説明

ウェットインジケーター組成物

【課題】熱可塑性及び柔軟性を有し、水濡れ前の初期色相が無色であり、水濡れによって応答性よく鮮やかに発色し、なおかつ水濡れ以外での吸湿等による自然発色、色抜け、色滲み等の不都合を起こし難いウェットインジケーター組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のウェットインジケーター組成物は、pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)0.1〜5重量%、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)20〜90重量%、ポリアルキレングリコール(c)20〜35重量%、カルボキシル基を有するポリマー(d)0〜70重量%、(b)及び(d)以外の酸性物質(e)0.1〜5重量%を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に濡れると発色して水濡れを通知するウェットインジケーターとして機能する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水に濡れた事を通知する機構としてウェットインジケーターが使用されている。この用途の一つとして、使い捨て不織布吸収性製品と組み合わせて、乳児が尿をしたことを直接みなくてもわかることで交換時期を通知する技術が知られている(特許文献1及び2)。
【0003】
【特許文献1】特表2004−512425号公報
【特許文献2】特開2005−261466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、最初から色がついているウェットインジケーターが変色するという機構であり、オムツ表面にデザインがある場合にはそのデザインを隠蔽したり汚損してしまうという欠点があった。
【0005】
特許文献2に開示されている技術は、無色のウェットインジケーターが体液と接触することで発色するという機構であるため、オムツ表面のデザインの隠蔽や汚損といった不都合は生じにくいものの、該ウェットインジケーターの水濡れに対する発色の素早さ(応答性)の点で改善の余地があった。
【0006】
また、従来のウェットインジケーターが使用された使い捨て不織布吸収性製品に関しては、尿に濡れなくても湿度によって自然発色してしまい、使用に耐えなくなった例も報告されている。更にアプリケーションとして塗布時の粘度が非常に低く塗布しづらいという報告も為されている。
【0007】
また、従来のウェットインジケーターは、水に濡れたときに該ウェットインジケーターに含有されていた発色成分が外に流出し、その結果、発色しても経時により色が抜けたり(色抜け)、あるいは該ウェットインジケーターの周辺が汚れる(色滲み)等の問題を起こすことがあった。
【0008】
従って本発明の目的は、熱可塑性及び柔軟性を有し、水濡れ前の初期色相が無色であり、水濡れによって応答性よく鮮やかに発色し、なおかつ水濡れ以外での吸湿等による自然発色、色抜け、色滲み等の不都合を起こし難いウェットインジケーター組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)0.1〜5重量%、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)20〜90重量%、ポリアルキレングリコール(c)20〜35重量%、カルボキシル基を有するポリマー(d)0〜70重量%、(b)及び(d)以外の酸性物質(e)0.1〜5重量%を含有するウェットインジケーター組成物を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウェットインジケーター組成物は、熱可塑性及び柔軟性を有し、塗布対象物に塗布し易く、取り扱い性に優れる。また本発明のウェットインジケーター組成物は、水濡れ前の初期色相が無色であり、水に濡れると応答性良く発色し、水濡れを通知する機能を持ち、更には水濡れ以外での吸湿等による自然発色、色抜け、色滲み等の不都合を起こし難い。従って、本発明のウェットインジケーター組成物は、これらの特性を活かして、使い捨ておむつ等の吸収性物品をはじめ、種々の用途に有効に使用することができる。
【0011】
特に、本発明のウェットインジケーター組成物は、主として特定のpH指示薬とポリアルキレングリコールとを特定の配合比で含んでいることにより、熱可塑性、柔軟性及び防湿性に優れ、初期色相が無色で水に濡れると応答性良く発色することができ、水濡れを通知するウェットインジケーターとして有効なものである。通常、ポリアルキレングリコールなどの親水性のポリマーを含む組成物において該ポリマーの配合量を増やすと、該組成物の防湿性が低下する傾向があるが、本発明のウェットインジケーター組成物においては、適量のポリアルキレングリコールを使用することにより、ポリアルキレングリコールと界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルとの間にpH指示薬や酸性物質が取り込まれるため、むしろ防湿性を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のウェットインジケーター組成物は、pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)と、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)と、ポリアルキレングリコール(c)と、カルボキシル基を有するポリマー(d)と、(b)及び(d)以外の酸性物質(e)とを含有する。
【0013】
[pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)]
本発明のウェットインジケーター組成物における、pH7で実質的に無色(無色あるいは白色)で酸性領域で発色するpH指示薬(a)(以下、pH指示薬(a)ともいう)は、ウェットインジケーター組成物を発色させるものである。
【0014】
pH指示薬(a)としては、一般にカラーフォーマーと言われるラクトン構造を有するものが水濡れ前の色相の薄さと水濡れ後の発色の鮮やかさから好適である。pH指示薬(a)は、所望の変色時の色に応じて、水濡れ前の初期色相が実質的に無色である公知のpH指示薬の中から適宜選択することができる。例えば、青色に変色させる場合、pH指示薬(a)としては3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタライドを用いることができる。赤色に変色させる場合、pH指示薬(a)としては3、6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4’−ニトロ)−アニリノラクタムを用いることができる。緑色に変色させる場合、pH指示薬(a)としては2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオランを用いることができる。中でも3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)−4−アザフタリドは、配合量が比較的少量でも十分な発色性を示すため、pH指示薬(a)として好ましく用いられる。
【0015】
本発明のウェットインジケーター組成物におけるpH指示薬(a)の配合量は、ウェットインジケーター組成物の重量に対して0.1〜5重量%、特に0.3〜2.5重量%の範囲にあることが好ましい。pH指示薬(a)の配合量が0.1重量%未満の場合は水濡れ後の発色の鮮やかさが悪く、一方5重量%を超える場合には水濡れ前の初期色相が濃くなり好ましくない。
【0016】
[界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)]
本発明のウェットインジケーター組成物に界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)を含有させる主たる目的は、1)ウェットインジケーター組成物中の各成分の分散を助け親水性物質と疎水性物質との混合を均一にすること、及び2)ウェットインジケーターとして使用された場合に色抜けや色滲み等の不都合を防止すること、の2つである。即ち本発明においては、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)を、単に界面活性剤として使用するだけではなく、色抜けや色滲み等の防止剤としても使用している。
