説明

ウルケニア(Ulkenia)由来のPUPA−PKS遺伝子

【課題】現況技術を考慮して、PUFAの製造に申し分なく適したDHAを産生する微生物ウルケニア種からPUFA−PKS遺伝子を同定し、さらに単離するという課題を有した。
【解決手段】効率的なPUFA生産者であるウルケニア種に由来する適切なPUFA−PKS遺伝子を同定および単離した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリケチドシンターゼ(PKS)に特異的な配列をコードする遺伝子について述べる。それらから合成されるPKSは、PUFA(ポリ不飽和脂肪酸)を生成するその酵素能力を特徴とする。本発明は、対応するDNA配列の同定、ならびに組換え生物および/またはトランスジェニック生物の作製のためのヌクレオチド配列の使用もさらに含む。
【背景技術】
【0002】
PUFA(ポリ不飽和脂肪酸)という用語は、鎖長がC12より長くかつ少なくとも2つの二重結合を有する、多数重なった不飽和長鎖脂肪酸を意味する。PUFAには、ω−3(n−3)脂肪酸およびω−6(n−6)脂肪酸という2種の主要なファミリーがあり、これらは、アルキル末端に対する最初の二重結合の位置によって異なっている。これらは、細胞膜の重要な成分であり、脂質、特にリン脂質の形態で存在している。PUFAは、例えばプロスタグランジン、ロイコトリエン、およびプロスタサイクリンなど、ヒトおよび動物において重要な分子の予備段階としても機能する(A.P.Simopoulos、essential fatty acids in health and chronic disease、Am.J.Clin.Nutr.1999(70)、560〜569頁)。ω−3脂肪酸のグループの重要な代表例は、DHA(ドコサヘキサエン酸)およびEPA(エイコサペンタエン酸)であり、これらは魚油および海洋微生物中に見出すことができる。ω−6脂肪酸の重要な代表例は、例えば糸状菌(filamentary fungi)中に存在するが、肝臓や腎臓などの動物組織からも単離することができるARA(アラキドン酸)である。DHAおよびARAは、ヒトの母乳中に共に存在する。
【0003】
PUFAは、適切な発育に関して、特に発達中の脳、組織形成およびその修復のために、ヒトにとって不可欠である。したがって、DHAは、ヒト細胞膜、特に神経の細胞膜の重要な成分である。これは、脳機能の成熟に重要な役割を果たし、視覚の発達に不可欠である。DHAの十分な供給を伴うバランスのとれた栄養物はいくつかの疾患の予防に有利であるため、DHAやEPAなどのω−3 PUFAは、栄養補給物として使用されている(A.P.Simopoulos、Essential fatty acids in health and chronic disease、American Journal of Clinical Nutrition 1999(70)、560〜569頁)。例えば、非インスリン依存性糖尿病の成人は、後で発生する心臓の問題に関係のある欠乏または少なくとも均衡を欠いたDHAバランスを提示する。同様に、アルツハイマー病や精神分裂病などの神経性疾患は、低いDHAレベルを伴っている。
【0004】
例えば、海洋冷水魚、卵黄部分、または海洋微生物に由来する油など、DHAを商業用に抽出するための多数の供給源がある。n−3PUFAの抽出に適した微生物は、例えば、ビブリオ(Vibrio)属の細菌(例えば、ビブリオマリヌス(Vibrio marinus))において、または渦鞭毛藻類(渦鞭毛植物(Dinophyta))、特に、C.cohniiなどのクリプテコジニウム(Crypthecodinium)属において、または、例えば、グロッソマスチキス(Glossomastix)、ファエオモナス(Phaeomonas)、ピングイオクリシス(Pinguiochrysis)、ピングイオコッカス(Pinguiococcus)、およびポリポドクリシス(Polypodochrysis)などのピングイオ藻綱(Pinguiophyceae)などのストラメノパイル(もしくはラビリンツラ菌門(Labyrinthulomycota)において見出される。PUFAを製造するのに好ましい他の微生物は、特に、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)、アルトルニア(Althornia)、ラビリンツロイデス(Labyrinthuloides)、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)、およびウルケニア(Ulkenia)属を含むヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)(ヤブレツボカビ科(Thraustchytriidea))に属する。
【0005】
植物や動物など商業的に公知のPUFA供給源から抽出される油は、しばしば、極めて不均一な組成を特徴とする。この方式で抽出される油は、1種または数種のPUFAの濃縮を可能にするために高価な精製工程にかけられなければならない。さらに、このような供給源からのPUFAの供給は、制御不可能な変動も被る。すなわち、病害および気候の影響により、動物および同様に植物の収量が低減され得る。魚類からのPUFAの抽出は、季節的変動の影響を受け、また、乱獲または気候の変化(例えば、エルニーニョ現象)のために一時的に休止されることさえある。動物油、特に魚油は、食物連鎖を介して、環境に由来する有害物質を蓄積し得る。動物は、特に商業的な養魚場において、魚消費の健康的な側面の効果を打ち消す、例えばポリ塩化ビフェニルなどの有機塩化物によって著しくストレスを加えられることが知られるようになった(Hites他、2004年、Global assessment of organic contaminants in farmed salmon、Science 303、226〜229頁)。結果として魚製品の質が低下することにより、消費者は、魚および魚油をω−3PUFA供給源として受け入れないようになる。さらに、魚類からのDHAの濃縮は、高度な技術を要するため、比較的高価である。一方、DHAは、数種の海洋微生物中に細胞の全脂肪成分の約50%の量で存在し、これらの微生物は、大型発酵槽中で比較的経済的に培養することができる。微生物の別の利点は、数種の成分に限定されている、それらから抽出される油の組成である。
【0006】
ドコサヘキサエン酸(DHA;22:6、n−3)やエイコサペンタエン酸(EPA;20:5、n−3)などの長鎖PUFAの生合成のための様々な生体触媒経路が公知である。真核生物における長鎖PUFAを生成するための通常の生合成経路は、リノール酸(LA;18:2、n−6)およびαリノール酸のδ−6不飽和化で始まる。これにより、リノール酸からγリノール酸(GLA;18:3、n−6)が合成され、αリノール酸からオクタデカテトラエン酸(OTA;18:4、n−3)が合成される。n−6ならびにn−3脂肪酸に対して、この不飽和化工程に続いて、伸長工程ならびにδ−5不飽和化が起こり、アラキドン酸(ARA;20:4、n−6)およびエイコサペンタエン酸(EPA;20:5、n−3)が生じる。次いで、エイコサペンタエン酸(EPA;20:5、n−3)から出発するドコサヘキサエン酸(DHA;22:6、n−3)の合成が、2つの異なる生合成経路を介して起こり得る。いわゆる直鎖生合成経路においては、さらに2つの炭素単位によるエイコサペンタエン酸(EPA;20:5、n−3)の伸長が起こり、それに続いて、ドコサヘキサエン酸(DHA;22:6、n−3)の形成のためのδ−4不飽和化が起こる。この生合成経路の存在は、トラウストキトリウム(thraustochytrium)やユーグレナ(Euglena)などの生物におけるδ−4不飽和化酵素の存在によって確認することができた(Qiu他、Identification of a delta 4 fatty acid desaturase from Thraustochytrium sp.involved in the biosynthesis of docosahexaenoic acid by heterologous expression in Saccharomyces cerevisiae and Brassica juncea.