説明

エアゾールの自動噴霧装置

【課題】エアゾール缶の上部側に自動噴霧のためのモータや減速機構の設置スペースを確保し、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の小型化を実現する。
【解決手段】モータ3により減速機構4を介して駆動カム5を回転させ、この駆動カム5でチルトバルブのステム102を傾動させて、内容物を噴射させるエアゾールの自動噴霧装置であって、下部を前記ステム102に嵌着し、内容物の噴口1を上部に有するノズル2を設け、このノズル2をL字型とし、エアゾール缶100の中心から外れた箇所で立ち上げ、エアゾール缶100の上部側に自動噴霧のためのモータ3や減速機構4および駆動カム5の設置スペースを確保し、前記駆動カム5で、前記ノズル2の上部を横方向に押して、前記ノズル2と前記ステム102を一体的に傾動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエアゾールは、底を付けた円筒状の缶本体と、中心部にバルブを装着したマウンテンキャップとで構成される金属製のエアゾール缶の中に、たとえば芳香や殺虫など用途に応じた液状または粉状の内容物と液化ガスが充填、封入されている。
【0003】
マウンテンキャップは、中心部に、上面が凸、下面が凹になる天付き円筒状のバルブ装着部が形成され、このバルブ装着部の天壁中心にステム挿通孔が開口形成されている。またバルブ装着部の周囲には、上面が凹、下面が凸になるリング状の溝部が形成され、この溝部の外周縁部(マウンテンキャップの外周縁部)に、上面が凸、下面が凹になる略半円形の断面形状を有するリング状の缶本体取付部が形成されている。
【0004】
バルブは、マウンテンキャップのバルブ装着部に下側から圧入固定され、バルブの中心から上方に突出するステムがステム挿通孔を介してマウンテンキャップの中心から上側に突出させている。
【0005】
エアゾール缶は、バルブを装着したマウンテンキャップの外周縁部、つまり缶本体取付部をパッキンを介して缶本体の上部開口縁部にかしめで圧着固定し、缶本体の上部開口をマウンテンキャップで蓋をした構造になっている。
【0006】
エアゾール缶は、缶内のバルブ本体からステム挿通孔を介して缶外にステムを突出している。バルブの軸線はエアゾール缶の軸線上にある。
【0007】
エアゾールには、エアゾール缶の上面中心から外に突出しているステムを、上から押し下げることで内容物を噴射するプッシュダウンバルブを備えたものと、横方向から押して傾けることで内容物を噴射するチルトバルブを備えたものがある。
【0008】
普通、プッシュダウンバルブを備えたエアゾールには、ステムに、内容物をステムとは垂直な横方向に噴射する低背(上から押すため高さは必要ない。高さがあると上から押しにくい。)のボタン(ノズル)が嵌着され、チルトバルブを備えたエアゾールには、ステムに、内容物をステムの軸方向に噴射する高背(横方向から押すため高さが必要。低いと横方向から押しにくい。)ボタン(ノズル)が嵌着されている。
【0009】
チルトバルブを備えたエアゾールについて、内容物を所定時間毎に自動的に噴射させるために、タイマー制御で、モータにより減速機構を介して駆動カムを回転させ、この駆動カムでチルトバルブのステムを傾動させる従来技術がある(たとえば「特許文献1」参照。)。
【特許文献1】特開2004−298780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術は、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧技術であり、エアゾール缶の上部側の中心にチルトバルブのステムやボタンが立ち上がっている。それゆえ、エアゾール缶の上部側には自動噴霧のためのモータや減速機構を設置するだけの十分なスペースがなく、これらはエアゾール缶の外径より外側に設置され、自動噴霧装置が大型になるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、エアゾール缶の上部側に自動噴霧のためのモータや減速機構の設置スペースを確保し、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の小型化を実現することにある。
【0012】
なお、プッシュダウンバルブを備えたエアゾールについても、チルトバルブを備えたエアゾールと同様に、モータを使用してプッシュダウンバルブのステムを上から押し下げたり、その他、ソレノイドを使用してプッシュダウンバルブのステムを直接上から押し下げることで、内容物を所定時間毎に自動的に噴射させることが可能である。
