説明

エアゾール容器および該エアゾール容器を用いたエアゾール製品

【課題】金属を腐食する浸透性の強いエアゾール組成物を充填した場合でも腐食されず、ステムラバーが膨潤してもバルブのシール性および作動性が著しく低下することがないエアゾール容器およびエアゾール製品を開発する。
【解決手段】エアゾール容器2とエアゾール組成物とからなるエアゾール製品であって、エアゾール容器が、非金属製の容器本体と容器本体に固着されたエアゾールバルブとからなり、エアゾールバルブが、ステム10とステムラバー11とスプリング12からなる弁機構を有し、ステムが、ステム孔10cを有するステム上部10aと上面が凹んだ円柱状のステム下部10bとからなり、ステム孔が、スプリングにより付勢されたステム下部10bの上端外周縁とステムラバー下面とによりシールされ、ステムラバーがアクリロニトリルブタジエンゴムからなり、エアゾール容器に、ステムラバーの膨潤率が10〜30%となるエアゾール組成物が充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器および該エアゾール容器を用いたエアゾール製品に関する。さらに詳しくは、非金属製の容器本体と、該容器本体の口部に固着される特定の弁機構を備えたエアゾールバルブとからなるエアゾール容器と、当該エアゾール容器に、ステムラバーの膨潤率が10〜30%となる特定のエアゾール組成物が充填されたエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤を充填したエアゾール容器の開発において、一般的な染毛剤には酸性染料や酸化染料などの染料を毛髪内(毛小皮内、毛小皮質)に浸透させるためにベンジルアルコールやN−メチルピロリドンなどの浸透性の強い溶剤が含有されており、金属からなるエアゾール容器を腐食しやすいという問題があった。かかる問題を解決するために、特許文献1には、金属の腐食を防ぐ目的、内容物である過酸化水素の反応や分解によってエアゾール容器の内圧が上昇することを抑制する目的で、ポリエステル製のエアゾール容器を用いたエアゾール製品の技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−309382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のエアゾール製品は、エアゾールバルブのステムラバーが常にエアゾール組成物と接触しているため、前記溶剤を含有した場合にステムラバーが大きく膨潤してバルブの作動性、特に使用時に押しボタンを押し下げたときの荷重(以下、作動荷重)が高くなり硬く感じる、押しボタンを押し下げ噴射が開始するタイミングに差が生じるなど、著しく低下する問題がある。そのため、現在は膨潤率の小さいフッ素を含有するステムラバーを使用しているが、前記ステムラバーはコストが高い問題がある。
【0005】
本発明のエアゾール容器およびエアゾール製品は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、金属を腐食するような浸透性の強いエアゾール組成物を充填した場合であっても腐食されず、また、ステムラバーが大きく膨潤してもバルブのシール性および作動性が著しく低下することがない安定なエアゾール容器、およびエアゾール製品を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかわるエアゾール容器は、非金属製の容器本体と、該容器本体の口部に固着されたエアゾールバルブとからなるエアゾール容器であって、
前記エアゾールバルブが、ステムとステムラバーとスプリングとからなる弁機構と、該弁機構を収容するハウジングと、該ハウジングを保持すると共に非金属性の容器本体の口部上面に設けられたガスケットを圧縮するように容器本体の口部に固着されたカバーキャップとを有し、
前記ステムが、ステム孔を有する筒状のステム上部と、上面が下方に凹んだ円柱状のステム下部とからなり、
前記ステム孔が、それぞれの両端が前記ハウジングと前記ステム下部に圧縮保持されたスプリングにより上方に付勢された前記ステム下部の上面外周縁と、前記ステムラバーの下面とによりシールされ、
前記ステムラバーがアクリロニトリルブタジエンゴムからなることを特徴としている。
【0007】
前記ステムラバーの厚さが0.9〜1.4mmであることが好ましい。
【0008】
また、本発明にかかわるエアゾール製品は、前記ステムラバーの膨潤率が10〜30%となるようなエアゾール組成物が、前記エアゾール容器に充填されてなることを特徴としている。
【0009】
前記エアゾール組成物が、酸性の水性原液と液化ガスとを含有することが好ましい。
【0010】
前記エアゾール組成物が、酸性染毛剤、2液式染毛剤用酸化剤、パーマ剤用酸化剤、から選ばれる1種であることが好ましい。
