説明

エアゾール容器

【課題】 防爆機構が機能しない場合に容器の破裂を抑制するエアゾール容器を提供する
【解決手段】 図(a),(b)はエアゾール容器3の口元部9を示す斜視図である。エアゾール容器3は、図(a),(b)に示すように、有底円筒状の容器本体部5と、容器本体部5と開口部3aとを接続し、容器本体部5から開口部3aに向けて径が徐々に小さくなる首部7と、開口部3aの外周側に首部7に対して突出して形成される口元部9とからなる。そして口元部9の外周面9a上には、外周面9aの周方向に沿って延びて始端と終端とを有する突出部11aが複数設けられている。また図(b)に示すように、外周面9aの周方向に沿って、複数の台地状凸部11bが設けられるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状内容物を噴射剤とともに容器内に収容し、容器の上部に取り付けられた噴出装置から液状内容物を噴出させるようにしたエアゾール容器が広く利用されている。
このようなエアゾール容器においては、直射日光が照射される自動車内等のような高温状態に長時間曝された場合に、容器の内圧が上昇して、上記噴出装置がエアゾール容器から飛び出す、即ちエアゾール容器が破裂する虞がある。
【0003】
このためエアゾール容器には、破裂を防止するための防爆機構が設けられているものもあり、エアゾール容器が破裂する前に容器内の液状内容物を外部に漏洩させることにより、容器の内圧の上昇を抑制するようにされている。
【0004】
このような防爆機構を備えたエアゾール容器には、図5(a)に示すように、容器本体111の首部115に連設された口元部114の外周面114a上に、容器本体111の略軸方向へ延びる突起である縦リブ状突起127が形成されたエアゾール容器110が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
尚、図5(a)はエアゾール容器110の要部斜視図、図5(b)はバルブ機構113が取り付けられたエアゾール容器110の要部断面図、図5(c)はエアゾール容器110が高温状態に置かれた時の図5(b)に対応する断面図である。
【0006】
このエアゾール容器110においては、図5(b)に示すように、容器本体111の口元部114に、マウンティンカップ112を介してバルブ機構113が取り付けられている。そして容器本体111内に充填された液状内容物が、バルブ機構113の操作により外部へ吐出される。
【0007】
またバルブ機構113は、フランジ部118aを有するバルブハウジング118に、ステム119が軸方向に移動自在に内蔵され、更にバルブハウジング118の下部に、容器本体111の底部まで延びるディップチューブ120が嵌合されている。またバルブハウジング118のフランジ部118aが、容器本体111の口元部114の上面114bにパッキン121を介して載置される。
【0008】
マウンティンカップ112は、このフランジ部118aから容器本体111の口元部114の外周を覆い、首部115の口元部114側外周まで延びて、バルブハウジング118を容器本体111に取り付ける。尚、縦リブ状突起127近傍では、マウンティンカップ112と外周面114aとの間に隙間129が形成される。
【0009】
そして、エアゾール容器110が高温状態に置かれると、図5(c)に示すように、容器本体111の口元部114における下端部126が熱変形して、マウンティンカップ112の裾部128を保持する保持力が弱くなるとともに、容器本体111の内部圧力が上昇して容器本体111が変形し、その首部115の変形によりマウンティンカップ112の裾部128が押し拡げられる。これらの結果、マウンティンカップ112が、バルブ機構113と共に容器本体111の軸方向に若干移動し、バルブ機構113のフランジ部118aと容器本体111の口元部114における上面114bとの間にリーク通路130が形成され、このリーク通路130が隙間129に連通する。
【0010】
そして、容器本体111の液状内容物が、これらのリーク通路130及び隙間129を経て外部に漏洩することにより、容器の内圧の上昇が抑制され、エアゾール容器の破裂が防止される。
