説明

エアコン回路によって冷却流体が供給されるブレーキブースタ

本発明はエアコン回路Kを装備した自動車のためのブレーキ装置に係り、このブレーキ装置は、相対的に高い圧力の流体供給源F1と、相対的に低い圧力の流体供給源F2と、各流体供給源F1,F2の一方或いは他方に選択的に接続される空圧ブレーキブースタF3とを備えている。本発明によれば、相対的に高い圧力の流体供給源F1はエアコン回路Kの部分KC1を備えており、この部分KC1はエアコン回路K内の冷却流体の一方向流れXに関してエアコン圧縮機K1の下流側でエアコン膨張弁K2の上流側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して自動車に適用されるブレーキ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
より詳しくは、本発明は、冷却流体、圧縮機及び膨張弁を有するエアコン回路を装備している自動車のためのブレーキ装置に関し、この装置自身は気体流体を比較的高い圧力で選択的に送出する第1の流体供給源と、気体流体を比較的低い圧力で選択的に送出する第2の流体供給源と、可変容量作動チャンバと作動チャンバを第1又は第2の流体供給源へ選択的に接続するために第1と第2の推進力により選択的に作動する制御弁とを有する空圧ブレーキブースタを備えている。
【0003】
自動車産業は長年にわたり、最適な安全及び改善された快適性のための研究を含む注目に値する様々な主要目標を達成することに進んでいる。
この状況は、現状の自動車を、安全か快適のどちらかに関連した多数の新しい部材を用いる方向に向かわせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この革新は自動車産業が直面する2つの他の制約によって遅らされている。それは自動車の軽量化と、これに関連する燃料消費の削減である。
このような背景に関連する本発明は、この微妙な妥協の限界を広げる目的を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明の装置は上記した文章によって与えられた一般的定義に従い、更に、エアコン回路内での前記冷却流体の一方向の流れにおいて、圧縮機の下流側で膨張弁の上流側に位置するエアコン回路の第1部分KC1を備えている第1流体供給源によって本質的に特徴付けられている。
【0006】
望ましくは、第2流体供給源は冷却流体の流れ方向に関して、膨張弁の下流側で圧縮機の上流側に位置するエアコン回路の第2部分を備えている。
エアコン回路の第1部分は高圧アキュームレータを備え、エアコン回路の第2部分はその部分として低圧アキュームレータを備えられることが好都合である。
【0007】
ブースタは例えば米国特許第5172964号明細書、仏国特許第2724356号明細書或いは欧州特許公開第0171585号明細書に記載されている形式の能動弁(active valve)を備え、これはブースタの作動を開始させるために通常は電気的な刺激である信号によって制御できる。
【0008】
従ってこの場合、弁は少なくとも選択的に第1状態又は第2状態を有する作動信号に応答し、この作動信号の第1状態及び第2状態はそれぞれ弁に対する第1の推進力及び第2の推進力となる。
【0009】
一般的な状況において、ブレーキ装置はブースタによって動かされ作動状態か不作動状態に選択的に適応する少なくとも2つのブレーキモータを備え、この装置は制御信号を選択的に生成するのに適した制御信号生成器と信号合成回路とを備え、この信号合成回路は制御信号とブレーキモータの不作動状態信号の同時検出に応じて弁に第1状態の作動信号を送出する。
【0010】
従って、そのような構成により、例えば電気などの補助エネルギによる駐車ブレーキ機能を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の他の特徴や利点は、本発明に係る装置を概略的に示している、限定する意図ではない添付図面を参照して、以下に成される説明から明らかになるであろう。
既述したように、本発明はエアコン回路Kが装備された自動車のためのブレーキ装置に関連する。
【0012】
一般的にそのようなエアコン回路は、内部を常温常圧では気体の冷却流体が流れる管と、圧縮機K1、膨張弁K2、凝縮及び熱抽出システムK3、蒸発及び冷却抽出システムK4、圧力スイッチK5及び流体貯留容器K6とを備えている。
