説明

ウエハレベル光学システム

【解決手段】本発明は、1つ以上の電気活性高分子アクチュエータを利用する光学システム、光学装置及び光学的方法を提供するものであって、光学装置又は光学システムの光学的パラメータを調整するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本発明は、参照することによりその内容が全体として本明細書に組み込まれる、2009年3月18日に出願された米国仮特許出願番号61/161,374の本出願である。
【0002】
本発明は、光学レンズシステムに関し、さらに詳しくは、電気活性高分子トランスデューサーを用いて、レンズを調節し、自動焦点、ズーム、画像安定化、及び/又は、シャッター/アパーチャ(絞り)機能を与えるシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
デジタルカメラ等の従来の光学システムでは、モーター及びソレノイドが、レンズ等の光学素子上で作用するギアやカムを移動させる動力源として用いられて、焦点調節、ズーム及び画像安定化(振動防止とも称される)を実現していた。しかし、このような従来のシステムには、消費電力が多い、応答時間が長い、精度が低い、必用な空間容量が大きい等、多くの問題があった。
【0004】
小型化技術の進歩により、高品質、高機能で、軽量の携帯型装置が開発され、さらなる改善に対する消費需要が絶え間なく増大し続けている。一例としてカメラ付き携帯電話とも称される、カメラの機能を備えた携帯電話の進歩が挙げられる。このようなカメラ付携帯電話の多くは、小さな形状因子のレンズを用いる全てが機械的なレンズモジュールを採用しているが、この手法では、多くの可動部分が必要となるため、可変焦点又は自動焦点、ズーム及び画像安定化機能を実現することができない。たとえば、ズーム機能には、レンズ素子、モーター及びカム機構の組み合わせが必要であり、所望の倍率を得るためには、モーターの回転動作を直線的な動きに伝達して、レンズと関連画像センサーとの相対的な位置を調整する必要がある。レンズの相対的な位置を正確に制御するためには、モーター及びカム機構に加えて、複数の減速ギアも必要となる。
【0005】
磁力を生成するコイルを備え、光軸方向における磁石の長さがコイルの長さよりも長い電磁アクチュエータ(一般に「音声コイル」と称される)が、デジタルカメラと、カメラ付携帯電話の一部で、自動焦点機能とズーム機能とを実現するために、通常用いられている。この音声コイル技術は、小型で軽量の光学レンズシステムを実現できるため広範囲に利用されている。しかし、軽量で小型のカメラのマイナス面、特に、長い露出時間に対応可能で解像度の高いセンサーを用いるカメラのマイナス面は、主に手の動きによるカメラの振動が写真の画質に大きな影響を与えること、すなわち、手ぶれを生じること、である。カメラの振動を補償するために、多くの場合、画像の安定化にジャイロスコープ(姿勢制御装置)が用いられる。ジャイロスコープは、ピッチとヨーを測定できるが、ロール、すなわち、レンズバレルにより規定される軸を中心とした回転、を測定することはできない。従来、フルスケールレンジでの画像安定化を目的として、2つの短軸圧電式ジャイロスコープ又はクオーツ式ジャイロスコープが、多くの外部部品と共に用いられてきた。InvenSense社は、画像安定化にMEMS技術を採用することにより小型化を実現した一体型二軸ジャイロスコープを開発した。
【0006】
可変焦点、ズーム及び画像安定化機能を、カメラ付携帯電話や比較的小さな形状因子を有する他の光学システム内で実現することは可能であるが、これらの機能を加えることにより、装置の全体的な重量が増加する。さらに、多くの可動部品が必要となるため、消費電力が非常に大きくなり、製造コストも高くなる。
【0007】
したがって、従来技術の問題点を克服するような光学レンズシステムが求められている。特に、レンズとアクチュエータ構造との間の構造及びメカニカルインターフェースを一体化して、可能な限り形状因子を抑制したシステムが求められている。このような光学システムに用いられる機械部品の数を最小限に抑えることができれば、構造の複雑さを軽減でき、システムの製造コストも抑えられるため、非常に望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、光学レンズシステム及び装置並びに光学レンズシステムや装置を用いるための方法に関する。システム及び装置は、1つ以上の電気活性高分子系(EAP)アクチュエータがその内部に組み込まれ、装置/システムのパラメータを調整する。たとえば、1つ以上のEAPアクチュエータを、自動的にレンズの焦点距離を調節する(自動焦点)、レンズにより焦点を合わせた画像を拡大する(ズーム)、及び/又は、レンズシステムによる望ましくない任意の動きを調節する(画像安定化又は振動防止)ように構成してもよい。
【0009】
1つ以上のEAPアクチュエータは1つ以上のEAPトランスデューサを備え、1つ以上の出力部材が、本発明のレンズシステム/装置の1つ以上のレンズ部分、センサー部分及びシャッター/アパーチャ(絞り)部分と一体化される。レンズ部分(すなわち、レンズスタック又はレンズバレル)は、少なくとも1つのレンズを備える。ある実施形態において、レンズ部分は、焦点レンズ部品と、アフォーカルレンズ部品と、を備える。センサー部分は、装置のレンズ部分から画像を受信して、画像処理電子機器により画像のデジタル処理を行なう画像センサーを備える。EAPトランスデューサーに電圧を印可することによりEAPアクチュエータを活性化して、レンズ部品及び/又はセンサー部品の相対的な位置を調節し、レンズシステムの光学パラメータを有効にする又は修正することができる。
【0010】
1つの形態において、(少なくとも1つのEAPアクチュエータを含む)アクチュエータアセンブリを用いて、センサー部分に対してレンズスタックの一部の位置を長手軸(Z軸)に沿って調節し、レンズスタックの焦点距離を変えることができる。他の形態において、同じまたは別のアクチュエータを用いて、スタック内の1つ以上のレンズの位置を長手軸(Z軸)に沿って互いに調節し、レンズシステムの倍率を調整することができる。また別の形態において、アクチュエータを用いて、レンズ部分に対してシステムのセンサー部分を平面方向(X軸及び/又はY軸)に動かすことにより、又は、その逆にレンズ部分を動かすことにより、システム上の望ましくない動きを補償することができる、すなわち、画像センサーに与えられる画像を安定化させることができる。本発明の他の特徴として、EAPアクチュエータを用いて、レンズシステムの開口部(アパーチャ)の大きさを制御する、及び/又は、シャッター機構の開閉を制御する、ことができる。EAPアクチュエータは、単一の機能(たとえば、シャッター制御や画像安定化)のみを与えるものでもよいし、組み合わせた機能(たとえば、自動焦点とズーム)を与えるものでもよい。
【0011】
本発明は、さらに、本発明の装置及びシステムを用いて、画像の焦点を合わせる、及び/又は、画像を拡大する、又は、装置/システムの望ましくない動きを相殺する、方法に関する。本発明の方法は、さらに、本発明の装置及びシスエムを製造する方法も含む。
【0012】
本発明の上記及び他の特徴や目的、利点は、当業者にとっては、以下の本発明の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明を、以下、添付の図面を参照して詳細に説明するが、本発明は何ら図示される構成に限定されるものではなく、さまざまに変形及び変更が可能である。本発明の説明をわかりやすくするために、それぞれの図面で共通する同じ部品には、(差支えがない限り)同じ参照番号を用いている。
【図1A】電気活性高分子アクチュエータを用いて、自動焦点機能を有する本発明の光学レンズシステムを示す断面斜視図。
【図1B】電気活性高分子アクチュエータを用いて、自動焦点機能を有する本発明の光学レンズシステムのアセンブリ分解図。
【図2A】本発明の光学システムと用いられる電気活性高分子膜に電圧を印可する前の概略図。
【図2B】本発明の光学システムと用いられる電気活性高分子膜に電圧を印可した後の概略図。
【図3】焦点制御に他の形態の電気活性高分子アクチュエータを用いる本発明の他の光学レンズシステムを示す断面斜視図。
【図4A】ズームと自動焦点の各々を制御するためにアクチュエータの組み合わせを用いる他の光学レンズシステムを示す断面斜視図。
【図4B】ズームと自動焦点の各々を制御するためにアクチュエータの組み合わせを用いる他の光学レンズシステムのアセンブリ分解図。
【図5A】ズームを調節する他の手段を示す斜視図。
【図5B】ズームを調節する他の手段を示す斜視図。
【図6A】図5A及び図5Bに示すトランスデューサー構成の連続的な駆動工程を示す斜視図。
【図6B】図5A及び図5Bに示すトランスデューサー構成の連続的な駆動工程を示す斜視図。
【図6C】図5A及び図5Bに示すトランスデューサー構成の連続的な駆動工程を示す斜視図。
【図7A】自動焦点機能と画像安定化機能とを有する本発明の他の光学レンズシステムを示す断面斜視図。
【図7B】自動焦点機能と画像安定化機能とを有する本発明の他の光学レンズシステムのアセンブリ分解図。
【図8】図7A及び図7Bに示すレンズシステムの画像安定化カートリッジのアセンブリ分解図。
【図9A】図8に示す画像安定化カートリッジの電気活性高分子トランスデューサーの電極配置を示す上面図。
【図9B】図8に示す画像安定化カートリッジの電気活性高分子トランスデューサーの電極配置を示す底面図。
【図10A】図8に示す画像安定化カートリッジと共に利用可能なフレーム付電気活性高分子トランスデューサーの別の実施例を示す上面図。
【図10B】8に示す画像安定化カートリッジと共に利用可能なフレーム付電気活性高分子トランスデューサーの別の実施例を示す底面図。
【図10C】図10A及び図10Bに示すトランスデューサーで用いられる電気活性膜を示す上面図。
【図10D】図10A及び図10Bに示すトランスデューサーで用いられる電気活性膜を示す底面図。
【図11A】図7A及び図7Bに示すレンズシステムのパッシブ型剛性を示す図。
【図11B】図7A及び図7Bに示すレンズシステムの負荷応答を示す図。
【図12A】本発明のEAP自動焦点アクチュエータを付勢するために利用可能な板バネ付勢部材を示す斜視図。
【図12B】図12Aに示す板バネ付勢部材が作動状態にある、本発明の光学レンズシステムを示す断面斜視図。
【図12C】図12Aに示す板バネ付勢部材が作動状態にある、本発明の光学レンズシステムの上面図。
【図13】一体型板バネ付勢部材を用いる本発明の他の光学レンズシステムを示す断面斜視図。
【図14A】他の種類の一体型バネ付勢部材を備えるレンズシステム筺体をレンズバレルを取り除いた状態で示す断面斜視図。
【図14B】他の種類の一体型バネ付勢部材を備えるレンズシステム筺体をレンズバレルを取りつけた状態で示す断面斜視図。
【図15A】本発明のレンズシステムと共に利用可能なレンズバレル/フランジ・アセンブリであって、焦点キャリブレーション(較正)を目的としたバレルを調節可能な設計のレンズバレル/フランジアセンブリを示す斜視図。
【図15B】本発明のレンズシステムと共に利用可能なレンズバレル/フランジ・アセンブリであって、焦点キャリブレーション(較正)を目的としたバレルを調節可能な設計のレンズバレル/フランジアセンブリを示す断面図。
【図15C】図15A及び図15Bに示すレンズバレルアセンブリの無限遠焦点パラメータのキャリブレーション(較正)を行なうツールを用いる様子を示す図。
【図16A】焦点キャリブレーションを目的としたフランジを調節可能な設計の他のレンズバレルアセンブリを示す斜視図。
【図16B】焦点キャリブレーションを目的としたフランジを調節可能な設計の他のレンズバレルアセンブリを示す断面図。
【図17A】非常に小型で薄型の形状を可能にする単相アクチュエータ構成のレンズシステムを示す断面図。
【図17B】非常に小型で薄型の形状を可能にする二相アクチュエータ構成のレンズシステムを示す断面図。
【図18A】本発明のEAPアクチュエータ型レンズ移動機構の例を示す斜視図。
【図18B】本発明のEAPアクチュエータ型レンズ移動機構の例を示す断面図。
【図19A】本発明で利用可能な他のEAPレンズ移動機構を示す斜視図。
【図19B】本発明で利用可能な他のEAPレンズ移動機構を示す断面図。