【0011】
前記エアゾール組成物が、浸透促進剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属を腐食する浸透性の強いエアゾール組成物を充填した場合であっても腐食されることがなく、また、ステムラバーが大きく膨潤しても特定構造の弁機構を備えているエアゾールバルブを用いているため、バルブのシール性および作動性が著しく低下しない安定なエアゾール容器を得ることができる。また、本発明によれば、ステムラバーの膨潤率が10〜30%と大きな範囲になるエアゾール組成物を充填しているにもかかわらず、バルブのシール性および作動性が著しく低下しない安定なエアゾール製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のエアゾール容器は、非金属製の容器本体と、該容器本体の口部に固着されたエアゾールバルブとからなるエアゾール容器であって、
前記エアゾールバルブが、ステムとステムラバーとスプリングとからなる弁機構と、該弁機構を収容するハウジングと、該ハウジングを保持すると共に非金属性の容器本体の口部上面に設けられたガスケットを圧縮するように容器本体の口部に固着されたカバーキャップとを有し、
前記ステムが、ステム孔を有する筒状のステム上部と、上面が下方に凹んだ円柱状のステム下部とからなり、
前記ステム孔が、それぞれの両端が前記ハウジングと前記ステム下部に圧縮保持されたスプリングにより上方に付勢された前記ステム下部の上面外周縁と、前記ステムラバーの下面とによりシールされ、
前記ステムラバーがアクリロニトリルブタジエンゴムからなることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のエアゾール製品は、前記ステムラバーの膨潤率が10〜30%となるようなエアゾール組成物が、前記エアゾール容器に充填されてなることを特徴としている。
【0015】
以下、添付図面に沿って本発明のエアゾール容器、エアゾール製品を説明する。
【0016】
図1は、本発明のエアゾール製品の一実施形態(実施の形態1)におけるエアゾール製品の側面断面図である。図2(a)は、本発明のエアゾール容器の一実施形態(実施の形態1)におけるエアゾール容器のステム孔の閉鎖状態を説明するための側面断面図である。図2(b)は、本発明のエアゾール容器の一実施形態(実施の形態1)におけるエアゾール容器のステム孔の開放状態を説明するための側面断面図である。図3(a)は、従来のエアゾール容器のステム孔の閉鎖状態を説明するための側面断面図である。図3(b)は、従来のエアゾール容器のステム孔の開放状態を説明するための側面断面図である。
【0017】
実施の形態1
図1に示されるように、実施の形態1にかかわるエアゾール製品1は、エアゾール容器2とエアゾール組成物3からなり、エアゾール容器2は、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂や耐圧ガラスなどの非金属素材を用いて成型された容器本体4と、容器本体4に固着されたエアゾールバルブ5とからなる。
【0018】
容器本体4は、有底筒状の胴部6と、胴部6の上部から上方に窄まる肩部7と、肩部7の上部から上方に伸びる円筒状の首部8と、首部8の上部から外方に突出する口部側面9aおよび平面状の口部上面9bを有する口部9とを備えている。なお、容器本体4には、エアゾール製品1が高温下に置かれるなど内部圧力が高くなったとき、内部のガスを外部に排出してエアゾールバルブ5の抜け飛びを防止するために、口部上面9bに中心から外方に延びる溝を設けたり、口部側面9aに軸方向に延びる溝などのガス排出通路を設けても良い。
【0019】
図2(a)、図(b)に示されるように、エアゾールバルブ5は、ステム10、ステムラバー11、スプリング12からなる弁機構13と、弁機構13を収容するハウジング14と、ハウジング14を保持すると共に、容器本体4の口部上面9bに配置されるガスケット15を圧縮するように口部9に固着されるカバーキャップ16を備えている。
【0020】
ステム10は、ナイロンやポリアセタールなどの合成樹脂、ステンレスなどの耐腐食性金属などを用いて成型される。前記ステム10は、筒状のステム上部10aと、上面が下方にすり鉢状に凹んだ円柱状のステム下部10bとからなり、ステム上部10aの基部にステム孔10cが設けられている。ステム孔10cは、ステム10がスプリング12により上方へ付勢され、ステム下部10bの上面外周縁10dがステムラバー11の下面に押圧されることにより常時シールされている。ステム上部10aには噴射部材(図示せず)が装着され、ステム上部10a内にはステム孔10cから噴射部材に連通するステム内通路10eが設けられている。
