説明

ウエハレベル信頼性評価素子及びウエハレベル信頼性評価装置

【課題】短時間に、評価素子内を均一且つ正確な温度条件に保つことができるウエハレベル信頼性評価素子を提供する。
【解決手段】ウエハレベル信頼性評価素子は、信頼性評価対象素子1と、信頼性評価対象素子1に電気的に接続された複数の電極パッド3a〜3dと、信頼性評価対象素子1の周囲に設けられた複数の発熱体2a〜2fと、一対の発熱体用電極パッド5とを備える。発熱体2a〜2fは、PTC(Positive Temperature Coefficient)材料からなる。一対の発熱体用電極パッド5には、発熱体2a〜2fが並列に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ウエハ状態における信頼性評価用素子及び信頼性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子には長時間の連続動作、高温下における安定した動作等が求められており、半導体素子の信頼性評価は欠かすことができない。また、生産性向上のためには、ウエハ状態において信頼性評価を行なうことが求められる。更に、半導体素子に求められる動作条件が厳しくなり、より高温で且つより正確な温度条件において評価を行なうことが求められている。
【0003】
以下に、ウエハ状態における信頼性評価装置の例について、図面を参照して説明する。
【0004】
図7は、ウエハ状態にて信頼性評価を行なう信頼性評価装置の評価パターンを示す概略図である(例えば、特許文献1)。
【0005】
図7において、半導体ウエハ(図示省略)上に例えばイオン注入法によって形成された導電層を利用して、発熱体101が形成されている。発熱体101上には、絶縁性膜(図示省略)を介して信頼性評価パターン103が形成されている。信頼性評価パターン103は、電極104a、104b、104c及び104dに接続されている。また、発熱体101は、オーミック電極102a及び102bにそれぞれ接続されている。
【0006】
信頼性評価を行なうためには、電極104a、104b、104c及び104dに対してプローバのプローブ端子を接触させた状態において、評価パターン103に電圧又は電流を印加する。このとき、オーミック電極102a及び102bを介して発熱体101に電流を流すことにより発熱体101を発熱させて、評価パターン103の温度を制御する。
【0007】
このような構成には、評価パターンの直下に発熱体が位置するので、評価パターンの温度を正確に制御しやすく且つ熱平衡に達するまでの時間も短いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−151537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の構成により、評価素子、特に小面積の評価素子について評価することは可能である。しかしながら、評価素子を均一に加熱することが考慮されていないので、評価素子内において不均一な温度分布が生じてしまいやすい。特に、大きな面積を有する評価素子を評価しようとした場合、不均一な温度分布の影響が顕著になり、正確な信頼性評価が不可能となる。
【0010】
以上に鑑み、本開示の技術の目的は、評価素子の面積にかかわらず均一且つ正確な温度条件において信頼性評価試験を行なうことができるウエハレベル信頼性評価素子及びウエハレベル信頼性評価装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本願発明者は次のような検討を行なった。
【0012】
まず、背景技術の場合、シリコン等の半導体ウエハに形成された導電層を発熱体としている。このような発熱体の場合、基本的に高温になると電気抵抗が低下するので、高温部分には更に電流が流れやすくなって更に温度が上昇すしやすい。このことが、温度分布の不均一を生じやすい原因の1つと考えられる。
【0013】
これを解決するために、本願発明者は、高温になると電気抵抗が上昇する発熱体を用いることを着想した。このようにすると、高温部分には電流が流れにくくなり、温度は上昇しにくくなる。結果として、温度分布の不均一を抑制することができる。
【0014】
このような着想に基づき、本開示のウエハレベル信頼性評価素子は、信頼性評価対象素子と、信頼性評価対象素子に電気的に接続された複数の電極パッドと、信頼性評価対象素子の周囲に設けられ、PTC(Positive Temperature Coefficient)材料からなる複数の発熱体と、複数の発熱体が並列に電気的に接続された一対の発熱体用電極パッドとを備える。
【0015】