【図20A】EAPアクチュエータと機械的リンク機構を用いる他のレンズ移動機構を示す斜視図。
【図20B】EAPアクチュエータと機械的リンク機構を用いる他のレンズ移動機構を示す断面図。
【図21】本発明の他のハイブリッド型レンズ移動機構を示す断面図。
【図22A】本発明の「尺取虫」型レンズ移動機構を示す斜視図。
【図22B】本発明の「尺取虫」型レンズ移動機構を示す断面図。
【図23A】本発明の多段「尺取虫」型レンズ移動機構を示す斜視図。
【図23B】本発明の多段「尺取虫」型レンズ移動機構を示す断面図。
【図24A】図23A及び図23Bに示すレンズ移動機構のアクチュエータカートリッジの概略を示す断面図。
【図24B】駆動サイクルにおいて、アクチュエータと関連レンズガイドレールの位置の変化を示す概略図。
【図24C】駆動サイクルにおいて、アクチュエータと関連レンズガイドレールの位置の変化を示す概略図。
【図24D】駆動サイクルにおいて、アクチュエータと関連レンズガイドレールの位置の変化を示す概略図。
【図24E】駆動サイクルにおいて、アクチュエータと関連レンズガイドレールの位置の変化を示す概略図。
【図24F】駆動サイクルにおいて、アクチュエータと関連レンズガイドレールの位置の変化を示す概略図。
【図25A】本発明の多重アクチュエータ型レンズ移動システムを示す断面図。
【図25B】本発明の多重アクチュエータ型レンズ移動システムを示す断面図。
【図25C】本発明の多重アクチュエータ型レンズ移動システムを示す断面図。
【図26A】不活性状態の本発明のレンズ画像安定化システムを示す断面図。
【図26B】活性状態の本発明のレンズ画像安定化システムを示す断面図。
【図27A】本発明の他のレンズ画像安定化システムをさまざまな活性状態で示す断面図。
【図27B】本発明の他のレンズ画像安定化システムをさまざまな活性状態で示す断面図。
【図27C】本発明の他のレンズ画像安定化システムをさまざまな活性状態で示す断面図。
【図28】本発明のレンズシステム及び他の周知のレンズシステムに用いるのに適した本発明のアパーチャ(絞り)/シャッター機構を示す分解図。
【図28A】図28に示すアパーチャ(絞り)/シャッター機構の回転カラーを示す側面図。
【図29A】図28に示すアパーチャ(絞り)/シャッター機構の全開状態を示す図。
【図29B】図28に示すアパーチャ(絞り)/シャッター機構の半開状態を示す図。
【図29C】図28に示すアパーチャ(絞り)/シャッター機構の全閉状態を示す図。
【図30A】本発明のレンズ移動機構で用いられるユニモルフ型アクチュエータ膜を示す断面図。
【図30B】本発明のレンズ移動機構で用いられるユニモルフ型アクチュエータ膜を示す断面図。
【図31A】図30A及び図30Bに示すユニモルフ型アクチュエータ膜を用いる本発明の他のレンズ移動機構の不活性状態を示す側面図。
【図31B】図30A及び図30Bに示すユニモルフ型アクチュエータ膜を用いる本発明の他のレンズ移動機構の活性状態を示す側面図。
【図32A】ユニモルフ型アクチュエータを用いる本発明の他のレンズ移動機構を示す側面図。
【図32B】ユニモルフ型アクチュエータを用いる本発明の他のレンズ移動機構を示す側面図。
【図33A】レンズシステムを作動させて性能を最適化する周辺環境の湿度等の条件を実現する機能を備えるEAPアクチュエータを用いる様子を示す図。
【図33B】レンズシステムを作動させて性能を最適化する周辺環境の湿度等の条件に対処する機能を備えるEAPアクチュエータを用いる様子を示す図。
【図34】環境条件に対処するための他の構成を採用した本発明のレンズ移動システムを示す断面図。
【図34A】図34に示すシステムの環境条件制御機構を示す斜視図。
【図34B】図34に示すシステムの環境条件制御機構を示す上面図。
【図35】レンズ位置センサーを備える本発明の他のレンズ移動システムを示す断面図。
【図36A】本発明のシャッター/絞り(アパーチャ)機構の機械部品の他の例を示す斜視図。
【図36B】図36Aに示すシャッター/絞り(アパーチャ)機構の全開状態を示す図。
【図36C】図36Aのシャッター/絞り(アパーチャ)機構の全閉状態を示す図。
【図36D】本発明のEAPアクチュエータに図36Aに示す機構が動作可能に連結された様子を示す斜視図。
【図37A】ウエハレベル光学システムに用いられるセンサー及びレンズ構成の例を示す図。
【図37B】ウエハレベル光学システムに用いられるセンサー及びレンズ構成の例を示す図。
【図37C】ウエハレベル光学システムに用いられるセンサー及びレンズ構成の例を示す図。
【図37D】ウエハレベル光学システムに用いられるセンサー及びレンズ構成の例を示す図。
【図37E】ウエハレベル光学システムに用いられるセンサー及びレンズ構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の装置、システム及び方法を説明を説明するが、本発明は、何ら特定の形態や適用に限定されるものではなく、さまざまな変更が可能である。したがって、主に可変焦点カメラレンズに関連して本発明を以下に説明するが、本発明の光学システムを、顕微鏡、双眼鏡、望遠鏡、携帯型ビデオカメラ、プロジェクター、眼鏡等に用いることもできるし、また、その他の光学的分野に適用することも可能である。また、以下で用いられる用語は、特定の実施例を説明する目的で用いるものであり、何ら本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0015】
図1A及び図1Bに、自動焦点機能を備える本発明の光学レンズシステムを示す。図示するように、レンズモジュール100は、(図示しない)1つ以上のレンズを保持するレンズバレル108を備える。レンズバレル108の遠位端又は前端に開口部(アパーチャ)106が備えられる。アパーチャ106の遠位側に、電気活性高分子膜120を備える電気活性高分子(EAP:Electroactive polymer)アクチュエータ102が配置される。電気活性高分子膜120は、その周縁部がフレーム層122a及び122bに挟まれ、中心部がディスク層104a及び104bに挟まれて、環状部が露出する構造となっている。電気活性膜の構造及び作用に関して、以下、図2A及び図2Bを参照して詳述する。
【0016】
図2A及び図2Bの概略図に示すように、電気活性膜2は、高分子誘電体薄膜4を柔軟電極板(プレート)又は層6の間に挟んだ複合体からなり、容量性構造を形成する。図2Bに示すように、電極を通して電圧を印加すると、2つの電極6における逆の電荷が互いに引き合い、これらの静電引力により、誘電体層4が(Z軸に沿って)圧縮される。また、各電極における同じ電荷間の反発力により誘電体層4が平面内で(X軸及びY軸に沿って)伸びやすくなり、膜厚を減少させる。したがって、誘電体層4は、電界の変化に応じてたわむ。電極6は柔軟であるため、誘電体層4に応じて形が変わる。一般的に言って、「たわみ」は、変位、拡大、縮小、ねじれ、線形及び領域歪みや、その他、誘電体層4の一部の変形を意味する。適合する構造に応じて、たとえば、容量性構造が適用されるフレームに応じて、このような「たわみ」を利用して力学的仕事を生じさせることができる。フレーム内で予め電気活性膜2に歪みを加えることにより、電気エネルギーと力学的エネルギーとの間の変換を向上させることができる。すなわち、予め歪みを加えることにより、膜のたわみが大きくなり、大きな力学的仕事が可能になる。
【0017】
電圧を印加すると、たわみを促進する静電的な力と機械的な力が均衡するまで、電気活性膜2はたわみ続ける。ここで、機械的な力には、誘電体層4の弾性的復元力や電極6の弾性コンプライアンス及び電気活性膜2に接続される装置及び/又は負荷による外部抵抗が含まれる。電圧の印加により生じる電気活性膜のたわみは、エラストマー材料の誘電率や大きさや剛性等、他の多くのファクターにも依存するものでもよい。電圧差や誘導電荷がなくなると、逆の影響が生じ、図2Aに示すような不活性状態に戻る。
【0018】
電気活性高分子膜2の長さL及び幅Wは、厚みtと比べて大きい。通常、誘電体層4の厚みは、約1μmから約100μmの範囲であり、各電極よりの厚みよりも大きいことが多い。電極6によりアクチュエータに加えられる付加剛性が、約100MPa未満と比較的低い弾性率を有する誘電体層の剛性よりも小さくなるように、電極6の弾性率と厚みとを選択することが望ましい。
【0019】
本発明の光学システムに用いるのに好適な電気活性高分子材料の種類としては、以下に限定されるものではないが、誘電エラストマー、電歪ポリマー、電子電気活性ポリマー、イオン性電気活性ポリマー及び共重合体が挙げられる。また、好適な誘電材料としては、以下に限定されるものではないが、シリコーン、アクリル、ポリウレタン、フルオロシリコーン等が挙げられる。電歪ポリマーは、電気活性高分子の非線形反応を引き起こす。電子電気活性ポリマーは、(通常、乾燥状態の)電場に応じた電子の移動により形状または大きさが変わる。イオン性電気活性ポリマーは、(通常、湿潤状態で電解質を含有する)電場に応じた電子の移動により形状または大きさが変わる。好適な電極材料としては、炭素、金、白金、アルミニウム等が挙げられる。本発明のダイヤフラム・カートリッジに用いるのに適した膜や材料は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,376,971号、6,583,533号及び6,664,718号に開示されている。
【0020】
図1A及び図1Bに戻って説明を続ける。レンズバレル/スタック108に対してEAPアクチュエータ102を動作可能に係合することにより、レンズアセンブリの自動焦点合わせが可能になる。キャップ104内の開口部(アパーチャ)118とアパーチャ106とが軸方向に同一直線上に配置されてレンズアセンブリに光を通すように、フレーム122が、孔126bに収容されるボルト126aによって、筺体114の遠位端に固定される一方で、EAPアクチュエータ102のディスク部又はキャップ部104が、レンズバレル108の遠位端に対して配置又は載置される。板バネ機構110の形態の付勢部材をレンズバレル108とフレーム122との間に動作可能に係合させて、矢印125の方向にディスク104に予め負荷を加える、又は、ディスク104を付勢することにより、錐台形状の構造が形成される。このような錐台形状のアクチュエータの詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願11/085,798、11/085,804及び11/618,577に記載されている。予め負荷を加えること又は付勢することにより、単に電極を活性化する場合と比較して、アクチュエータ102を所望の方向に駆動することが可能になる。図示される板バネ機構110と共に、筺体114が、アクチュエータ102に対して1つ以上の板バネを収容し、動作可能に位置決めできるように、壁凹部132等を備えるようにしてもよい。図7Aに示すように、正のバネ定数を有する単純なバネ(たとえば、コイルバネ)等、他の付勢手段を代わりに用いるようにしてもよい。
【0021】
レンズアセンブリ又はレンズスタック108の近位端又は後端には、制御電子機器128(図1Bにのみ図示)によりデジタル処理される画像を受信する画像センサー/検出器116(たとえば、電荷結合素子(CCD))が配置される。レンズスタック108の焦点距離は、EAPアクチュエータ102の選択的作動により調整可能である(1つ以上のレンズの軸方向の位置を他のレンズに対して調整可能である)。センサー116及びアクチュエータ102は、電源130との電気的結合を介して駆動されるようにしてもよい。
【0022】
図1Bに示すように、完成したカメラアセンブリは、少なくとも被覆部又はカバー112を備える。従来のレンズシステムで通常用いられる(図示しない)赤外(IR)フィルター等の他の構成要素を動作可能にシステム100内に組み込むようにしてもよい。
【0023】
