説明

ウェットタイプの繊維ウェブ製品

【課題】拭き取り時の冷涼感が持続されるようにする。
【解決手段】繊維ウェブに薬液が含浸され、前記薬液は、糖アルコールとグリセリンと水(又は水性溶媒)を含み、前記糖アルコールは、前記薬液中に飽和溶解度を超えて含有され、固体状態で分散されているウェットタイプの繊維ウェブ製品により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットタイプの繊維ウェブ製品に関し、特に、身体の拭き取り用途に適したウェットタイプの繊維ウェブ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットティッシュ、ウェットタオルに代表されるウェットタイプの繊維ウェブ製品は、汗・皮脂の拭き取りなどの皮膚の清拭用途によく利用され、特に、暑いと感じた際、べたつきを感じた際に利用されることが多いため、拭き取り時に冷涼感が得られるものが好まれる。
従来、この主の繊維ウェブ製品においては、皮膚清拭時に冷涼感が得られるようにするために、薬液中にエタノール等の揮発性の高い物質を多く含ませるようにしている。
薬液中の当該成分の揮発による吸熱を利用して皮膚に冷涼感を付与するのである。
【特許文献1】特開2005−218745号公報
【特許文献2】特開2003−20593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のウェットタイプの繊維ウェブ製品では、その冷涼感を与える機構が、薬液中に含有させた成分の揮発性の高さによるものであるから、冷涼感は拭き取り直後に極めて短時間に感じられるだけで持続することがない。
また、ウェブ製品を収容している容器の密封性が悪かったりすると、当該成分が意図せずに揮発してしまい、所望の時に冷涼感が得られないことがある。
そこで、本発明は、ウェットタイプの繊維ウェブ製品における拭き取り時の冷涼感の持続性向上を主たる課題とし、加えて製品の取り扱い性や使用可能期間の向上をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
繊維ウェブに薬液が含浸され、
前記薬液は、糖アルコールとグリセリンと水(又は水性溶媒)を含み、
前記糖アルコールは、前記薬液中に飽和溶解度を超えて含有され、固体状態で分散されている、ことを特徴とするウェットタイプの繊維ウェブ製品。
【0005】
(作用効果)
糖アルコールは、溶解する際に高い吸熱性を発揮する。従って、これが皮膚上で溶解するときに冷涼感が得られる。
本発明は、糖アルコールを薬液中に飽和溶解度を超えて含有し、固体状態で分散させることで、ウェットタイプでありながら効果的に清拭時に皮膚に固体状態で糖アルコールが移行されるようにした。
そして、皮膚に移行された糖アルコールは、清拭時に同時に移行された薬液中の溶媒・汗・皮膚上の水分等・皮膚温度等に起因する溶解度の変化により、その一部が瞬時に溶解して吸熱効果を発揮し皮膚に冷涼感を与える。さらに汗・皮膚上の水分などの追加的な水分等による残部の溶解の進行により、冷涼感が持続的に感じられるようになる。
さらに、本発明は、薬液中にグリセリンと水とを含有させた。グリセリンは保湿成分であり、皮膚の持つ水分の蒸発を抑制する。さらに、皮膚上に保護膜を形成するなどして清拭時に移行された薬液中の水の皮膚上での揮発性を適度に抑制する。
従って、グリセリンの配合により、糖アルコールの溶解に貢献する水分等の皮膚上での揮発性が抑制され、清拭後の揮発等による一時的な過度の糖アルコールの溶媒不足に陥いることがなく、継続的に糖アルコールの溶解が進行されやすい状態が皮膚上に形成される。
このように本発明では、糖アルコールの確実な溶解と持続的な溶解の進行がなされ、冷涼感の持続性が著しく向上する。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記薬液は、冷感刺激剤が内包されたマイクロカプセルを含む請求項1記載のウェットタイプの繊維ウェブ製品。
【0007】
(作用効果)
冷感刺激剤は、揮発性が極めて高いものが多く。また、皮膚を刺激して冷涼感を与えることが知られる。
本発明では、冷感刺激剤をカプセル化して薬液中に含有させた。
カプセル化により、冷感刺激剤は清拭時までの間に揮発することはなく、清拭時に確実に皮膚上に移行される。
また、清拭時の刺激などにより皮膚上に露出した冷感刺激剤は、グリセリンによる保湿効果等と相まって、その揮発が鈍化され皮膚に刺激を持続的に付与する。これにより、冷涼感の持続性がより向上される。
【発明の効果】
【0008】
皮膚の拭き取った部分の冷涼感が長く持続するウェットタイプの繊維ウェブ製品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次いで、本発明の実施の形態を詳述する。
本発明の繊維ウェブ製品は、繊維基材に薬液を含浸したウェットタイプのものである。
この繊維ウェブ製品は、繊維基材100重量部に対して、75〜500重量部、好適に200〜400重量部の薬液が含有される。75重量部未満であると拭き取り操作時に十分に薬液が肌に移行されない。また、500重量部を超えると拭き取り操作時に薬液がたれやすく利便性に欠ける場合がある。なお、繊維基材100重量部に対して、薬液が70重量部以下となるとウェット感が著しく減少する。従って、本発明において、ウェットタイプとは少なくとも繊維基材100重量部に対して70重量を超える量の薬液が含有されているものをいう。