、J.Biol.Chem.276(2001年)、31561〜31566頁、およびMeyer他、Biosynthesis of docosahexaenoic acid in Euglena gracilis:Biochemical and molecular evidence for the involvement of a delta 4 fatty acyl group desaturase.Biochemistry 42(2003年)、9779〜9788頁)。エイコサペンタエン酸(EPA;20:5、n−3)から出発するドコサヘキサエン酸(DHA;22:6、n−3)の合成の第2の経路、いわゆるシュプレッヒャー(Sprecher)経路は、δ−4不飽和化に依存していない。これは、テトラコサペンタエン酸(24:5、n−3)を生じる、2つの炭素単位による2つの連続的な伸長工程、およびそれに続く、テトラコサヘキサエン酸(24:6、n−3)へのδ−6不飽和化からなる。その後、ペルオキシソームのβ酸化の結果としての2つの炭素単位の短縮によって、ドコサヘキサエン酸の形成が続いて起こる(H.Sprecher、Metabolism of highly unsaturated n−3 and n−6 fatty acids.Biochimica et Biophysica Acta 1486(2000年)、219〜231頁)。この第2の生合成経路は、哺乳動物において主なDHA合成経路である(Leonard他、Identification and expression of mammalian long−chain PUFA elongation enzymes.Lipids 37(2002年)、733〜740頁)。C20 PUFAを形成するための代替の生合成経路が、δ6デナチュラーゼ(denaturase)活性を欠くいくつかの生物中に存在している。これらの生物としては、例えば、原生生物アカントアメーバ(Acanthamoeba)種およびユーグレナグラシリス(Euglena gracilis)が挙げられる。代替のC20 PUFA合成における第1工程は、2つの炭素単位による、C18脂肪酸、すなわちリノール酸(LA;18:2、n−6)およびαリノール酸(ALA;18:3、n−3)の伸長にある。次いで、結果として生じる脂肪酸のエイコサジエン酸(20:2、n−6)およびエイコサトリエン酸(20:3、n−3)は、δ8不飽和化およびそれに続くδ5不飽和化によって、アラキドン酸(ARA;20:4、n−6)および/またはエイコサペンタエン酸(EPA;20:5、n−3)へと変換される(SayanovaおよびNapier、Eicosapentaenoic acid:Biosynthetic routes and the potential for synthesis in transgenic plants.Phytochemistry 65(2004年)、147〜158頁;WallisおよびBrowse;The delta−8 desaturase of Euglena gracilis:An alternate pathway for synthesis of 20−carbon polyunsaturated fatty acids.Arch.Biochem.Biophys.362(1999年)、307〜316頁)。
【0007】
高等植物は、予備段階からC20 PUFAを合成する能力を有していない。それらは、ステアリン酸(18:0)から出発して、様々な不飽和化酵素を介して、オレイン酸(C18:1;δ−9不飽和化酵素)、リノール酸(18:2、n−6,δ12不飽和化酵素)、およびαリノール酸(18:3、n−3;δ15不飽和化酵素)を形成する。
【0008】
しかし、いくつかの海洋微生物は、EPAおよびDHAを生成するために全く異なる生合成経路を利用する。これらのPUFA生成微生物としては、γプロテオバクテリアの海洋性の代表種、ならびにサイトファーガフラボバクテリウムバクテロイデス(cytophaga flavobacterium bacteroides)群のいくつかの種、および、現在までのところ、真核原生生物シゾキトリウム種ATCC 20888が挙げられる(Metz他、2001年、Production of polyunsaturated fatty acids by polyketide synthases in both prokaryotes and eukaryotes.Science 293:290〜293頁)。これらは、いわゆるポリケチドシンターゼ(PKS)によって長鎖PUFAを合成する。これらのPKSは、ケチド単位からなる二次代謝産物の合成を触媒する大型酵素に相当する(G.W.Wallis,J.L.WattsおよびJ.Browse、Polyunsaturated fatty acid synthesis:what will they think of next?Trends in Biochemical Sciences 27(9)467〜473頁)。ポリケチドの合成は、脂肪酸合成の酵素反応に類似したいくつかの酵素反応を含む(Hopwood&Sherman Annu.Rev.Genet.24(1990年)37〜66頁;Katz&Donadio Annu.Rev.of Microbiol.47(1993年)875〜912頁)。
【0009】
様々なPUFA−PKS(PUFA合成PKS)の遺伝子配列が既知である。すなわち、エイコサペンタエン酸(EPA)を生成するための情報を含む38kbのゲノム断片が、海洋細菌シュワネラ種(Shewanella sp.)から単離された。続いてこの断片が配列決定され、8つの読み取り枠(ORF)が同定された(H.Takeyama他、Microbiology 143(1997年)2725〜2731頁)。シュワネラに由来するこれらの読み取り枠のうちの5つは、ポリケチドシンターゼ遺伝子に密接な関係がある。同様に、米国特許第5798259号は、シュワネラプトレファシエンス(putrefaciens)SCRC−2874に由来するEPA遺伝子クラスターを説明している。PUFA−PKS遺伝子は、海洋原核生物のフォトバクテリウムプロファンダム(profundum)SS9株(AllenおよびBartlett、Microbiology 2002、148 1903〜1913頁)およびモリテラマリナ(Moritella marina)MP−1株、すなわち以前のビブリオマリヌス(Vibrio marinus)(Tanaka他、Biotechnol.Letters 1999、21、939〜945頁)においても発見された。類似した、PUFAを生成するPKS様のORFも、真核原生生物シゾキトリウムにおいて同定されることができた(Metz他、Science 293(2001年)290〜293頁および米国特許第6556583号、WO02/083870 A2号)。シュワネラに由来するEPA遺伝子クラスターと部分的な一致を示す3つのORFがシゾキトリウムにおいて決定された。数種の原核生物および真核生物シゾキトリウムにおいてこれらの保存されたPKS遺伝子が存在することは、原核生物と真核生物の間の、PUFA−PKS遺伝子の遺伝子水平伝播が可能であることを暗示している。
【0010】
通常はPUFAを生成しない微生物における、単離された遺伝子クラスターを用いたPUFAのトランスジェニック生成さえも、既に示されることができた。したがって、シュワネラ種SCRC−2738に由来するクラスター中に存在する、上述した5つのORF(読み取り枠)は、IPA非生産者である大腸菌(E.coil)およびシネコッカス(Synechoccus)種において測定可能な量のEPAを製造するのに十分である(Yazawa、Lipids 1996、31、297〜300頁、およびTakayama他、Microbiology 1997、143、2725〜2731頁)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、PUFAを大量製造するための新しいPUFA生産者が常に必要とされている。この製造が、例えば、原核生物、原生生物、または植物で起こるかどうかは、最初は重要ではない。目的は常に、出来るだけ経済的に、かつ、出来るだけ環境を保護する方式で、良質のPUFAを大量に製造することである。本発明は、特に効率的なPUFA生産者であるウルケニア種に由来する適切なPUFA−PKS遺伝子を説明するという点で、この目的を達成する。