図3に、本発明の他のレンズモジュール140を示す。1つ以上のレンズ144を備える円筒形上のレンズバレル142は、外側筺体部材146及び内側筺体部材148の内部で移動可能に保持され、遠位部142aが外側筺体部材146の開口部を通ってスライド可能に配置され、近位部142bが内側筺体部材148の開口部を通ってスライド可能に配置される。遠位バレル部142aと近位バレル部142bとの間が接合されることにより、EAPアクチュエータ152の環状内側フレーム部材158が載置される環状肩部150が規定される。アクチュエータ152は二重錐台構造を有し、各錐台は、内側フレーム部材158との間で延伸した状態で保持される膜154a及び154bによって規定される。遠位膜154aの周縁部は、外側筺体部材146とフレームブロック又はスペーサ156との間に保持され、一方、近位膜154bの周辺部は、内側筺体部材148とフレームブロック156との間に保持される。板バネ機構による付勢の代わりに、二重錐台構造の遠位膜154aが、矢印155の方向にアクチュエータ152に予備荷重を加え、レンズバレル142を同じ方向に移動させて、焦点レンズ144を調節することができる。付勢されない膜154bがEAP膜であるのに対し、付勢される膜154aは必ずしもEAP膜でなくてもよく、単なる網状エラストマーでもよい。ただし、膜154aに電気活性高分子材料を用いれば、容量変化により位置を感知することが可能になり、あるいは、膜154bと共に、二相アクチュエータを形成することも可能である。後者の場合、膜154bが活性化されると、レンズバレル142が矢印157の方向に移動し、逆方向にレンズ144の焦点距離を調節することができる。
【0024】
本発明の他の例として、図4A及び図4Bに、焦点及びズームの各々を制御するアクチュエータの組み合わせを用いた光学システム160を示す。システム160は、筺体182内に収容され焦点レンズ164を有する焦点調節部を備え、焦点レンズ164は、レンズバレル162内に保持されて、ダイヤフラム・アクチュエータ166により駆動される。図1A及び図1Bを参照して上述した方法と同様の方法で、レンズ164と画像センサー180との間の距離を変えることにより、焦点調節ができる。システム160は、さらに、ズームレンズ168を有するズーム部を備え、ズームレンズ168は、レンズ固定具170内であって、各々、電機子174a及び174bにより1対の平面アクチュエータ172a及び172bに機械的に結合されるレンズカバー176の下方に保持される。各アクチュエータ172a及び172bは、電機子に固定された共通のフレーム部材178の上方にEAP膜を延伸させることにより、形成される。レンズ164とレンズ168との間の距離を変えることによりズーム機能が得られる。一般に、焦点調節には、約0.1mmから2.0mmの範囲の移動距離が必要であり、一方、ズームには、ストローク量の約5倍ないし10倍の距離が必要となる。図示していないが、複合体フレームの複数の面に、ダイヤフラム・アクチュエータのみを、あるいは、平面アクチュエータのみを備えるようにしてもよい。また、非直交フレーム配置を用いることもできる。
【0025】
広い利用可能な空間が存在する場合には、より長いズーム移動に適したEPAMズーム/焦点エンジンを備えて、装置の動作範囲を広くすることが望ましいこともある。図5A及び図5Bは、複数対の平面アクチュエータ192a及び192bを入れ子状に配置した別のレンズシステム190を示す斜視図である。各対のアクチュエータは、各々、ズームレンズ198を支持するレンズバレル196に固定されるレンズ支持台194の両側に配置される。平面アクチュエータ構造は、駆動されると、レンズバレル196とズームレンズ198とを、焦点軸に沿って、画像センサー200に対して、矢印202又は矢印204の方向に移動させる。図5A及び図5Bは、それぞれ、最小ズーム位置と最大ズーム位置を示す。
【0026】
図6Aないし図6Cの拡大図に、アクチュエータの接続状態や作動状態を示す。図6Aないし図6は、図5A及び図5Bのアクチュエータ・スタックのさまざまな駆動段階を示す。出力棒208を各々アクチュエータフレーム部206に接続し、一番内側の出力棒208をロッド210に取り付けてズーム構成要素を駆動することにより、移動が可能になる。
【0027】
図7A及び図7Bに、自動焦点機能に加えて画像安定化機能を備える本発明の他の光学レンズシステム300を示す。レンズモジュール302は、1つ以上のレンズを保持するレンズバレル312を備える。図示した例では、レンズバレル312には、4つのレンズ314a、314b、314c及び314dが保持されるが、レンズの数はもっと多くても、もっと少なくてもよい。外側フレーム322と内側ディスク又はキャップ部材328との間に伸長するEAP膜325を備えるEAPアクチュエータ320により、レンズアセンブリ314が変位する。外側フレーム322は、下側筺体324と上側筺体326との間に固定される。コイルバネ332の形態の付勢部材を、レンズバレル312の周りに配置し、下側筺体324の後端334とレンズバレル312の肩部又はフランジ336との間に動作可能に係合させて、矢印335の方向に、キャップ又はディスク部材328に予め負荷を加える、又は、キャップ又はディスク部材328を付勢することにより、EAPアクチュエータ320を錐台形状にする。
【0028】
アクチュエータのディスク部材328の径方向の剛性とレンズバレル312の遠位端にかかる反作用力/付勢力(矢印335の反対方向)とにより、レンズモジュール302の内部にバレルを同心円状に維持できる。また、付勢されたEAPアクチュエータの構造全体が、レンズバレルを効果的に懸架することにより、図11Aのグラフからわかるように、レンズバレルが重力の影響を受けなくなる。図11Aに、このようなレンズ位置決めシステムのパッシブ型剛性を示す。また、図11Bに、ハードストップ位置から移動開始後のシステムの標準的な負荷応答を示す。
【0029】
ブッシング壁318が、筺体324の後端334から上方に伸長し、コイルバネ332とレンズバレル312の外側面との間に配置される。ブッシング壁318は、レンズバレル312のリニアガイドとして機能し、フランジ336と共に、最大「マクロ」(短焦点)位置で、それ以上の移動を制限する。ハードストップ、すなわち、移動制限部を内蔵することにより、システム300のアセンブリ製造時におけるバレル位置の初期キャリブレーション(較正)に役立つ。また、ブッシング壁318の剛性により、通常使用時に、レンズアセンブリが破壊されないように保護することができる。さらに、EAPアクチュエータの構造全体で、レンズバレルの衝撃を吸収することができる。EAPアクチュエータ、付勢バネ、ブッシング及びバレルの全体的な設計により、径方向における均一な位置合わせが可能になり、レンズシステムが最適性能を発揮できる。
【0030】
EAPアクチュエータの錐台構造を、図12Aに示す非常に薄型の板バネ付勢機構390等、別の付勢部材により形成するようにしてもよい。付勢機構390は環状基部392を備え、環状基部392は、基部392の外周に沿って間隔をあけて配置され、屈曲点396で基部392の外周から上方に曲がった、径方向に伸長するフォーク型タブ394を有する。図12B及び図12Cに、図7A及び図7Bに示すシステム300と同様の構造の光学レンズシステム内で、板バネ付勢機構390を動作可能に付勢部材として用いる例を示す。板バネの基部392は、フランジ336の下方で、レンズバレル312の周囲を囲み、フォーク型タブ394は、各々、軸受表面として作用する外側フレーム322の下側に係合する。均一なバランスで同心円状に付勢するために、板バネ機構が、少なくとも3つの均等な間隔で配置されるタブ394を備えることが望ましい。また、板バネ390が偶発的に回転しないように、筺体の各隅に形成された溝内に、フォーク型タブ394の歯又は足をはめ込む。内側筺体ブロック398は、レンズバレル312が無限遠(すなわち、最近位)位置にある場合に、レンズバレル312に対するリニアブッシング又は逆転防止装置として作用する。
【0031】
付勢部材が、光学レンズシステムのレンズバレル及び/又は筺体構造に組み込まれるものでもよい。図13に、本発明のレンズシステムの構造部410が筺体部414内部に同心円状に配置されるレンズバレル412を備える例を示す。付勢部材416は、レンズバレルと筺体との間に、両者にまたがるように配置されている。付勢部材は、(たとえば、成形により)これらの構成要素と共に単一構造又はモノリシック構造として形成されるものでもよいし、あるいは、レンズバレルと筺体との間のインサートとして備えられるものでもよい。後者の構成では、(上端側又は外側から見て)凸部構造を有する環状ダイヤフラム418が図示されているが、代わりに凹部構造としてもよい。シリコーン、ポリウレタン、EPDM、その他エラストマーや任意の低粘度エラストマーが、ダイヤフラム418に適した材料である。ダイヤフラムは、それぞれ、外側レンズバレル壁及び内側筺体壁を支持する内側側壁420a及び外側側壁420bの間に伸長する。曲面ダイヤフラム418は、負の付勢定数を有するバネ機構を形成する。負の付勢定数を有するEAPアクチュエータの他の例は、先に参照した米国特許出願11/618,577に開示されている。
【0032】
図14A及び図14Bに、本発明のレンズシステムにアクチュエータのバネ付勢部を組み込む他の例を示す。図14Aにおいて、たとえば、図7A及び図7Bに示すレンズシステム300の下側筺体324に構造的に組み込まれ、筺体324の外壁とブッシング壁318との間の同心円状の隙間内で径方向内側に伸長する2つ以上のタブ422により、(図示しない)EAPアクチュエータにバネ付勢力が与えられる。タブ422は、負荷が加わるとバネ付勢力を与えるように、曲げられる、又は、成形される。図14Bに示すように、レンズバレル312は、タブ422と(たとえば、成形により)一体に形成され、タブ422に固定されるものでもよい。
【0033】
本発明のレンズシステムが、レンズに対して任意の適当な位置に、1つ以上の光フィルターを備えるようにしてもよい。図7A及び図7Bに示すシステム300を再び参照すると、上側筺体326は、光を通過させるように配置される透明または半透明のカバー330を備える。あるいは、上側筺体326全体を透明/半透明の材料から成形するようにしてもよい。いずれにしても、カバーは、約670nm以上の赤外波長はレンズアセンブリを透過させない一方で、可視波長は損失を生じることなくレンズアセンブリを透過させるようなフィルターとして機能することができる。これに代えて、又は、これに加えて、IRフィルター366をレンズアセンブリの近位端側に配置するようにしてもよい。
【0034】
本発明のレンズシステムは、さらに、画像安定化機能を備えるものでもよい。再び、図7A及び図7Bを参照すると、図示された実施例では、レンズモジュール302の近位端側に、画像安定化モジュール304が配置されている。画像安定化モジュール304は、レンズモジュール302により画像センサー306上に焦点を合わせた画像を受信する画像センサー306と、受信した画像を処理するための関連電子機器と、を備える。画像安定化モジュール304は、さらに、x−y平面で画像センサー360の任意の動き、すなわち、「振動」を補償して、焦点画像をシャープに保つように働くEAPアクチュエータ310を備える。このような動きを感知するセンサーと共に、Z軸補正を行なうようにしてもよい。
【0035】
EAPアクチュエータ310は、図8のアセンブリ分解図及び図9A及び図9Bの平面図に示すように、「ホット」層338と接地層348とを含む2層EAP膜トランスデューサーを備える平面構成を有する。EAP膜338は、エラストマー層342と、各々、エラストマー層342の一部上に伸長する電気的に絶縁されている複数の電極340と、を備える。エラストマー層342の中心部362aには、電極材が存在しない。EAP膜348は、エラストマー層352と、1つの接地電極350と、を備える。環状の接地電極350に各ホット電極340が近接して配置され、膜338の中心部362aと同様に、中心部362aには電極材が存在しない。この2つの膜の組み合わせにより、4つの活性コードラント(quadrant:四分円)を有し(すなわち、4対の活性接地電極を有し)4相アクチュエータとして機能するトランスデューサーが形成される。ただし、図10Aないし図10Dを参照して後述するように、活性部の数は、もっと多くても、逆に、もっと少なくてもよい。各コードラントは、個別に、又は、1つ以上の他のコードラントと並行して、選択的に活性化されて、システムによる振動に応じて、かつ、これを補償するように、x−y平面内での(すなわち、2つの自由度で)作動範囲を規定する。各タブが1つのホット電極に対応するように、複数の電気タブ344が2つの膜の間に挟まれる。1対の接地電気タブ346が、EAP膜338及び348の反対側の外側面に配置される。タブ334及び348により、EAPアクチュエータが(図示しない)電源及び制御電子機器に接続される。2層トランスデューサー膜は上側フレーム部材354aと下側フレーム部材354bとの間に挟まれ、EAP膜が延伸されて引っ張られた状態で保持される。
