説明

ウェアラブル装置のためのデータ処理

ウェアラブル装置のためのデータ処理装置であって、入力データを受け付けるよう構成される入力ユニットと、センサ情報に基づき、装着状態と呼ばれる前記ウェアラブル装置が装着されている状態を示す装着情報と呼ばれる情報を生成する手段と、前記装着情報に基づき前記入力データを処理し、出力データを生成するよう構成される処理ユニットとを有するデータ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブル装置のためのデータ処理装置に関する。
【0002】
本発明はまた、ウェアラブル装置に関する。
【0003】
本発明はさらに、ウェアラブル装置のためのデータ処理方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、プログラム要素及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
オーディオ再生装置が、ますます重要になってきている。特に、より多くのユーザが携帯及び/又はハードディスクベースオーディオプレーヤー及び他の同様のエンターテイメント装置を購入している。
【0006】
GB2,360,182は、携帯電話の一部であるかもしれず、ヘッドセットなどのモノ又はステレオ出力装置が出力ジャックに接続され、それに応じて受信信号の復調を制御するか検出する回路を有するステレオ無線受信機を開示する。ステレオヘッドセットが検出された場合、左右の信号が左右のアンプを介しヘッドセットの各スピーカーに送信される。モノヘッドセットが検出された場合、左右の信号は右側のアンプのみを介し送信される。
【0007】
US2005/0063549は、モノラルヘッドフォンとステレオヘッドフォンとをスイッチするシステム及び方法を開示する。このようなシステム及び方法は、モノラル及びステレオオーディオを用いたマルチファンクション電子装置におけるオーディオ、ビデオ、電話及び/又は他の機能を利用するのに有用である。
【0008】
しかしながら、ヒューマンユーザは、これらオーディオシステムを不便であると考えているかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、効率的なデータ処理が実現可能なユーザフレンドリな装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、独立形式の請求項に記載されるようなウェアラブル装置のためのデータ処理装置、ウェアラブル装置、ウェアラブル装置のためのデータ処理方法、プログラム要素及びコンピュータ可読媒体が提供される。
【0011】
本発明の一実施例では、ウェアラブル装置のためのデータ処理装置であって、入力データを受け付けるよう構成される入力ユニットと、センサ情報に基づき、装着状態と呼ばれる前記ウェアラブル装置が装着されている状態を示す装着情報と呼ばれる情報を生成する手段と、前記装着情報に基づき前記入力データを処理し、出力データを生成するよう構成される処理ユニットとを有するデータ処理装置が提供される。
【0012】
本発明の他の実施例では、上述した特徴を有するデータ処理装置を有するウェアラブル装置が提供される。
【0013】
本発明のさらなる他の実施例では、ウェアラブル装置のためのデータ処理方法であって、入力データを受け付けるステップと、センサ情報に基づき、前記ウェアラブル装置が装着されている装着状態と呼ばれる状態を示す装着情報と呼ばれる情報を生成するステップと、前記装着情報に基づき前記入力データを処理し、出力データを生成するステップとを有する方法が提供される。
【0014】
本発明のさらなる実施例では、プロセッサによる実行時、上述した特徴を有するウェアラブル装置のためのデータ処理方法を制御又は実行するよう構成されるプログラムが提供される。
【0015】
本発明の他の実施例では、プロセッサによる実行時、上述した特徴を有するウェアラブル装置のためのデータ処理方法を制御又は実行するよう構成されるコンピュータプログラムが格納されるコンピュータ可読媒体が提供される。
【0016】
本発明の各実施例によるデータ処理は、コンピュータプログラムにより、すなわち、ソフトウェアにより、又は1以上の特殊な電子最適化回路、すなわち、ハードウェアにより、又はハイブリッド形式により、すなわち、ソフトウェア及びハードウェアコンポーネントによって実現可能である。
【0017】
本発明の一実施例では、装着状態が自動的に検出可能であり、ウェアラブル装置及び/又はデータ処理装置の動作モードが装着状態の検出結果に応じて調整可能なユーザにより装着される装置のためのデータプロセッサが提供される。このため、ユーザが対応する装着状態にマッチするようウェアラブル装置の動作モードを手動により調整することを必要とすることなく、システムはウェアラブル装置の適切なパフォーマンスを、特に現在の装着状態において取得するため、データ処理スキームを自動調整する。データ処理スキームの調整は、特にデータ再生モード及び/又はデータ記録モードの調整を含むかもしれない。
【0018】
例えば、DJがヘッドフォンを使用し、頭からヘッドフォンの1つを取り外すと、これが検出可能であり、ヘッドフォンにより再生されるオーディオの再生モードが、ステレオモードからモノモードに変更される。
【0019】
他のシナリオでは、ユーザがウェアラブ装置としてマッサージ機器を操作し、システムが、ユーザが膝をマッサージするためマッサージ機器を使用することを所望していると検出すると、対応するクビのマッサージ動作モードが自動調整される。しかしながら、ユーザが頭をマッサージすることを所望する場合、他の頭部マッサージ動作モードが調整される。
【0020】
“ウェアラブル装置(wearable apparatus)”という用語は、特にユーザの体に従って又は関連して動作するよう構成される何れかの装置を示すかもしれない。特に、ユーザの体又は体の各部位とウェアラブル装置との間の空間的な関係が、適切な動作モードを調整するため検出されるかもしれない。ウェアラブル装置の形状は、人間により装着可能となるように、人間の構造に適合されるかもしれない。
【0021】
ウェアラブル状態は、具体的なウェアラブル装置に応じて何れか適切な方法により検出されるかもしれない。例えば、ヘッドフォンのイヤカップがユーザの両耳又は片耳に接続されているか、又は何れの耳にも接続されていないか検出するため、温度センサ、光バリアセンサ、タッチセンサ、赤外線センサ、音響センサ、相関センサなどが実現されるかもしれない。また、例えば、実質的に対称に配置された2つのマイクロフォンを設け、マイクロフォンの出力信号を評価することによって、ウェアラブル装置とユーザの体との間の位置関係を電子的に検出可能である。
【0022】
さらなる実施例では、再生装置の装着状態に適合した信号処理が提供される。これについて、ヒアリングエンハンスメント方法が、装着状態の検出に基づきヘッドセットに設けられる。これは、装着モードの自動検出と(例えば、片耳若しくは両耳が現在ヒアリングに使用されているか、又は使用されていないかなど)、これに応じてオーディオをスイッチすることを含むかもしれない。ダブルイヤフォン装着モードについてステレオ再生モード、シングルイヤフォン装着モードについて処理されたモノ再生モード、及びイヤフォン未装着状態についてカットオフ再生モードを調整することが可能である。この原理はまた、他の体に装着されるアクチュエータ及び/又は2より多くの信号チャネルを備えたシステムに適用されるかもしれない。
