説明

ウォームホイールギヤ成形用の金型製造方法及びウォームホイールギヤ成形用の金型

【課題】高精度の樹脂成形が可能で、成形されたウォームホイールギヤを容易に抜き出すことが可能な金型の製造方法を得る。
【解決手段】第1加工ステップにおいて、金型材料20Mの第1開口A1から挿入した工具30によって、ウォームホイールギヤのギヤ領域に対応するギヤ領域成形部20Gを切削加工する。次に、第2加工ステップにおいて、金型材料20Mの第2開口A2から挿入した工具30によって、ギヤ領域の歯幅方向に連設されるヘリカル領域に対応するヘリカル領域成形部20Hを切削加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームホイールギヤの金型製造方法及びウォームホイールギヤ成形用の金型に関し、詳しくは、ウォームホイールギヤを樹脂で成形する金型を製造する方法、及び、ウォームホイールギヤを樹脂で成形する金型に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された金型製造方法と関連するものとして、ウォームホイールギヤの歯部について歯幅方向で一方側の半分だけを、歯幅方向の中央が凹状となる形状とし、幅方向で他方側の半分を、歯部の歯底がギヤの軸芯方向に直線的に延びる形状としたものが示されている。このウォームホイールギヤは成形型により樹脂成形されるものであり、成形されたウォームホイールギヤを成形型から抜き出す操作を可能にするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ウォームホイールギヤの金型の製造方法として、成形されるウォームホイールギヤと同モジュール・同ピッチ・同リードで、成形されるウォームホイールギヤより5枚以上少ない歯形を有する柱状マスター電極を製作し、このマスター電極を金型材料へ挿入し、金型の中心から偏心した状態で回転しながら、放電加工を行ない、このマスター電極が金型材料を溶解加工するものが存在する(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
尚、この特許文献2では、金型で成形されたウォームホイールギヤは、樹脂が完全に固化しない状態で、一部を弾性変形させながら(いわゆるムリ抜き)金型から抜き出す点が記載されている。
【0005】
また、ウォームホイールギヤの金型の製造方法として、環状歯体成形用キャビティの歯形成形用面に電鋳層を形成したものが存在する(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】実開平04‐49254号公報 (〔実施例〕、図1、図2)
【特許文献2】特開2003−48236号公報 (請求項1、段落番号〔0009〕〜〔0018〕、図1〜図5)
【特許文献3】特開2006−192657号公報 (請求項1、段落番号〔0011〕〜〔0020〕、図2〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金型(成形型)による樹脂成形によってウォームホイールギヤを製作することを考えると、ウォームホイールギヤは、歯部の歯幅の中央部が凹状に窪む形状であるため、このウォームホイールギヤの形状を金型に反映させたものでは、歯部の歯幅の中央部に対応する部位が、金型の中心(ギヤの軸芯に対応する位置)に突出する形状となる。従って、この金型で成形を行った場合には、前述した突出する部位が成形物に入り込む状態となり、この成形物を金型から抜き出せないものとなる。
【0008】
特許文献1では、この不都合を解消するためにウォームホイールギヤの形状の変更を行っている。しかし、この特許文献1のように形状を変更したものでは、歯部の半分だけがウォームホイールギヤとして機能する。このため、噛み合い性能が低下し、強度等の低下は回避することができず改善の余地がある。
【0009】
また、特許文献2に示されるように、マスター電極を用いて金型材料を放電加工する放電加工法によって金型を製造するものでは、溶解加工によるマスター電極の消耗により、精度が低下するばかりでなく、加工コストも高くなる傾向にある。
【0010】