【0012】
したがって、本発明は、現況技術を考慮して、PUFAの製造に申し分なく適したDHAを産生する微生物ウルケニア種からPUFA−PKS遺伝子を同定し、さらに単離するという課題を有した。さらに、このような遺伝子ならびにそれらの調節エレメントの位置および配置に関する知識も得るべきである。これから得られる知識、特にこれから得られる核酸物質は、同遺伝子型生物ならびにトランスジェニック生物におけるPUFA−PKS遺伝子発現の強化を可能にするはずである。
【0013】
これらの課題、ならびに明示的に挙げなかったが、本文書で最初に論じた文脈から容易に推論または推断することができる他の課題は、本発明の特許請求の範囲において定義する主題によって解決される。
【0014】
1.a.配列番号6(ORF1)、7(ORF2)、8および/または80(ORF3)において表されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含み、かつ、少なくとも70%、好ましくは80%、特に好ましくは少なくとも90%、特により好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列相同性を有する、それらに相同な配列を有し、PUFA−PKSの少なくとも1つのドメインの生物活性を有する、あるいは、
b.配列番号32、34、45、58、59、60、61、72、74および/または77において表されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含み、かつ、少なくとも70%、好ましくは80%、特に好ましくは少なくとも90%、特により好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列相同性を有する、それらに相同な配列を有し、かつ、PUFA−PKSの少なくとも1つのドメインの生物活性を有することを特徴とするPUFA−PKS。
【0015】
2.10個以上のACPドメインを有する、請求項1に記載の単離されたPUFA−PKS。
【0016】
さらに、本発明は、好ましい態様において、配列番号6(ORF1)、7(ORF2)、ならびに/あるいは8および/または80(ORF3)の配列の少なくとも500個の直線的に連続したアミノ酸との間に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、特により好ましくは少なくとも99%の一致を示す少なくとも1つのアミノ酸配列を含むようなPUFA−PKSに関する。
【0017】
さらに、本発明は、好ましい態様において、配列番号6(ORF1)、7(ORF2)、ならびに/あるいは8および/または80(ORF3)の配列の少なくとも500個の直線的に連続したアミノ酸との間に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、特により好ましくは少なくとも99%の一致を示すアミノ酸配列に関する。
【0018】
さらに好ましい態様において、本発明は、前述の特許請求の範囲のうちの一項に記載のPUFA−PKSをコードする単離されたDNA分子に関する。
【0019】
後者は、好ましくは、配列番号6(ORF1)、7(ORF2)、ならびに/あるいは8および/または80(ORF3)の配列の少なくとも500個の直線的に連続したアミノ酸に少なくとも70%一致するアミノ酸配列をコードすることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明は、配列番号3、4、5および/または9の配列に由来する少なくとも500個の連続したヌクレオチドとの間に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、特により好ましくは少なくとも95%の一致を示すような、単離されたDNA分子に関する。
【0021】
さらに好ましい態様において、本発明は、配列番号3、4ならびに5および/もしくは9、または少なくとも500個のヌクレオチドからのそれらの一部分、ならびにそれらの機能的変異体からなる群から好ましくは選択される、転写を制御する少なくとも1つのDNA配列と機能的に連結された、前述のDNA分子のうちの1つを含む組換えDNA分子に関する。
【0022】
さらにより好ましい態様において、本発明は、前述の組換えDNA分子を含む組換え宿主細胞に関する。
【0023】
さらに好ましい観点において、本発明は、少なくとも10個のACPドメインを有する、本発明によるPUFA−PKSを内因的に発現する組換え宿主細胞に関する。
【0024】
さらに、さらにより好ましい態様において、本発明は、そのような組換え宿主細胞の培養を含む、PUFA、好ましくはDHAを含有する油を製造するための方法、ならびに、その方法で製造される油に関する。
【0025】
さらに、さらにより好ましい態様において、本発明は、そのような組換え宿主細胞の培養を含む、PUFA、好ましくはDHAを含有するバイオマスを製造するための方法、ならびに、その方法で製造されるバイオマスに関する。
【0026】
したがって、さらにより好ましい態様において、本発明は、請求項8に記載の核酸、および/または請求項1に記載のアミノ酸配列、もしくはそれに相同な少なくとも500個の連続したアミノ酸の部分を含む、請求項15に記載の組換えバイオマスにも関する。
【0027】
本発明はまた、さらにより好ましい態様において、人工ポリケチド、例えば、ポリケチド抗生物質および/または新しい、改変された脂肪酸を製造するための、配列番号32、33、34、45、58、59、60、61、72、74、および/または77で表される、配列番号6、7、8、および/または80を含むPUFA−PKSに由来する個々の酵素ドメインの使用に関する。
【0028】
本発明によれば、核酸の場合の一致とは、比較される鎖の特定の位置における同一の塩基対を意味する。しかし、ギャップは存在し得る。%で表される一致率を計算するための実行可能な手段の代表例は、blastnプログラムおよびfastaプログラムである。
【0029】
アミノ酸に関しては、相同性という概念は、例えば、タンパク質の機能および/または構造に認めうるほどの影響を与えない、アミノ酸中の保存的交換も含む。このような相同性の値も、例えば、blastp、マトリックスPAM30、ギャップペナルティ(Gap Penalties):9、伸長(Extension):1など当技術分野の熟練者には公知のプログラムによって計算される(Altschul他、NAR 25、3389〜3402頁)。
【0030】
ウルケニア種に由来するPUFA−PKS遺伝子の配列情報は、配列番号3〜5および/または9において定義される核酸配列およびアミノ酸配列によって入手可能である。配列番号1および2は、現在単離されている2種のコスミド上のゲノムDNA配列全体を表す(実施例2および3を参照されたい)。後者は、それらとしては、PUFA合成に不可欠である、3つの重要な読み取り枠ORF1〜3、ならびにそれらに隣接する調節配列に関する情報を含む。さらに、そのゲノム配列から誘導することができるタンパク質配列が、その結果として表される。
【0031】
本発明は、高純度のPUFAを製造するための、本発明による核酸を用いた宿主生物の同種間および異種間形質転換のための方法もさらに含む。単離された読み取り枠は、PUFA、特にDHA、EPAおよびDPAの製造において、好ましくは、同遺伝子型生物ならびにトランスジェニック生物を生じる。
【0032】
それらによって産生されるPUFAは、好ましくは、バイオマスの成分または油として存在する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ウルケニア種に由来するPUFA−PKS遺伝子のゲノム上の位置を説明する図である。
