説明

エアゾール容器の残留内容物排出装置

【課題】ワンタッチキャップの内周壁の内周形状と押釦の外周形状を非円形の相対的形状とすることにより、残留内容物を容易且つ確実に全量排出可能であるとともに、製造容易で、廉価な製品を得る。
【解決手段】ワンタッチキャップ1の内周壁6の内周形状と押釦12の外周形状を非円形の相対的形状とする。押釦12の外周に係合突起17を突設し、この係合突起17をエアゾール内容物の通常噴射時に於いて挿入するスリット11を内周壁6に形成する。押釦12を内周壁6に対し通常噴射時とは異なる位置関係で挿入した時に、係合突起17をスリット11に係合せずに内周壁6の下端に突き当て可能とし、この係合突起17の内周壁6下端への突き当て状態でワンタッチキャップ1の外周壁2の下端をエアゾール容器4に固定して、残留内容物の継続排出噴射を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品を廃棄する際に、残留内容物を全量排出するための、エアゾール容器の残留内容物排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器内に充填された内容物の使用後にエアゾール製品を廃棄する場合、エアゾール容器内に内容物を残留させたまま廃棄すると、噴射剤の膨張による爆発事故を引き起こすなどの問題を生じるおそれがあった。そこで、特許文献1、2に示す如く、エアゾール容器内に残留した内容物を全量排出するための残留内容物排出装置が、従来から提案されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3698309号公報
【特許文献2】特許第3881187号公報
【0004】
特許文献1に記載の装置は、ワンタッチキャップの内周壁を円形に形成するとともに、この円形の内周壁内に円形の押釦を挿入配置して形成している。また、上記押釦の外周に係合突起を突設し、この係合突起を挿入係合可能なスリットを上記内周壁の円周方向に複数個形成している。また、このスリットは上端部を低い位置に設けたものと高い位置に設けたものとを交互に形成しており、エアゾール容器の通常使用時に於いては、上端部を高い位置に設けたスリットに係合突起を上下動可能に挿入係合した状態で押釦を押圧することにより、エアゾール内容物を噴射可能としている。また、エアゾール容器の残留内容物の廃棄噴射時に於いては、上端部を低い位置に形成したスリットに係合突起を挿入してワンタッチキャップをエアゾール容器に固定することにより、スリットの天部を係合突起に突き当てた状態で押釦を連続的に押圧し、残留内容物を全量排出可能としている。
【0005】
また、特許文献2に記載の装置は、上記特許文献1の装置と同様に、内周壁及び押釦を円形とし、この円形の押釦の下端外周に係合突起を設け、この係合突起を挿入係合するスリットをワンタッチキャップの内周壁に形成している。そして、エアゾール容器の通常使用時に於いては、上記スリットに係合突起を上下動可能に挿入係合した状態で押釦を押圧することにより、エアゾール内容物を噴射可能としている。また、エアゾール容器の残留内容物の廃棄噴射時に於いては、係合突起をスリットに係合せずに内周壁の下端縁に突き当てることにより、この突き当て状態でワンタッチキャップをエアゾール容器に固定して押釦を連続的に押圧し、残留内容物を全量排出可能としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置に於いては、上述の如く上端部を高い位置又は低い位置に設けた長短2種類のスリットを交互に設けなければならず、製造工程が複雑化するとともに製造コストを高価なものとする。
【0007】
また、特許文献1、2の装置は上述の如く、いずれも内周壁及び押釦を円形としているため、押釦を内周壁間にいずれの向きに於いても装着することが可能である。そのため、押釦のワンタッチキャップへの接続に於いて、エアゾール内容物の通常噴射位置と、残留内容物の全量噴射位置とを明確に判別することができず、使用者の意思に反して不用意な全量排出が行われるおそれがあった。
【0008】
また、上述の如く押釦を内周壁間にいずれの向きに於いても装着することが可能となるため、残留内容物の全量排出時に於けるノズルの向きを一定とすることができず、不特定方向に全量排出噴射が行われて、使用者や周囲のものを汚染するおそれがある。また、特許文献2に記載の装置は、このような不都合を解消すべく、内周壁の下端を、スリット間の中央を天部とする逆V字型のテーパー状に形成して、内周壁下端のどこに係合突起が突き当たっても、係合突起が上記テーパー面を摺動して天部に確実に係合するものとすることにより、全量排出噴射の方向を一定なものとしている。しかし、この場合には、内周壁の下端にテーパー加工を必要とする分、製造工程が煩雑化し、製造コストを高価なものとする。
【0009】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、残留内容物を容易且つ確実に全量排出可能であるとともに、製造容易で、廉価な製品を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、エアゾール容器に下端を固定可能とした外周壁の内方に内周壁を形成したワンタッチキャップと、このワンタッチキャップの内周壁内に挿入しエアゾール容器のステムに下端を接続した押釦とから成る。そして、上記内周壁の内周形状と押釦の外周形状を非円形の相対的形状としている。このように形成することにより、押釦をワンタッチキャップに特定の方向に於いてのみ接続することが可能となる。そのため、エアゾール内容物の通常噴射位置と残留内容物の全量噴射位置とを明確に判別することが可能となり、使用者の意思に反した不用意な全量排出噴射が行われることを防止することが可能となる。また、残留内容物の全量排出時に於いて、ノズルの向きを一定とすることが可能となり、使用者や周囲のものを汚染する虞れもなく、ノズルの向きを特定するための複雑な機構を設ける必要もない。