【0036】
アクチュエータ310は、さらに、複合体膜構造の両側で中心に配置される2つのディスク356及び358を備える。これらのディスクは、さまざまな機能を果たす。ディスク356は、ホット電極膜338の外側に備えられ、バックプレート又はカバー360bにより、フレーム層354bの環状空間すなわちカットアウト内の平面内に保持される。ディスク356は、移動停止部として機能し、膜338がバックプレートに接触しないようにし、また、センサーに対して補助軸受支持部として作用する。ディスク358は、膜348の外側に備えられ、フロントプレート又はカバー360aにより、フレーム層354aの環状空間すなわちカットアウト内の平面内に保持される。カバー360aもカットアウト部を有し、このカットアウト部を介して、ディスク358が、アクチュエータ310の動きを画像センサー306に伝える。ディスク358から画像センサー306にアクチュエータから出力される動きを容易に伝えることができるように、リニア軸受構造/サスペンション部材308を両者の間に配置させる。リニア軸受構造/サスペンション部材308は、複数の衝撃吸収部364を備える平面基板362として形成される。衝撃吸収部364は、たとえば、基板362の端部から伸長するバネタブでもよく、緩衝装置として機能し、アクチュエータ310から出力される動きを最適化する。基板362は、(バネタブ364が導電材料から形成されている場合には)バネタブ364を備えるフレックス回路の形態でもよい。この場合、バネタブ364により、画像センサー306とアクチュエータ310に対する制御電子機器との間に電気接点が形成される。
【0037】
画像センサー306、サスペンション部材308及びアクチュエータ310は、筺体316内に入れ子構造で配置される。筺体316の遠位端側368は陥凹されており、レンズモジュール302が収容される。筺体316は、さらに、近位端側370に、アクチュエータ310の電気接点タブ344及び346及び/又は軸受/サスペンション部材308のバネタブ364を収容する切欠き又は凹部372を備える。
【0038】
4相アクチュエータ310の説明に関連して上述したように、本発明の画像安定化アクチュエータは、所望の位相駆動を可能にする任意の数の活性領域を備えることができる。図10Aないし図10Dに、本発明の光学レンズシステムと共に用いるのに適しており、少なくとも画像を安定化させる3相EAPアクチュエータ380を示す。アクチュエータ380は、3つの電極領域386を有するホットEAP膜384aを備え、各電極領域386は、アクチュエータ380の活性領域全体の約1/3を駆動することができる。接地EAP膜384bは、1つの環状接地電極388を備え、フレーム層382a及び382bにより膜384aと組み合わせた際に、アクチュエータ380の3つの活性領域の各々の接地側を形成する。この3相の設計は、4相の設計と比べて、機械的にも電気的にもより単純な設計であるが、3相アクチュエータは、単独でX軸又はY軸に対して個別の動きができないため、必要な電子制御アルゴリズムは、より複雑になる。
【0039】
製造されるハードウェア部品の多くは、許容可能な公差範囲内の寸法を有し、同じ部品間のわずかな寸法の変動や関連部品間のわずかな寸法の変動は、生産収率に影響を及ぼさない。しかし、光学レンズのような装置では、より高い精度が求められる場合が多い。もっと具体的に説明すると、画像センサーに対するレンズアセンブリの相対的な位置を、「無限遠」位置に(すなわち、「オフ」状態)におけるレンズアセンブリの焦点調節を最適化して、エンドユーザーが使用する際に正確な焦点調節が可能になるように設定することが重要である。したがって、製造工程で無限遠位置のキャリブレーション(較正)を行なうことが望ましい。
【0040】
図15A及び図15Bは、レンズアセンブリの無限遠位置のキャリブレーション(較正)を行なうための、すなわち、画像センサーとレンズアセンブリとの間の距離を調節して無限遠位置での最適な焦点調節を可能にするための、設計形態を例示する。レンズバレルアセンブリ430は、レンズバレル432と、分離可能なフランジ434と、を備える。フランジ434は、内側ネジ部439を備え、レンズバレル432の外側ネジ部437に回転係合する。また、フランジ434は、径方向に伸長するタブ436を備え、図15Cに示すように、システム筺体442内に収容された状態で、タブ436が所定の開口部436から突出する。したがって、レンズバレル432に対するフランジ434の回転位置が固定される。図15Cに示すように、レンズバレル432の上部カバー435の先端部438は、キャリブレーションツール(較正ツール)444の作業端部446が挿入される溝又は窪み440を備える。ツール444は、筺体442内に収容された状態のレンズバレル432に接続可能であり、タブ436と開口部436を介して筺体内で位置固定されているネジ係合されたフランジ434に対していずれかの方向に、レンズバレル432を回転させることができる。このように相対的に回転移動させることにより、レンズバレルアセンブリ430全体を、レンズシステム内で(図示しない)画像センサー及びその他の固定部品に対して、(レンズバレルの回転方向に応じていずれかの方向に)直線的に又は軸方向に移動させることができる。レンズアセンブリ448(図15B参照)と画像センサーとの距離により、システムの無限遠位置が規定される。
【0041】
図16A及び図16Bに、レンズアセンブリのキャリブレーション(較正)に(少なくとも部分的に)用いられる他のレンズバレル構成450を示す。図15Aないし図15Cに示す構成とは、筺体452内に動作可能に収容され、回転方向に固定されたレンズバレルに対して、フランジ456が移動可能な点で異なる。レンズバレルの外壁から径方向に伸長する緩衝部又は突起460によりレンズバレルが固定される。システム筺体452内にレンズバレルが収容されると、緩衝部460は、筺体壁に形成された開口部又は窓458内に挿入され、レンズバレルは回転移動できなくなる。フランジ456の外周には、(図示しない)キャリブレーションツール(較正ツール)と係合する窪み462が形成される。筺体452は窓464を備え、フランジ456の周縁端部が窓464から露出している。キャリブレーションツール(又は可能ならば指)を用いて、フランジ456を必要に応じていずれかの方向に回転することができる。先に説明した構成と同様に、レンズバレルに対するフランジの相対的な移動により、(図示しない)画像センサーに対してレンズアセンブリ全体を直線的に/軸方向に動かすことができる。いずれの構成でも、レンズシステムの最終的な組立時に、レンズアセンブリの無限遠位置のキャリブレーション(較正)を簡便に行なうことができる。
【0042】
図17A及び図17Bに、より単純で薄型構造に設計された本発明のレンズシステムの2つの他の実施例を示す。これらの実施例では、レンズ472(1つのレンズ又は複数のレンズのうち一番遠位端側のレンズ)は、EAPアクチュエータと一体化され、選択的に位置決めされる。
【0043】
図17Aに示すレンズシステム470は、単相アクチュエータであり、内側フレーム部材474と、外側フレーム部材476と、その間で延伸されるEAP膜478と、を備える。レンズ472は、内側フレーム474内に同心円状に配置及び固定され、アクチュエータにより出力された動きが直接レンズ472に伝達される。単相アクチュエータは、内側フレーム474とバックプレート482との間に形成される錐台形状の空間内に設置される小型のコイルバネ480によりレンズの正面側472aに向かう方向に付勢される。バックプレート482は、最大「マクロ」(短焦点)位置で、それ以上の移動を制限するハードストップとして機能する。アクチュエータが「オフ」状態ではレンズ472はマクロ位置にあり、アクチュエータが駆動されると、レンズが矢印488の方向に無限遠位置に向かって移動する。マクロ位置でのみ作動するレンズ位置決め装置(ポジショナー)を用いる場合には、最初のマクロ位置設定により、不要な移動範囲を除外できるため、システムの信頼性が向上する。
【0044】
図17Bに、同様の薄型構造を有する2相レンズシステム510を示す。この例では、EAPアクチュエータは、互いを付勢する2つの層又はダイヤフラムを備える。上側又は後側アクチュエータは、内側フレーム490aと外側フレーム490bとの間に伸長するEAP膜494を備え、一方、下側又は前側アクチュエータは、内側フレーム490aと外側フレーム492bとの間に伸長するEAP膜496を備える。内側フレーム490a及び492aが連結される一方、外側フレーム490b及び492bは、中間筺体部材500により間隔をあけて配置され、それぞれ、中間筺体部材500と上側筺体部材498の間、中間筺体部材500と下側筺体部材502の間に挟まれる。(頂部が平面で切断された薄型形状の)レンズ472は、連結された内側アクチュエータフレーム内で同心円状に配置される。2つのアクチュエータが駆動されると、各々互いに付勢し合い、レンズ472を2相すなわち双方向に移動できる。具体的には、下側アクチュエータが駆動され、上側アクチュエータがオフの場合には、上側アクチュエータによる付勢によって、レンズ472が矢印504の方向に移動する。また、上側アクチュエータが駆動され、下側アクチュエータがオフの場合には、下側アクチュエータによる付勢によって、レンズ472が矢印506の方向に移動する。この構成により、レンズ472は、単相システム470の移動距離の2倍の距離(2X)移動可能になる。このような二重ダイヤフラム構成では、いずれか一方のアクチュエータを不活性にすることにより、すなわち、常時オフ状態にすることにより、単相アクチュエータとして機能させることも可能である。いずれの場合でも、二重ダイヤフラム型アクチュエータは、レンズシステムを非常に薄型の形状にすることが可能である。
【0045】
自動焦点の場合でもズームの場合でも、レンズの動きを可能にする構造部品を追加することによって、レンズ移動/ストロークを増大(及び削減)可能である。このような動きには、1枚のレンズ又はレンズスタックの絶対的な動き、及び/又は、レンズアセンブリ内での複数のレンズ間の相対的な動きが含まれる。また、このような動きを可能にする追加の部品としては、1つ以上のEAPアクチュエータ、機械的リンク機構又はそれに類するもの、あるいは、両方の組み合わせが含まれ、レンズバレル/アセンブリと一体化又は連結されるものでもよい。
【0046】
図18及び図19に、本発明のレンズ移動機構を例示する斜視図を示す。これらの例では、複数のEAPアクチュエータ/トランスデューサーが順次積層され、それぞれ、矢印525及び535で示すように、ストローク出力が増幅される。図示されるように、所望の出力が得られるように、複数のトランスデューサーを所望の構成に接続または連結するようにしてもよい。
【0047】
図18A及び図18Bに示すレンズ移動機構520は、複数の二重錐台型EAPアクチュエータユニット528から構成され、各アクチュエータユニット528は、それぞれの内側フレーム又はキャップ532が連結された2つの凹表面トランスデューサー・ダイヤフラム526を備える。アクチュエータの外側フレーム534は、隣接するアクチュエータの外側フレームに連結又は接続される。一番遠位端側の外側フレーム534aは、レンズ522が内部に配置されたレンズフレーム524に取り付けられる。一番近位端側の外側フレーム534bは、(図示しない)画像センサーモジュールの遠位端側に配置される。
【0048】
図19A及び図19Bは、同様に機能するレンズ移動機構540を示す。この例では、複数のEAPアクチュエータユニット548の各々は、逆の構造を有し、トランスデューサー・ダイヤフラム544は、凹面側を内側に向けて、外側フレーム538を連結する。アクチュエータの内側フレーム536は、隣接するアクチュエータの内側フレームに連結又は接続される。一番遠位端側の内側フレーム536aは、内部に同心円状に配置されるレンズ522を保持する。一番近位端側の内側フレーム536bは、(図示しない)画像センサーモジュールの遠位端側に配置される。
