説明

エアサスペンションシステム

【課題】エンジンのアイドル時における車両のフロア振動を低減することができるエアサスペンションシステムを提供する。
【解決手段】エアサスペンションシステム10は、車体と車輪4との間に介装され、空気の給排によって車輪4に対する車体の上下位置を調整可能なエアスプリング12と、エアスプリング12への空気の給排を制御する制御部22と、を備える。制御部22は、エンジンのアイドル時、車輪4とエンジンとの間に介装されたドライブシャフト6の車体側への取付角度が小さくなるように、エアスプリング12への空気の給排を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアサスペンションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両挙動制御装置において、車高変化によりドライブシャフト傾斜角度を変化させることが開示されている。この車両挙動制御装置では、ドライブシャフト傾角移動係数Δθが前輪側の車高変化によるドライブシャフト傾角移動係数として決定されている。
【0003】
また、従来、車体と車輪との間に介装され、空気の給排によって車輪に対する車体の上下位置を調整可能なエアサスペンションを備えた車両が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したエアサスペンションを備えた車両では、エアサスペンションで車輪に対する車体の上下位置を調整すると、車輪とエンジンとの間に介装されたドライブシャフトの車体側への取付角度が変化する。
【0006】
ところで、このようなエアサスペンションを備えた車両、特に、フルタイム方式のFR−4WD車両では、エンジンのアイドル時にエンジンのロール振動がドライブシャフトおよびエアサスペンションを経由して車体側に伝達され、車両のフロア振動が増大するという課題があった。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンのアイドル時における車両のフロア振動を低減することができるエアサスペンションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のエアサスペンションシステムは、車体と車輪との間に介装され、空気の給排によって車輪に対する車体の上下位置を調整可能なエアスプリングと、前記エアスプリングへの空気の給排を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、エンジンのアイドル時、車輪とエンジンとの間に介装されたドライブシャフトの車体側への取付角度が小さくなるように、エアスプリングへの空気の給排を制御することを特徴とする。
【0009】
この態様のエアサスペンションシステムによれば、エンジンのアイドル時における車両のフロア振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンのアイドル時における車両のフロア振動を低減することができるエアサスペンションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(A)は、実施の形態に係るエアサスペンションシステムの概略構成を示す図である。図1(B)は、図1(A)における破線で囲まれた領域Aの概略拡大図である。
【図2】エンジンのアイドル時におけるエアサスペンションシステムの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0013】
図1(A)は、実施の形態に係るエアサスペンションシステムの概略構成を示す図である。図1(B)は、図1(A)における破線で囲まれた領域Aの概略拡大図である。図2は、エンジンのアイドル時におけるエアサスペンションシステムの状態を示す図である。なお、図1(A)および図2は、エアサスペンションシステムを車両前方から見たときの状態を示す図である。また、図1(B)では、フロントデファレンシャルギアの連結端部8とドライブシャフト6とを連結するジョイント部7の構造を示すために、連結端部8は断面図としている。
【0014】
図1(A)に示すように、本実施の形態に係るエアサスペンションシステム10は、エアスプリング12、ショックアブソーバ14、アッパーアーム16、ロワーアーム18、ナックル20および制御部22を主な構成として備える。エアスプリング12は、車体の荷重を支えて路面からの衝撃を和らげる。ショックアブソーバ14は、車体の上下振動を減衰する。アッパーアーム16およびロワーアーム18は、車体の前後方向への荷重を受ける。
【0015】
エアスプリング12およびショックアブソーバ14は、上端部がアッパーサポートを介して車体2aに固定されている。ショックアブソーバ14の下端部は、ロワーアーム18に連結されている。ナックル20は、その上部がボールジョイントを介してアッパーアーム16に回動可能に連結されているとともに、その下部がロワーアーム18に連結されている。また、ナックル20は、アクスルハブ5を介して回転可能に車輪4を支持する。ロワーアーム18は、その端部に設けられたブッシュを介して車体側の部材に固定されている。また、アッパーアーム16は、その端部に設けられたブッシュを介して車体側の部材に固定されている。