【0023】
さらなる実施例では、入力信号を受け付ける第1入力段階と、入力信号から導出された出力信号をヘッドフォン(又はイヤフォン)に供給するよう構成される出力段階とを有する信号処理装置が提供される。第2入力段階が、ヘッドフォンの装着状態を表す情報を受け付けるため設けられ、構成されるかもしれない。処理ユニットは、装着情報に基づき出力信号を提供するため入力信号を処理するよう構成される。
【0024】
これにより、再生装置の装着状態に適合する信号処理が、可能となるかもしれない。本発明の実施例は、装置が両耳に装着されているか、片耳に装着されているか、未装着であるか通知可能な装着検出システムを備えるヘッドセット又はイヤセット(ヘッドフォン又はイヤフォン)に適用される。本発明の実施例は特に、装置が片耳でしか使用されていないとき、音声ミキシング性質を自動的に適用する(例えば、ステレオの代わりにモノミキシング、音量の変更、特定にイコライゼーションカーブなど)。本発明の実施例は、例えば、触覚タイプの他の信号や携帯アクチュエータなどの他の装置の処理に関する。
【0025】
一部のユーザは、イヤフォン/イヤセット/ヘッドフォン/ヘッドセットを用いて、両耳でなく片耳でステレオオーディオコンテンツを聴く。多くのイヤフォン/イヤセットユーザは、片耳のみでステレオオーディオコンテンツを聴き、例えば、会話のため、携帯電話の着信音を聞くことをできるようにするため、他方の耳をオープンにする。
【0026】
片耳のみによりステレオコンテンツを聴くことは、DJヘッドフォンでは普通の状況であり、しばしばイヤシェル部を回転させるなどによって(ユーザの頭又は耳に使用されていないイヤシェルの背面が置かれる)、片耳しか使用されない可能性を提供する。
【0027】
本発明の実施例は、ヘッドセットの片耳しか、左チャネルのコンテンツが右チャネルのコンテンツと異なっているステレオ信号を再生するのに使用されていないとき、従来の実現形態で行われるように、コンテンツの一部がユーザにより聴かれないという問題を解消するかもしれない。本発明の実施例では、このような動作モードの変更が(すなわち、ユーザが1つのイヤカップを取り外しているとき)自動的に検出され、このような問題を回避するため、信号処理が調整されるかもしれない。
【0028】
従って、本発明の実施例によると、ユーザ(DJ)が片耳しか使用していないときにヘッドセットをモノに設定可能となるように、自動的なステレオ/モノスイッチが提供される。
【0029】
このような実施例は、従来のアプローチ(例えば、手動によるモノ/ステレオスイッチを備えたAKG DJヘッドフォンなど)と比較して効果的である。従来のアプローチと対照的に、追加的なアクションを実行するこのようなスイッチは、本発明の実施例によると不要となる。この結果、装着モードの自動検出と装置のパフォーマンスの対応する調整は、ユーザフレンドリを向上させるかもしれない。
【0030】
さらに、両耳又は片耳が音声励起を受けるとき、異なる周波数の音声に対する人間の聴覚系の影響は変動する。例えば、片耳しか音声を受けていないとき、低周波数に対する感度は低下する。ユーザが両耳動作から片耳又は未装着処理に動作モードを変更すると、再生されるオーディオの周波数分布は、変更された動作モードを考慮するため、調整又は変更される。従って、片耳しか使用されていないとき、音楽再生の忠実性が影響を受けることが回避されるかもしれない(例えば、低音の欠落などにより)。
【0031】
本発明の実施例では、音声は、すべてのリスニング状態(両耳又は片耳)において音声体験を向上させ、さらに装着検出システムの出力に基づきこれを自動的に実行するよう処理されるかもしれない。
【0032】
これは、すべての状態でベストな又は向上したリスニング体験が取得可能となる効果を有するかもしれない(例えば、両耳使用時にはステレオ、片耳使用時にはモノダウンミックスなど)。ヘッドフォンは、リスニング体験を向上させるため、ユーザの装着スタイルに適合されるかもしれない。さらに、装着検出システムとの組み合わせによって、ユーザのやりとりは不要となる。音声は、装置の装着スタイル(片耳又は両耳)に自動的に調整される。
【0033】
本発明のさらなる実施例では、オーディオ信号は、ウェアラブル装置の装着状態に従って調整される。しかしながら、例えば、振動装置を備えたヘッドフォンなどのため、触覚(接触)信号などの他のタイプの信号を構成することが可能である。また、信号又は装置のため、1,2又は2より多くの信号チャネル(オーディオチャネルなど)を有する本発明の実施例を利用することが可能である。例えば、オーディオサラウンドシステムは、ユーザの装着状態に従って調整される。本発明の実施例はまた、ヘッドフォン以外の装置など(例えば、複数のアクチュエータによるマッサージに使用される装置など)に実装可能である。
【0034】
本発明の実施例の適用分野は、例えば、サウンドアクセサリ(パッシブ若しくはアクティブな実現形態又はアナログ若しくはデジタル実現形態などにおけるヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドセット、イヤセット)などである。
【0035】
さらに、携帯電話、音楽及びA/Vプレーヤーなどの音声再生装置にこのような実施例が設けられるかもしれない。
【0036】
また、マッサージ、健康、ゲーム装置などの体に関する装置に関して本発明の実施例を実現することが可能である。
【0037】
本発明の他の実施例では、イヤカップの取り外しの検出により通信用のステレオヘッドセットが設けられる。このような構成では、例えば、2つのマイクロフォンを用いたステレオヘッドフォンにおいて、適応的ビーム形成が実行される。このような方法は。チャネル間の遅延時間に関してインパルスレスポンスピークのポジションを検出することによって、イヤカップの取り外しを検出することを含むかもしれない。さらに、両方のマイクロフォンがある場合、マイクロフォンからビームフォーマにオーディオをスイッチし、又は1つのイヤカップがシングルチャネル処理のため耳から取り外されている場合、ビームフォーマをバイパスすることが可能である。
【0038】
オーディオ処理装置の実施例は、第1所望信号と第1ノイズ信号とを有する第1(例えば、左など)マイクロフォン信号を受け付ける第1入力信号を有する。第2信号入力が、第2所望信号と第2ノイズ信号とを有する第2(例えば、右)マイクロフォン信号を受け付けるため設けられるかもしれない。検出ユニットが設けられ、第1マイクロフォン信号と第2マイクロフォン信号との相対的な変化と類似度に基づき検出情報を提供するよう構成される。
【0039】
検出ユニットの実施例は、インパルスレスポンス解析に基づき検出情報を提供するよう構成される適応的フィルタとして構成されるかもしれない。
【0040】
