説明

ウエーハ薬液回収装置

【課題】ウエーハアライナー機構の構成部品がウエーハ表面側に設置されることによって起こるクリーンエア気流の乱れによる処理室内からの汚染、もしくはウエーハライナー機構の構成部品そのものからの汚染による、ウエーハの二次汚染の発生を抑えるウエーハ薬液回収装置を提供する。
【解決手段】マニュアル操作によりウエーハ回転台6を回転させ、ウエーハ回転台上のウエーハ10のノッチ10aを目視で目安棒8に位置合わせをして、ウエーハの原点位置を設定する。このウエーハの原点位置に基づいて設定したウエーハ表面の走査開始位置から走査終了位置の回収領域で走査液回収アーム16および走査液回収アーム16の先端に設置した走査液回収冶具16aを動作させることによって、回収領域のウエーハ表面に薬液を接触させた状態でウエーハ回転台6を回転させて不純物を含む薬液を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ(以下ウエーハと称す)表面の酸化膜又は窒化膜中に存在する不純物による汚染度合いを検査するために、ウエーハ表面の特定部位に与えた薬液を回収するウエーハ薬液回収装置に関し、特に、処理室内のクリーンエア気流を乱すことなく、およびウエーハ上面側近くに部品を配置することなく、目視によりウエーハ周方向位置出し(ウエーハアライメント)を可能にしたウエーハ薬液回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化かつ微細化にともない、ウエーハ表面に金属不純物が存在すると、その金属不純物の量が微量であっても、半導体デバイスの性能に大きな影響を与えると共に、半導体製造における歩留りを低下させる原因となる。したがって、半導体素子の製造設備において、基板として投入されるウエーハ表面に存在する金属不純物の量をできる限り低減することが要求される。
【0003】
基板ウエーハ表面に存在する金属不純物量を低減するためには、汚染された要因を把握する必要があるが、ウエーハの特定部位ごとに金属不純物の状態を把握することが有効である。そのために、クリーンルーム内に設置されるウエーハ薬液回収装置を用いて、ウエーハ表面に存在する金属不純物の状態を的確に把握することが行われている。この種の装置は、例えば特許文献1〜3に開示されている。
【0004】
ウエーハ表面に存在する金属不純物を分析し汚染度合いを評価する方法の一つに、気相分解法によるウエーハ表面不純物分析法がある。この気相分解法の概略を説明する。ウエーハをフッ酸(以下HFと称す)に共に密閉容器(気相分解容器)中に一定時間以上放置するとHF蒸気によりウエーハ表面の自然酸化膜・熱酸化膜が分解される。酸化膜分解後、酸化膜中および酸化膜上に存在した不純物は副生成物である水と共に疎水面となったウエーハ上に残る。このウエーハ上に薬液を滴下し、ウエーハ薬液回収装置あるいは手動で表面を走査して不純物を薬液中に集める。採集した薬液中の不純物濃度をICP−MSにより定量し、ウエーハ表面の不純物量を求める。
【0005】
従来のウエーハ薬液回収装置の概略を説明する。図5はウエーハ自動薬液回収装置の模式図である。装置本体1は上部にクリーンユニットチャンバー2、中間に処理室3と、下部に機械室4が配置された構造になっている。クリーンユニットチャンバー2には処理室3内に下降流のクリーンエア5aを流すクリーンユニット5が設置されている。処理室3にはウエーハ10を載置保持するウエーハ回転台6が設置されている。図中には芯だしユニット、気相分解容器、ウエーハ装填用キャリア、ウエーハ搬送ロボット、走査液回収アームなどが省略されている。機械室4には処理室3のウエーハ回転台6、搬送アームの駆動装置やウエーハ薬液回収装置の制御装置および処理室3を通ったクリーンエア5aを排気する機構などが設備されている。この種の処理装置は、例えば特許文献4に開示されている。
【0006】
ウエーハ表面の特定部位ごとに薬液回収する例として、特許文献5にはウエーハの周囲に設けられたノッチを基準にして、所定の開始点と終了点を決めて回収領域を設定し、この回収領域に薬液を滴下し、それを自動回収する技術が開示されている。
【0007】
