説明

ウェーハの枚葉式エッチング装置及びウェーハの枚葉式エッチング方法

【課題】ウェーハの高平坦化を達成し、その生産性を向上する。
【解決手段】枚葉式エッチング装置は、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られた単一の薄円板状のシリコンウェーハ11をウェーハチャック12に載せて保持した状態で回転させながら、ウェーハ11の上面にエッチング液14を供給してウェーハ11を回転させることにより生じた遠心力によりウェーハ11の全ての上面をエッチングするものである。吐出口26a,27aからウェーハ11の上面にエッチング液14を噴射可能な複数の供給ノズル26,27と、複数の供給ノズルをそれぞれ別々に独立して移動させるノズル移動手段28,29と、複数の供給ノズルのそれぞれにエッチング液14を供給して複数の供給ノズルのそれぞれの吐出口からウェーハ11の上面にエッチング液14をそれぞれ噴射させるエッチング液供給手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを回転させながら、その上面にエッチング液を供給して遠心力によりウェーハの上面を1枚ずつエッチングする装置とその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体ウェーハの製造工程は、単結晶インゴットから切出し、スライスして得られたウェーハを、面取り、機械研磨(ラッピング)、エッチング、鏡面研磨(ポリッシング)及び洗浄する工程から構成され、高精度の平坦度を有するウェーハとして生産される。ブロック切断、外径研削、スライシング、ラッピング等の機械加工プロセスを経たウェーハはその上面にダメージ層、即ち加工変質層を有している。加工変質層はデバイス製造プロセスにおいてスリップ転位等の結晶欠陥を誘発し、ウェーハの機械的強度を低下させ、また電気的特性に悪影響を及ぼすため、完全に除去しなければならない。この加工変質層を取除くためにエッチング処理が施される。エッチング処理としては、浸漬式エッチングや枚葉式エッチングが行われている。
【0003】
上記エッチング処理の中で、枚葉式エッチングは大口径化したウェーハの表面粗さとテクスチャーサイズの制御を行うことができるため、最適なエッチング方法として検討されている。枚葉式エッチングは、平坦化した単一のウェーハの上面へエッチング液を滴下し、ウェーハを回転(スピン)させることにより滴下したエッチング液をウェーハ上面全体に拡げてエッチングする方法である。ウェーハ上面に供給したエッチング液は、ウェーハを回転させることにより生じた遠心力により、供給した箇所からウェーハ上面全体に拡がり、ウェーハのエッジ部に至るため、ウェーハ上面と同時にウェーハのエッジ部もエッチングされることになる。そして、供給したエッチング液の大部分は、遠心力によりウェーハのエッジ部から吹き飛んで、エッチング装置に設けられたカップ等により回収されるように構成される。
【0004】
しかし、この枚葉式エッチングでは、エッチング液の滴下が単一の供給ノズルを介して定量的に行われることからそのエッチング量にばらつきが生じ、エッチング工程を終えたシリコンウェーハの表裏面では、ラッピングや研削等の平坦化工程を終えた際のウェーハ平坦度を維持できない不具合があった。また、所望のウェーハ表面粗さも得られていないため、これらのウェーハ平坦度及びウェーハ表面粗さを改善するために、鏡面研磨工程において多くの研磨代をとる必要があり、その後の鏡面研磨工程に大きな負荷がかかっていた。
【0005】
そこで、機械研磨により生じた加工歪層を平坦度を確保しつつ効率よく除去できるシリコンウェーハ製造プロセスとして、シリコン単結晶インゴットをスライスする工程と、このスライスウェーハの端面を面取りする工程と、半導体インゴットをスライスして得られたウェーハの少なくともおもて面を平面研削又はラッピングにより平坦化加工する平坦化工程と、平坦化加工されたウェーハのおもて面をスピンエッチングによりエッチングするスピンエッチング工程と、エッチングされたウェーハのおもて面を研磨して鏡面とする研磨工程とからなる半導体ウェーハの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−135464号公報(請求項1、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示される方法では、平坦化工程で機械研磨により研削等を施す際のウェーハ保持で生じた研削痕や、ウェーハ表面にうねりを生じており、この平坦化工程に続く工程で加工歪層だけでなく、この上記研削痕やうねりを取除くために多くの研磨代をとる必要があり、やはり研磨工程に大きな負荷がかかっていた。