【0013】
この際、エアゾール缶の上部側の中心にはプッシュダウンバルブのステムやボタンが突出するものの、それは低背であることから、エアゾール缶の上部側に自動噴霧のためのモータや減速機構或いはソレノイドなどを設置できる。それゆえ、プッシュダウンバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置には、チルトバルブを備えたエアゾールのそれのような大型になるという問題がないことは、エアゾールの自動噴霧の技術分野における技術常識となっている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、モータにより減速機構を介して駆動カムを回転させ、この駆動カムでチルトバルブのステムを傾動させて、内容物を噴射させるエアゾールの自動噴霧装置において、下部を前記ステムに嵌着し、内容物の噴口を上部に有するノズルを設け、このノズルをL字型とし、エアゾール缶の中心から外れた箇所で立ち上げ、前記駆動カムで、前記ノズルの上部を横方向に押して、前記ノズルと前記ステムを一体的に傾動させることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、次の1〜4の構成を適宜採用することが好ましい。1)前記ノズルの立ち上げ箇所が、前記エアゾール缶の上部側の外側部である。2)前記エアゾール缶の上部側に着脱自在に装着するハウジングを設け、このハウジング内に前記ノズルと一緒にモータ、減速機構、駆動カムを収納する。3)前記ハウジングの下部に、前記ステムを挿通させるステム挿通孔を設けると共に、このステム挿通孔から前記ハウジング内に突出する前記ステムに嵌着するノズル嵌着部を設け、前記ハウジングの上部に、前記ノズルの噴口を前記ハウジング外に臨ませる開口を設ける。4)前記ノズルは、ステム嵌着部を有する第1ノズルと、前記噴口を有する第2ノズルと、これら第1ノズルと第2ノズルを接続する管体とで構成されている。5)前記ノズルの噴口が、前記ステムと平行な軸線上にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、ノズルをL字型とし、従来エアゾール缶の上部側の中心で立ち上がっていたノズルを、エアゾール缶の上部側の中心から外れた箇所で立ち上げるから、エアゾール缶の上部側に自動噴霧のためのモータや減速機構の設置スペースを確保でき、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の小型化を実現できる。
【0017】
上記1)の構成を採用することにより、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、エアゾール缶の上部側に自動噴霧のためのモータや減速機構の設置スペースを最も広く確保できる。上記2)の構成を採用することにより、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、小型コンパクトで取り扱いやすい形態にできる。上記3)の構成を採用することにより、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、エアゾール缶の上部側に容易に装着できる。上記4)の構成を採用することにより、ノズルのステム嵌着部と噴口を別体とするから、ノズルの金型を製作する上で加工性が向上し、ノズルの製造コストを抑えながら精度の高い噴口を得られ、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の噴霧形状などのバラツキを抑え、良質な自動噴霧を容易かつ安価に実現できる。また、噴口を有する第2ノズルを取り替えるだけで、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の噴霧形状などを用途に応じて適宜変更できる。上記(5)の構成を採用することにより、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、従来と同様にエアゾールの自動噴霧に好適な向きに噴射できる。すなわち、設置場所を選択する上で自由度が高く、効果的な空間噴霧を行えるなどの利点がある上向き噴射を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るエアゾールの自動噴霧装置の内部構造を示す断面図であり、チルトバルブを備えたエアゾールの上部を二点鎖線で示し、エアゾールの上部側に装着された自動噴霧装置を実線で示している。