【0013】
この回路Kの管内では、圧力及び温度の全体的に減少する変化に従って、エアコン回路Kにおける圧縮機Kの下流側で膨張弁K2の上流側に位置する第1部分KC1から、エアコン回路Kにおける膨張弁K2の下流側であって圧縮機K1の上流側に位置する第2部分KC2へ冷却流体が流れ方向Xに流れる。
【0014】
ブレーキ装置は知られた態様で、要求に応じて気体流体をそれぞれ相対的に高い圧力と低い圧力で送る2つの流体供給源F1とF2と、空圧ブレーキブースタF3とを備えている。
【0015】
ブースタは、少なくとも1つの可変容量作動チャンバF30と、作動チャンバF30を高圧の流体供給源F1或いは低圧の流体供給源F2に接続する役割の制御弁F31とを備えている。各流体供給源への接続は、例えばブレーキペダルF33に作用する対向する作動力と戻し力の形態及び/又は電子制御信号の形態で受け取る第1又は第2の刺激にそれぞれ応じて制御される。
【0016】
本発明の本質的な特徴によれば、高圧流体供給源F1はエアコン回路Kの部分KC1を備え、エアコン回路K内では冷却流体が流れ方向Xで流れ、部分KC1は圧縮機K1の下流側で膨張弁K2の上流側に位置し、それは望ましくはそれ自身高圧アキュームレ−タKS1を備えている。
【0017】
更に、低圧流体供給源F2はエアコン回路の部分KC2を備えていることが望ましく、冷却流体は流れ方向Xに向かって流れ、部分KC2は膨張弁K2の下流側で圧縮機K1の上流側に位置し、それ自身低圧アキュームレータKS2を備えていることが望ましい。
【0018】
変形例として、ブースタは一方の面に大気圧がかかり他方の面にチャンバ内の圧力がかかる移動壁によって閉鎖される単一チャンバと共に使用される。弁は、求められるブレーキの強さに応じて、単一チャンバを高圧流体源F1或いは低圧流体供給源F2に接続する。
【0019】
望ましい場合において、ブースタF3の弁F31が作動し、例えば第1の状態に適応し第1の状態Sact1に置かれている作動信号Sactの受信に応じて作動チャンバF30を高圧流体供給源F1に接続し、第2の状態に適応し第2の状態Sact2に置かれている作動信号Sactの受信に応じて作動チャンバF30を低圧流体供給源F2に接続する。
【0020】
最も一般的な場合において、本発明に関連して使用されるブレーキ装置は、2つの液圧ブレーキモータF4,F5を備え、それらは液圧マスターシリンダF32を介してこれらのモータに作用するブースタF3によって作動される。
【0021】
従ってブレーキモータF4,F5は、要求されたように、各モータに関連した駐車ブレーキの機械的固定に対応する起動状態或いは各ブレーキモータに関連した駐車ブレーキの固定解除に対応する不作動状態に適応し、各ブレーキモータは例えばそれぞれの信号E4,E5を送ることができる各センサを備えており、その信号は例えばこれら種々の状態を報告する電気信号である。
【0022】
有利な実施形態において、本発明の装置は制御信号生成器Gcomと信号合成回路Clogも備えている。
回路Clogはそれ自身、AND論理ゲートClog1とNOT(AND)論理ゲートClog2を備えている。
【0023】
AND論理ゲートClog1は状態信号E4とE5を受け取り、中間信号Slog1を生成する。
中間信号Slog1と制御信号生成器Gcomから送られる制御信号Scomとを受け取るNOT(AND)論理ゲートClog2は、制御信号ScomとブレーキモータF4,F5の不作動状態信号E4pとE5pを同時に検出したことに応答して、作動信号SactをClog回路の出力で生成してブースタF3の弁F31に送る。
【0024】
ここに説明した装置の動作は以下の通りである。
運転者が自動車を長時間駐車するために止めたい場合、この自動車の運転者は、直ちに制御信号Scomを送出する生成器Gcomを起動する。
【0025】
そしてブレーキモータF4,F5は待機状態になり、状態信号E4,E5は低レベルとなり、第1状態Sact1の作動信号Sactを送出する。
高レベルのScom信号と低レベルのSlog信号を受け取るNOT(AND)ゲートClog2は、作動信号Sactを第1の状態Sact1で送出する。
【0026】
第1状態Sact1の作動信号Sactを受け取ると、弁F31は作動チャンバF30を高圧流体供給源F1に接続し、これによりブースタF3とブレーキモータF4,F5が作動する。
