説明

エアゾール容器用噴射ノズル

【課題】簡易な構成にて広範囲に噴射可能な噴射ノズルを容易且つ廉価に製造可能とする。
【解決手段】押釦1の外周面21から内方に、中子7を挿入するための挿入穴8を形成し、この挿入穴8内に中子7を挿入し、この中子7の外周面13を上記挿入穴8に密着配置するとともに、この中子7の外周面13又は挿入穴8の内周面18に凹溝12を設けることにより、中子7と挿入穴8の間にエアゾール容器2のステム3に連通する噴出路14を形成し、この噴出路14を、挿入穴8の内周面18の円周方向に対して傾斜方向に交差して複数本形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エアゾール内容物を広範囲にわたって噴霧するエアゾール容器の噴射ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より特許文献1に示す如く、押釦にエアゾール内容物の噴出路を複数本設けることにより、エアゾール内容物を広範囲に噴射することを目的としたエアゾール容器の噴射ノズルが公知となっている。即ち、特許文献1には、押釦に複数本の噴射ノズルを設けることによってエアゾール内容物の噴出路を複数本形成したエアゾール容器や、押釦に1本の噴射ノズルを接続し、この噴射ノズルに複数本の噴出路を貫通形成したエアゾール容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−325834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す如きエアゾール容器では、上記の如く複数本の噴射ノズルを押釦に備えるために、一本の噴射ノズルのみを設ける場合と比較して押釦を大きいものとしなければならないため、押釦を製造するための材料費が高くつくものとなる。また、特許文献1に記載の噴射ノズルはいずれもステムの配置方向とは垂直方向に形成配置したものであるから、エアゾール内容物を広範囲に噴霧するためには、噴射ノズルの配置間隔を広くしたり噴射ノズルの内径を大きくしなければならず、押釦を更に大きいものとしなければならなくなる。また、1本の噴射ノズルに複数本の噴口を設ける場合には、噴射ノズルを大きなものとしなければならず、また構成が複雑となるため、製造が煩雑になるとともに、押釦に大きな噴射ノズルを突出配置することから噴射ノズルの安定性が悪いものとなる。
【0005】
そこで、本発明は上記の如き課題を解決しようとするものであって、簡易な構成にて広範囲に噴射可能な噴射ノズルを容易且つ廉価に製造可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上述の如き課題を解決するものであって、押釦の外周面から内方に、中子を挿入するための挿入穴を形成し、この挿入穴内に挿入する中子の外周面を上記挿入穴に密着配置する。そして、この中子の外周面又は挿入穴の内周面に凹溝を設けることにより、中子と挿入穴との間にエアゾール容器のステムに連通する噴出路を形成し、この噴出路を、挿入穴の内周面の円周方向に対して傾斜方向に交差して複数本形成したものである。
【0007】
本発明は上記の如く、中子の外周面又は挿入穴の内周面に凹溝を設けることにより、中子と挿入穴との間にエアゾール容器のステムに連通する噴出路を形成したものであるから、押釦に複数の、又は安定性の悪い大きな噴射ノズルを突設することなく、複数の噴出路を押釦に容易に形成することができる。従って、複数の噴出路を設けるために押釦を大きく形成する必要がないとともに、押釦を簡易な構成とすることが可能となり、製造を容易なものとするとともに、製造コストを低廉なものとすることができる。
【0008】
また、上記の如く噴出路を、挿入穴の内周面の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成することにより、挿入穴の内周面の円周方向に対して垂直方向に形成した場合と比較して、各噴出路からの噴射パターンを広くすることができる。これは、噴出路を挿入穴の内周面の円周方向に対して垂直方向に形成した場合には、目的位置における噴射パターンが正円形となるのに対し、本発明の場合には挿入穴の内周面の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路からの広い噴射パターンが、放射方向に拡散して噴射されるため、この複数の噴出路からの噴射パターン全体を広いものとすることができる。
【0009】
また、噴出路は、円周方向に同一間隔で3本以上形成したものであってもよい。このように噴出路を円周方向に同一間隔で3本以上形成することにより、噴射パターンを円周方向に均一に広げることが可能となる。
【0010】
また、凹溝は、直線状に形成したものであっても良い。このように凹溝を直線状とすることにより、成形を容易なものとすることができる。
【0011】
また、凹溝は、平面形状をく字型としたものであっても良い。このように平面形状をく字型とすることにより、中子の軸方向長さを一定とした場合に、直線状の凹溝よりも、噴出路を挿入穴の内周面の円周方向に対して大きく傾斜して形成することができる。そのため、噴射パターンを更に大きくすることが可能となる。
【0012】
また、噴出路は、先端側の内径を、後端側の内径よりも小径としたものであっても良い。このように、噴出路の先端側の内径を後端側の内径よりも小径とすることにより、エアゾール内容物の噴射圧力を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述の如く、中子の外周面又は挿入穴の内周面に凹溝を設けることにより、中子と挿入穴との間にエアゾール容器のステムに連通する噴出路を形成したものであるから、押釦に複数の、又は安定性の悪い大きな噴射ノズルを突設することなく、複数の噴出路を押釦に容易に形成することができる。従って、複数の噴出路を設けるために押釦を大きく形成する必要がないとともに、押釦を簡易な構成とすることが可能となり、製造を容易なものとするとともに、製造コストを低廉なものとすることができる。
