説明

エアゾール装置

【課題】簡便な操作で、使用後にエアゾール容器内に残留した内容物を安全且つ確実に排出させると共に、排出後のカバーキャップ及び噴射ボタンのエアゾール容器からの取り外しも容易なエアゾール装置を提供する。
【解決手段】エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外し、当該カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きが第1の状態から第2の状態に入れ替わるようにエアゾール容器2に再装着することによって、エアゾール容器2内に残留した内容物がカバーキャップ4内に排出可能とされたエアゾール装置1であって、カバーキャップ4が第1の状態にあるときは、噴射ボタン3がステム2bの先端部に取り付けられた状態のままカバーキャップ4のみが取り外し可能とされ、カバーキャップ4が第2の状態にあるときは、噴射ボタン3がカバーキャップ4と一体に取り外し可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアゾール装置は、噴射ボタンを押圧操作することにより、エアゾール容器内のガスや液体を噴射させるものである。また、塗料や殺虫剤、化粧料等の内容物を収容するエアゾール容器には、主剤(液体や固体等からなる噴射剤以外の内容物)と噴射剤(液化石油ガス・ジメチルエーテル・イソペンタン等の可燃性ガスや、窒素・炭酸ガス等の圧縮ガス)とが充填されており、一般的に主剤がなくなり噴霧が終了した場合でも、少量の噴射剤が容器内に残留してしまう。
【0003】
ところで、このようなエアゾール装置を廃棄する際には、ゴミ収集や圧縮処理の際の安全性を考慮して、使用者により音がしなくなるまで噴射ボタンを押し続けるか、又は、エアゾール容器に穴を開けるかといった作業によって、使用済のエアゾール容器内に残留する噴射剤を排出しなければならない。しかしながら、残留する噴射剤を手動で排出する作業は、エアゾール容器の噴射ボタンを長時間押し続けなければならず非常に面倒である。また、噴射ボタンを長時間押し続けるには、しばしばエアゾール容器を持ち替えたりして容器内に残留する内容物を噴射し続けなければならず、確実に内容物を排出できない場合がある。さらに、これらの作業は手間がかかることから、エアゾール容器内に残留する内容物を完全に排出されないまま廃棄されてしまうという問題もある。
【0004】
そこで、このような使用済のエアゾール容器内に残留した内容物(残留物)を容易且つ安全に全量排出するための残留物排出機構が提案されている(特許文献1を参照)。具体的に、特許文献1に記載のエアゾール容器の残留物排出機構は、エアゾール容器のステムに装着される円柱形状の噴射ボタンと、エアゾール容器の上部に嵌着される肩カバーとによって概略構成されている。また、噴射ボタンは突起を有し、肩カバーは噴射ボタンが挿入される円筒状の中央孔部を備えており、中央孔部を形成する環状周壁には、噴射ボタンの突起が摺動可能に差し込まれる深切欠部と浅切欠部とが設けられている。さらに、深切欠部と浅切欠部とは、中央孔部の周方向に等間隔で交互に形成されている。
【0005】
このエアゾール容器の残留物排出機構の使用方法は、通常の使用では噴射ボタンの突起を深切欠部に嵌入させて、噴射ボタンの移動距離を長く設定する。そして噴射ボタンの押圧および解圧の操作によって、ステムの開放および閉鎖を行うことができる。一方、エアゾール容器内に残留した内容物を排出するときは、噴射ボタンの位置を変えて突起を浅切欠部に嵌入させ、噴射ボタンの移動を規制する。これにより、ステムが噴射ボタンによって常時押圧されるため、開放状態が維持される。この状態で、エアゾール容器内の残留物が放出される。
【0006】
また、エアゾール容器の噴射ボタンとカバーキャップとが一体化されたワンタッチキャップ式のエアゾール装置において、使用後にエアゾール容器内に残留した内容物を排出する方法としては、噴射ボタンとカバーキャップとを一体でエアゾール容器から取り外し、残留内容物を排出するための手段を講じた後に、これらをエアゾール容器に再装着する方法(例えば、特許文献1〜4などを参照。)や、カバーキャップ又は噴射ボタンのみをエアゾール容器から取り外し、残留内容物を排出するための手段を講じた後に、これらをエアゾール容器に再装着する方法(例えば、特許文献5,6などを参照。)などがある。
【0007】
このうち、噴射ボタンとカバーキャップとを一体でエアゾール容器から取り外す方法では、残留内容物を排出する操作を容易なものとし、その操作手順を少なくすることができる。しかしながら、噴射ボタンをカバーキャップと一体に取り外す際に、ステムに噴射ボタンの押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによって、ステムを破損してしまう虞がある。この場合、ステムが破損してしまうと、残留内容物を排出する操作を適切に行うことが不可能となる。
【0008】