【0011】
また、押釦の外周に係合突起を突設し、この係合突起をエアゾール内容物の通常噴射時に於いて挿入し押釦の上下動を可能とするスリットを内周壁に形成している。そして、押釦を内周壁に対し上記通常噴射時とは異なる位置関係で挿入した時には、係合突起をスリットに係合せずに内周壁の下端に突き当て可能としており、この係合突起の内周壁下端への突き当て状態でワンタッチキャップの外周壁の下端をエアゾール容器に固定することにより、残留内容物の継続排出噴射を可能としている。そのため、複数種のスリットを設ける必要もなく、簡易な構成で廉価な製品を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述の如く構成したものであって、係合突起を内周壁の下端に突き当てることにより残留内容物の全量排出を可能としているため、複数種のスリットを設ける必要もなく、簡易な構成で廉価な製品を得ることが可能となる。
【0013】
また、内周壁の内周形状と押釦の外周形状を非円形の相対的形状としているため、押釦をワンタッチキャップに特定の方向に於いてのみ接続することが可能となる。そのため、エアゾール内容物の通常噴射位置と残留内容物の全量噴射位置とを明確に判別することが可能となり、使用者の意思に反した不用意な全量排出噴射が行われることを防止することが可能となる。また、残留内容物の全量排出時に於いて、ノズルの向きを一定とすることが可能となり、使用者や周囲のものを汚染する虞れもなく、ノズルの向きを特定するための複雑な機構を設ける必要もない。
【実施例1】
【0014】
本明細書中に於いては説明の便のため、図1に於ける左側を前側、右側を後側とする。
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面に於いて説明すれば、(1)はワンタッチキャップで、図1〜図5に示す如く、外周壁(2)の内面下端付近に突条(3)を設け、この突条(3)をエアゾール容器(4)のマウンテンカップ(5)の外周に係合することにより、ワンタッチキャップ(1)をエアゾール容器(4)に取り外し可能に係合している。
【0016】
尚、本実施例では上記の如く、ワンタッチキャップ(1)をマウンテンカップ(5)の外周に係合しているが、他の異なる実施例では、ワンタッチキャップ(1)の突条(3)を、エアゾール容器(4)を構成する目金部と胴部との間の巻き締め部(図示せず)の外周に係合したり、エアゾール容器(4)を構成する肩カバーに係合したりすることも可能である。
【0017】
また、上記外周壁(2)の内方には円筒状の内周壁(6)を外周壁(2)と一定の間隔を介して一体に形成している。この内周壁(6)は、図6に示す如く内面形状を長円状としている。また、図3、図6に示す如く、外周壁(2)には円形の外側開口(7)を形成するとともに、内周壁(6)には、上記外側開口(7)に対応する位置に円形の内側開口(8)を形成している。また、内周壁(6)の両側には、図3、図4に示す如く、内周壁(6)の下端から上部方向に、上端を天部(10)とする略長方形状のスリット(11)を形成している。
【0018】
また、図3〜図5に示す如く、上記ワンタッチキャップ(1)の内周壁(6)内には、押釦(12)を上下動可能に装着している。この押釦(12)は、図6に示す如く、外周形状をワンタッチキャップ(1)の内周壁(6)の内周形状と同様に長円形とするとともに、上記内周壁(6)の内周と相対的形状としている。このように内周壁(6)の内周形状と押釦(12)の外周形状を非円形の相対的形状とすることにより、押釦(12)を内周壁(6)内に回動不能に挿入配置することが可能となる。なお、本実施例に於いては上述の如く、内周壁(6)の内周形状と押釦(12)の外周形状を長円状としているが、他の異なる実施例に於いては、三角形、四角形、卵形等、非円形の適宜の形状を用いることが可能である。
【0019】
また、上記押釦(12)は、図3に示す如く外周に円筒形の開口溝(13)を形成するとともに、この開口溝(13)の内側面の中央に、エアゾール内容物を噴射するためのノズル(14)を形成している。このノズル(14)は、押釦(12)の中央上下方向に設けた連通路(15)を介してエアゾール容器(4)のステム(16)に接続している。
【0020】
また、上記押釦(12)の外周面には、図6に示す如く、下部両側に係合突起(17)を突設している。また、この係合突起(17)は、図3、図4に示すエアゾール内容物の通常噴射時に於いて、ワンタッチキャップ(1)の内周壁(6)に前述の如く形成したスリット(11)に挿入し、押釦(12)の上下動を可能としている。また、上記通常噴射時からワンタッチキャップ(1)の前後を反転させて、押釦(12)を内周壁(6)に対し上記通常噴射時とは異なる位置関係で挿入するエアゾール内容物の全量排出時には、図1、図2に示す如く、上記係合突起(17)をスリット(11)に係合せずに内周壁(6)の下端に突き当て可能としている。