本発明の他の実施例では、オーディオ処理装置は、第1及び第2マイクロフォン信号に基づきビーム形成信号を提供するよう構成されるビーム形成ユニットを有する。さらなる信号処理は、検出ユニットにより提供される検出情報に基づくかもしれない。
【0041】
オーディオ処理装置は、第1マイクロフォン信号を提供する第1マイクロフォンと、第2マイクロフォン信号を提供する第2マイクロフォンとをさらに有する音声通信装置として構成されるかもしれない。
【0042】
音声通信のためのステレオヘッドフォンアプリケーションのイヤカップの取り外しが検出され、アルゴリズムがシングルチャネル音声エンハンスメントに自動的にスイッチするかもしれない。
【0043】
このような処理システムの実施例は、音声通信のためのステレオヘッドフォンアプリケーションについて利用されるかもしれない。
【0044】
従って、実施例によると、イヤカップの取り外しの検出により通信用のステレオヘッドセットが設けられる。これについて、ビームフォーマが、各イヤカップのマイクロフォンに備えられたステレオヘッドセットに対して設けられ、より詳細には、それは、イヤカップの1つが耳から取り外されたときに生じる問題を処理する。予防措置がとられない場合、所望の音声が所望されない干渉としてみなされ、抑制されることとなる。本実施例による手段では、イヤカップの取り外しが検出され、アルゴリズムがシングルチャネル音声エンハンスメントに自動的にスイッチされる。
【0045】
本発明及びウェアラブル装置のためのデータ処理装置のさらなる実施例が以降において例示的に説明される。しかしながら、これらの実施例はまた、ウェアラブル装置、ウェアラブル装置のためのデータ処理方法、プログラム要素及びコンピュータ可読媒体に適用される。
【0046】
入力ユニットは、オーディオデータ、音響データ、ビデオデータ、画像データ、触覚データ及び振動データからなる群の少なくとも1つのデータを入力データとして受け付けるよう構成される。すなわち、本発明の実施例により処理される入力データは、音楽データや発話データなどのオーディオデータであるかもしれない。これらは、CD、DVD又はハードディスクなどの記憶媒体に格納されるか、又は音声信号が処理される必要があるときなどにマイクロフォンによりキャプチャされるかもしれない。他のソースのデータもまた、装置の装着状態に応じて本発明の実施例に従って処理される。例えば、呼び出しが行われたときに振動する携帯電話のヘッドセットが、片耳しかヘッドフォンに接続されていないケースと比較して、両耳がヘッドフォンに接続されているときは異なる方法により動作するよう構成されるかもしれない。例えば、信号の強さが、ヘッドフォンが片耳しかカバーしていないときは増大され、ユーザの他方の耳から話されたヘッドフォンは、振動が回避されるかもしれない。マッサージ機器は、触覚データが使用される一例である。
【0047】
装置は、生成された出力データを提供するよう構成される出力ユニットを有するかもしれない。検出された装着情報に従って入力データを処理することにより取得される出力データは、ヘッドセットのラウドスピーカを介し出力されるオーディオデータであるかもしれない。このような出力データはまた、振動誘導信号又は触覚特性であるかもしれない。また、嗅覚データが出力されるかもしれない。
【0048】
出力ユニットは、生成された出力データを再生するための再生ユニットとして構成されるかもしれない。オーディオデータが処理される場合、再生ユニットは、ラウドスピーカ又は他のオーディオ再生要素であるかもしれない。
【0049】
検出ユニットは、ユーザがウェアラブル装置に用いる耳の数、ユーザがウェアラブル装置により使用する体の部位、及びユーザの頭からイヤカップが取り外されているか否かからなる群の装着情報の少なくとも1つのコンポーネントを検出するよう構成されるかもしれない。例えば、ユーザ(DJなど)が耳からヘッドフォンを取り外すと、この装着状態の変更は、温度、圧力、赤外線又は信号相関センサにより検出され、再生モードがこれに応じて変更されるかもしれない。装置がマッサージ機器であるとき、マッサージ動作モードは、マッサージ機器にユーザが接している体の部位に対応するよう調整されるかもしれない。このようなユーザとマッサージ機器との間の接触は、装置がユーザにより装着されているかのようにみなされるかもしれない。
【0050】
検出ユニットは、ウェアラブル装置の装着状態を示す情報を自動検出するよう構成されるかもしれない。従って、検出はユーザのやりとりなく実行され、これにより、ユーザは他の活動に集中することができ、装着情報を手動により入力するスイッチを使用する必要がない。しかしながら、自動的な検出に加えて、ユーザはまた装着情報を詳細化するため、手動により入力することも可能である。
【0051】
処理ユニットは、ユーザがウェアラブル装置により両耳を使用していることを検出すると、出力データをステレオデータとして生成するよう構成されるかもしれない。さらに又はあるいは、処理ユニットは、ユーザがウェアラブル装置により片耳しか使用していないことを検出すると、出力データをモノデータとして生成するよう構成されるかもしれない。さらに又はあるいは、処理ユニットは、ユーザがウェアラブル装置により耳を使用していないことを検出すると、出力データを全く生成しないよう構成されるかもしれない。
【0052】
デフォルトモードでは、装置はステレオを出力し、片耳しか使用されていないことが検出された場合に限って、モノ再生へのスイッチが行われるかもしれない。あるいは、デフォルトモードはモノ再生モードであり、両耳が使用されていることが検出される場合に限って、ステレオへのスイッチが行われるかもしれない。これらの手段を採用することによって、片耳モードにおいては、認識可能な信号はステレオモードにより失われることが確保されるかもしれない。同様に、両耳モードでは、ステレオ情報全体がリスナーに供給されることが確保されるかもしれない。
【0053】
処理ユニットは、ユーザがウェアラブル装置により少なくとも所定数の耳を使用していることを検出すると、出力データを少なくとも3つのチャネルを有するマルチチャネルデータとして生成するよう構成されるかもしれない。例えば、オーディオチャネルに加えて、このようなマルチチャネルシステムは、画像若しくは光情報又は匂い情報を利用するかもしれない。また、オーディオサラウンドシステム(例えば、6つのチャネルを使用する)が2より多くのチャネルにより実現されるかもしれない。
【0054】
処理ユニットは、ユーザがウェアラブル装置により使用する耳の数の検出に基づき入力データのオーディオミックスとして出力データを生成するよう構成されるかもしれない。これは、オーディオパフォーマンスを向上させるかもしれない。
【0055】
装置は、オーディオ信号、特に当該装置を装着するユーザの発話信号を入力データとして受け付けるよう構成される1以上、特に2つのマイクロフォンを有するかもしれない。オーディオ信号の間の相関は、検出される装着情報の基礎として使用されるかもしれない。
【0056】
