説明

エアバッグドアの位置決め構造

【課題】蓋部と開口部の壁面との間の隙間を小さくし、その隙間に起因する表皮の凹みを目立たなくしてインストルメントパネルの見栄えをよくする。
【解決手段】エアバッグドアの位置決め構造は、一対の第1パネル側位置決め部31と、一対の第1ドア側位置決め部としての中間壁部30と、一対の第2パネル側位置決め部としての溝36と、一対の第2ドア側位置決め部としての突条38とを備える。溝36は、突条38側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面を有する。エアバッグドア20が、エアバッグの膨張方向後側(下側)から基材12の開口部18に近づけられる過程で、中間壁部30の傾斜面34が、第1パネル側位置決め部31の傾斜面32上を摺接されることにより、第1方向(前後方向)についての位置決めが行なわれる。突条38が溝36の斜面上を摺接されることにより、膨張方向及び第1方向と直交する第2方向についての位置決めが行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のインストルメントパネルの一部として設けられるエアバッグドアを位置決めする構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の助手席用エアバッグ装置のなかには、そのエアバッグドアがインストルメントパネルの一部として形成されるものがある。図10に示すように、このエアバッグドア61は、インストルメントパネル62の基材63に設けられた開口部64を塞ぐ蓋部65と、蓋部65に設けられ、かつエアバッグ60等を保持するリテーナ66とを備える。このエアバッグドア61では、基材63上とともに蓋部65上に表皮67が積層される。
【0003】
上記エアバッグドア61をインストルメントパネル62に組付けるために、次の構造が採用されている。基材63の開口部64は、開口面積の大きな上側開口部68と、その下側に位置し、かつ同上側開口部68よりも開口面積の小さな下側開口部69とからなる。上側開口部68と下側開口部69との間は、エアバッグ60側へ延びる係止部71となっている。蓋部65の下面における周縁部には、下方へ向けて突起部72が設けられている。突起部72には、エアバッグ60から遠ざかる側へ向けて係止爪73が設けられている。
【0004】
そして、上記エアバッグドア61は、図10において二点鎖線で示すように、インストルメントパネル62の基材63に対し上側から近づけられる。突起部72が下側開口部69に挿通される際、係止爪73が係止部71に干渉するが、突起部72がエアバッグ60側へ弾性変形することで、突起部72の下側開口部69への挿通が許容される。係止爪73が係止部71を乗り越えると、突起部72が自身の弾性復元力により元の形状に戻る。蓋部65によって上側開口部68が閉塞されるとともに、係止爪73と蓋部65の周縁部とによって係止部71が挟み込まれる。このようにして、エアバッグドア61が基材63に組付けられる。
【0005】
なお、関連する技術として、特許文献1に記載された「発泡体層を備える樹脂成形品、および樹脂成形品の成形方法」がある。この特許文献1では、樹脂成形品としてのエアバッグドアが上述した構成を基本構造として備えている。さらに、上記特許文献1では、インストルメントパネルの基材に対してエアバッグドアが浮き上がるのを抑制する工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−208162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1を含め従来のエアバッグドア61をインストルメントパネル62に組付ける構造では、突起部72を弾性変形させることで係止部71を乗り越えた係止爪73と蓋部65の周縁部とによって係止部71を挟み込む構成のため、蓋部65と上側開口部68の壁面74との間の隙間Gを小さくするにも限度がある。そして、この隙間Gが原因で、表皮67の隙間Gに対応する箇所が凹み、インストルメントパネル62の見栄えを低下させるおそれがある。この見栄え低下の程度は、表皮67が薄くなるに従い大きくなる。表皮67の隙間Gに対応する箇所が大きく凹み、目立つようになるからである。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、蓋部と開口部の壁面との間の隙間を小さくし、その隙間に起因する表皮の凹みを目立たなくしてインストルメントパネルの見栄えをよくすることのできるエアバッグドアの位置決め構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、インストルメントパネルの基材に設けられた開口部を塞ぐ蓋部と、前記蓋部に設けられ、かつエアバッグを保持するリテーナとを備え、前記基材上とともに前記蓋部上に表皮が積層されるエアバッグドアを位置決めする構造であって、前記基材において、前記エアバッグの膨張方向と直交する第1方向についての前記開