特許文献3に示されるように、金型素材に金属メッキを行う電鋳法を用いて金型を製造するものでは、比較的高い精度を得るものであるが、メッキ層を形成するために長時間を要するものである。また、このようにメッキ層を形成するものでは、耐薬品性が低く、メッキ層を重ねて形成しているためメッキ層が剥離し易すい面がある。
【0011】
更に、金型の成形面を形成する際にホブ盤を用いることも考えられるが、ホブ盤で切削した場合には、ホブカッターによる切削に起因した凹凸面が形成され、この凹凸面が成形物としてウォームホイールギヤに転写されることになる。このように凹凸面がウォームホイールギヤの歯面に形成されると、微振動や騒音の発生といった不都合に繋がるものである。
従来方法の課題として、特許文献2や特許文献3の方法では、加工方法の特性から、一回の加工に要する期間が長期化する。例えば、所定の寸法精度を確保する為の微調整を行おうとすると、放電加工では電極を加工するために工具を再製作し、電極の修正を行った後に、再度放電加工をする必要がある。この他、電鋳法ではマスター素材を加工する為の工具を再度製作し、電鋳素材の修正を行った後に再度電鋳を行う必要がある。
そして、このような工程を経た後に成型を行い、ギヤの寸法を確認する等の工程が必要となる。
このように、一加工あたりの時間が長い加工工程を繰り返さないと微調整ができないので、金型完成までのリードタイムが長くなり、金型製造コストも上昇するという課題がある。
この他、放電加工や電鋳法を用いると、所謂ソリッドカッターといわれる所望形状を略反転させた形状の電極等で金型を加工するため、非線形をしている形状の修正が難しいという課題がある。
【0012】
本発明の目的は、ウォームホイールギヤを高精度で樹脂成形し、成形されたウォームホイールギヤを容易に抜き出すことが可能な金型、及び、その製造方法を得るに点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、筒状の金型材料の一方の開口側から挿入した工具によって、ウォームホイールギヤのギヤ領域に対応するギヤ領域成形部を切削加工する第1加工ステップと、他方の開口から挿入した工具によって歯部から歯幅方向で、この他方の開口側にギヤ状に連設されるヘリカル領域に対応するヘリカル領域成形部を切削加工する第2加工ステップとを有する点にある。
【0014】
この構成によると、第1ステップでは一方の開口から挿入した工具によってギヤ領域成形部を切削加工する。第2ステップでは、他方の開口から挿入した工具によって、この他方の開口側のヘリカル領域成形部を切削加工する。このような切削加工を行う場合、例えば、第1ステップと第2ステップとの中間において、金型材料の保持姿勢を変更する操作も必要となる。保持姿勢の変更により工具と金型材料との相対的な位置関係が変化した場合には誤差が発生する。この誤差はギヤ領域成形部とヘリカル領域成形部との境界に段差となって現れる。しかし、少なくともギヤ領域は第1ステップで加工しているため、この誤差がギヤ領域成形部に影響することはない。また、本発明の金型に注入した樹脂が固化した後には、ヘリカル歯部と反対方向に成形したウォームホイールギヤ歯先が、ヘリカル領域の歯部を形成するための溝状の部位を通過でき、成形されたウォームホイールギヤを金型から容易に抜き出すことが可能となる。従って、ウォームホイールギヤを高精度で樹脂成形し、成形されたウォームホイールギヤを容易に抜き出すことも可能な金型の製造方法が得られた。特に、金型を切削加工する際に、ボールエンドミルのように高速回転する工具を用いて切削加工を行った場合には、金型の表面の凹凸が極めて小さく、滑らかに仕上がるため、成形されたウォームホイールギヤに微振動や騒音を発生させる現象も抑制できる。
【0015】
本発明は、前記ギヤ領域成形部において、前記ウォームホイールギヤの歯部同士間の歯底溝部に対応する第1凸部と、前記ヘリカル領域成形部において、前記ウォームホイールギヤのヘリカル歯部同士間の歯間溝部に対応する第2凸部とが形成され、前記ウォームホイールギヤの外周面を基準にした第2凸部の突出量が、前記ウォームホイールギヤの外周面を基準にした第1凸部の突出量より小さく設定しても良い。
