説明

エアゾール用カバー体および、このエアゾール用カバー体を備えたエアゾール式製品

【課題】使用時には容器本体側に取り付けておき、ガス抜き時にはいったん取り外して上下逆の位置関係で容器本体側に再度取り付けることでガス抜きモードに設定するエアゾール用カバー体において、ガス抜きモード時におけるカバー体と容器本体側との係合状態の確実化とステムのガス抜きモード位置への移動ストロークの的確化を図る。
【解決手段】カバー体はガス抜きモード設定用の容器本体側(1)との係合部(5n)を有する。当該カバー体の左右起立壁状部(5c,5d,5e)間の、通常使用状態(静止モード,作動モード)の噴射ボタン(6)よりも上方箇所に連結部(5g)を設け、かつ、この連結部で通常とは上下逆のステム(4)を押圧してガス抜きモード位置に移動させるようにした。連結部のステムを押圧する部分には放出ガスの通過用溝状部(5m)を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物噴射用空間域としての前切欠状部,操作用空間域としての後切欠状部、およびステム作動用の噴射ボタンに対するカバー域としての左右両側の起立壁状部からなり、ガス抜きモード設定機能を備えたエアゾール用カバー体に関する。
【0002】
特に、噴射ボタン使用時にも容器本体側(例えばマウンティングキャップ)に取り付けられたままであって、
容器内容物の消尽後などのエアゾール式製品廃棄に先立ってのガス抜き処理(残留ガスおよび残留内容物の放出)の際には、いったん容器本体側から外してそれまでの使用時とは上下逆の相対的位置関係で再度容器本体側に取り付けられることにより、(噴射ボタン取外し後の)ステムを、上記左右両側の起立壁状部の間に形成された連結部で押圧してガス抜きモードの位置に連続保持する、機能を備えたエアゾール用カバー体に関する。
【0003】
なお、本発明において、「上」,「下」とはエアゾール式製品の正立状態における上下関係、すなわち図1,図5における上下関係を示している。
【背景技術】
【0004】
従来、噴射ボタン使用時にも容器本体側に取り付けられたままのエアゾール用カバー体をいったん取り外して上下逆の位置関係で容器本体側に再度取り付けることにより、ガス抜きモードを設定する機構が提案されている(特許文献1参照)。なお、以下の[ ]の番号は特許文献1での参照番号を示している。
【0005】
このガス抜きモード設定機構の場合、
(11)カバー体[19]の、噴射ボタンカバー域としての左右の起立壁状部内周面それぞれの上端部分に、マウンティングキャップ(巻回凸部[5])と係合するガス抜きモード設定用の係合突起[32]を設け、
(12)カバー体[19]の爪挿通孔[1]に噴射ボタン[11]の係合爪[1]を上下動可能な形で係合させて、この係合作用により、当該カバー体をマウンティングキャップから取り外した際にも当該噴射ボタンがカバー体[19]と一体化する態様とし、
(13)この取外し後の一体化されたカバー体[19]および噴射ボタン[11]に対してその上方から、上下逆にした容器本体[1]を押し付けることにより、図4に示すように、当該カバー体の係合突起[32]をマウンティングキャップ(巻回凸部[5])に係合させている。
【0006】
そして上記(13)の容器本体[1]をカバー体[19]および噴射ボタン[11]に押し付ける際に、ステム[7]が噴射ボタン[11]の上面で押圧されてガス抜きモード位置へと移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−293388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来のカバー体によるガス抜きモード設定においては、噴射ボタン使用時とは相対的に上下逆にした容器本体[1]をカバー体[19]に係合させることにより、ステム[7]を、当該カバー体とは別部材からなる噴射ボタン[11]の上面で押圧している。
【0009】
すなわち、ガス抜きモード設定の際に、ステム[7]を押圧してその弁作用部を開状態にするのは、容器本体[1]に係合するカバー体[19]そのものではなく、当該カバー体にいわば上下動可能な形により取り付けられた噴射ボタン[11]である。
【0010】
そのため、ガス抜きモードの設定に必要なステム[7]の移動ストロークが本来の所定値からずれてしまいやすいという問題点があった。
【0011】