また、この繊維ウェブ製品中の1m2あたりの薬液の絶対量は、7.5〜350g/m2、好適には20〜200g/m2あるのがよい。薬液の絶対量が7.5g/m2未満であると、冷涼感の発現及びその持続効果が得られ難くなる。350g/m2以上あっても効果の向上がみられず、かえってコスト高となる。
【0010】
前記薬液は、糖アルコールとグリセリンと水とを含むものであり、特徴的に糖アルコールが薬液中に飽和溶解度を超えて含有され、固体状態で分散されている。
この本形態に係る薬液の調整は、例えば、グリセリンと水との混合溶液を溶媒として、これに対して粉末状の糖アルコールを飽和溶解度以上に添加することで調整できる。
なお水は、精製水、イオン交換水などの実験用途、薬剤調整用の純水を用いることができる。
水及びグリセリンは既知のものが使用でき、その比率(水:グリセリン)は95:5〜50:50とするのがよい。グリセリンの比率が5未満であると、保湿効果等による冷涼感の持続向上効果が得られ難くなる。50を超えるとシートがべたつくようになり、拭き取り時の感触が悪いものとなる。
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、アルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、マンニトールなどを、例示することができる。
好ましくは、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールであり、特に好ましくは、エリスリトールである。エリスリトールが好ましいとするのは、非常に高い吸熱力をもっているため、少量でも効果を発現し易いためである。これらの糖アルコールは、各単独で含ませることも、混合体として含ませることもできる。
【0011】
なお、冷涼感の点から、糖アルコールとしては、水に対する溶解時の吸熱量が、5cal/gより大きいものを、好ましくは15cal/gより大きいものを、より好ましくは30cal/gより大きいものを使用するのがよい。水に対する溶解熱量が少なくても含有量を多くすれば、冷涼感を強くすることができるが、含有量が過度に多くなるとコスト高となり、また、拭き取り時の肌触り性が低下する。
この場合、特に、糖アルコールの粉体の平均粒子径を1〜40μm(好ましくは3〜25μm)とするのがよい。平均粒子径が1μm未満であると、薬液製造時に粉体が飛散しやすくなる等の問題が発生し取扱い性が低下する。他方、平均粒子径が40μmを超えると、拭き取りの際に皮膚に触れた時にザラツキ感などの違和感が生じるものとなる。
【0012】
糖アルコールの含有量は、溶媒中におけるグリセリンと水との比率や糖アルコールの種類により変化するものであり、限定されるものではないが、薬液中の固形分重量比が、1〜45重量%、好適には1〜30重量%であるのがよい。1重量%未満では、冷涼感を発現させるに不十分である。また、45重量%を超えると、薬液中の糖アルコール粒子が多くなりすぎて肌触りの悪化を招く可能性がある。
また、溶媒中で飽和させた後に、さらに添加する量は、繊維基剤100質量部に対して、1〜130質量部、好ましくは50〜120質量部となる量とするのがよい。糖アルコールの含有量が1質量部未満では、冷涼感を発現させるに不十分である。他方、糖アルコールの含有量が130質量部を超えると、薬液中の糖アルコール粒子が多くなりすぎて肌触りの悪化を招く可能性がある。
【0013】
他方、本形態の薬液には、グリセリン及び水を含む溶媒に、糖アルコールとともに、冷感刺激剤を内包したマイクロカプセルを含ませることができる。
マイクロカプセル化することにより、揮発性の高い冷感刺激剤が、使用に先立って揮発するのが防止される。なお、使用時には、物理的な圧力等によって、あるいは汗などの水分によって、マイクロカプセルの膜材が壊れるため、冷感刺激剤由来の冷涼感発現効果は問題なく得られる。
【0014】
ここで、冷感刺激剤は、皮膚表面の冷感点を刺激する物質である。マイクロカプセルから流出した冷感刺激剤が皮膚表面の冷感点を刺激することによって冷涼感を発現させる。冷涼感発現のメカニズムが皮膚刺激という直接的な機構によるものであるから、糖アルコールのみの含有と比較して冷涼感の発現がより確実なものとなる。
かかる冷感刺激剤としては、例えば、メントール、サリチル酸、α−シネロール、これらの誘導体などから、一種又は二種以上を使用することができる。
【0015】
冷感刺激剤をマイクロカプセル化する方法は、例えば、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報参照)、冷感刺激剤の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報参照)、冷感刺激剤の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334号公報参照)、冷感刺激剤の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241号公報参照)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報参照)などに開示されている方法を、採用することができる。
【0016】