【図2】ウルケニア種に由来するORF2およびORF3の、モリテラマリナ(ジェンバンクアクセッション番号:AB025342.1)、フォトバクテリウムプロファンダムSS9(ジェンバンクアクセッション番号:AF409100)、シュワネラ種SCRC−2783(ジェンバンクアクセッション番号:U73935.1)、およびシゾキトリウム(ジェンバンクアクセッション番号:AF378327、AF378328、AF378329)に由来する、対応する相同なORFとの比較を示す。
【図3】ウルケニア種に由来するORF1の、モリテラマリナ(Moritella marina)(ジェンバンクアクセッション番号:AB025342.1)、フォトバクテリウムプロファンダムSS9(Photobacterium profundum SS9)(ジェンバンクアクセッション番号:AF409100)、シュワネラ種SCRC−2783(Shewanella sp.SCRC−2738)(ジェンバンクアクセッション番号:U73935.1)、およびシゾキトリウム(Schizochytrium)(ジェンバンクアクセッション番号:AF378327、AF378328、AF378329)に由来する、対応する相同なORFとの比較を示す。
【図4】ウルケニア種に由来するORF1の、シゾキトリウムに由来するORF Aとの配列比較を示す図である。
【図5】ウルケニア種に由来するORF2の、シゾキトリウムに由来するORF Bとの配列比較を示す図である。
【図6】ウルケニア種に由来するORF3の、シゾキトリウムに由来するORF Cとの配列比較を示す図である。
【図7】FASTAXを用いて実施した、実施例1で説明するPCR生成物と、データバンク配列(Swiss−PROT Allライブラリー)との配列比較を示す。
【図8】実施例2からコスミドバンクを生成するのに使用されたCosmid SuperCos1(Stragagene社製)のベクターマップを示す。
【図9】BLASTXを用いて実施した、実施例3で説明するPCR生成物と、データバンク配列(Swiss−PROT Allライブラリー)との配列比較を示す。
【0034】
本発明より前には、真核生物、すなわち原生生物シゾキトリウムのPUFA−PKS遺伝子のみが公知であった(米国特許第6566583号、WO02/083870)。次いで決定された配列データは、部分的にcDNAおよび染色体DNAに由来する。本発明において、初めて、PUFA合成に不可欠な真核原生生物のPUFA−PKS遺伝子全てが、染色体DNAから完全に説明される。これにより、以前は知られていなかった、ウルケニア種に由来するPUFA−PKSコーディング遺伝子の情報が決定されるだけでなく、さらに、転写のプロモーターやターミネーターなど隣接する調節エレメントに関するデータも与えられる。さらに、染色体の配列情報により、個々のPUFA−PKS遺伝子の位置および配置を洞察することが可能になる。
【0035】
シュワネラ、フォトバクテリウム、またはモリテラなどの原核生物PUFA−PKSの代表例から以前に知られていたような、クラスター自体はもはや存在しないことが、この場合全く驚くべきことであった。最初に同定されたコスミド(配列番号1)により、個々のORFの直線的配置がウルケニアでは中断されていること、また、個々のORFの読み取り方向が反対向きであることも示された(図1)。これは、広範囲の遺伝子転位の結果である可能性がある。個々のORFは、転位の結果として、明らかにより大きな相互間の間隔も提示する。すなわち、2つのORF1および2の間隔は、約13kbである。第3のORFは、別のコスミド(配列番号2)上で同定されるまで、この場面では同定することができず、また、これらの2種のコスミド(配列番号1および2)の間に部分的な一致を発見することはできなかった(図1)。このことは、ウルケニア種に由来するORFが、空間的に2つのORF1および2の近傍にもはや位置していないことを意味する。これにより、前述の原核生物の代表例から知られているような、PUFA遺伝子クラスターは、真核生物ウルケニア種中にはもはや存在しないと結論づけることができる。ゲノム上の原生生物シゾキトリウムの個々のPUFA−PKS遺伝子の位置および配置は、部分的に決定されており(WO02/083870)、これらもまた、2つのORFAおよびBの逆の向きを示している。しかし、それらは互いから4224塩基対しか離れていない。この配列部分は、特許出願WO02/083870において、双方向的なプロモーターエレメントを有する遺伝子間領域として考察されている。少なくともウルケニアに関して、同種のORF1と2の間の双方向的なプロモーターエレメントは、ウルケニアについて測定された12.95kbの間隔を考慮すると、ありそうにないと思われる。ウルケニアに由来するORF1とORF2の間の12.95kbの領域内に、別の明らかなORFは存在していない。これは、広範囲の組換えおよび/または転位事象が起こった領域を示す。トランスポザーゼ様の事象は、いくつかの反復配列の重複に基づいても起こり得た。
【0036】
ウルケニア種に由来するPUFA−PKSが、EPA生産者シュワネラ(6×ACP)およびフォトバクテリウム(5×ACP)のPUFA−PKS、ならびにDHA生産者モリテラ(5×ACP)およびシゾキトリウム(9×ACP)のそれらと比較して、10個のACPドメインを有し、アシルキャリアータンパク質の最も多数の繰り返しを有することも、さらに特に驚くべきことであった(図3)。このことは、ウルケニア種から単離されたPUFA−PKSが、近縁の原生生物シゾキトリウムに由来するPUFA−PKSと比べて異なったアミノ酸配列を有しているだけでなく、構造的にも独特であることを意味する。別の独自性は、ウルケニア種に由来する第3のORFが、シゾキトリウム由来のORF Cに比べて38アミノ酸短く、また、シゾキトリウム中にはこのように存在していないアラニンに富むドメインをさらに含有するということである(図6)。興味深いことに、この配列は、ORF1に由来する個々のACTドメインの間に存在する領域に似ており、リンカー領域に相当する可能性がある。配列の長さにも、アラニン連続部位が単一のプロリンおよびバリンによってのみ中断されているということにも、類似性が認められる。シゾキトリウムのORF Cに比べて欠けている、ORF3中のアミノ酸の最も大きな部分は、デヒドラーゼ/イソメラーゼドメイン間の30アミノ酸長の欠失の結果である(図6)。結果として、これらのドメインは、互いから少し間隔を置いて、対応するタンパク質上に位置し、このことは、酵素活性に影響を及ぼし得る。ORF3の場合、さらに遠くの5’側に位置するATGコドンが開始コドンとして考えられ、したがって、理論的には、最大1848アミノ酸長のORFさえも存在し得る(配列番号9および80)。同時に存在するORF3の変異体も、この文脈においてあり得る。
【0037】
具体的には、ウルケニア種由来のORF1(配列番号3および6)は、一方では、モチーフ(DXAC)(配列番号12および30)を特徴とする、いわゆるβケトアシルシンターゼドメイン(配列番号14および32)を有する。ウルケニアORF1中の酵素ドメインの活性中心のためのモチーフは、好ましい形態において、17アミノ酸(GMNCVVDAACASSLIAV)の範囲まで拡大することができる(配列番号11および29)。βケトアシルシンターゼドメイン全体は、N末端(配列番号10および28)およびC末端(配列番号13および31)部分に分けることができる。βケトアシルシンターゼドメインの生物学的機能は、脂肪酸および/またはPKSの合成における縮合反応の触媒である。伸長が予定されているアシル基は、チオエステル結合を介してその酵素ドメインの活性中心のシステイン基に結合されており、アシルキャリアータンパク質上のマロニル基の2位の炭素原子へといくつかの工程で転移され、COを放出する。βケトアシルシンターゼドメインに続いて、マロニルCoA−ACPトランスフェラーゼドメイン(配列番号15および33)がある。このドメインは、アシルキャリアータンパク質(ACP)上の4’−ホスホパンテテイン基へのマロニルCoAの転移を触媒する。マロニルCoA−ACPトランスフェラーゼドメインはまた、マロン酸メチルまたはマロン酸エチルをACPに転移させ、その間に、それらは、別の直鎖炭素鎖中に分枝を導入することができる。次に、リンカー領域に続いて、アシルキャリアータンパク質ドメイン(ACPドメイン)の10個の繰り返し(17〜26および35〜44)を有する、アラニンに富む配列(配列番号16および34)が存在する。これらのACPドメインは、それらとしては、主としてアラニンおよびプロリンからなるリンカー領域によって、互いから隔てられている。各ACPドメインは、4’−ホスホパンテテイン分子(LGXDS(L/I))に対する結合モチーフを特徴とする。この場合、4’−ホスホパンテテイン分子は、モチーフ内部の保存されたセリンに結合している。ACPドメインは、4’−ホスホパンテテイン基を介して、伸長中の脂肪酸および/またはポリケチド鎖のための担体としての機能を果たす。ケトレダクターゼに部分的に一致する配列(配列番号27および45)が、その後に続く。これらのドメインの生物学的機能は、3−ケトアシル−ACP化合物のNADPH依存性の還元にある。これは、脂肪酸生合成における最初の還元反応に相当する。この反応はまた、ポリケチド合成においても頻繁に起こる(図3も参照されたい)。