より詳細には、装置はオーディオソースに関して実質的に対称的に配置される2つのマイクロフォンを有するかもしれない(例えば、ヘッドフォンの2つのイヤカップに配置され、これにより、発話を発信する音声ソースとして機能するユーザの口に対称的に配置される)。これら2つのマイクロフォンは、オーディオ信号の間の相関が装着情報の基礎として用いられるオーディオソースにより発信されるオーディオ信号を入力データとして受け付けるよう構成されるかもしれない。このようなシナリオでは、2つのマイクロフォンが、それらに等距離に配置された口のユーザの発話などを検出するかもしれない。この発話は、入力オーディオデータとして検出されるかもしれない。さらに、互いに関するこれらのオーディオデータの相関は、両耳又は片耳しか使用されていないかに関する情報として検出及び利用されるかもしれない。
【0057】
検出ユニットは、2つのマイクロフォンにより受付されるオーディオデータのインパルスレスポンス解析に基づき装着情報を検出するよう構成される適応的フィルタユニットを有するかもしれない。このような検出機構は、装着状態の高い精度の検出を可能にするかもしれない。
【0058】
処理ユニットは、2つのマイクロフォンにより受付されたオーディオデータに基づきビーム形成データを提供するよう構成されるビーム形成ユニットを有するかもしれない。すなわち、受け付けた発話は、同じデータから導出される装着情報に従って利用及び処理され、これにより、検出された発話と装着状態の両方を考慮した出力ビームの形成を可能にする。
【0059】
ウェアラブル装置のさらなる実施例が説明される。しかしながら、これらの実施例はまた、ウェアラブル装置のためのデータ処理装置、ウェアラブル装置のためのデータ処理方法、コンピュータ可読媒体及びプログラム要素に適用される。
【0060】
ウェアラブル装置は、ポータブル装置、より詳細には携帯装置として実現可能である。このため、当該装置は、ユーザの体の位置又は構成に従って利用されるかもしれない。
【0061】
ウェアラブル装置は、GSM装置、ヘッドフォン、DJヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドセット、イヤピース、イヤセット、携帯アクチュエータ、ゲーム装置、ポータブルオーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、CDプレーヤー、ハードディスクベースメディアプレーヤー、インターネットラジオ装置、公衆エンターテイメント装置、MP3プレーヤー、ハイファイシステム、車両エンターテイメント装置、自動車エンターテイメント装置、ポータブルビデオプレーヤー、携帯電話、医療通信システム、携帯装置、健康機器、マッサージ機器、音声通信装置及び補聴器として実現可能である。“自動車エンターテイメント装置”は、自動車のハイファイシステムであるかもしれない。
【0062】
しかしながら、本発明の実施例によるシステムは主として発話、音声又はオーディオデータの再生若しくは記録を向上させるためのものであるが、本システムをオーディオデータとビデオデータの組み合わせにも適用可能である。例えば、本発明の実施例は、ラウドスピーカが使用されるビデオプレーヤーなどのオーディオビジュアルアプリケーション又はホームシネマシステムに実装可能である。
【0063】
装置は、ラウドスピーカ、イヤピース又はヘッドセットなどのオーディオ再生ユニットを有するかもしれない。オーディオ装置のオーディオ処理コンポーネントとこのような再生ユニットとの間の通信は、有線(ケーブルなどを用いて)又は無線(WLAN、赤外線通信、ブルートゥースなどを介し)実行されるかもしれない。
【0064】
本発明の上記及び他の特徴は、後述される実施例を参照して明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
各図面の記載は概略的なものである。異なる図面において、同様の又は同一の要素は同一の参照番号により示される。
【0066】
本発明によるウェアラブル装置(wearable apparatus)100の実施例が図1を参照して説明される。
【0067】
このケースでは、ウェアラブル装置100は、サポートフレーム111、左耳部112及び右耳部113を有するヘッドフォンとして構成される。左耳部112は、左ラウドスピーカ114と装着状態検出手段116とを有する。右耳部113は、右ラウドスピーカ115と装着状態検出手段117とを有する。ウェアラブル装置100はさらに、本発明によるデータ処理装置120を有する。
【0068】
データ処理装置120は、制御ユニットとしての中央処理ユニット121(CPU)と、複数のオーディオアイテム(音楽楽曲など)が格納されるハードディスク122と、ユーザが装置を操作するためのユーザインタフェースユニットとして示される入出力ユニット123と、以降において装着状態と呼ばれるウェアラブル装置100が装着される状態を示す情報を生成するためのセンサ情報を受信するよう構成される検出インタフェース124とを有する。
【0069】
CPU121は、各コンポーネントの機能を調整するため、ラウドスピーカ114,115、検出インタフェース124、ハードディスク122及びユーザインタフェース123に接続される。さらに、検出インタフェース124は、装着状態検出手段116,117に接続される。
【0070】
ユーザインタフェース123は、液晶ディスプレイなどの表示装置と、キーパッド、ジョイスティック、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識システムのマイクロフォンなどの入力要素とを有する。
【0071】
ハードディスク122は、入力されたオーディオデータ、すなわち、ヘッドフォンのラウドスピーカ114,115により再生されるデータを受付又は供給する入力ユニット又はソースとして機能する。さらなる処理のためのハードディスク122からCPU121へのオーディオデータの伝送は、CPU121の制御の下で及び/又はユーザインタフェース123を介しユーザにより入力されるコマンドに基づき実現される。
【0072】
装着状態検出手段116,117は、ユーザが頭部にヘッドフォンを装着し、片方又は両方の耳が耳部112,113に隣接しているか示す検出信号を生成する。検出手段116,117は、ユーザがヘッドフォンを装着しているとき又は装着していないとき、耳部112,113の温度が変化するため、温度センサに基づきこのような状態を検出するかもしれない。あるいは、検出信号は、各信号間の相関が装着状態を求めるためCPU121により評価可能となるように、発話又は環境から取得される音響検出信号であってもよい。
【0073】
CPU121は、現在の装着状態に従ってラウドスピーカ114,115により再生される再生可能なオーディオ信号を生成するため、検出された装着状態に従って再生されるオーディオデータを処理する。
【0074】
例えば、ユーザが片方の耳しかないヘッドフォンを使用しているとき、モノ再生モードが調整されるかもしれない。両耳が使用されているとき、ステレオ再生モードが調整されるかもしれない。
【0075】
図2を参照して、本発明によるデータ処理装置200の実施例が説明される。
【0076】
データ処理装置200は、ウェアラブル装置(図1に示されたものと同様の)と接続されて使用されるかもしれない。