【特許文献1】特開2001−130656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような防爆機構を備えるエアゾール容器においては、高温状態に曝されて口元部が熱変形した場合でも、この変形形状によっては、フランジ部と口元部の上面との間にリーク通路が形成されないこともある。このような場合には、容器内の内圧が上昇して、エアゾール容器が破裂する可能性が高くなるという問題があった。
【0012】
本発明はこうした問題に鑑みなされたものであり、防爆機構が機能しない場合に容器の破裂を抑制するエアゾール容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた第1発明のエアゾール容器は、液状内容物を収容する容器本体部と、液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が容器本体部に連結されている筒状の首部と、開口部の外周側に首部に対して突出して形成された口元部とを備え、開口部を被覆する上面部と、上面部の周端縁から連設されて、口元部の外周面全体を被覆するとともに首部の外周面と圧着される筒状の裾部とを備え、開口部に冠着される取付プレートによって、容器本体部内の液状内容物を外部へ吐出する吐出部材が口元部に取り付けられるエアゾール容器であって、口元部の外周面上において外周面の周方向に沿って延設されるとともに、始端と終端とを有し、取付プレートの裾部に当接する突出部を備えることを特徴とする。
【0014】
つまり第1発明のエアゾール容器では、外周面の周方向に沿って隣り合う突出部間に空隙が形成されている。即ち、口元部の外周面上において、この空隙が形成されている部位(以降、突出部間空隙部位と称す)は、取付プレートと当接していない。
【0015】
更に、裾部は、口元部の外周面全体を被覆する部分(以降、外周面被覆部と称す)と、首部の外周面と圧着される部分(以降、首部圧着部と称す)とから構成されている。即ち、裾部は、首部圧着部が、筒状の外周面被覆部の内側に折れ曲がった形状をしている。
【0016】
このため第1発明のエアゾール容器では、このエアゾール容器が高温状態に長時間曝された場合に、まず口元部が熱変形して、取付プレートの上面部と口元部との間で液状内容物が漏洩するリーク通路(以降、開口部リーク通路と称す)が形成される。そして更にこの開口部リーク通路が突出部間空隙部位に連通すると、この突出部間空隙部位を通って液状内容物が外部に漏洩する。この結果、容器の内圧上昇が抑制され、エアゾール容器の破裂が防止される。
【0017】
また、エアゾール容器が高温状態に曝されても、口元部の変形形状によっては開口部リーク通路が形成されないこともある。この場合には容器内の内圧が上昇し、エアゾール容器の開口部に冠着されている取付プレートが開口部から外れて、噴出装置とともに容器から飛び出そうとする。この際、首部圧着部は、口元部の外周面上に乗り上げ、更に、上述したように折れ曲がった形状をしているために、突出部に係合する。
【0018】
このため、内圧上昇で噴出装置が飛び出す力(以降、破裂力と称す)よりも、首部圧着部が突出部に係合する力(以降、係合力と称す)が大きい場合には、この時点でのエアゾール容器の破裂を防止することができる。そして、この後に内圧がさらに上昇し、破裂力が係合力を超えるまで、取付プレートを開口部に冠着された状態に保持することができる。即ち、破裂に至るまでの時間を延ばすことができる。そして、この間に開口部リーク通路が形成されると、エアゾール容器の破裂を防止することができる。つまり、エアゾール容器の破裂を防止する可能性を高めることができる。
【0019】
一方、係合力が破裂力よりも小さい場合にはエアゾール容器は破裂するが、首部圧着部が突出部に係合した分、破裂の勢いを弱めることができる。
つまり、第1発明のエアゾール容器によれば、エアゾール容器の破裂を抑制することができる。
【0020】
尚、突出部は口元部の外周面の周方向に沿って延設されている。このため、第1発明のエアゾール容器では、縦リブ状突起127のように略軸方向へ延びる突起を備えたエアゾール容器(以降、縦リブ容器と称す)よりも、首部圧着部が口元部の外周面上で係合する部分が多く、係合力が大きい。つまり、縦リブ容器よりも、エアゾール容器の破裂を抑制することができる。