【0049】
いずれの設計においても、アクチュエータユニットの数が増大するほど、ストロークが増加する可能性が高い。さらに、アクチュエータスタック内で1つ以上のアクチュエータユニットをズームに用いて、追加レンズをさまざまな高さのアクチュエータ面と一体化させて、全体としてアフォーカル・レンズアセンブリとして動作させるようにしてもよい。これに加えて、又は、これの代わりに、1つ以上のトランスデューサーユニットを設定して検知を行ない、駆動と対照的に、能動的な(アクティブ)アクチュエータ制御や動作検証を容易にするようにしてもよい。このような操作のいずれにおいても、PIコントローラーやPIDコントローラー等の任意の形態のフィードバック法をシステム内で用いて、非常に高い精度及び/又は確度でアクチュエータの位置制御を行なうようにしてもよい。
【0050】
図20A及び図20Bに、EAP型部又は部品552を機械的レンズ駆動部又は部品554と組み合わせ、EAP型部552を用いて駆動部554を駆動する他のレンズ移動機構550を示す。EAP型部552は、二重錐台型アクチュエータを備え、外側フレーム556a及び556bが下側筺体部558aと558bとの間に保持され、連結されたトランスデューサーの内側フレーム555a及び555bが光軸576に沿って相対的に移動可能である。上述したように、アクチュエータは、光軸576に沿って両方向に能動的に移動可能な2相アクチュエータでもよいし、光軸に沿って上向き/順方向に移動可能な単相アクチュエータでもよい。
【0051】
移動機構550の駆動部554は、リンク対566aと566b及び568aと568bにより相互接続される第1及び第2の駆動板(駆動プレート)又は台560及び564を備える。各駆動プレートは中央開口部を有し、(図示しない)レンズを保持及び支持することにより、アフォーカルレンズ・アセンブリを構成し、焦点軸に沿って移動する際に、上側筺体574内部のレンズ開口部578内の中心に配置される(図示しない)焦点レンズの倍率を調製する。2つのズーム移動プレートを備える構成を図示したが、任意の数のズーム移動プレート及びそれに対応するレンズを用いることができる。
【0052】
リンク対の構成により、第1の駆動プレート560に力が加えられると、折り畳み式ジャッキ型の作用で、光軸に沿って第2の駆動プレート564を動かすことができる。当業者には自明のことであるが、このような折り畳み式ジャッキ型の作用では、第1の駆動プレート560よりも大きな速度で第2の駆動プレート560を移動させることができる。ここで、第1の駆動プレートと第2の駆動プレートとの間の移動比率により入れ子効果が得られる。下側筺体部558aと上側筺体574との間に伸長するリニアガイドロッド572に沿って、また、リニアガイドロッド572により、駆動プレート560及び564はスライド可能に誘導される。アクチュエータ部552が活性化されると、キャップ555aが移動し、駆動プレート560の近位端562に上向きの力が加えられる。これにより第1の駆動プレート560が駆動されて、リンク対を動かし、所定のより大きな移動速度で第2の駆動プレート564を駆動する。図示した例を参照して折り畳み式ジャック型のリンク構造を説明したが、他の種類のリンク構造又は機械的構造を用いて、一方の駆動プレートを他方の駆動プレートよりも比例的に大きな移動速度及び距離で移動させるようにしてもよい。
【0053】
図21に、本発明の他のハイブリッド型(アクチュエータリンク型)レンズ移動機構580の断面図を示す。このレンズ移動機構580では、アクチュエータ部582が、コイルバネ586により光軸588に沿って上向きに付勢される単一のEAPトランスデューサー584を備える。コイルバネ586の代わりに、任意のバネ付勢手段(たとえば、板バネ)を用いることができる。アクチュエータが活性化されると、キャップ590が第1の駆動プレート592に逆らって動き、リンク機構596を駆動し、その結果、光軸588に沿って上向きに第2の駆動プレート594を動かす。
【0054】
図22及び23に、ハイブリッド構造を採用した本発明の2つの他のレンズ移動機構を示す。これらの機構は、いずれも、2種類のアクチュエータ機構を用いて、それぞれのレンズアセンブリ/バレルを「尺取虫」のように漸進的に移動させる。
【0055】
図22A及び図22Bに示すレンズ移動機構600は、2種類の作動、すなわち、「厚みモード」作動と平面内作動、を利用して、レンズアセンブリ/バレル602を尺取虫のように漸進的に移動させる。レンズバレル602は、アフォーカルレンズ・アセンブリを形成してズームを可能にするような(図示しない)1つ以上のレンズを保持する。バレル602は、外側表面から横方向に伸長するブッシング606を備える。ブッシング606は、上側作動部608bと下側作動部608aとの間に伸長するガイドレール604と、摩擦により、かつ、スライド可能に、係合する。移動機構600の作動部は、下側作動部608aと上側作動部608bとを備える。各作動部は、厚みモードアクチュエータEAP膜610と平面アクチュエータEAP膜612とを含むアクチュエータ・スタックを備える。これらのEAP膜は、互いに分離され、粘弾性材料等、望ましくは非常に低い粘度と硬度レベルの可撓性材料層614aないし614cの間に封入されて、アクチュエータ・スタック608aを形成する。図22Aに、アクチュエータ・スタック608aの切断図において電極層パターン610a及び612aを示す。中心穴又は孔616は、スタック608aを通して伸長し、(図示しない)画像センサー/検出器に焦点を合わせる画像を通過させる。
【0056】
作動時には、ガイドレールの後側又は下側端部604aが、ほぼ垂直に、アクチュエータ膜スタック608aに(あるいは、少なくともアクチュエータ層614b及び614cに)係合され、平面アクチュエータEAP膜612が活性化されると、横方向に互いに逆向きに、たとえば、ガイドレール604の軸長に垂直な方向605に、互いに離れるように、レール端部604aが移動する。ガイドレールの前側又は上側端部604bの位置は固定されているため、このような動きにより、ガイドレール604が軸受606に支えられ、レール604上でレンズバレル602の位置が摩擦により固定される。膜612が不活性化されると、レールが、ニュートラル位置すなわち膜スタック608aに対して直角の位置に戻る。次に、厚みモード作動を利用して、ガイドレール604を軸方向607に動かすことにより、ガイドレール603に摩擦により係合されているレンズバレル602を同じ方向に移動させて、レンズアセンブリの焦点距離を調節する。さらに具体的に説明すれば、EAP膜610が活性化されると、膜スタック608aが曲がり、ガイドレール604を軸方向に移動させる。レンズバレル602の動きに応じて、(図示しない)摩擦軸受表面が位置決めされえ、バレルの外側表面に係合する。この摩擦係合力は、レール604上のバレル・ブッシング606により加えられる摩擦係合力よりも大きい。バレル壁に対する軸受表面の摩擦係合力は、ガイドレールに対するブッシングの摩擦係合力より大きいため、厚みモードEAP膜610が不活性化されてガイドレールが休止位置に戻る際に、レンズバレルは前進位置に保持される。上述した平面作動と厚みモード作動の順序を逆にして、レンズアセンブリを軸方向逆向きに移動させるようにしてもよい。
【0057】
あるいは、上側作動部608bを用いて、レール604の相対的な位置又は角度を調節する、及び/又は、軸方向607にレンズバレル602が移動可能な距離を増大させるようにしてもよい。この例では、アクチュエータ608bは、平面作動をして、摩擦によりブッシング606に対してレールを係合させるように、レールの位置を調節するように構成される。具体的には、アクチュエータ608aは、層620aと層620bとの間に挟まれた平面作動EAP膜618を備える。層620a及び層620bは、下側アクチュエータ608aの層614aないし614cと同じ材料で形成されるものでもよい。この複合体構造は、構造を貫通する穴又は孔622を有し、光を、(図示しない)焦点レンズを通って、ズーム又はアフォーカルレンズ・アセンブリ602まで透過させることができる。膜608a及び608bの平面部分を同時に駆動して、互いに平行にガイドレール604を維持することが望ましい。
【0058】
平面作動下側アクチュエータ608aの代わりに、上側アクチュエータ608bを用いて、上述したようにレールを角度変位させるようにしてもよい。あるいは、上側アクチュエータ608bを下側アクチュエータ608aの平面作動部と共に用いて、レールの両端を横方向に移動させるようにしてもよい。このようなタンデム作動を制御して、レールの角度配置を正確に調節するようにしてもよい。あるいは、各アクチュエータの平面に対して直角にレールを維持する(すなわち、レールを互いに平行に維持する)と共に、横方向に(レンズバレル602に向かって、あるいは、レンズバレル602から離れるように)充分に移動させて、ブッシング606に対する摩擦軸受として機能させるようにしてもよい。上側アクチュエータ608bが、上述した厚みモード作動機能を備えるようにして、ガイドレールの軸方向の動きを増幅するようにしてもよい。2本のレールを動かす構成を説明してきたが、本発明は、単一のレールを動かしたり、3本以上のレールを動かしたりするような構成のレンズ移動機構にも適用可能である。
【0059】
図23A及び図23Bに、尺取虫のような漸進的作動を行なう他のレンズ移動機構625を示す。移動機構625は、各々(図示しない)レンズを保持するカットアウト627を有する複数のレンズ段626a、626b、626c及び626dからなるレンズアセンブリを収容する。レンズ段が4層の例を図示したが、当業者には自明のように、レンズ段の数はこれより多くても少なくてもよい。また、レンズ段は、焦点レンズやズームレンズを保持するものでもよいし、あるいは、単に光を透過させるものでもよい。さらに、すべての段を移動可能に構成する必要はなく、機構の筺体や支柱628に固定するようにしてもよい。図示した例では、第1段626aと第4段626dが固定される一方、第2段626bと第3段626cが移動可能である。4段のレンズ段は、最上段のレンズ段626aから最下段のレンズ段626dに固定され、この間に伸長するリニアガイドレール642により、互いに平行に、間隔をあけて保持される。移動可能なレンズ段626b及び626cは、軸受648を介して、ガイドレール642に沿って横方向に移動可能である。
【0060】
移動機構625の作動部は、第1の/上側アクチュエータ・カートリッジ630bと第2の/下側アクチュエータ・カートリッジ630aとを備える。カートリッジ630aの構造を図24Aに示す。カートリッジ630aは、2つのアクチュエータ、すなわち、互いに積層された単相リニア・アクチュエータ632と2相平面アクチュエータ634と、を備える。各アクチュエータは、内側部材638aと外側部材638bとの間に伸長するEAP膜を備え、内側部材638aは互いに連結され、外側部材638bはその間に配置されるスペーサー640にそれぞれ接続される。図示した例では、各平面アクチュエータ634のEAP膜は、少なくとも2つの別々に活性化可能な部分636a及び636bに分割され、2相(又はそれ以上の多相)作動を可能にする。この例では、各リニアアクチュエータ632は、全体的に活性化可能なモノリシックなEAP膜636cを備える。2つの単相リニアアクチュエータ632(上側カートリッジと下側カートリッジから1つずつ)が、協働して2相リニアアクチュエータを形成し、アクチュエータを互いに引っ張って保持するプッシュロッド644により、上側リニアアクチュエータにより下側リニアアクチュエータが付勢される、あるいは、逆に、下側リニアアクチュエータにより上側リニアアクチュエータが付勢される。この結果、対応するリニアアクチュエータ632が不活性な場合、各平面アクチュエータ634には、面外の力がかからない。両方のアクチュエータ632及び634の内側部材638a(アクチュエータ出力部材とも称する)の出力を制御して、それぞれ矢印640a及び640bで示される軸方向の動き及び/又は平面の動きが所望の作動サイクルまたは順序で生じるようにしてもよい。上側カートリッジ630bも同様に構成されるが、下側カートリッジ630aに対向するように配置されるため、カートリッジの凹面側が外側に向く。
