ウェーハ接合強度検査装置及び方法
【課題】接合ウェーハを破壊することなく、接合界面に間隙が生じていない場合であっても、局所的な接合部の接合強度を検査することができる検査装置を提供する。
【解決手段】ウェーハ接合強度検査装置100は、接合ウェーハ200を保持する試料ステージ160と、テラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器151と、接合ウェーハ200を透過又は反射したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器157と、テラヘルツ波検出器157によって検出したテラヘルツ波より接合ウェーハ200のTHz波特性を演算する演算部と、を有する。演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算する。
【解決手段】ウェーハ接合強度検査装置100は、接合ウェーハ200を保持する試料ステージ160と、テラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器151と、接合ウェーハ200を透過又は反射したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器157と、テラヘルツ波検出器157によって検出したテラヘルツ波より接合ウェーハ200のTHz波特性を演算する演算部と、を有する。演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合ウェーハの接合強度を検査するための装置および方法に関し、特に、テラヘルツ波を用いて接合強度を検査する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ウェーハ、NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)ウェーハ、SOI(Silicon on Insulator)ウェーハ、三次元積層デバイス、パワーデバイス、などの製造過程では、複数枚のウェーハ(基板)の接合(張り合わせ)が行われる。
【0003】
接合ウェーハの接合強度が弱い場合、ダイシングを含む次工程で、接合部の剥離を生じる場合があり、歩留まりが悪化する。また、次工程では剥離しなくとも、経年変化によって剥離することがあり、それにより、製品の信頼性が低下する。
【0004】
接合強度を左右する因子は、共有結合やイオン結合、水素結合、ファンデルワールス力など材料の化学的結合力、残留応力、母材の強度、接合品質などがある。特許文献1、2、3には、接合強度を評価する方法の例が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された方法では、引張試験による破壊検査を用いる。特許文献2に記載された方法では、接合部に照射した光の光路差によりできる干渉縞、接合部の静電容量、又は、インピーダンスの変化から、接合界面に生じた未接合部分(ボイドまたはギャップ、間隙)の接合状態を評価する。特許文献3に記載された方法では、接合ウェーハをダイシングし、接合面が露出した状態で、フッ酸系水溶液等のエッチング液に浸漬させ、エッチングされた量と接合界面にしみ込んだ量とから、接合状態を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2846973号
【特許文献2】特開平9−289238号公報
【特許文献3】特許第4569058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された方法では、引張試験によって試料を破壊するため、製造ラインにおいて出荷品の接合強度の検査を行うことができない。更に、この方法では、耐環境や経年変化、製造工程におけるストレスに対する耐久性などを調査する場合、多数サンプルを準備して、各段階で抜き取り検査をする必要がある。また、引張試験は、接合面積の大きさに対する依存性があり、局所的な接合部の検査には向いていない。
【0008】
特許文献2に記載された方法では、接合界面に間隙が生じていない場合には、接合強度の不良を検出できない。
【0009】
特許文献3に記載された方法では、接合ウェーハ(接合基板)をエッチング液に浸漬させるため、MEMSの製造などでは、破壊検査となる場合がある。
【0010】
本発明の目的は、接合ウェーハを破壊することなく、接合界面に間隙が生じていない場合であっても、局所的な接合部の接合強度を検査することができる検査装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のウェーハ接合強度検査装置は、接合ウェーハを保持する試料ステージと、テラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器と、接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器と、テラヘルツ波検出器によって検出したテラヘルツ波より接合ウェーハのTHz波特性を演算する演算部と、を有する。
【0012】
演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合ウェーハを破壊することなく、接合界面に間隙が生じていない場合であっても、局所的な接合部の接合強度を検査することができる検査装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のウェーハ接合強度検査装置の構成例を示す図である。
【図2】ウェーハレベルチップサイズパッケージングの概要を説明する図である。
【図3A】2つのSi(シリコン)ウェーハの接合前の状態を説明する図である。
【図3B】2つのSi(シリコン)ウェーハの第1接合状態を説明する図である。
【図3C】2つのSi(シリコン)ウェーハの第2接合状態を説明する図である。
【図3D】2つのSi(シリコン)ウェーハの第3接合状態を説明する図である。
【図4】接合ウェーハについて熱処理温度と引張強度の間の関係の例を説明する図である。
【図5】接合ウェーハにTHz波を透過させた場合の電場強度の時間波形(テラヘルツ波の時間波形)の例を説明する図である。
【図6】図5の時間波形をフーリエ変換した得た周波数パワースペクトル波形を説明する図である。
【図7】接合ウェーハについて熱処理温度とTHz波透過率の間の関係を説明する図である。
【図8】接合ウェーハについてテラヘルツ波透過率と接合強度の間の関係を説明する図である。
【図9A】透過測定法の例を説明する図である。
【図9B】透過測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形を説明する図である。
【図10A】反射測定法の例を説明する図である。
【図10B】反射測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形を説明する図である。
【図11】反射測定法の他の例を説明する図である。
【図12】図11の反射測定法による測定結果の例を説明する図である。
【図13】本発明のウェーハ接合強度検査装置によって接合ウェーハの接合強度を測定した結果の例を説明する図である。
【図14】図13の結果と他のウェーハ接合情報画像とを重ね合わせて表示した例を説明する図である。
【図15A】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、透過測定法によって、テラヘルツ波の散乱光のみ検出する方法の例を説明する図である。
【図15B】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、透過測定法によって、テラヘルツ波の散乱光以外の透過光を検出する方法の他の例を説明する図である。
【図16A】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、反射測定法によって、テラヘルツ波の散乱光のみ検出する方法の例を説明する図である。
【図16B】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、反射測定法によって、テラヘルツ波の散乱光以外の反射光を検出する方法の他の例を説明する図である。
【図17】本発明のウェーハ接合強度検査方法の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、本発明によるウェーハ接合強度検査装置100の実施形態の一例を説明する。検査対象の接合ウェーハ200は、複数枚のウェーハ(基板)を接合することによって、即ち、張り合わせることによって形成される。接合ウェーハ200の接合方法には、陽極接合、直接接合、プラズマ活性化接合、ハイブリッド接合、表面活性化接合、はんだ接合、融接、共晶接合、ガラスフリット接合、接着剤による間接接合、等の様々な方法がある。直接接合等では接着材を用いないが、例えば、共晶接合では、接着材として金(Au)、ハンダ等を用いる。これら方法のうち、製造するデバイスや材料に応じて最適な接合方法が選択される。
【0016】
接合前のウェーハ材料及び接着材は、製造するデバイスや方法によって異なる。ウェーハ材料及び接着材には、例えば、シリコン(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化インジウム(InAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、サファイア(Al2O3)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、半田、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、水晶、石英(SiO2)、チタン(Ti)などがある。
【0017】
本発明によるウェーハ接合強度検査装置100では、接合ウェーハ200の接合部(接合界面)の接合強度を、テラヘルツ波により測定および検査する。テラヘルツ波(以下、THz波と記す)とは、0.1〜100THzの電磁波を指す。本例のウェーハ接合強度検査装置100では、接合ウェーハの接合方法に対応して、実験により得た最適な周波数帯域のTHz波が選択される。
【0018】
本例のウェーハ接合強度検査装置100では、テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS:THz Time-Domain Spectroscopy)の基本構成を用いて、THz波の発生及び検出を行う。テラヘルツ時間領域分光法は、テラヘルツ波の波形を直接測定することによって得られる振動電場強度の時間波形をフーリエ変換し、電磁波のスペクトルを得る分光法である。テラヘルツ時間領域分光は、電磁波の周波数毎の振幅、波形及び位相を得ることができるため、様々な分野に応用されている。振動電場強度の時間波形を、単に、THz波の時間波形と称することがある。本発明では、接合強度を検出するために、テラヘルツ時間領域分光法によってTHz波の時間波形を求めてもよいが、時間波形を求めることなく、時間波形のピーク値、即ち、極大または極小値のみを検出してもよい。
【0019】
テラヘルツ時間領域分光法では、試料を透過したTHz波を検出する透過測定法と試料を反射したTHz波を検出する反射測定法が知られている。本発明では、透過測定法と反射測定法のいずれを使用してもよい。THz波は、条件にもよるが半導体、セラミックスなどの化合物に対しては、電波と同様に透過性を有するが、金属に対しては透過性を有さない。透過測定法を用いる場合には、接合ウェーハ200を構成する複数のウェーハの少なくとも一部はTHz波を透過する材料によって形成される。反射測定法を用いる場合には、接合ウェーハ200を構成する複数のウェーハのうち、入射側のウェーハはTHz波を透過する材料によって形成され、その内側のウェーハはTHz波を透過しない材料によって形成される。従って、本例のウェーハ接合強度検査装置100では、THz波が透過する材料からなるウェーハを少なくとも1枚は外側に含む2枚以上のウェーハからなる接合ウェーハ200を検査対象とする。例えば、外側にTHz波を透過するSiウェーハを含む接合ウェーハが検査対象となる。その例として、SiウェーハとSiウェーハからなる接合ウェーハ、SiウェーハとAlウェーハからなる接合ウェーハ、SiウェーハとAuウェーハとSiウェーハからなる接合ウェーハ等がある。
【0020】
ウェーハ接合強度検査装置100は、試料室101、パーソナルコンピュータ(以下、PCと記す)102、システムコントローラ104、ビームスプリッタ108を備えたフェムト秒レーザ(超短パルスレーザ)106、変調機能付きバイアス電源110、直進移動116が可能な可動ミラー114を備えた時間遅延ステージ112、ロックインアンプ118、プリアンプ120、試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124を有する。
【0021】
ウェーハ接合強度検査装置100内の各ユニット、即ち、フェムト秒レーザ106、変調機能付きバイアス電源110、時間遅延ステージ112、ロックインアンプ118、試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124は、ケーブル130を介してシステムコントローラ104に接続されている。破線は電気系の接続を表す。
【0022】
PC102からの命令やPC102に予め組み込まれたプログラムやトリガに応じて、システムコントローラ104は、ウェーハ接合強度検査装置100内の各ユニットの機能を作動させるための制御を行う。作業者は、PC102を介して、システムコントローラ104に、接合ウェーハ200の接合強度の検査に関する命令を入力する。ウェーハ接合強度検査装置100は、システムコントローラ104からの命令に従って、接合ウェーハ200の接合強度の検査を行う。接合強度の検査の結果は、システムコントローラ104を介して、PC102に送られる。
【0023】
本例では、システムコントローラ104にPC102が接続されているが、システムコントローラ104にPC102より上位のシステムが接続されてもよい。また表示部は、必ずしもPC102である必要はなく、モニタ装置や表示パネルなど任意の機器であってよい。この場合、表示部は、システムコントローラ104により、その制御を行う。
【0024】
尚、システムコントローラ104は試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124の機能を備えても良い。その場合には、試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124は省略される。更に、システムコントローラ104とPC102を1つの制御演算装置によって置き換えてもよい。
【0025】
試料室101には、THz波の発生及び検出を行うTHz波光学系150と検査対象の接合ウェーハ200を支持する試料ステージ160が設けられている。THz波光学系150は、THz波発生器151、THz波投光用光学系153、THz波受光用光学系154、及び、THz波検出器157を有する。THz波発生器151は試料室101の側壁に設けられ、THz波検出器157は試料室101の底壁に設けられている。THz波発生器151の光軸とTHz波検出器157の光軸は整合しないように、本例では、直交するように配置されている。
【0026】
THz波発生器151は、集光レンズ151a、THz波発生素子151b、及び、レンズ151cを有する。THz波発生素子151bは、光伝導スイッチ、非線形光学結晶等により構成される。THz波投光用光学系153は、楕円面ミラー、放物面ミラー等により構成される。THz波受光用光学系154は、放物面ミラー、ウィンストンコーンミラー等により構成される。THz波光学系150内の点線138は、THz波の光路を示す。THz波検出器157は、集光レンズ157a、THz波検出素子157b、及び、レンズ157cを有する。THz波検出素子157bは、光伝導スイッチ、非線形光学結晶等により構成される。
【0027】
図示のTHz波光学系150は、透過測定法の光学系である。透過測定法では、THz波検出器157は、試料を透過したTHz波を検出するように構成され、且つ、配置されている。反射測定法の場合には、THz波検出器157は、試料を反射したTHz波を検出するように構成され、且つ、配置されている。例えば、THz波検出器157を、試料を反射したTHz波を検出することができるように、試料に対して、THz波発生器151と同一側に配置してもよい。又は、試料を反射したTHz波をTHz波検出器157に導くための光学系を設けてもよい。
【0028】
本例では、THz波光学系150に、THz波投光用光学系153とTHz波受光用光学系154を設けるため、接合ウェーハ200の局所的な接合部の接合強度を検査することができる。
【0029】
フェムト秒レーザ(超短パルスレーザ)106とTHz波発生器151の間には、フェムト秒レーザ光路として光ファイバ132が設けられている。フェムト秒レーザ(超短パルスレーザ)106と時間遅延ステージ112の間には、フェムト秒レーザ光路として光ファイバ134が設けられている。THz波検出器157と時間遅延ステージ112の間にはフェムト秒レーザ光路として光ファイバ136が設けられている。本例では、フェムト秒レーザ光を、光ファイバを介して伝播させる。そのため、空間を介して伝播させる場合と比較して、フェムト秒レーザの光学系のアライメントを簡略化することができると同時に、装置を小型化することができる。
【0030】
試料室101に、単一のTHz波光学系150が設けられてもよいが、試料室101のスペースの許す限り複数のTHz波光学系が設けられてよい。複数のTHz波光学系を設けることにより、接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンする場合の測定時間が短縮化される。
【0031】
試料ステージ160は、チャック機構161、回転機構162、昇降機構163、及び、水平機構164を有し、試料ステージコントローラ122又はシステムコントローラ104により制御される。チャック機構161は、接合ウェーハ200を載置及び固定するように構成され、接合ウェーハ200の裏面を差圧によって吸着する吸着方式、接合ウェーハ200のエッジを挟む把持機構方式等が用いられてよい。回転機構162は、チャック機構161上の接合ウェーハ200を回転移動させる。昇降機構163は、チャック機構161上の接合ウェーハ200を上下方向に沿って昇降移動させる。水平機構164は、チャック機構161上の接合ウェーハ200を水平方向に沿って平面移動させる。これらの機構によって接合ウェーハ200の位置決めがなされる。即ち、接合ウェーハ200上のTHz波の照射位置を試料室101内の任意の位置に配置される。
【0032】
接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンする場合、接合ウェーハ200をTHz波の光学系に対して迅速に移動させる必要がある。本例では、接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンする場合、接合ウェーハ200を回転機構162によって回転させながら、水平機構164によって水平方向に直線移動させることができる。本例では、試料ステージ160に水平機構164と回転機構162が設けられているため、水平機構164のみが設けられている場合と比較して、接合ウェーハ200をTHz波の光学系に対してより迅速に移動させることができる。そのため、THz波のサンプリング時間の許す範囲で高速にスキャンすることができる。
【0033】
本発明によると、接合ウェーハ200は、チャック機構161の装着部以外に、何も接触していない。従って、ウェーハ接合強度検査装置100によって接合ウェーハ200の接合強度を測定する間に、接合ウェーハ200が変形したり破壊することはない。
【0034】
試料室101には、更に、試料室内調整管理機器端末172、及び、試料室開閉機構174が設けられている。試料室101は、真空チャンバーのような密封構造を有する。試料室101の内部空間は、試料室調整管理機器124、又は、外部装置により、真空状態、窒素充填状態(窒素パージ)又は乾燥空気充填状態(ドライエアーパージ)の雰囲気に保持される。試料室101内に接合ウェーハ200を搬入するとき、又は、試料室101内より接合ウェーハ200を搬出するときには、試料室開閉機構174が開かれる。接合ウェーハ200の搬入又は搬出が終わると、試料室開閉機構174が閉じられる。