マイクロカプセルの膜材としては、界面重合法、インサイチュー法などの手法によって得られる、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、ゼラチンとカルボキシメチルセルロース又はアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成又は天然の樹脂などを用いることができる。
【0017】
マイクロカプセルの平均粒子径は8〜100μm、好ましくは10〜50μmであるのがよい。マイクロカプセルの粒子経は、基材に含ませる過程で物理的圧力によって破壊するのを防止するために、100μm以下、好ましくは50μm以下とする。マイクロカプセルの平均粒子径が大きくなると、外圧で容易に壊れ易くなるほか、冷感刺激剤の比重が分散液のそれと大きく差がある場合などに、浮遊したり沈降したりし易くなるので好ましくない。また平均粒子径が8μm以下ではカプセル内容物に対する膜素材の比率が大きくなるため冷感刺激剤の効果が十分得られなくなる。
マイクロカプセルの平均粒子径は、乳化剤の種類と濃度、乳化時の乳化液の温度、乳化比(水相と油相の体積比率)、乳化機、分散機等と称される微粒化装置の運転条件(攪拌回転数、時間など)などを適宜調節することにより、調節することができる。
【0018】
他方、薬液中における冷感刺激剤を内包したマイクロカプセルの含有量は、溶媒に対するマイクロカプセルが重量比(溶媒:マイクロカプセル)、99.99:0.01〜80:20とするのがよい。マイクロカプセルの比率が0.01未満であると冷感刺激剤による冷涼感が得られない。20を超えると皮膚への刺激が強すぎて痛みを感じるようになることがある。
【0019】
上述の薬液が含浸される繊維基材は、薄様紙、クレープ紙等の紙素材、不織布等が好適である。
繊維基材として、薄様紙、クレープ紙等の紙素材を用いるのであれば、その原料パルプは、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチドケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0020】
これらの原料パルプを、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、クレープ加工パート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、繊維基材を得ることができる。
抄紙に際しては、本発明の薬液の効果を阻害しない範囲で、例えば、分散剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0021】
一方、繊維基材として、不織布を用いるのであれば、その原料繊維は、例えば、パルプ、コットン、レーヨン等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとαオレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂;フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から構成される熱可塑性繊維、生分解性合成繊維などから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
前記熱可塑性繊維は、単一成分の繊維でもよく、複数の樹脂を適宜組み合わせて構成される複合繊維、例えば並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造の複合繊維とすることもできる。
薬液保持性を良好とするにはパルプ繊維を、柔らかさを良好とするためには熱可塑性繊維を用いるのがよい。好適には、天然繊維(好ましくはパルプ繊維)と熱可塑性繊維とを、90:10〜50:50の割合で混合した繊維が用いられる。
【0022】
原料繊維からの不織布の製法としては、エアスルー、ヒートロールによるサーマルボンド、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、エアレイド等の製法が採用できるが、特に、エアスルー、エアレイド、スパンレースが適する。
スパンレース法であれば、使用する繊維の繊維長は2〜100mm程とするのが好ましい。例えば、パルプ繊維の繊維長は、2mm以上10mm以下程度のものを使用することが好ましい。また、熱可塑性繊維の繊維長は20mm以上100mm以下であることが好ましい。更に好ましくは32mm以上70mm以下である。
用いる繊維の繊維太さは、1.0〜10.0dtex、好適には1.5〜7.5dtex、特に好適には2.0〜6.5dtexとする。繊維の太さが1.0dtex未満であると、乾燥時および湿潤時の引張強度が不足する。反対に10.0dtexを超えると剛性が高くなり、柔らかさに劣るようになる。
【0023】
他方、繊維基材のプライ数は、特に限定されないが1〜3プライ以下とするのがよい。3プライを超えると拭き取り操作時にプライ間でズレが生じ、皺が発生しやすくなる。
他方、繊維基材の坪量に関しては、1プライ(1枚)あたりの坪量(JIS P 8124:1998)が、10〜75g/m2、好ましくは15〜40g/m2である。坪量が10g/m2未満であると強度が弱く、破れ易くなる。また、使用時に、手側の皮膚の熱が顔側の皮膚に伝わり、冷涼感が低下する。他方、坪量が75g/m2を超えるとコストが嵩むだけでなく、しなやかさがなくなり、使用感が低下する。
【0024】