【0027】
ブレーキモータF4,F5が例えば駐車ブレーキの機械的固定状態に対応する起動状態になった場合、中間信号Slog1が高レベルとなる。
とかくするうち生成器Gcomは制御信号Scomを生成するので、2つのブレーキモータF4,F5が駐車ブレーキを固定するとすぐに、NOT(AND)論理ゲートClog2は第1状態Sact1の作動信号Sactの送出を停止する。
【0028】
しかし、生成器Gcomが再び運転者によって起動されると直ぐに、それが送る信号ScomはNOT(AND)論理ゲートClog2を高レベルの信号Slog1によって切り替えて、従って、信号Sactはそれ自身第2の状態Sact2に置かれ、作動チャンバF30と低圧流体供給源F2との間の連通を確立し、ブースタF3をその待機状態へ戻す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るブレーキ装置を示す概略図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却流体と、圧縮機K1と、膨張弁K2とを備えるエアコン回路Kが装備された自動車のためのブレーキ装置であって、
このブレーキ装置は、選択的に気体流体を高圧で送出する第1流体供給源F1と、選択的に前記気体流体を低圧で送出する第2流体供給源F2と、可変容量作動チャンバF30と、作動チャンバF30をそれぞれ前記第1流体供給源F1或いは第2流体供給源F2に接続するために第1或いは第2の推進力によって選択的に作動する制御弁F31を備えた空圧ブレーキブースタF3とを備え、
前記第1流体供給源F1は、前記エアコン回路K内での前記冷却流体の一方向Xの流れにおいて、前記圧縮機K1の下流側で前記膨張弁K2の上流側に位置するエアコン回路Kの第1部分KC1を備えていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ装置において、
前記第2流体供給源F2は、前記冷却流体の流れ方向Xにおいて、前記膨張弁K2の下流側で前記圧縮機K1の上流側に位置するエアコン回路の第2部分KC2を備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブレーキ装置において、
前記エアコン回路の前記第1部分KC1は高圧アキュームレータKS1を備えていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のブレーキ装置において、
前記エアコン回路の前記第2部分KC2は低圧アキュームレータKS2を備えていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のブレーキ装置において、
前記制御弁F31は、選択的に少なくとも第1の状態Sact1或いは第2の状態Sact2を持つ作動信号Sactに応答し、作動信号Sactの前記第1及び第2の状態Sact1とSact2はそれぞれ前記制御弁F31に対して第1及び第2の推進力を構成することを特徴とするブレーキ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のブレーキ装置において、
前記ブースタF3によって動かされて前記駐車ブレーキの機械的固定状態或いは機械的に固定されない不作動状態に選択的に適応する少なくとも2つのブレーキモータF4,F5と、制御信号Scomを選択的に生成するのに適した制御信号生成器(Gcom)と、信号合成回路Clogとを備え、
前記信号合成回路Clogは、前記制御信号Scomと前記ブレーキモータF4,F5の駐車ブレーキの機械的非固定状態を同時に検出したことに応答して、前記第1の状態Sact1で前記作動信号Sactを前記制御弁F31に送出することを特徴とするブレーキ装置。

【公表番号】特表2007−516900(P2007−516900A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546231(P2006−546231)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003272
【国際公開番号】WO2005/070740
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】