【0035】
試料室内調整管理機器端末172は、圧力センサ、温度計、湿度計等の試料室101の内部の雰囲気を測定するセンサ類と、ヒータ、電子冷却器等の試料室101の内部の雰囲気を調整する調整機器を有する。これらのセンサ類及び調整機器は、試料室101の外部に設置された、試料室調整管理機器124によって監視および制御され、更に、システムコントローラ104によって監視及び制御される。例えば、センサ類によって測定されたデータは、信号経路130を介してシステムコントローラ104に送られる。これらのデータは、PC102またはモニタなどに表示される。PC102を介してシステムコントローラ104に送られた命令は試料室調整管理機器124に送られる。試料室調整管理機器124からの制御信号は、試料室内調整管理機器端末172に送られる。
【0036】
試料室内調整管理機器端末172、及び、試料室調整管理機器124を設けることによって、試料室101の内部空間は、所望の雰囲気に保持される。即ち、水蒸気や温度変化などの外乱を除去することができるから、THz波が安定化する。
【0037】
次に、本発明のウェーハ接合強度検査装置100の動作を説明する。フェムト秒レーザ106によって発振されたレーザ光は、ビームスプリッタ108により、ポンプ光132aとプローブ光134aに分岐され、光ファイバ132、134をそれぞれ伝播する。
【0038】
ポンプ光132aは、THz波発生のための励起光としてTHz波発生器151内に導かれる。即ち、ポンプ光132aは、集光レンズ151aにより集光され、THz波発生素子151bに照射される。THz波発生素子151bによってTHz波が発生する。THz波発生素子151bには、変調機能付きバイアス電源110からの変調したバイアス電圧が印加される。尚、バイアス電圧の変調を行う代わりに、光チョッパを設けることによって、THz波又はフェムト秒レーザのポンプ光132aの変調を行ってもよい。THz波発生素子151bは、所定の周波数帯域幅を有する白色パルス波を生成する。この周波数幅は、THz波発生素子151bに依存する。
【0039】
THz波発生素子151bから発生したTHz波は、レンズ151cを介し放射され、THz波投光用光学系153により集光され、接合ウェーハ200に入射する。接合ウェーハ200を透過したTHz波は、THz波受光用光学系154により集光され、THz波検出器157に入射する。THz波検出器157に入射したTHz波は、レンズ157cを経由して、THz波検出素子157bに入射する。
【0040】
一方、プローブ光134aは、光ファイバ134を経由して、時間遅延ステージ112に導かれる。時間遅延ステージ112の機能は後に説明する。時間遅延ステージ112からのプローブ光136aは、光ファイバ136を伝播する。プローブ光136aは、THz波検出のための励起光として、THz波検出器157へ導かれる。プローブ光136aは、ポンプ光132aと同様に、集光レンズ157aによって集光され、THz波検出素子157bへ照射される。
【0041】
こうして、THz波検出素子157bの一方の面には、ポンプ光132aによって生成されたTHz白色パルス波の各パルスが所定の周期にて繰り返し到達する。THz波検出素子157bの反対側の面には、フェムト秒レーザ106からのプローブ光136aの各パルスが所定の周期にて繰り返し到達する。THz波検出素子157bは、プローブ光136aが照射された時のみ動作する。即ち、THz波検出素子157bに到達したTHzパルス波は、プローブ光136aによってサンプリングされる。
【0042】
THzパルス波の各パルスに対して、プローブ光136aの1パルスによってサンプリングされる。THzパルス波の各パルスに対するサンプリング点の位相は、プローブ光136aの1パルスがTHz波検出素子157bに到達する時点に対応する。
【0043】
プローブ光136aの光路に可動ミラー114を備えた時間遅延ステージ112が設けられている。ポンプ光132aの光路の長さは一定であるが、プローブ光136aの光路の長さは可動である。
【0044】
ポンプ光132aの光路とプローブ光136aの光路の間に光路差が存在する場合には、ポンプ光132aがTHz波検出素子157bに到達する時点と、プローブ光136aがTHz波検出素子157bに到達する時点の間に差が生じる。即ち、時間遅延が生じる。時間遅延ステージ112にて、可動ミラー114が所定の位置に固定されている場合には、時間遅延は一定である。この場合には、THzパルス波の各パルスに対してサンプリング点の位相は同一となる。例えば、ポンプ光132aの光路とプローブ光136aの光路が同一長さとなるように、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定した場合には、THzパルス波の各パルスのピーク値、即ち、極大又は極小値、がサンプリング点となる。これについては後に詳細に説明する。
【0045】
時間遅延ステージ112にて、可動ミラー114を連続的に直進移動116させることにより、ポンプ光132aとプローブ光136aの間の光路差が連続的に変化する。即ち、時間遅延は連続的に変化する。この場合には、THzパルス波の各パルスに対してサンプリング点の位相は、連続的に変化する。従って、THzパルス波の各パルスに対してサンプリング点の位相が互いに異なる複数のデータが得られる。このデータをプロットすることにより、THzパルス波の各パルスを表す時間波形が得られる。
【0046】
THz波検出素子157bは、プローブ光136aが照射されると、THz波の振動電場に比例した検出電流を生成する。検出電流は、プリアンプ120により、増幅され、電圧に変換される。プリアンプ120からの増幅電圧信号は、S/N比を向上させるために、ロックインアンプ118に送られる。ロックインアンプ118では、バイアス電源110の変調機能又はTHz波発生器151に設けられた光チョッパによる変調信号によって、同期検波を行う。
【0047】
システムコントローラ104は、ロックインアンプ118からの検出信号より、THz波の時間波形又はピーク値を得る。即ち、ポンプ光132aの光路とプローブ光136aの光路が同一長さとなるように、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定した状態で測定した場合には、THz波のピーク値が得られる。時間遅延ステージ112の可動ミラー114を連続的に移動させながら測定した場合には、THz波の時間波形、即ち、プロファイルが得られる。
【0048】
図17を参照して、本発明のウェーハ接合強度検査装置100を用いたウェーハ接合強度検査方法を説明する。ステップS101にて、標準試料についてTHz波特性データを取得する。作業者は、標準試料として、接合強度が異なる複数の接合ウェーハ200又は接合部を準備する。本例のウェーハ接合強度検査装置100により、この標準試料にTHz波を照射し、THz波の時間波形又はピーク値を測定する。時間波形又はピーク値より、標準試料に対する各種のTHz波物理特性が得られる。これをTHz波特性データとして、算出する。
【0049】
ここにTHz波特性データには、テラヘルツ波の透過率、反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲等が含まれる。
【0050】
ステップS102にて、標準試料について、引張試験機又は他の検査方法により、接合強度を測定する。こうして標準試料について、THz波特性データと接合強度のデータが得られたら、それを、PC102や上位装置などを介して、システムコントローラ104のメモリに保存する。
【0051】
ステップS103にて、標準試料について、THz波特性データと接合強度の関係を算出する。システムコントローラ104は、標準試料について、THz波特性データと接合強度の関係を算出し、記録する。THz波特性データと接合強度の関係は、グラフ、式又は表によって表現されてよい。THz波特性データと接合強度の関係を算出する方法の例は、後に、図8を参照して説明する。
【0052】
ステップS104にて、作業者は、本例のウェーハ接合強度検査装置100により、検査対象の接合ウェーハ200又は接合部のTHz波特性データを得る。作業者は、検査対象のTHz波特性データを、PC102や上位装置などを介して、システムコントローラ104に送る。
【0053】
ステップS105にて、標準試料について求めた、THz波特性データと接合強度の関係を用いて、検査対象の接合強度を求める。即ち、標準試料について求めた、THz波特性データと接合強度の関係から、検査対象のTHz波特性データに対応する接合強度を読み取る。
【0054】
ステップS106にて、システムコントローラ104は、標準試料から得られたTHz波特性データが正常範囲内にあるか否かを判定する。作業者は、予め、PC102や上位装置などを介して、正常な接合強度に対応するTHz波特性データの正常範囲を設定し、それをシステムコントローラ104に保存する。判定結果は、PC102又は表示装置に表示される。
【0055】
標準試料と検査対象試料では、材料及び接合方法については、同一であることが好ましいが、構造、寸法等については、必ずしも同一である必要はない。例えば、標準試料の接合部が全面である場合に、検査対象試料の接合部が格子状であってよい。
【0056】
本発明によると、標準試料について予め求めたTHz波特性データと接合強度の関係を使用するため、検査対象試料を破壊することなく、検査対象試料の接合強度を求めることができる。即ち、標準試料を破壊することはあるが、検査対象試料を破壊する必要はない。
【0057】
本発明によると、試料ステージ160によって、検査対象試料を支持する。検査対象試料は、試料ステージ160による支持部以外は、ウェーハ接合強度検査装置100の構成部材に接触しない。さらに、検査対象試料をエッチング液等の薬剤に浸漬させる必要がない。従って、検査対象試料を変形又は破壊させることなく、検査対象試料の接合強度を測定することができる。
【0058】
本発明によると、テラヘルツ時間領域分光法の基本構成を用いて検査対象試料のTHz波特性を求める。従って、接合界面に間隙が生じているか否かに拘らず、検査対象試料の接合強度を測定することができる。
【0059】
本発明によると、テラヘルツ時間領域分光法の基本構成を用いて検査対象試料にテラヘルツ波を照射する。従って、検査対象試料の任意の局所領域の接合強度を測定することができる。
【0060】
図2を参照して、ウェーハレベルチップサイズパッケージング(ウェーハレベルCSP)の概要について説明する。先ず、封止樹脂層を形成するための封止用ウェーハ201とプロセス処理を行ったMEMSウェーハ202を用意する。2つのウェーハ201、202を接合して、接合ウェーハ200を作成する。次に、この接合ウェーハ200をダイシングにより、チップサイズのパッケージ203を形成する。これに貫通配線を行う。ウェーハレベルCSPでは、ダイシングを行う前に、即ち、ウェーハの段階で、外部端子や封止樹脂層を形成する。
【0061】
図3A、図3B、図3C及び図3Dを参照して、2つのSiウェーハ301、302の直接接合の原理を説明する。直接接合では、2つのSiウェーハ301、302を、親水化処理と熱処理(加熱)により接合する。図3Aは、接合前の状態S0を示す。水と化学薬品によりSiウェーハ301、302の表面をわずかに酸化させ、薄い酸化膜301a、302aを形成する。更に、表面処理(親水化処理)を行い、酸化膜301a、302aの表面に多数の水酸基(OH基)311を付着させる。
【0062】
図3Bに示す第1接合状態S1は、常温で接合した直後の状態か、又は、低温の加熱処理を行った状態を示す。親水化処理を施した2つのウェーハ301、302の表面同士を、常温で又は低温加熱処理により、接合させる。それによって、酸化膜301a、302aの表面とOH基間で水素結合312が生成する。
【0063】
図3Cに示す第2接合状態S2は、中温の加熱処理を行った状態を示す。中温の加熱処理を行うと、脱水縮合反応313が進行し、接合強度が増大する。
【0064】
図3Dに示す第3接合状態S3は、高温の加熱処理を行った状態を示す。高温の加熱処理を行うと、更に、脱水縮合反応313が進行し、酸素(O)はSiと結合314し、接合強度はSi自体(共有結合)の強度となる。
【0065】
図4に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた熱処理温度と引張強度の間の関係を表す曲線401を示す。縦軸は引張試験機を用いて測定した引張強度(MPa)である。横軸は熱処理温度(℃)である。複数の接合ウェーハ200を用意し、それを直接接合によって接合し、図3B、図3C及び図3Dを参照して説明した第1、第2及び第3接合状態となるように、それぞれ熱処理を施した。これらの接合ウェーハ200の引張強度を、引張試験機によって測定した。第1接合状態S1(熱処理温度がT1より小さい。)では引張強度が弱いが、第2接合状態S2(熱処理温度がT1以上且つT2以下。)では引張強度が強くなる。更に、第3接合状態S3(熱処理温度がT2より大きい。)では、引張強度がより強くなり、母材Siの接合強度P2と同程度となる。熱処理温度を高くすることによって接合強度は大きくなることが示されている。
【0066】
図5に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた電場強度の時間波形(振動電場の波形)を表す曲線を示す。縦軸は電場強度(任意単位a.u)、横軸は時間(ピコ秒)である。複数の接合ウェーハ200を用意し、図3B及び図3Dを参照して説明した第1及び第3接合状態となるように、それぞれ熱処理を施した。これらの接合ウェーハ200に対して、本発明によるウェーハ接合強度検査装置により所定の周波数帯域のTHz波を透過させて、電場強度を測定した。電場強度は、各接合ウェーハ200の任意の複数点における平均値である。
【0067】
本例の測定実験では、電場強度の時間波形を得るために、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を連続的に移動させて、電場強度を測定した。
【0068】
破線の曲線501は、第1接合状態S1の接合ウェーハ200の測定結果を示す。実線の曲線502は、第3接合状態S3の接合ウェーハ200の測定結果を示す。時点t1にて、ポンプ光とプローブ光の光路長が一致し、THz波の強度がピーク、即ち、極大又は極小となり、各電場強度はピーク値となる。THz波は、水素結合などによる分子間相互作用などに相当するエネルギーを有する。THz波を接合ウェーハ200に照射すると、水素結合やOH基に吸収される。従って、第1接合状態S1の接合ウェーハ200より得られた時間波形501のピーク値E1は、第3接合状態の接合ウェーハ200より得られた時間波形502のピーク値E2より小さい。
【0069】
図6は、図5に示す電場強度の時間波形をフーリエ変換して得たパワースペクトルを表す曲線である。縦軸は振幅(任意単位a.u)、横軸は周波数(THz)である。破線の曲線601は、第1接合状態S1の接合ウェーハ200より得られた時間波形501(図5)をフーリエ変換して得たパワースペクトルを示す。実線の曲線602は、第3接合状態S3の接合ウェーハ200より得られた時間波形502(図5)をフーリエ変換して得たパワースペクトルを示す。
【0070】
図示のように、第1接合状態の接合ウェーハ200より得られたパワースペクトル601は、第3接合状態の接合ウェーハ200より得られたパワースペクトル602と比較して、各周波数帯域にてブロードな吸収がある。
【0071】
図7に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた、熱処理温度とTHz波透過率の間の関係を表す曲線701を示す。縦軸はTHz波透過率(%)、横軸は熱処理温度(℃)である。複数の接合ウェーハ200を用意し、図3B、図3C及び図3Dを参照して説明した第1、第2及び第3接合状態となるように、それぞれ熱処理を施した。これらの接合ウェーハ200に対して、本発明によるウェーハ接合強度検査装置によりTHz波を透過させて、THz波透過率を測定した。尚、透過率は、接合ウェーハ200を透過したTHz波の電場強度の基準値に対する、各接合ウェーハ200より得られたTHz波の電場強度の測定値の相対値(%)である。基準値は、試料無しの場合の測定値、又は、接合ウェーハと同一の厚さの同一材料の非接合ウェーハの場合の測定値であってよい。更に、この測定実験では、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を、ポンプ光132aとプローブ光136aの光路長が一致する位置に固定した状態で、電場強度を測定した。従って、電場強度の極大値又は極小値を求めた。例えば、図5の曲線で示す時点t1における時間波形のピーク値E1、E2を用いて、基準値に対する測定値の比をそれぞれ算出することにより透過率を求めた。
【0072】
図示のように、第1接合状態S1(熱処理温度がT1より小さい。)では、THz波の透過率が低く、第2接合状態S2(熱処理温度がT1以上且つT2以下。)では、THz波の透過率が少し高く、第3接合状態S3(熱処理温度がT2より大きい。)では、THz波の透過率がより高く、母材(Si)のTHz波透過率TR2と同程度である。このように、THz波透過率は接合ウェーハ200の熱処理温度により変化する。
【0073】
時間遅延ステージ112の可動ミラー114を固定した状態で測定する場合には、メカ的な駆動は試料ステージ160の動作のみとなる利点がある。更に、電場強度のピーク値のみを得るため、電場強度の時間波形を求める場合と比較して、高速に透過率の演算処理が可能となる。
【0074】
しかしながら、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を連続的に移動させ、電場強度の時間波形を求めることにより任意の周波数帯域における透過率を求めることができる。例えば、図6に示したTHz波のスペクトル強度を求めてから、任意の周波数における基準値に対する測定値の比を算出することにより透過率を求めることができる。
【0075】
図8に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた、THz波透過率と接合強度の間の関係を表す曲線801を示す。縦軸は接合強度(Mpa)、横軸はTHz波透過率(%)である。尚、縦軸の接合強度(Mpa)は、引張試験よって測定された引張強度である。即ち、引張強度を接合強度とみなした。実線の曲線801は、図4の熱処理温度と引張強度の間の関係と、図7の熱処理温度とTHz波透過率の間の関係から、得た。
【0076】
この曲線801から、THz波透過率を変数とする接合強度の関数を表す式を近似的に求めることができる。図2を参照して説明したウェーハレベルチップサイズパッケージングでは、熱処理温度が低いほうが好ましい。そのため、接合ウェーハ200の全面を第3接合状態S3になるような高温(図4の熱処理温度T2)に加熱しない場合がある。このような場合でも、曲線801を表す式を作成することにより、接合ウェーハ200の局所的な部位の接合強度が得られる。例えば、THz波の透過率がTR3のときの接合強度P3は、図8の曲線上で求められる。こうして、接合ウェーハの局所的な部位の接合強度が得られるから、製造工程において、接合部の信頼性の確保が期待できる。
【0077】
曲線801の精度は、図4の引張試験と図7のTHz波透過率の測定試験の実験精度に依存する。そのため、標準試料である接合ウェーハの数は、統計的に十分な大きさであることが好ましい。標準試料は、接合ウェーハ200の一部であってよいが、間隙(ボイド)のないものが望ましい。図4及び図7の曲線に示すように、第2接合状態S2では、引張試験及びTHz波透過率の変動が大きい。このような場合には、接合ウェーハの接合強度は、局所的な部位毎に異なる。従って、複数の測定回数又は複数の測定部位から複数のTHz波特性データを求め、それらの平均値を算出する等の統計処理が必要となる。
【0078】
本例では、直接接合によって接合した標準試料について、テラヘルツ波の透過率を測定した場合を説明した。こうして求めた標準試料の透過率より、ウェーハレベルチップサイズパッケージングによる接合ウェーハ200について、水素結合及びOH基のTHz波の吸収や位相変化、共有結合との相違、等を検出することができる。例えば、水素結合及びOH基が存在すると、特定の周波数領域のTHzパルス波に対して、鋭いピーク(スペクトルピーク)が得られることが知られている。
