説明

エアゾール容器体装着用噴射装置及びこの噴射装置を用いたエアゾール容器

【課題】1の目的は、エアゾール容器の噴射装置であって通常噴霧・ロック・ガス抜きの3操作を、同一手順で切り替えることを可能とするものを提供することである。
【解決手段】ノズル20付きの押下げヘッド12と、押下げヘッドを囲む2重筒形の肩カバー30とからなり、押下げヘッド12の周方向位置を、通常噴霧用の第1の位置、降下不能にロックされた第2の位置、ガス抜き用の第3の位置へ導く回転方向位置決め手段80と、押下げヘッド12が第1、第3の位置にあるときに押下げヘッド12の押下げを可能とし、第2位置にあるときに押下げを規制する押下げ規制手段84と、押下げヘッド12が第3の位置にあるときに、一定の高さまで下降した押下げヘッド12を当該高さで係止するストッパ手段82とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器体装着用噴射装置及びこの噴射装置を用いたエアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器の輸送時などの誤噴射を防止するために、ロック機構付きの噴出器をエアゾール容器体の上部に装着することは公知であり、その改良形としてガス抜き機能を持たせた噴射装置が知られている(特許文献1)。この噴射装置は、容器体の肩部に装着するカバー部材と、容器体のステムに付設する押下げヘッドとを具備し、押下げヘッドのノズルが初期位置(F)にあるときには噴霧、初期位置から周方向一方へ移動した第2の位置(L)ではロック、初期位置から下降させ、次に周方向他方へ移動させた第3の位置(G)ではガス抜き位置となる(図4、図5、図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−301853号
【特許文献2】特開2007−117940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の噴射装置は、比較的簡単な操作で通常噴霧→ロック、通常噴霧→ガス抜きへのモード移行が可能となるように設計されている。しかしながら、設計者にとっては簡単な動作であっても、一般需要者がいざガス抜きをしようとするときにどう操作すればよいのかと戸惑う場合が少なくない。ガス抜き操作は、通常噴霧やロックに比べて頻繁に行う作業ではなく、利用者にとっては慣れない手順だからである。
【0005】
そこで本出願人は、通常噴霧・ロック及びガス抜きをより簡便に行うことが可能なエアゾール容器の噴射装置を提案している。この噴射装置は、エアゾール容器体の肩部に装着する肩カバーのうち噴出口と反対側に上方から見て扇形の操作用凹部を形成し、この凹部内へ押下げヘッドから操作板を突入させ、かつ操作用凹部の周方向両側に操作板下降用の2つの長孔を穿設し、操作板を一方の長孔に合わせて押下げヘッドを押し下げると通常噴霧が、他方の長孔に合わせて押し下げるとガス抜きが可能となり、操作用凹部の底面に操作板を係止させた状態ではロック可能となる(特許文献2)。
【0006】
しかし、特許文献2はロック用の位置決め手段を有していない。このため、操作用凹部の底面に係止させた操作板が誤まってガス抜き用の長孔に脱落するおそれがある。この不都合を避けるために同文献の実施例では当該長孔を除去可能な封止片で封止しているが、これではガス抜き操作が面倒となり、他の操作に比べて手順が複雑になる。
【0007】
本発明の第1の目的は、エアゾール容器の噴射装置であって通常噴霧・ロック・ガス抜きの3操作を、ほぼ同一の手順で切り替えることを可能とするもの、及びこの噴射装置を利用したエアゾール容器を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、ガス抜き操作時に利用者が扱い方に戸惑うことがないようにした噴射装置、及びこの噴射装置を利用したエアゾール容器を提供することである。
【0009】
本発明の第3の目的は、ガス抜きモードを解除することが容易な噴出装置及びこの噴出装置を備えたエアゾール容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の手段は、容器体のステムへ連結可能な、前方開口のノズル20付きの押下げヘッド12と、押下げヘッドを囲む2重筒形の肩カバー30とからなり、肩カバーの前面に、ノズル20と開通する噴出口40を形成し、肩カバー30の後部に上面及び前面開放の操作用凹部42を設け、肩カバー30に対する押下げヘッド12の回転により、通常噴霧モード・降下不能なロックモード・ガス抜きモードを選択できるようにしたエアゾール容器体への装着用の噴射装置であって、