【0077】
図2の全体システムブロック図から理解できるように、オーディオ信号ソース122は、左耳信号201と右耳信号202とを出力し、これらの信号を処理ブロック121に供給する。ヘッドフォン110の装着検出機構116,117は、左耳装着検出信号203と右耳装着検出信号204とをCPU121に供給する。CPU121は、左耳再生信号205と右耳再生信号206とを生成するため、左耳装着検出信号203と右耳装着検出信号204とに従ってオーディオ信号ソース122により発信されるオーディオ信号201,202を処理する。再生信号205,206は、可聴的な再生のためヘッドフォン110(又はイヤフォン、ヘッドセット若しくはイヤセット)に供給される。
【0078】
図2のオーディオデータ処理装置200は、片方若しくは両方の耳がリスニングに使用されているか又は何れも使用されていないか識別することを可能にするため、入力として検出機構116,117からの装着情報を利用する。さらに、他の入力信号として、オーディオ信号201,202がヘッドフォン110に直接送信される。ヘッドフォン110に出力される信号が、再生可能なオーディオ信号205,206を提供するため供給される(任意的な出力増幅段階により又はなしに)。
【0079】
図2に与えられる全体的なアーキテクチャを参照して、2つの実施例が後述される。
【0080】
第1実施例は、携帯電話又はポータブル音楽プレーヤーに関する。再生装置には、アクティブデジタル信号処理が含まれている。処理ブロックは、以下のテーブル1に記載される。
【0081】
【表1】

上記テーブルによる“処理されるモノ”信号は、例えば、
・左信号プラス右信号
・ステレオリスニングレベルと対比した10dBレベル(ユーザがアラートを維持することを所望し、他人と通信可能な状況に自動的に調整するため)
・ステレオリスニング状態と対比した低音ブースト(片方の耳しか音声を受信していないとき、低音へのセンシティビティの欠落を補償するため)
などである。
【0082】
未装着のイヤフォンの音声は、近傍の人々へのノイズの迷惑を低減するためスイッチオフされる。
【0083】
第2実施例は、DJヘッドフォンに関する。
【0084】
ヘッドフォンに含まれるアナログ電子回路(ワイヤに付属される制御ボックス又はイヤシェル(ear shell)に含まれる電子機器)は、両耳がリスニングに使用されるときに限って、サウンドをステレオに切り替える。
【0085】
以下のテーブル2から詳細が抽出可能である。
【0086】
【表2】

このように、モノ音声が常に両方のイヤシェルから出力される(片方のイヤシェルしか取り上げず、それを1秒間耳に緩やかに当てる場合でさえ常に再生を聴く準備ができている)。これらのヘッドフォンは、装着状態がそれを証明するときに限ってステレオにスイッチする。
【0087】
図3〜7を参照して、イヤカップの除去の検出と通信用のステレオヘッドセットとを関連付けるさらなる実施例が説明される。
【0088】
ワイヤレスブルートゥースヘッドセットは、ますます小型化し、ブルートゥース接続を搭載した携帯電話を介し音声通信にますます利用されている。マイクロフォンブームは、良好な信号対雑音比(SNR)を取得するため、口に接近したマイクロフォンと共に最初に利用可能な製品にほとんど常に使用されている。使用が簡単なため、マイクロフォンブームはまずます小型化されることが想定されるかもしれない。マイクロフォンとユーザの口との距離が大きくなるため、SNRが低下し、ノイズを低下させ、エコーを除去するためのデジタル信号処理が利用される。さらなるステップは、2つのマイクロフォンを使用し、さらなる処理を実行することである。フィリップスは、Life Vibes(登録商標)ボイスポートフォリオの一部として、2つのマイクロフォンを使用し、ビーム形成を利用して(非)定常雑音抑制を提供するNoise Voidアルゴリズムを利用する。Noise Voidアルゴリズムは、以降においてアダプティブビームフォーマの一例として使用されるが、本発明の実施例は、固定的と適応的の両方のタイプの他の何れかのビームフォーマと共に使用可能である。
【0089】
図3において、Noise Voidアルゴリズムベースシステムのブロック図が示され、耳部に搭載されたブームの2つのマイクロフォンを備えたヘッドセットシナリオについて説明される。
【0090】
図3は、アダプティブビームフォーマ301aとポストプロセッサ302とを有する構成300を示す。プライマリマイクロフォン303(ユーザの口に最も近いもの)が第1マイクロフォン信号u1を供給するよう構成され、セカンダリマイクロフォン304が、第2マイクロフォン信号u2をアダプティブビームフォーマ301aに供給するよう構成される。信号z及びx1は、アダプティブビームフォーマ301aにより生成され、入力信号z及びx1に基づき出力信号を生成するポストプロセッサ302の入力に供給される。ビームフォーマ301aは、アダプティブフィルタに基づき、マイクロフォン入力u1,u2毎に1つのアダプティブフィルタを有する。EP0,954,850に、使用されるアダプティブビーム形成アルゴリズムが記載される。アダプティブビームフォーマは、最初の収束後、所望されないノイズと一緒にマイクロフォン303,304により抽出される所望の音声を含む出力信号zと、マイクロフォンにより抽出される定常及び非定常バックグラウンドノイズが存在し、所望のニアエンド音声がブロックされる出力信号x1とを提供する。そのとき、信号x1は、ポストプロセッサ302におけるスペクトルノイズ抑制のためのノイズリファレンスとして機能する。
【0091】
アダプティブビームフォーマ係数は、いわゆる“インビーム検出”結果が適用されるときに限って更新される。これは、ニアエンドスピーカがアクティブであり、マイクロフォン303,304とアダプティブビームフォーマ301aの合成されたシステムにより構成されるビームに話すことを意味する。良好なインビーム検出が次に与えられる。すなわち、それの出力は、以下の2つの条件が充足されるときに適用される。
【0092】
【数1】

ここで、Pu1及びPu2は各自のマイクロフォン信号の短期間のパワーであり、αは正の定数(典型的には、1.6)であり、βは他の小さな正の定数(典型的には、2.0)であり、P及びPx1はそれぞれ信号u1及びu2の短期間のパワーであり、CPx1はコヒーレンス項としてCを備えるzにおける(非)定常雑音の推定される短期間のパワーである。このコヒーレンス項は、x1における定常雑音コンポーネントの短期間のパワーにより除されるzにおける定常雑音コンポーネントの短期間のパワーとして推定される。上記2つの条件の最初のものは、2つのマイクロフォン303,304とユーザの口との間の距離の差から予想できる2つのマイクロフォン303,304との間の音声レベル差を反映している。上記2つの条件の第2のものは、xにおける音声がバックグラウンドノイズを十分な程度まで超えることを要求する。
【0093】