【0079】
しかしながら、他の接合方法によって接合された接合ウェーハの場合には、THz波特性データとして、テラヘルツ波の透過率以外のパラメータを測定してもよい。THz波特性データとして、テラヘルツ波の反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲、の少なくとも1つ以上選定し、これらのデータの統計処理により曲線801又はその関係式を求めてもよい。更に、接合方法や材料に最適なTHz波光学系を設計することが好ましい。
【0080】
ここでは、引張試験機を用いて引張強度(MPa)を測定し、それを接合強度とする例を説明した。しかしながら、他の接合強度測定方法によって接合強度を算出してもよく、例えば、特許文献3のようなエッチング液による接合強度測定結果から算出してもよい。
【0081】
図4から図8は標準試料の接合ウェーハ200について求めた結果である。但し、図5及び図6の曲線と同様な曲線は、検査対象の試料の接合ウェーハ200についても得られる。
【0082】
図9Aを参照して、試料を透過したTHz波を検出する透過測定法を説明する。接合ウェーハ900は、THz波を透過させることができる互いに異なる2種の材料からなるウェーハ901、902を接合することによって形成した。THz波は、THz帯域の屈折率に大きな差がある境界面にて反射する。2つのウェーハ901、902の材料の間で、THz帯域の屈折率に大きな差がある場合には、THz波は、その境界面903で反射する。第1のウェーハ901とその上側の空間の間の境界面904でも、THz帯域の屈折率に大きな差がある。第2のウェーハ902とその下側の空間の間の境界面905でも、THz帯域の屈折率に大きな差がある。これらの境界面904、905でも、THz波は反射する。接合ウェーハ900の上側及び下側の空間は、例えば、試料室101内の雰囲気である。
【0083】
本例では、THz波を、上側の境界面904から入射させる。THz波は、境界面904、903及び905を、それぞれ透過、又は、反射して、下側の境界面905から放射する。
【0084】
光路L1は、THz波が境界面で反射しないで、そのまま接合ウェーハ900を透過した場合を示す。光路L2は、THz波が、境界面903で反射し、その反射波が上側の境界面904で反射してから、下側の境界面903より放射した場合を示す。光路L3は、THz波が、2つの境界面904、903を透過し、下側の境界面905で反射し、その反射波が境界面903で反射してから、下側の境界面905より放射した場合を示す。光路L4は、THz波が、下側の境界面905で反射し、その反射波が上側の境界面904で反射してから、下側の境界面905より放射した場合を示す。
【0085】
尚、境界面903は十分薄いので、例えば上側から境界面903に入射し、境界面903の上面を反射したTHz波の光路と、上側から境界面903に入射し、境界面903の下面を反射したTHz波の光路は、互いに重なり合って描かれている。
【0086】
図9Bに、透過測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形910を示す。時点t1における電場強度のピーク911は、図9Aの光路L1を通ったTHz波に対応する。時点t2における電場強度のピーク912は、図9Aの光路L2を通ったTHz波に対応する。時点t3における電場強度のピーク913は、図9Aの光路L3を通ったTHz波に対応する。時点t4における電場強度のピーク914は、図9Aの光路L4を通ったTHz波に対応する。
【0087】
2つのウェーハ901、902の材料の間で、THz帯域の屈折率に大きな差がある場合には、複数の光路L1〜L4が生成される。これらの光路L1〜L4の間では、実質的に、光路差が存在する。従って、光路差に対応して、ピーク911〜914が現れる時点t1、t2、t3、t4が異なる。更に、これらのピーク911〜914の波形の振幅及び形状は互いに異なる。例えば、ピーク914の波形はピーク911の波形に対して反転している。
【0088】
時間遅延ステージ112の可動ミラー114を固定する場合には、THz波の電場強度の極大値又は極小値のみが求められる。透過率を求めるには、極大値又は極小値を用いて、基準値に対する測定値の相対値(%)を算出する。ここに極大値又は極小値は、最大のピーク911であってよいが、他のピーク値912〜914であってもよい。
【0089】
2つのウェーハ901、902の材料が同一であり且つ両者の厚さが同一の場合には、2つの光路L2、L3を伝播するTHz波による時間波形のピーク912、913は重なり合う。従って、その時点に、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定することにより、接合面に焦点を合わせることができる。この場合には、接合部の状態を敏感に検出することができる。
【0090】
接合前のウェーハの形状や厚さが不均一な場合にも、THz波の電場強度の波形の振幅及び形状が不規則に変動する。特に、屈折率の高い材料の場合には、接合部における屈折率の差に起因した波形の乱れより、接合前のウェーハの厚さのばらつきに起因した波形の乱れのほうが大きい。この場合には、最大のピーク911を探すのが困難である。そこで、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を小距離ずつ移動させながら電場強度を測定し、電場強度のピーク値を探すとよい。
【0091】
時間遅延ステージ112の可動ミラー114を移動させる場合には、THz波の電場強度の時間波形が得られる。透過率を求めるには、時間波形から得られた極大値又は極小値を用いて、基準値に対する測定値の相対値(%)を算出すればよい。更に、時間波形から、図6に示した周波数スペクトルを求めることができる。従って、周波数領域毎に、透過率を求めることができる。
【0092】
しかしながら、図9Bに示すような不規則な変動成分を含む時間波形910をフーリエ変換して周波数スペクトルを求めると、図6のような単調な曲線ではなく、複数の周波数領域にて振幅が変動し、波打つ曲線となる。このような曲線では、波長と試料厚さと屈折率の差に起因する干渉成分を除去する必要がある。こうして干渉成分を除去してから、任意の周波数における基準値に対する測定値の比を算出することにより任意の周波数における透過率を求めることができる。
【0093】
図10Aを参照して、試料を反射したTHz波を検出する反射測定法を説明する。本例の接合ウェーハ1000は、THz波を透過させることができる材料からなるウェーハ1001とTHz波を透過させることができない材料、例えば、金属からなるウェーハ1002を接合することによって形成した。
【0094】
本例では、THz波を、上側の境界面1004から入射させる。THz波は、上側の境界面1004に対して所定の入射角度により入射する。入射したTHz波は、境界面1004、及び、1003を、それぞれ、反射して、上側の境界面1004から放射する。
【0095】
光路L11は、THz波が、上側の境界面1004で反射し、その反射波がそのまま、入射側に放射した場合を示す。光路L12は、THz波が、上側の境界面1004で屈折して入射し、境界面1003で反射し、その反射波が上側の境界面1004で屈折して、入射側に放射した場合を示す。光路L13は、THz波が、上側の境界面1004で屈折して入射し、境界面1003で反射し、その反射波が上側の境界面1004で反射し、その反射波が再び境界面1003で反射し、その反射波が上側の境界面1004で屈折して、入射側に放射した場合を示す。
【0096】
図10Bに、反射測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形1010を示す。時点t11における電場強度のピーク1011は、図10Aの光路L11を通ったTHz波に対応する。時点t12における電場強度のピーク1012は、図10Aの光路L12を通ったTHz波に対応する。時点t13における電場強度のピーク1013は、図10Aの光路L13を通ったTHz波に対応する。
【0097】
図10Bの時点t11における時間波形のピーク値1011を用いて、THz波特性データを求めても、接合部の状態を検出することはできないが、例えば、反射率等の基準値を得ることはできる。図10Bの時点t12、t13における時間波形のピーク値1012、1013を用いて、THz波特性データを求めることにより、接合部の状態を検出することができる。例えば、その時点t12、t13に、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定することにより、接合面に焦点を合わせることができる。この場合には、接合部の状態を敏感に検出することができる。
【0098】
図11に、試料を反射したTHz波を検出する高速化反射測定法の他の例を説明する。本例の接合ウェーハ1100は、THz波を透過させることができる材料からなるウェーハ1101とTHz波を透過させることができない材料からなるウェーハ1102を接合することによって形成した。更に、接合ウェーハ1101の上面にミラー1106を配置した。
【0099】
本例では、THz波を、上側の境界面1104から入射させる。THz波は、境界面1103、及び、ミラー1106を、順に反射してから放射する。
【0100】
光路L15は、THz波が、上側の境界面1104で屈折して入射し、境界面1103とミラー1106を次々に反射し、入射側と反対側に放射した場合を示す。本例では、接合ウェーハ1100の端部にて、THz波を検出し、接合部1103の状態を検出することができる。
【0101】
図12を参照して、高速化反射測定法による測定結果の例を説明する。図12は、接合ウェーハ200を上から見た状態を模式的に示す。ここでは、図11に示したTHz波光学系を用いて、高速化反射測定法により、接合ウェーハ200の接合強度を求めた。MEMSウェーハや三次元積層デバイスなどでは、接合部が全面ではなく格子状になる場合が多い。そこで、接合ウェーハ200の全面をスキャンするよりも、格子状の領域のみをスキャンするほうが、接合強度の検査の時間を短縮することができる。第1の光路Lxは、xz平面に沿って入射し、放射したTHz波の光路を上から見た状態を示す。第2の光路Lyは、yz平面に沿って入射し、放射したTHz波の光路を上から見た状態を示す。
【0102】
矢印は、THz波の方向を示す。接合ウェーハ200に入射したTHz波は、矢印に沿って、接合面とミラーを順に、複数回反射してから放射する。接合ウェーハ200上の第1及び第2の光路Lx、Lyに沿って、接合強度の測定結果が得られる。矢印の先端の○印は、測定結果が予め設定した接合強度の正常範囲にあることを示す。矢印の先端の×印は、測定結果が予め設定した接合強度の正常範囲にないことを示す。例えば、第1の光路Lxに沿った測定結果1201と、第2の光路Lyに沿った測定結果1202は、共に、正常範囲にない。従って、この2つの光路の交点の部位1203の接合強度が正常範囲にない。そこで、この部位1203の接合状態を詳細に調べる必要がある。時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を移動させながら、即ち、時間波形のピークを含む波形プロファイルを求めることにより、この部位1203の接合強度が弱いことを確認することができる。
【0103】
本例では、THz波は、接合ウェーハ200の接合面とその上に配置されたミラーを、複数回反射するため、THz波検出器157に到達するTHz波は減衰する。そのため、THz波検出器157による検出精度が低下する。更に、THz波を検出して得られた情報は、各反射点における情報を平均化したものである。そこで、接合面とミラーにおけるTHz波の反射回数が減少するような工夫を行ってよい。例えば、接合ウェーハ200の一方の縁から他方の縁までの光路ではなく、その半分の光路に沿って、測定する。それによって、接合ウェーハ200の半分ずつ、測定される。更に、THz波の入射角度を小さくしたり、ミラーの寸法を小さくすることによっても、反射回数が減少する。
【0104】
図13に、検査対象の接合ウェーハ200の接合強度の測定結果の例を示す。本例の測定実験では、THz波の電場強度が基準測定時にピーク値となるように遅延ユニット112の可動ミラー114の位置を固定した。試料ステージ160に載置された接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンすることにより透過率を求めた。こうして得られたTHz波の透過率に対応する接合強度を、予め求めた図8に示す曲線801から算出した。こうして得られた、接合強度の分布を等高線で示した。領域1301では接合強度が強く、領域1302では接合強度が少し弱く、領域1303では接合強度が弱い、ことが示されている。
【0105】
尚、接合強度が正常な領域と正常でない領域を、異なる色で表示してもよい。例えば、接合強度が正常でない領域を赤色等により表示してもよい。こうして、接合強度が正常であるか否かを色別することにより、作業者は、接合ウェーハ200のどの領域の接合強度が正常であるか、どの領域の接合強度が正常でないのかを容易に認識することができる。更に、上位装置によって、接合強度の正常又は非正常を認識しやすいように表示してもよい。
【0106】
接合強度を測定する場合には、上述のように、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を所定の位置に固定した。即ち、電場強度の時間波形のピーク値のみを求め、電場強度の時間波形のプロファイルを求める必要がない。そのため、必ずしもテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS:THz Time-Domain Spectroscopy)の基本構成を用いる必要はない。テラヘルツ時間領域分光法の基本構成で用いるTHz波発生器151及びTHz波検出器157以外の機器により測定してもよい。
【0107】
図14に、図13に接合強度画像1300にボイド画像1401を重ね合わせた結果を示す。本例のウェーハ接合強度検査装置100にカメラを設置し、可視光又は近赤外光の照明を用いて、同一の接合ウェーハ200を撮像することにより、ボイド画像1401が得られる。ボイド画像1401を図13に接合強度画像1300に重ね合わせることにより、接合ウェーハ200における間隙(ボイド、ギャップ)の分布情報を得ることができる。例えば、ボイド1402やボイド1403が、接合強度分布の等高線1300に重ね合わされることにより、接合強度が弱い部位1303が、ボイド1402周辺に分布していることが確認できる。
【0108】
ボイド画像1401の代わりに、様々な情報を有する画像を用いてもよい。このような画像は、外部装置による撮影によって得られたものであってもよい。例えばウェーハの厚さや形状などの情報を有する画像であってもよい。こうして、接合強度画像1300に、様々な情報を有する他の画像を重ね合わせることにより、接合強度分布と他の情報の関係が容易に判る。
【0109】
この画像を、PC102又はモニタに表示する場合には、矢印で示すカーソル1404を表示する。作業者は、所望の位置、例えば、正常でない部位や、気になる位置にカーソル1404を配置し、それをクリックする。それにより、その位置について、THz−TDSによる時間波形(図5)やスペクトル波形(図6)を測定するか、又は、既に測定してあった結果を表示することができる。図12、図13、及び、図14に示した測定結果はPC102や表示部などに表示される。
【0110】
本発明によるウェーハ接合強度検査装置及び方法では、THz波特性として、テラヘルツ波の透過率、反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲等が得られる。テラヘルツ波の透過率を求める方法は既に説明した。テラヘルツ波の透過率は、図9Aに示した透過測定法によって得られる。以下に、他のTHz波特性を求める方法を説明する。テラヘルツ波の反射率は、図10A及び図11等に示した反射測定法によって得られる。テラヘルツ波の反射率は、接合ウェーハ200を反射したTHz波の電場強度の基準値に対する、各接合ウェーハ200より得られたTHz波の電場強度の測定値の相対値(%)である。基準値は、試料無しの場合の測定値、又は、接合ウェーハと同一の厚さの同一材料の非接合ウェーハの場合の測定値であってよい。
【0111】
テラヘルツ波の吸収スペクトルは、基準スペクトルをベースラインとし、各接合ウェーハ200より得られたスペクトルの比の常用対数をとり、それに正負の符号を付すことにより得られる。基準スペクトルは、試料無しの場合の測定値、又は、接合ウェーハと同一の厚さの同一材料の非接合ウェーハの場合の測定値であってよい。
【0112】
テラヘルツ波の吸光度は、透過率と同様に、透過測定法によって得られる。THz波の電場強度の基準値に対する測定値の比の常用対数をとり、それに正負の符号を付すことにより得られる。
【0113】
テラヘルツ波の偏光状態は、偏光板を用いることにより測定される。例えばTHz受光系にワイヤグリットなどの偏光板を実装し、回転させた時の電場強度変化を測定する。それにより、振動方向が規則的な光波の状態を検出することができる。この場合には、接合部の残留応力に起因したTHz波の偏光状態の変化が検出される。
【0114】
テラヘルツ波の位相は、テラヘルツ波の時間的及び空間的な位置を示す無次元量である。時間波形及び空間波形におけるピークの位置又はパルス幅等により測定することができる。
【0115】
テラヘルツ波の複素屈折率は、基準値及び測定値の時間波形、振幅スペクトルから求められる。但し、時間波形は図5Aに示すように単一の波形からなり、図9Bに示すような反射波を含まないものとする。複素屈折率は、次の式によって表される。
【0116】
【数1】
【0117】
ここで、ω:各周波数、n:屈折率、k:波数である。この式の各項は、次の振幅透過率t(ω)から求めることができる。
【0118】
【数2】
【0119】
ここで、E:電界(電場強度)、d:試料の厚さ、c:光速、ω:各周波数、添字sam、refは測定値、基準値(試料の有無)を表す。数2の式は一般に陽には解けない。そこで、複素屈折率の実数成分と虚数成分の初期値を設定し、実数成分が収束するまで差分計算する。即ち、適当な式変形を行い逐次的に複素屈折率を求める。
【0120】
複素誘電率は次の式3によって表され、複素伝導率は次の式4によって表される。
【0121】
【数3】
【0122】
【数4】
【0123】
これらの式の各項は次の関係式から得られる。
【0124】
【数5】
ただしε∞は十分に高周波での試料の誘電率、ε0は真空誘電率である。
【0125】
図15Aを参照して、透過測定法においてテラヘルツ波の散乱光のみを検出する方法の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、遮光拡散板154Aと、それを囲むように配置されたミラー154Bを有する。ミラー154Bは、放物面ミラー、ウィンストンコーンミラー等により構成され、中心孔を有する。遮光拡散板154Aとミラー154Bの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。透過散乱光143以外の透過光142は、遮光拡散板154Aによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。透過散乱光143は、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。透過散乱光143のうち、遮光拡散板154Aの外側を反射したTHz波は、再度、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。本例では、THz波検出器157は透過散乱光のみを検出する。本例では、透過散乱光の強度の影響は、透過率の変化として検出される。THz波特性として、透過散乱光を検出することができる。
【0126】
図15Bを参照して、透過測定法においてテラヘルツ波の散乱光以外の透過光を検出する方法の他の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、アイリス154Cを有する。アイリス154Cの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。透過散乱光143以外の透過光142は、アイリス154Cの中心孔を経由して、THz波検出器157に到達する。透過散乱光143は、アイリス154Cによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。本例では、THz波検出器157は透過散乱光以外の透過光を検出する。本例では、透過散乱光の強度の影響を受けることなく透過率を検出することができる。