押下げヘッド12の周方向位置を、通常噴霧用の第1の位置、降下不能にロックされた第2の位置、ガス抜き用の第3の位置へ導く回転方向位置決め手段80と、
押下げヘッド12が第1、第3の位置にあるときに押下げヘッド12の押下げを可能とし、第2位置にあるときに押下げを規制する押下げ規制手段84と、
押下げヘッド12が第3の位置にあるときに、一定の高さまで下降した押下げヘッド12を当該高さで係止するストッパ手段82とを設け、
通常噴霧・押下げヘッドのロック・ガス抜きの3つの操作モード間の移行を、操作板22を肩カバー30の周方向一方又は他方へ動かすだけで可能としている。
【0011】
本手段では、押下げヘッドを回転させる動作だけで上述の3つの操作モードの切替えを可能とすること、及び各モード毎に周方向の位置決めを行うことを提案する。すなわち周方向に所定の3つの位置(図1に示す第1の位置、図8に示す第2の位置、図11に示す第3の位置)があり、各位置に押下げヘッドが適合したときにのみ、対応する各モードの作用(図6の通常噴霧、図9のロック、図14のガス抜き)が可能となる。モードの切り替えにおいて利用者は押下げヘッドを回転させるだけでよく、押下げヘッドの周方向位置を目視により確認する必要はない。
【0012】
「回転方向位置決め手段」と「押下げ規制手段」と「ストッパ手段」とはそれぞれの機能を実現できればどのような構造でもよい。各機能を組み合わせて押下げヘッドを周方向の一方又は他方へ回転させる実質的に同一の手順で各モードの切替えを可能とすることが本発明の特色の一つである。位置決めに関して、押下げヘッドの周方向位置へ所定の位置へ導くとは、機械的に位置決めを行うことをいい、後述の溝及び凸部の嵌め合いの他、操作板が当接面に衝合する構造などでもよい。回転方向位置決め手段は、押下げヘッドを操作する部分(操作板)以外の場所に設けることができる。
【0013】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記押下げヘッド12の外面から操作用凹部42側へ、操作モード表示マークを兼ねた操作板22を突出し、かつこの操作板22を上記3つの操作モードに対応した位置へ移動できる程度に上記操作用凹部42を周方向へ巾広に形成し、押下げヘッドの第1の位置、第2の位置、及び第3の位置が相互に距離を存して、かつ操作用凹部の左右側面に対しても距離を存して配置されている。
【0014】
本手段では、押下げヘッド及び肩カバーのうち操作を行う箇所の構造を提案している。操作板は、操作用凹部内で、図1に示す中間位置、図8に示す周方向一方側の位置、図11に示す周方向他方側の位置にセットすることが可能である。これら各位置は適当に離れており、これにより各モードの選択を確実に行うことができる。また図8及び図11に示すように、周方向両側の位置は、操作用凹部の周方向両側面から離れており、操作板の両側を摘んで回転させるだけで操作モードの切替が可能である。
【0015】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ上記操作用凹部42の底面に各モードのおける操作板22の位置を表示する位置表示マーク48を形成している。
【0016】
本手段では、図1の如く3つの位置表示マークを操作用凹部の底面に設けた。この構成では利用者が通常噴霧やロックを行うときに、通常噴霧・ロックの表示とともにガス抜きの表示も自然と視界に入るから、ガス抜きの操作時に手間取ることが少ない。
【0017】
第4の手段は、第2の手段又は第3の手段を有し、かつ上記回転方向位置決め手段80は、上記押下げヘッド12の外面と肩カバー30の内周壁34の内面との一方に、上記3つの操作モードに対応して縦設した少なくとも3本の位置決め用縦溝50と、他方に形成した位置決め用の係合凸部26とで形成し、この係合凸部26は、各位置決め用縦溝50内に昇降可能に突入し、かつ押下げヘッド12の回動に伴って一つの位置決め用縦溝から他の位置決め用縦溝へ強制的に移動させることが可能に形成している。
【0018】
