説明

エアバッグ及びエアバッグ装置

【課題】インフレータの容量が小さくても左半側エアバッグ及び右半側エアバッグが十分に早期に膨張し、しかも、Aピラー等と干渉しないエアバッグ及びエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ10は、右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14と、該右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14の基端側同士を連通している連通部16と、該右半側エアバッグ12の左右の側面同士、並びに左半側エアバッグ14の左右の側面同士をそれぞれ連結する吊紐70とを有している。車体側のバッグ14の吊紐70は、車体側パネル28の上部に連結されている。膨張完了時における該バッグ14の吊紐70を通るバッグ幅方向縦断面の全高をHとし、吊紐70と車体側パネル24との連結部の該縦断面における最低位部からの高さをHとし、吊紐70と反対側パネル28との連結部の該縦断面における最低位部からの高さをHとした場合、Hは0.4H〜0.8Hの範囲にあり、Hは0.3H〜0.6Hの範囲にあり、かつH>Hである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時等に乗員を保護するためのエアバッグ及びエアバッグ装置に係り、特に、乗員の前方の左側及び右側においてそれぞれ膨張する左半側エアバッグ及び右半側エアバッグを有したエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両衝突時等に乗員を保護するためのエアバッグとして、乗員の前方の左側及び右側においてそれぞれ膨張する左半側エアバッグ及び右半側エアバッグを有し、これらが共通のインフレータによって膨張するよう構成されたエアバッグが、特開平4−292239号公報に記載されている。同号公報のエアバッグにおいては、左半側エアバッグと右半側エアバッグの先端部同士がタイパネルによって連結されている。
【0003】
このエアバッグは、折り畳まれてケース内に収容され、カバーによって覆われている。車両衝突時にインフレータ(ガス発生器)がガス噴出作動すると、エアバッグはカバーを押し開けつつ乗員の前方に膨張する。
【0004】
このインフレータは、エアバッグの基端側の内部又は外部に配置されている。インフレータがエアバッグの基端側の外部に配置されている構造のエアバッグ装置にあっては、インフレータの噴出ガスは、エアバッグの基端側に設けられたガス導入口を介してエアバッグ内に供給される。
【0005】
インフレータをエアバッグの基端側の内部に配置する場合、インフレータの全体をエアバッグ内に配置することもあり、また、インフレータの一部をエアバッグ内に配置することもある。後者の例としては、エアバッグに1対のスリット状開口を設け、棒状のインフレータをこれらのスリット状開口に通し、インフレータの両端側をエアバッグ外に突出させる構成が例示される。
【特許文献1】特開平4−292239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
I.上記特開平4−292239号公報のように左半側エアバッグ及び右半側エアバッグを有するエアバッグにおいて、膨張時の左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの容積が大きいと、エアバッグを早期に膨張させるためにはインフレータとして容量の大きなものを採用する必要がある。本発明は、インフレータの容量が比較的小さい場合でも左半側エアバッグ及び右半側エアバッグが十分に早期に膨張すると共に、この膨張時にAピラー等との干渉が防止されるエアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0007】
II.上記特開平4−292239号公報のエアバッグにあっては、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士がタイパネルによって連結されているので、エアバッグが膨張したときにタイパネルが乗員の身体の左右方向の中央を受け止めることになる。
【0008】
本発明は、その一態様において、膨張した左半側エアバッグが乗員の左胸を受け止め、右半側エアバッグが右胸を受け止め、乗員の胸の左右方向の中央部には膨張したエアバッグの空間部が対峙するよう構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0009】
III.上記特開平4−292239号公報のエアバッグにあっては、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグが膨張するに際し、これらのうちのどちらか一方のエアバッグにインフレータからのガスが多く流入するようになり、他方のエアバッグの膨張が該一方のエアバッグよりも遅れるおそれがある。
【0010】
なお、同号公報のエアバッグにおいては、左半側エアバッグと右半側エアバッグとがタイパネルによって連結されているので、これらのうちの一方のエアバッグの膨張が遅れても、先行して膨張したエアバッグが該タイパネルを介して膨張の遅れているエアバッグを膨張方向に引張ってその膨張を促進させることが期待できる。しかしながら、該タイパネルは左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士を連結しているので、先行して膨張を開始したエアバッグは、その先端側まで膨張するまで、膨張の遅れているエアバッグを該タイパネルを介して十分に引張ることができない。