口部の両側に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する傾斜面を有する一対の第1パネル側位置決め部と、前記リテーナにおいて、前記第1方向についての前記開口部の両側に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する傾斜面を有する一対の第1ドア側位置決め部と、前記各第1パネル側位置決め部の前記傾斜面上に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する溝又は突条からなる一対の第2パネル側位置決め部と、前記各第1ドア側位置決め部の前記傾斜面上に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する突条又は溝からなる一対の第2ドア側位置決め部とを備え、前記溝は前記突条側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面を有し、前記エアバッグドアが前記膨張方向後側から前記開口部に近づけられる過程で、前記第1ドア側位置決め部の前記傾斜面が、前記第1パネル側位置決め部の前記傾斜面上を摺接されることにより、前記第1方向についての前記エアバッグドアの位置決めが行なわれ、前記突条が前記溝の前記斜面上を摺接されることにより、前記膨張方向及び前記第1方向と直交する第2方向についての前記エアバッグドアの位置決めが行なわれることを要旨とする。
【0010】
上記の構成によれば、エアバッグドアの位置決めに際し、同エアバッグドアがエアバッグの膨張方向後側から基材の開口部に近づけられる。
ここで、両第1ドア側位置決め部についても両第1パネル側位置決め部についても、エアバッグの膨張方向と直交する第1方向についての開口部の両側に傾斜面を有している。しかも、各傾斜面は、エアバッグの膨張方向前側ほど開口部に近づくように傾斜している。
【0011】
そのため、上記エアバッグドアの開口部への接近に伴い、第1ドア側位置決め部の傾斜面が、第1パネル側位置決め部の傾斜面上を摺接することで、エアバッグドアは傾斜面に沿う方向へ案内される。この案内により、第1方向についてのエアバッグドアの位置決めが行なわれる。
【0012】
また、各第2パネル側位置決め部は第1パネル側位置決め部の傾斜面上の溝又は突条からなり、各第2ドア側位置決め部は、第1ドア側位置決め部の傾斜面上の突条又は溝からなる。溝及び突条は、エアバッグの膨張方向前側ほど開口部に近づくように傾斜している。しかも、溝は、突条側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面を有している。
【0013】
そのため、上記エアバッグドアの開口部への接近に伴い、突条が溝の斜面上を摺接することで、エアバッグドアは斜面に沿う方向へ案内される。この案内により、エアバッグの膨張方向及び第1方向と直交する第2方向についてのエアバッグドアの位置決めが行なわれる。
【0014】
エアバッグドアが第1方向についても第2方向についても精密に位置決めされることで、蓋部と開口部の壁面との間に生ずる隙間を小さくすることが可能となる。これに伴い、基材上及び蓋部上に積層される表皮において、隙間に対応する箇所に目立つ凹みが生じにくくなり、インストルメントパネルが見栄えのよいものとなる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記各第2パネル側位置決め部は、前記一対の斜面を有する溝からなり、前記各第2ドア側位置決め部は、半円状の断面を有する突条からなることを要旨とする。
【0016】
上記の構成によれば、エアバッグドアの開口部への接近に伴い、半円状の断面を有する突条からなる各第2ドア側位置決め部が、一対の斜面を有する溝からなる第2パネル側位置決め部のその斜面上を摺接する。この摺接により、エアバッグドアが斜面に沿う方向へ案内されて、第2方向についてのエアバッグドアの位置決めが行なわれる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記リテーナに設けられた第3ドア側位置決め部と、前記基材に設けられ、かつ前記エアバッグドアが前記膨張方向後側から前記開口部に近づけられる際に前記第3ドア側位置決め部に接触することにより、前記エアバッグの膨張方向についての前記エアバッグドアの位置決めを行なう第3パネル側位置決め部とをさらに備えることを要旨とする。
【0018】
上記の構成によれば、エアバッグドアの位置決めに際し、同エアバッグドアがエアバッグの膨張方向後側から基材の開口部に近づけられると、それに伴い、リテーナに設けられた第3ドア側位置決め部も同開口部に近づけられる。この接近の過程で、第3ドア側位置決め部が、基材に設けられた第3パネル側位置決め部に接触することで、膨張方向についてのエアバッグドアの位置決めが行なわれる。
【0019】