本発明の目的は、高平坦化を達成し、生産性を向上し得るウェーハの枚葉式エッチング装置及びウェーハの枚葉式エッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られた単一の薄円板状のシリコンウェーハ11をウェーハチャック12に載せて保持した状態で回転させながら、ウェーハ11の上面にエッチング液14を供給してウェーハ11を回転させることにより生じた遠心力によりウェーハ11の全ての上面をエッチングする枚葉式エッチング装置の改良である。
その特徴ある構成は、吐出口26a,27aからウェーハ11の上面にエッチング液14を噴射可能な複数の供給ノズル26,27と、複数の供給ノズル26,27をそれぞれ別々に独立して移動させるノズル移動手段28,29と、複数の供給ノズル26,27のそれぞれにエッチング液14を供給して複数の供給ノズル26,27のそれぞれの吐出口26a,27aからウェーハ11の上面にエッチング液14をそれぞれ噴射させるエッチング液供給手段30とを備えたところにある。
【0008】
この請求項1に記載されたウェーハの枚葉式エッチング装置では、ウェーハ11の上面にエッチング液14を供給すると、ウェーハ11の回転に伴って生じた遠心力により、エッチング液14はその供給箇所からウェーハ11の周囲に向かって徐々に移動しながらウェーハ11上面をエッチングする。このエッチング液14は、複数の供給ノズル26,27のそれぞれの吐出口26a,27aから噴射されるので、そのエッチング液14は互いに干渉するが、ノズル26、27の動きを最適化することで、ウェーハ面内のエッチング量分布制御の自由度を高めることができ、ウェーハ表面にうねりを生じていても、研削痕やうねりを確実に取除くことができる。この結果、ウェーハのエッチング時における高平坦化を効率よく達成することができ、その生産性を向上することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、供給ノズルの少なくとも一つが基端を中心として先端が揺動しその先端に吐出口26aが形成された揺動供給ノズル26であり、供給ノズルの他の少なくとも一つが軸方向に直動しその先端に吐出口27aが形成された直動供給ノズル27であることを特徴とする。
この請求項2に記載されたウェーハの枚葉式エッチング装置では、揺動する供給ノズル26と直動する供給ノズル27を設けたので、互いのノズルは異なった軌跡上を移動しながらウェーハ表面をエッチングする。この結果、同一移動方式の供給ノズルの使用に比べてウェーハ11面内のエッチング量分布をより高い自由度で制御することが可能となり、ウェーハ表面にうねりや研削痕をより効率的に取除くことができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、複数の供給ノズル26,27のいずれか又は全部の先端にシリコンウェーハ11の厚さを測定可能なセンサ41,42が設けられ、センサ41,42の検出出力によりノズル移動手段28,29及びエッチング液供給手段30のいずれか一方又は双方を制御するコントローラ44を備えたことを特徴とする。
この請求項3に記載されたウェーハの枚葉式エッチング装置では、エッチング中のウェーハ11の厚さを検出することができ、コントローラ44はその検出出力により供給ノズル26,27の移動速度やエッチング液14の供給量を調整することにより、ウェーハ11の厚さをリアルタイムにフィードバックしてそのエッチング精度を向上させることができる。これにより、ウェーハの厚さのばらつきを無くすことができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られた単一の薄円板状のシリコンウェーハ11をウェーハチャック12に載せて保持した状態で回転させながら、ウェーハ11の上面にエッチング液14を供給してウェーハ11を回転させることにより生じた遠心力によりウェーハ11の全ての上面をエッチングする枚葉式エッチング方法の改良である。