また、容器本体[1]と係合する左右の起立壁状部(カバー体)それぞれの上端側は互いにいわば完全分離した構造となっているので、当該起立壁状部上端側の変位などにより容器本体[1]とカバー体[19]との係合状態が解除されてしまう場合がありえるという問題点があった。
【0012】
そこで本発明では、ガス抜きモード設定の際に容器本体側と係合する上述の左右起立壁状部(カバー体)の間で、通常の使用状態(静止モード,作動モード)の噴射ボタンよりも上方箇所に連結部を設け、かつ、この連結部でステムを押圧してガス抜きモード位置に移動させる、すなわち容器本体側と係合するカバー体の一部(左右起立壁状部間の連結部)でステムをガス抜きモード位置に駆動する形にしている。
【0013】
これによりガス抜きモード設定の際のカバー体と容器本体側との係合状態を確実に保持できるとともに、カバー体の一部である上記連結部(左右起立壁状部間に形成された連結部)によって押圧されるステムのガス抜きモード位置への移動ストロークを的確に設定でき、さらには静止モードの噴射ボタンの誤動作防止を図ることを目的とする。
【0014】
また、ステムを押圧するガス抜きモード設定用の連結部として斜面部分を用い、これによりステムの開口端部とその押圧部分(斜面部分)との隙間がいわば原始的に確保されるようにして、当該斜面部分に溝状部などの噴射用通路を積極的に形成しなくてもガス抜き実効性の担保化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)内容物噴射用空間域としての前切欠状部(例えば後述の前切欠状部5a,15a),操作用空間域としての後切欠状部(例えば後述の後切欠状部5b,15b)、およびステム(例えば後述のステム4)作動用の噴射ボタン(例えば後述の噴射ボタン6,16)に対するカバー域としての左右両側の起立壁状部(例えば後述の内側起立壁状部5c,15c,中間起立壁状部5d,15d,外側起立壁状部5e,15e)を備え、取外し可能な形でエアゾール容器本体側(例えば後述の容器本体1)に取り付けられるカバー体(例えば後述のカバー体5,15)において、
前記カバー体が前記エアゾール容器本体側に通常の正立状態で取り付けられたときの前記噴射ボタンより上方の所定箇所の、前記起立壁状部それぞれの間に形成され、かつ、ガス抜きモード設定用の上面部分(例えば後述の下側水平面部分5h,15h,斜面部分5j,15j)を有する連結部(例えば後述の連結部5g,15g)と、
前記起立壁状部それぞれの、前記正立状態の連結部よりも上方部分に形成されたエアゾール容器本体側とのガス抜きモード設定用の係合部(例えば後述の一対の上側突状部5n,15s)と、を少なくとも備え、
前記所定箇所は、
前記エアゾール容器本体側からいったん取り外された前記カバー体が、前記ガス抜きモード設定用の係合部の係合作用により、前記噴射ボタンを前記ステムから外した後のエアゾール容器本体側に前記正立状態とは上下逆の相対的位置関係で取り付けられる際に、
前記ステムが、前記ガス抜きモード設定用の上面部分からの押圧作用をうけてガス抜きモード位置に移動可能な箇所である、
エアゾール用カバー体を用いる。
(2)上記(1)において、
前記ガス抜きモード設定用の上面部分として斜面部分(例えば後述の斜面部分5j,15j)を用いる。
【0016】
このような構成からなるエアゾール用カバー体および、当該カバー体を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上述べたように、ガス抜きモード設定の際に容器本体側と係合する上述の左右起立壁状部(カバー体)の間で、通常の使用状態の噴射ボタンよりも上方箇所に連結部を設け、かつ、この連結部でステムを押圧してガス抜きモード位置に移動させる、すなわち容器本体側と係合するカバー体の一部(左右起立壁状部間の連結部)でステムをガス抜きモード位置に駆動する形にしている。
【0018】
そのため、ガス抜きモード設定の際のカバー体と容器本体側との係合状態を確実に保持できるとともに、カバー体の一部である連結部によって押圧されるステムのガス抜きモード位置への移動ストロークを的確に設定でき、さらには静止モードの噴射ボタンの誤動作防止を図ることができる。
【0019】
また、ステムを押圧するガス抜きモード設定用の連結部として斜面部分を用い、これによりステムの開口端部とその押圧部分(斜面部分)との隙間がいわば原始的に確保されるようにしているので、当該斜面部分に溝状部などの噴射用通路を積極的に形成しなくてもガス抜き実効性の担保化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】回動タイプの噴射ボタンを使用する噴射機構の静止モードを示す説明図である。