本開示のウエハレベル信頼性評価素子によると、以下に説明するように、自己整合的に温度分布が小さくなる。
【0016】
PTC材料は、電気抵抗の温度依存性が大きく且つ高温になるほど電気抵抗が大きくなる材料である。従って、PTC材料からなる発熱体は、高温になるほど電気が流れにくくなる。このような発熱体がそれぞれ一対の発熱体用電極パッドに並列に接続されていることから、不均一な温度分布が生じた場合、温度が低い場所の発熱体は抵抗値が小さいので発熱量が大きくなり、逆に温度が高い場所の発熱体は抵抗値が大きいので発熱量が小さくなる。この結果、自己整合的に温度分布が均一になる。
【0017】
尚、複数の発熱体は、信頼性評価対象素子の上層及び下層の少なくとも一方に形成され、複数の発熱体と、信頼性評価対象素子とは重なり合っていても良い。
【0018】
このようにすると、信頼性評価対象素子の温度をより正確に制御することができると共に、熱平衡に達するまでの時間が短くなる。更に、発熱体が信頼性評価対象素子の上層及び下層に共に形成されていると、信頼性評価対象素子の上下方向に関する温度差を低減することができる。
【0019】
また、複数の発熱体は、複数の層に形成されていても良い。
【0020】
信頼性評価対象素子の周囲に発熱体を配置する方法として、複数の層を用いても良い。
【0021】
また、複数の発熱体は全て同じ大きさであっても良い。
【0022】
このようにすると、より容易に温度分布を均一にすることができる。
【0023】
また、複数の発熱体は銅配線により形成されていても良い。
【0024】
発熱体の具体的な構成として、金属材料からなる発熱体、例えば銅配線を用いることもできる。
【0025】
次に、本開示のウエハレベル信頼性評価装置は、ウエハレベル信頼性評価素子に電気的に接続する複数のプローブを備え、ウエハレベル信頼性評価素子は、信頼性評価対象素子と、信頼性評価対象素子に電気的に接続された複数の電極パッドと、信頼性評価対象素子に隣接して設けられ、PTC(Positive Temperature Coefficient)材料からなる複数の発熱体と、複数の発熱体が並列に電気的に接続された一対の発熱体用電極パッドとを備え、複数のプローブは、複数のウエハレベル信頼性評価素子のそれぞれの発熱体用電極パッドに対して同時に電気的に接続し且つ同時に電圧を印加する。
【0026】
本開示のウエハレベル信頼性評価装置によると、半導体ウエハにおける複数の信頼性評価対素子について均一な温度に制御することができるので、複数の信頼性評価素子を同時に正確に評価することができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示に係るウエハレベル信頼性評価素子及びウエハレベル信頼性評価装置によると、均一且つ正確な温度条件においてウエハレベルの信頼性評価試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本開示の第1の実施形態に係る例示的ウエハレベル信頼性評価素子について、要部の平面構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1の例示的ウエハレベル信頼性評価素子について、発熱体に対する電気的接続を示す図である。
【図3】図3は、本開示の第1の実施形態に係る例示的ウエハレベル信頼性評価素子の他の例について、要部の平面構成を模式的に示す図である。
【図4】図4は、本開示の第2の実施形態に係る例示的ウエハレベル信頼性評価素子について、要部の断面構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本開示の第3の実施形態において用いる信頼性評価ウエハについて、平面構成を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本開示の第3の実施形態の例示的ウエハレベル信頼性評価装置について模式的に示す図である。
【図7】図7は、背景技術の信頼性評価パターンについて示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下、本開示の第1の実施形態に係るウエハレベル信頼性評価素子について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、例示的ウエハレベル信頼性評価素子10の平面構成を模式的に示す図である。図1に示す通り、半導体ウエハ(図示省略)上に信頼性評価対象素子1が設けられ、電極パッド3a、3b、3c及び3dが電気的に接続されている。また、信頼性評価対象素子1の周囲に隣接するように、PTC材料(一例として、ここでは銅配線)からなる発熱体2a、2b、2c、2d、2e及び2fが形成されている。ここでは、ライン状の信頼性評価対象素子1に対して両側から挟むように配置されている。