【0021】
また第1発明のエアゾール容器においては、口元部の外周面上に設けられる突出部は、口元部の外周面の周方向に沿って複数設けられ、複数の突出部は、口元部の外周面の周方向に沿って、略等間隔に配置されるようにしてもよい。
【0022】
このように構成されたエアゾール容器では、リーク通路を口元部の外周面の周方向に沿って均等に配置することができる。
また第2発明のエアゾール容器は、液状内容物を収容する容器本体部と、液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が容器本体部に連結されている筒状の首部と、開口部の外周側に首部に対して突出して形成された口元部とを備え、開口部を被覆する上面部と、上面部の周端縁から連設されて、口元部の外周面全体を被覆するとともに首部の外周面と圧着される筒状の裾部とを備え、開口部に冠着される取付プレートによって、容器本体部内の液状内容物を外部へ吐出する吐出部材が口元部に取り付けられるエアゾール容器であって、口元部の外周面上において外周面の周方向に沿って設けられ、取付プレートの裾部に当接する当接面を有した複数の台地状凸部を備えることを特徴とする。
【0023】
つまり第2発明のエアゾール容器では、外周面の周方向に沿って隣り合う台地状凸部間に空隙が形成されている。即ち、口元部の外周面上において、この空隙が形成されている部位(凸部間空隙部位)は、取付プレートと当接していない。
【0024】
更に、裾部は、外周面被覆部と首部圧着部とから構成されており、首部圧着部が、筒状の外周面被覆部の内側に折れ曲がった形状をしている。
このため第2発明のエアゾール容器では、このエアゾール容器が高温状態に長時間曝された場合に、まず口元部が熱変形して開口部リーク通路が形成される。そして更にこの開口部リーク通路が凸部間空隙部位に連通すると、この凸部間空隙部位を通って液状内容物が外部に漏洩する。この結果、容器の内圧上昇が抑制され、エアゾール容器の破裂が防止される。
【0025】
また、エアゾール容器が高温状態に曝されても、口元部の変形形状によっては開口部リーク通路が形成されないこともある。この場合には、容器内の内圧が上昇し、エアゾール容器の開口部に冠着されている取付プレートが開口部から外れて、噴出装置とともに容器から飛び出そうとする。この際、首部圧着部は、口元部の外周面上に乗り上げ、更に、上述したように折れ曲がった形状をしているために、台地状凸部に係合する。
【0026】
このため、内圧上昇で噴出装置が飛び出す力(破裂力)よりも、首部圧着部が台地状凸部に係合する力(係合力)が大きい場合には、この時点でのエアゾール容器の破裂を防止することができる。そして、この後に内圧がさらに上昇し、破裂力が係合力を超えるまで、取付プレートを開口部に冠着された状態に保持することができる。即ち、破裂に至るまでの時間を延ばすことができる。そして、この間に開口部リーク通路が形成されると、エアゾール容器の破裂を防止することができる。つまり、エアゾール容器の破裂を防止する可能性を高めることができる。
【0027】
一方、係合力が破裂力よりも小さい場合にはエアゾール容器は破裂するが、首部圧着部が台地状凸部に係合した分、破裂の勢いを弱めることができる。
つまり、第2発明のエアゾール容器によれば、エアゾール容器の破裂を抑制することができる。
【0028】
尚、台地状凸部は口元部の外周面の周方向に沿って延設されている。このため、第2発明のエアゾール容器では、上記縦リブ容器よりも、首部圧着部が口元部の外周面上で係合する部分が多く、係合力が大きい。つまり、縦リブ容器よりも、エアゾール容器の破裂を抑制することができる。
【0029】
また第2発明のエアゾール容器においては、口元部の外周面上に設けられる台地状凸部は、口元部の外周面の周方向に沿って、略等間隔に配置されるようにしてもよい。
このように構成されたエアゾール容器では、リーク通路を口元部の外周面の周方向に沿って均等に配置することができる。
【0030】