エアバッグドアがエアバッグの膨張方向についても精密に位置決めされることで、インストルメントパネルの見栄えがさらによいものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエアバッグドアの位置決め構造によれば、蓋部と開口部の壁面との間の隙間を小さくし、その隙間に起因する表皮の凹みを目立たなくしてインストルメントパネルの見栄えをよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるエアバッグドアの部分斜視図。
【図2】表皮が積層される前のインストルメントパネルの基材及びエアバッグドアの部分平面図。
【図3】図2のP−P線断面図。
【図4】インストルメントパネルの基材にエアバッグドアが組付けられる前の状態を示す部分断面図。
【図5】(A)は、図3のS部を拡大して示す部分断面図、(B)は、図4のT部を拡大して示す部分断面図。
【図6】図2のQ−Q線断面図。
【図7】図6のU−U線断面図。
【図8】図2のR−R線断面図。
【図9】(A)〜(C)は図7に対応する図であり、突条及び溝の変更例を示す部分断面図。
【図10】従来のインストルメントパネル及びエアバッグドアを示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、自動車の前進方向を前方として説明し、自動車の後進方向を後方として説明する。また、以下の記載における上下方向は自動車の上下方向を意味し、左右方向は自動車の車幅方向であって前進時の左右方向と一致するものとする。
【0023】
自動車において運転席及び助手席の前方には、図3に示すインストルメントパネル11が配置されている。インストルメントパネル11の主要部は、心材としての基材12によって構成されている。基材12は、PP(ポリプロピレン)等の硬質の合成樹脂材料を用い、射出成形法によって成形されている。基材12の上側には表皮13が積層されている。この表皮13は一層からなるものであってもよいし、二層からなるものであってもよい。本実施形態では、表皮13は、TPO(サーモプラスチックオレフィン)によって形成された表皮本体と、ウレタンによって形成され、かつ表皮本体の下側に溶着等の方法によって積層された発泡層とからなる二層構造をなしている。表皮13は、この発泡層の下面において、オレフィン系等の接着剤により上記基材12に接着されている。
【0024】
上記自動車には、前方から衝撃が加わった場合に、助手席の前方でエアバッグ16を展開膨張させて乗員を衝撃から保護する助手席用エアバッグ装置14が設けられている。この助手席用エアバッグ装置14は、インストルメントパネル11の一部として形成されたエアバッグドア20と、そのエアバッグドア20の後述する蓋部21よりも下側において、折り畳まれた状態で配設されたエアバッグ16と、そのエアバッグ16よりも下側に配設された膨張用ガス供給器としてのインフレータ17とを備えて構成されている。インフレータ17は、自動車に前方から衝撃が加わった場合に、エアバッグ16に膨張用ガスを供給する。この膨張用ガスの供給されたエアバッグ16は、折り状態を解消(展開)しながら、膨張方向(上下方向)についての前側(上側)へ膨張する。
【0025】
次に、上記エアバッグドア20の構造について説明する。
ここで、エアバッグドア20の各部を説明するに当り、方向を特定するために、図1〜図3に示すように、エアバッグ16の膨張方向(上下方向)を基準とする。この膨張方向と直交する方向のうち、前後方向を「第1方向」とする。また、膨張方向(上下方向)と直交し、かつ前後方向(第1方向)と直交する方向である左右方向(車幅方向)を「第2方向」とするものとする。
【0026】
インストルメントパネル11の基材12であって、助手席の前方となる箇所には、同インストルメントパネル11の内外を連通させる開口部18が設けられている。この開口部18は、前後方向(第1方向)に対するよりも左右方向(車幅方向、第2方向)に長い、横長の矩形状をなしている。
【0027】
エアバッグドア20は、蓋部21及びリテーナ25を備えて構成されている。エアバッグドア20は、その全体が、上記基材12を形成するPPよりも柔らかく、展開膨張するエアバッグ16の押圧力が加わった場合にも飛散し難い材質、例えば上記TPO等によって形成されている。
【0028】
蓋部21は、基材12の上記開口部18よりも僅かに小さな横長の矩形板状をなしており、同開口部18を塞いでいる。蓋部21の上面22は、開口部18の周囲における基材12の上面と面一となっている。この蓋部21上には、上記表皮13の一部が接着剤によって貼付けられている。蓋部21の下面23には、他の箇所よりも薄肉状に形成され、展開膨張するエアバッグ16によって押圧されたときに、蓋部21の破断の起点となるテアライン24が設けられている。
【0029】
