明はこれに限るものではなく、暖機運転終了後は、車両に設けられる各種の熱源を用いたウォッシャ液の加熱を行うものであっても良い。
【0139】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、内燃機関であるエンジン12が車両後部側に設けられた所謂ミッドシップ方式の車両10を例に説明したが、本発明は、これに限らず、ウォッシャ液タンク34と共にエンジン12が車両前部に設けられたフロントシップ方式の車両など任意の方式の車両に適用することができる。
【0140】
フロントシップ方式の車両においても、エンジン始動時にエンジンの暖機が必要である時には、エンジンの暖機運転が進行するまでは、フロントコンパートメント(エンジンコンパートメント)内の雰囲気温度が低く、エンジンから放出される熱のみでは、ウォッシャ液の解凍が遅れることがある。
【0141】
このようなときにも、アイドルアップされたエンジンから廃棄される回転力を用いて電力を発生させ、発生した電力によってウォッシャ液を加熱することにより、ウォッシャ液の迅速な解凍が可能となり、車両走行開始時には、フロントウインドガラスからの確実な汚れ除去が可能な状態することができ、寒冷地などにおける走行安全性の確保を可能とすることができる。
【0142】
また、本実施の形態では、フロントウインドガラス20に対するウインドウォッシャ装置10、70を例に説明したが、リヤウインドガラスへのウォッシャ液の放出や、ヘッドランプのレンズへ向けたウォッシャ液の放出を行うウォッシャ装置への適用も可能である。
【0143】
このときには、それぞれの系統で雰囲気温度、走行中の冷え方などが異なるため、系統別に加熱制御を行うことが好ましい。
【0144】
また、本実施の形態では、車両走行中のウォッシャ液の加熱にオルタネータ44の発電電力を使用するようにしたが、車両走行中のウォッシャ液の加熱は、これに限るものではなく、エンジンから各種の形態で放出される熱を利用することができる。
【0145】
すなわち、エンジン12の暖機運転が完了するまでは、車両10内の熱源は限られるが、暖機運転が終了することにより、エンジン12自体が放出する熱、エンジン冷却液を介して放出される熱、排気ガスとして放出される熱があり、これらの廃熱を用いて、ウォッシャ液を加熱するものであっても良い。
【0146】
例えば、ウォッシャ液タンク34は、エンジン冷却液の熱を放出するエンジンラジエータ18に接近して配置されることが多く、ウォッシャ液タンク34とエンジンラジエータ18とを熱伝導性部材によって連結することにより、エンジン冷却液の熱をウォッシャ液タンク34に伝達してウォッシャ液タンク34内のウォッシャ液の加熱に用いることができる。
【0147】
また、フロントシップ方式の車両では、リヤウインドガラスへウォッシャ液を送りウォッシャパイプは、排気管などの近傍を通過させることができるので、このウォッシャパイプと排気管を熱伝導性部材によって連結することにより、排気ガスから放出される熱によってリヤウインドガラスへのウォッシャ液の加熱を行うことができる。
【0148】
このような加熱方法を用いるときには、ウォッシャ液の過熱による沸騰の危険性などが生じることがあり、また、例えば、暖気運転開始直後のエンジンの低温状態では、ウォッシャ液の加熱を行うことにより、エンジンの暖機遅れや、排気ガスを浄化するための触媒の温度上昇が遅れることによる活性化の遅れなどが生じることがあり、これを防止するために、熱伝導の断続(オン/オフ)を可能とすることが好ましい。
【0149】
このときの熱伝導の断続を行う構成としては、ソレノイドなどのアクチュエータを用いて、ウォッシャ液の液温に加え、エンジン冷却液の液温、排気ガス温度などの検出結果に基づいて、熱伝導性部材を接離させる構成などを適用することができる。
【0150】
さらに、以上説明した本実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明は、車両のウインドガラスやヘッドランプなどへ洗浄液とするウォッシャ液を噴出して、汚れ除去を可能とする任意の構成に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】第1の実施の形態に適用したウインドウォッシャ装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態に適用した車両の要部の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るエンジン始動時のウォッシャ液の加熱制御の一例を示す流れ図である。