【0014】
また、上記の如く噴出路を、挿入穴の内周面の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成することにより、挿入穴の内周面の円周方向に対して垂直方向に形成した場合と比較して、各噴出路からの噴射パターンを広くすることができる。これは、噴出路を挿入穴の内周面の円周方向に対して垂直方向に形成した場合には、目的位置における噴射パターンが正円形となるのに対し、本発明の場合には挿入穴の内周面の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路からの広い噴射パターンが、放射方向に拡散して噴射されるため、この複数の噴出路からの噴射パターン全体を広いものとすることができる。
【0015】
また、小さい噴射ノズルに加工を加える場合に、凹溝を形成する場合は工作精度、工作の容易性の面からも貫通孔を形成する場合と比較して著しく優れたものとなり、正確で廉価な製品を得ることが可能となる。
【0016】
尚、本発明の使用用途としては、殺虫剤、消臭剤、除菌剤、塗料等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1を示す部分断面図。
【図2】実施例1の中子を示す斜視図。
【図3】実施例1の押釦を示す正面図。
【図4】実施例2を示す部分断面図。
【図5】実施例2の中子を示す斜視図。
【図6】実施例2の押釦を示す正面図。
【図7】実施例3を示す部分断面図。
【図8】実施例3の中子を示す斜視図。
【図9】実施例3の押釦を示す正面図。
【図10】実施例4を示す部分断面図。
【図11】実施例4の中子を示す斜視図。
【図12】実施例4の押釦を示す正面図。
【図13】実施例5を示す部分断面図。
【図14】実施例5の中子を示す斜視図。
【図15】実施例5の押釦を示す正面図。
【図16】比較例1を示す部分断面図。
【図17】比較例1の中子を示す斜視図。
【図18】比較例2を示す部分断面図。
【図19】比較例2の中子を示す斜視図。
【図20】実施例1〜5、比較例1、2の測定条件を示す中子及び噴射パターンの概念図。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1を図1〜3において説明すると、 (1)は押釦であって、下端中央部にエアゾール容器(2)のステム(3)を接続するためのステム接続口(4)を開口している。そして、このステム接続口(4)に接続するステム(3)は、エアゾール容器(2)の内部に設けられたバルブ機構(図示せず。)と接続している。また、上記ステム接続口(4)の上端には、このステム接続口(4)に連続して押釦(1)の軸中心方向に導入路(5)を形成するとともに、この導入路(5)の上端に、連通路(6)を導入路(5)とは垂直方向に形成している。
【0019】
また、上記連通路(6)から押釦(1)の外周面(21)にかけて、下記に説明する中子(7)を挿入配置するための挿入穴(8)を連通路(6)と同一方向に開口形成している。この挿入穴(8)は、押釦(1)の軸中心方向に対して垂直方向に円筒状に開口形成したものであって、底面(10)の内周には円周方向に段部(11)を形成している。そして、上記の如く形成した挿入穴(8)に中子(7)を挿入配置している。この中子(7)は、図2に示す如く略円柱形に形成したものであって、外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密接するよう中子(7)の外径Rを挿入穴(8)の内径に対応した寸法としている。尚、本実施例1の中子(7)は、外径Rを5mmとするとともに軸方向の長さtを4.3mmとしている。そして、上記中子(7)の外周面(13)には、図2に示す如く直線状且つ断面コ字型の凹溝(12)を円周方向に等間隔に3本形成している。そしてこの凹溝(12)は、中子(7)の軸方向とは傾斜方向に傾斜したものであって、3本とも同一方向且つ同一角度で傾斜している。
【0020】
そして、上記の如く形成した中子(7)を挿入穴(8)に挿入することにより、中子(7)の外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密着配置される。このように中子(7)を挿入穴(8)に挿入配置することにより、図3に示す如く、中子(7)の凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより、エアゾール内容物の噴出路(14)が円周方向に3か所等間隔に形成される。この3本の噴出路(14)は、図1に示す如く挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成配置されるものとなる。尚、各噴出路(14)の内径は、一端から他端まで一定としている。そして、上記の如く組み付けた中子(7)と挿入穴(8)とにより、本実施例の噴射ノズル(15)を構成している。
【0021】
また、上記の如く噴出路(14)を等間隔に3か所形成することにより、噴射パターンを周方向に均一に広げることが可能となる。尚、本実施例及び以下の実施例では噴出路(14)を3本形成しているが、他の異なる実施例では噴出路(14)を2本あるいは4本以上形成しても良い。そして、噴出路(14)を多く形成した場合には、一回のエアゾール内容物の噴射量を多くすることが可能となるとともに、噴射パターンを更に均一なものとすることができる。また、噴出路(14)を2本とした場合には、噴出路(14)の数が少ないため工作が容易となるとともに、目的によってエアゾール内容物の過剰な噴射を防止することができる。また、図1に示す如く中子(7)の一端面(16)が上記挿入穴(8)の段部(11)に当接するものとなり、中子(7)の一端面(16)と挿入穴(8)の底面(10)との間にエアゾール内容物の流通間隔(17)が形成される。
【0022】