【0021】
上述の如く構成したものに於いてエアゾール内容物の通常噴射を行う場合について説明する。まず、この通常噴射時に於いては、図3、図4に示す如く、係合突起(17)をスリット(11)に上下動可能に係合した状態で、ワンタッチキャップ(1)下端の突条(3)をエアゾール容器(4)のマウンテンカップ(5)の外周に接続している。そして、この状態に於いて、ワンタッチキャップ(1)の指掛け凹部(18)に手指を架けて、押釦(12)の天面を下方に押圧する。この押圧により、押釦(12)を介してステム(16)を下方に押し下げて、エアゾール容器(4)内のバルブ機構(図示せず)を開弁させる。これにより、エアゾール容器(4)内に収納した内容物が、ステム(16)及び押釦(12)の連通路(15)を通過し、ノズル(14)から内側開口(8)、外側開口(7)を介して外部に噴射される。そして、上記押釦(12)の押圧を解除すると、バルブ機構によりステム(16)が元の位置に復元して閉弁し、内容物の噴射が停止する。
【0022】
次に、上記通常噴射による内容物の使用が終了し、エアゾール容器(4)を廃棄する際の残留内容物の全量排出について以下に説明する。まず、突条(3)とマウンテンカップ(5)との係合を解除して、ワンタッチキャップ(1)をエアゾール容器(4)から分離する。そして、ワンタッチキャップ(1)の前後を反転させて、ワンタッチキャップ(1)の内周壁(6)を押釦(12)の外周に上記通常噴射時とは異なる位置関係で装着する。これにより、図1、図2に示す如く、係合突起(17)がスリット(11)に係合せずに内周壁(6)の下端に突き当たる。そして、この係合突起(17)の内周壁(6)下端への突き当て状態で、ワンタッチキャップ(1)の突条(3)をマウンテンカップ(5)の外周と再度接続して、ワンタッチキャップ(1)の下端をエアゾール容器(4)に固定する。
【0023】
この固定により、内周壁(6)の下端が係合突起(17)を下方に押圧し、これに伴い、押釦(12)がステム(16)を押圧してバルブ機構(図示せず)を開弁させる。そして、残留内容物がエアゾール容器(4)から連続的に噴出し、ステム(16)、連通路(15)を通過して、図1に示す如く、ノズル(14)から内側開口(8)、外側開口(7)を介して外部に排出される。本実施例に於いてはこのように、係合突起(17)を内周壁(6)の下端に突き当てることにより、残留内容物の全量排出を可能としているため、複数種のスリット(11)を設ける必要もなく、簡易な構成で廉価な製品を得ることが可能となる。
【0024】
また、前述の如く内周壁(6)の内周形状と押釦(12)の外周形状を非円形の相対的形状としているため、押釦(12)をワンタッチキャップ(1)に特定の方向に於いてのみ接続することが可能となる。そのため、エアゾール内容物の通常噴射位置と残留内容物の全量噴射位置とを明確に判別することが可能となり、使用者の意思に反した不用意な全量排出噴射が行われることを防止することが可能となる。また、残留内容物の全量排出時に於いて、ノズル(14)の向きを一定とすることが可能となり、使用者や周囲のものを汚染する虞れもなく、ノズル(14)の向きを特定するための複雑な機構を設ける必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】エアゾール内容物の全量排出状態を示す断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】エアゾール内容物の通常噴射時に於いて、噴射前の状態を示す断面図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】エアゾール内容物の通常噴射時に於いて、噴射状態を示す断面図。
【図6】ワンタッチキャップと押釦の分解斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 ワンタッチキャップ
2 外周壁
4 エアゾール容器
6 内周壁
11 スリット
12 押釦
16 ステム
17 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に下端を固定可能とした外周壁の内方に内周壁を形成したワンタッチキャップと、このワンタッチキャップの内周壁間に挿入しエアゾール容器のステムに下端を接続した押釦とから成るものに於いて、上記内周壁の内周形状と押釦の外周形状を非円形の相対的形状とするとともに、押釦の外周に係合突起を突設し、この係合突起をエアゾール内容物の通常噴射時に於いて挿入し押釦の上下動を可能とするスリットを内周壁に形成するとともに、押釦を内周壁に対し上記通常噴射時とは異なる位置関係で挿入した時には、係合突起をスリットに係合せずに内周壁の下端に突き当て可能とし、この係合突起の内周壁下端への突き当て状態でワンタッチキャップの外周壁の下端をエアゾール容器に固定することにより、残留内容物の継続排出噴射を可能としたことを特徴とするエアゾール容器の残留内容物排出装置。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−143612(P2009−143612A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323558(P2007−323558)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】