【0016】
この構成によると、金型から成形物を抜き出す場合には、ヘリカル歯部が形成されない方向に成形物を移動させることで、成形物が多少弾性変形することにより抜き出しが可能となる。また、金型により成形されたウォームホイールギヤには歯部と、これに連なるヘリカル歯部とが形成され、このヘリカル歯部において第2凸部で形成された溝部が、歯部の歯底溝部より浅いので、ウォームホイールギヤ全体の強度を低下させることもない。
【0017】
本発明は、前記ウォームホイールギヤが、前記歯部の歯幅方向での一方に前記ヘリカル領域が形成され、前記歯幅方向での他方に、前記歯部の歯先と等しい外径で平滑な外周面となる平滑領域が形成され、前記第1加工ステップでは、この平滑領域に対応する平滑領域成形部を切削加工しても良い。
【0018】
この構成によると、金型により成形されたウォームホイールギヤには歯部を基準にしてヘリカル領域の反対側に、平滑領域が形成されるので、ウォームホイールギヤの強度を高め得るものとなる。
【0019】
本発明は、ウォームホイールギヤのギヤ領域を成形するギヤ領域成形部と、前記ウォームホイールギヤの歯部の歯幅方向の一方にギヤ状に連設されるヘリカル領域を成形するヘリカル領域成形部と、前記ウォームホイールギヤの歯部の歯幅方向の他方に平滑な外周面として連設される平滑領域を形成する平滑領域成形部とを備えても良い。
【0020】
この構成によると、金型に注入された樹脂が固化した後には、成形物に対してヘリカル領域側から圧力を加える等の操作によって、ヘリカル領域と反対方向に成形物を移動させる。これにより、成形したウォームホイールギヤの歯先が、ヘリカル領域のヘリカル歯部を形成するために金型に形成された溝状の部位を通過できる。そして、成形したウォームホイールギヤを金型から容易に抜き出せる。また、成形されたウォームホイールギヤには平滑領域が形成されることにより、ウォームホイールギヤ全体の強度を高くできる。従って、ウォームホイールギヤを高精度で樹脂成形し、成形されたウォームホイールギヤを容易に抜き出すことが可能な金型が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔ギヤの構造〕
図1にはウォームギヤWの回転駆動力によって回転するウォームホイールギヤ10が示されている。このウォームホイールギヤ10は、金型による樹脂成形によって製作され、軸芯Xを中心する柱状の軸部11と、この軸部11より大径のギヤ本体12とが一体的に形成されている。尚、軸部11には軸芯Xと同軸芯上に軸孔11Aが形成されている。
【0022】
図1〜図3に示すように、前記ギヤ本体12には、歯幅の中央に凹部が形成された複数のホイール歯部13Aを有するギヤ領域13が形成されると共に、このギヤ領域13の歯幅方向の一方に平滑な外周面を有する平滑領域14が形成され、このギヤ領域13の歯幅方向の他方に複数のヘリカル歯部15Aを有するギヤ状のヘリカル領域15が形成されている。
【0023】
ギヤ領域13は、複数のホイール歯部13A同士の間に歯底溝部13Bが形成されている。平滑領域14は、ホイール歯部13Aの歯先のうち最も突出した部位と滑らかに連なる外周面を備えている。前記ヘリカル領域15は、ホイール歯部13Aと同数のヘリカル歯部15Aが形成されると共に、このヘリカル歯部15Aの歯先は、ホイール歯部13Aの歯先のうち最も突出した部位と滑らかに連なっている。
【0024】
前記ヘリカル領域15では、ホイール歯部13Aの歯すじの延長上に、ヘリカル歯部15Aの歯すじが配置されると共に、歯底溝部13Bの延長上に、そのヘリカル歯部15A同士の間の歯間溝部15Bが配置されている。また、歯間溝部15Bにおいて、ウォームホイールギヤ10の外周を基準とした溝深さは一定であり、その深さは、歯底溝部13Bにおいて、ウォームホイールギヤ10の外周を基準とした最も深い部分より少し浅く設定されている。
【0025】
〔金型〕
このウォームホイールギヤ10は、図4〜図6に示す金型Mを用いた樹脂成形によって製造される。金型Mは、主金型20と、第1可動金型21と、第2可動金型22とで構成されている。また、第1可動金型21にはウォームホイールギヤ10の軸孔11Aを形成するインサート部21Aが一体形成されている。