【0061】
プッシュロッド644の形態のリンク部が、アクチュエータ・カートリッジ630a及び630bの内側出力部材638a間に伸長し、各レンズ段で軸方向に並んだ孔内をスライド可能に貫通する。クラッチ又は遮断機構646a及び646bが、移動可能なレンズ段626b及び626c内の孔に隣接して、互いに反対側に備えられる。クラッチ機構646a及び646bは、プッシュロッド644と選択的に係合可能であり、それぞれのレンズ段の軸方向の位置を固定する。クラッチ機構646a及び646bの構造は、任意の適当な構造であればよく、たとえば、これに限定されるものではないが、摩擦軸受面やブッシュロッド644上に形成された対応する溝と係合し協働する歯でもよい。
【0062】
作動時には、2つのアクチュエータ・カートリッジ630a及び630bのリニアアクチュエータ632及び平面アクチュエータ634を選択的に駆動することにより、プッシュロッド644が周期的に移動して、レンズ段626b及び626cを漸進的に動かす。「尺取虫」のように漸進的に動く様子の概要を図24Bないし図24Fに示す。図24Bでは、アクチュエータ632及び634が療法との不活性であり、ガイドレール644は、ニュートラル位置にあり、レンズ段626b及びレンズ段636cのいずれにも係合していない。レンズ段626bを順方向に移動させる場合には、図24Cに示すように、各平面アクチュエータ634(すなわち、図23A及び図23Bの上端及び下端)のEAP膜の第1の部分636aを活性化させて、プッシュロッド644をニュートラル位置から横方向に動かし、(この図には示していない)クラッチ機構646aにかみ合わせる。次に、図24Dに示すように、各平面アクチュエータ634の第1の部分636aを活性化した状態に保つと共に、リニアアクチュエータ632を活性化させて、出力部材638aを面外に移動させる。この面外の動きによりプッシュロッド644が押されて持ち上がり、レンズ段626bが順方向に移動する。所望の軸方向の位置まで移動後、図24Eに示すように、各平面アクチュエータ634の第1のEAP部分636aを不活性化することにより、プッシュロッド644がクラッチ機構646aから外れる。最後に、図24Fに示すように、各リニアアクチュエータ632を不活性化して、プッシュロッド644をニュートラル位置に戻す。レンズ段626cを移動させる場合には、上記の工程が繰り返されるが、第1のEAP部分636aの代わりに、平面アクチュエータ634の第2のEAP部分636bを活性化させる。別々に活性化可能な相、すなわち、EAP膜部分を、追加のクラッチ機構と共に、各平面アクチュエータ634に加えて、レンズ移動機構により、2つのレンズ段が、あるいは、場合によっては、さらに多くのレンズ段が、並行して動くようにしてもよい。
【0063】
図25Aないし図25Cに、焦点機能とズーム機能の両方を備える他のレンズ移動システム650を示す。システム650は、2つの一体化した単相バネ付勢アクチュエータを備え、一方は単一錐台ダイヤフラム構成652であり、他方は、二重錐台ダイヤフラム構成654である。アクチュエータ652は、焦点レンズアセンブリ658を収容するレンズバレル構造656を備える。バレル構造662内に収容されるアフォーカルレンズアセンブリ660が、システムの焦点軸に沿って、レンズアセンブリ658の近位端側に配置される。2つのレンズバレル656及び662は、コイルバネ664により互いに離れるように付勢される。2つのアクチュエータは、さらに、径方向に伸長する横構造666により結合されている。アクチュエータ652及び654の外側フレーム又は出力部材668a及び668bが、それぞれ、横構造666に連結される。EAP膜670が、外側フレーム668aと、フォーカス・アクチュエータ652のレンズバレル656の遠位端に備えられた対応する内側フレーム又は出力部材672との間に延伸されている。第1のEAP膜676aが、外側フレーム668bとレンズバレル662の近位端に備えられた愛王する内側フレーム又は出力部材674との間に延伸されている。また、第2のEAP膜676bが、内側フレーム674と接地された外側フレーム又は出力部材668cとの間に延伸され、ズーム・アクチュエータ654の二重ダイヤフラム構造を形成している。第2のコイルバネ678により、接地された外側フレーム668cから離れるように、連結された外側フレーム668a及び668bが付勢されている。
【0064】
図25Aに示すように、システムアクチュエータのすべての相が不活性な状態では、焦点は「無限遠」位置にある。システムの焦点合わせを行なう場合には、図25Bに示すように、フォーカス・アクチュエータ652のEAP膜670を活性化させる。レンズバレル656に与えられた予圧により、レンズバレル656が矢印680の方向に前進し、焦点距離を短くする。アクチュエータ652に印可される電圧量を調節することにより、レンズバレル656による移動量を制御するようにしてもよい。ズームも同様に行われるが、この場合には、図25Cに示すように、アクチュエータ654が活性化され、EAP膜676a及び676bの両方に電圧が印可されて、レンズバレル662を矢印682の方向に前進させる。焦点合わせの場合と同様に、アクチュエータ654に印可される電圧量を調節することにより、ズーム移動範囲を制御するようにしてもよい。移動量を大きくするために、アクチュエータ段を追加して直列配置するようにしてもよい。漸進的なズーム移動をする場合には、アクチュエータ654を2相で作動させるようにしてもよく、互いに独立に2つのダイヤフラムを活性化するようにしてもよい。フォーカス・レンズアセンブリ(図25B)とズーム・レンズアセンブリ(図25C)とを独立の動作として図示したが、特定のレンズ用途に応じて、所望の組み合わせの焦点調節及びズームがなされるように、両者を同時に操作するようにしてもよいし、並行して制御するようにしてもよい。
【0065】
図26A及び図26Bに、レンズ画像安定化に適した他の移動機構690を示す。アクチュエータ機構は、出力フレーム取付具692と中心出力ディスク又は部材694との間に延伸される多相EAP膜696を備える。出力ディスク694は、ディスクを平面外に付勢するピボット698に取り付けられる。休止状態では、図26Aに示すように、多相膜のすべての相又は部分が不活性であり、出力ディスク694は横になっている。膜696aの(任意の数の別々に活性化可能な部分のうち)所定の一部又は複数部分が活性化されると、図26Bに示すように、付勢された膜が活性化領域696aで弛緩し、出力部材694にかかる力が非対称になり、出力部材694を傾斜させる。システムの振動に応じて、所望の活性化可能な部分を選択的に活性化させ、(図示しないが、中心ディスク又は出力部材694上に備えられた)画像センサー又はミラーの3次元移動を可能にするようにしてもよい。
【0066】
図26A及び図26Bに示す移動機構をさらに変更して、画像センサーによるz方向の望ましくない動きを補償するようにしてもよい。このような移動機構700を図27Aないし図27Cに例示する。この例では、アクチュエータの出力部材704を回動可能に接地する代わりに、バネ付勢機構708が用いられている。この例でも、多相膜706が用いられ、図27Bに示すように、膜の1つの相706a又は全部ではない複数の相が活性化されると、アクチュエータの出力ディスク694は、非対称に傾斜し、軸方向に移動する。すべてのフィルム部分706が同時に活性化される場合、あるいは、対称的な応答が得られるような一部が活性化される場合には、出力部材704は、図2Cに示すように、軸方向にのみ直線的に移動する。すべての相に印可される電圧を調節することにより、あるいは、同時に活性化される膜部分の相対数を選択することにより、このような直線的な移動量を制御するようにしてもよい。
【0067】
本発明は、さらに、本明細書で説明するように、レンズ口径を閉じる(シャッター機能)、及び/又は、光学素子又は部品を通過する光の量を制御する(絞り機能)ことが必要又は望ましい撮像/光学システムに用いられるシャッター/絞り(アパーチャ)機構を提供する。図28に、本発明のシャッター/絞り(アパーチャ)システム710を例示する。シャッター/絞りシステム710は、EAPアクチュエータ712を用いて、複数の協働するプレート又は羽根(ブレード)724を駆動し、撮像経路を通過する光を調節する。アクチュエータ712は、外側フレーム部材714と内側フレーム部材716との間に伸長する2相EAP膜718a及び718bを備える平面構造を有する。内側フレーム部材716は、光を通過させる環状開口部715を備える。2相の膜部分718a及び718bを備える構成が実施例として図示されているが、2相に限らず、多相の膜を用いることができる。シャッター/絞りシステムの機械部品/可動部品は、上板720a及び底板720bを有するカートリッジ723に収容され、上板及び底板720a及び720bは、それぞれ、光を通過させる開口部725a及び725bを備える。
【0068】
絞り羽根(アパーチャ・ブレード)724は、湾曲した又はアーチ状に曲がった涙滴形であり、重なった平面配列で環状に配置される。ブレード724は、上向きに伸長するカムピン736によって、底板720に回動可能に取り付けられる。カムピン736は、それぞれ対応するブレード724の幅広端部に形成された穴にはめ込まれ、ピボット又は支点を形成し、これを中心としてブレード724を回動させる。各ブレード724のテーパ端部は同じ方向を向き、その凹面端部によりレンズ口径が形成される。ブレード724を選択的に回動させることにより、レンズ口径の開口径を変えることができる。ブレード724は、各々、カム従動子スロット730を備え、(図28Aに示すように)他のカムピン群732が、ブレード724の反対側に配置される回転環(カラー)722の底面側からカム従動子スロット730を通って伸長する。カム従動子スロット730は湾曲して、所望のアーチ形状の移動経路を形成し、カラー722の回転に伴い、カムピン732がこのアーチ状の移動経路を移動し、支点を中心に湾曲したブレード724を回動させる。カラー722の上面側すなわちアクチュエータに対向する側から伸長するピン726は、カートリッジの上板720aの開口部725aを通って突出し、アクチュエータ712の内側フレーム部材716に形成された穴717にはめ込まれる。アクチュエータの2相の膜718を選択的に活性化させることにより、アクチュエータの内側フレーム716が平面内で横向きに反対方向に移動する。カラーピン726のプル(引く)/プッシュ(押す)を介して伝達されるアクチュエータの出力がカラー727を回転させ、その結果、各アパーチャ・ブレード724のカムスロット730内でカムピン732を回転させる。これにより、ブレードが回動され、ブレードのテーパ端部が移動して、互いに近づいたり、又は、互いに離れたりすることにより、図29Bのカートリッジ723の上面図に示すように、可変絞り開口が形成される。絞り開口径は、全開状態(図29A)と全閉状態(図29C)との間で可変であり、レンズシャッターとして機能する。
【0069】
図36Aないし図36Dに本発明の他の絞り(アパーチャ)/シャッター機構840を示す。機構840は平面基板842を備え、平面基板842上には、アパーチャ(絞り)/シャッター・ブレード(羽根)844が、その一端で回転軸845に取り付けられている。ブレード844の回動により、ブレード844の自由端が、光を通過させる画像アパーチャ(開口部)854上で、平面内を前後に動く。ブレード844の内側周縁部に形成された切欠き856に移動可能に収容される自由端を有するレバーアーム846の回転軸を中心とした動きに応じて、ブレード844が動く。レバーアーム846は、回転軸852aを中心として基板842に回動可能に取り付けられる。レバーアーム846と一体的に連結された、又は、レバーアーム846と共にモノリシック構造として形成された屈曲部848が、第1の回転軸852aと第2の回転軸852bの間に伸長する。タブ850が、屈曲部848の中心位置から開口部(アパーチャ)854に向かって内側に伸長する。ブレード、レバーアーム及び屈曲部を用いて、開口部(アパーチャ)854を通常開状態としてもよいし、通常閉状態としてもよい。
【0070】