本手段では、回転方向位置決め手段を押下げヘッド及び肩カバーの対向面に形成する縦溝及び凸部で形成することを提案している(図13及び図14参照)。この構成では操作板の位置の設定に自由度があり、操作板を摘んで動かすことが容易である。
【0019】
第5の手段は、第2の手段又は第3の手段を有し、かつ
上記ストッパ手段82は、上記押下げヘッド12の外面と肩カバー30の内周壁34の内面との一方に縦設した少なくとも補助溝54の上端内面54aと、他方に形成した係合凸部26の上端面26aとで形成し、かつ補助壁の上端内面54aと係合凸部26の上端面とはステムによる押下げヘッド12の上方付勢力に対して抵抗するが、押下げヘッドを回転させる力に対しては抵抗せず互いに外れるように構成している。
【0020】
本手段のストッパ手段の機能は、第1に、初期状態から押下げにより係合することであり(図13及び図14の右半図)、第2に、押上げ力に対しては十分に抵抗するが、ストッパの回転力に対しては容易にストッパ機能が解除されることである。これによりガス抜きの解除が容易となる。第1の機能に関しては、押下げヘッドがガス抜きモード用の第3の位置にある状態で、押下げヘッドを押し下げる前には、係合凸部が補助溝の上方へ外れており、押下げヘッドを押し下げたときに係合凸部が補助溝内に入り、かつ係合凸部の上端面が補助溝の上端内面に係止するように構成すればよい。
【0021】
第6の手段は、第2の手段又は第3の手段を有し、かつ上記押下げ規制手段84は、肩カバー30の内周壁34及びこの内周壁と接する押下げヘッド12の筒体18の一方に、少なくとも3つの操作モードの切り替えに対応できる程度の周方向長さを有する下向きの係合面28を、他方にこの係止面に当接する当接用突子58をそれぞれ形成し、その係止面のうち上記第1の位置及び第3の位置に対応する個所に下向きの切欠き29を形成してなる。
【0022】
本手段では、押下げ規制手段を周方向に長さを有する係合面及び係合凸部で形成している。図4に示す例では押下げヘッドの筒体下端面を係合面としている。しかしながら、例えば上記筒体の内面に下向きの段差を横設し、その段差面を係合面としてもよい。
【0023】
第7の手段は、ステム6を起立するエアゾール容器体2と、このエアゾール容器体2に装着した第1の手段から第6の手段の何れかに記載のエアゾール容器体装着用噴射装置10とで形成され、上記押下げヘッド12はステム6に対して回転可能に形成している。
【発明の効果】
【0024】
第1の手段に係る発明によれば、通常噴霧・押下げヘッドのロック・ガス抜きの3つの操作モード間の移行を、操作板22を肩カバー30の周方向一方又は他方へ動かすだけで可能としたから実質的に同一手順で各モードを開始することができ、使い勝手がよい。
【0025】
第2の手段に係る発明によれば、押下げヘッドの第1の位置、第2の位置、及び第3の位置が相互に距離を存して、かつ操作用凹部の左右側面に対しても距離を存して配置されたから、各モード間の切り替えを容易かつ確実に行うことができる。
【0026】
第3の手段に係る発明によれば、操作用凹部42の底面に各モードのおける操作板22の位置を表示する位置表示マーク48を形成したから、ガス抜き操作を行う際に利用者が戸惑うことがない。
【0027】
第4の手段に係る発明によれば、回転方向位置決め手段80を、押下げヘッド12の外面と肩カバー30の内周壁34の内面との一方に縦設した少なくとも3本の位置決め用縦溝50と、他方に形成した位置決め用の係合凸部26とで形成したから、操作板22を摘んで所定位置へ回転させるだけで位置決めが可能となる。
【0028】
第5の手段に係る発明によれば、押下げヘッドの押下げにより確実にガス抜き状態を実現できるとともに、押下げヘッドを回転させることで容易にガス抜きを解除することができる。
【0029】
第6の手段に係る発明によれば、押下げ規制手段84を、押下げヘッド12の筒体18又は肩カバー30の内周壁34のうちの一方に有する切欠き29付きの係合面28と、他方に形成したこの係止面に当接する当接用突子58をそれぞれ形成し、その係止面のうち上記第1の位置及び第3の位置に対応する個所に下向きの切欠き29を形成したから、簡易な構成でありながら、確実に昇降を規制できる。
【0030】