【0127】
図16Aを参照して、反射測定法においてテラヘルツ波の散乱光のみを検出する方法の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、遮光拡散板154Aと、それを囲むように配置されたミラー154Bを有する。ミラー154Bは、放物面ミラー、ウィンストンコーンミラー等により構成され、中心孔を有する。遮光拡散板154Aとミラー154Bの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。反射散乱光145以外の反射光144は、遮光拡散板154Aによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。反射散乱光145は、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。反射散乱光145のうち、遮光拡散板154Aの外側を反射したTHz波は、再度、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。本例では、THz波検出器157は反射散乱光のみを検出する。本例では、反射散乱光の強度の影響は、透過率の変化として検出される。THz波特性として、反射散乱光を検出することができる。
【0128】
図16Bを参照して、反射測定法においてテラヘルツ波の散乱光以外の反射光を検出する方法の他の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、アイリス154Cを有する。アイリス154Cの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。反射散乱光145以外の反射光144は、アイリス154Cの中心孔を経由して、THz波検出器157に到達する。反射散乱光145は、アイリス154Cによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。本例では、THz波検出器157は反射散乱光以外の反射光を検出する。本例では、反射散乱光の強度の影響を受けることなく透過率を検出することができる。
【0129】
本発明によるウェーハ接合強度検査装置及び方法は、テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS:THz Time-Domain Spectroscopy)の基本構成、即ち、図1に示したTHz波光学系150によって実現することができる。しかしながら、接合ウェーハ200の接合強度を検査できるなら、テラヘルツ時間領域分光法の基本構成と同一の構成を用いる必要はない。例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR:Fourier transform infrared spectrophotometer)など他のTHz波分光装置の構成を用いてもよい。例えば、THz発生器(光源)は、パラメトリック発振器やTHz量子カスケードレーザ、後進波管、ガンダイオード、共鳴トンネルダイオード、高圧水銀灯、遠赤外ヒータ、黒体炉などでもよい。THz検出器は、焦電センサ、ボロメータ、ゴーレイセル、THzカメラなどでもよい。
【0130】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0131】
100:ウェーハ接合強度検査装置、
101:試料室、
102:PC、
104:システムコントローラ、
106:フェムト秒レーザ、
108:ビームスプリッタ、
110:変調機能付きバイアス電源、
112:時間遅延ステージ、
114:可動ミラー、
116:可動ミラーの動作方向(直進動作)、
118:ロックインアンプ、
120:プリアンプ、
122:試料ステージコントローラ、
124:試料室調整管理機器、
130:システムコントローラとの電気系接続、
132:光ファイバ(フェムト秒レーザ光路)、
132a:ポンプ光、
134:光ファイバ(フェムト秒レーザ光路)、
134a:プローブ光、
136:光ファイバ(フェムト秒レーザ光路)、
136a:プローブ光、
138:THz波光路
141:THz波、
142:透過光、
143:透過散乱光、
145:反射散乱光、
144:反射光、
150:THz波光学系
151:THz波発生器、
151a:集光レンズ、
151b:THz波発生素子、
151c:レンズ、
153:THz波投光用光学系、
154:THz波受光用光学系、
154A:遮光拡散板、
154B:ミラー、
154C:アイリス、
157:THz波検出器、
157a:集光レンズ、
157b:THz波検出素子、
157c:レンズ、
160:試料ステージ、
161:チャック機構、
162:回転機構、
163:昇降機構、
164:水平機構、
172:試料室調整管理機器端末、
174:試料室開閉機構、
200:接合ウェーハ、
201:封止用ウェーハ、
202:MEMSウェーハ、
203:MEMSのチップサイズのパッケージ、
301、302:Siウェーハ、
301a、302a:Siウェーハの表面の薄い酸化膜、
311:水酸基(OH基)
312:水素結合
313:脱水縮合反応、
314:OとSiの結合、
401:熱処理温度と引張強度の間の関係を表す曲線、
501:第1接合状態(S1)のウェーハに透過した場合の電場強度の時間波形、
502:第3接合状態(S3)のウェーハに透過した場合の電場強度の時間波形、
601:時間波形501をフーリエ変換して得たパワースペクトルの波形、
602:時間波形502をフーリエ変換して得たパワースペクトルの波形、
701:熱処理温度とTHz波透過率の間の関係を表す曲線、
801:THz波の透過率と接合強度の関係を表す曲線、
900:接合ウェーハ
901:THz波が透過する材料のウェーハ
902:THz波が透過する材料のウェーハ
903、904、905:境界面、
910:接合ウェーハを透過したTHz波の時間波形、
911:光路L1を伝播したTHz波、
912:光路L2を伝播したTHz波、
913:光路L3を伝播したTHz波、
914:光路L4を伝播したTHz波、
1000:接合ウェーハ
1001:THz波が透過する材料のウェーハ
1002:THz波が反射する材料のウェーハ
1003,1004:境界面、
1010:接合ウェーハを透過したTHz波の時間波形、
1011:光路L11を伝播したTHz波、
1012:光路L12を伝播したTHz波、
1013:光路L13を伝播したTHz波、
1100:接合ウェーハ
1101:THz波が透過する材料のウェーハ
1102:THz波が反射する材料のウェーハ
1103:境界面、
1106:ミラー、
1201:横ラインの測定結果表示例、
1202:縦ラインの測定結果表示例、
1203:正常範囲外の接合部位、
1300:接合強度画像、
1301:接合強度の強い部位、
1302:接合強度の少し弱い部位、
1303:接合強度の弱い部位、
1401:近赤外光によるボイド画像、
1402:ボイドの例、
1403:ボイドの例、
1404:接合強度の詳細を確認するための矢印。
S1:ウェーハの接合直後または低温の加熱処理した状態、
S2:接合されたウェーハを中温の加熱処理した状態、
S3:接合されたウェーハを高温の加熱処理した状態、
P2:母材(Si)の接合強度と同じくらいの引張強度、
P3:透過率TR3の時の接合強度、
T2:全面が第3接合状態(S3)になる熱処理温度、
E1:時間波形501のピーク値、
E2:時間波形502のピーク値、
t1:ポンプ光とプローブ光の光路長が一致しTHz波がピークとなる時間、
t2:THz波のピーク値912をとる時間、
t3:THz波のピーク値913をとる時間、
t4:THz波のピーク値914をとる時間、
L1:接合ウェーハを透過したTHz波の光路、
L2:境界面903で反射してから透過したTHz波の光路、
L3:境界面903、904で反射してから透過したTHz波の光路、
L4:境界面903、904、905で反射してから透過したTHz波の光路、
L11:境界面1004で反射したTHz波の光路、
L12:境界面1003で反射したTHz波の光路、
L13:境界面1003、1004で反射したTHz波の光路、
L15:境界面をラインでスキャンする場合のTHz波の光路、
TR2:SiのTHz波の透過率、
TR3:任意のTHz波の透過率
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合ウェーハの接合強度を検査するための装置および方法に関し、特に、テラヘルツ波を用いて接合強度を検査する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ウェーハ、NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)ウェーハ、SOI(Silicon on Insulator)ウェーハ、三次元積層デバイス、パワーデバイス、などの製造過程では、複数枚のウェーハ(基板)の接合(張り合わせ)が行われる。
【0003】
接合ウェーハの接合強度が弱い場合、ダイシングを含む次工程で、接合部の剥離を生じる場合があり、歩留まりが悪化する。また、次工程では剥離しなくとも、経年変化によって剥離することがあり、それにより、製品の信頼性が低下する。
【0004】
接合強度を左右する因子は、共有結合やイオン結合、水素結合、ファンデルワールス力など材料の化学的結合力、残留応力、母材の強度、接合品質などがある。特許文献1、2、3には、接合強度を評価する方法の例が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された方法では、引張試験による破壊検査を用いる。特許文献2に記載された方法では、接合部に照射した光の光路差によりできる干渉縞、接合部の静電容量、又は、インピーダンスの変化から、接合界面に生じた未接合部分(ボイドまたはギャップ、間隙)の接合状態を評価する。特許文献3に記載された方法では、接合ウェーハをダイシングし、接合面が露出した状態で、フッ酸系水溶液等のエッチング液に浸漬させ、エッチングされた量と接合界面にしみ込んだ量とから、接合状態を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2846973号
【特許文献2】特開平9−289238号公報
【特許文献3】特許第4569058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された方法では、引張試験によって試料を破壊するため、製造ラインにおいて出荷品の接合強度の検査を行うことができない。更に、この方法では、耐環境や経年変化、製造工程におけるストレスに対する耐久性などを調査する場合、多数サンプルを準備して、各段階で抜き取り検査をする必要がある。また、引張試験は、接合面積の大きさに対する依存性があり、局所的な接合部の検査には向いていない。
【0008】
特許文献2に記載された方法では、接合界面に間隙が生じていない場合には、接合強度の不良を検出できない。
【0009】
特許文献3に記載された方法では、接合ウェーハ(接合基板)をエッチング液に浸漬させるため、MEMSの製造などでは、破壊検査となる場合がある。
【0010】
本発明の目的は、接合ウェーハを破壊することなく、接合界面に間隙が生じていない場合であっても、局所的な接合部の接合強度を検査することができる検査装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のウェーハ接合強度検査装置は、接合ウェーハを保持する試料ステージと、テラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器と、接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器と、テラヘルツ波検出器によって検出したテラヘルツ波より接合ウェーハのTHz波特性を演算する演算部と、を有する。
【0012】
演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合ウェーハを破壊することなく、接合界面に間隙が生じていない場合であっても、局所的な接合部の接合強度を検査することができる検査装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のウェーハ接合強度検査装置の構成例を示す図である。
【図2】ウェーハレベルチップサイズパッケージングの概要を説明する図である。
【図3A】2つのSi(シリコン)ウェーハの接合前の状態を説明する図である。
【図3B】2つのSi(シリコン)ウェーハの第1接合状態を説明する図である。
【図3C】2つのSi(シリコン)ウェーハの第2接合状態を説明する図である。
【図3D】2つのSi(シリコン)ウェーハの第3接合状態を説明する図である。
【図4】接合ウェーハについて熱処理温度と引張強度の間の関係の例を説明する図である。
【図5】接合ウェーハにTHz波を透過させた場合の電場強度の時間波形(テラヘルツ波の時間波形)の例を説明する図である。
【図6】図5の時間波形をフーリエ変換した得た周波数パワースペクトル波形を説明する図である。
【図7】接合ウェーハについて熱処理温度とTHz波透過率の間の関係を説明する図である。
【図8】接合ウェーハについてテラヘルツ波透過率と接合強度の間の関係を説明する図である。
【図9A】透過測定法の例を説明する図である。
【図9B】透過測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形を説明する図である。
【図10A】反射測定法の例を説明する図である。
【図10B】反射測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形を説明する図である。
【図11】反射測定法の他の例を説明する図である。
【図12】図11の反射測定法による測定結果の例を説明する図である。
【図13】本発明のウェーハ接合強度検査装置によって接合ウェーハの接合強度を測定した結果の例を説明する図である。
【図14】図13の結果と他のウェーハ接合情報画像とを重ね合わせて表示した例を説明する図である。
【図15A】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、透過測定法によって、テラヘルツ波の散乱光のみ検出する方法の例を説明する図である。
【図15B】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、透過測定法によって、テラヘルツ波の散乱光以外の透過光を検出する方法の他の例を説明する図である。
【図16A】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、反射測定法によって、テラヘルツ波の散乱光のみ検出する方法の例を説明する図である。
【図16B】本発明のウェーハ接合強度検査装置において、反射測定法によって、テラヘルツ波の散乱光以外の反射光を検出する方法の他の例を説明する図である。
【図17】本発明のウェーハ接合強度検査方法の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、本発明によるウェーハ接合強度検査装置100の実施形態の一例を説明する。検査対象の接合ウェーハ200は、複数枚のウェーハ(基板)を接合することによって、即ち、張り合わせることによって形成される。接合ウェーハ200の接合方法には、陽極接合、直接接合、プラズマ活性化接合、ハイブリッド接合、表面活性化接合、はんだ接合、融接、共晶接合、ガラスフリット接合、接着剤による間接接合、等の様々な方法がある。直接接合等では接着材を用いないが、例えば、共晶接合では、接着材として金(Au)、ハンダ等を用いる。これら方法のうち、製造するデバイスや材料に応じて最適な接合方法が選択される。
【0016】
接合前のウェーハ材料及び接着材は、製造するデバイスや方法によって異なる。ウェーハ材料及び接着材には、例えば、シリコン(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化インジウム(InAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、サファイア(Al2O3)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、半田、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、水晶、石英(SiO2)、チタン(Ti)などがある。
【0017】
本発明によるウェーハ接合強度検査装置100では、接合ウェーハ200の接合部(接合界面)の接合強度を、テラヘルツ波により測定および検査する。テラヘルツ波(以下、THz波と記す)とは、0.1〜100THzの電磁波を指す。本例のウェーハ接合強度検査装置100では、接合ウェーハの接合方法に対応して、実験により得た最適な周波数帯域のTHz波が選択される。
【0018】
本例のウェーハ接合強度検査装置100では、テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS:THz Time-Domain Spectroscopy)の基本構成を用いて、THz波の発生及び検出を行う。テラヘルツ時間領域分光法は、テラヘルツ波の波形を直接測定することによって得られる振動電場強度の時間波形をフーリエ変換し、電磁波のスペクトルを得る分光法である。テラヘルツ時間領域分光は、電磁波の周波数毎の振幅、波形及び位相を得ることができるため、様々な分野に応用されている。振動電場強度の時間波形を、単に、THz波の時間波形と称することがある。本発明では、接合強度を検出するために、テラヘルツ時間領域分光法によってTHz波の時間波形を求めてもよいが、時間波形を求めることなく、時間波形のピーク値、即ち、極大または極小値のみを検出してもよい。
【0019】
テラヘルツ時間領域分光法では、試料を透過したTHz波を検出する透過測定法と試料を反射したTHz波を検出する反射測定法が知られている。本発明では、透過測定法と反射測定法のいずれを使用してもよい。THz波は、条件にもよるが半導体、セラミックスなどの化合物に対しては、電波と同様に透過性を有するが、金属に対しては透過性を有さない。透過測定法を用いる場合には、接合ウェーハ200を構成する複数のウェーハの少なくとも一部はTHz波を透過する材料によって形成される。反射測定法を用いる場合には、接合ウェーハ200を構成する複数のウェーハのうち、入射側のウェーハはTHz波を透過する材料によって形成され、その内側のウェーハはTHz波を透過しない材料によって形成される。従って、本例のウェーハ接合強度検査装置100では、THz波が透過する材料からなるウェーハを少なくとも1枚は外側に含む2枚以上のウェーハからなる接合ウェーハ200を検査対象とする。例えば、外側にTHz波を透過するSiウェーハを含む接合ウェーハが検査対象となる。その例として、SiウェーハとSiウェーハからなる接合ウェーハ、SiウェーハとAlウェーハからなる接合ウェーハ、SiウェーハとAuウェーハとSiウェーハからなる接合ウェーハ等がある。
【0020】
ウェーハ接合強度検査装置100は、試料室101、パーソナルコンピュータ(以下、PCと記す)102、システムコントローラ104、ビームスプリッタ108を備えたフェムト秒レーザ(超短パルスレーザ)106、変調機能付きバイアス電源110、直進移動116が可能な可動ミラー114を備えた時間遅延ステージ112、ロックインアンプ118、プリアンプ120、試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124を有する。
【0021】
ウェーハ接合強度検査装置100内の各ユニット、即ち、フェムト秒レーザ106、変調機能付きバイアス電源110、時間遅延ステージ112、ロックインアンプ118、試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124は、ケーブル130を介してシステムコントローラ104に接続されている。破線は電気系の接続を表す。
【0022】