ところで、口元部が熱変形する速度(以降、口元熱変形速度と称す)が速すぎると、液状内容物が抜ける前にエアゾール容器が破裂する場合がある。一方、口元熱変形速度が適度に遅いと、エアゾール容器が破裂する前に液状内容物が抜ける可能性が高い。言い換えると、口元熱変形速度が遅ければ、エアゾール容器が破裂する前に液状内容物が全て漏れて、内圧がゼロになる可能性が高くなる。
【0031】
このため、第1発明または第2発明のエアゾール容器においては、2軸延伸により一体成型されるようにするとよい。
即ち、2軸延伸により一体成型され、且つ縦リブ状突起127のような突起が口元部の外周面上に設けられているエアゾール容器(以降、2軸延伸縦リブ容器と称す)が熱変形する時には、この口元部は比較的縦方向に伸びるとともに、同じ方向に規則的に変形する傾向がある。また、口元部の外周が拡大するように変形する傾向もある。
【0032】
一方、2軸延伸により一体成型され、且つ上記突出部や台地状凸部のような横リブが口元部の外周面上に設けられているエアゾール容器(以降、2軸延伸横リブ容器と称す)が熱変形する時には、2軸延伸縦リブ容器と比較して、変形速度が小さくなるとともに変形方向が不規則となる。これは、横リブによるフランジ効果により、変形が抑制されるものと推測される。つまり、2軸延伸横リブ容器は、2軸延伸縦リブ容器と比較して、口元部が熱変形し難い。
【0033】
従って、このように構成された第1発明または第2発明のエアゾール容器では、口元部の熱変形を抑制することにより、エアゾール容器の破裂を抑制することができる。このため、液状内容物が漏れている最中のエアゾール容器を、安全に廃棄処理する時間を稼ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態について図面をもとに説明する。
図1は本発明が適用されたエアゾール装置1の側面図であり、図1(a)はレフィールキャップ60が装着された状態、図1(b)は櫛部70が装着された状態を示す。但し、肩カバー40,レフィールキャップ60及び櫛部70は断面図で示している。また、図2(a)は口元部9の斜視図である。
【0035】
図1(a)に示すように、エアゾール装置1は、上部に開口部3a(図2参照)を有し、液状内容物(例えば、毛髪化粧剤の一種である酸性染毛料および噴射剤(例えばLPG,DME))を収容するエアゾール容器3と、開口部3aを閉塞するようにエアゾール容器3に取り付けられるバルブユニット20と、バルブユニット20の側面を覆う肩カバー40とから構成される。
【0036】
これらのうちエアゾール容器3は、有底円筒状の容器本体部5と、容器本体部5と開口部3aとを接続し、容器本体部5から開口部3aに向けて径が徐々に小さくなる首部7と、開口部3aの外周側に首部7に対して突出して形成される口元部9とからなる。尚、本実施形態では、エアゾール容器3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を材料として、周知の2軸延伸により一体成型されている。
【0037】
また口元部9の外周面9a上には、図2(a)に示すように、外周面9aの周方向に沿って延びて始端と終端とを有する突出部11aが複数設けられている。
図3(a)はエアゾール装置1の要部断面図である。バルブユニット20は、図3(a)に示すように、ガスケット21を介して配置されるバルブハウジング23と、バルブハウジング23中にて上下動可能となるように挿入され、側壁に横穴25aを有する公知のステム25と、ステム25を開閉すると共に、横穴25aを塞ぐためのステムラバー27と、ステム25の上部側を突出させた状態でガスケット21,バルブハウジング23及びステムラバー27をエアゾール容器3の開口部3aに一体的に取り付けるマウンティンカップ29とから構成される。
【0038】
そしてバルブハウジング23は、開口部3aの内面に嵌入される有底筒状のバルブ本体部23aと、その上部外側に広がるフランジ部23bと、バルブ本体部23aの下方に延びる筒部23cとからなる。またバルブ本体部23aの内部には、ステム25を上下動自在に収容する筒状の空所23dが設けられ、その内面にはステム25をガイドするリブ23eが放射状に設けられている。尚、空所23dと筒部23cの筒内とは孔23fで連通している。尚、フランジ部23bはバルブハウジング23をエアゾール容器3に固定するための部分である。また、エアゾール装置1が正立使用の場合、筒部23cにはディップチューブ(図示せず)が勘着されエアゾール容器3の底部まで延びている。一方、エアゾール装置1が倒立使用の場合、孔23fはバルブハウジング23の横に設けられる(図示せず)。