【0019】
図1において、チルトバルブを備えたエアゾールは既述した公知のもので、本発明の主体は自動噴霧装置にあるので、詳しい説明は省略する。ただし、図1において、100はエアゾール缶、101はエアゾール缶100のマウンテンキャップにおける外周縁部である缶体取付部、102はエアゾール缶100の上面中心から外に突出しているステム(チルトバルブの)である。
【0020】
次に、図1の自動噴霧装置を図2〜図7を参照して説明する。図2は図1の自動噴霧装置の外観を示す斜視図、図3は図1の自動噴霧装置の自動噴霧機構を示す斜視図、図4は図1の自動噴霧装置の自動噴霧機構を示す側面図、図5は図1の自動噴霧装置の自動噴霧機構を示す平面図、図6は図1の自動噴霧装置の分解斜視図、図7は図1の自動噴霧装置の動作を示す断面図である。
【0021】
図1において、自動噴霧装置は、下部をステム102に嵌着し、エアゾール缶100に充填、封入された内容物の噴口1を上部に有する合成樹脂製のノズル2を設け、自動噴霧機構が、ノズル2の上部をエアゾール缶100の軸線とは垂直な横方向(水平方向)に押し、ノズル2とステム102を一体的に傾動させ、ノズル2の噴口1から内容物を噴射させるもので、自動噴霧機構は、タイマー制御で、モータ3により減速機構4を介して駆動カム5を回転させ、この駆動カム5でノズル2の上部を横方向に押すものである。
【0022】
この際、ノズル2はL字型とし、下部のステム嵌着部6からそのまま立ち上げるのではなく、まず横方向に延びた後、エアゾール缶100の上部側(エアゾール缶100の外径内)で、エアゾール缶100の中心(エアゾール缶100の軸線上)から外れた箇所(本実施形態では、エアゾール缶100の中心から最も遠く離れた外側部)で上向きに屈曲させて立ち上げるもので、このL字型のノズル2により、エアゾール缶100の上部側に自動噴霧機構、つまりモータ3と減速機構4および駆動カム5の設置スペースを確保し、そこにそれらを設置するように構成している。
【0023】
L字型のノズル2は、図6に示すように、ステム嵌着部6を有する第1ノズル7と、噴口1を有する第2ノズル8と、これら第1ノズル7と第2ノズル8を接続する管体9とで構成している。
【0024】
第1ノズル7は、下端にステム嵌着部6を一体に形成すると共に、上端に第2ノズル取付部11を一体に形成したコ字状の断面形状を有するチャンネル10を設け、チャンネル10はL字型とし、正面側および下面側に開いたL字形の噴射経路12を形成している。
【0025】
ステム嵌着部6は四角柱状に形成され、ステム嵌着部6の正面側上部をチャンネル10の下端に連結し、ステム嵌着部6の下部をチャンネル10より下側に突出させている。ステム嵌着部6の正面側上部には、噴射経路12の下部に突出する下部管接続口13を設け、ステム嵌着部6の下面中心部には、ステム102の先端部(上端部)を挿入するステム挿入孔14を設け、ステム嵌着部6内に、ステム102の軸線と同一軸線上にあるステム挿入孔14とステム102の軸線と垂直な軸線上にある管接続口13とを連通接続するL形の通路15を設けている。またステム嵌着部6の正面に隣接する左右側面の下部には、ノズル2の上下に動く範囲を規制するために、ステム102の軸線と直角に交差する軸線上で突出するピン状の左右被規制部16を設けている。なお、ステム嵌着部6の外形状は、例えば円柱状など四角柱状以外の形状でもよい。
【0026】
第2ノズル取付部11はコ字状に形成され、内側に左右側方と背面側に開いた歯車通過部17を形成している。第2ノズル取付部11の左右側部には、第2ノズル取付部11の正面側に突出する左右一対のフック片18を設けている。
【0027】
第2ノズル8は、ステム102と平行な軸線上に噴口1を形成するもので、噴口1の周囲に張り出す略正方形のフランジ19を設け、フランジ19の左右および背面側の3側縁から噴口1を囲う平面視コ字状のカバー20を一体に立ち上げると共に、フランジ19の左右および正面側の3側縁からスカート21を一体に垂下している。
【0028】
フランジ19の下面には、スカート21内に噴口1と同一軸線上で突出する上部管接続口22を設け、スカート21の左右側面には、左右のフック片18に対する係合部23を設けている。噴口1は、逆円錐状に形成され、上部管接続口22にオリフィス(絞り)24を介して連通接続されている。
【0029】
管体9は、合成樹脂製で可撓性を有するL字形の細いチューブである。
【0030】