【図2】図1の噴射ボタンおよびカバー体の斜視状態を示す説明図である。
【図3】図1の噴射ボタンおよびカバー体を容器本体から取り外してガス抜きモードに設定する際の初期段階を示す説明図である。
【図4】図3に続いて設定されるガス抜きモードの状態を示す説明図である。
【図5】上下動タイプの噴射ボタンを使用する噴射機構の静止モードを示す説明図である。
【図6】図5の噴射ボタンおよびカバー体を容器本体から取り外してガス抜きモードに設定する際の初期段階を示す説明図である。
【図7】図6に続いて設定されるガス抜きモードの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図7を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば肩カバー1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。
【0023】
図1〜図7において、
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
1aは当該容器本体の胴部分上端側に巻き締め加工などにより固定された肩カバー(図1〜図4の容器本体のみで使用),
1bは当該肩カバーの下端外側に形成されて後述の段部5pが当接する環状天面部,
1cは当該容器本体と肩カバー1aとのインタフェース部分下方に形成されて後述の下側突状部5rが着脱可能な態様で係合する下側環凹状部,
2は容器本体1の開口端部側に取り付けられたマウンティングキャップ,
3は肩カバー1aとマウンティングキャップ2とのインタフェース部分下方に形成されてガス抜きモード設定の際に後述の上側突状部5n,15sが係合する上側環凹状部,
4は周知のバルブ機構(図示省略)の構成要素であるステム,
をそれぞれ示している。
【0024】
図1〜図4(カバー体と一体化された回動タイプの噴射ボタンを使用)において、
5は内容物の噴射操作時にも容器本体側(下側環凹状部1c)との係合状態に保持される一方、エアゾール式製品廃棄に先立つガス抜き処理(残留ガスおよび残留内容物の放出)の際には、容器本体側からいったん取り外されてから相対的に上下逆の状態でマウンティングキャップ2(上側環凹状部3)に取り付けられることにより、ステム4を直接押圧してガス抜きモード位置に設定保持する機能を備えた筒状のカバー体,
5aは内容物噴射用空間域としての前切欠状部,
5bは操作用空間域としての後切欠状部,
5cは対向状態で形成され、後述の噴射ボタン6に対するカバー域として作用する左右両側の内側起立壁状部,
5dは当該内側起立壁状部の前後方向中央上端部分からその直ぐ外側に膨らんで上方向に形成された左右両側の円弧状の中間起立壁状部,
5eは当該中間起立壁状部の直ぐ外側に形成された円筒状の外側起立壁状部,
5fは当該外側起立壁状部から下方に延びる筒状基部,
5gは通常使用モードの後述の噴射ボタン6より上方所定位置の内側起立壁状部5c間に形成され、ステム4をガス抜きモード位置に移動させる機能を備えた連結部,
5hは当該連結部の上面前側部分であってステム4を直接押圧する下側水平面部分,
5jは当該下側水平面部分から後方に上り傾斜で続く斜面部分,
5kは当該斜面部分から後方に続く上側水平面部分,
5mは下側水平面部分5hに内側起立壁状部5c同士を結ぶ左右方向の態様で形成され、ガス抜きモードの際、ステム4の開口端部から流出する残留ガスなどの噴射用通路として作用する複数の溝状部,
5nは通常使用モードにおける連結部5g(上側水平面部分5k)より上方の、中間起立壁状部5dの上側内周面に形成され、マウンティングキャップ2近傍の上側環凹状部3に嵌合してカバー体5をガス抜きモード位置に保持する機能を備えた一対の上側突状部,
5pは筒状基部5fの内周面に形成されたリブの底面部分からな計八個の段部,
5rは当該段部の下方内周面に形成され、通常使用モードにおいて容器本体側の下側環凹状部1cと係合する計四個の下側突状部,
6はステム4に取り付けられて押圧操作により回動するタイプの噴射ボタン,
6aはカバー体5の前方部(前切欠状部5aの底面部)との接続部分であり押圧操作時のいわば回動中心軸として作用し、また押圧操作解除にともない元の位置に弾性復帰する片部,
6bは利用者が押圧操作する際の操作面,