【0038】
ウルケニア種由来のORF2(配列番号4および7)もまた、モチーフ(DXAC)(配列番号48および56)を特徴とする、βケトアシルシンターゼドメイン(配列番号50および58)で始まる。ウルケニアORF2中の酵素ドメインの活性中心のためのモチーフは、好ましい形態において、17アミノ酸(PLHYSVDAACATALYVL)の範囲まで拡大することができる(配列番号47および55)。βケトアシルシンターゼドメイン全体は、N末端(配列番号46および54)およびC末端(配列番号49および57)部分に分けることができる。このドメインの生物活性は、ORF1において説明したβケトアシルシンターゼドメインに相当する。ケトシンターゼ(Kethosynthases)は、伸長サイクルにおいて重要な役割を果たし、脂肪酸合成の他の酵素より高い基質特異性を示す。この場合もまた、これに続いて、βケトアシルシンターゼドメインに部分的に少し一致する配列部分が存在する。さらに、このドメインは、活性中心のためのモチーフDXACを欠いている。これは、II型PKSに類似した系(配列番号51および59)に由来するいわゆる鎖長因子(CLF)の特性を有する。CLFアミノ酸配列は、ケトシンターゼに部分的に一致するが、対応するシステイン基を有する特徴的な活性中心は有していない。PKS系におけるCLFの役割は、現在、議論の的となって論議されている。最近の結果により、CLFドメインの役割は、マロニルACPの脱炭酸にあることが示唆されている。生成されるアセチル基は、続いて、βケトアシルシンターゼドメインの活性中心に結合することができ、したがって、最初の縮合反応のいわゆる出発分子(priming molecule)に相当する。CLFに相同な配列は、分子的なPKS系におけるロードドメイン(load domain)としても発見されている。CLF配列特性を有するドメインは、すべての既知のPUFA−PKS系において存在している。これに続いて、アシルトランスフェラーゼドメイン(配列番号52および60)が存在する。このドメインは、アシルから補酵素AまたはACPドメインへの転移などいくつかのアシル転移を触媒する。ORF2に由来する終結ドメインは、オキシドレダクターゼ(配列番号53および61)との部分的な一致を示し、高い確率で、エノイルレダクターゼドメインに相当する。エノイルレダクターゼドメインの生物活性は、脂肪酸合成の第2の還元反応に存在する。これは、脂肪酸アシルACPのトランス二重結合の還元を触媒する(図2も参照されたい)。
【0039】
ウルケニア種由来のORF3(配列番号5および8)は、2つのデヒドラーゼ/イソメラーゼドメイン(配列番号66、68、72、および74)からなる。いずれのドメインも、直接隣接したシステインを有する「活性部位」ヒスチジンを含む(配列番号67および73ならびに配列番号69および75)。これらのドメインの生物学的機能は、HOの分離(splitting off)を伴う、脂肪酸またはポリケチド分子中へのトランス二重結合の挿入、およびそれに続く、シス異性体への二重結合の変換である。第2のデヒドラーゼ/イソメラーゼドメインは、機能は知られていないが、おそらくはリンカー領域に相当する、アラニンに富む領域(配列番号70および76)に合流する。これに続いて、ORF2中に既に存在する、ウルケニア由来のエノイルレダクターゼドメインに対する部分的一致率が高いエノイルレダクターゼドメイン(配列番号71および77)が存在する。その生物学的機能は、既に前述したエノイルレダクターゼドメインに対応する(図2も参照されたい)。
【0040】
好ましくは2000bp(配列番号62)が、ウルケニア種由来のORF1に対する開始コドンATGの前に、プロモーター配列として存在する。それらは、開始点の前の特に好ましくは1500bp、特により好ましくは1000bpである。
【0041】
好ましくは2000bp(配列番号63)が、ORF1の終結配列として停止コドンTAAの後に存在することができる。停止点の後の1500bpが特に好ましく、1000bpが特により好ましい。塩基配列AATAAAを有する、ORF1のmRNA合成に対する潜在的な終結シグナルは、停止コドンTAAの412bp後に存在する。
【0042】
好ましくは2000bp(配列番号64)が、ウルケニア種由来のORF2に対する開始コドンATGの前に、プロモーター配列として存在する。それらは、開始点の前の特に好ましくは1500bp、特により好ましくは1000bpである。
【0043】
好ましくは2000bp(配列番号65)が、ORF2の終結配列としての停止コドンTAAの後に存在することができる。塩基配列AATAAAを有する、ORF2のmRNA合成に対する潜在的な終結シグナルは、停止コドンTAAの1650bp後に存在する。
【0044】
好ましくは2000bp(配列番号78)が、ウルケニア種由来のORF3に対する開始コドンATGの前に、プロモーター配列として存在する。それらは、開始点の前の特に好ましくは1500bp、特により好ましくは1000bpである。
【0045】
好ましくは2000bp(配列番号79)が、ORF3の終結配列としての停止コドンTAAの後に存在することができる。塩基配列AATAAAを有する、ORF3のmRNA合成に対する潜在的な終結シグナルは、停止コドンTAAの4229bp後に存在する。
【0046】
例えばDHAなどのPUFAは、ウルケニア種において同種的に、ならびに、本発明で決定される配列情報を用いて、例えば大腸菌などの宿主において異種的にも、製造することができる。本発明による核酸配列は、例えば、PUFA生成生物中のPUFA−PKS遺伝子の数を増加させるのに使用されるという点で、PUFAの生成を増加させるのに使用することができる。当然、例えばATPドメインをコードする配列部分など個別の核酸部分も、同種またはさらに異種の生成生物において増やすことができる。特に、ACPドメインは、PUFA合成のために不可欠な補助因子4’−ホスホパンテテインに対する結合部位として、生成を増加させるために生じる。当然、例えば、プロモーター、ターミネーター、およびエンハンサーエレメントなどの様々な調節エレメントの使用も、遺伝的に改変されたPUFA生産者における生成を増加させることができる。個々の配列部分の遺伝的改変は、結果として生じる生成物の構造の変化をもたらし、したがって、様々なPUFAの生成をもたらし得る。さらに、PUFAシンターゼはポリケチドシンターゼに類似しているため、混合系の構築が可能となる。このいわゆるコンビナトリアル生合成は、新しい人工の生物活性物質の製造を可能にする。例えば、PKSおよびPUFA−PKS単位の混合系により、トランスジェニック微生物中で製造される新しいポリケチド抗生物質が考えられる。
【0047】
この場合に存在するPUFA遺伝子の異種発現に適した宿主は、大腸菌の他に、例えば、サッカロミセスセレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)やピキアパストリス(Pichia pastoris)などの酵母、または、例えば、アスペルギルスニダランス(Aspergillus nidulans)やアクレモニウムクリソゲヌム(Acremonium chrysogenum)などの糸状真菌である。例えば、ダイズ、セイヨウアブラナ、ヒマワリ、アマ、または他の植物、好ましくは油の豊富な植物に本発明による遺伝子を導入することによって、PUFA生成植物を作製することができる。PUFA遺伝子の効果的な異種発現のために、例えば、4−ホスホパンテテイントランスフェラーゼなどさらに他の補助的な遺伝子も使用することができる。さらに、強化された、または誘導性の遺伝子発現のために、宿主に特異的なプロモーター/オペレーターの系も使用することができる。