ウエーハのノッチを基準にする場合は、図5に示すようにウエーハ10を載置保持したウエーハ回転台6の上下範囲からウエーハ10のノッチ10aに対峙するようウエーハアライナー機構を構成するレーザセンサ8を設置し、レーザ光によりノッチ10aを認識し、このノッチ位置を基準点にして、所定の走査開始点と走査終了点を決めて回収領域を設定し、前記回収領域に薬液を滴下し、前記薬液を前記回収領域において走査し、走査後の薬液を自動回収することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−43289号公報
【特許文献2】特開平11−345849号公報
【特許文献3】特開2004−55836号公報
【特許文献4】特開2007−38050号公報
【特許文献5】特開2006−13234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
クリーンユニットにより下降流のクリーンエアが流されている処理室内において、ウエーハ表面側の上部にウエーハアライナー機構を構成するレーザセンサおよび当該レーザセンサを高い濃度の酸から保護するための塩ビカバーなどが設置されていると、カバー表面および付着物によってウエーハに汚染を発生させる虞があると共に、ウエーハ上のクリーンエア気流が乱れ、処理室内から二次汚染が発生する可能性が高まる。レーザセンサの部品類は高い濃度の酸に耐えられる材料を使用しなければならず、また塩ビカバーなどで保護しなければならないために高価となる。更に、ウエーハ回転台の上下範囲にレーザセンサを設置するスペースを確保しなければならないという問題があった。
【0010】
これらの諸問題を解決するため、本発明はウエーハアライナー機構の構成部品がウエーハ表面側に設置されることによって起こるクリーンエア気流の乱れによる処理室内からの汚染、もしくはウエーハライナー機構の構成物品そのものからの汚染による、ウエーハの二次汚染の発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るウエーハ薬液回収装置は、ウエーハ回転台上のウエーハ外周の側方に設置される目安棒と、前記目安棒を基準に設定したウエーハ表面の走査開始位置から走査終了位置の回収領域で動作する走査液回収アームと、前記走査液回収アームの先端部に設置した走査液回収冶具と、を備え、前記走査液回収治具によりウエーハ表面の回収領域に薬液を接触させた状態で、前記ウエーハ回転台を回転させて不純物を含む薬液を回収することを特徴とする。
【0012】
本発明は、次の構成を包含する。
(1)前記ウエーハ回転台を回転させ、前記ウエーハ回転台上の前記ウエーハのノッチと前記目安棒との位置合わせを行い、この位置を前記ウエーハ回転台の原点位置とするウエーハ原点位置設定手段を備え、上記原点位置に基づいて前記ウエーハ表面の走査開始位置から走査終了位置の回収領域を設定し、前記走査液回収アームを動作させる。
(2)上記ウエーハの原点位置を角度ゼロとして、回収領域を角度設定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のウエーハ薬液回収装置は、目安棒が小さくかつウエーハ回転台近傍のウエーハ側方に置いて使用するため、ウエーハ表面にはクリーンエア気流を乱す要因となる、走査液回収アーム以外の物が無く、ウエーハの二次汚染の可能性を低くすることができると共に、処理室内の汚染も抑えられる。更に、ウエーハアライナー機構を安価に提供できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のウエーハ薬液回収装置の概要を説明するための模式図である。
【図2】ウエーハ薬液回収装置の回収領域となる走査範囲の例を示す図である。
【図3】ゼロ度(原点)位置合わせ画面の一例を示す。
【図4】アライメント動作フローを示す図である。
【図5】従来のウエーハ自動薬液回収装置の概要を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