【0026】
主金型20には、ギヤ領域13を成形するギヤ領域成形部20Gと、平滑領域14を成形する平滑領域成形部20Sと、ヘリカル領域15を成形するヘリカル領域成形部20Hとが形成されている。また、この主金型20では、成形物としてのウォームホイールギヤ10の軸芯Xと一致する位置に軸芯Yが想定され、この軸芯Y方向で平滑領域成形部20Sが形成された方向に第1開口A1を有し、軸芯Yでヘリカル領域成形部20Hが形成された方向に第2開口A2を有している。
【0027】
前記ギヤ領域成形部20Gには、ホイール歯部13Aを成形するホイール歯部成形凹部20GSと、歯底溝部13Bを成形する歯底溝部成形凸部20GT(第1凸部の一例)とが形成されている。また、ヘリカル領域成形部20Hには、ヘリカル歯部15Aを成形するヘリカル歯部形成凹部20HSと、歯間溝部15Bを成形する歯間溝部成形凸部20HT(第2凸部の一例)とが形成されている。
【0028】
この金型Mでは、ウォームホイールギヤ10の外周面を成形するための成形面を基準にした歯間溝部成形凸部20HT(第2凸部の一例)の突出量が、ウォームホイールギヤ10の外周面を成形するための成形面を基準にした歯底溝部成形凸部20GTの突出量より小さく設定されている。尚、ウォームホイールギヤ10はホイール歯部13Aの歯先の最も突出した部位と、平滑領域14の外周面と、ヘリカル領域15の外周面とが一致する円周面がウォームホイールギヤ10の外周面となる。
【0029】
この金型Mでウォームホイールギヤ10を成形する場合には、図7(a)に示すように、第1開口A1を第1可動金型21で閉塞し、第2開口A2を第2可動金型22で閉塞する。そして、主金型20と、第1可動金型21と、第2可動金型22とで形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出する。
【0030】
次に、図7(b)に示すように、樹脂の固化の後に主金型20から第1可動金型21と、第2可動金型22と分離し、図7(c)に示すように、第2開口A2のから成形物に圧力を加える等の操作で主金型20から成形物の離型を図る。
【0031】
このように成形物の離型を図る際には、成形物としてのウォームホイールギヤ10の各ホイール歯部13Aの歯先部位が弾性変形しながら、ヘリカル歯部形成凹部20HSを通過すると同時に、主金型20の歯底溝部成形凸部20GTがウォームホイールギヤ10のヘリカル領域15の歯間溝部15Bを弾性変形させながら通過することにより離型が実現する。
【0032】
〔主金型の製造方法・切削加工の概要〕
前記主金型20を製造する際には、多軸加工機やマシニングセンタ等の工作機械に筒状の金型材料20Mをセットし、図8(a)に示すように、第1加工ステップにおいて第1開口A1からボールエンドミル等の工具30を挿入して、平滑領域成形部20Sと、ギヤ領域成形部20Gとを切削加工する。
【0033】
次に、図8(b)に示すように、第2加工ステップにおいて金型材料20Mを反転させ、この反転に起因する誤差を補正する補正処理の後、第2開口A2からボールエンドミル等の工具30を挿入して、ヘリカル領域成形部20Hを切削加工する。この切削加工が完了することで主金型20が完成する。
ここで、第1加工ステップでギヤ領域成形部とヘリカル領域成形部の一部を切削加工し、第2加工ステップでヘリカル領域成型部の残部を加工するようにしても良い。
【0034】
〔主金型の製造方法・制御形態〕
また、第1加工ステップで金型材料20Mを切削加工する際には、チャック等で固定された金型材料20Mの位置を数値化して確定し、第1開口A1から工具30を挿入し、この確定した数値を基準にしてプログラムで工具30を制御することにより、平滑領域成形部20Sと、ギヤ領域成形部20Gとが切削加工により形成される。
【0035】
次に、チャック等の駆動により金型材料20Mを反転させ、この反転させた金型材料20Mの位置を取得し、数値化して確定する。金型材料20Mを反転させた理想の姿勢が数値化して予め保存されており、確定した数値と、保存されていた数値との誤差に基づいて補正値を設定する。そして、この補正値に基づいて誤差を吸収する補正値を設定する補正処理が行われる。