【0021】
スプリング12は、SUS304、SUS316などの耐腐食性の金属が用いられ、ハウジング14の底部とステム下部10bとの間に介在されてステム10を常時上方に付勢している。
【0022】
ステムラバー11は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を用いて板状のリング形状に成型される。ステムラバー11の厚さは、ステムラバー11が後述するエアゾール組成物3により所定の厚さに膨潤した場合にステム孔10cのシール性を低下させず、かつステム10の作動性が低下しないように0.9〜1.4mmであることが好ましく、さらには1.0〜1.3mmであることが好ましい。ステムラバー11の厚さが0.9mmよりも薄い場合はシール性が低下しやすい傾向があり、1.4mmよりも厚い場合は膨潤により作動性が低下しやすい傾向がある。
【0023】
ハウジング14は、ナイロン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂を用いて成型され、前述のステム10、ステムラバー11、スプリング12からなる弁機構13を収容する。ハウジング14は有底筒状のハウジング本体14aと、ハウジング本体14aの上部に設けられたステムラバー収容部と、ステムラバー収容部の外方に設けられたフランジ部14bと、ハウジング本体14aから下方に円筒状に延びディップチューブ17を装着するためのチューブ装着部14cとを有する。ハウジング本体14aの底部には、使用時にエアゾール組成物3をディップチューブ17からハウジング本体14a内に導入するための導入孔18が形成されている。
【0024】
ディップチューブ17は、ポリプロピレンなどの合成樹脂、ステンレスなどの耐腐食性の金属を用いて成型される。ディップチューブ17は、上端が前記ハウジング下部のチューブ装着部14cに装着され、下端は容器底部付近にまで延びている。
【0025】
カバーキャップ16は、アルミニウムやブリキなどの金属板を用いて凸状に成型され、上部中心にステム上部10aを挿入するための挿入口16aを有し、ハウジング14のフランジ部14bを保持するための上部16bと、下端外周を内側に変形して容器本体4の口部9に固着するための固着部16cとを備えている。カバーキャップ16内面には、ポリアミドイミド、エポキシフェノールなどの合成樹脂塗膜や、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの合成樹脂ラミネートなどの保護膜を設けても良い。
【0026】
エアゾールバルブ5は、エアゾール組成物3の原液を充填した後で容器本体4の口部9に載置され、エアゾールバルブ5を容器の軸線下方に押し下げながらカバーキャップの固着部16cの下端を内方にクリンチすることにより固着される。このとき、容器本体4とエアゾールバルブ5との間をシールするためのガスケット15が容器本体4の口部上面9bとカバーキャップ16の間に介在されている。該ガスケット15は、エアゾールバルブ5に装着しておき一体的に取り扱ってもよく、容器本体4の口部上面9bに貼り付けても良い。前記ガスケット15は、特に限定がなく、たとえばアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、フッ素を含有したNBR、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴムなどの合成ゴムや、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを用いてもよい。
【0027】
本発明のエアゾール製品1は、図2(a)に示されるように、通常の状態では、ステム孔10cはステム10がスプリング12により上方へ付勢され、ステム下部10bの上面外周縁10dがステムラバー11の下面に押圧されることによりシールされている。図2(b)に示されるように、使用するときはステム10を押し下げるよう矢印Fの方向に応力を加えることにより、ステム下部10bの上面外周縁10dがステムラバー11の下面から離れ、ステム孔10cが連通する。このときエアゾール組成物3は、ディップチューブ17からハウジンブ内部に導入され、ステム孔10c、ステム内通路10eを通り、噴射部材の噴射孔から噴射される。前記応力をなくすと、ステムはスプリングにより元の位置に戻され、ステム下部の上面外周縁10dがステムラバー11の下面に押し付けられてステム孔はシールされる。
【0028】
エアゾール容器2に好適に充填されるエアゾール組成物3は、前記ステムラバー11が10〜30%、好ましくは12〜25%膨潤するものであり、たとえば、酸性の水性原液と液化ガスとを含有するエアゾール組成物3があげられる。なお膨潤率は、ステムラバーが膨潤する前の厚さと、ステムラバーが膨潤し安定したときの厚さから算出する。