本発明は、ウエーハアライナー機構の構成部品がウエーハ表面側に設置されることによって起こるクリーンエア気流の乱れによる処理室内からの汚染、もしくはウエーハライナー機構の構成物品そのものからの汚染による、ウエーハの二次汚染の発生を抑えるという目的を、ウエーハのノッチの幅より若干小さい幅の目安棒をウエーハ回転台近傍でウエーハ外周の側方に置いて、マニュアル操作によりウエーハ回転台を回転させながら目視でウエーハのノッチと目安棒を一致させ、そこをウエーハ回転台の回転の原点位置として薬液の回収領域を設定することで、ウエーハアライナー機構を簡素化しかつ安価な部品で実現したものである。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明装置の実施の形態を示す模式図であって、目安棒以外の基本的な構成については、図4に示す従来装置と同じ構成には同一符号を付してその説明を省略する。1は装置本体、2はクリーンユニットチャンバー、3は処理室、4は機械室である。
【0017】
ウエーハ10は搬送アームを操作してウエーハ回転台6に載置され、ウエーハ回転台6は、芯だしユニット(図示省略)によってウエーハ回転台6とウエーハ10の回転中心を一致させた後、ウエーハ10を保持する。
【0018】
目安棒8は処理室3の平らな面に置くための基台に垂直に立設され、高い濃度の酸に耐えられる材料で形成されており、ウエーハ回転台6の近傍、すなわちウエーハ外周の側方でウエーハ10からあまり離れていない場所に置かれる。目安棒8はウエーハ10のVノッチ(以下ノッチと称す)10aの開放幅より若干小さい幅で、ウエーハ回転台6の高さより数cm高くする。
【0019】
制御装置はパーソナルコンピュータ(PC)で構成され、ノッチ10aを目安棒8に位置合わせするためのウエーハ回転台6の回転、設定されたウエーハ回転台6の原点位置に基づくウエーハ表面の回収領域の設定、設定された回収領域へのウエーハ回転台6の回転、薬液供給から走査範囲のウエーハ表面に対する薬液の接離を含む走査液回収アーム16(図4参照)の操作、走査液の回収などの全てをマニュアル操作またはオート操作をモニタ画面上で指令し実行させることができるように構成されている。
【0020】
制御装置の機能として、ウエーハ回転台6の回転基準点を回転軸原点から他の点に変更する機能を備えており、目安棒8を基準にウエーハ回転台6の基準点を設定し、アライメント機能を実現する。設定した基準点からウエーハ回転台6の回転を制御し、同時に走査液回収アーム16を操作して任意に設定された回収領域の開始点と終了点を走査し、薬液回収を行う。
【0021】
次に本実施形態のウエーハ薬液回収を詳しく説明する。図2は走査範囲を示すもので、ウエーハ10のノッチ位置10aからの角度範囲は240度に走査開始位置12、270度に走査終了位置13を設定した例である。
【0022】
図3はゼロ度(原点)位置合わせ画面の一例を示す。ゼロ点位置合わせ画面20には正方向回転ボタン21、逆方向回転ボタン22、スタートボタン23が表示され、正逆回転ボタン21、22を選択して押下することによってウエーハ回転台周方向位置出しした(目安棒8とノッチ位置を一致させた)後に、スタートボタン23を押すことによりウエーハ回転台6の回転基準点を回転軸原点6aから他の点に変更することができる。ここで、ウエーハ原点位置設定手段はゼロ点位置合わせ画面20を含むPCで構成される。
【0023】
図4において、ウエーハ10をウエーハ回転台6に載せ、芯だしユニットでウエーハ10の芯だしを行う(図4(1))。ゼロ点位置合わせ画面20の正方向回転ボタン21を選択し押すことによって、ウエーハ回転台6を矢印方向に回転させ、目視により確認しながら、ノッチ10aが目安棒8に重なる位置に来たら、正方向回転ボタン21を押すのをやめることによって、ウエーハ回転台6の回転を停止させる(図4(2))。このとき正方向回転が過ぎた場合は逆方向回転ボタン22を押すことによってウエーハ回転台6を逆回転させることもできる。その後、スタートボタン23を押すと位置合わせによりノッチ位置10aと目安棒8が一致した周方向位置をウエーハ回転台6の原点位置(角度ゼロ)14と設定する(図4(3))。