一方、カバーキャップ又は噴射ボタンのみをエアゾール容器から取り外す方法では、上述したステムの破損の可能性は低くなるものの、噴射ボタンとカバーキャップとをエアゾール容器から別個に取り外す必要があるため、残留内容物を排出する操作が複雑化したり、その操作手順が増したりするなどの欠点がある。また、残留内容物を排出した後は、エアゾール容器に対してプラスチック製のカバーキャップ及び噴射ボタンを分別廃棄する必要があり、この場合、噴射ボタンとカバーキャップとをエアゾール容器から別個に取り外す必要があるため、特に噴射ボタンが小さい場合には作業性が悪くなるといった欠点がある。
【特許文献1】特許第3698309号公報
【特許文献2】特開2003−12058号公報
【特許文献3】特開2006−219186号公報
【特許文献4】実用新案登録第3137691号公報
【特許文献5】特許第3813833号公報
【特許文献6】特許第3881187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて提案されたものであり、簡便な操作で、使用後にエアゾール容器内に残留した内容物を安全且つ確実に排出させると共に、排出後のカバーキャップ及び噴射ボタンのエアゾール容器からの取り外しも容易なエアゾール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、内容物が収容されたエアゾール容器と、エアゾール容器のステムの先端部に取り付けられた噴射ボタンと、エアゾール容器の上部に被せられたカバーキャップとを備え、噴射ボタンを押圧操作することによって、噴射ボタンと一体に押し下げられたステムを通じてエアゾール容器に収容された内容物が噴射され、エアゾール容器内に残留した内容物を排出する際に、エアゾール容器からカバーキャップを取り外し、当該カバーキャップの前記噴射ボタンに対する向きが第1の状態から第2の状態に入れ替わるようにエアゾール容器に再装着することによって、エアゾール容器内に残留した内容物がカバーキャップ内に排出可能とされたエアゾール装置であって、カバーキャップが第1の状態にあるときは、噴射ボタンがステムの先端部に取り付けられた状態のままカバーキャップのみが取り外し可能とされ、カバーキャップが第2の状態にあるときは、噴射ボタンがカバーキャップと一体に取り外し可能とされていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る発明は、噴射ボタンが、ステムと嵌合されるステム嵌合部と、ステム嵌合部と連通される噴射口と、側方に向かって突出されるガイド突起とを有し、カバーキャップが、エアゾール容器の上部に着脱自在に装着される外筒部と、噴射ボタンを上下方向に移動可能に収容すると共に噴射ボタンの上部を外方に臨ませる内筒部と、外筒部及び内筒部の前面側を開放する噴射用開口部と、第1の状態において内筒部に挿入された噴射ボタンのガイド突起を上下方向に移動可能に案内するガイドスリットと、第2の状態において内筒部に挿入された噴射ボタンのガイド突起を係止する係止部とを有し、第1の状態では、噴射口が噴射用開口部に臨む位置にあり、噴射ボタンを押圧操作することによって、エアゾール容器に収容された内容物が噴射口から噴射用開口部を通じてカバーキャップの外部へと噴射され、第2の状態では、噴射口が噴射用開口部に臨む位置とは異なる位置にあり、カバーキャップを再装着したときに、ガイド突起が係止部に係止されて、噴射ボタンが内筒部内の噴射位置に保持されることによって、噴射口から噴射された内容物が噴射口からカバーキャップの内部へと排出されることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール装置である。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、係止部が、内筒部に設けられた弾性片と、弾性片に設けられた係止孔とを有し、第2の状態においてカバーキャップをエアゾール容器に装着するときに、内筒部に挿入される噴射ボタンのガイド突起が弾性片に当接されて当該弾性片を弾性変形させながら、噴射位置にてガイド突起が係止孔に係止されることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール装置である。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る発明は、ガイド突起の先端部に、弾性片と当接される側の角部の一部を切り欠くように面取り部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のエアゾール装置である。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る発明は、内筒部の下端部に、内側に向かって傾斜するテーパー面が設けられていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のエアゾール装置である。