図36Cに示すように、タブ850が矢印860aの方向にアパーチャ(開口部)850に向かって移動すると、同じ方向に屈曲部848が撓む。この作用により、矢印860bの方向にレバーアーム846が回動して、レバーアーム846の自由端が回転軸845に向かって切欠き856内を移動する。この結果、ブレード844が矢印860cの方向に回動し、開口部(アパーチャ)854を覆う。図36Dに示すように、機構840の可動部品上に取り付けられた又は積層されたアクチュエータ856が活性化されることにより、このように駆動される。図28に図示したアクチュエータ710と同様に、アクチュエータ856は、それぞれ外側フレーム部材858a及び内側フレーム部材858b間に伸長するEAP膜860a及び860bの2相構造を備える。タブ850の自由端は、内側フレーム部材858bに機械的に連結される。図36Dに示すようなシャッター機構840に対するアクチュエータの配置に基づき、EAP膜860aの活性化によってタブ850が外側に押され、一方、EAP膜860bの活性化によって多雨850が内側に引っ張られる。
【0071】
図示するように、機構840は、主にシャッターとして機能し、アパーチャ(開口部)854が開いたり閉じたりする。ブレード844に形成した(図36Aに点線で示す)穴862は、ブレード844が閉位置にある場合にアパーチャ864と一直線上に並び、アパーチャ854よりも小さな直径を有する。この構成により、2つの異なる設定で絞り(アパーチャ)機構が機能する。一方の設定は、ブレードが開位置で、より多くの光が開口部(アパーチャ)854を通過してレンズモジュールに到達する。もう一方の設定は、ブレードが開口部(アパーチャ)854を閉じ、光は小さな穴862を通る。
【0072】
「ユニモルフ型」膜構造又は複合体を採用したアクチュエータを用いて、レンズ又はレンズスタックに動きを伝達するようなレンズ移動機構でもよい。図30A及び図30Bにこのような膜構造740の一部の断面を示す。膜構造はエラストマー誘電体膜742を備え、エラストマー誘電体膜742は、誘電体膜742よりも硬い、すなわち、誘電体膜742よりも弾性係数が高い、膜支持層又は基板744に接合される。これらの層は、誘電体膜742の露出面に形成される柔軟電極746と硬い膜支持層744の内側面又は露出面のいずれかに形成される硬い電極748との間に挟まれる。したがって、複合体構造740が「付勢」されて、1つの方向にのみ偏向する。具体的に説明すると、膜構造740が活性化されると、図30Bに示すように、誘電体膜742が圧縮されて横方向に移動するため、基板744から離れる方向に弓形に曲がる又はアーチ状に曲がる。国際公開公報WO98/35529に記述された方法等、任意の周知の方法で、構造を付勢することができる。このようなユニモルフ型EAPアクチュエータを採用した本発明のレンズ移動機構の例をいくつか説明する。
【0073】
図31A及び図31Bに示すレンズ移動システム750は、ユニモルフ型EAP膜構造752を利用するアクチュエータ機構に連結されたレンズバレルまたはアセンブリ754を備える。膜構造752の選択された領域又は長さが、レンズバレル754と固定基板部材756との間に伸長する。膜構造は、スカートのようにレンズバレルを囲むモノリシック形状に構成可能であり、単相構造でもよいし、多相動作を可能にするように複数の指定可能な領域を有する構造でもよい。あるいは、アクチュエータは、まとめて又は別個に指定可能な複数の別々の膜セグメントから構成されるものでもよい。いずれの場合も、膜が外側に付勢されるように、硬い膜部分又は層(すなわち、基板層)を内側に向ける。図31Bに示すように、膜は、活性化されると、付勢方向に広がり、固定部分から離れるように、すなわち、基板部材756から離れるように、伸長して、レンズバレル754を矢印758の方向に移動させる。レンズシステムの自動焦点及び/又はズームを可能にする所望の移動量が得られるように、膜複合体のさまざまなパラメータ、たとえば、膜の面積/長さ、EAP層と基板層との間の弾性差等、を調節するようにしてもよい。
【0074】
図32A及び図32Bに示すレンズ移動機構760も、ユニモルフ型膜アクチュエータを利用している。システム760は、ガイドレール766上に載置されたレンズカートリッジ764に取り付けられたレンズバレル又はアセンブリ762を備える。アクチュエータ770は、直列に結合される折り畳み式又は積層式ユニモルフ型膜シートから構成されている。図示される実施例では、各ユニモルフ型シートは、柔軟面側772aがレンズバレルに対向し、硬い面側772bがレンズバレルと反対方向を向くように構成されているが、この逆の構成でもよい。アクチュエータシートがすべて不活性な場合には、図32Aに示すように、スタックは最も圧縮された状態となり、レンズバレル762は最も近位側の位置にある。焦点レンズアセンブリの場合、この位置で、焦点距離が最も長くなる。アフォーカルレンズ・アセンブリの場合、ズームレンズがマクロ位置になる。1つ以上のシート772が活性化されると、同時に活性化された場合でも別々に活性化された場合でも、矢印765の方向にレンズバレル782が移動して、レンズシステムの焦点及び/又は倍率を調節することができる。
【0075】
所定の環境条件下では、たとえば、高湿度で極端な温度の条件下では、EAPアクチュエータの性能に影響が出る可能性がある。本発明は、EAPアクチュエータ自体に特徴的な構造を組み込むことにより、あるいは、システムが必要とする空間容量を増大させることなくシステム内に特徴的な構造を形成することにより、このような環境条件に対処することができる。EAPアクチュエータが加熱素子を備え、必用に応じて熱を発生させて、EAPアクチュエータ及び/又はEAPアクチュエータを直接取り巻く周辺環境の湿度及び/又は温度を維持又は制御するようにしてもよい。加熱素子を抵抗として、導体をEAP膜内に組み込む、又はEAP膜に隣接させるようにしてもよい。導体を通る電圧は、アクチュエータの活性化に必要な電圧よりも低い。レンズ移動及び/又は画像安定化に用いたEAPアクチュエータと同様のEAPアクチュエータを用いて、システムの環境パラメータを制御し、システムに用いられる部品点数を削減したり、全体の質量や重量を削減するようにしてもよい。
【0076】
図33Aに、本発明のレンズ/光学システムで利用可能な、直列電極配置で加熱機能を有するEAPアクチュエータ780を例示する。接地電極パターン782を有するアクチュエータの接地側を図示し、アクチュエータ780の反対側の高電圧電極パターン784を点線で示す。ラグ(つまみ)786a及び786bは、それぞれ、アクチュエータを作動させるための(図示しない)システム電源からの接地端子及び高電圧入力端子と電気的接続を形成する。第3のラグ又は接続部786cは、電源からの低電圧入力端子に接続して、直列抵抗ヒーター電流路を形成する。矢印788は、抵抗加熱素子として接地電極782全体を用いる電極構造により形成される環状電流路を示す。
【0077】
図33Bに、並列電極配置で加熱機能を有する他のEAPアクチュエータ790を例示する。接地電極パターン792を有するアクチュエータの接地側を図示し、アクチュエータ790の反対側の高電圧電極パターン784を点線で示す。ラグ(つまみ)796a及び796bは、それぞれ、アクチュエータを作動させるための(図示しない)システム電源からの接地端子及び高電圧入力端子と電気的接続を形成する。パラレルバス(並列バス)バー798a及び798bが、アクチュエータ790の接地側に備えられ、それぞれ、(図示しない)電源からの接地端子及び低電圧入力端子に接続される。矢印800は、並列電極配置により形成される放射状の電流路を示す。電極を直列配置とは対照的に並列配置にすることにより、低電圧を用いることができ、膜を加熱するのに必要な電流を流すことができる。
【0078】
前述したように、EAPアクチュエータに隣接して配置した抵抗加熱素子を用いて、システムの湿度及び温度の制御を行なうようにしてもよい。図34に、EAP膜812を備えるEAPアクチュエータを用いるレンズ移動機構810を示す。上部筺体/カバー813とEAP膜812との間の隙間816は、加熱素子814を配置するのに十分な空間である。望ましくは、加熱素子は、EAP膜の形状及び寸法と一致する形状及び寸法を有し、図34Aに図示した例では錐台形状を有し、システムに必要な間隔を最小限に抑えて、加熱素子814とEAP膜812との間の熱伝達を最大にすることが望ましい。加熱素子は、絶縁基板815b上に設置された抵抗配線815aと電気接点818とを備え、加熱素子をシステムの電源及び検知電子機器と電気的に接続する。
【0079】
本発明のレンズ移動システムが、レンズ又はレンズアセンブリの位置を検知するセンサーを備え、レンズ移動の閉ループ制御を行なうように構成してもよい。図35に、図7Aに示すレンズ移動システムと同様の構成のレンズ移動システム820に位置検知機構を組み込んだ実施例を示す。検知機構は、円筒形形状で入れ子構造の電極対を備える。一方の電極822a、たとえば、接地側電極は、レンズバレル824の外側を囲むように配置される。接地電極822aは、アクチュエータ付勢バネ830を介して、アース線830aと電気的に接続される。他方の電極822b、たとえば、活性又は電源/検知電極822bは、筺体828の後端部から上向きに伸長するブッシング壁826の内側表面を取り囲み、アクチュエータ付勢バネ830とレンズバレル824の外表面との間に配置される。電極822bは、電源/検知線830bと電気的に接続される。活性電極822bに固着された絶縁体を2つの電極間に規定される隙間に備え、容量性構造を形成するようにしてもよい。図示されるレンズバレルの位置で、電極を通るキャパシタンスが最大になる。レンズバレル824が遠位方向に移動するにつれて、電極が重なる表面積が減少し、電極間の容量電荷が減少する。このキャパシタンスの変化をシステムの(図示しない)制御電子機器にフィードバックして、レンズ位置の閉ループ制御を行なうことができる。
【0080】
EAPアクチュエータを自動焦点、ズーム、画像安定化及び/又はシャッター制御に用いることにより、本発明の光学レンズシステムが必要とする空間容量や必要電力を最小限に抑えることができる。したがって、携帯電話用カメラ等の超小型の光学システムへの適用に最適である。
【0081】
本発明を適用して、EAPアクチュエータ又はEAP膜(又はEAP膜層の組み合わせ)を用いて、レンズ又はレンズの組み合わせを動かし、ウエハレベル光学システム内で光学路を変化させるようにしてもよい。形状の小型化、解像度の向上及びコストパフォーマンスを考えて、カメラ関連技術にウエハレベル光学を適用する場合がある。このようなウエハレベル光学システムは、通常、カメラ付携帯電話やゲーム用システム、コンピュータ等の携帯電子機器で用いられる。このようなシステムでは、集積回路の組み立てと同様に、ウエハレベル光学用の光学部品をウエハ上で組み立てる。図37Aないし図37Eに代表的な構成例を示す。ウエハレベルカメラは、画像センサー315とレンズ素子314とを備える単純な構成である。通常200mm又は300mmの工程で製造される(任意の大きさのウエハレベル光学システムが本発明の要旨の範囲内である)CMOS画像センサーウエハ及び(通常、半導体処理や紫外線反復照射等で形成される)光学ウエハを搭載し、得られたウエハスタックを多数の個別カメラモジュールに切断する。カメラ部品全体をウエハレベルで配列させて組み立てた後、分割して、個々のカメラモジュールを形成するようにしてもよい。あるいは、組み立て前に、画像センサーウエハ及び光学ウエハを切断するようにしてもよい。個々の画像センサーやレンズ素子を接合して、個々のカメラモジュールを形成するようにしてもよい。標準的な半導体製造技術を用いて、ウエハレベルで、光学素子を備える完全なウエハカメラを製造及びパッケージ化するようにしてもよい。
【0082】
家庭用電化製品の光学システムでは、カメラモジュールの高さを大幅に削減することが大きな利点となる。したがって、EAP膜325又はEAP膜層325の組み合わせを用いることにより、従来のレンズ調節システムで通常用いられる比較的大型で邪魔なモーターを必要とすることなく、光路軸に対するカメラレンズの直接操作や再配置が可能になる。
【0083】
第1の例では、第1のレンズを機械接地(メカニカル・グラウンド)に固定する一方で、第2のレンズを、1つ以上のEAP膜を用いて、機械接地に関する軸(光路により規定される)に対して自由に移動させることができる。EAP膜を駆動することによって、レンズをプラス方向、マイナス方向又はその両方に移動させることができる。