ノズル2の組み立ては、第1ノズル7の正面側から左右フック片18の間に第2ノズル8のスカート21を押し込んで、左右フック片18をそれらに対応する左右係合部23に嵌め込み、第1ノズル7の上部に第2ノズル8を装着する工程と、管体9の下端を第1ノズル7の下部管接続口13に接続すると共に、管体9の上端を第2ノズル8の上部管接続口22に接続し、第1ノズル7のステム挿入孔14と第2ノズル8の噴口1を連通接続する工程とで完了する。
【0031】
エアゾール缶100の上部側に設置する自動噴霧機構はモータ3として小型のDC(直流)モータを使用するもので、図1,図3〜図5に示すように、減速機構4に、互いに噛み合う大小一対の歯車であって、エアゾール缶100の軸線と平行なモータ軸25上に設ける第1小歯車26およびエアゾール缶100の軸線と平行な軸上に設ける第1大歯車27と、互いに噛み合う大小一対の歯車であって、第1大歯車27と同軸上で一体に設ける第2小歯車28およびエアゾール缶100の軸線と平行な軸上に設ける第2大歯車29と、互いに噛み合う大小一対の歯車であって、第2大歯車29と同軸上で一体に設ける第3小歯車30およびエアゾール缶100の軸線と平行な軸上に設ける第3大歯車31とを設けている。
【0032】
駆動カム5は、減速機構4の最終段の第3大歯車31と一体に設けるもので、一部(一端側)が第3大歯車31の外径より外側に突出する略長円形の周側面、つまりカム面32を形成し、カム面32をノズル2の上部背面に当接させている。
【0033】
この際、駆動カム5と一体の第3大歯車31の外側部を、ノズル2の上部背面にある凹部、つまり歯車通過部17に入り込ませることで、第3大歯車31の外径より内側にあるカム面32と外側にあるカム面32、つまりカム面32の全周をノズル2の上部背面(第2ノズル取付部11の上端面)に当接させるようにしている。これにより、駆動カム5を減速機構4の最終段の第3大歯車31に一体に設け、部品点数および組み立て工程の削減を図ったとしても、一体の駆動カム5と第3大歯車31をエアゾール缶100の上部側の中心から外れた外側部により片寄せて設置でき、モータ3や減速機構4の他の歯車がエアゾール缶100の上部側に設置しやすくなると共に、減速機構4などを設計する上で自由度が高くなる。
【0034】
また、自動噴霧装置は、図1,図2に示すように、エアゾール缶100の上部側に着脱自在に装着する合成樹脂製のハウジング33を設け、ハウジング33内にノズル2と一緒に自動噴霧機構、つまりモータ3と減速機構4および駆動カム5を収納するものである。
【0035】
ハウジング33は、収納対象の全てがエアゾール缶100の上部側に設置するものであるから、エアゾール缶100の外径と略等しい外径を有する円筒状を基本形状とすることができ、ノズル2とモータ3と減速機構4および駆動カム5の設置スペースを囲うエアゾール缶100の外径と略等しい外径を有する円筒状の側壁34と、側壁34の上部開口を閉鎖する天壁35と、側壁34の下部開口を閉鎖する底板36とを有し、ハウジング33の正面側の上部に、ハウジング33の正面側の上角部を面取りするような傾斜面(平面)に沿う上部傾斜壁37を形成し、上部傾斜壁37の中央部からその下側の側壁34の上部に縦長の開口38を設け、開口38からノズル2の上部をハウジング外に臨ませ、かつ突出させるように構成している。
【0036】
ハウジング33の底面には、底板36の中央部を内面(上面)が凸、外面(下面)が凹になるように内側に張り出す円形凹部であるハウジング装着部39を設け、底板36の中心部には、内外面貫通の孔であるステム挿通孔40を設け、ハウジング装着部39をマウンテンキャップにおける缶体取付部101に上から嵌着させることで、ステム102をステム挿通孔40を介してハウジング33の下部中心に突出させた状態で、ハウジング33をエアゾール缶100の上部側に着脱自在に装着するように構成している。
【0037】
ハウジング33内の下部には、図6にも示すように、底板36から垂直に立ち上げた囲い壁41によって形成した平面視十字形で上面開放の溝であるノズル嵌着部42を設けている。ノズル嵌着部42は、前後方向(ハウジング33の正面背面方向)に延びる一方の溝と、左右方向(ハウジング33の左右側面方向)に延びる他方の溝とが、ハウジング33内の下部中心で直角に交差している。また交差部から4方向に延びる4つの溝半部のうち、前方に延びる1つの溝半部のみが底板36の端に達し、その端部がハウジング33の後述する内側壁43で閉鎖され、残りの3つの溝半部は内側壁43に達することなく、その手前側でそれぞれの端部が囲い壁41で閉鎖されている。さらに交差部の下側にはステム挿通孔40がある。