【0015】
また、本発明の請求項6に係る発明は、カバーキャップが、内筒部の噴射口と対向する面側を開放する排出用開口部を有し、第2の状態では、噴射口が排出用開口部に臨む位置にあり、噴射口から噴射された内容物が排出用開口部を通じて外筒部と内筒部との間の空間へと排出されることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載のエアゾール装置である。
【0016】
また、本発明の請求項7に係る発明は、カバーキャップが、噴射用開口部を挟んだ両側において外筒部と内筒部との間を連結する一対の仕切り壁を有することを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載のエアゾール装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係るエアゾール装置では、エアゾール容器内に残留した内容物を排出する際に、カバーキャップのみを取り外すことが可能なため、噴射ボタンの押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによるステムの損傷を防ぎつつ、残留内容物を排出するための操作を安全且つ確実に行うことが可能である。また、エアゾール容器内に残留した内容物を排出した後は、エアゾール容器からカバーキャップと噴射ボタンとを一体に取り外すことが可能なため、カバーキャップ及び噴射ボタンの分別廃棄を容易に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用したエアゾール装置について、図面を参照して詳細に説明する。
先ず、本発明の一実施形態として図1及び図2に示すエアゾール装置1の構成について説明する。なお、図1は、エアゾール装置1の通常使用時における静止状態を示し、図2は、エアゾール装置1の通常使用時における噴射状態を示す。
【0019】
このエアゾール装置1は、図1及び図2に示すように、内容物が収容されたエアゾール容器2と、エアゾール容器2に収容された内容物を噴射させるための噴射ボタン3と、エアゾール容器2の上部に被せられたカバーキャップ4とを備えている。
【0020】
エアゾール容器2は、例えばスチールやアルミニウム等からなる金属製の耐圧容器であり、この耐圧容器の上部に設けられたマウンティングカップ2aと、このマウンティングカップ2aの内側中央部から突出するステム2bと、このステム2bを下方に押し下げることにより開放されるバルブ機構(図示せず。)とを有している。また、マウンティングカップ2aの外周部は、耐圧容器の上端部に巻き締めされることによって巻締め部2cを形成している。
【0021】
なお、このエアゾール容器2に収容される内容物としては、特に限定されるものではなく、例えば、殺虫剤、忌避剤、殺菌剤、芳香剤、室内消臭剤、整髪剤、ヘアケア剤、育毛トニック剤、シェービングフォーム、制汗消臭剤、ガラスクリーナー、エアコン洗浄剤、防水剤、塗料、工業用スプレーなどを挙げることができる。そして、エアゾール容器2には、このような各種目的に応じた有効成分の他に必要に応じて溶剤や補助剤などを含む原液と、液体ガスや圧縮ガスなどの噴射剤とが内容物として充填されている。
【0022】
噴射ボタン3は、図1、図2、図3及び図4に示すように、ボタン本体5と、このボタン本体5の底部にステム2bと嵌合されるステム嵌合部6と、このボタン本体5の前方側面にステム嵌合部6と連通される噴射口7と、このボタン本体5の両側面から側方に向かって突出される一対のガイド突起8とを有し、これらが一体に成形されたプラスチック部材からなっている。
【0023】
ボタン本体5は、全体が略筒状を為すと共に、その水平断面が前後方向に長い長円形状(いわゆるレーストラック形状)を為す側壁部5aと、この側壁部5aの上面を閉塞する上壁部5bとを有している。また、ボタン本体5は、この噴射ボタン3を押圧操作し易くするために、上壁部5bを凹ませた形状を有している。さらに、ボタン本体5の内側には、補強用のリブ壁5cが設けられている。
【0024】
側壁部5aの前方側面には、噴射口7から噴射された内容物を放射状に放出させるための噴射ガイド9が設けられている。噴射口7は、この噴射ガイド9の底面中央部に穿設された孔部によって形成されている。
【0025】
ステム嵌合部6は、ボタン本体5の底面中央部に位置して上壁部5bの下面から垂下されている。このステム嵌合部6は、略円筒状を為すと共に、その内側に連通孔6aとステム嵌合孔6bとを有している。このうち、連通孔6aは、噴射口7と連通される部分であり、このステム嵌合部6の上端部から長さ方向の中途部に亘って穿設されている。一方、ステム嵌合孔6bは、ステム2bの先端部が嵌合される部分であり、連通孔6aの下端部からステム嵌合部6の下端部まで穿設されている。また、ステム嵌合孔6bは、ステム2bの外径に対応した径を有し、連通孔6aは、このステム嵌合孔6bよりも小さな径を有している。これにより、連通孔6aとステム嵌合孔6bとの間に形成される段部は、ステム2bの先端が当接される当接面6cを形成している。さらに、ステム嵌合孔6bの下端部には、このステム嵌合孔6bにステム2bを嵌合し易くするためのテーパー面6dが設けられている。