上記の如く中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を設け、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成したものであるから、押釦(1)に複数の、又は安定性の悪い大きな噴射ノズル(15)を突設することなく、複数の噴出路(14)を押釦(1)に容易に形成することができる。従って、複数の噴出路(14)を設けるために押釦(1)を大きく形成する必要がないとともに、押釦(1)を簡易な構成とすることが可能となり、製造を容易なものとするとともに、製造コストを低廉なものとすることができる。
【0023】
また、小さい噴射ノズルに加工を加える際に凹溝(12)を形成した場合は、特許文献1に記載の従来例の如く貫通孔を形成する場合と比較して、工作精度及び工作の容易性の面からも著しく優れたものとなり、正確で廉価な製品を得ることが可能となる。尚、本実施例では中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成しているが、他の異なる実施例では、挿入穴(8)の内周面(18)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と中子(7)の外周面(13)とにより噴出路(14)を形成したものであっても良い。
【0024】
上記の如く形成したものにおいてエアゾール内容物を噴射する場合には、まず押釦(1)を押し下げることにより、ステム(3)が下方に移動してバルブ機構が開弁する。これにより、エアゾール容器(2)内に収納したエアゾール内容物がバルブ機構を介してステム(3)から導入路(5)に流入する。そして、導入路(5)に流入したエアゾール内容物は、押釦(1)の連通路(6)及び流通間隔(17)を介して噴出路(14)を通過し、噴出路(14)の先端に位置する噴口(20)から外方に噴射される。
【0025】
この時、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成しているため、挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合と比較して、各噴出路(14)からの噴射パターンを広くすることができる。これは、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合には、目的位置における噴射パターンが正円形となるのに対し、本発明の場合には挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路(14)からの広い噴射パターンが、放射方向に拡散して噴射されるため、この複数の噴出路(14)からの噴射パターン全体を広いものとすることができる。
【実施例2】
【0026】
また、上記実施例1では、中子(7)の外径Rを5mmとするとともに軸方向の長さtを4.3mmとしているが、本実施例2の中子(7)は、その外径Rを4mmとするとともに軸方向の長さtを2.5mmとしている。このように中子(7)の軸方向長さを短くすることにより、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面の円周方向に対して大きく傾斜させて形成することが可能となる。そのため、噴射パターンをより大きくすることができる。
【0027】
本実施例2について以下に説明すると、図4に示す如く押釦(1)には、下端中央部にエアゾール容器(2)のステム(3)を接続するためのステム接続口(4)を開口している。そして、このステム接続口(4)に接続するステム(3)は、エアゾール容器(2)の内部に設けられたバルブ機構(図示せず。)と接続している。また、上記ステム接続口(4)の上端には、このステム接続口(4)に連続して押釦(1)の軸中心方向に導入路(5)を形成するとともに、この導入路(5)の上端に、連通路(6)を導入路(5)とは垂直方向に形成している。
【0028】
また、上記連通路(6)から押釦(1)の外周面(21)にかけて、中子(7)を挿入配置するための挿入穴(8)を連通路(6)と同一方向に開口形成している。この挿入穴(8)は、押釦(1)の軸中心方向に対して垂直方向に円筒状に開口形成したものであって、底面(10)の内周には円周方向に段部(11)を形成している。そして、上記の如く形成した挿入穴(8)に中子(7)を挿入配置している。この中子(7)は、図5に示す如く略円柱形に形成したものであって、外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密接するよう中子(7)の外径Rを挿入穴(8)の内径に対応した寸法としている。そして、上記中子(7)の外周面(13)には、図5に示す如く直線状且つ断面コ字型の凹溝(12)を円周方向に等間隔に3本形成している。そしてこの凹溝(12)は、中子(7)の軸方向とは傾斜方向に傾斜したものであって、3本とも同一方向且つ同一角度で傾斜している。
【0029】
そして、上記の如く形成した中子(7)を挿入穴(8)に挿入することにより、中子(7)の外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密着配置される。このように中子(7)を挿入穴(8)に挿入配置することにより、図6に示す如く、中子(7)の凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより、エアゾール内容物の噴出路(14)が円周方向に3か所等間隔に形成される。この3本の噴出路(14)は、図4に示す如く挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成配置されるものとなる。尚、各噴出路(14)の内径は、一端から他端まで一定としている。そして、上記の如く組み付けた中子(7)と挿入穴(8)とにより、本実施例の噴射ノズル(15)を構成している。
【0030】