リテーナ25は、上記蓋部21から下方へ突出する略四角筒状をなしており、上記エアバッグ16及びインフレータ17を保持している。リテーナ25を構成する4つの壁部を区別するために、上記前後方向(第1方向)に直交する2つを壁部26といい、左右方向(第2方向)に直交する2つを壁部27というものとする(図8参照)。前者の両壁部26は、前後方向(第1方向)についての蓋部21の両側部から下方へ突出する一対の上壁部28と、両上壁部28よりも下側で下方へ突出する一対の下壁部29と、上壁部28及び下壁部29間に位置する一対の中間壁部30とを備えている。両下壁部29間の間隔は、両上壁部28間の間隔よりも大きく設定されている。両中間壁部30は、エアバッグ16の膨張方向前側(上側)ほど上記開口部18に近づくように(間隔が狭まるように)傾斜している。
【0030】
上記構成のエアバッグ16を位置決めするために、一対の第1パネル側位置決め部31、一対の第1ドア側位置決め部、一対の第2パネル側位置決め部、一対の第2ドア側位置決め部、第3ドア側位置決め部及び第3パネル側位置決め部が設けられている。
【0031】
一対の第1パネル側位置決め部31及び一対の第1ドア側位置決め部は、上記前後方向(第1方向)についてのエアバッグドア20の位置決めを行なうための箇所である。
図4及び図5(A),(B)に示すように、一対の第1パネル側位置決め部31は、基材12において、上記前後方向(第1方向)についての開口部18の両側となる箇所から、下側へ突出している。両第1パネル側位置決め部31の下端部には、エアバッグ16の膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように、一定の角度で傾斜する傾斜面32が形成されている。
【0032】
一対の第1ドア側位置決め部は、リテーナ25において、前後方向(第1方向)についての開口部18の両側に設けられた箇所である上記中間壁部30によって構成されている。両第1ドア側位置決め部(中間壁部30)は、エアバッグ16の膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように一定の角度で傾斜する傾斜面34を有している。上記第1パネル側位置決め部31の傾斜面32と、第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34とは、エアバッグ16の膨張方向に対し、同一の角度で傾斜している。
【0033】
そして、エアバッグドア20が膨張方向後側(下側)から開口部18に近づけられる過程で、第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34が、第1パネル側位置決め部31の傾斜面32上を摺接することにより、前後方向(第1方向)についてのエアバッグドア20の位置決めが行なわれるようになっている。
【0034】
一対の第2パネル側位置決め部及び一対の第2ドア側位置決め部は、左右方向(第2方向)についてのエアバッグドア20の位置決めを行なうための箇所である。
図5(A),(B)、図6及び図7に示すように、各第2パネル側位置決め部は、各第1パネル側位置決め部31の傾斜面32上に設けられている。両第2パネル側位置決め部は、両第1パネル側位置決め部31の傾斜面32に沿って傾斜する、すなわち、膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜する溝36によって構成されている。この溝36は、後述する突条38側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面37を有している(図7参照)。
【0035】
各第2ドア側位置決め部は、各第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34上に設けられている。両第2ドア側位置決め部は、両第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34に沿って傾斜する、すなわち、膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜する突条38によって構成されている。本実施形態では、各突条38は半円形の断面を有している(図7参照)。
【0036】
そして、エアバッグドア20が膨張方向後側(下側)から開口部18に近づけられる過程で、突条38が溝36の斜面37上を摺接することにより、左右方向(第2方向)についてのエアバッグドア20の位置決めが行なわれるようになっている。
【0037】
第3ドア側位置決め部及び第3パネル側位置決め部は、上記膨張方向(上下方向)についてのエアバッグドア20の位置決めを行なうための箇所である。
図1及び図8に示すように、第3ドア側位置決め部は、リテーナ25のうち、上記左右方向(第2方向)に直交する両壁部27の少なくとも一方に設けられている。第3ドア側位置決め部は、上記壁部27から左右方向(第2方向)についてエアバッグ16から遠ざかる方向へ突出する爪部41によって構成されている。この爪部41は、本実施形態では三角形の板状をなしている。爪部41の膨張方向前側(上側)の面42は、同膨張方向に直交する平らな面によって構成されている。
【0038】