【0026】
一対のガイド突起8は、一対の側壁部5aの下部側中央部よりも前方側に位置して互いに対向して配置されている。一対のガイド突起8の先端部には、図10(a)に拡大して示すように、上部側の角部の一部を切り欠くように面取り部8aが設けられている。そして、この面取り部8aは、図10(b)に示すように、後述する弾性片16に設けられた係止孔17にガイド突起8を嵌合し易くするためのものであり、例えば直線状の傾斜面を形成している。また、ガイド突起8の先端部には、例えば図10(c)に示すような曲線状の傾斜面からなる面取り部8bを設けてもよく、これら面取り部8a,8bの形状については適宜変更することが可能である。
【0027】
カバーキャップ4は、図1、図2、図5及び図6に示すように、エアゾール容器2の上部に着脱自在に装着される外筒部10と、噴射ボタン3を上下方向に移動可能に収容すると共に噴射ボタン3の上部を外方に臨ませる内筒部11と、外筒部10と内筒部11との間の上面を閉塞する上壁部12とを有し、これらが一体に成形されたプラスチック部材からなっている。
【0028】
外筒部10は、略円筒状を為すと共に、エアゾール容器2の外径とほぼ同径であり、その下部側の内周面には、周方向に亘って凸部10aが設けられている。そして、カバーキャップ4は、この外筒部10の凸部10aを上記巻締め部2cと耐圧容器との間に形成された凹部に嵌合させることによって、エアゾール容器2の上部に着脱自在に装着することが可能となっている。
【0029】
内筒部11は、噴射ボタン3の形状に合わせて前後方向に長い長円形状(いわゆるレーストラック形状)を有しており、なお且つ、上記噴射ボタン3が上下方向に移動可能に収容されるように、上記ボタン本体5の外径よりも僅かに大きい内径を有している。この内筒部11は、外筒部10の内側中央部に配置されており、その上端開口部11aが外部に臨んでいる。
【0030】
また、カバーキャップ4には、この内筒部11から外方に臨む噴射ボタン3を押圧操作し易くするための操作用凹部13が設けられている。この操作用凹部13は、内筒部11に収容された噴射ボタン3の周囲の上壁部12及び外筒部10の背面側の一部を凹ませてなる形状を有している。
【0031】
内筒部11の両側面には、通常使用時において、内筒部11の下端開口部11bから内側に挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8を上下方向に移動可能に案内する一対のガイドスリット14が設けられている。これら一対のガイドスリット14は、内筒部11の両側面の中央部よりも前方側に位置して、ガイド突起8を案内するのに充分な幅で内筒部11の下端側から噴射ボタン3の可動範囲に亘って直線状に切り欠くように形成されている。
【0032】
また、内筒部11の両側面には、後述する残留内容物排出時において、内筒部11の下端開口部11bから内側に挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8を係止する一対の係止部15が設けられている。これら一対の係止部15は、内筒部11の両側面の中央部よりも後方側に位置して設けられている。
【0033】
一対の係止部15は、内筒部11と一体に形成された一対の弾性片16と、これら一対の弾性片16に形成された係止孔17とを有している。一対の弾性片16は、内筒部11の下端側から直線状に切り欠かれた一対の切欠き部16aの間で弾性変形可能に設けられている。係止孔17は、一対の弾性片16の先端側から噴射ボタン3の可動範囲の中途位置に、上記一対のガイド突起8に対応した大きさで穿設されている。
【0034】
カバーキャップ4には、外筒部10及び内筒部11の前面側を開放する噴射用開口部18a,18bが設けられている。これら噴射用開口部18a,18bは、通常使用時において噴射口7から噴射された内容物をカバーキャップ4の外側に放出するための円形状の孔部であり、外筒部10及び内筒部11の前面、すなわち通常使用時において噴射ボタン3の噴射口7と対向する面に設けられている。また、噴射口7からは内容物が放射状に噴射されるため、内筒部11側の噴射用開口部18bは、上記噴射ガイド9とほぼ同径であり、外筒部10側の噴射用開口部18aは、内筒部11側の噴射用開口部18bよりも大径とされている。
【0035】
カバーキャップ4には、噴射用開口部18a,18bを挟んだ両側において外筒部10と内筒部11との間を連結する一対の仕切り壁19が設けられている。これら一対の仕切り壁19は、外筒部10と内筒部11との間に形成された空間Sを噴射用開口部18a、18b側で仕切るように設けられている。これにより、噴射口7から噴射される内容物が、一対の仕切り壁19で仕切られた空間Sに進入することを防止する。また、これら一対の仕切り壁19は、外筒部10と内筒部11との間を連結することで補強用のリブとしても機能する。