【0017】
前記2)の目的について更に説明する。この種のウェットインジケーター組成物には通常、界面活性作用を有する物質(界面活性剤)が配合されるが、配合される界面活性剤の種類によっては、ウェットインジケーター組成物の塗布部(インジケーター)が水に濡れたときに、該塗布部に含まれていた界面活性剤が発色成分と共に外に流出し、これにより該塗布部が水に濡れても発色しなかったり、あるいは該塗布部が発色しても経時により色が抜けたり(色抜け)、あるいは該塗布部の周辺が汚れる(色滲み)。これに対し、界面活性剤として界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合には、このような不都合を招くおそれがない。
【0018】
界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)としては、例えばモノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、モノグリセライドステアリン系界面活性剤、モノグリセライドオレイン系界面活性剤、モノグリセライドステアリン・オレイン系界面活性剤等を挙げることができる。界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)として特に好ましいものは、モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤(中純度モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤)である。ウェットインジケーター組成物中にモノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤を含有させることにより、ウェットインジケーター組成物の経時保存性が高まり、経時による発色性の低下を効果的に防止することができる。
【0019】
尚、本発明に係る界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)には、界面活性作用を有しないグリセリン脂肪酸エステル、例えばトリグリセライド、ジグリセライドの一部等のグリセリン脂肪酸エステルは含まれない。
【0020】
本発明のウェットインジケーター組成物における界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)の配合量は、ウェットインジケーター組成物の重量に対して20〜90重量%、特に25〜65重量%の範囲にあることが好ましい。界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)の配合量が20重量%未満の場合、上述した効果が十分に得られず、一方配合量が90重量%を超える場合には粘度の低下による塗布加工性の低下や防湿性の低下が発生し、好ましくない。
【0021】
[ポリアルキレングリコール(c)]
本発明のウェットインジケーター組成物におけるポリアルキレングリコール(c)は、ウェットインジケーター組成物の防湿性を向上させたり、発色の応答性を調整するものである。
【0022】
ポリアルキレングリコール(c)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。
【0023】
ポリアルキレングリコール(c)は、その重量平均分子量が100〜4000、特に500〜2000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が斯かる範囲にあるポリアルキレングリコール(c)を用いることにより、以下に説明するように、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)〔(中純度)モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤〕を用いることに起因する弊害を回避することが可能となる。即ち、ウェットインジケーター組成物において界面活性剤として上述した界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルを用いると、他の界面活性剤を用いた場合に比してウェットインジケーター組成物の親水性が低下し、これによりウェットインジケーター組成物が水に濡れてから発色するまでの時間(変色時間)が長くなる傾向がある。これに対し、上述したように界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルと共に重量平均分子量が100〜4000の範囲にあるポリアルキレングリコールを併用することにより、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルに起因するウェットインジケーター組成物の親水性の低下が効果的に防止され、変色時間の長期化を阻止することが可能となる。
【0024】
本発明のウェットインジケーター組成物におけるポリアルキレングリコール(c)の配合量は、ウェットインジケーター組成物の重量に対して20〜35重量%、特に10〜35重量%の範囲にあることが好ましい。ポリアルキレングリコール(c)の配合量が20重量%未満では上述した効果が十分に得られず、一方35重量%を超える場合には防湿性が低下するため好ましくない。
【0025】
[カルボキシル基を有するポリマー(d)]
本発明のウェットインジケーター組成物におけるカルボキシル基を有するポリマー(d)は、ウェットインジケーター組成物の防湿性を向上させ、粘度を調整するものである。特に、アルキレンアクリル酸共重合体が、他の原料との相溶性の点で好ましい。
【0026】
カルボキシル基を有するポリマー(d)としては、EAA(エチレンアクリル酸)、EMAA(エチレンアクリル酸メチル)、EMMA(エチレンメタクリル酸メチル)を挙げることができる。
【0027】
本発明のウェットインジケーター組成物におけるカルボキシル基を有するポリマー(d)の配合量は、ウェットインジケーター組成物の重量に対して0〜70重量%、特に20〜60重量%の範囲にあることが好ましい。ポリマー(d)の配合量が70重量%を超える場合には、ウェットインジケーター組成物の水濡れ前の初期色相が濃くなり好ましくない。
【0028】
[(b)及び(d)以外の酸性物質(e)]
本発明のウェットインジケーター組成物における(b)及び(d)以外の酸性物質(e)(以下、酸性物質(e)ともいう)は、ウェットインジケーター組成物に配合されるpH指示薬(a)の水濡れ時の発色のための顕色剤として配合される。
【0029】
酸性物質(e)としては、クエン酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、シュウ酸、酢酸、蟻酸、尿酸、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などを挙げることができる。
【0030】
酸性物質(e)には、ウェットインジケーター組成物の水濡れ前の初期色相を無色にする等の観点から、23℃で固体である酸を配合することが好ましい。また、酸性物質(e)は、水濡れを通知するウェットインジケーター機能を十分に発現させる観点から、23℃で固体であるものが好ましい。
【0031】
本発明のウェットインジケーター組成物における酸性物質(e)の配合量は、ウェットインジケーター組成物の重量に対して0.1〜5重量%、特に0.5〜1.5重量%であることが好ましい。酸性物質(e)の配合量が0.1重量%未満の場合には水濡れ後の発色が薄く、一方5重量%を越える場合には水濡れ前の初期色相が濃すぎて好ましくない。
【0032】
本発明に係るホットメルト組成物を構成する、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)、ポリアルキレングリコール(c)、及びカルボキシル基を有するポリマー(d)は、低温での塗工適正を有することや熱劣化を防ぐ点で、いずれも130℃以下の軟化点(R&B式)を有するものが好ましい。
【0033】
R&B式軟化点の測定方法は、「日本工業規格」JIS(JAPAN Industrial Standard)K 6863−1944による環球法による軟化点試験方法により規定されている。
【0034】