【0011】
本発明は、そのさらに別の一態様において、左半側エアバッグと右半側エアバッグの双方が膨張初期の段階からスムーズに且つ左右略均等に膨張するエアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)のエアバッグは、基端側に配置されたインフレータの噴出ガスにより先端側が該基端側から遠ざかる方向に膨張するエアバッグであって、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグとを有するエアバッグにおいて、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグのうち、少なくとも車体室内側面に近い方の車体側バッグにあっては、該車体側バッグの車体側と、該車体側バッグの反対側とを連結する吊紐が設けられており、該車体側バッグの膨張完了時における該吊紐を通るバッグ幅方向縦断面の全高をHとした場合、該車体側バッグの車体側における該吊紐とバッグとの連結部の該縦断面における最低位部からの高さHは0.4H〜0.8Hの範囲にあり、該車体側バッグの反対側における該吊紐とバッグとの連結部の該縦断面における最低位部からの高さHは0.3H〜0.6Hの範囲にあり、H>Hであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2のエアバッグは、請求項1において、(H−H)が0.1H〜0.5Hであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3のエアバッグは、請求項1又は2において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士が非連結状となっており、該エアバッグが膨張した状態において該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士の間に、乗員に向って開放する空間部が形成されることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4のエアバッグは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該左半側エアバッグと該右半側エアバッグとの前記膨張方向の途中部分同士が連結されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5のエアバッグは、請求項4において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの対面部分同士が両者の連結方向に延在する連結体によって連結されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明(請求項6)のエアバッグ装置は、かかる本発明のエアバッグと、このエアバッグを膨張させるためのインフレータとを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置によると、少なくとも車体側バッグは、該車体側バッグの車体側と反対側とを連結する吊紐が設けられており、膨張状態においてその左右方向の幅員が規制されるため、インフレータとして容量の小さいものを採用しても十分に早期に膨張するようになる。
【0019】
この車体側バッグにあっては、車体側における吊紐とバッグとの連結部の高さHが0.4H〜0.8Hであり、反対側における吊紐とバッグとの連結部の高さHが0.3H〜0.6Hであり、かつH>Hであるところから、膨張した該車体側バッグは、その車体側の吊紐連結部付近が吊紐によってバッグ内方かつ下方に引っ張られる。このため、膨張した該車体側バッグの車体側上部がAピラーやその近傍部材と干渉することが防止される。
【0020】
特に、(H−H)を0.1H〜0.5Hとすることにより、膨張した車体側バッグの車体側上部の下方への引っ張り量を大きく設定することができる。
【0021】
本発明では、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士が非連結状となっており、該エアバッグが膨張した状態において該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士の間に、乗員に向って開放する空間部が形成されていてもよい。
【0022】
かかるエアバッグが膨張した場合、左半側エアバッグが乗員の左胸を受け止め、右半側エアバッグが乗員の右胸を受け止める。この左右の胸には硬くて強い肋骨が存在する。このエアバッグは、この肋骨を介して乗員の衝撃を受承し、吸収する。このエアバッグは、膨張した状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグの先端部同士の間に空間部が存在し、乗員の胸中央の胸骨付近は空間部に対峙する。従って、乗員の身体がエアバッグに突っ込んでいった場合、胸の胸骨付近は、エアバッグからそれ程大きな反力を受けないようになり、この胸骨付近の負担が小さくなる。
【0023】
本発明の一態様においては、該左半側エアバッグと該右半側エアバッグとの前記膨張方向の途中部分同士が連結されている。
【0024】