【0036】
カバーキャップ4には、内筒部11の背面側を開放する排出用開口部20が設けられている。この排出用開口部20は、後述する残留内容物排出時において噴射口7から噴射される内容物を外筒部10と内筒部11との間の空間Sへ排出するためのスリットであり、内筒部11の背面、すなわち残留内容物排出時において噴射ボタン3の噴射口7と対向する面に設けられると共に、内筒部11の下端側から噴射ボタン3の移動方向(上下方向)に沿って直線状に切り欠くように形成されている。
【0037】
内筒部11の下端部には、図11(a)に拡大して示すように、この内筒部11の内側に噴射ボタン3を挿入し易くするためのテーパー面11cが設けられている。このテーパー面11cは、内筒部11の内側に向かって例えば直線状に傾斜している。また、内筒部11の下端部には、例えば図11(b)に示すような曲線状に傾斜したテーパー面11dを設けてもよく、これらテーパー面11c,11dの形状については適宜変更することが可能である。
【0038】
次に、以上のような構造を有するエアゾール装置1の通常使用時における動作について説明する。
このエアゾール装置1では、先ず、図1に示す通常使用時の静止状態においては、ステム嵌合部6のステム嵌合孔6aにエアゾール容器2のステム2bが嵌合されると共に、ステム2bの先端が当接面6cに当接されることによって、噴射ボタン3がステム2bの先端部に取り付けられた状態となっている。
【0039】
そして、この状態で、カバーキャップ4がエアゾール容器2の上部に被せられた状態となっている。このとき、噴射ボタン3側の噴射口7とカバーキャップ4側の噴射用開口部18a,18bとが互いに同じ向きとなるように、カバーキャップ4をエアゾール容器2の上部に装着する。これにより、内筒部11の下端開口部11bから挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8が一対のガイドスリット14に係合された状態で、噴射ボタン3が内筒部11内に上下方向に移動可能な状態で収容される。
【0040】
なお、カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きが、このような通常使用時の状態にあるときを第1の状態といい、この第1の状態では、噴射口7が噴射用開口部18a,18bに臨む位置にある。
【0041】
次に、通常使用時において、エアゾール容器2に収容された内容物を噴射するときは、図2に示すように、内筒部11の上端開口部11aから外方に臨む噴射ボタン3を下方に向かって押圧操作する。これにより、噴射ボタン3と一体に押し下げられたステム2bを通じて、エアゾール容器2に収容された内容物がステム嵌合部6の連通孔6aを通じて噴射口7から噴射され、この噴射口7から噴射された内容物が噴射用開口部18a,18bを通じてカバーキャップ4の外部へと放射状に放出される。一方、この内容物の噴射を止めるときは、上述した噴射ボタン3に対する押圧を解除する。これにより、噴射ボタン3と一体に押し下げられたステム2bが再び元の位置に戻って噴射が停止される。
【0042】
次に、上記エアゾール装置1の残留内容物排出時における動作について説明する。
上記エアゾール装置1では、エアゾール容器2が使用済みとなり、エアゾール容器2内に残留した内容物を排出する際に、先ず、図7に示すように、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す。このとき、噴射ボタン3がステム2bの先端部に取り付けられた状態のまま、カバーキャップ4のみを取り外すことが可能である。
【0043】
次に、図8に示すように、噴射ボタン3側の噴射口7とカバーキャップ4側の噴射用開口部18a,18bとが互いに逆向きとなるように、カバーキャップ4の向きを入れ替えてエアゾール容器2の上部に再装着する。これにより、内筒部11の下端開口部11bから挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8が弾性片16に当接し、この弾性片16を弾性変形させながら、一対の係止孔17に係止される。このとき、内筒部11の下端開口部11bから挿入された噴射ボタン3の移動が規制され、この噴射ボタン3が内筒部11内の噴射位置に保持される。これにより、ステム2bが連続的に押し下げられた状態となり、エアゾール容器2内に残留した内容物がステム嵌合部6の連通孔6aを通じて噴射口7から噴射され、この噴射口7から噴射された残留内容物が排出用開口部20を通じて外筒部10と内筒部11との間の空間Sへと排出される。
【0044】