【0038】
ノズル嵌着部42における交差部から左右方向に延びる溝半部内にノズル2の被規制部16を嵌着させて、ノズル2の下部をノズル嵌着部42に嵌着させ、ノズル2のステム挿入孔14をステム挿通孔40の上側に相対させ、ハウジング33のエアゾール缶100への装着動作で、ステム102をステム挿通孔40を介してノズル2のステム挿入孔14に挿入するように構成している。
【0039】
ノズル2は、ノズル嵌着部42における交差部から前方に延びる1つの溝半部の端部で上向きに屈曲してハウジング33の側壁34に沿って立ち上げられ、ノズル3の上部を開口38からハウジング33外に臨ませている。
【0040】
ハウジング33の背面側または内側上部には電源収納部44を設けるもので、図にはハウジング33の背面側にある側壁34を外面が凸、内面が凹になるように外側に張り出して形成し、同時に底も形成し、ハウジング33の背面側に、単3電池(図示省略)を縦にした状態で2本平行に収納できる上面開放の電源収納部44を示している。この電源収納部44の開放上面は蓋(図示省略)で開放可能に閉じられる。
【0041】
なお、ハウジング33の最上部にある天壁35を外面(上面)が凹、内面(下面)が凸になるように内側に張り出して形成することで、ハウジング33の内側上部に、ハウジング33の内径より短い長さの乾電池を横にした状態で複数本(たとえば2本)平行に収納できる上面開放の電源収納部を形成することができる。この際も開放上面は蓋で開放可能に閉じられる。ハウジング33の背面側に張り出して形成する電源収納部44では、その側壁に電池出入用の開口を形成してもよい。
【0042】
ハウジング33は、図1,図6に示すように、上ハウジング45と下ハウジング46とで構成している。
【0043】
上ハウジング45は、側壁34と天壁35と上部傾斜壁37と電源収納部44とを一体に形成し、開口38を有し、下ハウジング46は、底板36と囲い壁41を一体に形成し、ハウジング装着部39とステム挿通孔40およびノズル嵌着部42を有すると共に、上ハウジング45内の下部に下ハウジング46を着脱自在に嵌合固定するために、側壁34の内径と略等しい外径を有する円筒状の内側壁43を底板36の縁部から一体に立ち上げている。
【0044】
さらに、自動噴霧装置は、図1,図3〜図6に示すように、自動噴霧機構のベース47とカバー48を設けている。
【0045】
ベース47は、側壁34の内径と略等しい外径を有し、下ハウジング46の上に載置固定する円板状の蓋体であって、ノズル2を挿通させるための切欠部49と、切欠部49の縁部からノズル2の立ち上がり部分における上下中間部の左右側方と背面側に立ち上げる囲い壁50と、ベース47の縁部から上方に突出するカバー位置決め用のキー51とを設け、ベース47の上側で、減速機構4の大小一体の歯車27,28および29,30と、駆動カム5と一体の歯車31とを、それぞれ、回転自在に軸支するように構成している。また、ベース47の下面には、ノズル嵌着部42における交差部から左右方向に延びる溝半部内に嵌着されたノズル2の被規制部16に当接させて、ノズル2の上下に動く範囲を規制するための規制部(図示省略)が突出形成されている。
【0046】
カバー48は、側壁34の内径と略等しい外径を有する天付き円筒状のホルダであって、ノズル2の上部を遊嵌するための切欠部52と、ベース47のキー51を嵌合するカバー位置決め用のキー溝53とを設け、ベース47の上に被着し、モータ3を保持すると共に、大小一体の歯車29,30と駆動カム5と一体の歯車31の各支軸上部を保持するように構成している。
【0047】
なお、図6において、54はモータ3の電源回路や制御回路など自動噴霧回路を構成するプリント回路基板である。このプリント回路基板54には駆動カム5の位置を検出するスイッチ(図示省略)を実装して、駆動カム5を図5の実線に示すノズル非押圧位置で停止させるように制御している。
【0048】
次に、図1の自動噴霧装置の組み立ての一例を説明する。
【0049】
上ハウジング45の所定箇所に取り付けたオン(起動)/オフ(停止)操作用のスイッチ(図示省略)および電源収納部44に取り付けた端子(図示省略)とをリード線などを介してプリント回路基板54に電気接続すると共に、モータ軸25に第1小歯車26を取り付け、これらプリント回路基板54およびモータ3をカバー48に固定し、このカバー48を上ハウジング45の下部開口から内側に嵌め込みビス止めで着脱自在に固定し、電装部品の組み立てを行う。