また、上記の如く噴出路(14)を等間隔に3か所形成することにより、噴射パターンを周方向に均一に広げることが可能となる。尚、本実施例及び以下の実施例では噴出路(14)を3本形成しているが、他の異なる実施例では噴出路(14)を2本あるいは4本以上形成しても良い。そして、噴出路(14)を多く形成した場合には、一回のエアゾール内容物の噴射量を多くすることが可能となるとともに、噴射パターンを更に均一なものとすることができる。また、噴出路(14)を2本とした場合には、噴出路(14)の数が少ないため工作が容易となるとともに、目的によってエアゾール内容物の過剰な噴射を防止することができる。また、図4に示す如く中子(7)の一端面(16)が上記挿入穴(8)の段部(11)に当接するものとなり、中子(7)の一端面(16)と挿入穴(8)の底面(10)との間にエアゾール内容物の流通間隔(17)が形成される。
【0031】
上記の如く中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を設け、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成したものであるから、押釦(1)に複数の、又は安定性の悪い大きな噴射ノズル(15)を突設することなく、複数の噴出路(14)を押釦(1)に容易に形成することができる。従って、複数の噴出路(14)を設けるために押釦(1)を大きく形成する必要がないとともに、押釦(1)を簡易な構成とすることが可能となり、製造を容易なものとするとともに、製造コストを低廉なものとすることができる。
【0032】
また、小さい噴射ノズルに加工を加える際に凹溝(12)を形成した場合は、特許文献1に記載の従来例の如く貫通孔を形成する場合と比較して、工作精度及び工作の容易性の面からも著しく優れたものとなり、正確で廉価な製品を得ることが可能となる。尚、本実施例では中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成しているが、他の異なる実施例では、挿入穴(8)の内周面(18)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と中子(7)の外周面(13)とにより噴出路(14)を形成したものであっても良い。
【0033】
上記の如く形成したものにおいてエアゾール内容物を噴射する場合には、まず押釦(1)を押し下げることにより、ステム(3)が下方に移動してバルブ機構が開弁する。これにより、エアゾール容器(2)内に収納したエアゾール内容物がバルブ機構を介してステム(3)から導入路(5)に流入する。そして、導入路(5)に流入したエアゾール内容物は、押釦(1)の連通路(6)及び流通間隔(17)を介して噴出路(14)を通過し、噴出路(14)の先端に位置する噴口(20)から外方に噴射される。
【0034】
この時、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成しているため、挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合と比較して、各噴出路(14)からの噴射パターンを広くすることができる。これは、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合には、目的位置における噴射パターンが正円形となるのに対し、本発明の場合には挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路(14)からの広い噴射パターンが放射方向に拡散して噴射されるため、この複数の噴出路(14)からの噴射パターン全体を広いものとすることができる。
【実施例3】
【0035】
また、上記実施例1、2では、断面コ字型の凹溝(12)の形成深さを溝幅よりも長尺とし、凹溝(12)を深いものとしているが、本実施例3では、断面コ字型の凹溝(12)の形成深さを溝幅よりも短尺とし、凹溝(12)を浅いものとしている。尚、使用目的によって噴射量を減らす場合には、噴出路(14)の開口面積を小さいものとするために凹溝(12)の溝幅を狭くするか、あるいは凹溝(12)を浅く形成しなければならないが、凹溝(12)の溝幅を狭くするよりも、凹溝(12)を浅く形成する方が成形を容易となる。
【0036】
本実施例3について以下に説明すると、図7に示す如く押釦(1)には、下端中央部にエアゾール容器(2)のステム(3)を接続するためのステム接続口(4)を開口している。そして、このステム接続口(4)に接続するステム(3)は、エアゾール容器(2)の内部に設けられたバルブ機構(図示せず。)と接続している。また、上記ステム接続口(4)の上端には、このステム接続口(4)に連続して押釦(1)の軸中心方向に導入路(5)を形成するとともに、この導入路(5)の上端に、連通路(6)を導入路(5)とは垂直方向に形成している。
【0037】
また、上記連通路(6)から押釦(1)の外周面(21)にかけて、中子(7)を挿入配置するための挿入穴(8)を連通路(6)と同一方向に開口形成している。この挿入穴(8)は、押釦(1)の軸中心方向に対して垂直方向に円筒状に開口形成したものであって、底面(10)の内周には円周方向に段部(11)を形成している。そして、上記の如く形成した挿入穴(8)に中子(7)を挿入配置している。この中子(7)は、図8に示す如く略円柱形に形成したものであって、外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密接するよう中子(7)の外径Rを挿入穴(8)の内径に対応した寸法としている。そして、上記中子(7)の外周面(13)には、図8に示す如く直線状且つ断面コ字型の凹溝(12)を円周方向に等間隔に3本形成している。そしてこの凹溝(12)は、中子(7)の軸方向とは傾斜方向に傾斜したものであって、3本とも同一方向且つ同一角度で傾斜している。
【0038】