続いて薬液回収動作を開始すると、ウエーハ10の走査開始位置12が走査液接触位置15と一致する位置までウエーハ回転台6を矢印方向に回転させる(図4(4))。走査液回収アーム16の先端および走査液回収アームの先端に設置(固定)した走査液回収冶具16aがウエーハ10の走査液接触位置15に来るまで旋回し、走査液回収アーム16を固定(走査液回収アーム16の旋回角度を固定する。あるいは走査液回収アームの旋回を停止する。)した後、走査液接触位置15に走査液を供給する(図4(5))。走査液回収アーム16を固定(走査液回収アーム16の旋回角度を固定する。あるいは、走査液回収アーム16の旋回を停止する。)したままウエーハ10の走査終了位置13が走査液接触位置と一致するまでウエーハ回転台6を回転させる。走査液回収アーム16がウエーハ10から離れる方向に旋回し、走査液を走査液回収冶具16aとともにウエーハ10から離す(図4(6))。走査液回収冶具16aに回収されたこの走査液を分析することで、設定した回収領域17のウエーハ表面の汚染度合い評価を行う。
【0024】
本発明において、目安棒とノッチとの位置決めを目視により行う前提で説明してきたが、これに限定されず、例えば目安棒8及びウエーハ回転台6に電極を埋め込み、目安棒8とウエーハ回転台6との間に電界を発生させ、ノッチが電界を通過する際の目安棒8とウエーハ回転台との間の静電容量の変化を測定することで(近接スイッチとして)位置決めを行うことができ、マニュアル操作のみならずウエーハ原点位置設定手段が自動的に原点位置を検出できる構成としてもよい。その他音響反射物体を検出する超音波近接スイッチ等を目安棒8等に組み込んで用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
二次汚染を防止しつつ簡易な構成で検査対象のウエーハの位置決めを行うことができるウエーハ薬液回収装置として利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1………装置本体、2………クリーンユニットチャンバー、3………処理室、4………機械室、5………クリーンユニット、6………ウエーハ回転台、6a………ウエーハ回転台の原点位置、7………窓、8………目安棒、10………ウエーハ、10a………ノッチ、12………走査開始位置、13………走査終了位置、14………ウエーハの原点位置、15………走査液接触位置、16………走査液回収アーム、16a………走査液回収冶具、17………回収領域、20………ゼロ点位置合わせ画面、21………正方向回転ボタン、22………逆方向回転ボタン、23………スタートボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハ回転台上のウエーハ外周の側方に設置される目安棒と、
前記目安棒を基準に設定したウエーハ表面の走査開始位置から走査終了位置の回収領域で動作する走査液回収アームと、前記走査液回収アームの先端部に設置した走査液回収冶具と、を備え、
前記走査液回収治具によりウエーハ表面の回収領域に薬液を接触させた状態で、前記ウエーハ回転台を回転させて不純物を含む薬液を回収することを特徴とするウエーハ薬液回収装置。
【請求項2】
前記ウエーハ回転台を回転させ、前記ウエーハ回転台上の前記ウエーハのノッチと前記目安棒との位置合わせを行い、この位置を前記ウエーハ回転台の原点位置とするウエーハ原点位置設定手段を備え、上記原点位置に基づいて前記ウエーハ表面の走査開始位置から走査終了位置の回収領域を設定し、前記走査液回収アームを動作させることを特徴とする請求項1に記載のウエーハ薬液回収装置。
【請求項3】
前記ウエーハの原点位置を角度ゼロとして、回収領域を角度設定することを特徴とする請求項2に記載のウエーハ薬液回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−9275(P2011−9275A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148607(P2009−148607)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】