本発明のウェットインジケーター組成物は、130℃で24時間連続して加熱されても変色機能を維持することができ、耐熱性に優れている。ここで、「変色機能を維持できる」とは、上記条件で加熱されたウェットインジケーター組成物が、尿等の体液と接触したときに、加熱前と同様に変色できることを意味する。
【0035】
本発明のウェットインジケーター組成物は、室温40℃、相対湿度80%RHの環境下に24時間放置されても変色機能を維持することができ、耐湿性に優れている。ここで、「変色機能を維持できる」とは、上記環境下に放置されたウェットインジケーター組成物が、尿等の体液と接触したときに、上記環境下に放置される前と同様に変色できることを意味する。
【0036】
本発明のウェットインジケーター組成物の軟化点は、低温塗布による塗布性向上を狙う観点から、好ましくは75〜100℃、更に好ましくは75〜90℃である。軟化点の調整は、例えばカルボキシル基を有するポリマー(d)と他の成分との配合比を調整することにより行うことができる。
【0037】
本発明のウェットインジケーター組成物は、該ウェットインジケーター組成物の温度が80〜130℃のときにおける粘度を、好ましくは20〜12000mPa・sの範囲、更に好ましくは2000〜8000mPa・sの範囲に調整することができる。従来のこの種のおむつに使用されているホットメルト組成物の多くは、温度80〜130℃のときにおける粘度の範囲が、概ね1000〜2000mPa・sの範囲にあり、粘度の調整可能範囲が狭いため、塗布方法が限定される、直線や簡単な図形などの単純な塗布パターンしか対応できない、塗布時にホットメルト組成物が周囲に飛散したり塗布不良を起こしたりしやすい、などの不都合があった。これに対し、本発明のウェットインジケーター組成物は上記粘度範囲に調整可能であるため、塗布方法の選択の幅が広く、従来のウェットインジケーター組成物の塗布では利用できなかったインクジェット方式などの種々の塗布方法を利用でき、複雑な塗布パターンの形成が可能となり、塗布時のウェットインジケーター組成物の飛散、塗布不良を防止することができる。
【0038】
本発明のウェットインジケーター組成物は、使い捨ておむつ等の吸収性物品、内容物の水漏れを検知するシール等、種々の用途に好適に使用することができる。以下に、上述した本発明のウェットインジケーター組成物を用いた吸収性物品について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1には、該吸収性物品の第1実施形態としての展開型の使い捨ておむつが示されている。図2は、図1におけるI−I線断面図である。
【0039】
第1実施形態のおむつ1は、液透過性の表面シート2、透湿性及び液不透過性の裏面シート3、及び両シート2,3間に介在された液保持性の吸収体4を具備している。おむつ1は、図1に示すように、実質的に縦長に形成されており、長手方向中央部に股下部Aを有し、且つ股下部Aから長手方向前後にそれぞれ延びる腹側部B及び背側部Cを有している。股下部Aはおむつ着用時に着用者の股下に位置する部位、腹側部Bは着用者の腹側に位置する部位、背側部Cは着用者の背中側に位置する部位である。股下部Aは、おむつ長手方向を3等分したときの中央領域である。
【0040】
おむつ1は、図1に示す展開状態において、股下部Aが位置する長手方向中央部が括れた砂時計状の輪郭を有している。表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の左右両側縁及び前後両端から外方に延出しており、それらの延出部において接着剤等の接合手段により互いに接合されている。裏面シート3は、おむつ1の砂時計状の輪郭を画成している。表面シート2は、その幅方向の寸法が、裏面シート3の幅方向の寸法よりも小さくなっており、表面シート2の左右両側縁(おむつ幅方向の両端縁)は、裏面シート3の左右両側縁(おむつ幅方向の両端縁)よりも、おむつ幅方向の内方に位置している。
【0041】
吸収体4は、液保持性の吸収性コア41を液透過性の被覆シート42で被覆することにより形成されている。吸収性コア41は、パルプ繊維や吸収性ポリマー等の吸収性物質を含んで構成され、実質的に縦長で、平面視において長手方向中央部が括れた砂時計状の輪郭を有している。吸収性コア41は、その長手方向の両端面を除き、全体が被覆シート42で被覆されている。被覆シート42は、吸収性コア41を被覆することにより、その保形性を保ち、また、吸収性ポリマー等の吸収性コア41の構成成分の脱落を防止するものである。吸収体4は、表面シート2と裏面シート3との間におけるおむつ幅方向の中央部に、その長手方向をおむつ長手方向に一致させて配されている。
【0042】
被覆シート42は、寸法の異なる2枚のシートから構成されている。1枚は、吸収性コア41の長手方向及び幅方向の長さ(ここでいう吸収性コア41の幅方向の長さは、幅方向の最大長さを意味する)と同一寸法の上部被覆シート42aであり、他の1枚は、長手方向の長さは上部被覆シート42a(吸収性コア41)の長手方向の長さと同一であるが、上部被覆シート42aより幅広の下部被覆シート42bである。上部被覆シート42aは、吸収性コア41の肌対向面と対向して配されている。下部被覆シート42bは、吸収性コア41の非肌対向面と対向して配され、且つ吸収性コア41の両側縁から延出した部分が、該吸収性コア41の肌対向面を被覆する上部被覆シート42a上に巻き上げられている。上部被覆シート42aと吸収性コア41の肌対向面との間、及び下部被覆シート42bと吸収性コア41の非肌対向面との間は、それぞれ、粘着剤等の接合手段により接合されている。
【0043】
尚、本明細書において、長手方向は、吸収性物品又はその構成部材の長辺と平行な方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。また本明細書において、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品着用時に着衣側に向けられる面(着衣対向面)である。
【0044】
第1実施形態のおむつ1においては、裏面シート3と吸収体4(下部被覆シート42b)との間に、上述した本発明のウェットインジケーター組成物が塗布されて、インジケーター5が設けられている。インジケーター5は、使用前は無色あるいは白色(実質的に無色)であり、体液と接触すると他の色に変色する変色機能を有している。インジケーター5は、着用者(例えば乳幼児)の体液の排泄を使用者(例えば母親)に知らせるインジケーター手段としての機能の他、裏面シート3と吸収体4との間を接合する接合手段としての機能も果たしている。インジケーター5を設ける際は、裏面シート3の肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良く、吸収体4(下部被覆シート42b)の非肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良い。
【0045】
インジケーター5(ウェットインジケーター組成物)は、裏面シート3と吸収体4(下部被覆シート42b)との間における股下部Aのおむつ幅方向中央部に、股下部Aのおむつ長手方向の全長に亘って連続的に設けられている。おむつ着用時に着用者がうつ伏せの姿勢又は仰向け姿勢において、背側部又は腹側部に設けられたインジケーター5が視認できるような位置に設けられることが好ましい。インジケーター5は、例えば、ベビー用おむつの場合、細長の長方形形状を有しており、その長手方向の長さは、好ましくは30〜200mm、更に好ましくは50〜150mmであり、幅方向の長さは、好ましくは2〜300mm、更に好ましくは5〜20mmである。
【0046】
インジケーター5の腹側部B寄りの長手方向一端5bと、おむつ1の腹側部B側の長手方向一端1bとの間の最短距離L1は、おむつ1の長手方向の全長に対して、好ましくは20〜40%、更に好ましくは25〜30%の範囲にある。また、インジケーター5の背側部C寄りの長手方向他端5cと、おむつ1の背側部C側の長手方向他端1cとの間の最短距離L2は、おむつ1の長手方向の全長に対して、好ましくは20〜40%、更に好ましくは20〜30%の範囲にある。
【0047】
インジケーター5は、上述した本発明のウェットインジケーター組成物を所定箇所に塗布し、必要に応じ塗布後に乾燥することにより、設けることができる。ウェットインジケーター組成物の塗布方法は特に限定されず、被塗布物と接触しながら塗布する接触型、あるいは被塗布物と接触せずに塗布する非接触型の公知の塗布方法を用いることができる。例えば、ロールコーター等の接触型の各種コーターや、ビードガン、スパイラルガン、サミットガン、オメガガン、スプレーガン、コームガン、インクジェット等の非接触型の塗布装置を用いることができる。