なお、カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きが、このような残留内容物排出時の状態にあるときを第2の状態といい、この第2の状態では、噴射口7が排出用開口部20に臨む位置にある。
【0045】
次に、図9に示すように、エアゾール容器2内に残留した内容物を全量噴射した後に、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す。このとき、噴射ボタン3は、一対のガイド突起8が一対の係止孔17に係止されていることにより内筒部11内に保持されたままカバーキャップ4と一体にステム2bの先端部から取り外すことが可能である。
【0046】
以上のように、本発明を適用したエアゾール装置1では、エアゾール容器2内に残留した内容物を排出する際に、カバーキャップ4を取り外し、このカバーキャップ4の向きを入れ替て再装着するといった簡単な操作で、エアゾール容器2内に残留した内容物を安全且つ確実に排出することが可能である。
【0047】
また、このエアゾール装置1では、エアゾール容器2内に残留した内容物を排出する際に、カバーキャップ4のみを取り外すことが可能なため、噴射ボタン3の押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによるステム2bの損傷を防ぎつつ、残留内容物を排出するための操作を安全且つ確実に行うことが可能である。そして、エアゾール容器2内に残留した内容物を排出した後は、エアゾール容器2からカバーキャップ4と噴射ボタン3とを一体に取り外すことが可能なため、カバーキャップ4及び噴射ボタン3の分別廃棄を容易に行うことが可能である。
【0048】
また、このエアゾール装置1では、エアゾール容器2内に残留した内容物をカバーキャップ4の内部に排出することから、この排出された内容物が周囲に飛散することを防止することが可能である。特に、このエアゾール装置1では、噴射口7から噴射された内容物が排出用開口部20を通じて外筒部10と内筒部11との間の空間Sへと排出されるため、このようなカバーキャップ4内の空間Sを残留内容物の排出に有効に利用することが可能である。
【0049】
なお、本発明を適用したエアゾール装置は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本考案の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、上記噴射ボタン3は、その形状について特にこれに限定されるものではなく、上述した水平断面が長円形状となるもの以外にも、例えば円形、楕円形、長方形等となるものであってもよい。何れの形状も、カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きを上記第1の状態から上記第2の状態に入れ替えることが可能である。
【0051】
なお、上記噴射ボタン3の形状は、一旦取り外したカバーキャップ4をその向きを入れ替てエアゾール容器2に再装着するときに、上記長円形状などのように入れ替える向きが認識し易い形状のものがよい。また、本発明では、カバーキャップ4の再装着位置がわかるように目印等を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明を適用したエアゾール装置の通常使用時の静止状態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示すエアゾール装置の通常使用時の噴射状態を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示すエアゾール装置の噴射ボタンを示す底面図である。
【図4】図4は、図3中に示す噴射ボタン線分A−A’線による縦断面図である。
【図5】図5は、図1に示すエアゾール装置のカバーキャップを示す底面図である。
【図6】図6は、図5中に示すカバーキャップの線分B−B’による縦断面図である。
【図7】図7は、図1に示すエアゾール装置のカバーキャップのみが取り外された状態を示す縦断面図である。
【図8】図8は、図1に示すエアゾール装置の残留内容物排出時の状態を示す縦断面図である。
【図9】図9は、図1に示すエアゾール装置のカバーキャップ及び噴射ボタンが一体に取り外された状態を示す縦断面図である。
【図10】図10は、ガイド突起の面取り部を説明するための図であり、(a)は面取り部の一例を示し、(b)はガイド突起が係止孔に係止された状態を示し、(c)は面取り部の他例を示す図である。
【図11】図11は、内筒部のテーパー面を説明するための図であり、(a)はテーパー面の一例を示し、(b)はテーパー面の他例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…エアゾール装置 2…エアゾール容器 2b…ステム 3…噴射ボタン 4…カバーキャップ 7…噴射口 8…ガイド突起 8a,8b…面取り部 10…外筒部 11…内筒部 11c,11d…テーパー面 14…ガイドスリット 15…係止部 16…弾性片 17…係止孔 18a,18b…噴射用開口部 19…仕切り壁 20…排出用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容されたエアゾール容器と、