第3パネル側位置決め部は、上記膨張方向(上下方向)に直交する平板状をなす係止部43によって構成されている。係止部43は、インストルメントパネル11の基材12において、エアバッグドア20が膨張方向後側(下側)から開口部18に近づけられる際に、爪部41が接触する箇所に設けられている。この係止部43は、上記爪部41が接触されることにより、エアバッグ16の膨張方向(上下方向)についてのエアバッグドア20の位置決めを行なう。
【0039】
なお、図には示されていないが、インストルメントパネル11の基材12及びエアバッグドア20は、上記各種位置決め部によって位置決めされたエアバッグドア20をその位置に保持するための構造(保持構造)を有している。
【0040】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
エアバッグドア20を、位置決めしながらインストルメントパネル11の基材12に組付ける際には、図4に示すように、同エアバッグドア20がエアバッグ16の膨張方向後側(下側)から基材12の開口部18に近づけられる。
【0041】
ここで、両第1パネル側位置決め部31についても両第1ドア側位置決め部(中間壁部30)についても、エアバッグ16の膨張方向と直交する前後方向(第1方向)についての開口部18の両側に傾斜面32,34を有している。しかも、両傾斜面32,34は、膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜している。
【0042】
そのため、上記エアバッグドア20の開口部18への接近に伴い、一方の第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34が、一方の第1パネル側位置決め部31の傾斜面32上を摺接することで、エアバッグドア20は同傾斜面32,34に沿う方向へ案内される。例えば、エアバッグドア20の開口部18への接近に伴い、前側の第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34が前側の第1パネル側位置決め部31の傾斜面32に当接するが、後側の第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34が後側の第1パネル側位置決め部31の傾斜面32に当接しない場合には、次のように位置決めがなされる。すなわち、エアバッグドア20の開口部18への接近に伴い、前側の第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34が前側の第1パネル側位置決め部31の傾斜面32上を摺接することで、エアバッグドア20は後上方へ向けて案内される。この後上方への案内により、エアバッグドア20が前後方向(第1方向)について精密に位置決めされる。
【0043】
また、各第2パネル側位置決め部は傾斜面32上の溝36からなり、各第2ドア側位置決め部は傾斜面34上の突条38からなる。両溝36及び両突条38は、膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜している。しかも、各溝36は、突条38側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面37を有している。
【0044】
そのため、上記エアバッグドア20の開口部18への接近に伴い、突条38が溝36の斜面37上を摺接することで、エアバッグドア20は斜面37に沿う方向へ案内される。例えば、エアバッグドア20の開口部18への接近に伴い、各第2ドア側位置決め部(突条38)が第2パネル側位置決め部(溝36)の左側の斜面37に当接するが、右側の斜面37に当接しない場合には、次のように位置決めがなされる。すなわち、エアバッグドア20の開口部18への接近に伴い、第2ドア側位置決め部(突条38)が第2パネル側位置決め部(溝36)の左側の斜面37上を摺接することで、エアバッグドア20は前右方へ向けて案内される。この前右方への案内により、エアバッグドア20が左右方向(第2方向)について精密に位置決めされる。
【0045】
エアバッグドア20が上記のように前後方向(第1方向)についても左右方向(第2方向)についても精密に位置決めされることで、蓋部21と開口部18の壁面19との間に生ずる隙間G(図5(A)、図6参照)を小さくすることが可能となる。
【0046】
さらに、本実施形態では、上記エアバッグドア20の開口部18への接近に伴い、リテーナ25の壁部27に設けられた第3ドア側位置決め部(爪部41)も同開口部18に近づけられる。この接近の過程で、図8に示すように第3ドア側位置決め部(爪部41)が、インストルメントパネル11の基材12に設けられた第3パネル側位置決め部(係止部43)に接触することで、膨張方向についてのエアバッグドア20の位置決めが行なわれる。
【0047】
エアバッグドア20がエアバッグ16の膨張方向についても精密に位置決めされることで、蓋部21の上面22を、開口部18の周囲における基材12の上面と面一にすることが可能となる。