そして、上記の如く形成した中子(7)を挿入穴(8)に挿入することにより、中子(7)の外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密着配置される。このように中子(7)を挿入穴(8)に挿入配置することにより、図9に示す如く、中子(7)の凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより、エアゾール内容物の噴出路(14)が円周方向に3か所等間隔に形成される。この3本の噴出路(14)は、図7に示す如く挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成配置されるものとなる。尚、各噴出路(14)の内径は、一端から他端まで一定としている。そして、上記の如く組み付けた中子(7)と挿入穴(8)とにより、本実施例の噴射ノズル(15)を構成している。
【0039】
また、上記の如く噴出路(14)を等間隔に3か所形成することにより、噴射パターンを周方向に均一に広げることが可能となる。尚、本実施例及び以下の実施例では噴出路(14)を3本形成しているが、他の異なる実施例では噴出路(14)を2本あるいは4本以上形成しても良い。そして、噴出路(14)を多く形成した場合には、一回のエアゾール内容物の噴射量を多くすることが可能となるとともに、噴射パターンを更に均一なものとすることができる。また、噴出路(14)を2本とした場合には、噴出路(14)の数が少ないため工作が容易となるとともに、目的によってエアゾール内容物の過剰な噴射を防止することができる。また、図7に示す如く中子(7)の一端面(16)が上記挿入穴(8)の段部(11)に当接するものとなり、中子(7)の一端面(16)と挿入穴(8)の底面(10)との間にエアゾール内容物の流通間隔(17)が形成される。
【0040】
上記の如く中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を設け、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成したものであるから、押釦(1)に複数の、又は安定性の悪い大きな噴射ノズル(15)を突設することなく、複数の噴出路(14)を押釦(1)に容易に形成することができる。従って、複数の噴出路(14)を設けるために押釦(1)を大きく形成する必要がないとともに、押釦(1)を簡易な構成とすることが可能となり、製造を容易なものとするとともに、製造コストを低廉なものとすることができる。
【0041】
また、小さい噴射ノズル(15)に加工を加える際に凹溝(12)を形成した場合は、特許文献1に記載の従来例の如く貫通孔を形成する場合と比較して、工作精度及び工作の容易性の面からも著しく優れたものとなり、正確で廉価な製品を得ることが可能となる。尚、本実施例では中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成しているが、他の異なる実施例では、挿入穴(8)の内周面(18)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と中子(7)の外周面(13)とにより噴出路(14)を形成したものであっても良い。
【0042】
上記の如く形成したものにおいてエアゾール内容物を噴射する場合には、まず押釦(1)を押し下げることにより、ステム(3)が下方に移動してバルブ機構が開弁する。これにより、エアゾール容器(2)内に収納したエアゾール内容物がバルブ機構を介してステム(3)から導入路(5)に流入する。そして、導入路(5)に流入したエアゾール内容物は、押釦(1)の連通路(6)及び流通間隔(17)を介して噴出路(14)を通過し、噴出路(14)の先端に位置する噴口(20)から外方に噴射される。
【0043】
この時、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成しているため、挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合と比較して、各噴出路(14)からの噴射パターンを広くすることができる。これは、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合には、目的位置における噴射パターンが正円形となるのに対し、本発明の場合には挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路(14)からの広い噴射パターンが、放射方向に拡散して噴射されるため、この複数の噴出路(14)からの噴射パターン全体を広いものとすることができる。
【実施例4】
【0044】
また、上記実施例1〜3では、中子(7)の外周面(13)に同一幅で直線状の凹溝(12)を形成しているが、本実施例では中子(7)の外周面(13)に、図10に示す如く中子(7)の長さ方向中央部でく字型に折れ曲がった断面コ字型の凹溝(12)を円周方向に等間隔に3本形成している。このようにく字型の凹溝(12)を形成することにより、中子(7)の軸方向長さを一定とした場合に、直線状の凹溝(12)よりも、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して大きく傾斜させることができる。そのため、噴射パターンを更に大きくすることが可能となる。
【0045】
本実施例4について以下に説明すると、図10に示す如く押釦(1)には、下端中央部にエアゾール容器(2)のステム(3)を接続するためのステム接続口(4)を開口している。そして、このステム接続口(4)に接続するステム(3)は、エアゾール容器(2)の内部に設けられたバルブ機構(図示せず。)と接続している。また、上記ステム接続口(4)の上端には、このステム接続口(4)に連続して押釦(1)の軸中心方向に導入路(5)を形成するとともに、この導入路(5)の上端に、連通路(6)を導入路(5)とは垂直方向に形成している。
【0046】