6cは内容物やガスの噴射孔,
6dはステム4の取付口から当該噴射孔までの噴射用通路,
をそれぞれ示している。
【0025】
図5〜図7(カバー体と別体タイプの噴射ボタンを使用)において、
15はカバー体5と同様のガス抜きモード設定機能を備えたカバー体,
15aは内容物噴射用空間域としての前切欠状部,
15bは操作用空間域としての後切欠状部,
15cは対向状態で形成され、後述の噴射ボタン16に対するカバー域として作用する左右両側の内側起立壁状部,
15dは内側起立壁状部15cの直ぐ外側に形成された左右両側の円弧状(下側部分は円筒状)の中間起立壁状部,
15eは当該中間起立壁状部の直ぐ外側に形成された円筒状の外側起立壁状部,
15fは当該外側起立壁状部から下方に延びる筒状基部,
15gは連結部5gと同様の位置関係で内側起立壁状部15c間に形成され、ステム4をガス抜きモード位置に移動させる機能を備えた連結部,
15hは当該連結部の上面前側部分であってステム4を直接押圧する下側水平面部分,
15jは当該下側水平面部分から後方に上り傾斜で続く斜面部分,
15kは当該斜面部分から後方に続く上側水平面部分,
15mは下側水平面部分15hに形成され、カバー体5の溝状部5mと同様の機能を備えた溝状部,
15nは内側起立壁状部15cの内周面下端側部分に形成され、後述の噴射ボタン16の上下動に対する案内機能、容器本体1からカバー体といっしょに当該噴射ボタンを取り外す機能、およびカバー体取外し後の当該噴射ボタンの下方向への抜け防止機能を備えた計二個の内方突出部,
15pは内側起立壁状部15cの内周面下端から上方向に形成され、容器本体1から取り外されたカバー体および後述の噴射ボタン16を上下逆(図5などと逆)にした場合における当該噴射ボタンの受止め機能を備えた計四個の内壁スリット,
15rは中間起立壁状部15dの下側内周面(円筒部内周面)に形成され、通常使用モードにおいてマウンティングキャップ2近傍の上側環凹状部3と係合する略環状の下側突状部,
15sは中間起立壁状部15dそれぞれの上端側内周面に形成され、マウンティングキャップ2近傍の上側環凹状部3と嵌合してカバー体15をガス抜きモード位置に保持する機能を備えた一対の上側突状部,
16はステム4に取り付けられて押圧操作により下動するタイプ、すなわちカバー体15とは別部材で鞘状の噴射ボタン,
16aは当該噴射ボタンの周面部下端部から上方向に形成され、カバー体15の内方突出部15nに対しての当該噴射ボタンの移動ストロークを確保し、かつ、当該内方突出部との協働作用により当該噴射ボタンの回動を阻止するとともに、当該カバー体を容器本体側から取り外す際に当該噴射ボタンも一体化してステム4から取外して、取外し後の正立状態の当該噴射ボタンが当該カバー体から抜け落ちるのを防止する機能を備えた計二個のボタンスリット,
16bは当該ボタンスリットの上端の天井部,
16cは当該噴射ボタンの外周面下端側に形成され、容器本体1から取り外されたカバー体15および当該噴射ボタンを上下逆にしたときに当該カバー体の内壁スリット15pに係止される突状段部,
16dは利用者が押圧操作する際の操作面,
16eは内容物やガスの噴射孔,
をそれぞれ示している。
【0026】
ここで、カバー体5,15および噴射ボタン6,16は例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。容器本体1やマウンティングキャップ2は例えば金属性のものである。ステム4は例えばプラスチック製または金属製のものである。
【0027】
本発明にかかる図示カバー体の基本的特徴は、
(21)カバー体5,15の左右両側の内側起立壁状部5c,15cそれぞれの間に連結部5g,15gが形成され、
(22)連結部5g,15gは、ステム4を押圧してガス抜きモード位置に移動させるための下側水平面部分5h,15hを備え、
(23)カバー体5,15の中間起立壁状部5d,15dそれぞれの内周面に、マウンティングキャップ近傍の上側環凹状部3と嵌合してガス抜きモードを設定するための上側突状部5n,15sが形成され、
(24)連結部5g,15gおよび上側突状部5n,15sと容器本体1,ステム4との位置関係を、
噴射ボタン6,16とともに容器本体1から取り外したカバー体5,15の上側開口部に通常の使用モードとは上下逆状態の容器本体1を装填してその上側突状部5n,15sをマウンティングキャップ近傍の上側環凹状部3と嵌合させたとき、ステム4が、連結部5g,15gの下側水平面部分5h,15hでステム4が押圧されてガス抜きモード位置に移動する、形に設定した(図4,図7参照)、