図3に示されるポストプロセッサ302は、S.F.Bollによる“Suppression of Acoustic Noise in Speech using Spectral Subtraction”(IEEE Trans.Acoustics,Speech and Signal Processing,Vol.27,pages 113−120,April 1979)と、Y.Ephraim及びD.Malahによる“Speech enhancement using a minimum mean−square error short−time spectral amplitude estimator”(IEEE Trans.Acoustics,Speech and Signal Processing,Vol.32,pages 1109 to 1121,December 1984)に説明されるようなスペクトル減算技術に基づくかもしれない。このような技術は、US6,546,099に記載されるような外部のノイズリファレンス入力により拡張されるかもしれない。
【0094】
それは、(非)定常バックグラウンドノイズx1と、加法性の所望されない(非)定常バックグラウンドノイズを伴う所望の音声を含む信号zとの入力に対するリファレンス信号を取得する。入力信号サンプルは、フレームベースでHanningウィンドウ化され、次にFFT(Fast Fourier Transform)により周波数ドメインに変換される。取得される2つの(複素数値)スペクトルはZ(f)及びX(f)により示され、それらのスペクトルの大きさは|Z(f)|及び|X(f)|により示される。ここで、fはFFTの結果の周波数インデックスである。内部的には、ポストプロセッサ302は、|Z(f)|からスペクトル最小サーチ(R.Martinによる“Spectral subtraction based on minimum statistics”(Signal Processing VII,Proc.EUSIPCO,Edinburgh(Scotland,UK),September 1994,pages 1182−1185)に説明される)によりバックグラウンドノイズスペクトルの定常部分を計算し、それは|N(f)|として示される。それの出力の大きさスペクトルとして|Y(f)|により、ポストプロセッサ302は以下のスペクトル減算ルールをz1に適用する。
【0095】
【数2】

γは、いわゆるオーバ減算パラメータ(典型的には、1〜3の間の値)であり、γは定常雑音に対するオーバ減算パラメータであり、γは非定常雑音に対するオーバ減算パラメータである。χ(f)の項は、定常雑音が1回しか減算されないように(すなわち、|N(f)|のみにより)、|X(f)|から非定常雑音部分のみを選択する周波数に依存する訂正項である。χ(f)を計算するため、追加的なスペクトル最小サーチが、それの定常部分|N(f)|をもたらす|X(f)|に対して必要とされ、そのとき、χ(f)は、
【0096】
【数3】

により与えられる。
【0097】
あるいは、簡単化のため、γを0に設定し(|N(f)|の計算を回避できる)、χ(f)を1に設定することができる。このように、さらに定常及び非定常雑音コンポーネントが抑制される。|Y(f)|を計算するための式に従う理由は、定常雑音部分と非定常雑音部分とに対して異なるオーバ減算パラメータを有するためである。
【0098】
単に、出力スペクトルのフェーズに対してzの変更されないフェーズが取得される。最終的には、向上したSNRによる時間ドメイン出力信号yが、周知のオーバラップ再構成アルゴリズム(S.F.Bollによる上述された文献などにおけるものなど)を利用してそれの複素スペクトルから構成される。
【0099】
しかしながら、マイクロフォン303,304を極めて近くに配置すると、ビームフォーマ301aのロウバストネスは低下し始める。まず、マイクロフォンパワーPu1及びPu2の音声レベルの差は無視できるものとなり、上記式Pu1>α*Pu2を使用することはもはやできないかもしれない。また、Pz>β*C*Px1の式は、コヒーランス関数Cが低い中間周波数に対してより大きなものとなるため、信頼できなくなる。ビームフォーマ301aが良好に収束しない場合、ノイズリファレンス信号の音声漏れは上記条件を偽にし、アダプティブビームフォーマ301aの更新はなくなるであろう。
【0100】
これらの問題を解決するための1つの方法は、マイクロフォンを各イヤカップに設けることである。マイクロフォン303,304の間の距離は大きくなり(典型的には17cm)、コヒーランス関数Cは大きな周波数レンジにおいて小さくなる(ほぼ1)であろう。そのとき、P>βCPx1の式は、信頼できるインビーム検出手段として利用可能である。
【0101】
実験は、両方のイヤカップが耳に配置され続ける場合、このマイクロフォンの配置と図3に示されるビームフォーマ301aが良好でロウバストな結果を生じさせることを示した。イヤカップの1つが取り除かれるとき(所望される発話者が同じ部屋などにいる他人の話を聞くことを所望する際に生じる可能性がある状況)、所望のスピーカの発話は抑制される。その理由は、ビームフォーマ301aが発話に対して適応されないためであり、ビームフォーマ301aのリファレンス信号における音声漏れが更新を中断させ(インビーム検出の条件2が偽となる)、これはポストプロセッサ302による音声抑制を生じさせることとなる(|Y(f)|を計算するための上記式を参照されたい)。これを解決するため、イヤカップの除去を検出し、この場合にビーム形成をバイパスし、1チャネルモードにより継続することが効果的であるかもしれない。
【0102】
イヤカップの除去の上述したタスクに対する解決手段が、以降に与えられる。
【0103】
この検出は以下の認識に基づく。ニアエンドスピーカは、所望のスピーカに関して対称的に配置されるマイクロフォン303,304に相対的に近い。これは、マイクロフォン信号が音声に対して大きなコヒーランスを有し、ほぼ等しいことを意味する。ノイズについて、2つのマイクロフォン信号の間のコヒーランスははるかに小さくなる。
【0104】
これは、図4の構成400に示されるように、2つのマイクロフォン303,304の間に適応的フィルタを配置することによって利用可能である。
【0105】
図4は、イヤカップ除去を検出する単一の適応的フィルタ401を示す。
【0106】
マイクロフォン304の信号u2は、Δサンプルだけ遅延する。ここで、Δは典型的には、適応的フィルタ401の係数の個数の1/2であり、インパルスレスポンスhu1u2(n)は0からN−1までの範囲内である。遅延ユニットは参照番号402により示され、合成ユニットは参照番号403により示される。所望のスピーカがアクティブであるとき、hu1u2(Δ)は大きくなる。典型的には、それはノイズの多い状況でさえ0.3より大きくなる。所望のスピーカがアクティブでないとき(長い時間)、hu1u2(Δ)は0.3より小さくなる。より一般には、ノイズ信号に対して(極めて近いノイズソースから発生するものを除いて)、hu1u2(n)は0,...,N−1のレンジのすべてのnについて0.3より小さくなる。
【0107】