PC102からの命令やPC102に予め組み込まれたプログラムやトリガに応じて、システムコントローラ104は、ウェーハ接合強度検査装置100内の各ユニットの機能を作動させるための制御を行う。作業者は、PC102を介して、システムコントローラ104に、接合ウェーハ200の接合強度の検査に関する命令を入力する。ウェーハ接合強度検査装置100は、システムコントローラ104からの命令に従って、接合ウェーハ200の接合強度の検査を行う。接合強度の検査の結果は、システムコントローラ104を介して、PC102に送られる。
【0023】
本例では、システムコントローラ104にPC102が接続されているが、システムコントローラ104にPC102より上位のシステムが接続されてもよい。また表示部は、必ずしもPC102である必要はなく、モニタ装置や表示パネルなど任意の機器であってよい。この場合、表示部は、システムコントローラ104により、その制御を行う。
【0024】
尚、システムコントローラ104は試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124の機能を備えても良い。その場合には、試料ステージコントローラ122、及び、試料室調整管理機器124は省略される。更に、システムコントローラ104とPC102を1つの制御演算装置によって置き換えてもよい。
【0025】
試料室101には、THz波の発生及び検出を行うTHz波光学系150と検査対象の接合ウェーハ200を支持する試料ステージ160が設けられている。THz波光学系150は、THz波発生器151、THz波投光用光学系153、THz波受光用光学系154、及び、THz波検出器157を有する。THz波発生器151は試料室101の側壁に設けられ、THz波検出器157は試料室101の底壁に設けられている。THz波発生器151の光軸とTHz波検出器157の光軸は整合しないように、本例では、直交するように配置されている。
【0026】
THz波発生器151は、集光レンズ151a、THz波発生素子151b、及び、レンズ151cを有する。THz波発生素子151bは、光伝導スイッチ、非線形光学結晶等により構成される。THz波投光用光学系153は、楕円面ミラー、放物面ミラー等により構成される。THz波受光用光学系154は、放物面ミラー、ウィンストンコーンミラー等により構成される。THz波光学系150内の点線138は、THz波の光路を示す。THz波検出器157は、集光レンズ157a、THz波検出素子157b、及び、レンズ157cを有する。THz波検出素子157bは、光伝導スイッチ、非線形光学結晶等により構成される。
【0027】
図示のTHz波光学系150は、透過測定法の光学系である。透過測定法では、THz波検出器157は、試料を透過したTHz波を検出するように構成され、且つ、配置されている。反射測定法の場合には、THz波検出器157は、試料を反射したTHz波を検出するように構成され、且つ、配置されている。例えば、THz波検出器157を、試料を反射したTHz波を検出することができるように、試料に対して、THz波発生器151と同一側に配置してもよい。又は、試料を反射したTHz波をTHz波検出器157に導くための光学系を設けてもよい。
【0028】
本例では、THz波光学系150に、THz波投光用光学系153とTHz波受光用光学系154を設けるため、接合ウェーハ200の局所的な接合部の接合強度を検査することができる。
【0029】
フェムト秒レーザ(超短パルスレーザ)106とTHz波発生器151の間には、フェムト秒レーザ光路として光ファイバ132が設けられている。フェムト秒レーザ(超短パルスレーザ)106と時間遅延ステージ112の間には、フェムト秒レーザ光路として光ファイバ134が設けられている。THz波検出器157と時間遅延ステージ112の間にはフェムト秒レーザ光路として光ファイバ136が設けられている。本例では、フェムト秒レーザ光を、光ファイバを介して伝播させる。そのため、空間を介して伝播させる場合と比較して、フェムト秒レーザの光学系のアライメントを簡略化することができると同時に、装置を小型化することができる。
【0030】
試料室101に、単一のTHz波光学系150が設けられてもよいが、試料室101のスペースの許す限り複数のTHz波光学系が設けられてよい。複数のTHz波光学系を設けることにより、接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンする場合の測定時間が短縮化される。
【0031】
試料ステージ160は、チャック機構161、回転機構162、昇降機構163、及び、水平機構164を有し、試料ステージコントローラ122又はシステムコントローラ104により制御される。チャック機構161は、接合ウェーハ200を載置及び固定するように構成され、接合ウェーハ200の裏面を差圧によって吸着する吸着方式、接合ウェーハ200のエッジを挟む把持機構方式等が用いられてよい。回転機構162は、チャック機構161上の接合ウェーハ200を回転移動させる。昇降機構163は、チャック機構161上の接合ウェーハ200を上下方向に沿って昇降移動させる。水平機構164は、チャック機構161上の接合ウェーハ200を水平方向に沿って平面移動させる。これらの機構によって接合ウェーハ200の位置決めがなされる。即ち、接合ウェーハ200上のTHz波の照射位置を試料室101内の任意の位置に配置される。
【0032】
接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンする場合、接合ウェーハ200をTHz波の光学系に対して迅速に移動させる必要がある。本例では、接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンする場合、接合ウェーハ200を回転機構162によって回転させながら、水平機構164によって水平方向に直線移動させることができる。本例では、試料ステージ160に水平機構164と回転機構162が設けられているため、水平機構164のみが設けられている場合と比較して、接合ウェーハ200をTHz波の光学系に対してより迅速に移動させることができる。そのため、THz波のサンプリング時間の許す範囲で高速にスキャンすることができる。
【0033】
本発明によると、接合ウェーハ200は、チャック機構161の装着部以外に、何も接触していない。従って、ウェーハ接合強度検査装置100によって接合ウェーハ200の接合強度を測定する間に、接合ウェーハ200が変形したり破壊することはない。
【0034】
試料室101には、更に、試料室内調整管理機器端末172、及び、試料室開閉機構174が設けられている。試料室101は、真空チャンバーのような密封構造を有する。試料室101の内部空間は、試料室調整管理機器124、又は、外部装置により、真空状態、窒素充填状態(窒素パージ)又は乾燥空気充填状態(ドライエアーパージ)の雰囲気に保持される。試料室101内に接合ウェーハ200を搬入するとき、又は、試料室101内より接合ウェーハ200を搬出するときには、試料室開閉機構174が開かれる。接合ウェーハ200の搬入又は搬出が終わると、試料室開閉機構174が閉じられる。
【0035】
試料室内調整管理機器端末172は、圧力センサ、温度計、湿度計等の試料室101の内部の雰囲気を測定するセンサ類と、ヒータ、電子冷却器等の試料室101の内部の雰囲気を調整する調整機器を有する。これらのセンサ類及び調整機器は、試料室101の外部に設置された、試料室調整管理機器124によって監視および制御され、更に、システムコントローラ104によって監視及び制御される。例えば、センサ類によって測定されたデータは、信号経路130を介してシステムコントローラ104に送られる。これらのデータは、PC102またはモニタなどに表示される。PC102を介してシステムコントローラ104に送られた命令は試料室調整管理機器124に送られる。試料室調整管理機器124からの制御信号は、試料室内調整管理機器端末172に送られる。
【0036】
試料室内調整管理機器端末172、及び、試料室調整管理機器124を設けることによって、試料室101の内部空間は、所望の雰囲気に保持される。即ち、水蒸気や温度変化などの外乱を除去することができるから、THz波が安定化する。
【0037】
次に、本発明のウェーハ接合強度検査装置100の動作を説明する。フェムト秒レーザ106によって発振されたレーザ光は、ビームスプリッタ108により、ポンプ光132aとプローブ光134aに分岐され、光ファイバ132、134をそれぞれ伝播する。
【0038】
ポンプ光132aは、THz波発生のための励起光としてTHz波発生器151内に導かれる。即ち、ポンプ光132aは、集光レンズ151aにより集光され、THz波発生素子151bに照射される。THz波発生素子151bによってTHz波が発生する。THz波発生素子151bには、変調機能付きバイアス電源110からの変調したバイアス電圧が印加される。尚、バイアス電圧の変調を行う代わりに、光チョッパを設けることによって、THz波又はフェムト秒レーザのポンプ光132aの変調を行ってもよい。THz波発生素子151bは、所定の周波数帯域幅を有する白色パルス波を生成する。この周波数幅は、THz波発生素子151bに依存する。
【0039】
THz波発生素子151bから発生したTHz波は、レンズ151cを介し放射され、THz波投光用光学系153により集光され、接合ウェーハ200に入射する。接合ウェーハ200を透過したTHz波は、THz波受光用光学系154により集光され、THz波検出器157に入射する。THz波検出器157に入射したTHz波は、レンズ157cを経由して、THz波検出素子157bに入射する。
【0040】
一方、プローブ光134aは、光ファイバ134を経由して、時間遅延ステージ112に導かれる。時間遅延ステージ112の機能は後に説明する。時間遅延ステージ112からのプローブ光136aは、光ファイバ136を伝播する。プローブ光136aは、THz波検出のための励起光として、THz波検出器157へ導かれる。プローブ光136aは、ポンプ光132aと同様に、集光レンズ157aによって集光され、THz波検出素子157bへ照射される。
【0041】
こうして、THz波検出素子157bの一方の面には、ポンプ光132aによって生成されたTHz白色パルス波の各パルスが所定の周期にて繰り返し到達する。THz波検出素子157bの反対側の面には、フェムト秒レーザ106からのプローブ光136aの各パルスが所定の周期にて繰り返し到達する。THz波検出素子157bは、プローブ光136aが照射された時のみ動作する。即ち、THz波検出素子157bに到達したTHzパルス波は、プローブ光136aによってサンプリングされる。
【0042】
THzパルス波の各パルスに対して、プローブ光136aの1パルスによってサンプリングされる。THzパルス波の各パルスに対するサンプリング点の位相は、プローブ光136aの1パルスがTHz波検出素子157bに到達する時点に対応する。
【0043】
プローブ光136aの光路に可動ミラー114を備えた時間遅延ステージ112が設けられている。ポンプ光132aの光路の長さは一定であるが、プローブ光136aの光路の長さは可動である。
【0044】
ポンプ光132aの光路とプローブ光136aの光路の間に光路差が存在する場合には、ポンプ光132aがTHz波検出素子157bに到達する時点と、プローブ光136aがTHz波検出素子157bに到達する時点の間に差が生じる。即ち、時間遅延が生じる。時間遅延ステージ112にて、可動ミラー114が所定の位置に固定されている場合には、時間遅延は一定である。この場合には、THzパルス波の各パルスに対してサンプリング点の位相は同一となる。例えば、ポンプ光132aの光路とプローブ光136aの光路が同一長さとなるように、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定した場合には、THzパルス波の各パルスのピーク値、即ち、極大又は極小値、がサンプリング点となる。これについては後に詳細に説明する。
【0045】
時間遅延ステージ112にて、可動ミラー114を連続的に直進移動116させることにより、ポンプ光132aとプローブ光136aの間の光路差が連続的に変化する。即ち、時間遅延は連続的に変化する。この場合には、THzパルス波の各パルスに対してサンプリング点の位相は、連続的に変化する。従って、THzパルス波の各パルスに対してサンプリング点の位相が互いに異なる複数のデータが得られる。このデータをプロットすることにより、THzパルス波の各パルスを表す時間波形が得られる。
【0046】
THz波検出素子157bは、プローブ光136aが照射されると、THz波の振動電場に比例した検出電流を生成する。検出電流は、プリアンプ120により、増幅され、電圧に変換される。プリアンプ120からの増幅電圧信号は、S/N比を向上させるために、ロックインアンプ118に送られる。ロックインアンプ118では、バイアス電源110の変調機能又はTHz波発生器151に設けられた光チョッパによる変調信号によって、同期検波を行う。
【0047】
システムコントローラ104は、ロックインアンプ118からの検出信号より、THz波の時間波形又はピーク値を得る。即ち、ポンプ光132aの光路とプローブ光136aの光路が同一長さとなるように、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定した状態で測定した場合には、THz波のピーク値が得られる。時間遅延ステージ112の可動ミラー114を連続的に移動させながら測定した場合には、THz波の時間波形、即ち、プロファイルが得られる。
【0048】
図17を参照して、本発明のウェーハ接合強度検査装置100を用いたウェーハ接合強度検査方法を説明する。ステップS101にて、標準試料についてTHz波特性データを取得する。作業者は、標準試料として、接合強度が異なる複数の接合ウェーハ200又は接合部を準備する。本例のウェーハ接合強度検査装置100により、この標準試料にTHz波を照射し、THz波の時間波形又はピーク値を測定する。時間波形又はピーク値より、標準試料に対する各種のTHz波物理特性が得られる。これをTHz波特性データとして、算出する。
【0049】
ここにTHz波特性データには、テラヘルツ波の透過率、反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲等が含まれる。
【0050】
ステップS102にて、標準試料について、引張試験機又は他の検査方法により、接合強度を測定する。こうして標準試料について、THz波特性データと接合強度のデータが得られたら、それを、PC102や上位装置などを介して、システムコントローラ104のメモリに保存する。
【0051】
ステップS103にて、標準試料について、THz波特性データと接合強度の関係を算出する。システムコントローラ104は、標準試料について、THz波特性データと接合強度の関係を算出し、記録する。THz波特性データと接合強度の関係は、グラフ、式又は表によって表現されてよい。THz波特性データと接合強度の関係を算出する方法の例は、後に、図8を参照して説明する。
【0052】
ステップS104にて、作業者は、本例のウェーハ接合強度検査装置100により、検査対象の接合ウェーハ200又は接合部のTHz波特性データを得る。作業者は、検査対象のTHz波特性データを、PC102や上位装置などを介して、システムコントローラ104に送る。
【0053】
ステップS105にて、標準試料について求めた、THz波特性データと接合強度の関係を用いて、検査対象の接合強度を求める。即ち、標準試料について求めた、THz波特性データと接合強度の関係から、検査対象のTHz波特性データに対応する接合強度を読み取る。
【0054】
ステップS106にて、システムコントローラ104は、標準試料から得られたTHz波特性データが正常範囲内にあるか否かを判定する。作業者は、予め、PC102や上位装置などを介して、正常な接合強度に対応するTHz波特性データの正常範囲を設定し、それをシステムコントローラ104に保存する。判定結果は、PC102又は表示装置に表示される。
【0055】
標準試料と検査対象試料では、材料及び接合方法については、同一であることが好ましいが、構造、寸法等については、必ずしも同一である必要はない。例えば、標準試料の接合部が全面である場合に、検査対象試料の接合部が格子状であってよい。
【0056】
本発明によると、標準試料について予め求めたTHz波特性データと接合強度の関係を使用するため、検査対象試料を破壊することなく、検査対象試料の接合強度を求めることができる。即ち、標準試料を破壊することはあるが、検査対象試料を破壊する必要はない。
【0057】
本発明によると、試料ステージ160によって、検査対象試料を支持する。検査対象試料は、試料ステージ160による支持部以外は、ウェーハ接合強度検査装置100の構成部材に接触しない。さらに、検査対象試料をエッチング液等の薬剤に浸漬させる必要がない。従って、検査対象試料を変形又は破壊させることなく、検査対象試料の接合強度を測定することができる。
【0058】
本発明によると、テラヘルツ時間領域分光法の基本構成を用いて検査対象試料のTHz波特性を求める。従って、接合界面に間隙が生じているか否かに拘らず、検査対象試料の接合強度を測定することができる。
【0059】
本発明によると、テラヘルツ時間領域分光法の基本構成を用いて検査対象試料にテラヘルツ波を照射する。従って、検査対象試料の任意の局所領域の接合強度を測定することができる。
【0060】
図2を参照して、ウェーハレベルチップサイズパッケージング(ウェーハレベルCSP)の概要について説明する。先ず、封止樹脂層を形成するための封止用ウェーハ201とプロセス処理を行ったMEMSウェーハ202を用意する。2つのウェーハ201、202を接合して、接合ウェーハ200を作成する。次に、この接合ウェーハ200をダイシングにより、チップサイズのパッケージ203を形成する。これに貫通配線を行う。ウェーハレベルCSPでは、ダイシングを行う前に、即ち、ウェーハの段階で、外部端子や封止樹脂層を形成する。
【0061】
図3A、図3B、図3C及び図3Dを参照して、2つのSiウェーハ301、302の直接接合の原理を説明する。直接接合では、2つのSiウェーハ301、302を、親水化処理と熱処理(加熱)により接合する。図3Aは、接合前の状態S0を示す。水と化学薬品によりSiウェーハ301、302の表面をわずかに酸化させ、薄い酸化膜301a、302aを形成する。更に、表面処理(親水化処理)を行い、酸化膜301a、302aの表面に多数の水酸基(OH基)311を付着させる。
【0062】
図3Bに示す第1接合状態S1は、常温で接合した直後の状態か、又は、低温の加熱処理を行った状態を示す。親水化処理を施した2つのウェーハ301、302の表面同士を、常温で又は低温加熱処理により、接合させる。それによって、酸化膜301a、302aの表面とOH基間で水素結合312が生成する。
【0063】
図3Cに示す第2接合状態S2は、中温の加熱処理を行った状態を示す。中温の加熱処理を行うと、脱水縮合反応313が進行し、接合強度が増大する。
【0064】
図3Dに示す第3接合状態S3は、高温の加熱処理を行った状態を示す。高温の加熱処理を行うと、更に、脱水縮合反応313が進行し、酸素(O)はSiと結合314し、接合強度はSi自体(共有結合)の強度となる。
【0065】
図4に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた熱処理温度と引張強度の間の関係を表す曲線401を示す。縦軸は引張試験機を用いて測定した引張強度(MPa)である。横軸は熱処理温度(℃)である。複数の接合ウェーハ200を用意し、それを直接接合によって接合し、図3B、図3C及び図3Dを参照して説明した第1、第2及び第3接合状態となるように、それぞれ熱処理を施した。これらの接合ウェーハ200の引張強度を、引張試験機によって測定した。第1接合状態S1(熱処理温度がT1より小さい。)では引張強度が弱いが、第2接合状態S2(熱処理温度がT1以上且つT2以下。)では引張強度が強くなる。更に、第3接合状態S3(熱処理温度がT2より大きい。)では、引張強度がより強くなり、母材Siの接合強度P2と同程度となる。熱処理温度を高くすることによって接合強度は大きくなることが示されている。
【0066】