【0031】
6つの発熱体2a〜2fは、全て同じサイズであり且つ同様の構成を有している。つまり、幅0.2μmで且つ長さ1mmの銅配線が0.2μmの隙間を空けて蛇行するように配置され、全体としては正方形状になった構成である。全ての発熱体2a〜2fの両端は、配線4を介して最終的には2つの発熱体用電極パッド5にそれぞれ電気的に接続されている。
【0032】
図2に、図1の発熱体2a〜2f及び発熱体用電極パッド5の接続について示す概略回路図である。発熱体2a〜2fは並列に接続され、それぞれの両端が一対の発熱体用電極パッド5に対して電気的に接続されている。このような構成により、外部から2つの発熱体用電極パッド5の間に電圧を印加すると、発熱体2a、2b、2c、2d、2e及び2fに同じ電圧が加わり、それぞれに電流が流れる。
【0033】
電圧印加後、一定時間が経過すると、それぞれの発熱体が発熱して高温となる。ここで、各発熱体2a〜2fの間に大きな温度差が生じていたとする。このような場合、発熱体2a〜2fを構成する銅は温度が低いほど抵抗値が小さいので、同じ電圧が印加されると発熱体2a〜2fのうち低温のものほど大きな電流が流れ、発熱量が大きくなる。従って、更に時間が経過すると各発熱体2a〜2fの間の温度差は小さくなる。つまり、信頼性評価対象素子1の各部分の温度は自己整合的に一定となり、均一な温度分布を実現することができるので、正確な信頼性評価が可能となる。
【0034】
尚、以上では、図1に示すライン状の信頼性評価対象素子1の場合を説明した。しかしながら、これには限らず、例えば図3に示すようなより大きな面積の信頼性評価対象素子1であっても良い。このような場合には、自己整合的に均一な温度分布が実現される効果がより顕著になる。
【0035】
図3の例では、信頼性評価対象素子1は、1mm×2mmの大きさを有している。また、図1に示すのと同様の構成である発熱体2が約100個並べられ、その配列の上に信頼性評価対象素子1が配置されている。各発熱体2は全て一対の発熱体用電極パッド5に並列に電気的に接続されており、また、信頼性評価対象素子1は電極パッド3に電気的に接続されている(電気的接続については図示していない)。
【0036】
このような構成により、従来は温度差(不均一な温度分布)が発生しやすかった大面積の評価対象素子についても、均一な温度分布を実現して正確な信頼性評価が可能となる。また、信頼性評価対象素子1と発熱体2とが積層されているので、信頼性評価対象素子1の温度をより正確に制御することができると共に、熱平衡に達するまでの時間が短くなる。
【0037】
尚、以上では銅配線により構成された発熱体を用いたが、これには限らない。高温になるほど電気抵抗が大きくなるPTC材料であれば、他の材料を用いても良い。例えば、タングステン、アルミニウム等の金属材料である。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るウエハレベル信頼性評価素子について、図面を参照して説明する。図4は、本実施形態の例示的ウエハレベル信頼性評価素子10aの要部の断面を模式的に示す図である。
【0039】
図4に示す通り、ウエハレベル信頼性評価素子10aにおいて、信頼性評価対象素子1の上層及び下層に、絶縁膜6を介して発熱体2が配置されている。発熱体2はいずれも同じ材料により形成され且つ同じサイズである。例えば、第1の実施形態における発熱体2a〜2fと同様の構成であっても良い。図示は省略するが、信頼性評価対象素子1は電極パッドに接続され、複数の発熱体2はそれぞれ発熱体用電極パッドに並列に接続されている。
【0040】
以上のような構成により、上下方向についての温度差を低減し、最小限に留めることも可能となる。
【0041】
尚、図4の例では信頼性評価対象素子1の上下に一層ずつ、合わせて2層の発熱体を形成しているが、これには限らない。上下の一方又は両方に複数層の発熱体を形成し、3層以上の発熱体を備える構成としても良い。
【0042】
(第3の実施形態)
以下、本開示の第3の実施形態に係るウエハレベル信頼性評価装置について、図面を参照して説明する。
【0043】
図5は、本実施形態の例示的ウエハレベル信頼性評価装置20による信頼性評価の対象となる信頼性評価ウエハ7の平面構成を模式的に示す図であり、図6は、ウエハレベル信頼性評価装置20について模式的に示す図である。
【0044】