イヤカップの1つが外され、外されたイヤカップが依然として相対的に近くにあると仮定されるとき、0.3より大きいインパルスレスポンスhu1u2(n)において、しかしながらΔと異なる位置にピークを確認することができる。ノイズ信号に対して、極めて近いノイズソースから生じるものを再び除いて、すべての係数について0.3より大きなピークは存在しないことが依然として成り立つ。このとき、イヤカップの取り外しの検出のためのアルゴリズムは、以下のステップ(典型的にはピーク検出は0.3である)、すなわち、
・(ピーク>ピーク検出)かつ(ピーク位置=Δ)である場合、両方のイヤカップが耳にある、
・(ピーク>ピーク検出)かつ(ピーク位置≠Δ±1)である場合、イヤカップの1つが外された、
・ピーク検出より大きなピークがない場合、所望のスピーカはアクティブでなく、検出状態を変更する必要はない、
から構成される。
【0108】
イヤカップの1つが外され、所望のスピーカの口から外されたイヤカップまでの距離が残りのイヤカップの耳までの距離より大きいと仮定された場合、ピークの位置から左又は右のイヤカップが外されたか効果的に決定される。
【0109】
図4を参照するに、左のイヤカップが外されると、n=Δの左においてインパルスレスポンスhu1u2(n)におけるピークが検出され、右のイヤカップが外されると、n=Δの右でピークが検出される。なぜなら、適応的フィルタ401は、イヤカップの取り外しにより招かれた(追加的な)遅延を補償しようとするためである。
【0110】
この設定では、ピークのサイズは、右のイヤカップが取り外される場合と比べて、左のイヤカップが取り外されるときとは、一般に異なる。例えば、図4において、左のイヤカップが取り外され、マイクロフォンの音声レベルが残りのイヤカップの音声レベルより低くなると仮定された場合、ピークは大きくなる。なぜなら、適応的フィルタ401の入力は、所望の信号と比べて低いためである。右のイヤカップが取り外され、右のイヤカップの音声レベル(適応的フィルタについて所望される信号)が左のイヤカップ(適応的フィルタ401の入力信号)と比較して低いと仮定される反対のケースでは、ピークは小さくなる。この非対称性は、図5に示されるように、異なる減算ポイントによる同じ長さの2つの適応的フィルタを効果的に用いることによって解決することが可能である。
【0111】
図5は、第1適応的フィルタ401と第2適応的フィルタ501とを有する構成500を示す。
【0112】
この設定では、ピークのサイズは、右のイヤカップが取り外されるケースと比較して、左のイヤカップが取り外されるとき、一般に異なるものとなる。例えば、図4において、左のイヤカップが取り外され、マイクロフォンの音声レベルが残りのイヤカップの音声レベルより低いと仮定された場合、ピークは大きくなる。なぜなら、適応的フィルタ401の入力は所望の信号と比較して低くなるためである。右のイヤカップが取り外され、右のイヤカップの音声レベル(適応的フィルタ401に対する所望される信号)が左のイヤカップ(適応的フィルタの入力信号)と比較して低いと仮定される反対のケースでは、ピークは小さくなる。
【0113】
図5に示されるような異なる減算ポイントによる同じ長さの2つの適応的フィルタ401,501を利用することは、この非対称性を解決することができる。
【0114】
1つの合成されたインパルスレスポンスが、
【0115】
【数4】

として各インパルスレスポンスhu1u2(n)とhu2u1(n)から求められる。
【0116】
この式では、Nは奇数であり、nは0からN−1までの範囲内である。イヤカップの取り外しの検出と、左の又は右のイヤカップが取り外されたかの検出は、単一の適応的フィルタのケースと同様であるが、左右のイヤカップの取り外しの状況はここでは同じである。
【0117】
図6を参照して、本発明による処理装置600の実施例が説明される。
【0118】
上述された特徴に加えて、検出ユニット601aが設けられる。さらに、異なるイヤカップ状態に関連する番号“1”,“2”及び“3”が使用される。番号“1”は両方のイヤカップが装着されていることを示し、番号“2”は左のイヤカップが取り外されていることを示し、番号“3”は右のイヤカップが取り外されていることを示すかもしれない。
【0119】
データ処理装置600は、単一の適応的フィルタ401を用いたアルゴリズムの一例である。
【0120】
図7のデータ処理装置700は、2つの適応的フィルタ401,501が実装される実施例を示す。
【0121】
両方のケースにおいて、すなわち、図6と図7において、両方のイヤカップが耳にあるか(モード1)、左のイヤカップが取り外されたか(モード2)又は右のイヤカップが取り外されたか(モード3)を示すフィルタ係数が検出ユニット601aに送信される。この場合、ビーム形成は装着情報(WI)に依存する。イヤカップが取り外されなかった場合、スイッチS1,S2,S3及びS4はポジション1にあり、ビームフォーマ301aは完全な動作状態である。左の又は右のイヤカップが取り外されたと検出された場合、他方のイヤカップの信号がポストプロセッサ302に直接供給され、この場合、定常雑音抑制のみが行われる(すなわち、|Y(f)|を計算するための上記式では、γ2χ(f)|X1(f)|の項は0となる)。ユーザが偶然に左と右のイヤカップを交換した場合、パフォーマンスは変わらない。
【0122】
図6及び7の実施例の適用分野は、例えば、音声通信に用いられるステレオヘッドフォンアプリケーションである。
【0123】
“有する”という動詞とその派生語は他の要素又は特徴を排除するものでなく、“ある”という冠詞は複数を排除するものでないことに留意すべきである。異なる実施例に関して説明された要素は合成されるかもしれない。
【0124】
また、請求項における参照符号は請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、本発明によるウェアラブル装置の実施例を示す。
【図2】図2は、本発明によるデータ処理装置の実施例を示す。
【図3】図3は、2マイクロフォンノイズ抑制システムのブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施例によるイヤカップの取り外しを検出する単一の適応的フィルタを示す。
【図5】図5は、本発明の実施例によるイヤカップの取り外しを検出する2つの適応的フィルタを有する構成を示す。
【図6】図6は、本発明の実施例によるイヤカップの取り外しを検出する単一の適応的フィルタを有するノイズ抑制手段を示す。
【図7】図7は、本発明の実施例によるイヤカップの取り外しを検出する2つの適応的フィルタを有するノイズ抑制手段を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブル装置のためのデータ処理装置であって、
入力データを受け付けるよう構成される入力ユニットと、
センサ情報に基づき、装着状態と呼ばれる前記ウェアラブル装置が装着されている状態を示す装着情報と呼ばれる情報を生成する手段と、
前記装着情報に基づき前記入力データを処理し、出力データを生成するよう構成される処理ユニットと、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