その特徴ある点は、ウェーハ11の上面に複数の供給ノズル26,27によりエッチング液14を供給し、エッチング液14の供給が複数の供給ノズル26,27をそれぞれ別々に独立して移動させながら行われ、かつ供給ノズル26,27からのエッチング液14の供給量をウェーハ11の部位における厚さに応じて調整するところにある。
この請求項4に記載されたウェーハの枚葉式エッチング方法では、エッチング液14の供給量をウェーハ11の部位における厚さに応じて調整するので、そのエッチング精度を向上させることができ、ウェーハの厚さのばらつきを無くすとともに、エッチング後の厚みが揃うことから次工程の研磨への投入が容易にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、ウェーハの上面にエッチング液を噴射可能な複数の供給ノズルと、複数の供給ノズルをそれぞれ別々に独立して移動させるノズル移動手段と、複数の供給ノズルのそれぞれにエッチング液を供給してウェーハの上面にエッチング液をそれぞれ噴射させるエッチング液供給手段とを備えたので、複数のノズルの動きを最適化することで、ウェーハ面内のエッチング量分布制御の自由度を高めることができ、ウェーハ表面にうねりを生じていても、研削痕やうねりを確実に取除くことができる。この結果、ウェーハのエッチング時における高平坦化を効率よく達成することができ、その生産性を向上することができる。そして、揺動する噴射ノズルと直動する供給ノズルを設ければ、互いのノズルは異なった軌跡上を移動しながらウェーハ表面をエッチングするので、ウェーハ11面内のエッチング量分布をより高い自由度で制御することができ、ウェーハ表面にうねりや研削痕をより効率的に取除くことができる。
【0013】
また、複数の供給ノズルのいずれか又は全部の先端にシリコンウェーハの厚さを測定可能なセンサを設け、センサの検出出力によりノズル移動手段及びエッチング液供給手段のいずれか一方又は双方を制御するコントローラを備えれば、エッチング中のウェーハの厚さを検出することができ、ウェーハの厚さをリアルタイムにフィードバックしてそのエッチング精度を向上させることができ、ウェーハの厚さのばらつきを無くすことができる。
そして、ウェーハの上面に複数の供給ノズルによりエッチング液を供給し、エッチング液の供給が複数の供給ノズルをそれぞれ別々に独立して移動させながら行われ、かつ供給ノズルからのエッチング液の供給量をウェーハの部位における厚さに応じて調整するようにすれば、そのエッチング精度を向上させることができ、ウェーハの厚さのばらつきを無くすとともに、エッチング後の厚みが揃うことから次工程の研磨への投入が容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、シリコンウェーハの枚葉式エッチング装置10は、チャンバに収容され単一の薄円板状のシリコンウェーハ11を載せて水平に保持するウェーハチャック12と、ウェーハ11をその鉛直中心線を中心に水平面内で回転させる回転手段13と、チャック12に載せられたウェーハ11のエッジ部11aを伝わって流下するエッチング液14をガスの噴射によりウェーハ11の半径方向外側に吹き飛ばすガス噴射機構17とを備える。ウェーハ11はシリコン単結晶インゴットをスライスして得られ、このウェーハ11の外周縁、即ちエッジ部11aは所定の曲率半径を有する凸状の面取り加工が施される。
【0015】
ウェーハチャック12は、直径がウェーハ11の直径より大きく形成された円板状のベース部材19と、このベース部材19の中央に鉛直方向に延びて形成された通孔19aに軸部21aが挿通された保持軸21とを有する。保持軸21は、上記軸部21aと、軸部21aの上面にこの軸部21aと一体的に形成された大径のウェーハ受け部21bと、保持軸21の中心にこの保持軸21の下面から上部まで鉛直方向に延びて形成された透穴21cと、一端が透穴21cの上端に連通接続され透穴21cを中心としてウェーハ受け部21bの半径方向外側に放射状に延び他端が閉止された複数の連通穴21dと、ウェーハ受け部21bの上面に同心状に形成された複数のリング溝21eと、連通穴21dとリング溝21eとを連通接続する複数の小孔21fとからなる。上記透穴21cの下端は真空ポンプ(図示せず)に連通接続される。ウェーハ受け部21bの外径は軸部21aの外径より大きくウェーハ11の外径より小さく形成され、ウェーハ受け部21bの上面にはこのウェーハ受け部21bと同心状にウェーハ11が載るように構成される。図示しない真空ポンプが駆動されて透穴21c内が負圧になると、連通穴21d、小孔21f及びリング溝21e内が負圧になり、ウェーハ11下面が保持軸21のウェーハ受け部21bに吸着されて、ウェーハ11が水平に保持されるようになっている。また回転手段13は、上記保持軸21と、この保持軸21を回転させる駆動モータ(図示せず)とを有する。駆動モータにより保持軸21を回転させることにより、保持軸21にて保持されたウェーハ11が保持軸21とともに回転するように構成される。