第7の手段に係る発明によれば、ステム6を起立するエアゾール容器体2に、前述の噴射装置を組み込んだから、各モードの切り替えが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る噴射装置を含むエアゾール容器の通常噴霧モードでの平面図である。
【図2】図1に示す容器のA−A線方向の縦断面図である。
【図3】図1に示す容器のB−B線方向の縦断面図である。
【図4】図1に示す噴射装置の一の部品の側面図である。
【図5】図1に示す噴射装置の他の部品の側面図である。
【図6】図1の容器の通常噴霧状態の作用説明図である。
【図7】図6の状態での容器のG−G方向の横断面図である。
【図8】図1の容器のロックモードでの平面図である。
【図9】図1に示す容器のC−C線方向の縦断面図である。
【図10】図9に示す噴射装置のH−H方向の横断面図である。
【図11】図1の容器のガス抜きモードでの平面図である。
【図12】図11に示す容器のE−E線方向の縦断面図である。
【図13】図11に示す容器のF−F線方向の縦断面図である。
【図14】図1に示す容器のガス抜き状態の作用説明図である。
【図15】図14に示す噴射装置のJ−J線方向の横断面図である。
【図16】図1に示す噴射装置の主要部分の位置関係をパノラマ様に展開した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から図16は、本発明の実施形態に係る噴射装置付きのエアゾール容器を示している。このエアゾール容器は、エアゾール容器体2と、噴射装置10とで形成している。
【0033】
エアゾール容器体2は、図2に示す如く胴部から連続する肩部と、周囲に係止環4を有するマウンテンカップとを有し、このマウンテンカップの中心部から上方へ付勢させたステム6を起立している。
【0034】
噴射装置10は、押下げヘッド12と肩カバー30とで形成している。
【0035】
押下げヘッド12は、図2の如く頂板14の内周部下面から連結管16を、また頂板の外周部から円筒形の筒体18をそれぞれ垂下している。また押下げヘッドの前面にはノズル20を開口しており、このノズル20は上記筒体18の内部にノズル流路19を経由して連通している。また押下げヘッドの筒体18後面からは操作板22を後方へ突設している。さらに筒体18の左右側壁には、図4に示す如く下側から前後一対の切込み線23を穿設することで、弾性片24、24を形成し、各弾性片24の外面には係合凸部26、26を形成する。また押下げヘッド12の下端面である係合面28の左右両側には、切欠き29を形成している。
【0036】
肩カバー30は、図2の如く環状の天板32の内周から内周壁34を、また天板32の外周から外周壁36を、さらに天板の裏面から脚筒38をそれぞれ垂下し、この脚筒を上記エアゾール容器体の係止環4外面に嵌合している。肩カバー30の前方には連通路39を経由して連通する噴出口40を開口する。これら連通路及び噴出口は、周方向に長く形成して、押下げヘッドの回動にかかわらずノズルとの連通が維持されるように設ける。
【0037】
上記肩カバー30の後部には、内周壁34及び外周壁36の間に亘って上面及び前後両面開口の操作用凹部42を形成する。操作用凹部は上方から扇形の形状を有し、ほぼ平らな底面44と垂直な側面46とで形成されている。操作用凹部の底面44には、通常噴霧・ロック・ガス抜きの各モードに関して予め設定された位置を示す位置表示マーク48を形成する。図示例では、容器が通常噴霧モードにあるときに操作板が操作用凹部の周方向中間部にあるように、容器がロックモードにあるときに操作板が操作用凹部の周方向一方寄りにあるように、容器がガス抜きモードにあるときに操作板が操作用凹部の周方向他方寄りにあるようにそれぞれ形成している。しかし、それらの位置関係は適宜変更することができる。
【0038】
上記肩カバー30の内周壁34の左右側壁部内面には、5本の位置決め用縦溝50と1本の補助溝54とを形成している。すなわち左右側壁部の一方には、図5(A)の如く3本の同じ長さの位置決め用縦溝50が縦設してある。他方には、図5(B)に示すように、2本の同じ長さの位置決め用縦溝50とこれより短い補助溝54とを縦設している。これら各溝は等間隔に配列されている。補助溝54は短くかつ位置決め用縦溝に比べて上端部が低い位置にある。従って押下げヘッドを単にガス抜きモードの位置へ回転させたときには、係合凸部は補助溝内に嵌合されない。これに関しては後述する。図7に示すように肩カバー30の位置決め用縦溝50内には前述の押下げヘッドの係合凸部26が嵌め込まれ、回転方向位置決め手段80を形成している。また補助溝54の上端内面52aには図14の左半図に示すように係合凸部50の上端面50aが係止しており、これにより、ストッパ手段82が形成される。これらの機能についてはさらに後述する。