【0050】
一方、ベース47の上でモータ3および減速機構4の第1小歯車26以外の自動噴霧機構を組み立て、下ハウジング46のノズル嵌着部42にノズル2の下部を上から嵌着した後、ベース47の上に載置し、下ハウジング46の上部開口を蓋をした状態で、下ハウジング46にベース47をビス止めで着脱自在に固定し、図3〜図5に示すように(ただし、モータ3は除く)、メカ部品の組み立てを行う。
【0051】
そして、上ハウジング45を上から下ハウジング46に被着し、ベース47のキー51をカバー48のキー溝53に嵌合させ、上ハウジング45内の下部に下ハウジング46を着脱自在に嵌合固定させて、ハウジング33を組み立て、このハウジング33を組み立てに伴い、モータ軸25上の第1小歯車26が第1大歯車27に噛み合わされ、自動噴霧機構が完全に組み立てられ、ハウジングン33内にノズル2と一緒に自動噴霧機構、つまりモータ3と減速機構4および駆動カム5が収納されて、図1の自動噴霧装置の組み立てが完了する。
【0052】
次に、図1の自動噴霧装置の動作を図1および図7を参照して説明する。
【0053】
図1に示すように、ハウジング33、つまり自動噴霧装置をエアゾール缶100の上部側に装着した状態で、スイッチ操作で自動噴霧装置を起動すると、モータ3により減速機構4を介して、駆動カム5を、図1および図5の実線に示すように、第3大歯車31と同心な円周上にあるカム面32がノズル2の上部背面(第2ノズル取付部11の上端面)に当接するノズル非押圧位置から360度(1回転)回転させ、この動作をタイマー制御で所定時間(たとえば5分)おきに繰り返して行う。
【0054】
そして、駆動カム5が1回転する間に、第3大歯車31の外径より内側にあるカム面32で、ノズル2の上部背面(第2ノズル取付部11の上端面)を横方向(正面側)に押すことで、図5の二点鎖線および図7に示すように、ノズル2とステム102を一体的に傾動(揺動)させて、開口38からハウジング33外に突出するノズル2の上部の噴口1から内容物を上向きに噴射させる。したがって、内容物を所定時間(たとえば5分)毎に自動的に噴射させる。
【0055】
上記から明らかなように、本実施形態の自動噴霧装置は、モータ3により減速機構4を介して駆動カム5を回転させ、この駆動カム5でチルトバルブのステム102を傾動させて、内容物を噴射させるエアゾールの自動噴霧装置であって、下部を前記ステム102に嵌着し、内容物の噴口1を上部に有するノズル2を設け、このノズル2をL字型とし、エアゾール缶100の中心から外れた箇所で立ち上げ、前記駆動カム5で、前記ノズル2の上部を横方向に押して、前記ノズル2と前記ステム102を一体的に傾動させるもので、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、ノズル2をL字型とし、従来エアゾール缶100の上部側の中心で立ち上がっていたノズルを、エアゾール缶100の上部側の中心から外れた箇所で立ち上げるから、エアゾール缶100の上部側に自動噴霧のためのモータ3や減速機構4および駆動カム5の設置スペースを確保でき、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の小型化を実現できる。
【0056】
また、前記ノズル2の立ち上げ箇所が、前記エアゾール缶100の上部側の外側部であるから、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、エアゾール缶100の上部側に自動噴霧のためのモータ3や減速機構4および駆動カム5の設置スペースを最も広く確保できる。
【0057】
また、前記エアゾール缶100の上部側に着脱自在に装着するハウジング33を設け、このハウジング33内に前記ノズル2と一緒にモータ3、減速機構4、駆動カム5を収納するから、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、小型コンパクトで取り扱いやすい形態にできる。
【0058】
また、前記ハウジング33の下部に、前記ステム102を挿通させるステム挿通孔40を設けると共に、このステム挿通孔40から前記ハウジング33内に突出する前記ステム102に嵌着するノズル嵌着部42を設け、前記ハウジング33の上部に、前記ノズル2の噴口1を前記ハウジング33外に臨ませる開口38を設けるもので、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、エアゾール缶100の上部側に容易に装着できる。