【0036】
この補正処理の一例を挙げると、金型材料20Mの位置を確定した状態で、第1加工ステップにおいて金型材料20Mにギヤ領域成形部20Gを切削加工した後に、ホイール歯部成形凹部20GS、あるいは、歯底溝部成形凸部20GTの位置をセンサで計測して記憶する。次に、金型材料20Mを反転した後には、金型材料20Mに形成されたギヤ領域成形部20Gのホイール歯部成形凹部20GS、あるいは、歯底溝部成形凸部20GTの位置をセンサで計測する。
【0037】
このように金型材料20Mの反転前と、反転後とにおけるホイール歯部成形凹部20GS等の位置を計測することにより、反転後の金型材料20Mの理想とする位置と、金型材料20Mの現実の位置とに基づいて誤差を取得できるものであり、この誤差に基づいて補正値が設定される。
【0038】
尚、センサとしては、接触型のものを想定しているが、画像処理によって位置を計測する光学式のものであっても良い。
【0039】
次に、第2加工ステップでは、補正値に基づいて基準値を補正し、第2開口A2から工具30を挿入し、この補正した数値を基準にしてプログラムで工具30を制御することにより、ヘリカル領域成形部20Hの切削加工が行われる。
【0040】
このように、切削加工を2ステップに分けている理由は以下の通りである。つまり、主金型20のように金型材料の内面を工具30によって切削加工する場合には、工具30のシャンク長さや、この工具30の金型材料の開口部位に対する干渉等によって切削可能な領域が制限されることがある。特に、歯幅が広く、歯底円の半径が小さいウォームホイールギヤに対応した金型の製作時には、金型材料の開口から挿入した工具による切削加工可能な領域が一層制限される。このような制限を受けないように2つのステップに分けて切削加工を行っているのである。
【0041】
尚、本発明の加工形態と、例えば、第1開口A1と第2開口A2とから等しい距離の領域に等しく振り分けて切削加工を行うものと比較すると、次のような不都合を生ずる。つまり、本発明の加工形態では、ギヤ領域成形部20Gでは歯幅全域において滑らかな仕上げが可能となる。これに対して、等しく振り分けて切削加工を行うものでは、ギヤ領域成形部20Gの加工を行う途中で金型材料を反転させるため、金型材料を反転させた際の誤差がギヤ領域成形部20Gの中間で段差となって現れることが考えられる。
【0042】
このような不都合を招かないために、第1加工ステップでは、平滑領域成形部20Sと、ギヤ領域成形部20Gとを切削加工し、第2加工ステップでは、ヘリカル領域成形部20Hを切削加工しているのである。
【0043】
また、樹脂の成形物では、樹脂の収縮時における僅かな変形は避けられないものである。従って、樹脂の収縮を補うように金型の成形面の修正を必要とするが、本発明では切削加工によって金型を製造するので、成形面の修正を行うにも切削加工によって容易に対応できる。
【0044】
このように本発明に係る金型製造方法では、短期間で所定の寸法精度を有する金型を製作することができ、これにより金型のコストも抑制することができる。
更に、ウォームギヤの歪みや収縮等の寸法変化に対する見込み修正や、事後修正が容易できる。
【0045】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い。
【0046】
(a)補正処理を実現するために、金型材料20Mに対して図9に示す貫通孔25を、金型材料20Mの軸芯Yと平行する姿勢で形成し、この貫通孔25の位置をセンサで取得するように構成しても良い。センサとしては、接触型のものと光学式のものが考えられる。
【0047】
つまり、貫通孔25を形成したものでは、第1加工ステップでは金型材料20Mの位置と姿勢とを貫通孔25の第1開口A1の側の端部の位置に基づいて特定する。次に、第2加工ステップでは、金型材料20Mの位置と姿勢とを貫通孔25の第2開口A2の側の端部の位置に基づいて特定し、補正値を設定することが可能となる。
【0048】