【0016】
一方、ガス噴射機構17は、チャック12の上面にこのチャック12の円周方向に沿って設けられたリング状の噴射口17aと、チャック12に設けられ上端が噴射口17aに連通するリング状の噴射溝17bと、噴射溝17bに連通するガス供給手段(図示せず)とを有する。上記噴射口17aはウェーハ11のエッジ部11a近傍の下面を臨むように形成される。上記噴射溝17bは、ベース部材19の上面にベース部材19と同心状にウェーハ受け部21bとテーパ部材22とを取付けることにより設けられる。この噴射溝17bは下方に向うに従って直径が小さくなるように形成されるとともに、上方に向かうに従って次第に狭くなるように形成され、噴射口17aが最も狭くなるように形成される。噴射溝17bの下部はウェーハ受け部21bから軸部21aにわたって形成された4つのガス供給孔17cの一端に連通され、これらのガス供給孔17cの他端はガス供給手段に接続される。ガス供給手段は、窒素ガス又は空気等のガスを圧縮するコンプレッサ等により構成され、このガス供給手段により圧縮されたガスはガス供給孔17c及び噴射溝17bを通って噴射口17aに供給される。
【0017】
また、図1及び図2に示すように、この枚葉式エッチング装置10には、吐出口26a,27aからウェーハ11の上面にエッチング液14を噴射可能な複数の供給ノズル26,27を備える。この実施の形態では、供給ノズルの数が2つの場合を示し、2つの供給ノズル26,27は、別々に設けられたノズル移動手段28,29によりそれぞれ別々に独立して移動可能に構成される。この実施の形態における一方の供給ノズル26を移動させる一方のノズル移動手段28はその一方の供給ノズル26の基端に設けられ、その供給ノズル26を基端を中心として先端を揺動させるステッピングモータである。そして、その揺動する供給ノズル26の先端に吐出口26aが形成される。他方のノズル移動手段29は、他方の供給ノズル27を軸方向に直動させる回転モータであり、その回転軸29aにボールねじ29bが同軸上に接続され、他方の供給ノズル27にはそのボールねじ29bに螺合する雌ねじ部材29cが取付けられる。そして、回転モータ29の回転軸29aを回転させてボールねじ29bを回転させることにより、雌ねじ部材29cとともに他方の供給ノズル28がその軸方向に直動するように構成される。
【0018】
図1に戻って、2つの供給ノズル26,27には、それらにエッチング液14を供給してそれらの供給ノズル26,27のそれぞれの吐出口26a,27aからウェーハ11の上面にエッチング液14をそれぞれ噴射させるエッチング液供給手段30が接続される。このエッチング液供給手段は液体供給本管31を備え、一方の供給ノズル26には第1液体供給管31aの一端が接続され、他方の供給ノズル27には第2液体供給管31bの一端が接続される。第1液体供給管31a及び第2液体供給管31bのそれぞれの他端が前述した液体供給本管31の一端に接続され、液体供給本管31の他端はエッチング液14が貯留された液体タンク33に接続される。そして、液体供給本管31には液体タンク33内のエッチング液14をそれぞれの供給ノズル26,27に供給可能なポンプ36が設けられる。
【0019】
第1液体供給管31aには一方の供給ノズル26へのエッチング液14の供給量を調整する第1液体調整弁34が設けられ、第2液体供給管31bには他方の供給ノズル27へのエッチング液14の供給量を調整する第2液体調整弁35が設けられる。第1及び第2液体調整弁34,35は同一品であり、第1液体調整弁34を代表して説明すると、この第1液体調整弁34は第1〜第3ポート34a〜34cを有する三方弁であり、第1ポート34aはポンプ36の吐出口に接続され、第2ポート34bは供給ノズル26に接続され、更に第3ポート34cは戻り管37を介して液体タンク33に接続される。そして、第1液体調整弁34がオンすると第1及び第2ポート34a,34bが連通し、オフすると第1及び第3ポート34a,34cが連通するように構成される。