【0048】
インジケーター5の坪量(ウェットインジケーター組成物の塗布量)は、塗布ムラ回避の観点から、好ましくは10〜50g/m2、更に好ましくは15〜25g/m2である。
【0049】
以下、第1実施形態のおむつ1について更に説明する。裏面シート3の非肌対向面側には、不織布からなる外層シート6が配されている。裏面シート3と外層シート6との間は、接着剤等の接合手段により接合されている。外層シート6は、裏面シート3と同形である。
【0050】
おむつ1は、吸収体4の幅方向側縁部の上方に立ち上がることができる立体ギャザーを備えている。即ち、おむつ長手方向の両側それぞれには、弾性部材7を有する立体ギャザー形成用のシート材70が配されて、立体ギャザーが形成されている。
【0051】
立体ギャザー形成用のシート材70は、その一側縁に、弾性部材7が一本又は複数本(第1実施形態では3本)、伸長状態で固定されている。シート材70は、吸収体4の左右両側縁よりもおむつ幅方向外方の位置において、おむつ長手方向に沿って表面シート2に接合されており、その接合部71が、立体ギャザーの立ち上がり基端部71となっている。シート材70は、立ち上がり基端部71からおむつ幅方向の外方に延出し、その延出部において裏面シート3と接合されている。また、シート材70は、おむつ長手方向の前後端部それぞれにおいて、表面シート2と接合されている。
【0052】
股下部Aにおけるおむつ長手方向の両側それぞれには、おむつ長手方向に沿ってレッグフラップ80が形成されている。レッグフラップ80は、裏面シート4及び外層シート6が、立体ギャザーの立ち上がり基端部71(接合部71)からおむつ幅方向外方に延出することにより形成されている。レッグフラップ80は、おむつ幅方向の自由端近傍に伸張状態で裏面シート3に固定された一本又は複数本(第1実施形態では2本)のレッグギャザー形成用のレッグ弾性部材8を備えている。レッグ弾性部材8は、裏面シート3と立体ギャザー形成用のシート材70との間に配されており、表面シート2とは接していない。レッグ弾性部材8は、股下部Aの長手方向の全長に亘って配されている。
【0053】
おむつ1における背側部Cの左右両側縁部には、一対のファスニングテープ9,9が設けられており、腹側部Bの非肌対向面(外層シート6の表面)上には、ファスニングテープ9を止着するランディングゾーン10が設けられている。ファスニングテープ9は、テープ基材と、該テープ基材の片面に固定されたメカニカルファスナのオス材とを含んで構成されている。オス材としては、当業界で公知のものを特に制限なく用いることができる。ランディングゾーン10は、不織布や樹脂フィルム等からなる基材シートと、該基材シートに貼り合わされたメカニカルファスナのメス材とを含んで構成されている。メス材としては、ファスニングテープ9を構成する前記オス材を押しつけることにより、該オス材を止着可能なものを特に制限なく用いることができる。
【0054】
表面シート2としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、尿などの液体を透過させることができるものであれば制限はなく、例えば、合成繊維又は天然繊維からなる織布や不織布、多孔性シート等が挙げられる。表面シート2の一例として、芯成分にポリプロピレンやポリエステル、鞘成分にポリエチレンを用いた、芯鞘構造型(サイドバイサイド型含む)複合繊維をカーディングによりウエブ化した後、エアスルー法によって不織布(この後所定箇所に開孔処理を施しても良い)としたものが挙げられる。また、透液性の高さの点(ドライ感)から、低密度ポリエチレン等のポリオレフィンからなる開孔シートも好ましく用いることができる。表面シート2の坪量は、好ましくは20〜50g/m2である。
【0055】
裏面シート3としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、液不透過性又は撥水性で且つ透湿性のものが好ましく用いられる。裏面シート3としては、例えば、液不透過性又は撥水性の多孔性樹脂フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)、液不透過性又は撥水性の不織布、あるいは該多孔性樹脂フィルムと該不織布との積層体等が挙げられる。液不透過性又は撥水性の不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS)等が挙げられる。裏面シート3の坪量は、好ましくは10〜20g/m2である。
【0056】
また、裏面シート3の非肌対向面側に配される外層シート6としては、裏面シート3としても好適に用いられる、液不透過性又は撥水性の不織布の他、多孔性樹脂フィルム等が好ましく用いられる。外層シート6の坪量は、好ましくは15〜35g/m2である。
【0057】
吸収体4を構成する吸収性コア41としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、尿などの液吸収性を有するものであればその種類は特に制限されず、例えば吸収性ポリマー、粉砕パルプ等の吸収性物質を吸収紙や不織布に挟み込んだものなどが挙げられる。吸収性ポリマーはパルプ中に混合された状態で用いられる他、裏面シート3側に散布したり、層状にして厚み方向中央に挿入したりすることができる。あるいは、公知手段によりポリマーシート化するなどの手段で部分的に配置してもよい。また、吸収体4に合成繊維や架橋処理等をおこなった嵩高パルプ繊維を配合して、液吸収時の圧縮部の復元性を向上させてもよい。また、吸収性ポリマーは用いなくてもよい。前記吸収性ポリマーとしては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
吸収体4を構成する被覆シート42(上部被覆シート42a、下部被覆シート42b)としては、この種のおむつにおいて台紙などと称して従来用いられている各種のものを用いることができ、液透過性を有するものが好ましく、例えば、繊維材シートや、穿孔フィルムなどを用いることができる。液の透過が良好な観点から、被覆シート42は親水性の繊維シートからなることが好ましい。親水性の繊維シートとしては、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布を用いることができる。不織布としては、コットンやレーヨンなどの親水性繊維からなる不織布や、合成樹脂の繊維に親水化処理を施してなる不織布が挙げられる。具体的には、界面活性剤で処理されたスパンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。被覆シート42の坪量は、好ましくは12〜20g/m2である。
【0059】
弾性部材7,8としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、例えば、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、スチレン系ゴム、ポリウレタン等からなる糸状ゴムや平ゴム、ウレタンフォームバンド等が用いられる。
【0060】
第1実施形態のおむつ1は、通常の展開型のおむつと同様に使用できる。このおむつ1は、上述した成分(a)〜(e)を含有する本発明のウェットインジケーター組成物からなるインジケーター5を備えているため、尿、便、血液などの体液の排泄をおむつの使用者に速やかに知らせることができる。インジケーター5は、体液に対する応答性に優れており、体液と接触してから1分以内に変色することが可能である。
【0061】
また、インジケーター5は、体液と接触する前は実質的に無色(無色あるいは白色)であるため、インジケーター5と重なる位置に印刷デザインが施されていても、インジケーター5によって印刷デザインが隠蔽されたり、汚損されたりするおそれがなく、おむつの印刷デザインをインジケーターを考慮せずに自由に設計することができる。また、インジケーター5は、耐熱性、耐湿性、耐候性(耐光性)に優れ、色抜け、色滲み等の不都合を起こし難いため、上述したインジケーター5の変色機能は長期間安定して維持される。
【0062】