【0039】
またバルブハウジング23において、バルブ本体部23aの空所23dの底面と、ステム25との間には弾性部材としてコイルスプリング31が配置され、ステム25はこのコイルスプリング31によって常に上方に付勢された状態となっている。
【0040】
またマウンティンカップ29は、開口部3aを被覆する上面部29aと、上面部29aの周端縁から連設された筒状の裾部29bとから構成されている。また裾部29bは、裾部29bの周端縁部分が首部7の外周面に当接するとともに、周端縁部分以外が口元部9の外周面9aに当接する。そして、首部7の外周面と当接している部分で裾部29bが圧着されることにより、マウンティンカップ29は開口部3aに冠着される(なお以降、裾部29bの周端縁部分を首部圧着部、裾部29bの周端縁部分以外を外周面被覆部と称す)。即ち、裾部29bは、首部圧着部が、筒状の外周面被覆部の内側に折れ曲がった形状をしている。
【0041】
但し、隣り合う突出部11a間には空隙33aが形成されており、口元部9の外周面9a上において、この空隙33aが形成されている部位(以降、突出部間空隙部位と称す)は、裾部29bと当接していない。換言すると、突出部間空隙部位以外では外周面9aは裾部29bと当接している。
【0042】
このように構成されたエアゾール装置1では、ステム25が押下されると、ステムラバー27にて塞がれていたステム25の横穴25aが開放され、横穴25a,バルブ本体部23aの空所23dにおける各リブ23e間の空間,孔23f,筒部23cの筒内が互いに連通する。そして、収容された酸性染毛料が、噴射剤の圧力によって各空間(即ち、各リブ23e間,孔23f,筒部23cの筒内等、それぞれが有する空間)及びステム25内を通って外部に排出される。
【0043】
尚、エアゾール装置1の未使用時には、肩カバー40の上部に、レフィールキャップ60が装着される(図1(a)参照)。これにより、バルブユニット20が不用意に操作されることを防止する。
【0044】
一方、エアゾール装置1の使用時には、肩カバー40の上部に、ノズルとしての機能を有する櫛部70が装着される(図1(b)参照)。
この櫛部70は、肩カバー40と嵌合するためのネジ山71aが内周面に形成された円筒形状の櫛装着部71と、櫛装着部71の上部から突出し、上端が閉塞し下端が開口した有底筒状の支持体73と、支持体73の長手方向に対して直交する方向に植設された複数の櫛歯75と、ステム25を押下するために操作される操作レバー77とから構成される。尚、支持体73は櫛歯75を支持するための部分である。
【0045】
そして支持体73の内部には、ステム25から排出された酸性染毛料を導入する充填室73aが形成されている。また支持体73には、櫛歯75を植設するための植設口73bが形成され、この植設口73bそれぞれに対応して櫛歯75が植設されている。
【0046】
また櫛歯75は、その側壁途中において、各櫛歯75が向かい合う側にはノズル75aが形成され、櫛歯75の内部には櫛歯75の基部からノズル75aに向けて酸性染毛料を排出する誘導路としての誘導路75bが形成されている。つまり、充填室73aはノズル75aを通じて外部と連通される。
【0047】
尚、列設された櫛歯75の両端には、支持体73と一体に形成された両端櫛歯79が設けられている。この二本の両端櫛歯79には充填室73aと連通した誘導路が形成されていない。従ってノズルも形成されていない。
【0048】
このように、エアゾール容器3とバルブユニット20と肩カバー40と櫛部70とを備えたエアゾール装置1では、操作レバー77が操作されると、ステム25が押下される。この結果、酸性染毛料が、充填室73aに導入されて更に櫛歯75に達し、ノズル75aから吐出される。また、ノズル75aから吐出した酸性染毛料は、各櫛歯75のノズル75aの周囲付近で保持された状態となる。
【0049】
即ち、使用者は、櫛歯75に酸性染毛料が保持された状態の櫛部70にて毛髪を梳くことにより、酸性染毛料を簡便に毛髪に塗布することができる。