【0020】
2つの供給ノズル26,27の双方の先端には、シリコンウェーハ11の厚さを非接触で測定可能なセンサ41,42が設けられる。このセンサ41,42は、2つの供給ノズル26,27の双方の先端に実際に設けられるプローブヘッド41a,42aと、データ解析装置41b,42bを備え、プローブヘッド41a,42aは波長が約1.3μmの近赤外光をウェーハ11に照射し、その反射光を受光可能に構成される。一方、データ解析装置41b,42bはプローブヘッド41a,42aが受光した反射光を分析してプローブヘッド41a,42aが近赤外光を照射した部分のウェーハ11の厚さを計測し、その計測結果をこのセンサ41,42の検出出力として出力可能に構成される。そしてこのセンサ41,42の各検出出力はマイクロコンピュータからなるコントローラ44の制御入力に接続され、コントローラ44の制御出力は第1及び第2液体調整弁34,35、ポンプ36、及びノズル移動手段を構成するそれぞれのモータ28,29にそれぞれ接続される。
【0021】
コントローラ44はメモリ47を備える。メモリ47には、センサ41,42により測定されたシリコンウェーハ11の厚さに応じた第1及び第2液体調整弁34,35のオン時間及びその間隔や、各種モータ28,29の回転速度やその方向、ポンプ36の作動の有無が予め記憶される。そして、供給ノズル26,27からのエッチング液14の供給量をそのウェーハ11の部位における厚さに応じて調整するように構成される。具体的に、コントローラ44は、センサ41,42により測定されたシリコンウェーハ11の厚さが比較的厚い場合には供給ノズル26,27の移動速度を低下させるか或いはその供給ノズル26,27から噴射されるエッチング液14の量を増加させてそのエッチング量が増加するように制御し、センサ41,42により測定されたシリコンウェーハ11の厚さが比較的薄い場合には供給ノズル26,27の移動速度を増加させるか或いはその供給ノズル26,27から噴射されるエッチング液14の量を低下させてそのエッチング量が減少するように制御する。
【0022】
このように構成されたウェーハ11の枚葉式エッチング装置10の動作を説明する。
先ず保持軸21のウェーハ受け部21b上にウェーハ11を載せた状態で、保持軸21の透穴21aの下端に連通接続された真空ポンプを作動させて透穴21cを負圧にし、この負圧によりウェーハ11を保持する。この状態で回転手段13の駆動モータを作動させて、保持軸21とともにウェーハ11を水平面内で回転させる。次いでガス噴射機構17のガス供給手段を作動させて窒素ガス又は空気からなる圧縮ガスをガス供給孔17c及び噴射溝17bを通って噴射口17aから噴射させることにより、テーパ部材22上面とウェーハ11下面との間の隙間に、ウェーハ11の半径方向外側に向って流れるガス流を作る。
【0023】
次に、コントローラ44は、ノズル移動手段を構成するステッピングモータ28と回転モータ29をそれぞれ駆動させ、一方の供給ノズル26を揺動させるとともに、他方の供給ノズル27をその軸方向に独立して移動させる。これとともにコントローラ44はポンプ36を駆動するとともに第1及び第2液体調整弁34,35をそれぞれオンして2つの供給ノズル26,27の双方の吐出口26a,27aからエッチング液14をウェーハ11の上面に供給する。ウェーハ11の上面に供給されたエッチング液14は、ウェーハ11の水平面内での回転に伴って生じた遠心力により、エッチング液14の供給した箇所(例えばウェーハ11上面中心近傍)からウェーハ11のエッジ部11aに向ってウェーハ11上面の加工変質層をエッチングしながら徐々に移動する。そしてウェーハ11上のエッチング液14の大部分は上記ウェーハ11の回転に伴う遠心力により液滴となってウェーハ11外方へ飛散し、チャンバ外に排出される。
【0024】