【0039】
肩カバー30の内周壁34の下端部前後両側からは一対の内方張出し板56が付設されており、この内方張出し板の上面から内周壁下部に亘って当接用突子58を付設している。この当接用突子58は前述の係合面28とともに押下げ規制手段50を設ける。
【0040】
図16は、(A)通常噴霧状態、(B)ロック状態、(C)ガス抜き前の状態、(D)ガス抜き中の状態での各溝及び各凸部の周方向及び高さ方向の位置関係を、パノラマ様に360°展開したものである。但し0°に対応する場所は噴出口を開口した箇所である。以下図16を援用しながら、本願のエアゾール容器の作用を説明する。
【0041】
通常の噴霧を行うときには、図1に示すように操作板22を通常噴霧のマーク48に合わせる。この状態において、2つの係合凸部26は図16(A)に示すように位置決め用縦溝50内に位置しており、また、当接用突子58は切欠き29の下方に位置している。この状態から押下げヘッド12を押し下げると、係合凸部26は位置決め用溝50内を下降し、また当接用突子58は切欠き29内に入る。これにより図6に示すようにステム6が下降し、内液が噴出口40から噴霧される。押下げヘッド12の押下げを解放すると、押下げヘッドはもとの高さに復帰する。なお、図3に示すように位置決め用縦溝50は上端閉塞であり、係合凸部26の上方抜出しを防止している。後述のロックモード及びガス抜きモードでも同様である。
【0042】
次に図1の状態から操作板22を時計回りに回転させると(図8参照)、押下げヘッド12は図7の状態から図10の状態へ回転する(周方向の第2の位置)。回転方向が時計回りであるのは、図7及び図10が下から見た図形だからである。この回転により、係合凸部26は図7中の真ん中の位置決め用縦溝50の内部へ隣りの位置決め用縦溝の内部へ強制的に移動する。このとき弾性片24が一旦内方へ弾性変形し、かつ復元する。係合凸部26の移動により、押下げヘッド12の周方向の位置は、ロックモード用の位置となる。この状態では図16(B)に示すように当接用突子58が係合面28に対向している。従って押下げヘッド12を押し下げようとしても押し下げることができない。
【0043】
図1の状態から操作板22を反時計回りに回転させると(図11参照)、押下げヘッド12は図7の状態から図15の状態へ移動する(周方向の第3の位置)。このとき2つの係合凸部26のうちの一方は位置決め用縦溝50内に入る。それによる位置決め作用に関しては先の段落で記載したことを援用する。他方の係合凸部26は、図16(C)あるいは図13に示すように係合凸部の上半分が補助溝54よりも高い位置にあり、従って補助溝54内へ嵌合していない。この状態から押下げヘッドを押し下げると、係合凸部26の上端面26aが補助溝54の上端内面54aに係止する(図16(D)及び図14参照)。これによりステムが下降し、ガス抜きが行われる。
【0044】
またガス抜き状態を解除するときには、図11の状態から操作板22を通常噴霧の位置表示マーク50の位置まで戻せばよい。これにより係合凸部26は補助溝54から隣りの位置決め用縦溝50へ強制的に移動されるので、補助溝の上端内面54aと係合凸部の上端部26aとで形成されるストッパ手段82を解除することができる。その後はステム6の上方付勢力によりステム及び押下げヘッド12が上昇し、内容液の噴出が停止される。
【符号の説明】
【0045】
2…エアゾール容器体 4…係止環 6…ステム
10…噴射装置 12…押下げヘッド 14…頂板 16…連結管
18…筒体 19…ノズル流路 20…ノズル 22…操作板 23…切込み線
24…弾性片 26…係合凸部 26a…同上端面 28…係合面
29…切欠き 30…肩カバー 32…天板 34…内周壁 36…外周壁
38…脚筒 39…連通路
40…噴出口 42…操作用凹部 44…底面
46…側面 48…位置表示マーク 50…位置決め用縦溝
54…補助溝 54a…同上端内面 56…内方張出し板 58…当接用突子