このように構成されたエアゾール装置1では、このエアゾール装置1が高温状態に長時間曝された場合に、まず口元部9が熱変形して、ガスケット21と口元部9との間にリーク通路(開口部リーク通路)が形成される。そして更にこの開口部リーク通路が突出部間空隙部位に連通すると、この突出部間空隙部位を通って液状内容物が外部に漏洩する。この結果、容器の内圧上昇が抑制され、エアゾール装置1の破裂が防止される。
【0050】
また、エアゾール装置1が高温状態に曝されても、口元部9の変形形状によっては開口部リーク通路が形成されないこともある。この場合には容器内の内圧が上昇し、エアゾール容器3の開口部3aに冠着されているマウンティンカップ29が開口部3aから外れて、バルブユニット20とともにエアゾール容器3から飛び出そうとする。この際、首部圧着部は、口元部9の外周面9a上に乗り上げ、更に、上述したように折れ曲がった形状をしているために、突出部11aに係合する。
【0051】
このため、内圧上昇でバルブユニット20が飛び出す力(破裂力)よりも、首部圧着部が突出部11aに係合する力(係合力)が大きい場合には、この時点でのエアゾール装置1の破裂を防止することができる。そして、この後に内圧がさらに上昇し、破裂力が係合力を超えるまで、マウンティンカップ29を開口部3aに冠着された状態に保持することができる。そして、この間に開口部リーク通路が形成されると、エアゾール装置1の破裂を防止することができる。つまり、エアゾール装置1の破裂を防止する可能性を高めることができる。
【0052】
一方、係合力が破裂力よりも小さい場合にはエアゾール装置1は破裂するが、首部圧着部が突出部11aに係合した分、破裂の勢いを弱めることができる。
つまり、エアゾール装置1によれば、エアゾール装置1の破裂を抑制することができる。
【0053】
尚、突出部11aは口元部9の外周面9aの周方向に沿って延設されている。このため、エアゾール装置1では、縦リブ状突起127のような縦リブが口元部の外周面上に設けられているエアゾール容器(縦リブ容器)よりも、首部圧着部が口元部9の外周面9a上で係合する部分が多く、係合力が大きい。つまり、縦リブ容器よりも、容器の破裂を抑制することができる。
【0054】
またエアゾール装置1では、突出部11aは、口元部9の外周面9aの周方向に沿って、略等間隔に配置されているため、口元部9の外周面9aにおいて、液状内容物が外部に漏洩する通路を均等に配置することができる。
【0055】
ところで、口元部9が熱変形する速度(口元熱変形速度)が速すぎると、液状内容物が抜ける前にエアゾール装置1が破裂する場合がある。一方、口元熱変形速度が適度に遅いと、エアゾール装置1が破裂する前に液状内容物が抜ける可能性が高い。言い換えると、口元熱変形速度が遅ければ、エアゾール装置1が破裂する前に液状内容物が全て漏れて、内圧がゼロになる可能性が高くなる。
【0056】
また、2軸延伸により一体成型され、且つ突出部11aのような横リブが口元部の外周面上に設けられているエアゾール容器(2軸延伸横リブ容器)が熱変形する時には、2軸延伸により一体成型された縦リブ容器(2軸延伸縦リブ容器)と比較して、変形速度が小さくなるとともに変形方向が不規則となる。つまり、2軸延伸横リブ容器は、2軸延伸縦リブ容器と比較して、口元部が熱変形し難い。
【0057】
従って、エアゾール装置1では、口元部9の熱変形を抑制することにより、エアゾール装置1の破裂を抑制することができる。このため、液状内容物が漏れている最中のエアゾール装置1を、安全に廃棄処理する時間を稼ぐことができる。
【0058】
以上説明した実施形態において、エアゾール容器3は本発明におけるエアゾール容器、マウンティンカップ29は本発明における取付プレート、バルブユニット20は本発明における吐出部材である。
【0059】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態について図面をもとに説明する。尚、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0060】
図2(b)は台地状凸部11bが形成された口元部9の斜視図、図3(b)は台地状凸部11bが形成されたエアゾール装置1の要部断面図である。