図5に示すように、信頼性評価ウエハ7には同じ構成の信頼性評価素子8が複数形成されている。それぞれの信頼性評価素子8は、例えば図1に示すのと同様の構成であり、信頼性評価対象素子1と、当該信頼性評価対象素子1に隣接して設けられた複数の発熱体2を備える。また、信頼性評価対象素子1は電極パッド3に接続されると共に、各発熱体2は発熱体用電極パッド5にそれぞれ並列に接続されている。
【0045】
信頼性評価は、図6に示すようにして行なわれる。つまり、ウエハレベル信頼性評価装置20におけるウエハ台11に信頼性評価ウエハ7が載置され、各信頼性評価素子8の電極パッド3及び発熱体用電極パッド5に対し、それぞれプローブ12及びプローブ13が同時に接続される。更に、複数の発熱体用電極パッド5に対し、電圧源14により同時に電圧を印加する。この状態において、各信頼性評価素子8における信頼性評価対象素子1について、プローブ12を用いて信頼性評価を行なう。
【0046】
以上のような構成により、ウエハレベル信頼性評価装置20を用いると、信頼性評価ウエハ7における複数の信頼性評価対象素子1について均一な温度に制御することができるので、複数の信頼性評価対象素子1に対して同時に正確な信頼性評価を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示のウエハレベル信頼性評価素子及びウエハレベル信頼性評価装置によると、均一で且つ正確な温度条件においてウエハレベル信頼性評価試験を行なうことができるので、半導体ウエハ上に形成される様々な大きさ及び形状の信頼性評価素子に対して有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 評価対象素子
2 発熱体
2a、2b、2c、2d、2e、2f 発熱体
3 電極パッド
3a、3b、3c、3d 電極パッド
4 配線
5 発熱体用電極パッド
6 絶縁膜
7 信頼性評価ウエハ
8 信頼性評価素子
10 ウエハレベル信頼性評価素子
10a ウエハレベル信頼性評価素子
11 ウエハ台
12 プローブ
13 プローブ
14 電圧源
20 ウエハレベル信頼性評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信頼性評価対象素子と、
前記信頼性評価対象素子に電気的に接続された複数の電極パッドと、
前記信頼性評価対象素子の周囲に設けられ、PTC(Positive Temperature Coefficient)材料からなる複数の発熱体と、
前記複数の発熱体が並列に電気的に接続された一対の発熱体用電極パッドとを備えることを特徴とするウエハレベル信頼性評価素子。
【請求項2】
請求項1のウエハレベル信頼性評価素子において、
前記複数の発熱体は、前記信頼性評価対象素子の上層及び下層の少なくとも一方に形成され、
前記複数の発熱体と、前記信頼性評価対象素子とは重なり合っていることを特徴とするウエハレベル信頼性評価素子。
【請求項3】
請求項1のウエハレベル信頼性評価素子において、
前記複数の発熱体は、複数の層に形成されていることを特徴とするウエハレベル信頼性評価素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つのウエハレベル信頼性評価素子において、
前記複数の発熱体は全て同じ大きさであることを特徴とするウエハレベル信頼性評価素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つのウエハレベル信頼性評価素子において、
前記複数の発熱体は銅配線により形成されていることを特徴とするウエハレベル信頼性評価素子。
【請求項6】
ウエハレベル信頼性評価素子に電気的に接続する複数のプローブを備えるウエハレベル信頼性評価装置において、
前記ウエハレベル信頼性評価素子は、
信頼性評価対象素子と、
前記信頼性評価対象素子に電気的に接続された複数の電極パッドと、
前記信頼性評価対象素子に隣接して設けられ、PTC(Positive Temperature Coefficient)材料からなる複数の発熱体と、
前記複数の発熱体が並列に電気的に接続された一対の発熱体用電極パッドとを備え、
前記複数のプローブは、複数の前記ウエハレベル信頼性評価素子のそれぞれの前記発熱体用電極パッドに対して同時に電気的に接続し且つ同時に電圧を印加することを特徴とするウエハレベル信頼性評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−9541(P2012−9541A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142685(P2010−142685)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】