【0048】
PUFAの異種産生のために、複数の原核生物発現系を使用することができる。対応するPUFA遺伝子に加えて、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写ターミネーターも有する発現ベクターを構築することができる。大腸菌トリプトファン生合成のプロモーター/オペレーター領域、およびλファージのプロモーターが、大腸菌におけるこのような調節エレメントの例として挙げられる。同様に、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、またはクロラムフェニコールに対する耐性などの選択マーカーを、適切なベクター上で使用することができる。大腸菌の形質転換に非常に適したベクターは、pBR322、pCQV2、およびpUCプラスミド、ならびにそれらの誘導体である。これらのプラスミドは、ウイルスならびに細菌のエレメントを含有し得る。例えば、JM101、JM109、RR1、HB101、DH1、またはAG1などの大腸菌K12に由来するすべての株を、大腸菌宿主株として使用することができる。当然、他のすべての通例の原核生物発現系も、PUFAの異種産生のために考え得る(Sambrook他も参照されたい)。宿主系として油生成(oil−building)細菌を使用することも考え得る。
【0049】
哺乳動物細胞、植物細胞、および昆虫細胞、ならびに、酵母などの真菌を、真核生物発現系として使用することができる。酵母系の場合、解糖作用からの酵素の遺伝子に由来する転写開始エレメントを使用することができる。これには、アルコールデヒドロゲナーゼ、グリセロールアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグルコイソメラーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼなどの調節エレメントが含まれる。しかし、酸性ホスファターゼ、ラクターゼ、メタロチオネイン、またはグルコアミラーゼなどに由来する遺伝子からの調節エレメントでも、使用することができる。強化された、または誘導性の発現を可能にするプロモーターも、この場合使用される。ガラクトース(GAL1、GAL7、およびGAL10)によって誘導可能なプロモーターも、特に興味深い(Lue他、1987年 Mol.Cell.Biol.7、3446頁以降、およびJohnston 1987年 Mircobiol.Rev.51、458頁以降)。3’終結配列も、好ましくは、酵母に由来する。開始コドン(ATG)のすぐ周辺のヌクレオチド配列は、酵母における遺伝子発現に影響を及ぼすため、酵母に由来する効率的な翻訳開始配列もまた、好ましい。酵母プラスミドが使用される場合、それらは、酵母に由来する複製起点を有し、かつ、選択マーカーを有する。この選択マーカーは、好ましくは、例えば、LEU、TRP、またはHISなどの栄養要求性マーカーである。このような酵母プラスミドは、いわゆるYRp(酵母複製プラスミド)、YCp(酵母セントロメアプラスミド)、およびYEp(酵母エピソームプラスミド)である。複製起点を持たないプラスミドは、Yip(酵母組込み型プラスミド)であり、形質転換されたDNAをゲノム中へ組み込むのに使用される。プラスミドpYES2およびpYX424、ならびにpPICZプラスミドが、特に興味深い。
【0050】
例えば、アスペルギルスニダランスなどの糸状菌が異種のPUFA生産者として使用される場合、対応する生物に由来するプロモーターも使用することができる。強化された発現のためのgpdAプロモーター、および誘導発現のためのa/cAプロモーターを、例として使用することができる。pHELPなどの酵母プラスミド(D.J.BalanceおよびG.Turner(1985年)Development of a high−frequency transfomming vector for Aspergillus nidulans.Gene 36、321〜331頁)、およびura、bio、またはpabaなどの選択マーカーが、好ましくは、糸状菌の形質転換のために使用される。また、糸状菌に由来する3’調節エレメントも好ましい。
【0051】
昆虫細胞におけるPUFAの製造は、バキュロウイルス発現系によって行われることができる。このような発現系は、例えば、Clonetech社またはInvitrogen社から市販されている。
【0052】
例えば、アグロバクテリウムに由来するTiプラスミド、またはカリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower MosaicVirus)(CaMV)、ジェミニウイルス(Geminivirus)、トマトゴールデンモザイクウイルス(Tomato golden Mosaic Virus)、もしくはタバコモザイクウイルス(Tobacco Mosaic Viru)(TMV)などの完全ウイルスなどのベクターを、植物の形質転換のために使用することができる。好ましいプロモーターは、例えば、CaMVの35Sプロモーターである。植物を形質転換するための別の実行可能な手段は、リン酸カルシウム法、ポリエチレングリコール法、プロトプラストのマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはリポフェクションである。DNAを担わせた微粒子の撃ち込みによる形質転換(遺伝子銃)も好ましい。植物におけるPUFA製造の代替手段は、葉緑体の形質転換の結果として得られる。例えば、N末端リーダーペプチドは、葉緑体におけるタンパク質の輸送を可能にする。好ましいリーダーペプチドは、リブロース2リン酸カルボキシラーゼの小型サブユニットに由来するが、他の葉緑体内の(chloroplastidary)タンパク質のリーダーペプチドも、使用することができる。葉緑体ゲノムの安定な形質転換によって、別の実行可能な手段が提供される。特に、遺伝子銃、ただし他の方法も、このために検討することができる(Blowers他、Plant Cell 1989 1 123〜132頁、Kline他、Nature 1987 327 70〜73頁、およびSchrier他、Embo J.4 25〜32頁)。
【0053】
市販されている発現系も、哺乳動物細胞用に使用することができる。特に、例えばレンチウイルスもしくはアデノウイルスの系、またはInvitrogen社のT−Rex系などのウイルス系および非ウイルス系の形質転換系および発現系も例として使用することができる。Invitrogen社製のFlp−In系もまた、哺乳動物細胞におけるDNAの意図された組み込みに使用される。
【0054】
いくつかの実施例を用いて、本発明による方法の基礎を構成している核酸およびアミノ酸を以下に説明する。しかし、それらの配列および本発明はこれらの実施例に限定されない。
図面の簡単な説明
図1は、ウルケニア種に由来するPUFA−PKS遺伝子のゲノム上の位置を説明する。さらに、これらの遺伝子によってコードされるPUFA−PKSの個々のドメインを示す。KS:ケトシンターゼ、MAT:マロニル−CoA:ACPアシルトランスフェラーゼ、ACP:アシルキャリアータンパク質、KR:ケトレダクターゼ、CLF:鎖長因子、AT:アシルトランスフェラーゼ、ER:エノイルレダクターゼ、およびDH:デヒドラーゼ/イソメラーゼ
図2は、ウルケニア種に由来するORF2およびORF3の、モリテラマリナ(ジェンバンクアクセッション番号:AB025342.1)、フォトバクテリウムプロファンダムSS9(ジェンバンクアクセッション番号:AF409100)、シュワネラ種SCRC−2783(ジェンバンクアクセッション番号:U73935.1)、およびシゾキトリウム(ジェンバンクアクセッション番号:AF378327、AF378328、AF378329)に由来する、対応する相同なORFとの比較を示す。進化の過程における個々のORF中およびORF間の遺伝子転位も、ドメイン構造の隣に示す。