第2実施形態におけるエアゾール装置1は、図2(b)に示すように、突出部11aの代わりに台地状凸部11bが形成されていること以外は、第1実施形態におけるエアゾール装置1と同じである。
【0061】
即ち、口元部9の外周面9a上には、外周面9aの周方向に沿って、複数の台地状凸部11bが設けられている。なお本実施形態では、マウンティンカップ29の裾部29bに当接する当接面35(図3(b)参照)は、三角形状である。
【0062】
また、隣り合う台地状凸部11b間には空隙33bが形成されている。そして口元部9の外周面9a上において、この空隙33bが形成されている部位(凸部間空隙部位)は、マウンティンカップ29の裾部29bと当接していない。換言すると、凸部間空隙部位以外では外周面9aは裾部29bと当接している。
【0063】
このように構成されたエアゾール装置1では、このエアゾール装置1が高温状態に長時間曝された場合に、まず口元部9が熱変形して、開口部リーク通路が形成される。そして更にこの開口部リーク通路が凸部間空隙部位に連通すると、この突出部間空隙部位を通って液状内容物が外部に漏洩する。この結果、容器の内圧上昇が抑制され、エアゾール装置1の破裂が防止される。
【0064】
また、エアゾール装置1が高温状態に曝されても、口元部9の変形形状によっては開口部リーク通路が形成されないこともある。この場合には容器内の内圧が上昇して、エアゾール容器3の開口部3aに冠着されているマウンティンカップ29が開口部3aから外れて、バルブユニット20とともにエアゾール容器3から飛び出そうとする。この際、首部圧着部は、口元部9の外周面9a上に乗り上げ、更に、上述したように折れ曲がった形状をしているために、台地状凸部11bに係合する。
【0065】
このため、内圧上昇でバルブユニット20が飛び出す力(破裂力)よりも、首部圧着部が台地状凸部11bに係合する力(係合力)が大きい場合には、この時点でのエアゾール装置1の破裂を防止することができる。そして、この後に内圧がさらに上昇し、破裂力が係合力を超えるまで、マウンティンカップ29を開口部3aに冠着された状態に保持することができる。即ち、破裂に至るまでの時間を延ばすことができる。そして、この間に開口部リーク通路が形成されると、エアゾール装置1の破裂を防止することができる。つまり、エアゾール装置1の破裂を防止する可能性を高めることができる。
【0066】
一方、係合力が破裂力よりも小さい場合にはエアゾール装置1は破裂するが、首部圧着部が台地状凸部11bに係合した分、破裂の勢いを弱めることができる。
つまり、エアゾール装置1によれば、エアゾール装置1の破裂を抑制することができる。
【0067】
またエアゾール装置1では、台地状凸部11bは、口元部9の外周面9aの周方向に沿って、略等間隔に配置されているため、口元部9の外周面9aにおいて、液状内容物が外部に漏洩する通路を均等に配置することができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態にて実施することが可能である。
【0069】
図4(a),(b)は、他の実施形態におけるエアゾール容器3の口元部9を示す斜視図である。
例えば、上記実施形態では、口元部9の外周面9a上に突出部11aまたは台地状凸部11bを、外周面9aの周方向に沿って1列のみ設けたものを示した。しかし、図4(a)の突出部11c,図4(b)の台地状凸部11dのように、外周面9aの周方向に沿って複数列設けるようにしてもよい。
【0070】
また上記実施形態では、台地状凸部11bの当接面35が三角形状であるものを示した。しかし、当接面35の形状は三角形に限定されず、任意の形状で形成されればよい。例えば、四角形や五角形等の多角形状でもよいし、円形状であってもよい。
【0071】
また、突出部を、口元部9の外周面9a上において、螺旋ネジ状に形成するようにしてもよい。しかし、螺旋ネジ状よりも、口元部9の外周面9aの周方向に沿って形成したほうが、首部圧着部が突出部に係合し易く係合力が大きいため、外周面9aの周方向に沿って形成することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】エアゾール装置1の側面図。