ことである。
【0028】
ここで、ステム4をガス抜きモード位置に駆動するための連結部5g,15g(下側水平面部分5h,15h)も、マウンティングキャップ近傍の上側環凹状部3の嵌合相手のカバー体5,15の一部として形成されているので、上記(24)の位置関係をより正確に設定することができる。
【0029】
また、このステム駆動用の連結部5g,15gは上側環凹状部3の嵌合相手である左右両側の中間起立壁状部5d,15d(上側突状部5n,15s)同士の連結作用も奏しているので、上側環凹状部3と上側突状部5n,15sとのガス抜きモード嵌合状態が不意の外力などにより解除されてしまうおそれはほとんどない。
【0030】
また、噴射ボタン6,16の上方が連結部5g,15gでいわば覆われているので、当該操作ボタンを不用意に押圧されるなどの誤動作を阻止することができる。
【0031】
図4および図7で示すように、ステム4のガス抜きモード位置が、カバー体5,15の上側突状部5n,15sと上側環凹状部3との嵌合作用により継続して保持されることにより、当該ステムの周知のバルブ機構(図示省略)は開いたままとなる。
【0032】
その結果、容器本体内部などに残留しているガスや内容物が、ステム4から連結部5g,15g(下側水平面部分5h,15h)の溝状部5m,15mなどを経て外部空間域に連続放出される。
【0033】
利用者が図1,図5の静止モードの上側水平面部分5k,15kの下方空間域に指を入れて噴射ボタン6,16の操作面6b,16dを押し下げると、ステム4が下動してガス抜きモードのときと同じように周知のバルブ機構が開いて容器本体1の内容物が当該噴射ボタンの噴射用通路を経て噴射孔6c,16eから外部空間域に放出される。このときのバルブ機構の動作自体はガス抜きモードと同じである。
【0034】
なお、噴射ボタン16には上下方向のボタンスリット16aが、カバー体15の内方突出部15nに対しての当該噴射ボタンの押圧操作時の移動ストロークが確保される態様で、形成されている。
【0035】
図1,図5の噴射機構をガス抜きモードに設定する場合は先ずカバー体5,15を容器本体1に対して上方にいわば持ち上げることにより、カバー体5についてはその下側突状部5rと容器本体1の下側環凹状部1cとの係合状態を解除し、また、カバー体15についてはその下側突状部15rとマウンティングキャップ近傍の上側環凹状部3との係合状態を解除する。
【0036】
この係合状態後、図3,図4,図6,図7で示すように、
(31)カバー体5,15および噴射ボタン6,16が分離した状態の容器本体1を上下逆にして、
(32)正立状態(通常の使用モードの上下関係)のカバー体5,15の上側開口部に、上下逆状態の容器本体1を装填してその上側突状部5n,15sをマウンティングキャップ近傍の上側環凹状部3と嵌合させる。
【0037】
なお、カバー体15を持ち上げて容器本体1から取り外すとき、当該カバー体の内方突出部15nは、噴射ボタン16の上下方向のボタンスリット16aを通過してからその天井部16bに当接する。
【0038】
このカバー体15の持ち上げにともなう内方突出部15nとボタンスリット16aの天井部16bとの当接後は、噴射ボタン16および当該カバー体15はその持ち上げ方向に対して一体化するので、当該噴射ボタンもステム4から取り外される。
【0039】
ステム4から取り外された噴射ボタン16は、その天井部16bが内方突出部15nに保持されたままとなるのでカバー体15から下方に抜けることはない(図6参照)。
【0040】
噴射ボタン16をカバー体15に組み込むには、その左右両側の内側起立壁状部15cの下開口部から当該噴射ボタンを押し入れる。
【0041】
図示の噴射機構では、ステム4の開口端部を連結部5g,15gの下側水平面部分5h,15hに当接させることによりガス抜きモードを設定しているが、これに代えて当該開口端部を当該連結部の斜面部分5j,15jに当接させてもよい。
【0042】
この場合、斜面部分5j,15jとステム4の開口端部との間には隙間が生じるので、下側水平面部分5h,15hにおける噴射用通路としての溝状部5m,15mを設けなくてもよい。