【0084】
他の例では、EAP膜を1つ以上のレンズ素子に直接付着させるようにしてもよい。以下に限定されるものではないが、スクリーン印刷、接着、ロール・ツー・ロール法等、任意のさまざまな周知の方法で、EAP膜をレンズ素子又はモジュールに貼り付け可能である。
【0085】
また別の例では、EAP膜を、レバー又は他の伝達手段に係合させて、レンズを動かし、ウエハレベルカメラの光路を変化させるようにしてもよい。さらに、EAP膜を、直接、レンズ素子及びレバー又は他の伝達手段に取り付けて、要求通りに光路を調節するようにしてもよい。
【0086】
ウエハレベル光学システムにおけるEAP膜をさまざまなアプリケーション・ソフトウェアと組み合わせて、画像の後処理を行なうようにしてもよい。
【0087】
EAP膜を、図37Aに示すように、単一チャンネルウエハレベルカメラ(単一光路)で用いるようにしてもよいし、さまざまなチャンネルから1つ以上の画像を生成する多重カメラチャンネル(フュージョンカメラ)を用いるカメラシステムで用いるようにしてもよい。フュージョンカメラは、(図37Cに示すように)センサー上に複数の小領域を備える単一のCMOS/CCD画像センサーから構成することもできるし、(図37Bに示すように)別個のCMOS/CCD画像センサーの組み合わせとして形成することもできる。
【0088】
製造時に、個々のレンズの外側環状部又はフュージョンカメラで用いられるような平面レンズアレイ全体の周縁部にEAP膜を貼り付けるようにしてもよい。さらに、EAP膜を用いて、フュージョンカメラで用いられるチャンネル・サブセットを動かすようにしてもよい。この場合、一部のチャンネルの焦点距離を可変にすると共に、EAP膜に連結されない他のチャンネルを固定焦点距離とする。いずれの場合でも、バネ又は他の付勢機構/構造をEAPと共に用いて、レンズ素子を動かすことができる。
【0089】
ウエハレベル光学システムにEAP材料を用いることにより、光学システムをモノリシックな構造とすることができる。この場合、ウエハを製造する際に、ウエハ上に直接レンズ及びアクチュエータを蒸着させる、形成する、又は積層するようにして、ウエハ光学システムを構築するようにしてもよい。また、EPAMを用いる場合には、レンズ全体又はレンズの一部をEPAM材料から形成可能である。たとえば、EPAMと接触する電極を透明電極(たとえば、導電性ポリマーやCambrios社の銀ナノワイヤ材料)としてもよい。電極は、選択的にEPAMを変形して、in situ(その場)でレンズを形成することができる。
【0090】
EAP膜325を用いることにより、1つ以上のレンズの操作が可能になるだけではない。単一チャンネル構成では、EAP膜は、センサーに対して1つ又は複数のレンズを動かすことができる。さらに、(複数のCMOSセンサーを組み合わせる場合でも、あるいは、複数のチャンネルに分割された単一のCMOSセンサーを用いる場合でも)複数の個別のレンズを用いる多重チャンネル構成では、EAP膜を用いることにより、任意の数のレンズ又は任意の数のレンズ・サブセットを独立に制御することが可能になる。たとえば、図37C及び図37Dに示すように、別々のチャンネルに接続された各レンズを独立に操作することもできるし、各々所定のチャンネル(たとえば、赤(red)、緑(green)、青(blue)、赤外(IR)又はその組み合わせ等)に接続されたレンズサブセットをEAPにより操作することも可能である。
【0091】
また別の例で、EPAMによりハイブリッド型のウエハ光学システムも可能になる。このような場合、ハイブリッド構造は、不透明電極又は半透明電極を用いるものでもよい。すなわち、環状の電極材料を活性化することにより、中心の不活性領域を変形させて、焦点距離を変化させ、レンズを変化又は生成させる。このような構成は、魚眼レンズ構成に適している。
【0092】
リング型のEPAMアクチュエータを用いることにより、複合レンズを備え、各レンズとガスケット等のアパーチャ(開口部)又はフォーム(発砲体)等の圧縮性材料との間に間隔をあけた積層構造が可能になる。さらに別の例では、標準的なシート状の成形レンズを積層して複合レンズを形成し、EPAMを用いて、レンズ間の間隔を変えるようにしてもよい。いずれの場合も、成形レンズの代わりに、どのようなレンズ製造技術を用いることもできる。たとえば、レンズを、エッチング、鋳造、フォトリソグラフィー、又は他の任意のレンズ及びレンズアレイ製造方法で製造するようにしてもよい。
【0093】
本発明の光学システム、装置、部品及び素子に関する方法にも本発明を適用可能である。このような方法には、たとえば、レンズの焦点を選択的に画像上に合わせる方法、レンズアセンブリを用いて画像を選択的に拡大する方法、及び/又は、選択的に画像センサーを動かして、レンズ又はレンズアセンブリによる望ましくない振動を補償する方法が含まれる。また、エンドユーザーによる設定等を必要とする、本発明を適用した好適な装置又はシステムを提供する方法でもよい。すなわち、(レンズやアクチュエータ等を)「提供する」と、エンドユーザーは、これを取得し、利用可能にし、準備をし、設置し、セットアップを行ない、起動し、電源を入れる、又は、その他、装置の要件を満たす操作を行なう必要がある。さらに、本発明の方法は、上述した装置の使用に関する機械的な動作や電気的な動作の各々に関するものでもよい。したがって、上述した装置の使用に関する手順も本発明の一部を構成する。さらに、本発明の方法を可能にする電気的なハードウェア及び/又はソフトウェア制御及び電力供給も本発明の一部を構成する。
【0094】
本発明の別の態様は、上述した装置を組み合わせたキットであり、パッケージ化した組み合わせとして提供するようにしてもよいし、使用説明書に従って使用時に技術者が組み立てるようにしてもよい。キットは、本発明に従う任意の数の光学システムを備えるものでもよい。また、キットは、光学システムと共に用いられる他のさまざまな部品、たとえば、機械的接続装置、電気的コネクタ、電源等、を備えるものでもよい。本発明のキットは、さらに、装置やアセンブリを用いるための説明書を備えるものでもよい。このような説明書は、紙やプラスチック等の基板に印刷されるものでもよい。したがって、説明書は、キットや部品の容器の(すなわち、パッケージングや包装に関する)ラベル等、添付文書としてキットに含まれるものでもよい。あるいは、説明書を、CD−ROMやディスケット等、適当なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶させた電子記憶データファイルとして提供するようにしてもよい。あるいは、実際の説明書をキットに入れるのではなく、インターネット等を介してリモートソースから説明書を入手するための手段を提供するようにしてもよい。この場合、説明書を見ることができる、及び/又は、説明書をダウンロードできるウエブアドレスをキットが備えるようにしてもよい。さらに、説明書の場合と同様に、説明書を入手するための手段を適当な媒体に記録するようにしてもよい。
【0095】
当業者に自明なように、他のさまざまな材料や構成を本発明に適用することができる。また、上述した様々な一般的あるいは特定の付加的な構成は、本発明の方法にも適用可能である。必要に応じて様々な特徴を備えるいくつかの実施例を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、さまざまに変形及び変更が可能である。(本明細書中で説明したものも、また、説明を簡潔にするために本明細書中で説明しなかったものも含めて)さまざまな等価の形態も、本発明の要旨の範囲内である。また、図示した任意の数の個々の部品やサブアセンブリを、設計上、一体化して形成するようにしてもよい。このような変更等も、実装性を考慮した設計原理により行われるものである。
【0096】
また、上述した本発明のさまざまな実施形態や実施例における特徴は、個別に実現されるものでも、あるいは、任意の1つ以上の他の特徴と組み合わせて実現されるものでもよい。「単数」で説明した構成要素は、「複数」の構成要素でもよい。具体的に説明すると、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲において、「1つの」や「前記」等、単数で説明した構成要素は、特に断らない限りは、複数の構成要素としてもよい。すなわち、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲において、これらの冠詞は「少なくとも1つ」の意味で用いられている。請求項が、他の構成要素を除外するように書かれている場合もある。請求項の構成要素の説明に関して「単独で」や「のみ」等の排他的な表現が用いられたり、「否定的な」限定が用いられる場合もある。このような排他的な表現を用いることなく、請求項内で「備える」「有する」等の表現が用いられる場合には、一定数の構成要素が請求項中に列挙されているか否かにかかわらず、任意の他の構成要素を含有することを何ら妨げるものではない。そうでなければ、特徴を追加することにより、請求項中に記載されている構成要素の特質が転換される、と考えることもできる。特に明記しない限り、本明細書中で用いられるすべての技術的及び科学的用語は、請求項の有効性を維持しつつ、一般的に理解されている広い意味で用いられるものである。
【0097】
本発明の範囲は、上述したいかなる実施例や形態に限定されるものではなく、以下の本発明の範囲により限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハレンズシステムであって、
第1のウエハ上に組み立てられた画像センサーと、
焦点軸に沿って配置され、前記第1のウエハに接続されている、少なくとも1つのレンズを備えるレンズユニットと、
前記レンズユニットに接続され、活性化により前記焦点軸に対して前記レンズユニットを移動させる、少なくとも1つの電気活性高分子膜と、を備えるウエハレンズシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハレンズシステムはさらに、
前記レンズユニットと前記電気活性高分子膜との間に接続されるレバー部材を備え、
前記電気活性高分子膜の活性化により前記レバー部材が駆動されて、前記レンズユニットが移動される、ウエハレンズシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図28】
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【図28A】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【図36D】
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【図37A】
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【図37B】
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【図37C】
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【図37D】
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【図37E】
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【公表番号】特表2012−521566(P2012−521566A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500975(P2012−500975)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027871
【国際公開番号】WO2010/108041
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511176012)バイヤー・マテリアルサイエンス・アーゲー (7)
【氏名又は名称原語表記】BAYER MATERIALSCIENCE AG
【Fターム(参考)】