また、上記連通路(6)から押釦(1)の外周面(21)にかけて、中子(7)を挿入配置するための挿入穴(8)を連通路(6)と同一方向に開口形成している。この挿入穴(8)は、押釦(1)の軸中心方向に対して垂直方向に円筒状に開口形成したものであって、底面(10)の内周には円周方向に段部(11)を形成している。そして、上記の如く形成した挿入穴(8)に中子(7)を挿入配置している。この中子(7)は、図11に示す如く略円柱形に形成したものであって、外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密接するよう中子(7)の外径Rを挿入穴(8)の内径に対応した寸法としている。そして、上記中子(7)の外周面(13)には、図11に示す如く平面く字型且つ断面コ字型の凹溝(12)を円周方向に等間隔に3本形成している。そしてこの凹溝(12)は、中央から両側が中子(7)の軸方向に対して対称に傾斜した平面く字型であって、3本とも同一方向且つ同一角度で傾斜している。
【0047】
そして、上記の如く形成した中子(7)を挿入穴(8)に挿入することにより、中子(7)の外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密着配置される。このように中子(7)を挿入穴(8)に挿入配置することにより、図12に示す如く、中子(7)の凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより、エアゾール内容物の噴出路(14)が円周方向に3か所等間隔に形成される。そしてこの3本の噴出路(14)は、図10に示す如く、平面く字型の中央から両側にかけて、挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成配置されるものとなる。尚、各噴出路(14)の内径は、一端から他端まで一定としている。そして、上記の如く組み付けた中子(7)と挿入穴(8)とにより、本実施例の噴射ノズル(15)を構成している。
【0048】
また、上記の如く噴出路(14)を等間隔に3か所形成することにより、噴射パターンを周方向に均一に広げることが可能となる。尚、本実施例及び以下の実施例では噴出路(14)を3本形成しているが、他の異なる実施例では噴出路(14)を2本あるいは4本以上形成しても良い。そして、噴出路(14)を多く形成した場合には、一回のエアゾール内容物の噴射量を多くすることが可能となるとともに、噴射パターンを更に均一なものとすることができる。また、噴出路(14)を2本とした場合には、噴出路(14)の数が少ないため工作が容易となるとともに、目的によってエアゾール内容物の過剰な噴射を防止することができる。また、図10に示す如く中子(7)の一端面(16)が上記挿入穴(8)の段部(11)に当接するものとなり、中子(7)の一端面(16)と挿入穴(8)の底面(10)との間にエアゾール内容物の流通間隔(17)が形成される。
【0049】
上記の如く中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を設け、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成したものであるから、押釦(1)に複数の、又は安定性の悪い大きな噴射ノズル(15)を突設することなく、複数の噴出路(14)を押釦(1)に容易に形成することができる。従って、複数の噴出路(14)を設けるために押釦(1)を大きく形成する必要がないとともに、押釦(1)を簡易な構成とすることが可能となり、製造を容易なものとするとともに、製造コストを低廉なものとすることができる。
【0050】
また、小さい噴射ノズル(15)に加工を加える際に凹溝(12)を形成した場合は、特許文献1に記載の従来例の如く貫通孔を形成する場合と比較して、工作精度及び工作の容易性の面からも著しく優れたものとなり、正確で廉価な製品を得ることが可能となる。尚、本実施例では中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成しているが、他の異なる実施例では、挿入穴(8)の内周面(18)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と中子(7)の外周面(13)とにより噴出路(14)を形成したものであっても良い。
【0051】
上記の如く形成したものにおいてエアゾール内容物を噴射する場合には、まず押釦(1)を押し下げることにより、ステム(3)が下方に移動してバルブ機構が開弁する。これにより、エアゾール容器(2)内に収納したエアゾール内容物がバルブ機構を介してステム(3)から導入路(5)に流入する。そして、導入路(5)に流入したエアゾール内容物は、押釦(1)の連通路(6)及び流通間隔(17)を介して噴出路(14)を通過し、噴出路(14)の先端に位置する噴口(20)から外方に噴射される。
【0052】
この時、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成しているため、挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合と比較して、各噴出路(14)からの噴射パターンを広くすることができる。これは、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合には、目的位置における噴射パターンが正円形となるのに対し、本発明の場合には挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路(14)からの広い噴射パターンが、放射方向に拡散して噴射されるため、この複数の噴出路(14)からの噴射パターン全体を広いものとすることができる。
【実施例5】
【0053】
また、上記実施例1〜4では、噴出路(14)の形成幅を一端から他端まで同一幅としているが、本実施例5では、図14に示す如く噴出路(14)の形成幅を一端側と他端側とで異なるよう形成している。本実施例5について以下に説明すると、図13に示す如く押釦(1)には、下端中央部にエアゾール容器(2)のステム(3)を接続するためのステム接続口(4)を開口している。そして、このステム接続口(4)に接続するステム(3)は、エアゾール容器(2)の内部に設けられたバルブ機構(図示せず。)と接続している。また、上記ステム接続口(4)の上端には、このステム接続口(4)に連続して押釦(1)の軸中心方向に導入路(5)を形成するとともに、この導入路(5)の上端に、連通路(6)を導入路(5)とは垂直方向に形成している。