【図2】エアゾール容器3の斜視図。
【図3】エアゾール装置1の要部断面図。
【図4】他の実施形態のエアゾール容器3の斜視図。
【図5】従来のエアゾール容器を示す斜視図及び断面図。
【符号の説明】
【0073】
1…エアゾール装置、3…エアゾール容器、3a…開口部、5…容器本体部、7…首部、9…口元部、9a…外周面、11a,11c…突出部、11b,11d…台地状凸部、20…バルブユニット、21…ガスケット、23…バルブハウジング、23a…バルブ本体部、23b…フランジ部、23c…筒部、23d…空所、23e…リブ、23f…孔、25…ステム、25a…横穴、27…ステムラバー、29…マウンティンカップ、29a…上面部、29b…裾部、31…コイルスプリング、33a,33b…空隙、35…当接面、40…肩カバー、60…レフィールキャップ、70…櫛部、71…櫛装着部、71a…ネジ山、73…支持体、73a…充填室、73b…植設口、75…櫛歯、75a…ノズル、75b…誘導路、77…操作レバー、79…両端櫛歯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状内容物を収容する容器本体部と、前記液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が前記容器本体部に連結されている筒状の首部と、前記開口部の外周側に前記首部に対して突出して形成された口元部とを備え、
前記開口部を被覆する上面部と、前記上面部の周端縁から連設されて、前記口元部の外周面全体を被覆するとともに前記首部の外周面と圧着される筒状の裾部とを備え、前記開口部に冠着される取付プレートによって、前記容器本体部内の液状内容物を外部へ吐出する吐出部材が前記口元部に取り付けられるエアゾール容器であって、
前記口元部の外周面上において該外周面の周方向に沿って延設されるとともに、始端と終端とを有し、前記取付プレートの裾部に当接する突出部を備える、
ことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項2】
前記口元部の外周面上に設けられる突出部は、前記口元部の外周面の周方向に沿って複数設けられ、
前記複数の突出部は、前記口元部の外周面の周方向に沿って、略等間隔に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器。
【請求項3】
液状内容物を収容する容器本体部と、前記液状内容物を外部に排出するための開口部を一端に備え、他端が前記容器本体部に連結されている筒状の首部と、前記開口部の外周側に前記首部に対して突出して形成された口元部とを備え、
前記開口部を被覆する上面部と、前記上面部の周端縁から連設されて、前記口元部の外周面全体を被覆するとともに前記首部の外周面と圧着される筒状の裾部とを備え、前記開口部に冠着される取付プレートによって、前記容器本体部内の液状内容物を外部へ吐出する吐出部材が前記口元部に取り付けられるエアゾール容器であって、
前記口元部の外周面上において該外周面の周方向に沿って設けられ、前記取付プレートの裾部に当接する当接面を有した複数の台地状凸部を備える、
ことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項4】
前記口元部の外周面上に設けられる台地状凸部は、
前記口元部の外周面の周方向に沿って、略等間隔に配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載のエアゾール容器。
【請求項5】
2軸延伸により一体成型された、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のエアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−123942(P2006−123942A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312320(P2004−312320)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】