【0055】
図3は、ウルケニア種に由来するORF1の、モリテラマリナ(ジェンバンクアクセッション番号:AB025342.1)、フォトバクテリウムプロファンダムSS9(ジェンバンクアクセッション番号:AF409100)、シュワネラ種SCRC−2783(ジェンバンクアクセッション番号:U73935.1)、およびシゾキトリウム(ジェンバンクアクセッション番号:AF378327、AF378328、AF378329)に由来する、対応する相同なORFとの比較を示す。ACPドメイン数およびアミノ酸連続(succession)LGIDSIKRVEILの反復数を強調している。
【0056】
図4は、ウルケニア種に由来するORF1の、シゾキトリウムに由来するORF Aとの配列比較を含む。双方の配列の部分的一致率は、約81.5%である。
【0057】
図5は、ウルケニア種に由来するORF2の、シゾキトリウムに由来するORF Bとの配列比較を含む。双方の配列の部分的一致率は、約75.9%である。
【0058】
図6は、ウルケニア種に由来するORF3の、シゾキトリウムに由来するORF Cとの配列比較を含む。双方の配列の部分的一致率は、約80.0%である。
【0059】
図7は、FASTAXを用いて実施した、実施例1で説明するPCR生成物と、データバンク配列(Swiss−PROT Allライブラリー)との配列比較を示す。
【0060】
図8は、実施例2からコスミドバンクを生成するのに使用されたCosmid SuperCos1(Stragagene社製)のベクターマップを示す。
【0061】
図9は、BLASTXを用いて実施した、実施例3で説明するPCR生成物と、データバンク配列(Swiss−PROT Allライブラリー)との配列比較を示す。
【0062】
実施例
実施例1:ウルケニア種SAM2179から単離されたDNAからのPUFA−PKS特異的配列の増幅
1.1 PUFA−PKSをコードしている遺伝子を含有するゲノムDNAの単離
フロースポイラー(flow spoiler)付き250mlエルレンマイヤーフラスコ中の50ml DH1培地(50g/lグルコース;12.5g/l酵母抽出物;16.65g/lトロピックマリン(Tropic Marin);pH6.0)にウルケニア種SAM2179を植菌し、28℃、150rpmで48時間培養した。続いて、滅菌した水道水で細胞を洗浄し、遠心分離し、細胞沈降物を−85℃で凍結した。次いで、さらに検査するために、細胞沈降物を乳鉢に移し、液体窒素下で乳棒を用いて粉砕して微粉末にした。次いで、微粉砕された細胞物質の10分の1を2mlの溶解緩衝液(50mMトリス/Cl pH7.2;50mM EDTA;3%(v/v)SDA;0.01%(v/v)2−メルカプトエタノール)と混合し、68℃で1時間インキュベートした。次いで、2mlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え、攪拌し、100000rpmで20分間遠心分離した。上層の水相を除去した後、下層を2つの新しい反応容器中に各600μl移し、再び、各600μlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)と混合し、攪拌し、13000rpmで15分間遠心分離した。次いで、個々の上層の相の各400μlを新しい反応容器に移し、各例において1mlエタノール(100%)を添加した後2〜3回逆さにした。次いで、沈殿したDNAをガラス棒上に巻き取り、70%エタノールで洗浄し、乾燥させ、50μlの蒸留水中に溶解させた。この方法で抽出したDNAを2μlのRNアーゼAと混合し、次に使用するまで4℃で保存した。
【0063】
1.2 モチーフ特異的なオリゴヌクレオチドを用いたPCR反応
モチーフ特異的なオリゴヌクレオチドとしてPCRプライマーMOF1およびMOR1を使用した。
【0064】
MOF1:5’−CTC GGC ATT GAC TCC ATC−3’(配列番号81)MOR1:5’−GAG AAT CTC GAC ACG CTT−3’(配列番号82)。上記1.1の節で説明したウルケニア種2179から得たゲノムDNAを1:100に希釈した。次いで、この希釈物2μlを体積50μlのPCR反応混合物(1×緩衝液(Sigma社製);dNTP(各200μM);MOF1(20pmol)、MOR1(20pmol)、および2.5U Taq−DNAポリメラーゼ(Sigma社製))に移し入れた。以下の条件下でPCRを実施した:最初の変性を94℃で3分間、その後に続いて、それぞれ94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間を30サイクル、最後に72℃で8分間。次いで、ゲル電気泳動によってPCR生成物を解析し、T/Aクローニング(Invitrogen社製)によってベクターpCR2.1 TOPO中に適切なサイズの断片を組み込んだ。大腸菌TOP 10F’を形質転換した後、プラスミドDNAを単離し(Qiaprepスピン、QUAGEN社製)、配列決定した。
【0065】
得られた配列データを公式にアクセス可能なEMBLヌクレオチド配列データベース(http://www.ebi.ac.uk/embl/)と比較し、評価した。FASTAXを用いて得られる配列比較により、ウルケニア種SAM2179に由来するPCRの主要生成物について、シゾキトリウム種ATCC20888に由来するPUFA−PKSのアシルキャリアータンパク質(ORF A;ORF:読み取り枠)と部分的な一致が示され、この一致はアミノ酸レベルで約90%であった(図7)。驚くべきことに、ウルケニア種SAM2179中のこのPUFA−PKSを測定するために、わずか1回のPCR実験しか実施する必要がなかった。このことは、使用されたオリゴヌクレオチドの特に高い有効性を示す。
【0066】
実施例2:
ウルケニア種SAM2179に由来するゲノムDNAからの遺伝子バンクの作製
37℃で2分間、500μlの体積中で2.5U Sau3AIを用いて、ウルケニア種SAM2179に由来する50μgのゲノムDNAを部分的に分割し、続いて、同じ体積量のフェノール/クロロホルムを用いて直ちに沈殿させ、次いで、エタノールを用いて沈殿させ、蒸留水中に取り出した。次いで、製造業者の取扱い説明書に従って、このSau3AIで分割したゲノムDNAをSAP(エビのアルカリホスファターゼ;Roche社製)を用いて脱リン酸化した。続いて、反応バッチを65℃で20分間加熱することによって、酵素失活を行った。Cosmid Supercos I(Stratagene社製、図8)をベクターとして使用した。37°Cで数時間、XbaIを用いて、10μgのSupercos I を完全に分割した。次いで、65℃で20分間、酵素を熱失活させ、また、製造業者の取扱い説明書に従って、切断されたコスミドをSAP(エビのアルカリホスファターゼ;Roche社製)を用いて脱リン酸化した。この場合も、反応バッチを65℃で20分間加熱することによって、酵素失活を行った。次いで、XbaIで分割され、脱リン酸化されたSupercos Iコスミドを、37℃で数時間、BamHIを用いて完全に分割した。次いで、フェノール/クロロホルムを用いて、切断されたコスミドDNAを沈殿させ、エタノールを用いて沈殿させ、続いて、蒸留水中に取り出した。ライゲーションのために、XbaIおよびBamHIを用いて分割した1μgのコスミドDNA、ならびにSau3AIで分割したゲノムDNA3.5μgを20μlの体積中で混合し、製造業者の取扱い説明書に従ってT4リガーゼ(Biolabs社製)を用いて、数時間、連結させた。続いて、製造業者の取扱い説明書に従ってGigapack III XL Packaging Extract(Stratagene社製)を用いて、ファージ中にライゲーションバッチの約7分の1をパッケージングした。後者は、その後、大腸菌XL1−Blue MRのトランスフェクション用に使用した。続いて、この遺伝子バンクからのPUFA−PKS特異的コスミドの単離が、QIAGEN社(ヒルデン(Hilden)、ドイツ)によって、ウルケニアPKSに特異的なオリゴヌクレオチドPSF2:5’−ATT ACT CCT CTC TGC ATC CGT−3’(配列番号83)およびPSR2:5’−GCC GAA GAC AGC ATC AAA CTC−3’(配列番号84)を用いたPCRスクリーニングの形態で行われた。続いて、それによって決定されたコスミドクローンC19F09のコスミドDNAを単離し、配列決定した(配列番号1)。