【0054】
また、上記連通路(6)から押釦(1)の外周面(21)にかけて、中子(7)を挿入配置するための挿入穴(8)を連通路(6)と同一方向に開口形成している。この挿入穴(8)は、押釦(1)の軸中心方向に対して垂直方向に円筒状に開口形成したものであって、底面(10)の内周には円周方向に段部(11)を形成している。そして、上記の如く形成した挿入穴(8)に中子(7)を挿入配置している。この中子(7)は、図14に示す如く略円柱形に形成したものであって、外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密接するよう中子(7)の外径Rを挿入穴(8)の内径に対応した寸法としている。そして、上記中子(7)の外周面(13)には、図14に示す如く直線状且つ断面コ字型の凹溝(12)を円周方向に等間隔に3本形成している。この凹溝(12)は、図14に示す如く先端側の溝幅を後端側の溝幅よりも狭いものとしている。そしてこの凹溝(12)は、中子(7)の軸方向とは傾斜方向に傾斜したものであって、3本とも同一方向且つ同一角度で傾斜している。
【0055】
そして、上記の如く形成した中子(7)を挿入穴(8)に挿入することにより、中子(7)の外周面(13)が挿入穴(8)の内周面(18)に密着配置される。このように中子(7)を挿入穴(8)に挿入配置することにより、図15に示す如く、中子(7)の凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより、エアゾール内容物の噴出路(14)が円周方向に3か所等間隔に形成される。この3本の噴出路(14)は、図13に示す如く挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成配置されるものとなる。
【0056】
また、上記の如く先端側の凹溝(12)の溝幅を後端側の凹溝(12)の溝幅よりも狭いものとしていることから、図13に示す如く、噴出路(14)の先端側の内径が後端側の内径よりも狭いものとなる。このように噴出路(14)の先端側を後端側の内径よりも狭いものとすることにより、エアゾール内容物の噴射圧力を高めることが可能となる。そして、上記の如く組み付けた中子(7)と挿入穴(8)とにより、本実施例の噴射ノズル(15)を構成している。
【0057】
上記の如く中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を設け、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成したものであるから、押釦(1)に複数の、又は安定性の悪い大きな噴射ノズル(15)を突設することなく、複数の噴出路(14)を押釦(1)に容易に形成することができる。従って、複数の噴出路(14)を設けるために押釦(1)を大きく形成する必要がないとともに、押釦(1)を簡易な構成とすることが可能となり、製造を容易なものとするとともに、製造コストを低廉なものとすることができる。
【0058】
また、小さい噴射ノズル(15)に加工を加える際に凹溝(12)を形成した場合は、特許文献1に記載の従来例の如く貫通孔を形成する場合と比較して、工作精度及び工作の容易性の面からも著しく優れたものとなり、正確で廉価な製品を得ることが可能となる。尚、本実施例では中子(7)の外周面(13)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と挿入穴(8)の内周面(18)とにより噴出路(14)を形成しているが、他の異なる実施例では、挿入穴(8)の内周面(18)に凹溝(12)を形成し、この凹溝(12)と中子(7)の外周面(13)とにより噴出路(14)を形成したものであっても良い。
【0059】
上記の如く形成したものにおいてエアゾール内容物を噴射する場合には、まず押釦(1)を押し下げることにより、ステム(3)が下方に移動してバルブ機構が開弁する。これにより、エアゾール容器(2)内に収納したエアゾール内容物がバルブ機構を介してステム(3)から導入路(5)に流入する。そして、導入路(5)に流入したエアゾール内容物は、押釦(1)の連通路(6)及び流通間隔(17)を介して噴出路(14)を通過し、噴出路(14)の先端に位置する噴口(20)から外方に噴射される。
【0060】
この時、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成しているため、挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合と比較して、各噴出路(14)からの噴射パターンを広くすることができる。これは、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合には、目的位置における噴射パターンが正円形となるのに対し、本発明の場合には挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路(14)からの広い噴射パターンが、放射方向に拡散して噴射されるため、この複数の噴出路(14)からの噴射パターン全体を広いものとすることができる。
【0061】
ここで、上記の如く噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に交差して形成した方が、噴出路(41)を挿入穴(42)の内周面(43)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合よりも噴射パターンを広くすることができることを確認するために、上記実施例1〜5、及び噴出路(41)を挿入穴(42)の内周面(43)の円周方向に対して垂直方向に形成した比較例1、2について、噴射パターンの大きさを測定する実験を行った。
【0062】