前記エアゾール容器のステムの先端部に取り付けられた噴射ボタンと、
前記エアゾール容器の上部に被せられたカバーキャップとを備え、
前記噴射ボタンを押圧操作することによって、前記噴射ボタンと一体に押し下げられたステムを通じて前記エアゾール容器に収容された内容物が噴射され、
前記エアゾール容器内に残留した内容物を排出する際に、前記エアゾール容器から前記カバーキャップを取り外し、当該カバーキャップの前記噴射ボタンに対する向きが第1の状態から第2の状態に入れ替わるように前記エアゾール容器に再装着することによって、前記エアゾール容器内に残留した内容物が前記カバーキャップ内に排出可能とされたエアゾール装置であって、
前記カバーキャップが前記第1の状態にあるときは、前記噴射ボタンが前記ステムの先端部に取り付けられた状態のまま前記カバーキャップのみが取り外し可能とされ、前記カバーキャップが前記第2の状態にあるときは、前記噴射ボタンが前記カバーキャップと一体に取り外し可能とされていることを特徴とするエアゾール装置。
【請求項2】
前記噴射ボタンは、前記ステムと嵌合されるステム嵌合部と、前記ステム嵌合部と連通される噴射口と、側方に向かって突出されるガイド突起とを有し、
前記カバーキャップは、前記エアゾール容器の上部に着脱自在に装着される外筒部と、前記噴射ボタンを上下方向に移動可能に収容すると共に前記噴射ボタンの上部を外方に臨ませる内筒部と、前記外筒部及び前記内筒部の前面側を開放する噴射用開口部と、前記第1の状態において前記内筒部に挿入された噴射ボタンの前記ガイド突起を上下方向に移動可能に案内するガイドスリットと、前記第2の状態において前記内筒部に挿入された噴射ボタンの前記ガイド突起を係止する係止部とを有し、
前記第1の状態では、前記噴射口が前記噴射用開口部に臨む位置にあり、前記噴射ボタンを押圧操作することによって、前記エアゾール容器に収容された内容物が前記噴射口から前記噴射用開口部を通じて前記カバーキャップの外部へと噴射され、
前記第2の状態では、前記噴射口が前記噴射用開口部に臨む位置とは異なる位置にあり、前記カバーキャップを再装着したときに、前記ガイド突起が前記係止部に係止されて、前記噴射ボタンが前記内筒部内の噴射位置に保持されることによって、前記噴射口から噴射された内容物が前記噴射口から前記カバーキャップの内部へと排出されることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール装置。
【請求項3】
前記係止部は、前記内筒部に設けられた弾性片と、前記弾性片に設けられた係止孔とを有し、
前記第2の状態において前記カバーキャップを前記エアゾール容器に装着するときに、前記内筒部に挿入される噴射ボタンの前記ガイド突起が前記弾性片に当接されて当該弾性片を弾性変形させながら、前記噴射位置にて前記ガイド突起が前記係止孔に係止されることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール装置。
【請求項4】
前記ガイド突起の先端部には、前記弾性片と当接される側の角部の一部を切り欠くように面取り部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のエアゾール装置。
【請求項5】
前記内筒部の下端部には、内側に向かって傾斜するテーパー面が設けられていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のエアゾール装置。
【請求項6】
前記カバーキャップは、前記内筒部の前記噴射口と対向する面側を開放する排出用開口部を有し、
前記第2の状態では、前記噴射口が前記排出用開口部に臨む位置にあり、前記噴射口から噴射された内容物が前記排出用開口部を通じて前記外筒部と前記内筒部との間の空間へと排出されることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載のエアゾール装置。
【請求項7】
前記カバーキャップは、前記噴射用開口部を挟んだ両側において前記外筒部と前記内筒部との間を連結する一対の仕切り壁を有することを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載のエアゾール装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−298465(P2009−298465A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158122(P2008−158122)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】