このように該途中部分同士が連結されていると、エアバッグ膨張時にこれらのうちのどちらか一方の膨張が遅れている場合でも、先行して膨張しつつあるエアバッグが、膨張の遅れている該一方のエアバッグを引張ってその膨張を促進させる。しかも、これらの左半側エアバッグと右半側エアバッグとの該膨張方向の途中部分同士が連結されているので、先行して膨張を開始した他方のバッグは、該途中部分まで膨張した初期の段階で膨張の遅れている該一方のエアバッグを膨張方向に引張り始める。これにより、該左半側エアバッグと右半側エアバッグの双方が膨張初期の段階からスムーズに且つ左右略均等に膨張するようになる。
【0025】
該左半側エアバッグと該右半側エアバッグとの前記膨張方向の途中部分同士が連結されているエアバッグにあっては、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの対面部分同士が両者の連結方向に延在する連結体によって連結されていてもよい。このようにすれば、膨張した左半側エアバッグと右半側エアバッグとの間隔をこの連結体の長さによって規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
第1図(a)は本発明の実施の形態に係るエアバッグの膨張状態における斜視図、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図、第2図は第1図(b)のII−II線に沿う断面図、第3図は第1図(b)のIII−III線に沿う断面図、第4図(a)はこのエアバッグの分解斜視図、第4図(b)は同(a)のB部分の拡大図である。このエアバッグは、左側の前部座席が助手席となっている自動車のインストルメントパネルに設置される助手席用エアバッグ装置のエアバッグである。なお、以下、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグをそれぞれ単にバッグと称することがある。
【0028】
このエアバッグ10は、乗員前方の右側(この実施の形態ではコンソール側)において膨張する右半側エアバッグ12と、乗員前方の左側(車体側)において膨張する左半側エアバッグ14と、該右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14の一端側同士を連通する連通部16とを有している。該連通部16がエアバッグ10の基端側となっている。各バッグ12,14は、それぞれこの連通部16から遠ざかる方向に膨張する。
【0029】
各バッグ12,14内には、膨張時における各々の左右方向の幅員を規制する幅員規制手段として吊紐70が設けられている。この吊紐70は、各バッグ12,14の左右の側面を構成するフロントインナパネル22,24とフロントアウタパネル26,28に対しシーム72によって接合されている。
【0030】
吊紐70は各バッグ12,14の車体前後方向の略中間付近に位置する。右半側エアバッグ12にあっては、吊紐70は各パネル22,26の上下方向の中間付近同士を連結している。左半側エアバッグ14にあっては、吊紐70の一端はパネル24の上下方向の中間付近に連結され、他端は車体側パネル28の上部に連結されている。なお、この左半側エアバッグ14では、吊紐70の該一端はパネル24の下部に連結されてもよい。
【0031】
第2図の通り、膨張完了時における該バッグ14の吊紐70を通るバッグ幅方向縦断面の全高をHとし、吊紐70と車体側パネル24との連結部の該縦断面における最低位部からの高さをHとし、吊紐70と反対側パネル28との連結部の該縦断面における最低位部からの高さをHとした場合、Hは0.4H〜0.8Hの範囲にあり、Hは0.3H〜0.6Hの範囲にあり、かつH>Hである。HとHとの差(H−H)は0.1H〜0.5H特に0.2H〜0.4Hであることが好ましい。後述の第5図の如く、右半側エアバッグの吊紐を斜めとする場合も同様である。
【0032】
右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14が膨張するときには、該吊紐70により、幅員が規制される。
【0033】
このエアバッグ10は、右半側エアバッグ12の膨張方向の途中部分と左半側エアバッグ14の膨張方向の途中部分とがシーム52によって結合されている。
【0034】
この実施の形態では、該エアバッグ10は、パネル18,20,22,24,26,28により外形が構成されている。
【0035】
パネル18(リアインナパネル)は、各バッグ12,14の基端側のバッグ同士の対向面と、連通部16の乗員側とを構成する。パネル20(リアアウタパネル)は、各バッグ12,14の対向面と反対側を構成すると共に、連通部16の乗員と反対側を構成する。
【0036】
パネル22,24(フロントインナパネル)は、各バッグ12,14同士の対向面を構成する。
【0037】
パネル26,28(フロントアウタパネル)は、各バッグ12,14の該対向面と反対側の面を構成する。
【0038】
符号30は該リアインナパネル18とリアアウタパネル20とを縫合したシーム(縫糸)を示し、符号32,34は、それぞれ該リアインナパネル18とフロントインナパネル22,24とを縫合したシームを示し、符号36,38は該リアアウタパネル20とフロントアウタパネル26,28とを縫合したシームを示す。
【0039】
フロントアウタパネル26,28にはそれぞれベントホール27が設けられている。
【0040】
第1図(a)に示すように、リアインナパネル18とフロントインナパネル22,24との縫合代(結合代)44,46は、各バッグ12,14の外面に露出するように配置されている。この縫合代44,46からは、第1,3図に示すように、舌片状の連結代48,50が突設され、この連結代48,50同士がシーム52によって縫合されている。
【0041】