80…回転方向位置決め手段 82…ストッパ手段 84…押下げ規制手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体のステムへ連結可能な、前方開口のノズル20付きの押下げヘッド12と、押下げヘッドを囲む2重筒形の肩カバー30とからなり、肩カバーの前面に、ノズル20と開通する噴出口40を形成し、肩カバー30の後部に上面及び前面開放の操作用凹部42を設け、肩カバー30に対する押下げヘッド12の回転により、通常噴霧モード・降下不能なロックモード・ガス抜きモードを選択できるようにしたエアゾール容器体への装着用の噴射装置であって、
押下げヘッド12の周方向位置を、通常噴霧用の第1の位置、降下不能にロックされた第2の位置、ガス抜き用の第3の位置へ導く回転方向位置決め手段80と、
押下げヘッド12が第1、第3の位置にあるときに押下げヘッド12の押下げを可能とし、第2位置にあるときに押下げを規制する押下げ規制手段84と、
押下げヘッド12が第3の位置にあるときに、一定の高さまで下降した押下げヘッド12を当該高さで係止するストッパ手段82とを設け、
通常噴霧・押下げヘッドのロック・ガス抜きの3つの操作モード間の移行を、操作板22を肩カバー30の周方向一方又は他方へ動かすだけで可能としたことを特徴とする、エアゾール容器体装着用噴射装置。
【請求項2】
上記押下げヘッド12の外面から操作用凹部42側へ、操作モード表示マークを兼ねた操作板22を突出し、かつこの操作板22を上記3つの操作モードに対応した位置へ移動できる程度に上記操作用凹部42を周方向へ巾広に形成し、押下げヘッドの第1の位置、第2の位置、及び第3の位置が相互に距離を存して、かつ操作用凹部の左右側面に対しても距離を存して配置されたことを特徴とする、請求項1記載のエアゾール容器体装着用噴射装置。
【請求項3】
上記操作用凹部42の底面に各モードのおける操作板22の位置を表示する位置表示マーク48を形成したことを特徴とする、請求項2記載のエアゾール容器体装着用噴射装置。
【請求項4】
上記回転方向位置決め手段80は、上記押下げヘッド12の外面と肩カバー30の内周壁34の内面との一方に、上記3つの操作モードに対応して縦設した少なくとも3本の位置決め用縦溝50と、他方に形成した位置決め用の係合凸部26とで形成し、この係合凸部26は、各位置決め用縦溝50内に昇降可能に突入し、かつ押下げヘッド12の回動に伴って一つの位置決め用縦溝から他の位置決め用縦溝へ強制的に移動させることが可能に形成したことを特徴とする、請求項2又は請求項3記載のエアゾール容器体装着用噴射装置。
【請求項5】
上記ストッパ手段82は、上記押下げヘッド12の外面と肩カバー30の内周壁34の内面との一方に縦設した少なくとも補助溝54の上端内面54aと、他方に形成した係合凸部26の上端面26aとで形成し、かつ補助壁の上端内面54aと係合凸部26の上端面とはステムによる押下げヘッド12の上方付勢力に対して抵抗するが、押下げヘッドを回転させる力に対しては抵抗せず互いに外れるように構成したことを特徴とする、請求項2又は請求項3記載のエアゾール容器体装着用噴射装置。
【請求項6】
上記押下げ規制手段84は、肩カバー30の内周壁34及びこの内周壁と接する押下げヘッド12の筒体18の一方に、少なくとも3つの操作モードの切り替えに対応できる程度の周方向長さを有する下向きの係合面28を、他方にこの係止面に当接する当接用突子58をそれぞれ形成し、その係止面のうち上記第1の位置及び第3の位置に対応する個所に下向きの切欠き29を形成してなることを特徴とする、請求項2又は請求項3記載のエアゾール容器体装着用噴射装置。
【請求項7】
ステム6を起立するエアゾール容器体2と、このエアゾール容器体2に装着した請求項1から請求項6の何れかに記載のエアゾール容器体装着用噴射装置10とで形成され、上記押下げヘッド12はステム6に対して回転可能に形成したことを特徴とする、エアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−274232(P2010−274232A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131622(P2009−131622)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】