また、インジケーター5は、体液と接触することにより濡れて変色した後、乾燥すると変色前の色に戻る。更に、インジケーター5は、乾燥して変色前の色に戻った後に濡れると再び変色し、「濡れによる変色」、「乾燥による色戻り」を繰り返すことが可能である。このような色可逆性は、従来のこの種のインジケーター機能付き吸収性物品には無かった特性であり、従来のインジケーター機能付き吸収性物品においては、インジケーターは一旦濡れて変色(発色)すると、乾燥しても元の色に戻らない。このため、従来のインジケーター機能付き吸収性物品は、例えばおむつの使用前に、大気中に含まれる水分等によってインジケーターが変色してしまうと、未使用にもかかわらず、廃棄せざるを得ないという問題があった。これに対し、本実施形態のおむつ1は、インジケーター5が色可逆性を有しているため、使用前に大気中に含まれる水分等によってインジケーター5が変色しても、乾燥させて元の色(実質的に無色)に戻すことができ、未使用のおむつを廃棄するという無駄を防止することができ、製造コストを抑えることができる。
【0063】
また、インジケーター5を構成する本発明のウェットインジケーター組成物は、上述したように、従来のウェットインジケーター組成物に比して80〜130℃における粘度の調整範囲が20〜12000mPa・sと広いため、種々の塗布方法を利用することができ、塗布方法の選択により、直線や曲線、図柄、文字など、種々の塗布パターンの形成が可能であり、更に、塗布時のウェットインジケーター組成物の飛散や塗布不良を抑制することができるため、おむつの品質向上(製品クレームの減少)を図ることができる。ウェットインジケーター組成物の塗布パターンの選択の幅が広いことは、発色後の色の選択の幅が広いことと相俟って、おむつ替えが楽しくなるようにデザインされたおむつの作製を可能にする。
【0064】
以下、本発明のウェットインジケーター組成物を用いた吸収性物品の他の実施形態について説明する。以下の実施形態については、上述した第1実施形態のおむつ1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態のおむつ1についての説明が適宜適用される。
【0065】
図3は、本発明のウェットインジケーター組成物を用いた吸収性物品の第2実施形態を示す図である。第2実施形態においては、裏面シート3と吸収体4との間に中間シート9が介在されており、該裏面シート3と該中間シート9との間に前記ウェットインジケーター組成物が塗布されて、インジケーター5が設けられている。具体的には、第2実施形態のインジケーター5は、裏面シート3と中間シート9との間における股下部Aのおむつ幅方向中央部に、股下部Aのおむつ長手方向の全長に亘って連続的に設けられている。第2実施形態のインジケーター5を設ける際は、裏面シート3の肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良く、中間シート材9の非肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良い。
【0066】
中間シート9は、主として、吸収体からの尿染み出し防止や吸収サブシートやワンポイントデザイン印刷などの目的のために配されている。中間シート9は長方形形状を有しており、その幅方向の長さは吸収体4の幅方向の長さ(吸収体4の最大幅の長さ)と略同一であり、その長手方向の長さは吸収体4の長手方向の長さと略同一である。吸収体4と中間シート9との間は、接着剤等の接合手段により接合されている。中間シート9としては、例えば、フィルム、撥水性不織布、親水性不織布、台紙等を用いることができる。中間シート9の坪量は、好ましくは10〜50g/m2である。上述の如き構成を有する第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0067】
図4は、本発明の第3実施形態を示す図である。第3実施形態においては、表面シート2と吸収体4(上部被覆シート42a)との間に前記ウェットインジケーター組成物が塗布されて、インジケーター5が設けられている。具体的には、第3実施形態のインジケーター5は、表面シート2と吸収体4との間における股下部Aのおむつ幅方向中央部に、股下部Aのおむつ長手方向の全長に亘って連続的に設けられている。第3実施形態のインジケーター5を設ける際は、表面シート2の非肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良く、吸収体4(上部被覆シート42a)の肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良い。上述の如き構成を有する第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏され、更に、インジケーター5が吸収体4よりも着用者の股下に近い位置にあるため、おむつの体液の排泄量が少量の場合でもインジケーター5が変色し、少量でも排泄があったことをおむつの外側から知ることができる。
【0068】
上述した吸収性物品においては、ウェットインジケーター組成物は、尿、便、血液等の体液が通過する箇所に塗布されれば良く、ウェットインジケーター組成物の塗布箇所、即ち、インジケーター5の塗設箇所は、上述した実施形態に限定されない。例えば、裏面シート3と外層シート6との間にウェットインジケーター組成物を塗布することもできる(以下、この実施形態を第4実施形態という)。具体的には例えば、裏面シート3と外層シート6との間における股下部Aのおむつ幅方向中央部に、股下部Aのおむつ長手方向の全長に亘って連続的にウェットインジケーター組成物を塗布して、インジケーター5を設けることもできる。この第4実施形態においては、裏面シート3の非肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良く、外層シート6の肌対向面上にウェットインジケーター組成物を塗布しても良い。第4実施形態は、上述した第1〜第3実施形態に比して、インジケーター5が着用時におけるおむつの外方に最も近い位置に設けられているため、インジケーター5の変色がおむつの外側から使用者に確認され易いという効果を奏する。
【0069】
また、上述した各実施形態のように、おむつが、吸収体4の幅方向側縁部の上方に立ち上がることができる立体ギャザーを備えている場合には、該立体ギャザー形成用の弾性部材7にウェットインジケーター組成物を塗布することができる。この場合、立体ギャザー形成用の弾性部材7自体が、体液の排泄を知らせるインジケーターとして機能する。
【0070】
また、ウェットインジケーター組成物は、おむつにおける複数の箇所に塗布されていても良く、上述した各実施形態におけるウェットインジケーター組成物の塗布箇所(インジケーター5の塗設箇所)は、適宜組み合わせることができる。例えば、上述した第1〜第4実施形態において、更に、立体ギャザー形成用の弾性部材7の表面にウェットインジケーター組成物を塗布することができる。
【0071】
また、ウェットインジケーター組成物の塗布パターンは、上述した実施形態のように1本の細長の長方形形状に限定されず、直線や曲線、図柄、文字などを使って自由に設計することが可能である。図5には、本発明に適用可能なウェットインジケーター組成物の塗布パターン(インジケーター5の塗設パターン)の例が示されている。尚、図5に示す形態は、何れも裏面シート3の肌当接面上にウェットインジケーター組成物を塗布する形態であり、図5では説明容易のため、表面シート2、吸収体4及び立体ギャザーの図示を省略している。図5に示すウェットインジケーター組成物の塗布パターンは、おむつにおける他の部材、例えば表面シート2、吸収体4、外層シート6にウェットインジケーター組成物を塗布する場合にも適用できる。
【0072】
図5(a)に示す実施形態は、おむつ長手方向に延び且つおむつ幅方向に並列配置された複数(図5(a)では5本)のウェットインジケーター組成物塗布部(インジケーター)5a〜5eを有している。これら複数のインジケーターは、おむつ幅方向中央に位置する中央インジケーター5aと、該中央インジケーター5aを挟んで左右対称位置に配置された複数のインジケーター5b及び5cとを有している。中央インジケーター5aと該中央インジケーター5a以外の他のインジケーター5b及び5cとは発色時の色が異なっており、且つ他のインジケーター5bと5cは、中央インジケーター5aからの距離に応じて発色時の色が異なっている。即ち、中央インジケーター5aと、該中央インジケーター5aから所定距離離間した位置にある一対のインジケーター5b,5bと、該インジケーター5bよりもおむつ幅方向外方に位置する一対のインジケーター5c,5cとで、発色時の色が異なっている。斯かる構成により、おむつにおける排泄された体液の分布状況を容易に把握することが可能となり、おむつ端部からの漏れを事前に察知することができる。