ここで、ウェーハの上面をエッチングするエッチング液14は、2つの供給ノズル26,27の双方の吐出口26a,27aから噴射されるので、そのエッチング液14は液干渉するが、ノズル26、27の動きを最適化することで、ウェーハ面内のエッチング量分布制御の自由度を高めることができ、ウェーハ表面にうねりを生じていても、研削痕やうねりを確実に取除くことができる。この結果、ウェーハのエッチング時における高平坦化を効率よく達成することができ、その生産性を向上することができる。そして、この実施の形態では、揺動する供給ノズル26と直動する供給ノズル27を設けたので、互いのノズル26,27は異なった軌跡上を移動しながらウェーハ表面をエッチングする。この結果、同一移動方式の供給ノズルの使用に比べてウェーハ11面内のエッチング量分布をより高い自由度で制御することが可能となり、ウェーハ表面にうねりや研削痕をより効率的に取除くことができる。
【0025】
また、本発明のウェーハの枚葉式エッチング装置10では、供給ノズル26,27の先端にシリコンウェーハ11の厚さを測定可能なセンサ41,42を設けたので、エッチング中のウェーハ11の厚さを検出することができ、コントローラ44はその検出出力により供給ノズル26,27の移動速度やエッチング液14の供給量を調整することにより、ウェーハ11の厚さをリアルタイムにフィードバックしてそのエッチング精度を向上させることができ、ウェーハの厚さのばらつきを無くすことができる。そして、供給ノズル26,27からのエッチング液14の供給量をウェーハ11の部位における厚さに応じて調整するので、そのエッチング精度を向上させることができ、ウェーハの厚さのばらつきを無くすとともに、エッチング後の厚みが揃うことから次工程の研磨への投入が容易にすることができる。このため、スライス後のウェーハ11でも狙いの厚みでエッチングが可能となり、従来必要とされたラップ工程や研削工程を省略することも可能になる。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、供給ノズルの数が2つであり、供給ノズルの一つが基端を中心として先端が揺動し、供給ノズルの他の一つが軸方向に直動する場合を例にして説明したが、供給ノズルの数が2つの場合には、図3に示すように、供給ノズルの双方が基端を中心として先端が揺動するものであっても良く、図示しないが、供給ノズルの双方が直動する供給ノズルであっても良い。
また、上述した実施の形態では、供給ノズルの数が2つの場合を説明したが、図4に示すように、供給ノズルは3つであっても良く、図示しないが、4つ以上であっても良い。
【実施例】
【0027】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたウェーハを、面取り、機械研磨(ラッピング)し、表裏面が平坦化処理された300mmφのシリコンウェーハ11を用意した。また、フッ酸、硝酸、リン酸及び水の混合割合が重量%で、フッ酸:硝酸:リン酸:水=7%:30%:35%:28%からなるエッチング液14を用意した。次いで、図1に示す枚葉式エッチング装置10のチャック12に表面が上面となるようにそのウェーハ11を載置した。次に、そのウェーハ11を水平回転させ、ウェーハ上方に設けられた2つの供給ノズル26,27からエッチング液14をウェーハ11の上面に供給して水平回転により生じた遠心力により、エッチング液14をウェーハ表面からウェーハ表面側端部にまで行き渡らせることで平坦化処理により生じた加工変質層をエッチングした。
ここで、エッチング液14の供給は、一方の供給ノズル26からは4リットル/分供給し、他方の供給ノズル27からは3リットル/分供給した。そして一方の供給ノズル26の揺動速度は、その先端における吐出口26aが2mm/分の速度で移動するようにした。また、他方の供給ノズル27の移動速度は軸方向に3mm/分の速度で移動するようにした。この条件でシリコンウェーハ11の表面を20μmエッチングした。
【0028】
<比較例1>
エッチング液の供給を揺動する単一の供給ノズルにより行い、その供給ノズルから4リットル/分のエッチング液を供給し、その単一の供給ノズルの揺動速度は、その先端における吐出口26mm/分の速度で移動するようにした。これ以外は実施例1と同様にしてシリコンウェーハの表面を合計20μmエッチングした。
【0029】
<比較試験及び評価>