【0067】
実施例3:
ウルケニア種に由来するORF3の同定
ウルケニア種SAM2179に由来するORF3を同定するために、様々なPUFA−PKSの高度に保存された配列部分からオリゴヌクレオチドを導き出した。興味深いことに、PCR増幅に適していると思われた非常に高率の部分的一致が、個々の種間で、デヒドラーゼ/イソメラーゼをコードしている配列部分の領域に現れた。
【0068】
3.1 PUFA−PKSをコードしている遺伝子を含有するゲノムDNAの単離
実施例1.1を参照されたい。
【0069】
3.2 PUFA−PKSに特異的なオリゴヌクレオチドを用いたPCR反応
PUFA−PKSに特異的なオリゴヌクレオチドとして以下のPCRプライマーを使用した:
CFOR1:5’−GTC GAG AGT GGC CAG TGC GAT−3’(配列番号85)
CREV3:5’−AAA GTG GCA GGG AAA GTA CCA−3’(配列番号86)
上記3.1の節で説明したウルケニア種2179から得たゲノムDNAを1:10の比に希釈した。次いで、この希釈物2μlを体積50μlのPCR反応混合物(1×緩衝液(Sigma社製);dNTP(各200μM);CFOR1(20pmol)、CREV3(20pmol)、および2.5U Taq−DNAポリメラーゼ(Sigma社製))に移し入れた。以下の条件下でPCRを実施した:最初の変性を94℃で3分間、その後に続いて、それぞれ94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間を30サイクル、最後に72℃で8分間。次いで、ゲル電気泳動によってPCR生成物を解析し、T/Aクローニング(Invitrogen社製)によってベクターpCR2.1 TOPO中に適切なサイズの断片を組み込んだ。大腸菌TOP 10F’を形質転換した後、プラスミドDNAを単離し(Qiaprepスピン、QUAGEN社製)、部分的に配列決定した。
【0070】
得られた配列データ(配列番号1)を公式にアクセス可能なEMBLヌクレオチド配列データベース(http://www.ebi.ac.uk/embl/)と比較し、評価した。FASTAXを用いて得られる配列比較により、ウルケニア種SAM2179に由来するPCRの主要生成物について、シゾキトリウム種ATCC20888に由来するPUFA−PKSシンターゼのORF Cと部分的な一致が示され、この一致はアミノ酸レベルで約80%であった(図9)。驚くべきことに、ウルケニア種SAM2179中のこのPUFA−PKSを測定するために、わずか1回のPCR実験しか実施する必要がなかった。このことは、使用されたオリゴヌクレオチドの特に高い有効性を示す。続いて、実施例2で説明した遺伝子バンクからのPUFA−PKS特異的コスミドの単離が、QIAGEN社(ヒルデン、ドイツ)によって、PCR用に以前に使用されたオリゴヌクレオチドCFOR1:5’−GTC GAG AGT GGC CAG TGC GAT−3’(配列番号85)およびCREV3:5’−AAA GTG GCA GGG AAA GTA CCA−3’(配列番号86)を用いたPCRスクリーニングの形態で行われた。続いて、それによって決定されたコスミドクローン058G09のコスミドDNAを単離し、配列決定した(配列番号2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.配列番号6(ORF1)において表されるアミノ酸配列を含み、かつ、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、PUFA−PKSの生物活性を有するアミノ酸配列、あるいは、
b.配列番号32において表されるアミノ酸配列を含み、かつ、少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ、βケトアシルシンターゼの生物活性を有するアミノ酸配列、あるいは、
c.配列番号33、34、45において表されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含み、かつ、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号33、34、45のそれぞれに対応して、マロニルCoA−ACPトランスフェラーゼ、ACPドメインの10個の繰り返しを有するアラニンに富む配列、およびケトレダクターゼに部分的に一致する配列による生物活性を有するアミノ酸配列、
を有することを特徴とするPUFA−PKS。
【請求項2】
10個以上のACPドメインを有する、請求項1に記載の単離されたPUFA−PKS。
【請求項3】
配列番号6(ORF1)の配列の少なくとも500個の直線的に連続したアミノ酸との間に少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、PUFA−PKSの少なくとも1つのドメインの生物活性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のPUFA−PKS。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアミノ酸配列をコードしている単離されたDNA分子、およびそれに完全に相補的なDNA。
【請求項5】
配列番号3に由来する少なくとも500個の連続したヌクレオチドとの間に少なくとも80%の一致率を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたDNA分子。
【請求項6】
配列番号62〜65、78、79(ターミネーター/プロモーター)または少なくとも500個のヌクレオチドからのそれらの一部分からなる群から選択される、転写を制御する少なくとも1つのDNA配列と機能的に結合され、請求項4および/または5に記載のDNA分子のうちの1つを含む組換えDNA分子。
【請求項7】
請求項6に記載の組換えDNA分子を含む組換え宿主細胞。
【請求項8】
請求項1に記載のPUFA−PKSを内因的に発現し、PUFA−PKSの少なくとも1つ以上のドメインの活性を有する、請求項7に記載の組換え宿主細胞。
【請求項9】
請求項7または8に記載の宿主細胞の培養を含む、PUFAを含有する油を製造するための方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の宿主細胞の培養を含む、PUFAを含有するバイオマスを製造するための方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法に従って製造されるバイオマスであって、
請求項6に記載の核酸、および/または請求項1に記載のアミノ酸配列もしくはそれと同一配列のうちの少なくとも50個の連続したアミノ酸の部分を含む、バイオマス。
【請求項12】
人工ポリケチドを製造するための配列番号6のアミノ酸配列を含むPUFA−PKSからの個々の酵素ドメインの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−205595(P2012−205595A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167374(P2012−167374)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2007−506732(P2007−506732)の分割
【原出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(503053837)ニュートリノヴァ・ニュートリッション・スペシャルティーズ・アンド・フード・イングリーディエンツ・ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】