(b)第1加工ステップの後に、第2加工ステップで金型材料20Mを反転させるために、金型材料20Mをチャック26でクランプする構成を採用する場合に、チャック26を図10に示すように、広い接触面26Sで金型材料20Mの外周に接触するクランプできるものを用いる。
【0049】
このような構造のチャック26を用いることにより、クランプ時の圧力を分散させ、金型材料20Mの弾性変形量を小さくして、切削加工時の誤差を極めて小さなものにできる。
【0050】
(c)第1加工ステップと第2加工ステップの順序を逆にする。このようにステップを入れ換えたものであっても、金型材料20Mにおいてギヤ領域成形部20Gの加工を、歯幅全幅に亘って滑らかで段差のないものにできる。
【0051】
(d)ウォームホイールギヤとして平滑領域を備えず、ギヤ領域13の一方にのみ形成する、又は、ギヤ領域13を挟む両側部位置にヘリカル領域15を形成したものに対応する金型に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ウォームギヤとウォームホイールギヤを示す斜視図
【図2】ウォームホイールギヤの側面図
【図3】ウォームホイールギヤのホイール歯部とヘリカル部との断面図
【図4】金型の断面図
【図5】主金型の断面図
【図6】主金型のギヤ領域成形部とヘリカル領域成形部との断面図
【図7】主金型に樹脂を射出した状態と金型を分離した状態と成形物の離型とを示す断面図
【図8】第1加工ステップと第2加工ステップとの切削加工形態を示す図
【図9】別実施形態(a)の主金型を示す断面図
【図10】別実施形態(b)のチャックによるクランプ状態を示す断面図
【符号の説明】
【0053】
10 ウォームホイールギヤ
13 ギヤ領域
13A 歯部(ホイール歯部)
13B 歯底溝部
14 平滑領域
15 ヘリカル領域
20G ギヤ領域成形部
20GT 第1凸部(歯底溝部成形凸部)
20H ヘリカル領域成形部
20HT 第2凸部(歯間溝部成形凸部)
20M 金型材料
20S 平滑領域成形部
25 工具
A1、A2 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の金型材料の一方の開口側から挿入した工具によって、ウォームホイールギヤのギヤ領域に対応するギヤ領域成形部を切削加工する第1加工ステップと、他方の開口から挿入した工具によって歯部から歯幅方向で、この他方の開口側にギヤ状に連設されるヘリカル領域に対応するヘリカル領域成形部を切削加工する第2加工ステップとを有するウォームホイールギヤ成形用の金型製造方法。
【請求項2】
前記ギヤ領域成形部において、前記ウォームホイールギヤの歯部同士間の歯底溝部に対応する第1凸部と、前記ヘリカル領域成形部において、前記ウォームホイールギヤのヘリカル歯部同士間の歯間溝部に対応する第2凸部とが形成され、前記ウォームホイールギヤの外周面を基準にした第2凸部の突出量が、前記ウォームホイールギヤの外周面を基準にした第1凸部の突出量より小さく設定されている請求項1記載のウォームホイールギヤ成形用の金型製造方法。
【請求項3】
前記ウォームホイールギヤが、前記歯部の歯幅方向での一方に前記ヘリカル領域が形成され、前記歯幅方向での他方に、前記歯部の歯先と等しい外径で平滑な外周面となる平滑領域が形成され、前記第1加工ステップでは、この平滑領域に対応する平滑領域成形部を切削加工する請求項1又は2記載のウォームホイールギヤ成形用の金型製造方法。
【請求項4】
ウォームホイールギヤのギヤ領域を成形するギヤ領域成形部と、前記ウォームホイールギヤの歯部の歯幅方向の一方にギヤ状に連設されるヘリカル領域を成形するヘリカル領域成形部と、前記ウォームホイールギヤの歯部の歯幅方向の他方に平滑な外周面として連設される平滑領域を形成する平滑領域成形部とを備えているウォームホイールギヤ成形用の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−137067(P2009−137067A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313548(P2007−313548)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】