【図4】エンジン始動時からの経過時間に対するウォッシャ液の液温の変化の一例を示す線図である。
【図5】エンジン入力エネルギーに対する出力エネルギーの概略を示す線図である。
【図6】第1の実施の形態に係る暖機運転終了後のウォッシャ液の加熱制御の一例を示す流れ図である。
【図7】第2の実施の形態に係るウインドウォッシャ装置の概略構成図である。
【図8】第2の実施の形態でウォッシャ液の循環の形成に適用可能な二重管を示す概略図である。
【図9】第2の実施の形態に係る暖機運転終了後のウォッシャ液の凍結防止制御の一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0152】
10 車両
12 エンジン(内燃機関)
18 エンジンラジエータ
20 フロントウインドガラス
22 ワイパ装置
32、70 ウインドウォッシャ装置
34 ウォッシャ液タンク
36 ウォッシャノズル
38、74 ウォシャパイプ
40 ウォッシャポンプ
44 オルタネータ
46 バッテリ
50 コントローラ(加熱制御手段、循環制御手段)
54 液温センサ(液温検出手段)
56 熱線(加熱手段)
60 エンジンECU(内燃機関制御手段)
72、76 三方弁(循環手段)
78 リターンパイプ(循環手段)
80 循環路
82 アウタチューブ
84 インナチューブ
86 二重管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転力によって発電するオルタネータ及び、内燃機関の暖機運転時に燃料供給量を増加するアイドルアップ制御を行う内燃機関制御手段を備えた車両に設けられて、ウインドガラスへウォッシャ液を噴出するウインドウォッシャ装置であって、
前記ウォッシャ液が貯留されるウォッシャ液タンク内及び、ウォッシャ液タンクと前記ウォッシャ液が噴出されるウォッシャノズルとを接続するウォッシャパイプに設けられて、前記オルタネータの発電電力が供給されることによりウォッシャ液タンク内及びウォッシャパイプ内のウォッシャ液を加熱する加熱手段と、
前記ウォッシャ液の液温を検出する液温検出手段と、
前記内燃機関のアイドルアップ制御が行われているか否かと前記液温検出手段が検出する前記ウォッシャ液の液温とに基づいて、前記オルタネータの発電電力を前記加熱手段に供給してウォッシャ液の加熱を行なう加熱制御手段と、
を含むことを特徴とするウインドウォッシャ装置。
【請求項2】
前記液温検出手段が検出する前記ウォッシャ液の液温に基づいて前記内燃機関制御手段へ、前記内燃機関のアイドルアップ制御を要求するアイドルアップ要求手段を、含むことを特徴とする請求項1に記載のウインドウォッシャ装置。
【請求項3】
前記内燃機関の前記アイドルアップ制御が行われているときに、前記ウォッシャ液の融点に基づいてウォッシャ液に凍結が生じている可能性があるかを判断可能となるように設定された第1の設定温度と、前記ウォッシャ液の液温に基づいて前記加熱手段を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウインドウォッシャ装置。
【請求項4】
前記第1の設定温度より高い第2の設定温度が設定されているときに、前記ウォッシャ液の液温と前記第1の設定温度に基づいてウォッシャ液の加熱を開始した後、前記ウォッシャ液の液温が前記第2の設定温度を超えるまで前記加熱手段による前記ウォッシャ液の加熱を継続することを特徴とする請求項3に記載のウインドウォッシャ装置。
【請求項5】
前記ウォッシャパイプの前記ウォッシャノズル側とウォッシャパイプの前記ウォッシャ液タンク側又はウォッシャ液タンクとを連通させてウォッシャパイプ内のウォッシャ液を循環する循環手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のウインドウォッシャ装置。
【請求項6】
前記ウォッシャ液の液温が前記第1の設定温度を超え、前記第2の設定温度の以下であるときに、前記循環手段を作動させてウォッシャ液の循環を行う循環制御手段を含むことを特徴とする請求項5に記載のウインドウォッシャ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−143445(P2008−143445A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335638(P2006−335638)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】