【0043】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0044】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0045】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0046】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0047】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0048】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0049】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0050】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0051】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0052】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0053】
(図1〜図7で使用)
1:エアゾール式製品の容器本体
1a:肩カバー(図1〜図4のみで使用)
1b:環状天面部
1c:下側環凹状部
2:マウンティングキャップ
3:上側環凹状部
4:ステム
【0054】
(図1〜図4で使用)
5:カバー体
5a:前切欠状部
5b:後切欠状部
5c:左右両側の内側起立壁状部
5d:左右両側の円弧状の中間起立壁状部
5e:円筒状の外側起立壁状部
5f:筒状基部
5g:連結部
5h:下側水平面部分
5j:斜面部分
5k:上側水平面部分
5m:溝状部
5n:一対の上側突状部
5p:計八個の段部
5r:計四個の下側突状部
6:回動タイプの噴射ボタン
6a:片部
6b:操作面
6c:噴射孔
6d:噴射用通路
【0055】
(図5〜図7で使用)
15:カバー体
15a:前切欠状部
15b:後切欠状部
15c:左右両側の内側起立壁状部
15d:左右両側の円弧状(下側部分は円筒状)の中間起立壁状部
15e:円筒状の外側起立壁状部
15f:筒状基部
15g:連結部
15h:下側水平面部分
15j:斜面部分
15k:上側水平面部分
15m:溝状部
15n:計二個の内方突出部
15p:計四個の内壁スリット
15r:略環状の下側突状部
15s:一対の上側突状部
16:上下動タイプの噴射ボタン
16a:計二個のボタンスリット
16b:天井部
16c:突状段部
16d:操作面
16e:噴射孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物噴射用空間域としての前切欠状部,操作用空間域としての後切欠状部、およびステム作動用の噴射ボタンに対するカバー域としての左右両側の起立壁状部を備え、取外し可能な形でエアゾール容器本体側に取り付けられるカバー体において、
前記カバー体が前記エアゾール容器本体側に通常の正立状態で取り付けられたときの前記噴射ボタンより上方の所定箇所の、前記起立壁状部それぞれの間に形成され、かつ、ガス抜きモード設定用の上面部分を有する連結部と、
前記起立壁状部それぞれの、前記正立状態の連結部よりも上方部分に形成されたエアゾール容器本体側とのガス抜きモード設定用の係合部と、を少なくとも備え、
前記所定箇所は、
前記エアゾール容器本体側からいったん取り外された前記カバー体が、前記ガス抜きモード設定用の係合部の係合作用により、前記噴射ボタンを前記ステムから外した後のエアゾール容器本体側に前記正立状態とは上下逆の相対的位置関係で取り付けられる際に、
前記ステムが、前記ガス抜きモード設定用の上面部分からの押圧作用をうけてガス抜きモード位置に移動可能な箇所である、
ことを特徴とするエアゾール用カバー体。
【請求項2】
前記ガス抜きモード設定用の上面部分として斜面部分を用いる、
ことを特徴とする請求項1記載のエアゾール用カバー体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアゾール用カバー体を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178448(P2011−178448A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45826(P2010−45826)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】