【0059】
また、前記ノズル2は、ステム嵌着部6を有する第1ノズル7と、前記噴口1を有する第2ノズル8と、これら第1ノズル7と第2ノズル8を接続する管体9とで構成されているもので、ノズル2のステム嵌着部6と噴口1を別体とするから、ノズル2の金型を製作する上で加工性が向上し、ノズル2の製造コストを抑えながら精度の高い噴口1を得られ、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の噴霧形状などのバラツキを抑え、良質な自動噴霧を容易かつ安価に実現できる。また、噴口1を有する第2ノズル8を取り替えるだけで、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置の噴霧形状などを用途に応じて適宜変更できる。
【0060】
また、前記ノズル2の噴口1が、前記ステム102と平行な軸線上にあるから、チルトバルブを備えたエアゾールの自動噴霧装置について、従来と同様にエアゾールの自動噴霧に好適な向きに噴射できる。すなわち、設置場所を選択する上で自由度が高く、効果的な空間噴霧を行えるなどの利点がある上向き噴射を行える。
【0061】
なお、本実施の形態では、減速機構4として大小一対の平歯車を3組使用するもので本発明の一実施の形態を説明したが、本発明は本実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアゾールの自動噴霧装置の内部構造を示す断面図である。
【図2】図1の自動噴霧装置の外観を示す斜視図である。
【図3】図1の自動噴霧装置の自動噴霧機構を示す斜視図である。
【図4】図1の自動噴霧装置の自動噴霧機構を示す側面図である。
【図5】図1の自動噴霧装置の自動噴霧機構を示す平面図である。
【図6】図1の自動噴霧装置の分解斜視図である。
【図7】図1の自動噴霧装置の動作を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 噴口
2 ノズル
3 モータ
4 減速機構
5 駆動カム
6 ステム嵌着部
7 第1ノズル
8 第2ノズル
9 管体
33 ハウジング
38 開口
40 ステム挿通孔
42 ノズル嵌着部
100 エアゾール缶
102 ステム(チルトバルブの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより減速機構を介して駆動カムを回転させ、この駆動カムでチルトバルブのステムを傾動させて、内容物を噴射させるエアゾールの自動噴霧装置において、下部を前記ステムに嵌着し、内容物の噴口を上部に有するノズルを設け、このノズルをL字型とし、エアゾール缶の中心から外れた箇所で立ち上げ、前記駆動カムで、前記ノズルの上部を横方向に押して、前記ノズルと前記ステムを一体的に傾動させることを特徴とするエアゾールの自動噴霧装置。
【請求項2】
前記ノズルの立ち上げ箇所が、前記エアゾール缶の上部側の外側部である請求項1に記載のエアゾールの自動噴霧装置。
【請求項3】
前記エアゾール缶の上部側に着脱自在に装着するハウジングを設け、このハウジング内に前記ノズルと一緒にモータ、減速機構、駆動カムを収納する請求項1または2に記載のエアゾールの自動噴霧装置。
【請求項4】
前記ハウジングの下部に、前記ステムを挿通させるステム挿通孔を設けると共に、このステム挿通孔から前記ハウジング内に突出する前記ステムに嵌着するノズル嵌着部を設け、前記ハウジングの上部に、前記ノズルの噴口を前記ハウジング外に臨ませる開口を設ける請求項3に記載のエアゾールの自動噴霧装置。
【請求項5】
前記ノズルは、ステム嵌着部を有する第1ノズルと、前記噴口を有する第2ノズルと、これら第1ノズルと第2ノズルを接続する管体とで構成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエアゾールの自動噴霧装置。
【請求項6】
前記ノズルの噴口が、前記ステムと平行な軸線上にある請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエアゾールの自動噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−279483(P2009−279483A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131783(P2008−131783)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】