繊維基材の厚さ(尾崎製作所製ピーコックK−SH003により測定)は、例えば、最終的な製品を2プライ(2枚重ね)または3プライ(3枚重ね)とする場合は、シートが乾燥した状態で基材1枚で60〜500μm、最終的な製品を1プライ(1枚)とする場合は、基材1枚で200〜1400μmであるのが望ましい。シートの厚さが60μm未満であると坪量が上記範囲にあったとしても手で拭き取り操作時に手の熱が肌に伝わり易いため、十分な冷涼感が得られない。また、シートが1400μm以上であると手の熱は伝わりにくいもののシートの厚みにより肌触りが硬く感じられる。
【0025】
繊維基材の1プライ(1枚)あたりの密度(JIS P 8118:1998)は、0.05〜0.4g/m3、好ましくは0.08〜0.2g/m3であるのがよい。密度が0.05g/m3未満であると、紙が疎になるため、拭取り感が弱くなり、使用時に紙が破れ、あるいは破れた紙が肌に残る等拭取り用途として適当でなくなるとともに、薬液を十分に保持できなくなる。他方、密度が0.4g/m3を超えると、拭き取った際にシートを通して熱が伝わり易くなるとともに、薬液の保持量が過度となり拭き取り時に薬液がたれやすくなるなどの問題が生じやすくなる。
【0026】
繊維基材のJIS P 8113に規定される乾燥引張強度は、例えば、乾燥状態で2プライで縦方向100cN/25mm以上、特に130〜5500cN/25mm、横方向40cN/25mm以上、特に80〜2200cN/25mmであるのが好ましく、1プライで縦方向40cN/25mm以上、特に65〜3000cN/25mm、横方向20cN/25mm以上、特に40〜1300cN/25mmであるのが好ましい。基材の乾燥紙力が低過ぎると、製造時に破れや伸び等のトラブルが発生し易くなり、他方、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0027】
湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量は、パルプスラリーに対する質量比で2〜25kg/tとすることができる。また、CMCを内添する場合、その添加量は、パルプスラリーに対する質量比で0.5〜5.0kg/tとすることができる。
【実施例】
【0028】
次いで、本発明の実施例、比較例及び従来例について冷涼感の持続性等について試験した結果を示す。試験項目と試験方法は下記のとおりである。結果と各例の物性及び組成は表1に示す。
なお、各例は全て1プライとした。また、比較例1は、薬液中に糖アルコールを全く含まない例であり、比較例2は、薬液中に糖アルコール(ソルビトール)を含むが、完全に溶解しており、固形分として含まない例である。
[冷涼感の持続性]
冷涼感の持続性について官能試験した。試験は、実際に被験者に各例にかかる繊維ウェブ製品で、皮膚の拭き取りを行ってもらい、拭き取り直後からどの程度、冷涼感が持続したかについて時間を計測してもらった。被験者は20人とした。表1中の数値は、その20人の平均秒数である。
[肌触り]
実際の拭き取り操作をしたときの違和感(異物の付着感)があるか否かについて官能試験した。被験者を20人として、違和感があると評価した被験者が2人以下のものを良い(○)と評価し、3人以上のものについて良くはない(△)と評価した。
[肌への刺激]
シートを肌に当てたときに過剰な刺激を感じるか否かについて官能評価した。実際の拭き取り操作をしたときの違和感(異物の付着感)があるか否かについて官能試験を行った。被験者を20人として、過剰に刺激を感じると評価した被験者が2人以下のものを良い(○)と評価し、3人以上のものを良くはない(△)と評価した。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示される結果から明らかなとおり、本発明の実施例1〜6は、比較例1〜3及び従来例1と比べて、極めて長時間にわたって冷涼感が感じられている。
本発明の繊維ウェブ製品が、拭き取り部分の冷涼感を極めて長く持続させる効果があることが示されている。
また、実施例1〜6の中で比較検討すると、実施例4のように糖アルコールの配合割合が高いと拭き取り時に違和感があり、実施例6のようにメントールの配合が高いと肌への刺激が強く感じられることが知見された。
さらに、実施例5のように薬液の含有割合が高いと、拭き取り時に液がたれやすく拭き取り操作に気を使わなければならないことも本試験によって知見されている。
以上のことから本試験によって、本発明に係る繊維ウェブ製品による冷涼感持続向上効果と、それを発現させる好適な薬液の配合割合等が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、身体の清拭用のほか、冷涼感を発現させるための薬液にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウェブに薬液が含浸され、
前記薬液は、糖アルコールとグリセリンと水を含み、
前記糖アルコールは、前記薬液中に飽和溶解度を超えて含有され、固体状態で分散されている、ことを特徴とするウェットタイプの繊維ウェブ製品。
【請求項2】
前記薬液は、冷感刺激剤が内包されたマイクロカプセルを含む請求項1記載のウェットタイプの繊維ウェブ製品。

【公開番号】特開2008−295821(P2008−295821A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146170(P2007−146170)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】