【0048】
なお、上記のように位置決めされたエアバッグドア20は、保持構造(図示略)によって、その位置に保持される。そして、上記基材12上及び蓋部21上に対し、表皮13が接着剤によって貼付けられる。
【0049】
ところで、自動車に対し前方から衝撃が加わらない通常時には、助手席用エアバッグ装置14では、インフレータ17から膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ16に供給される膨張用ガスがなく、同エアバッグ16は折り畳まれた状態に保持され続ける。
【0050】
前面衝突等により自動車に前方からの衝撃が加わると、インフレータ17から膨張用ガスが噴出され、エアバッグ16に供給される。この膨張用ガスが供給されたエアバッグ16は、折り状態を解消しながら膨張(展開膨張)する。この展開膨張の過程で、エアバッグ16の押圧力がエアバッグドア20を構成する蓋部21及びその外側の表皮13に加わる。この押圧力によって蓋部21及び表皮13がテアライン24に沿って破断する。エアバッグ16は、上記破断により蓋部21に生じた開口を通ってインストルメントパネル11と助手席の乗員との間で展開膨張し、前面衝突に伴い同乗員に加わる衝撃を緩和する。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)インストルメントパネル11の基材12において、エアバッグ16の膨張方向と直交する前後方向(第1方向)についての開口部18の両側には、膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜する傾斜面32を有する一対の第1パネル側位置決め部31を設ける。また、リテーナ25において、前後方向(第1方向)についての開口部18の両側には、膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜する傾斜面34を有する一対の第1ドア側位置決め部(中間壁部30)を設けている(図4)。
【0052】
そのため、基材12への組付けに際し、エアバッグドア20が膨張方向後側(下側)から開口部18に近づけられる過程で、第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34を、第1パネル側位置決め部31の傾斜面32上を摺接させることで、前後方向(第1方向)についてのエアバッグドア20の位置決めを行なうことができる。
【0053】
(2)両第1パネル側位置決め部31の傾斜面32上には、膨張方向前側(上側)ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜する溝36からなる一対の第2パネル側位置決め部を設ける。また、両第1ドア側位置決め部(中間壁部30)の傾斜面34上には、膨張方向前側ほど開口部18に近づく(間隔が狭まる)ように傾斜する突条38からなる一対の第2ドア側位置決め部を設ける。上記溝36として、突条38側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面37を有するものを用いている(図5〜図7)。
【0054】
そのため、基材12への組付けに際し、エアバッグドア20が膨張方向後側(下側)から開口部18に近づけられる過程で、突条38に溝36の斜面37上を摺接させることにより、左右方向(第2方向)についてのエアバッグドア20の位置決めを行なうことができる。
【0055】
(3)上記(1)及び(2)に記載したように、エアバッグドア20を前後方向(第1方向)についても左右方向(第2方向)についても精密に位置決めすることで、蓋部21と開口部18の壁面19との間に生ずる隙間Gを小さくすることができるようになる。これに伴い、基材12及び蓋部21上に積層された表皮13において、隙間Gに対応する箇所に目立つ凹みが生ずるのを抑制し、インストルメントパネル11の見栄え向上を図ることができる。
【0056】
特に、表皮13が薄くなるに従い、隙間Gに起因する見栄え低下の度合いが大きくなる。表皮13において隙間Gに対応する箇所が大きく凹み、目立つようになるからである。この点、本実施形態では、上記のように隙間Gを小さくすることができるため、表皮13が薄くなっても、表皮13において隙間Gに対応する箇所が大きく凹まないようにし、上記見栄え向上効果を得ることができる。
【0057】
(4)リテーナ25の壁部27に第3ドア側位置決め部として爪部41を設ける。また、インストルメントパネル11の基材12に第3パネル側位置決め部として係止部43を設けている(図1、図8)。
【0058】