図5に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた電場強度の時間波形(振動電場の波形)を表す曲線を示す。縦軸は電場強度(任意単位a.u)、横軸は時間(ピコ秒)である。複数の接合ウェーハ200を用意し、図3B及び図3Dを参照して説明した第1及び第3接合状態となるように、それぞれ熱処理を施した。これらの接合ウェーハ200に対して、本発明によるウェーハ接合強度検査装置により所定の周波数帯域のTHz波を透過させて、電場強度を測定した。電場強度は、各接合ウェーハ200の任意の複数点における平均値である。
【0067】
本例の測定実験では、電場強度の時間波形を得るために、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を連続的に移動させて、電場強度を測定した。
【0068】
破線の曲線501は、第1接合状態S1の接合ウェーハ200の測定結果を示す。実線の曲線502は、第3接合状態S3の接合ウェーハ200の測定結果を示す。時点t1にて、ポンプ光とプローブ光の光路長が一致し、THz波の強度がピーク、即ち、極大又は極小となり、各電場強度はピーク値となる。THz波は、水素結合などによる分子間相互作用などに相当するエネルギーを有する。THz波を接合ウェーハ200に照射すると、水素結合やOH基に吸収される。従って、第1接合状態S1の接合ウェーハ200より得られた時間波形501のピーク値E1は、第3接合状態の接合ウェーハ200より得られた時間波形502のピーク値E2より小さい。
【0069】
図6は、図5に示す電場強度の時間波形をフーリエ変換して得たパワースペクトルを表す曲線である。縦軸は振幅(任意単位a.u)、横軸は周波数(THz)である。破線の曲線601は、第1接合状態S1の接合ウェーハ200より得られた時間波形501(図5)をフーリエ変換して得たパワースペクトルを示す。実線の曲線602は、第3接合状態S3の接合ウェーハ200より得られた時間波形502(図5)をフーリエ変換して得たパワースペクトルを示す。
【0070】
図示のように、第1接合状態の接合ウェーハ200より得られたパワースペクトル601は、第3接合状態の接合ウェーハ200より得られたパワースペクトル602と比較して、各周波数帯域にてブロードな吸収がある。
【0071】
図7に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた、熱処理温度とTHz波透過率の間の関係を表す曲線701を示す。縦軸はTHz波透過率(%)、横軸は熱処理温度(℃)である。複数の接合ウェーハ200を用意し、図3B、図3C及び図3Dを参照して説明した第1、第2及び第3接合状態となるように、それぞれ熱処理を施した。これらの接合ウェーハ200に対して、本発明によるウェーハ接合強度検査装置によりTHz波を透過させて、THz波透過率を測定した。尚、透過率は、接合ウェーハ200を透過したTHz波の電場強度の基準値に対する、各接合ウェーハ200より得られたTHz波の電場強度の測定値の相対値(%)である。基準値は、試料無しの場合の測定値、又は、接合ウェーハと同一の厚さの同一材料の非接合ウェーハの場合の測定値であってよい。更に、この測定実験では、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を、ポンプ光132aとプローブ光136aの光路長が一致する位置に固定した状態で、電場強度を測定した。従って、電場強度の極大値又は極小値を求めた。例えば、図5の曲線で示す時点t1における時間波形のピーク値E1、E2を用いて、基準値に対する測定値の比をそれぞれ算出することにより透過率を求めた。
【0072】
図示のように、第1接合状態S1(熱処理温度がT1より小さい。)では、THz波の透過率が低く、第2接合状態S2(熱処理温度がT1以上且つT2以下。)では、THz波の透過率が少し高く、第3接合状態S3(熱処理温度がT2より大きい。)では、THz波の透過率がより高く、母材(Si)のTHz波透過率TR2と同程度である。このように、THz波透過率は接合ウェーハ200の熱処理温度により変化する。
【0073】
時間遅延ステージ112の可動ミラー114を固定した状態で測定する場合には、メカ的な駆動は試料ステージ160の動作のみとなる利点がある。更に、電場強度のピーク値のみを得るため、電場強度の時間波形を求める場合と比較して、高速に透過率の演算処理が可能となる。
【0074】
しかしながら、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を連続的に移動させ、電場強度の時間波形を求めることにより任意の周波数帯域における透過率を求めることができる。例えば、図6に示したTHz波のスペクトル強度を求めてから、任意の周波数における基準値に対する測定値の比を算出することにより透過率を求めることができる。
【0075】
図8に、標準試料の接合ウェーハ200について求めた、THz波透過率と接合強度の間の関係を表す曲線801を示す。縦軸は接合強度(Mpa)、横軸はTHz波透過率(%)である。尚、縦軸の接合強度(Mpa)は、引張試験よって測定された引張強度である。即ち、引張強度を接合強度とみなした。実線の曲線801は、図4の熱処理温度と引張強度の間の関係と、図7の熱処理温度とTHz波透過率の間の関係から、得た。
【0076】
この曲線801から、THz波透過率を変数とする接合強度の関数を表す式を近似的に求めることができる。図2を参照して説明したウェーハレベルチップサイズパッケージングでは、熱処理温度が低いほうが好ましい。そのため、接合ウェーハ200の全面を第3接合状態S3になるような高温(図4の熱処理温度T2)に加熱しない場合がある。このような場合でも、曲線801を表す式を作成することにより、接合ウェーハ200の局所的な部位の接合強度が得られる。例えば、THz波の透過率がTR3のときの接合強度P3は、図8の曲線上で求められる。こうして、接合ウェーハの局所的な部位の接合強度が得られるから、製造工程において、接合部の信頼性の確保が期待できる。
【0077】
曲線801の精度は、図4の引張試験と図7のTHz波透過率の測定試験の実験精度に依存する。そのため、標準試料である接合ウェーハの数は、統計的に十分な大きさであることが好ましい。標準試料は、接合ウェーハ200の一部であってよいが、間隙(ボイド)のないものが望ましい。図4及び図7の曲線に示すように、第2接合状態S2では、引張試験及びTHz波透過率の変動が大きい。このような場合には、接合ウェーハの接合強度は、局所的な部位毎に異なる。従って、複数の測定回数又は複数の測定部位から複数のTHz波特性データを求め、それらの平均値を算出する等の統計処理が必要となる。
【0078】
本例では、直接接合によって接合した標準試料について、テラヘルツ波の透過率を測定した場合を説明した。こうして求めた標準試料の透過率より、ウェーハレベルチップサイズパッケージングによる接合ウェーハ200について、水素結合及びOH基のTHz波の吸収や位相変化、共有結合との相違、等を検出することができる。例えば、水素結合及びOH基が存在すると、特定の周波数領域のTHzパルス波に対して、鋭いピーク(スペクトルピーク)が得られることが知られている。
【0079】
しかしながら、他の接合方法によって接合された接合ウェーハの場合には、THz波特性データとして、テラヘルツ波の透過率以外のパラメータを測定してもよい。THz波特性データとして、テラヘルツ波の反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲、の少なくとも1つ以上選定し、これらのデータの統計処理により曲線801又はその関係式を求めてもよい。更に、接合方法や材料に最適なTHz波光学系を設計することが好ましい。
【0080】
ここでは、引張試験機を用いて引張強度(MPa)を測定し、それを接合強度とする例を説明した。しかしながら、他の接合強度測定方法によって接合強度を算出してもよく、例えば、特許文献3のようなエッチング液による接合強度測定結果から算出してもよい。
【0081】
図4から図8は標準試料の接合ウェーハ200について求めた結果である。但し、図5及び図6の曲線と同様な曲線は、検査対象の試料の接合ウェーハ200についても得られる。
【0082】
図9Aを参照して、試料を透過したTHz波を検出する透過測定法を説明する。接合ウェーハ900は、THz波を透過させることができる互いに異なる2種の材料からなるウェーハ901、902を接合することによって形成した。THz波は、THz帯域の屈折率に大きな差がある境界面にて反射する。2つのウェーハ901、902の材料の間で、THz帯域の屈折率に大きな差がある場合には、THz波は、その境界面903で反射する。第1のウェーハ901とその上側の空間の間の境界面904でも、THz帯域の屈折率に大きな差がある。第2のウェーハ902とその下側の空間の間の境界面905でも、THz帯域の屈折率に大きな差がある。これらの境界面904、905でも、THz波は反射する。接合ウェーハ900の上側及び下側の空間は、例えば、試料室101内の雰囲気である。
【0083】
本例では、THz波を、上側の境界面904から入射させる。THz波は、境界面904、903及び905を、それぞれ透過、又は、反射して、下側の境界面905から放射する。
【0084】
光路L1は、THz波が境界面で反射しないで、そのまま接合ウェーハ900を透過した場合を示す。光路L2は、THz波が、境界面903で反射し、その反射波が上側の境界面904で反射してから、下側の境界面903より放射した場合を示す。光路L3は、THz波が、2つの境界面904、903を透過し、下側の境界面905で反射し、その反射波が境界面903で反射してから、下側の境界面905より放射した場合を示す。光路L4は、THz波が、下側の境界面905で反射し、その反射波が上側の境界面904で反射してから、下側の境界面905より放射した場合を示す。
【0085】
尚、境界面903は十分薄いので、例えば上側から境界面903に入射し、境界面903の上面を反射したTHz波の光路と、上側から境界面903に入射し、境界面903の下面を反射したTHz波の光路は、互いに重なり合って描かれている。
【0086】
図9Bに、透過測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形910を示す。時点t1における電場強度のピーク911は、図9Aの光路L1を通ったTHz波に対応する。時点t2における電場強度のピーク912は、図9Aの光路L2を通ったTHz波に対応する。時点t3における電場強度のピーク913は、図9Aの光路L3を通ったTHz波に対応する。時点t4における電場強度のピーク914は、図9Aの光路L4を通ったTHz波に対応する。
【0087】
2つのウェーハ901、902の材料の間で、THz帯域の屈折率に大きな差がある場合には、複数の光路L1〜L4が生成される。これらの光路L1〜L4の間では、実質的に、光路差が存在する。従って、光路差に対応して、ピーク911〜914が現れる時点t1、t2、t3、t4が異なる。更に、これらのピーク911〜914の波形の振幅及び形状は互いに異なる。例えば、ピーク914の波形はピーク911の波形に対して反転している。
【0088】
時間遅延ステージ112の可動ミラー114を固定する場合には、THz波の電場強度の極大値又は極小値のみが求められる。透過率を求めるには、極大値又は極小値を用いて、基準値に対する測定値の相対値(%)を算出する。ここに極大値又は極小値は、最大のピーク911であってよいが、他のピーク値912〜914であってもよい。
【0089】
2つのウェーハ901、902の材料が同一であり且つ両者の厚さが同一の場合には、2つの光路L2、L3を伝播するTHz波による時間波形のピーク912、913は重なり合う。従って、その時点に、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定することにより、接合面に焦点を合わせることができる。この場合には、接合部の状態を敏感に検出することができる。
【0090】
接合前のウェーハの形状や厚さが不均一な場合にも、THz波の電場強度の波形の振幅及び形状が不規則に変動する。特に、屈折率の高い材料の場合には、接合部における屈折率の差に起因した波形の乱れより、接合前のウェーハの厚さのばらつきに起因した波形の乱れのほうが大きい。この場合には、最大のピーク911を探すのが困難である。そこで、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を小距離ずつ移動させながら電場強度を測定し、電場強度のピーク値を探すとよい。
【0091】
時間遅延ステージ112の可動ミラー114を移動させる場合には、THz波の電場強度の時間波形が得られる。透過率を求めるには、時間波形から得られた極大値又は極小値を用いて、基準値に対する測定値の相対値(%)を算出すればよい。更に、時間波形から、図6に示した周波数スペクトルを求めることができる。従って、周波数領域毎に、透過率を求めることができる。
【0092】
しかしながら、図9Bに示すような不規則な変動成分を含む時間波形910をフーリエ変換して周波数スペクトルを求めると、図6のような単調な曲線ではなく、複数の周波数領域にて振幅が変動し、波打つ曲線となる。このような曲線では、波長と試料厚さと屈折率の差に起因する干渉成分を除去する必要がある。こうして干渉成分を除去してから、任意の周波数における基準値に対する測定値の比を算出することにより任意の周波数における透過率を求めることができる。
【0093】
図10Aを参照して、試料を反射したTHz波を検出する反射測定法を説明する。本例の接合ウェーハ1000は、THz波を透過させることができる材料からなるウェーハ1001とTHz波を透過させることができない材料、例えば、金属からなるウェーハ1002を接合することによって形成した。
【0094】
本例では、THz波を、上側の境界面1004から入射させる。THz波は、上側の境界面1004に対して所定の入射角度により入射する。入射したTHz波は、境界面1004、及び、1003を、それぞれ、反射して、上側の境界面1004から放射する。
【0095】
光路L11は、THz波が、上側の境界面1004で反射し、その反射波がそのまま、入射側に放射した場合を示す。光路L12は、THz波が、上側の境界面1004で屈折して入射し、境界面1003で反射し、その反射波が上側の境界面1004で屈折して、入射側に放射した場合を示す。光路L13は、THz波が、上側の境界面1004で屈折して入射し、境界面1003で反射し、その反射波が上側の境界面1004で反射し、その反射波が再び境界面1003で反射し、その反射波が上側の境界面1004で屈折して、入射側に放射した場合を示す。
【0096】
図10Bに、反射測定法によって得られたTHz波の電場強度の時間波形1010を示す。時点t11における電場強度のピーク1011は、図10Aの光路L11を通ったTHz波に対応する。時点t12における電場強度のピーク1012は、図10Aの光路L12を通ったTHz波に対応する。時点t13における電場強度のピーク1013は、図10Aの光路L13を通ったTHz波に対応する。
【0097】
図10Bの時点t11における時間波形のピーク値1011を用いて、THz波特性データを求めても、接合部の状態を検出することはできないが、例えば、反射率等の基準値を得ることはできる。図10Bの時点t12、t13における時間波形のピーク値1012、1013を用いて、THz波特性データを求めることにより、接合部の状態を検出することができる。例えば、その時点t12、t13に、時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を固定することにより、接合面に焦点を合わせることができる。この場合には、接合部の状態を敏感に検出することができる。
【0098】
図11に、試料を反射したTHz波を検出する高速化反射測定法の他の例を説明する。本例の接合ウェーハ1100は、THz波を透過させることができる材料からなるウェーハ1101とTHz波を透過させることができない材料からなるウェーハ1102を接合することによって形成した。更に、接合ウェーハ1101の上面にミラー1106を配置した。
【0099】
本例では、THz波を、上側の境界面1104から入射させる。THz波は、境界面1103、及び、ミラー1106を、順に反射してから放射する。
【0100】
光路L15は、THz波が、上側の境界面1104で屈折して入射し、境界面1103とミラー1106を次々に反射し、入射側と反対側に放射した場合を示す。本例では、接合ウェーハ1100の端部にて、THz波を検出し、接合部1103の状態を検出することができる。
【0101】
図12を参照して、高速化反射測定法による測定結果の例を説明する。図12は、接合ウェーハ200を上から見た状態を模式的に示す。ここでは、図11に示したTHz波光学系を用いて、高速化反射測定法により、接合ウェーハ200の接合強度を求めた。MEMSウェーハや三次元積層デバイスなどでは、接合部が全面ではなく格子状になる場合が多い。そこで、接合ウェーハ200の全面をスキャンするよりも、格子状の領域のみをスキャンするほうが、接合強度の検査の時間を短縮することができる。第1の光路Lxは、xz平面に沿って入射し、放射したTHz波の光路を上から見た状態を示す。第2の光路Lyは、yz平面に沿って入射し、放射したTHz波の光路を上から見た状態を示す。
【0102】
矢印は、THz波の方向を示す。接合ウェーハ200に入射したTHz波は、矢印に沿って、接合面とミラーを順に、複数回反射してから放射する。接合ウェーハ200上の第1及び第2の光路Lx、Lyに沿って、接合強度の測定結果が得られる。矢印の先端の○印は、測定結果が予め設定した接合強度の正常範囲にあることを示す。矢印の先端の×印は、測定結果が予め設定した接合強度の正常範囲にないことを示す。例えば、第1の光路Lxに沿った測定結果1201と、第2の光路Lyに沿った測定結果1202は、共に、正常範囲にない。従って、この2つの光路の交点の部位1203の接合強度が正常範囲にない。そこで、この部位1203の接合状態を詳細に調べる必要がある。時間遅延ステージ112の可動ミラー114の位置を移動させながら、即ち、時間波形のピークを含む波形プロファイルを求めることにより、この部位1203の接合強度が弱いことを確認することができる。
【0103】
本例では、THz波は、接合ウェーハ200の接合面とその上に配置されたミラーを、複数回反射するため、THz波検出器157に到達するTHz波は減衰する。そのため、THz波検出器157による検出精度が低下する。更に、THz波を検出して得られた情報は、各反射点における情報を平均化したものである。そこで、接合面とミラーにおけるTHz波の反射回数が減少するような工夫を行ってよい。例えば、接合ウェーハ200の一方の縁から他方の縁までの光路ではなく、その半分の光路に沿って、測定する。それによって、接合ウェーハ200の半分ずつ、測定される。更に、THz波の入射角度を小さくしたり、ミラーの寸法を小さくすることによっても、反射回数が減少する。
【0104】
図13に、検査対象の接合ウェーハ200の接合強度の測定結果の例を示す。本例の測定実験では、THz波の電場強度が基準測定時にピーク値となるように遅延ユニット112の可動ミラー114の位置を固定した。試料ステージ160に載置された接合ウェーハ200の全面をTHz波の照射によってスキャンすることにより透過率を求めた。こうして得られたTHz波の透過率に対応する接合強度を、予め求めた図8に示す曲線801から算出した。こうして得られた、接合強度の分布を等高線で示した。領域1301では接合強度が強く、領域1302では接合強度が少し弱く、領域1303では接合強度が弱い、ことが示されている。
【0105】
尚、接合強度が正常な領域と正常でない領域を、異なる色で表示してもよい。例えば、接合強度が正常でない領域を赤色等により表示してもよい。こうして、接合強度が正常であるか否かを色別することにより、作業者は、接合ウェーハ200のどの領域の接合強度が正常であるか、どの領域の接合強度が正常でないのかを容易に認識することができる。更に、上位装置によって、接合強度の正常又は非正常を認識しやすいように表示してもよい。
【0106】
接合強度を測定する場合には、上述のように、時間遅延ステージ112の可動ミラー114を所定の位置に固定した。即ち、電場強度の時間波形のピーク値のみを求め、電場強度の時間波形のプロファイルを求める必要がない。そのため、必ずしもテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS:THz Time-Domain Spectroscopy)の基本構成を用いる必要はない。テラヘルツ時間領域分光法の基本構成で用いるTHz波発生器151及びTHz波検出器157以外の機器により測定してもよい。