【0029】
前記酸性の水性原液としては、たとえば、酸性染毛剤、2液式染毛剤の酸化剤、2液式パーマ剤の酸化剤、脱色剤などがあげられる。
【0030】
前記酸性染毛剤は、酸性染料、浸透促進剤、pH調整剤などが配合された酸性の水性原液と、液化石油ガス、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物などの液化ガスとからなる。
【0031】
前記酸性染料は頭髪を所望の色に染色するための成分であり、たとえば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色206号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色403号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号などがあげられる。前記酸性染料の配合量は、水性原液中0.01〜5重量%、さらには0.1〜3重量%であることが好ましい。前記酸性染料の配合量が0.01重量%より少ない場合は頭髪を充分に染色することができず、5重量%を超える場合は配合量に応じた染色効果を得ることはできない。
【0032】
前記浸透促進剤は酸性染料を頭髪内に浸透しやすくして染毛効果を高くするための成分であり、たとえば、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのN−アルキルピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート、などがあげられる。前記浸透促進剤の配合量は、水性原液中3〜30重量%、さらには5〜25重量%であることが好ましい。浸透促進剤の配合量が3重量%より少ないと充分な染毛効果が得られにくく、30重量%を超えると頭髪や頭皮に悪影響を及ぼしやすい。
【0033】
前記pH調整剤は水性原液のpHを酸性にして酸性染料を頭髪内に浸透しやすくし染毛効果を高くするための成分であり、たとえば、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、リン酸などの弱酸があげられる。前記pH調整剤の配合量は、水性原液のpHが2〜5、さらには2〜4となる量である。
【0034】
さらに、前記酸性染料を水性原液中に配合しやすくする、使用感を向上させるなどの目的で、エタノールやイソプロパノールなどの低級アルコール、エチレングリコールやプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどを配合しても良い。また、酸性染毛剤を泡状で吐出する、頭髪へのなじみを良くするなどの目的で非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、シリコーン界面活性剤などの界面活性剤を、頭髪に艶を付与する、櫛通りを良くするなどの目的でシリコーンオイル、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素などの油性成分を、水性原液の粘度を調整するなどの目的で水溶性高分子を配合することもできる。さらに、紫外線防止剤、ビタミン類、アミノ酸などの頭髪用有効成分、防腐剤などの安定化剤などを配合しても良い。
【0035】
前記2液式染毛剤の酸化剤は、パラフェニレンジアミン、レゾルシンなどの酸化染料を含有するアルカリ性の第1剤と共に用いられる第2剤であり、前記酸化剤としては、たとえば、過酸化水素などの酸化剤、pH調整剤やキレート剤などの安定化剤、界面活性剤などの浸透剤、香料などの着香剤などを含有するpHが2〜6、好ましくは2〜5の酸性の水性原液と、液化石油ガス、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物などの液化ガスとからなるものがあげられる。
【0036】
前記パーマ剤用の酸化剤は、チオグリコール酸などの還元剤を含有するアルカリ性の第1剤を頭髪に付与した後に用いられる第2剤であり、前記酸化剤としては、たとえば、過酸化水素水などの酸化剤、pH調整剤や緩衝剤などの安定化剤、界面活性剤などの浸透剤、色素などの着色剤、香料などの着香剤などを含有するpHが2〜5、好ましくは2.5〜4.5の酸性の水性原液と、液化石油ガス、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物などの液化ガスとからなるものがあげられる。
【0037】