実施例1及び比較例1の枚葉式エッチングを施したシリコンウェーハの厚さを平坦度測定装置(土井精密ラップ社 Wafercom)により測定した。実施例1における測定結果を図5に示し、比較例1における測定結果を図6に示す。この図5及び図6から明らかなように、複数の供給ノズルからエッチング液を供給してエッチングしたウェーハ11の表面を示す図5は、単一の供給ノズルからエッチング液を供給してエッチングしたウェーハの表面を示す図6に比較して、平坦であることが判る。この結果、複数の供給ノズルからエッチング液を供給する本発明にあっては、ウェーハの高い平坦化を達成することができ、その生産性を向上し得ることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明実施形態のウェーハの枚葉式エッチング装置の要部縦断面構成図である。
【図2】その装置の供給ノズルとウェーハとの関係を示す上面図である。
【図3】別の供給ノズルとウェーハとの関係を示す上面図である。
【図4】更に別の供給ノズルとウェーハとの関係を示す上面図である。
【図5】実施例1におけるウェーハの厚さのばらつきを示す図である。
【図6】比較例1におけるウェーハの厚さのばらつきを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 枚葉式エッチング装置
11 シリコンウェーハ
12 ウェーハチャック
14 エッチング液
26,27 供給ノズル
26a,27a 吐出口
28 ステッピングモータ(ノズル移動手段)
29 回転モータ(ノズル移動手段)
30 エッチング液供給手段
41,42 センサ
44 コントローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶インゴットをスライスして得られた単一の薄円板状のシリコンウェーハ(11)をウェーハチャック(12)に載せて保持した状態で回転させながら、前記ウェーハ(11)の上面にエッチング液(14)を供給して前記ウェーハ(11)を回転させることにより生じた遠心力により前記ウェーハ(11)の全ての上面をエッチングする枚葉式エッチング装置において、
吐出口(26a,27a)から前記ウェーハ(11)の上面にエッチング液(14)を噴射可能な複数の供給ノズル(26,27)と、
前記複数の供給ノズル(26,27)をそれぞれ別々に独立して移動させるノズル移動手段(28,29)と、
前記複数の供給ノズル(26,27)のそれぞれにエッチング液(14)を供給して前記複数の供給ノズル(26,27)のそれぞれの吐出口(26a,27a)から前記ウェーハ(11)の上面にエッチング液(14)をそれぞれ噴射させるエッチング液供給手段(30)と
を備えることを特徴とするウェーハの枚葉式エッチング装置。
【請求項2】
供給ノズルの少なくとも一つが基端を中心として先端が揺動しその先端に吐出口(26a)が形成された揺動供給ノズル(26)であり、前記供給ノズルの他の少なくとも一つが軸方向に直動しその先端に吐出口(27a)が形成された直動供給ノズル(27)である請求項1記載のウェーハの枚葉式エッチング装置。
【請求項3】
複数の供給ノズル(26,27)のいずれか又は全部の先端にシリコンウェーハ(11)の厚さを測定可能なセンサ(41,42)が設けられ、前記センサ(41,42)の検出出力によりノズル移動手段(28,29)及びエッチング液供給手段(30)のいずれか一方又は双方を制御するコントローラ(44)を備えた請求項1又は2記載のウェーハの枚葉式エッチング装置。
【請求項4】
シリコン単結晶インゴットをスライスして得られた単一の薄円板状のシリコンウェーハ(11)をウェーハチャック(12)に載せて保持した状態で回転させながら、前記ウェーハ(11)の上面にエッチング液(14)を供給して前記ウェーハ(11)を回転させることにより生じた遠心力により前記ウェーハ(11)の全ての上面をエッチングする枚葉式エッチング方法において、
前記ウェーハ(11)の上面に複数の供給ノズル(26,27)によりエッチング液(14)を供給し、
前記エッチング液(14)の供給が前記複数の供給ノズル(26,27)をそれぞれ別々に独立して移動させながら行われ、
かつ前記供給ノズル(26,27)からの前記エッチング液(14)の供給量を前記ウェーハ(11)の部位における厚さに応じて調整する
ことを特徴とするウェーハの枚葉式エッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−207810(P2007−207810A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21899(P2006−21899)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】