【0107】
図14に、図13に接合強度画像1300にボイド画像1401を重ね合わせた結果を示す。本例のウェーハ接合強度検査装置100にカメラを設置し、可視光又は近赤外光の照明を用いて、同一の接合ウェーハ200を撮像することにより、ボイド画像1401が得られる。ボイド画像1401を図13に接合強度画像1300に重ね合わせることにより、接合ウェーハ200における間隙(ボイド、ギャップ)の分布情報を得ることができる。例えば、ボイド1402やボイド1403が、接合強度分布の等高線1300に重ね合わされることにより、接合強度が弱い部位1303が、ボイド1402周辺に分布していることが確認できる。
【0108】
ボイド画像1401の代わりに、様々な情報を有する画像を用いてもよい。このような画像は、外部装置による撮影によって得られたものであってもよい。例えばウェーハの厚さや形状などの情報を有する画像であってもよい。こうして、接合強度画像1300に、様々な情報を有する他の画像を重ね合わせることにより、接合強度分布と他の情報の関係が容易に判る。
【0109】
この画像を、PC102又はモニタに表示する場合には、矢印で示すカーソル1404を表示する。作業者は、所望の位置、例えば、正常でない部位や、気になる位置にカーソル1404を配置し、それをクリックする。それにより、その位置について、THz−TDSによる時間波形(図5)やスペクトル波形(図6)を測定するか、又は、既に測定してあった結果を表示することができる。図12、図13、及び、図14に示した測定結果はPC102や表示部などに表示される。
【0110】
本発明によるウェーハ接合強度検査装置及び方法では、THz波特性として、テラヘルツ波の透過率、反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲等が得られる。テラヘルツ波の透過率を求める方法は既に説明した。テラヘルツ波の透過率は、図9Aに示した透過測定法によって得られる。以下に、他のTHz波特性を求める方法を説明する。テラヘルツ波の反射率は、図10A及び図11等に示した反射測定法によって得られる。テラヘルツ波の反射率は、接合ウェーハ200を反射したTHz波の電場強度の基準値に対する、各接合ウェーハ200より得られたTHz波の電場強度の測定値の相対値(%)である。基準値は、試料無しの場合の測定値、又は、接合ウェーハと同一の厚さの同一材料の非接合ウェーハの場合の測定値であってよい。
【0111】
テラヘルツ波の吸収スペクトルは、基準スペクトルをベースラインとし、各接合ウェーハ200より得られたスペクトルの比の常用対数をとり、それに正負の符号を付すことにより得られる。基準スペクトルは、試料無しの場合の測定値、又は、接合ウェーハと同一の厚さの同一材料の非接合ウェーハの場合の測定値であってよい。
【0112】
テラヘルツ波の吸光度は、透過率と同様に、透過測定法によって得られる。THz波の電場強度の基準値に対する測定値の比の常用対数をとり、それに正負の符号を付すことにより得られる。
【0113】
テラヘルツ波の偏光状態は、偏光板を用いることにより測定される。例えばTHz受光系にワイヤグリットなどの偏光板を実装し、回転させた時の電場強度変化を測定する。それにより、振動方向が規則的な光波の状態を検出することができる。この場合には、接合部の残留応力に起因したTHz波の偏光状態の変化が検出される。
【0114】
テラヘルツ波の位相は、テラヘルツ波の時間的及び空間的な位置を示す無次元量である。時間波形及び空間波形におけるピークの位置又はパルス幅等により測定することができる。
【0115】
テラヘルツ波の複素屈折率は、基準値及び測定値の時間波形、振幅スペクトルから求められる。但し、時間波形は図5Aに示すように単一の波形からなり、図9Bに示すような反射波を含まないものとする。複素屈折率は、次の式によって表される。
【0116】
【数1】
【0117】
ここで、ω:各周波数、n:屈折率、k:波数である。この式の各項は、次の振幅透過率t(ω)から求めることができる。
【0118】
【数2】
【0119】
ここで、E:電界(電場強度)、d:試料の厚さ、c:光速、ω:各周波数、添字sam、refは測定値、基準値(試料の有無)を表す。数2の式は一般に陽には解けない。そこで、複素屈折率の実数成分と虚数成分の初期値を設定し、実数成分が収束するまで差分計算する。即ち、適当な式変形を行い逐次的に複素屈折率を求める。
【0120】
複素誘電率は次の式3によって表され、複素伝導率は次の式4によって表される。
【0121】
【数3】
【0122】
【数4】
【0123】
これらの式の各項は次の関係式から得られる。
【0124】
【数5】
ただしε∞は十分に高周波での試料の誘電率、ε0は真空誘電率である。
【0125】
図15Aを参照して、透過測定法においてテラヘルツ波の散乱光のみを検出する方法の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、遮光拡散板154Aと、それを囲むように配置されたミラー154Bを有する。ミラー154Bは、放物面ミラー、ウィンストンコーンミラー等により構成され、中心孔を有する。遮光拡散板154Aとミラー154Bの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。透過散乱光143以外の透過光142は、遮光拡散板154Aによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。透過散乱光143は、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。透過散乱光143のうち、遮光拡散板154Aの外側を反射したTHz波は、再度、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。本例では、THz波検出器157は透過散乱光のみを検出する。本例では、透過散乱光の強度の影響は、透過率の変化として検出される。THz波特性として、透過散乱光を検出することができる。
【0126】
図15Bを参照して、透過測定法においてテラヘルツ波の散乱光以外の透過光を検出する方法の他の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、アイリス154Cを有する。アイリス154Cの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。透過散乱光143以外の透過光142は、アイリス154Cの中心孔を経由して、THz波検出器157に到達する。透過散乱光143は、アイリス154Cによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。本例では、THz波検出器157は透過散乱光以外の透過光を検出する。本例では、透過散乱光の強度の影響を受けることなく透過率を検出することができる。
【0127】
図16Aを参照して、反射測定法においてテラヘルツ波の散乱光のみを検出する方法の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、遮光拡散板154Aと、それを囲むように配置されたミラー154Bを有する。ミラー154Bは、放物面ミラー、ウィンストンコーンミラー等により構成され、中心孔を有する。遮光拡散板154Aとミラー154Bの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。反射散乱光145以外の反射光144は、遮光拡散板154Aによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。反射散乱光145は、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。反射散乱光145のうち、遮光拡散板154Aの外側を反射したTHz波は、再度、ミラー154Bを反射し、THz波検出器157に到達する。本例では、THz波検出器157は反射散乱光のみを検出する。本例では、反射散乱光の強度の影響は、透過率の変化として検出される。THz波特性として、反射散乱光を検出することができる。
【0128】
図16Bを参照して、反射測定法においてテラヘルツ波の散乱光以外の反射光を検出する方法の他の例を説明する。本例のTHz波受光用光学系154は、アイリス154Cを有する。アイリス154Cの中心孔は、THz波検出器157の光軸に沿って配置されている。THz波発生器151からのTHz波141は、接合ウェーハ200に照射される。反射散乱光145以外の反射光144は、アイリス154Cの中心孔を経由して、THz波検出器157に到達する。反射散乱光145は、アイリス154Cによって遮られ、THz波検出器157に到達することが阻止される。本例では、THz波検出器157は反射散乱光以外の反射光を検出する。本例では、反射散乱光の強度の影響を受けることなく透過率を検出することができる。
【0129】
本発明によるウェーハ接合強度検査装置及び方法は、テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS:THz Time-Domain Spectroscopy)の基本構成、即ち、図1に示したTHz波光学系150によって実現することができる。しかしながら、接合ウェーハ200の接合強度を検査できるなら、テラヘルツ時間領域分光法の基本構成と同一の構成を用いる必要はない。例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR:Fourier transform infrared spectrophotometer)など他のTHz波分光装置の構成を用いてもよい。例えば、THz発生器(光源)は、パラメトリック発振器やTHz量子カスケードレーザ、後進波管、ガンダイオード、共鳴トンネルダイオード、高圧水銀灯、遠赤外ヒータ、黒体炉などでもよい。THz検出器は、焦電センサ、ボロメータ、ゴーレイセル、THzカメラなどでもよい。
【0130】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0131】
100:ウェーハ接合強度検査装置、
101:試料室、
102:PC、
104:システムコントローラ、
106:フェムト秒レーザ、
108:ビームスプリッタ、
110:変調機能付きバイアス電源、
112:時間遅延ステージ、
114:可動ミラー、
116:可動ミラーの動作方向(直進動作)、
118:ロックインアンプ、
120:プリアンプ、
122:試料ステージコントローラ、
124:試料室調整管理機器、
130:システムコントローラとの電気系接続、
132:光ファイバ(フェムト秒レーザ光路)、
132a:ポンプ光、
134:光ファイバ(フェムト秒レーザ光路)、
134a:プローブ光、
136:光ファイバ(フェムト秒レーザ光路)、
136a:プローブ光、
138:THz波光路
141:THz波、
142:透過光、
143:透過散乱光、
145:反射散乱光、
144:反射光、
150:THz波光学系
151:THz波発生器、
151a:集光レンズ、
151b:THz波発生素子、
151c:レンズ、
153:THz波投光用光学系、
154:THz波受光用光学系、
154A:遮光拡散板、
154B:ミラー、
154C:アイリス、
157:THz波検出器、
157a:集光レンズ、
157b:THz波検出素子、
157c:レンズ、
160:試料ステージ、
161:チャック機構、
162:回転機構、
163:昇降機構、
164:水平機構、
172:試料室調整管理機器端末、
174:試料室開閉機構、
200:接合ウェーハ、
201:封止用ウェーハ、
202:MEMSウェーハ、
203:MEMSのチップサイズのパッケージ、
301、302:Siウェーハ、
301a、302a:Siウェーハの表面の薄い酸化膜、
311:水酸基(OH基)
312:水素結合
313:脱水縮合反応、
314:OとSiの結合、
401:熱処理温度と引張強度の間の関係を表す曲線、
501:第1接合状態(S1)のウェーハに透過した場合の電場強度の時間波形、
502:第3接合状態(S3)のウェーハに透過した場合の電場強度の時間波形、
601:時間波形501をフーリエ変換して得たパワースペクトルの波形、
602:時間波形502をフーリエ変換して得たパワースペクトルの波形、
701:熱処理温度とTHz波透過率の間の関係を表す曲線、
801:THz波の透過率と接合強度の関係を表す曲線、
900:接合ウェーハ
901:THz波が透過する材料のウェーハ
902:THz波が透過する材料のウェーハ
903、904、905:境界面、
910:接合ウェーハを透過したTHz波の時間波形、
911:光路L1を伝播したTHz波、
912:光路L2を伝播したTHz波、
913:光路L3を伝播したTHz波、
914:光路L4を伝播したTHz波、
1000:接合ウェーハ
1001:THz波が透過する材料のウェーハ
1002:THz波が反射する材料のウェーハ
1003,1004:境界面、
1010:接合ウェーハを透過したTHz波の時間波形、
1011:光路L11を伝播したTHz波、
1012:光路L12を伝播したTHz波、
1013:光路L13を伝播したTHz波、
1100:接合ウェーハ
1101:THz波が透過する材料のウェーハ
1102:THz波が反射する材料のウェーハ
1103:境界面、
1106:ミラー、
1201:横ラインの測定結果表示例、
1202:縦ラインの測定結果表示例、
1203:正常範囲外の接合部位、
1300:接合強度画像、
1301:接合強度の強い部位、
1302:接合強度の少し弱い部位、
1303:接合強度の弱い部位、
1401:近赤外光によるボイド画像、
1402:ボイドの例、
1403:ボイドの例、
1404:接合強度の詳細を確認するための矢印。
S1:ウェーハの接合直後または低温の加熱処理した状態、
S2:接合されたウェーハを中温の加熱処理した状態、
S3:接合されたウェーハを高温の加熱処理した状態、
P2:母材(Si)の接合強度と同じくらいの引張強度、
P3:透過率TR3の時の接合強度、
T2:全面が第3接合状態(S3)になる熱処理温度、
E1:時間波形501のピーク値、
E2:時間波形502のピーク値、
t1:ポンプ光とプローブ光の光路長が一致しTHz波がピークとなる時間、
t2:THz波のピーク値912をとる時間、
t3:THz波のピーク値913をとる時間、
t4:THz波のピーク値914をとる時間、
L1:接合ウェーハを透過したTHz波の光路、
L2:境界面903で反射してから透過したTHz波の光路、
L3:境界面903、904で反射してから透過したTHz波の光路、
L4:境界面903、904、905で反射してから透過したTHz波の光路、
L11:境界面1004で反射したTHz波の光路、
L12:境界面1003で反射したTHz波の光路、
L13:境界面1003、1004で反射したTHz波の光路、
L15:境界面をラインでスキャンする場合のTHz波の光路、
TR2:SiのTHz波の透過率、
TR3:任意のTHz波の透過率
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合ウェーハを保持する試料ステージと、
所定の周波数帯域のテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器と、
前記接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器と、
前記テラヘルツ波検出器によって検出したテラヘルツ波より、前記接合ウェーハのTHz波特性を演算する演算部と、
を有し、
前記演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算することを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記基準試料は、互いに異なる熱処理温度によって熱処理された複数の接合ウェーハを含むことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項3】
請求項2記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記基準試料は、2枚のウェーハを直接接合によって接合することにより形成され、前記2枚のウェーハの間の接合部の化学的結合状態は、親水化処理により接合部において水素結合が生成された状態、中温加熱により接合部において水素結合から脱水縮合が生成された状態、及び、高温加熱により接合部において共有結合が生成された状態、の3つの状態を含むことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項4】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記演算部は、前記検査対象の接合ウェーハのTHz波特性から、前記検査対象の接合ウェーハの接合強度が所定の正常範囲にあるか否かを判定することを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項5】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記THz波特性は、テラヘルツ波の透過率、テラヘルツ波の反射率、テラヘルツ波の吸収スペクトル、テラヘルツ波の吸光度、テラヘルツ波の偏光状態、テラヘルツ波の位相、テラヘルツ波の複素屈折率、テラヘルツ波の複素誘電率、テラヘルツ波の複素伝導率、テラヘルツ波の散乱強度、テラヘルツ波の散乱範囲、の少なくとも1つを含むことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項6】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記検査対象の接合ウェーハの接合強度を、予め求めた前記検査対象の接合ウェーハの画像に重ね合わせることによって生成された、前記検査対象の接合ウェーハの接合強度の分布画像を表示する表示部を有する、ことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項7】
請求項6記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記表示部は、前記検査対象の接合ウェーハの接合強度の分布画像を等高線又は色別により表示することを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項8】
請求項6記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記検査対象の接合ウェーハの接合強度の分布画像において、予め設定した接合強度に達していない部位を、入力装置を介してユーザが指定した場合に、前記演算部は、テラヘルツ時間領域分光法によって、該部位のTHz波特性を求めることを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項9】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記接合ウェーハの上にミラーが配置され、前記テラヘルツ波発生器によって発生したテラヘルツ波は、前記接合ウェーハと前記ミラーを順に反射して前記テラヘルツ波検出器によって検出されるように構成され、
前記接合ウェーハ上の前記テラヘルツ波の照射点は、直線に沿って配置され、それによって前記接合ウェーハの接合強度が直線に沿って測定されることを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項10】
接合ウェーハを保持する試料ステージと、
フェムト秒レーザ光を生成するフェムト秒レーザと、
該フェムト秒レーザ光をポンプ光とプローブ光に分岐するビームスプリッタと、
前記ポンプ光を入力して所定の周波数帯域のテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器と、
前記テラヘルツ波発生器によって発生したテラヘルツ波を前記接合ウェーハに導くTHz波投光用光学系と、
前記接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を、前記プローブ光によってサンプリングするテラヘルツ波検出器と、