【0016】
アクスルハブ5には、ドライブシャフト6の一端が連結されている。また、ドライブシャフト6の他端は、車体2bから突出した連結端部8に連結されている。連結端部8は、車体2bに収容されているフロントデファレンシャルギアを介してエンジンに連結されている。以下では適宜、車体2aおよび車体2bを総称して車体2とする。
【0017】
上述のように、エアスプリング12は、車体2と車輪4との間に介装されており、車体2に搭載されたコンプレッサー等からの空気の供給と、供給された空気の排出とによって車輪4に対する車体2の高さ、すなわち車輪4に対する車体2の上下位置を調整可能である。そして、制御部22は、エアスプリング12への空気の給排を制御する。制御部22は、例えば車体側に搭載されたECU等である。したがって、本実施の形態に係るエアサスペンションシステム10は、車高調整装置として機能する。
【0018】
図1(B)に示すように、ドライブシャフト6の他端と連結端部8とは、ジョイント部7を介して連結されている。通常、ドライブシャフト6は、車両の企画等によって定まる車高に応じて連結端部8に対して取付角度θをもって連結されている。ここで、ドライブシャフト6の取付角度θは、ドライブシャフト6の延在方向に延びる仮想線6aと、連結端部8の延在方向に延びる仮想線8aとがなす角度である。また、仮想線8aは、例えば車両の車幅方向に対して平行に延びる線である。
【0019】
取付角度θがついた場合、ジョイント部7がこじりながら摺動する。図1(B)において、矢印Xが摺動方向である。そのため、ジョイント部7の摺動抵抗が大きくなる。この場合、フルタイム方式のFR−4WDの車両では、エンジンのアイドル時にエンジンのロール振動がフロントのドライブシャフト6およびエアサスペンションシステム10の各部を経由して車体ボデーに伝達され、車両のフロア振動が増大してしまうおそれがあった。
【0020】
これに対し、本実施の形態に係るエアサスペンションシステム10では、図2に示すように、制御部22が、エンジンのアイドル時、車輪4とエンジンとの間に介装されたドライブシャフト6の車体側への取付角度θが車両前後方向から見て小さくなるように、エアスプリング12への空気の給排を制御し、車高を調整する。図2では、矢印Yの方向に車体2を変位させている。これにより、ドライブシャフト6の取付角度θが小さくなって、ジョイント部7の摺動抵抗が小さくなる。その結果、エンジンからドライブシャフト6、エアサスペンションシステム10の各部および車体ボデーへの入力を小さくすることができ、エンジン振動に起因したフロア振動を低減することができる。
【0021】
制御部22は、例えば、エンジンが駆動している状態で車速センサが車速0km/hを検知したときに、エンジンのアイドル時であると判断することができる。
【0022】
なお、制御部22は、エンジンのアイドル時以外では、車両の企画等によって定まる車高となるように、すなわち図1(A)の状態となるように、エアスプリング12への空気の給排を制御する。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態に係るエアサスペンションシステム10は、車体2と車輪4との間に介装されたエアスプリング12と、エアスプリング12への空気の給排を制御する制御部22とを備えている。そして、制御部22は、エンジンのアイドル時、ドライブシャフト6の取付角度θが小さくなるように、エアスプリング12への空気の給排を制御している。これにより、フルタイム方式のFR−4WD車両において、エンジンの振動が車体側へ伝達されることを抑制できるため、エンジンのアイドル時における車両のフロア振動を低減することができる。
【0024】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態に変形を加えて生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0025】
2,2a,2b 車体、 4 車輪、 6 ドライブシャフト、 10 エアサスペンションシステム、 12 エアスプリング、 22 制御部、 θ 取付角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車輪との間に介装され、空気の給排によって車輪に対する車体の上下位置を調整可能なエアスプリングと、
前記エアスプリングへの空気の給排を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、エンジンのアイドル時、車輪とエンジンとの間に介装されたドライブシャフトの車体側への取付角度が小さくなるように、エアスプリングへの空気の給排を制御することを特徴とするエアサスペンションシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86574(P2013−86574A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226642(P2011−226642)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】