【0073】
図5(b)に示す実施形態は、おむつ幅方向に延び且つおむつ長手方向に並列配置された複数(図5(b)では5本)のインジケーター5a〜5eを有している点以外は、図5(a)に示す実施形態と同様に構成されており、図5(a)に示す実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
図5(c)及び図5(d)に示す実施形態は、ウェットインジケーター組成物(インジケーター5)で図柄を作成した例、図5(e)に示す実施形態は、ウェットインジケーター組成物で文字を作成した例、図5(f)及び図5(g)に示す実施形態は、ウェットインジケーター組成物で図柄と文字の組み合わせを作成した例である。
【0075】
以下に、本発明のウェットインジケーター組成物を用いた吸収性物品の包装構造について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図6には、該包装構造の一実施形態としての使い捨ておむつの包装構造(包装パッケージ)が示されている。図6(a)は、本実施形態の包装構造の斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に示す包装構造の内容物(おむつの集積体)の斜視図である。
【0076】
本実施形態の包装構造20は、上述した第1実施形態のおむつ1を包装材21で包装してなるもので、包装構造20の内部には、インジケーター5を具備する複数のおむつ1が、折り畳まれた状態で集積されて収容されている。包装材21は、この種の包装構造における包装材と同様の材料、例えばポリエチレン等から形成されている。包装材21には、包装構造20の開封を容易にするためのミシン目21aが設けられている。以上の構成は、従来のおむつの包装構造と同様である。
【0077】
従来のインジケーター機能付きおむつの包装構造は、包装材のミシン目やシール不良部分などから滲入した水分によってインジケーターが一旦変色してしまうと、元の色に戻らないため、製品を廃棄せざるを得ないという問題があった。これに対し、本実施形態の包装構造20は、上述したように、収容されているおむつ1のインジケーター5が、濡れて変色しても乾燥すれば変色前の色に戻ることができるため、このような問題を起こさない。
【0078】
また、従来のインジケーター機能付きおむつの包装構造は、インジケーターの耐候性(耐光性)に乏しく、外気や外光に晒されていると経時的にインジケーターが変色するため、これを防止する目的で包装材にチタンを該包装材の重量に対して7〜8重量%以上含有させる必要があり、このため、製造コストがかさむという問題があった。これに対し、本実施形態の包装構造20は、上述したように、収容されているおむつ1のインジケーター5が耐候性(耐光性)に優れているため、コストアップの要因となるチタンの使用量を従来品よりも低減することができ、安価に製造することができる。本実施形態に係る包装材21中のチタン含有量は、好ましくは8重量%未満、更に好ましくは3〜5重量%である。ここでいうチタンとは、酸化チタン(通常マスターバッチ材に含有されている)である。また、包装材21としては、この種の包装構造で用いられているものと同様のものを用いることができる。
【0079】
本発明のウェットインジケーター組成物が適用可能な吸収性物品は、上述した展開型のおむつに制限されず、いわゆるパンツ型のおむつ、使い捨てパッド、生理用ナプキン、ナプキン型失禁パッド、ショーツカバー、尿吸収機能を有するブリーフパンツ等も挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲は斯かる実施例に制限されるものではない。
【0081】
(ウェットインジケーター組成物の作製)
下記表1〜表3に示した界面活性剤(グリセリン脂肪酸エステル)(b)及びポリアルキレングリコール(c)を攪拌機を備えた耐熱ガラスビーカーに加え、内容物が130℃以上にならないように加熱した。溶融したら、均一になるように攪拌した。次にカルボキシル基を有するポリマー(d)を徐々に加えた。最後にpH指示薬(a)及び酸性物質(e)を添加してウェットインジケーター組成物を作製した。
【0082】
下記表1〜表3に示したpH指示薬(a)、界面活性剤(界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル)(b)、ポリアルキレングリコール(c)、カルボキシル基を有するポリマー(d)、酸性物質(e)の詳細は以下の通りである。尚、下記表1〜表3において、試験項目の欄よりも上に記載されている数値は各成分の配合量(単位:重量%)である。
【0083】
[pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)]
(a)−1:3、6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4’−ニトロ)−アニリノラクタム(酸性領域で赤色に変色)
(a)−2:2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン(酸性領域で緑色に変色)
(a)−3:3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−dジメチルアミノフタライド(酸性領域で青色に変色)
(a)−4:3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)−4−アザフタリド(酸性領域で青色に変色)
【0084】
[界面活性剤(界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル)(b)]
(b)−1:中純度モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤(23℃で固体、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルの一種)
(b)−2:グリセロールモノステアレート(23℃で固体、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルの一種)
(b)−3:ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル(23℃で液体、ノニオン系ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの一種)
(b)−4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(23℃で液体、ノニオン系ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの一種)
(b)−5:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(軟化点70℃、ノニオン系ポリオキシエチレンアルキルエーテルの一種)
(b)−6:アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド(23℃で液体、カチオン系第四級アンモニウム塩の一種)
(b)−7:特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(23℃で液体、アニオン系界面活性剤の一種)
(b)−8:エトキシ化アルコール(23℃で固体、ノニオン系ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの一種)
尚、(b)−3〜8は何れも界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルではない。
【0085】
[ポリアルキレングリコール(c)]
(c)−1:ポリエチレングリコール(重量平均分子量600)(軟化点23℃)
(c)−2:ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)(軟化点37℃)
(c)−3:ポリエチレングリコール(分子量重量平均3000)(軟化点53℃)
(c)−4:ポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)(軟化点60℃)
(c)−5:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量3000)(23℃で液体)