前記接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を、前記テラヘルツ波検出器に導くTHz波受光用光学系と、
前記テラヘルツ波検出器によってサンプリングされたテラヘルツ波より、前記接合ウェーハのTHz波特性を演算する演算部と、
を有し、
前記演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算することを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項11】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
前記基準試料は、互いに異なる熱処理温度により熱処理を行った複数の接合ウェーハを含み、前記複数の接合ウェーハは前記熱処理温度により接合部における化学的結合状態が互いに異なることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項12】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
更に前記ポンプ光と前記プローブ光の光路の間の光路差を調整する時間遅延ステージが設けられ、
前記時間遅延ステージによって、前記ポンプ光の光路と前記プローブ光の光路が同一長さに設定されたときは、前記テラヘルツ波検出器によって、THz波の各パルスのピーク値がサンプリングされ、
前期時間遅延ステージによって、前記ポンプ光の光路と前記プローブ光の光路の差が連続的に変化されたときは、THz波の各パルスに対してサンプリング点の位相が連続的に変化し、THz波の各パルスに対してサンプリング点の位相が互いに異なる複数のデータが得られ、THz波の各パルスを表す時間波形が得られることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項13】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
前記THz波受光用光学系は、前記接合ウェーハを透過したテラヘルツ波のうち、散乱光のみ、又は、散乱光以外のテラヘルツ波を前記テラヘルツ波検出器に導くように構成されていることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項14】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
前記THz波受光用光学系は、前記接合ウェーハを反射したテラヘルツ波のうち、散乱光のみ、又は、散乱光以外のテラヘルツ波を前記テラヘルツ波検出器に導くように構成されていることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項15】
ウェーハの接合強度の検査方法において、
基準試料として、テラヘルツ波が透過する材料によって形成されたウェーハを外側に含む2枚以上のウェーハからなる接合ウェーハを複数個用意する工程と、
前記複数の接合ウェーハを、互いに異なる熱処理温度により熱処理を行う熱処理工程と、
前記複数の接合ウェーハの接合強度を測定する接合強度測定工程と、
前記接合ウェーハに所定の周波数帯域のテラヘルツ波を照射し、それによって得られる振動電場を検出する振動電場測定工程と、
前記振動電場測定工程によって検出した振動電場より、前記接合ウェーハのTHz波特性を演算するTHz波特性データ演算工程と、
前記接合強度測定工程と前記THz波特性データ演算工程により得られた結果より、基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係を求める工程と、
前記基準試料と同一材料の検査対象試料の接合ウェーハにテラヘルツ波を照射し、それによって得られる振動電場を検出する試料振動電場測定工程と、
前記試料振動電場測定工程によって検出した振動電場より、前記検査対象試料のTHz波特性を演算する試料THz波特性データ演算工程と、
前記基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係より、前記検査対象試料の接合部のTHz波特性に対応する接合強度を演算する試料接合強度演算工程と、
を有することを特徴とするウェーハの接合強度の検査方法。
【請求項16】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記基準試料は、2枚のウェーハを直接接合によって接合することにより形成され、
前記基準試料は、前記熱処理温度により、接合部における化学的結合状態が互いに異なる複数の接合ウェーハを含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項17】
請求項16記載の接合強度の検査方法において、
前記化学的結合状態は、接合部の親水化処理による水素結合の状態、水酸基の分布状態、該接合部の加熱による水素結合から共有結合に変化する状態、の3つの状態を含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項18】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記振動電場と接合強度の間の関係を求める工程は、
前記振動電場より前記接合ウェーハのTHz波透過率を求めるTHz波透過率演算工程と、
前記接合ウェーハのTHz波透過率より、前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハのTHz波透過率との関係と求める工程と、
引張試験により前記接合ウェーハの引張強度を測定する引張強度測定工程と、
前記接合ウェーハの引張強度より、前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハの引張強度との関係と求める工程と、
前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハのTHz波透過率との関係と、前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハの引張強度との関係から、前記接合ウェーハの引張強度とTHz波透過率の関係を求める工程と、
を含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項19】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記THz波特性データは、テラヘルツ波の透過率、反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲、の少なくとも1つを含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項20】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記振動電場測定工程は、
フェムト秒レーザによって発振されたレーザ光を、ポンプ光とプローブ光に分岐する分岐工程と、
前記ポンプ光をTHz波発生器に導くことによって、THz波を発生させる工程と、
前記THz波発生器からのTHz波をTHz波検出器に導く工程と、
前記プローブを前記THz波検出器に導く工程と、
THz波検出器に到達したTHzパルス波を、前記プローブ光によってサンプリングするサンプリング工程と、
前記THz波検出器にて発生する振動電場のパルス波を前記サンプリングに同期して検出する工程と、
を有することを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項1】
接合ウェーハを保持する試料ステージと、
所定の周波数帯域のテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器と、
前記接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器と、
前記テラヘルツ波検出器によって検出したテラヘルツ波より、前記接合ウェーハのTHz波特性を演算する演算部と、
を有し、
前記演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算することを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記基準試料は、互いに異なる熱処理温度によって熱処理された複数の接合ウェーハを含むことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項3】
請求項2記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記基準試料は、2枚のウェーハを直接接合によって接合することにより形成され、前記2枚のウェーハの間の接合部の化学的結合状態は、親水化処理により接合部において水素結合が生成された状態、中温加熱により接合部において水素結合から脱水縮合が生成された状態、及び、高温加熱により接合部において共有結合が生成された状態、の3つの状態を含むことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項4】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記演算部は、前記検査対象の接合ウェーハのTHz波特性から、前記検査対象の接合ウェーハの接合強度が所定の正常範囲にあるか否かを判定することを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項5】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記THz波特性は、テラヘルツ波の透過率、テラヘルツ波の反射率、テラヘルツ波の吸収スペクトル、テラヘルツ波の吸光度、テラヘルツ波の偏光状態、テラヘルツ波の位相、テラヘルツ波の複素屈折率、テラヘルツ波の複素誘電率、テラヘルツ波の複素伝導率、テラヘルツ波の散乱強度、テラヘルツ波の散乱範囲、の少なくとも1つを含むことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項6】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記検査対象の接合ウェーハの接合強度を、予め求めた前記検査対象の接合ウェーハの画像に重ね合わせることによって生成された、前記検査対象の接合ウェーハの接合強度の分布画像を表示する表示部を有する、ことを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項7】
請求項6記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記表示部は、前記検査対象の接合ウェーハの接合強度の分布画像を等高線又は色別により表示することを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項8】
請求項6記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記検査対象の接合ウェーハの接合強度の分布画像において、予め設定した接合強度に達していない部位を、入力装置を介してユーザが指定した場合に、前記演算部は、テラヘルツ時間領域分光法によって、該部位のTHz波特性を求めることを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項9】
請求項1記載のウェーハ接合強度検査装置において、
前記接合ウェーハの上にミラーが配置され、前記テラヘルツ波発生器によって発生したテラヘルツ波は、前記接合ウェーハと前記ミラーを順に反射して前記テラヘルツ波検出器によって検出されるように構成され、
前記接合ウェーハ上の前記テラヘルツ波の照射点は、直線に沿って配置され、それによって前記接合ウェーハの接合強度が直線に沿って測定されることを特徴とするウェーハ接合強度検査装置。
【請求項10】
接合ウェーハを保持する試料ステージと、
フェムト秒レーザ光を生成するフェムト秒レーザと、
該フェムト秒レーザ光をポンプ光とプローブ光に分岐するビームスプリッタと、
前記ポンプ光を入力して所定の周波数帯域のテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生器と、
前記テラヘルツ波発生器によって発生したテラヘルツ波を前記接合ウェーハに導くTHz波投光用光学系と、
前記接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を、前記プローブ光によってサンプリングするテラヘルツ波検出器と、
前記接合ウェーハを透過又は反射したテラヘルツ波を、前記テラヘルツ波検出器に導くTHz波受光用光学系と、
前記テラヘルツ波検出器によってサンプリングされたテラヘルツ波より、前記接合ウェーハのTHz波特性を演算する演算部と、
を有し、
前記演算部は、予め求めた基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係から、検査対象の接合ウェーハのTHz波特性に対応する接合強度を演算することを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項11】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
前記基準試料は、互いに異なる熱処理温度により熱処理を行った複数の接合ウェーハを含み、前記複数の接合ウェーハは前記熱処理温度により接合部における化学的結合状態が互いに異なることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項12】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
更に前記ポンプ光と前記プローブ光の光路の間の光路差を調整する時間遅延ステージが設けられ、
前記時間遅延ステージによって、前記ポンプ光の光路と前記プローブ光の光路が同一長さに設定されたときは、前記テラヘルツ波検出器によって、THz波の各パルスのピーク値がサンプリングされ、
前期時間遅延ステージによって、前記ポンプ光の光路と前記プローブ光の光路の差が連続的に変化されたときは、THz波の各パルスに対してサンプリング点の位相が連続的に変化し、THz波の各パルスに対してサンプリング点の位相が互いに異なる複数のデータが得られ、THz波の各パルスを表す時間波形が得られることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項13】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
前記THz波受光用光学系は、前記接合ウェーハを透過したテラヘルツ波のうち、散乱光のみ、又は、散乱光以外のテラヘルツ波を前記テラヘルツ波検出器に導くように構成されていることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項14】
請求項10記載のウェーハ接合強度検査システムにおいて、
前記THz波受光用光学系は、前記接合ウェーハを反射したテラヘルツ波のうち、散乱光のみ、又は、散乱光以外のテラヘルツ波を前記テラヘルツ波検出器に導くように構成されていることを特徴とするウェーハ接合強度検査システム。
【請求項15】
ウェーハの接合強度の検査方法において、
基準試料として、テラヘルツ波が透過する材料によって形成されたウェーハを外側に含む2枚以上のウェーハからなる接合ウェーハを複数個用意する工程と、
前記複数の接合ウェーハを、互いに異なる熱処理温度により熱処理を行う熱処理工程と、
前記複数の接合ウェーハの接合強度を測定する接合強度測定工程と、
前記接合ウェーハに所定の周波数帯域のテラヘルツ波を照射し、それによって得られる振動電場を検出する振動電場測定工程と、
前記振動電場測定工程によって検出した振動電場より、前記接合ウェーハのTHz波特性を演算するTHz波特性データ演算工程と、
前記接合強度測定工程と前記THz波特性データ演算工程により得られた結果より、基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係を求める工程と、
前記基準試料と同一材料の検査対象試料の接合ウェーハにテラヘルツ波を照射し、それによって得られる振動電場を検出する試料振動電場測定工程と、
前記試料振動電場測定工程によって検出した振動電場より、前記検査対象試料のTHz波特性を演算する試料THz波特性データ演算工程と、
前記基準試料のTHz波特性と接合強度の間の関係より、前記検査対象試料の接合部のTHz波特性に対応する接合強度を演算する試料接合強度演算工程と、
を有することを特徴とするウェーハの接合強度の検査方法。
【請求項16】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記基準試料は、2枚のウェーハを直接接合によって接合することにより形成され、
前記基準試料は、前記熱処理温度により、接合部における化学的結合状態が互いに異なる複数の接合ウェーハを含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項17】
請求項16記載の接合強度の検査方法において、
前記化学的結合状態は、接合部の親水化処理による水素結合の状態、水酸基の分布状態、該接合部の加熱による水素結合から共有結合に変化する状態、の3つの状態を含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項18】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記振動電場と接合強度の間の関係を求める工程は、
前記振動電場より前記接合ウェーハのTHz波透過率を求めるTHz波透過率演算工程と、
前記接合ウェーハのTHz波透過率より、前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハのTHz波透過率との関係と求める工程と、
引張試験により前記接合ウェーハの引張強度を測定する引張強度測定工程と、
前記接合ウェーハの引張強度より、前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハの引張強度との関係と求める工程と、
前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハのTHz波透過率との関係と、前記接合ウェーハの熱処理温度と前記接合ウェーハの引張強度との関係から、前記接合ウェーハの引張強度とTHz波透過率の関係を求める工程と、
を含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項19】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記THz波特性データは、テラヘルツ波の透過率、反射率、吸収スペクトル、吸光度、偏光状態、位相、複素屈折率、複素誘電率、複素伝導率、散乱強度、散乱範囲、の少なくとも1つを含むことを特徴とする接合強度の検査方法。
【請求項20】
請求項15記載の接合強度の検査方法において、
前記振動電場測定工程は、
フェムト秒レーザによって発振されたレーザ光を、ポンプ光とプローブ光に分岐する分岐工程と、
前記ポンプ光をTHz波発生器に導くことによって、THz波を発生させる工程と、
前記THz波発生器からのTHz波をTHz波検出器に導く工程と、
前記プローブを前記THz波検出器に導く工程と、
THz波検出器に到達したTHzパルス波を、前記プローブ光によってサンプリングするサンプリング工程と、
前記THz波検出器にて発生する振動電場のパルス波を前記サンプリングに同期して検出する工程と、
を有することを特徴とする接合強度の検査方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【公開番号】特開2013−4578(P2013−4578A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131355(P2011−131355)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】
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