前記入力ユニットは、オーディオデータ、音響データ、発話データ、音楽データ、ビデオデータ、画像データ、触覚データ及び振動データからなる群の少なくとも1つを前記入力データとして受け付けるよう構成される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記生成された出力データを提供するよう構成される出力ユニットを有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記出力ユニットは、前記生成された出力データを再生する再生ユニットとして構成される、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記装着情報を生成する手段は、前記ウェアラブル装置によりユーザが使用する耳の数、前記ウェアラブル装置によりユーザが使用する体の部位、及び前記ウェアラブル装置のイヤカップが前記ユーザの頭から取り外されているか否かからなる群の装着情報の少なくとも1つのコンポーネントを生成するよう構成される、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記装着情報を生成する手段は、前記ウェアラブル装置の装着状態を自動的に検出するよう構成される検出ユニットからセンサ情報を受け付けるよう構成される、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記装着情報を生成する手段は、前記ウェアラブル装置のユーザにより制御された装着状態を示す前記装着情報を検出するよう構成される検出ユニットからセンサ情報を受け付けるよう構成される、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記処理ユニットは、ユーザが前記ウェアラブル装置により両耳を用いていると検出すると、前記出力データをステレオデータとして生成し、ユーザが前記ウェアラブル装置により片耳しか用いていないと検出すると、前記出力データをモノデータとして生成し、ユーザが前記ウェアラブル装置により何れの耳も用いていないと検出すると、出力データを生成しないよう構成される、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記処理ユニットは、ユーザが前記ウェアラブル装置により少なくとも所定数の耳を用いていると検出すると、前記出力データを少なくとも3つのチャネルを含むマルチチャネルデータとして生成するよう構成される、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記処理ユニットは、前記ユーザが前記ウェアラブル装置により用いている耳の数の検出に基づき、前記出力データを前記入力データのオーディオミックスとして生成するよう構成される、請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記入力ユニットは、オーディオ信号、特に発話信号を受け付けるよう構成され、
前記オーディオ信号の間の相関は、前記装着情報を生成する基礎として用いられる、請求項1記載の装置。
【請求項12】
オーディオソースに関して対称的に配置され、前記オーディオソースにより発信されたオーディオ信号を供給するよう構成される2以上のマイクロフォンを有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記装着情報を生成する手段は、前記受け付けたオーディオ信号のインパルスレスポンス解析に基づき前記装着情報を生成するよう構成される、請求項11又は12記載の装置。
【請求項14】
前記受け付けたオーディオ信号のインパルスレスポンス解析は、前記オーディオ信号に適用される少なくとも1つの適応的フィルタユニットの出力信号に基づく、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記処理ユニットは、前記受け付けたオーディオ信号に基づくビーム形成データを提供するよう構成されるビーム形成ユニットを有する、請求項11乃至14何れか一項記載の装置。
【請求項16】
前記ビーム形成データの供給は、前記装着情報に依存する、請求項15記載の装置。
【請求項17】
請求項1記載のデータ処理装置を有するウェアラブル装置。
【請求項18】
ポータブル装置として実現される、請求項17記載のウェアラブル装置。
【請求項19】
GSM装置、ヘッドフォン、DJヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドセット、イヤピース、イヤセット、携帯アクチュエータ、ゲーム装置、ポータブルオーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、CDプレーヤー、ハードディスクベースメディアプレーヤー、インターネットラジオ装置、公衆エンターテイメント装置、MP3プレーヤー、ハイファイシステム、車両エンターテイメント装置、自動車エンターテイメント装置、ポータブルビデオプレーヤー、携帯電話、医療通信システム、携帯装置、健康機器、マッサージ機器、音声通信装置及び補聴器からなる群の少なくとも1つとして実現される、請求項17記載のウェアラブル装置。
【請求項20】
ウェアラブル装置のためのデータ処理方法であって、
入力データを受け付けるステップと、
センサ情報に基づき、前記ウェアラブル装置が装着されている装着状態と呼ばれる状態を示す装着情報と呼ばれる情報を生成するステップと、
前記装着情報に基づき前記入力データを処理し、出力データを生成するステップと、
を有する方法。
【請求項21】
プロセッサによる実行時、ウェアラブル装置のためのデータ処理方法を制御又は実行するよう構成されるプログラムであって、
前記方法は、
入力データを受け付けるステップと、
センサ情報に基づき、前記ウェアラブル装置が装着されている装着状態と呼ばれる状態を示す装着情報と呼ばれる情報を生成するステップと、
前記装着情報に基づき前記入力データを処理し、出力データを生成するステップと、
を有するプログラム。
【請求項22】
プロセッサによる実行時、ウェアラブル装置のためのデータ処理方法を制御又は実行するよう構成されるコンピュータプログラムが格納されるコンピュータ可読媒体であって、
前記方法は、
入力データを受け付けるステップと、
センサ情報に基づき、前記ウェアラブル装置が装着されている装着状態と呼ばれる状態を示す装着情報と呼ばれる情報を生成するステップと、
前記装着情報に基づき前記入力データを処理し、出力データを生成するステップと、
を有するコンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−530950(P2009−530950A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501003(P2009−501003)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050964
【国際公開番号】WO2007/110807
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】