【0086】
[水溶性原料(c’)]
(c’)−1:ポリビニルアルコール(重量平均分子量3000)(23℃で液体)
【0087】
[カルボキシル基を有するポリマー(d)]
(d)−1:EAA(MFR1300g/10min)(軟化点75℃)
(d)−2:EAA(MFR300g/10min)(軟化点82℃)
(d)−3:EMAA(MFR300g/10min)(軟化点80℃)
(d)−4:EMMA(MFR450g/10min)(軟化点90℃)
【0088】
[カルボキシル基を有しないポリマー(d’)]
(d’)−1:EVA(MFR400g/10min)(軟化点70℃)
(d’)−2:SIS(MFR40g/10min)
【0089】
[(b)及び(d)以外の酸性物質(e)]
(e)−1:クエン酸
(e)−2:コハク酸
(e)−3:無水酢酸
【0090】
(ウェットインジケーター組成物の評価)
上記のようにして作製したウェットインジケーター組成物について、下記(1)〜(9)の試験項目を下記の手順に従って評価した。下記(3)〜(9)については、110℃に溶融したウェットインジケーター組成物をバックシート上にハンドコーターを用いて20g/m2の塗布量で塗布してインジケーターを形成し、試験片とした。該バックシートとして、市販の花王メリーズの透湿シート(片面に不織布がラミネートされている)を用いた。これらの結果を下記表1〜表3に示す。
【0091】
(1)軟化点:
ウェットインジケーター組成物の軟化点は、「日本工業規格」JIS(Japan Industrial Standard)K 6863−1944による環球法による軟化点試験方法に従って評価した。
【0092】
(2)粘度:
ウェットインジケーター組成物の粘度は、JIS K 6862(A法)に準じて評価した。即ち、予め測定温度より10℃高い温度で溶融させた金属缶用ウェットインジケーター組成物300gを試験容器に入れ、大気中において棒温度計で十分に攪拌しながら測定温度になったところでB型粘度計(東機産業(株)製 TOKIMEC VISCOMETER MODEL:BM)を用いて該ウェットインジケーター組成物の粘度を測定した。ウェットインジケーター組成物を攪拌する際、必要に応じて適当なローターを用いた。
【0093】
(3)変色時間:
変色時間とは、作製した前記試験片を一定の条件で濡らしたときに濡らしてから発色あるいは変色を確認できるまでの時間である。具体的には、前記試験片のインジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させてから該インジケーターの発色あるいは変色が目視で確認できるまでの時間を変色時間として測定し、該変色時間が10秒以内の場合を◎、10秒を越えて60秒以内の場合を○、60秒を越えて1時間以内の場合を△、1時間を越えても発色しない場合を×とした。該変色時間が短いものほど、水濡れに対する応答性に優れ高評価となる
【0094】
(4)防湿性:
防湿性とは、作製した前記試験片を室温40℃、相対湿度80%RHの環境下に静置した時のインジケーターの発色のし難さである。前記試験片を該環境下に静置してから48時間以内にインジケーターに発色のない場合を○、24時間以内に発色無いが48時間以内に発色する場合を△、24時間以内に発色する場合を×とした。発色の有無は目視で判断した。上記環境下で発色するまでの時間が長いものほど、防湿性に優れ高評価となる。
【0095】
(5)初期色相:
初期色相とは、水濡れ前の前記試験片のインジケーターの色相である。具体的には、作製した試験片を室温23℃、相対湿度65%RHの環境下に24時間静置した後、該試験片のインジケーターを目視で観察し、このときのインジケーターの色相を初期色相とする。この初期色相が無色の場合を○、初期色相がやや着色している場合を△、初期色相が△の場合よりも更に濃い色に着色している場合を×とした。初期色相が無色に近いほど高評価となる。
【0096】
(6)発色性:
発色性とは水濡れ後の試験片の色相である。前記試験片のインジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させてから1時間経過後に該インジケーターを目視により観察し、インジケーターが充分に発色している場合を○(最高評価)、やや発色している場合を△、無色とほぼ区別がつかない場合を×とした。
【0097】
(7)色滲み:
前記試験片のインジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させてから6時間経過後に該試験片のバックシートを目視で観察し、該バックシートに発色した該インジケーターからの転移による色滲みが全く確認できない場合を○(最高評価)、若干発色が確認できる場合を△、強い発色が見られる場合を×とした。
【0098】
(8)色抜け:
前記試験片のインジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させてから6時間経過後の該インジケーターの発色状態を基準として、該インジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させてから6時間経過後の該インジケーターの発色状態が前記基準と同等の場合を○(最高評価)、前記基準よりも低下している(色が薄くなっている)が発色を確認できる場合を△、発色の確認が困難な場合を×とした。尚、発色状態の良否及び発色の確認は目視で行った。
【0099】
(9)経時保存性:
前記試験片を室温23℃、相対湿度65%RHの環境下に15日間放置した後、該試験片のインジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させてから該インジケーターの発色あるいは変色が目視で確認できるまでの時間を変色時間として測定し、該変色時間が10秒以内の場合を◎(最高評価)、10秒を越えて60秒以内の場合を○、60秒を越えて1時間以内の場合を△、1時間を越えても発色しない場合を×とした。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
実施例1は、全ての評価項目において良好な結果となった。特に実施例1は、界面活性剤(b)として界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルの一種である、中純度モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤を用いているため、色滲み及び色抜けが比較例に比して優れている。また実施例1は中純度モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤に加えて、上述した重量平均分子量が100〜4000の範囲にあるポリアルキレングリコールを併用しているため、中純度モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤に起因する親水性の低下が殆ど見られず、変色時間等の他の試験項目についても良好な結果が得られた。また実施例1と2との対比から、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルとして中純度モノグリセライド自己乳化型ステアリン系界面活性剤を用いることが、経時保存性の向上に有効であることがわかる。
【0104】
比較例は何れも界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステルを用いていないため、色滲み及び色抜けに劣る結果となった。尚、以下に説明するように、各比較例の対比からウェットインジケーター組成物における各成分の有効性等がわかる。
【0105】
比較例1〜3に示すようにラクトン環を有するpH7で実質的に無色で酸性領域を発色するpH指示薬(a)を用いることで、無色から複数の色に発色するウェットインジケーター組成物を作製することができる。
【0106】
比較例1,4〜7に示すように種々の界面活性剤(b)を用いてウェットインジケーター組成物を作製することができる。この際、アニオン(陰イオン)系の界面活性剤〔(b)−7〕では発色性がやや弱く、カチオン(陽イオン)系の界面活性剤〔(b)−6〕では初期色相がやや濃いが、ノニオン(非イオン)系の界面活性剤〔(b)−3、(b)−4、(b)−5〕ではこのような問題なく良好に使用できる。特にポリオキシエチレンアルキルエーテルでは発色性も優れ良好である。
【0107】