尚、比較例1、2の押釦(44)は、図16〜図19に示す如く上記実施例1〜5と同様に形成したものであって、中子(45)の外周面(46)には、図17、図19に示す如く中子(45)の軸方向に凹溝(47)を3か所形成している。そして、この中子(45)を挿入穴(42)に挿入配置することにより、中子(45)の凹溝(47)と挿入穴(42)の内周面(46)とによって、挿入穴(42)の内周面(46)の円周方向に対して垂直方向にエアゾール内容物の噴出路(41)を形成したものである。
【0063】
この噴射パターンの測定実験について以下に説明すると、まず、本実験に使用したエアゾール内容物の処方は、
99%合成無変性アルコール:19.9vol%
消臭原体:0.1vol%
LPG0.29MPa:80.0vol%
である。
【0064】
そして、噴口(20)(48)から20センチ離れた場所に床面に垂直な板を設置し、この板面にエアゾール内容物を噴射し、この噴射によって板面に塗布された噴射パターンの大きさを測定するものである。具体的には、図20に示す如く、各噴出路(14)(41)からそれぞれ噴射された噴射パターンのうちの密度の濃い部分の直径をA、密度の薄い直径をB、また、図20の点線にて示す如く全ての噴出路(14)(41)から噴射された直径Bの円がそれぞれ内接する円の直径をCとして、各実施例及び比較例のA、B、Cの大きさをそれぞれ測定した。
【0065】
測定実験の結果を表1に示す。
【表1】

【0066】
表1には、各実施例及び比較例における中子(7)(45)の軸方向長さt、外径R、噴口(20)(48)の開口面積、噴出路(14)(41)の個数、噴口(20)(48)間の最短直線距離、上記A、B、Cの測定結果をそれぞれ記載している。即ち、中子(7)(45)の軸方向長さtは、実施例1が4.3mm、実施例3を5mmとし、それ以外の実施例及び比較例は、全て2.5mmとした。また、中子(7)(45)の外径Rは、実施例1を5mmとし、それ以外の実施例及び比較例では全て4mmとした。また、噴口面積は全ての実施例及び比較例において異なったものであって、実施例3以外の実施例は、全て比較例1、2よりも噴口面積を広いものとしている。また、噴出路(14)(41)の個数は、全ての実施例及び比較例において3個とした。また、噴口(20)(48)間の最短直線距離は、全ての実施例及び比較例において異なったものとし、実施例3以外の実施例の噴口間距離を、比較例の噴口間距離よりも短いものとした。
【0067】
そして、上記構成条件のもとで、各実施例及び比較例の噴射パターンについて測定した結果、全ての実施例において比較例のA、B、Cの各数値を上回る結果となった。特に、全ての噴出路(14)(41)からの噴射パターンを合わせた直径Cの値については、実施例が比較例の約2倍となり、実施例の噴射パターンが比較例の噴射パターンよりも著しく大きいものであることが明らかとなった。これは、比較例1、2では、エアゾール内容物が挿入穴(42)の内周面(43)の円周方向に対して垂直方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが正円形となるのに対し、実施例1〜5ではエアゾール内容物が挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に噴射されるため、目的位置での噴射パターンが楕円形となり、個々の噴射パターンが広くなるためである。また、このように個々の噴出路(14)からの広い噴射パターンが、放射方向に拡散して噴射されることによるものである。
【0068】
更に、実施例3については、噴口面積が比較例1、2よりも小さいにもかかわらず、A、B、Cの値が比較例1、2よりも著しく大きいものとなり、また、実施例1、2、4、5については、噴口(20)(48)間の最短直線距離が比較例1、2よりも小さいにもかかわらず、A、B、Cの値が比較例1、2よりも著しく大きいものとなった。以上の結果より、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に形成した場合と、噴出路(41)を挿入穴(42)の内周面(43)の円周方向に対して垂直方向に形成した場合とを比較した場合、噴口面積の大きさ及び噴口(20)(48)間の最短直線距離に関係なく、噴出路(14)を挿入穴(8)の内周面(18)の円周方向に対して傾斜方向に形成した方がエアゾール内容物を広範囲に噴霧することができることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0069】
1 押釦
2 エアゾール容器
3 ステム
7 中子
8 挿入穴
12 凹溝
13 外周面
14 噴出路
18 内周面
21 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押釦の外周面から内方に、中子を挿入するための挿入穴を形成し、この挿入穴内に挿入する中子の外周面を上記挿入穴に密着配置するとともに、この中子の外周面又は挿入穴の内周面に凹溝を設けることにより、中子と挿入穴との間にエアゾール容器のステムに連通する噴出路を形成し、この噴出路を、挿入穴の内周面の円周方向に対して傾斜方向に交差して複数本形成したことを特徴とするエアゾール容器用噴射ノズル。
【請求項2】
噴出路は、同一間隔で3本以上形成したことを特徴とする請求項1のエアゾール容器用噴射ノズル。
【請求項3】
凹溝は、直線状に形成したことを特徴とする請求項1のエアゾール容器用噴射ノズル。
【請求項4】
凹溝は、平面形状をく字型としたことを特徴とする請求項1のエアゾール容器用噴射ノズル。
【請求項5】
噴出路は、先端側の内径を、後端側の内径よりも小径としたことを特徴とする請求項1のエアゾール容器用噴射ノズル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−135733(P2012−135733A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290364(P2010−290364)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】