そのため、エアバッグドア20が膨張方向後側(下側)から開口部18に近づけられる際に、係止部43の爪部41との接触により、膨張方向についてのエアバッグドア20の位置決めを行なうことができる。この位置決めにより、蓋部21の上面22を、開口部18の周囲における基材12の上面と面一にすることができ、インストルメントパネル11の見栄えをさらに向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・第2パネル側位置決め部としての溝36は、少なくとも突条38側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面37を有するものであればよい。従って、この溝36は、上記実施形態で説明したように、2つの斜面37のみからなるものであってもよいし、図9(A)に示すように、2つの斜面37に加え、他の面51を有するものであってもよい。他の面51は傾かないものであってもよいし、斜面37とは異なる角度で傾くものであってもよい。
【0060】
・第2ドア側位置決め部としての突条38は、半円形とは異なる断面形状を有するものであってもよい。例えば、突条38は、図9(B)に示すように、三角形の断面形状を有するものであってもよい。
【0061】
・図9(C)に示すように、上記実施形態とは逆に、第2パネル側位置決め部が突条52によって構成され、第2ドア側位置決め部が、一対の斜面54を有する溝53によって構成されてもよい。
【0062】
・第3ドア側位置決め部としての爪部41は、リテーナ25の一対の壁部27の両方に設けられてもよいし、一方のみに設けられてもよい。
前者の場合、第3パネル側位置決め部としての係止部43も一対設けられることとなる。
【0063】
・前記実施形態とは逆に、左右方向(車幅方向)が第1方向とされ、前後方向が第2方向とされてもよい。
・前記実施形態では、表皮13は、基材12及び蓋部21に対し接着剤を用いた貼付けによって積層されたが、型成形によって基材12上及び蓋部21上に形成(積層)されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
11…インストルメントパネル、12…基材、13…表皮、16…エアバッグ、18…開口部、20…エアバッグドア、21…蓋部、25…リテーナ、30…中間壁部(第1ドア側位置決め部)、31…第1パネル側位置決め部、32,34…傾斜面、36…溝(第2パネル側位置決め部)、37,54…斜面、38…突条(第2ドア側位置決め部)、41…爪部(第3ドア側位置決め部、43…係止部(第3パネル側位置決め部)、52…突条(第2パネル側位置決め部)、53…溝(第2ドア側位置決め部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの基材に設けられた開口部を塞ぐ蓋部と、前記蓋部に設けられ、かつエアバッグを保持するリテーナとを備え、前記基材上とともに前記蓋部上に表皮が積層されるエアバッグドアを位置決めする構造であって、
前記基材において、前記エアバッグの膨張方向と直交する第1方向についての前記開口部の両側に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する傾斜面を有する一対の第1パネル側位置決め部と、
前記リテーナにおいて、前記第1方向についての前記開口部の両側に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する傾斜面を有する一対の第1ドア側位置決め部と、
前記各第1パネル側位置決め部の前記傾斜面上に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する溝又は突条からなる一対の第2パネル側位置決め部と、
前記各第1ドア側位置決め部の前記傾斜面上に設けられ、前記膨張方向前側ほど前記開口部に近づくように傾斜する突条又は溝からなる一対の第2ドア側位置決め部と
を備え、前記溝は前記突条側ほど間隔が拡がるように傾く一対の斜面を有し、
前記エアバッグドアが前記膨張方向後側から前記開口部に近づけられる過程で、前記第1ドア側位置決め部の前記傾斜面が、前記第1パネル側位置決め部の前記傾斜面上を摺接されることにより、前記第1方向についての前記エアバッグドアの位置決めが行なわれ、前記突条が前記溝の前記斜面上を摺接されることにより、前記膨張方向及び前記第1方向と直交する第2方向についての前記エアバッグドアの位置決めが行なわれることを特徴とするエアバッグドアの位置決め構造。
【請求項2】
前記各第2パネル側位置決め部は、前記一対の斜面を有する溝からなり、前記各第2ドア側位置決め部は、半円状の断面を有する突条からなる請求項1に記載のエアバッグドアの位置決め構造。
【請求項3】
前記リテーナに設けられた第3ドア側位置決め部と、
前記基材に設けられ、かつ前記エアバッグドアが前記膨張方向後側から前記開口部に近づけられる際に前記第3ドア側位置決め部に接触することにより、前記エアバッグの膨張方向についての前記エアバッグドアの位置決めを行なう第3パネル側位置決め部と
をさらに備える請求項1又は2に記載のエアバッグドアの位置決め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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