比較例1,8〜10に示すように種々のポリアルキレングリコール(c)を用いてウェットインジケーター組成物を作製することができる。
【0108】
比較例1,11〜13に示すように種々のカルボキシル基を有するポリマー(d)を用いてウェットインジケーター組成物を作製することができる。特にアルキレンアクリル酸共重合体を使用した例(比較例1及び11)では優れた性能を示す。
【0109】
比較例1,14,15に示すように種々の酸性物質(e)を用いてウェットインジケーター組成物を作製することができる。特に23℃で固体の酸性物質〔(e)−1、(e)−2〕では初期色相も無色で好ましい。
【0110】
比較例16,17は、主として、pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)の配合量の影響をみたものである。pH指示薬(a)の配合量が0.3〜2.5重量%の範囲にない場合には、そうでない場合に比べ初期色相や発色性がやや劣るが問題なく使用可能である。
【0111】
比較例18,19は、主として、界面活性剤(b)の配合量の影響をみたものである。界面活性剤(b)の配合量が25〜65重量%の範囲にない場合には、そうでない場合に比べ初期色相や防湿性がやや劣るが問題なく使用可能である。
【0112】
比較例20,21は、主として、ポリアルキレングリコール(c)の配合量の影響をみたものである。ポリアルキレングリコール(c)の配合量が10〜35重量%の範囲にない場合には、そうでない場合に比べ防湿性がやや劣るが問題なく使用可能である。
【0113】
比較例22は、主として、カルボキシル基を有するポリマー(d)の配合量の影響をみたものである。ポリマー(d)の配合量が20〜60重量%の範囲にない場合には、そうでない場合に比べ初期色相がやや劣るが問題なく使用可能である。
【0114】
比較例23,24は、主として、(b)及び(d)以外の酸性物質(e)の配合量の影響をみたものである。酸性物質(e)の配合量が0.5〜1.5重量%の範囲にない場合には、そうでない場合に比べ初期色相や発色性がやや劣るが問題なく使用可能である。
【0115】
比較例25はpH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)が配合されていない。この場合にはインジケーター(ウェットインジケーター組成物の塗布部)に32℃のイオン交換水を滴下させても発色は全く起こらない。比較例26はpH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)が5重量%超配合されている。この場合にはインジケーターの初期色相が非常に濃く発色前後の差が少なく使用に適さない。
【0116】
比較例27は界面活性剤(b)が配合されていない。この場合にはウェットインジケーター組成物を加熱溶融しても分散せず、各成分が均一に分散したウェットインジケーター組成物を作製することが不能であり、またインジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させても発色は全く起こらない。比較例28は界面活性剤(b)が90重量%超配合されている。この場合にはウェットインジケーター組成物は23℃でほぼ液体であり、防湿性試験において24時間を待たずに完全に発色し使用に適さない。
【0117】
比較例29はポリアルキレングリコール(c)が配合されていない。この場合には防湿性試験において24時間を待たずに完全に発色し使用に適さない。比較例30はポリアルキレングリコール(c)が35重量%を大きく越えて55重量%超配合されている。この場合にも比較例29と同様に防湿性試験において24時間を待たずに完全に発色し使用に適さない。
【0118】
比較例31はカルボキシル基を有するポリマー(d)が70重量%超配合されている。この場合には初期色相が非常に濃く発色前後の差が少なく使用に適さない。
【0119】
比較例32は(b)及び(d)以外の酸性物質(e)が配合されていない。この場合にはインジケーターに32℃のイオン交換水を滴下させても発色は全く起こらない。比較例33は(b)及び(d)以外の酸性物質(e)が5重量%超配合されている。この場合には初期色相が非常に濃く発色前後の差が少なく使用に適さない。
【0120】
比較例34はポリアルキレングリコール(c)の代わりに水溶性原料(c’)が配合されている。この場合にはウェットインジケーター組成物を加熱溶融しても分散せず、各成分が均一に分散したウェットインジケーター組成物を作製することが不能であった。
【0121】
比較例35,36はカルボキシル基を有するポリマー(d)の代わりにカルボキシル基を有しないポリマー(d’)が配合されている。この場合にはウェットインジケーター組成物を加熱溶融しても分散せず、各成分が均一に分散したウェットインジケーター組成物を作製することが不能であった。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、本発明のウェットインジケーター組成物を用いた吸収性物品の第1実施形態である展開型の使い捨ておむつを平面状に拡げた状態を示す肌対向面側の平面図である。
【図2】図2は、図1のI−I線断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明のウェットインジケーター組成物を用いた第2実施形態である展開型の使い捨ておむつの図2相当図である。
【図4】図4は、本発明のウェットインジケーター組成物を用いた第3実施形態である展開型の使い捨ておむつの図2相当図である。
【図5】図5は、吸収性物品における本発明のウェットインジケーター組成物の塗布パターン(インジケーターの形成パターン)を示す平面図である。
【図6】図6(a)は、本発明のウェットインジケーター組成物を用いた吸収性物品の包装構造の一実施形態の斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に示す包装構造の内容物(おむつの集積体)の斜視図である。
【符号の説明】
【0123】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
41 吸収性コア
42 被覆シート
42a 上部被覆シート
42b 下部被覆シート
5 インジケーター(ウェットインジケーター組成物)
6 外層シート
7 立体ギャザー形成用の弾性部材
70 立体ギャザー形成用のシート材
71 立体ギャザーの立ち上がり基端部(接合部)
8 レッグ弾性部材
80 レッグフラップ
9 ファスニングテープ
10 ランディングゾーン
20 使い捨ておむつ(吸収性物品)の包装構造
21 包装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)0.1〜5重量%、界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)20〜90重量%、ポリアルキレングリコール(c)20〜35重量%、カルボキシル基を有するポリマー(d)0〜70重量%、(b)及び(d)以外の酸性物質(e)0.1〜5重量%を含有するウェットインジケーター組成物。
【請求項2】
pH7で実質的に無色で酸性領域で発色するpH指示薬(a)が、ラクトン構造を有するものである請求項1記載のウェットインジケーター組成物。
【請求項3】
カルボキシル基を有するポリマー(d)が、アルキレンアクリル酸共重合体である請求項1又は2記載のウェットインジケーター組成物。
【請求項4】
(b)及び(d)以外の酸性物質(e)が、23℃で固体である請求項1〜3いずれかに記載のウェットインジケーター組成物
【請求項5】
ポリアルキレングリコール(c)の重量平均分子量が100〜4000の範囲にある請求項1〜4いずれかに記載のウェットインジケーター組成物
【請求項6】
界面活性作用を有するグリセリン脂肪酸エステル(b)、ポリアルキレングリコール(c)、及びカルボキシル基を有するポリマー(d)が、いずれも130℃以下の軟化点(R&B式)を有するものである請求項1〜5いずれかに記載のウェットインジケーター組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−250642(P2009−250642A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95565(P2008−95565)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】