なお、本発明のエアゾール製品1は、ステム下部10bの上面外周縁10dがステムラバー11の下面に押圧されることによりステム孔10cがシールされる弁の機構であるため、図3(a)、図3(b)に示されるように、従来のエアゾール容器19におけるステムラバー11の内径面でステム孔10cをシールする弁機構13と比べて、ステム10を押し下げてステム孔10cが開放されるまでの距離(以下、開放ストロークという)が短くなる。そのため、ステムラバー11としてアクリロニトリルブタジエンゴムを用い、ステムラバー11の膨潤率が5〜30%であるエアゾール組成物3を充填しても、未使用時のシール性はもちろんのこと、繰り返しステムを作動させたエアゾール製品の使用していない時のシール性が低下することなく、さらには、作動荷重が高くなる、開放ストロークがばらつくなど、ステム10の作動性が低下することなく、長期間安定に使用することができる。特にステムラバー11の厚さが0.8〜1.4mmである場合には、前述の効果が得られやすい。また、本発明のエアゾール製品1に用いるエアゾールバルブ5はカバーキャップ16の下端をクリンプすることにより容器本体4に固着され、ステムラバー11の外周部の圧縮度はクリンプにより影響を受けないため、ステムラバー11が膨潤しても使用していない時のシール性およびステム10の作動性が低下しにくい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
得られたエアゾール製品を25℃、45℃の恒温室内でそれぞれ3ヶ月間保存し、下記の項目について試験を行った。評価方法を下記に示す。
【0040】
a)ステムラバーの膨潤率
ステムラバーをエアゾール組成物の気相部と液相部にそれぞれ5個ずつ保持した状態で恒温室内にて保存し、保存後の厚さを測定した。膨潤率は試験前の厚さを基準として算出した値の平均値である。
○:10〜30%
×1:30%以上
×2:10%以下
【0041】
b)漏洩量
保存前後の製品重量を測定した。
○:漏洩量が0.5重量%以下
△:漏洩量が0.5〜2重量%
×:漏洩量が2重量%以上
【0042】
c)ステム作動性
噴射部材を指で押し下げてステムを作動したときの状態を評価した。
○:異常なし。
△:押し下げ時にきしみ感がある。
×:押し下げ時は固く、指を離したときステムは元の位置に戻りにくい。
【0043】
d)ステムラバーの外観
各エアゾール組成物を2gずつ噴射して噴射操作を25回行い全量噴射した後、エアゾールバルブを容器本体から取り外し、ステムラバーの外観を確認した。
○:異常なし。
△:膨潤による跡(凹み)が確認された。
×:亀裂が確認された。
【0044】
e)開放ストロークの安定性
噴射部材を押し下げてエアゾール組成物の噴射が開始する距離を測定した。
○:試験前のストロークとの差が0.5mm以下。
△:試験前のストロークとの差が0.5〜1mm。
×:試験前のストロークとの差が1mm以上。
【0045】
f)作動荷重の安定性
噴射部材を押し下げてエアゾール組成物を噴射するのに要する荷重を測定した。
○:試験前の荷重との差が0.2N以下。
△:試験前の荷重との差が0.2〜0.5N。
×:試験前の荷重との差が0.5N以上。
【0046】
実施例1 酸性染料剤
下記の水性原液(pH2.8)を調製し、該水性原液45gと、液化ガス(液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物)5gを、満注量100mlのポリエチレンテレフタレート製容器に充填し、図2に示すエアゾールバルブを固着して酸性染毛剤用エアゾール製品を製造した。なお、ステムラバーは厚さが1.1mm、材質がアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)であるものを用いた。評価結果を表1、表2に示す。
【0047】
<水性原液>
黒色401号 0.05
赤色206号 0.08
褐色201号 0.12
ベンジルアルコール 10.00
N−メチルピロリドン 5.00
クエン酸 適量
モノステアリン酸POE(15)グリセリル(*1) 3.00
精製水 残部
合 計 100.0(重量%)

<エアゾール組成物>
水性原液/液化ガス(*2)=90/10(重量比)

*1:TMGS−15(商品名)、日光ケミカルズ製
*2:液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物(80/20(重量比))
【0048】
比較例1
図3に示すエアゾールバルブを用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸性染毛剤用エアゾール製品を製造した。評価結果を表1、表2に示す。
【0049】
比較例2
ステムラバーとしてブチルゴムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸性染毛剤用エアゾール製品を製造した。評価結果を表1、表2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1に示されるように、従来のバルブを用いた比較例1のエアゾール製品、および、他の材質のステムラバーを用いた比較例2のエアゾール製品は、25℃で保存した場合、漏洩量に差は見られなかったが、噴射部材を押し下げた際にきしみ感が生じ、容器本体から取り出した際にはステムラバーの膨潤による凹みが見られた。作動ストロークの変化は感じにくいものの変動しており、作動荷重もやや大きくなった。また、45℃で保存した場合、漏洩量に差は見られなかったが、噴射部材を押し下げる動作が、硬く、指を離したときにステムが元の位置に戻りにくかった。作動ストロークの変化は明らかに感じられ、作動荷重も大きくなった。
【0053】
一方、実施例1のエアゾール製品は、保存温度を問わず、保存後の漏洩量、作動性、外観ともに変化がなかった。
【0054】
以上、本発明のエアゾール容器およびエアゾール製品によれば、金属を腐食する浸透性の強いエアゾール組成物を充填した場合であっても腐食されず、かつエアゾール組成物によりステムラバーが膨潤してもバルブのシール性および作動性が著しく低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のエアゾール製品の一実施形態(実施の形態1)におけるエアゾール製品の側面断面図である。
【図2(a)】本発明のエアゾール容器の一実施形態(実施の形態1)におけるエアゾール容器のステム孔の閉鎖状態を説明するための側面断面図である。
【図2(b)】本発明のエアゾール容器の一実施形態(実施の形態1)におけるエアゾール容器のステム孔の開放状態を説明するための側面断面図である。
【図3(a)】従来のエアゾール製品のステム孔の閉鎖状態を説明するための側面断面図である。
【図3(b)】従来のエアゾール製品のステム孔の開放状態を説明するための側面断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 エアゾール製品
2 エアゾール容器
3 エアゾール組成物
4 容器本体
5 エアゾールバルブ
6 胴部
7 肩部
8 首部
9 口部
9a 口部側面
9b 口部上面
10 ステム
10a ステム上部
10b ステム下部
10c ステム孔
10d 上面外周縁
10e ステム内通路
11 ステムラバー
12 スプリング
13 弁機構
14 ハウジング
14a ハウジング本体
14b フランジ部
14c チューブ装着部
15 ガスケット
16 カバーキャップ
16a 挿入口
16b 上部
16c 固着部
17 ディップチューブ
18 導入孔
19 エアゾール容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属製の容器本体と、該容器本体の口部に固着されたエアゾールバルブとからなるエアゾール容器であって、
前記エアゾールバルブが、ステムとステムラバーとスプリングとからなる弁機構と、該弁機構を収容するハウジングと、該ハウジングを保持すると共に非金属性の容器本体の口部上面に設けられたガスケットを圧縮するように容器本体の口部に固着されたカバーキャップとを有し、
前記ステムが、ステム孔を有する筒状のステム上部と、上面が下方に凹んだ円柱状のステム下部とからなり、
前記ステム孔が、それぞれの両端が前記ハウジングと前記ステム下部に圧縮保持されたスプリングにより上方に付勢された前記ステム下部の上面外周縁と、前記ステムラバーの下面とによりシールされ、
前記ステムラバーがアクリロニトリルブタジエンゴムからなるエアゾール容器。
【請求項2】
前記ステムラバーの厚さが0.9〜1.4mmである請求項1記載のエアゾール容器。
【請求項3】
前記ステムラバーの膨潤率が10〜30%となるようなエアゾール組成物が、請求項1記載のエアゾール容器に充填されてなるエアゾール製品。
【請求項4】
前記エアゾール組成物が、酸性の水性原液と液化ガスとを含有する請求項3記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記エアゾール組成物が、酸性染毛剤、2液式染毛剤用酸化剤、パーマ剤用酸化剤、から選ばれる1種である請求項4記載のエアゾール製品。
【請求項6】
前記エアゾール組成物が、浸透促進剤を含有する請求項4記載のエアゾール製品。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【公開番号】特開2009−227286(P2009−227286A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72017(P2008−72017)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】