連通部16の外側面を構成するリアアウタパネル20には、インフレータ挿通用の1対のスリット54,54が設けられている。棒状のインフレータ56が該スリット54,54に挿通されて配置されている。
【0042】
このエアバッグ10は、次のような手順で製作される。
【0043】
まず、第4図(a)のようにリアインナパネル18とフロントインナパネル22,24とをシーム32,34によって縫合すると共に、リアアウタパネル20とフロントアウタパネル26,28とをシーム36,38によって縫合する。この際、リアインナパネル18とフロントインナパネル22,24との縫合代44,46はエアバッグ製品においてエアバッグ外部に露出する側に配置される。
【0044】
なお、この実施の形態では、該リアインナパネル18とフロントインナパネル22との縫合代44にあっては、第4図(b)に示すように、該リアインナパネル18とフロントインナパネル22とは縫合代44の両端側のみがシーム32(32a,32b)によってそれぞれ縫合され、これらのシーム32a,32b同士の間にはエアバッグ反転用の開口60が形成される。
【0045】
次いで、これらのリアインナパネル18及びフロントインナパネル22,24の縫合体と、リアアウタパネル20及びフロントアウタパネル26,28の縫合体とをシーム30,40,42によって縫い合わせる。また、パネル22,26及びパネル24,28に吊紐70の両端部をそれぞれ縫い付ける。これにより、裏返し状のエアバッグ製品中間体が製作される。
【0046】
次に、このエアバッグ製品中間体を、縫合代44に形成された開口60を介して表裏反転させる。その後、縫合代44,46の連結代48,50同士をシーム52によって縫合することにより、エアバッグ10製品が完成する。
【0047】
なお、連結代48,50同士を縫合するに際し、上記開口60はシーム52によって閉鎖される。
【0048】
該エアバッグ10は、折り畳まれてケース内に収容され、ボルト挿通孔58(第1図(b))に挿通されたボルト(図示略)によって該ケースに連結される。このエアバッグ10の折り畳み体を覆うように該ケースにリッドが装着される。
【0049】
このエアバッグ装置は、自動車の助手席前方のインストルメントパネルに設置される。車両衝突時には、インフレータ56がガス噴出作動し、右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14がそれぞれ乗員前方の右側及び左側において膨張する。
【0050】
このエアバッグ10にあっては、右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14の膨張時における各々の左右方向の幅員がそれぞれ吊紐70によって規制されるため、該右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14は内容積が比較的小さくなっている。そのため、インフレータ56として容量の小さいものを採用しても、該右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14が十分に早期に膨張するようになる。
【0051】
この実施の形態では、前記の通り、Hが0.4H〜0.8Hであり、Hが0.3H〜0.6Hであり、且つH>Hであるため、左半側エアバッグ14が膨張する場合、車体側の上部ないし中間部が吊紐70によって内方かつ下方へ引っ張り込まれ、特に(H−H)を0.1H〜0.5Hとりわけ0.2H〜0.4Hとした場合には、車体側上部ないし中間部が下方へ深く引っ張り込まれる。このため、第2図に示される通り、車体側の左半側エアバッグ14の上部がAピラーや、その近傍のウインドシールド、サイドドア等と干渉しない。
【0052】
このエアバッグ10が膨張するに際し、どちらか一方のバッグ12又は14が先行して膨張し、他方のバッグ14又は12の膨張が遅れた場合でも、右半側エアバッグ12と左半側エアバッグ14の途中部分同士がシーム52を介して連結されているので、先行して膨張を開始した一方のバッグは、膨張開始後、比較的初期の段階で膨張の遅れている他方のバッグを膨張方向に引張り始める。これにより、各バッグ12,14が膨張初期の段階からスムーズに且つ左右略均等に膨張するようになる。
【0053】
エアバッグ10が膨張完了した状態において、右半側エアバッグ12と左半側エアバッグ14の先端部同士の間に空間部13が形成され、この空間部13が乗員に向って開放している。そして、膨張した右半側エアバッグ12が乗員の右胸を受け止め、膨張した左半側エアバッグ14が左胸を受け止め、胸骨付近は空間部13に対峙する。このため、胸骨付近に加えられるエアバッグ受承時の反力が小さなものとなる。
【0054】
このエアバッグ10が膨張完了した状態にあっては、右半側エアバッグ12の最先端12tと左半側エアバッグ14の最先端14tとの間隔Wは150〜450mm特に170〜430mmであることが好ましい。
【0055】
上記実施の形態では左半側エアバッグ14においてのみ吊紐70の一端を外側のパネル(車体側パネル)28の上部に連結しているが、第5図の右半側エアバッグ12’のようにコンソール側のバッグの外側のパネル26の上部に吊紐70を連結してもよい。このようにすれば、エアバッグ装置を左ハンドル車及び右ハンドル車に共通して搭載することが可能となる。また、左右のバッグを同一容積とし、膨張時の内圧を等しくすることもできる。
【0056】
上記実施の形態では左右のバッグ12,14の途中部分同士を、各々に設けられた連結代48,50を縫合することにより連結しているが、第6図に示すエアバッグ10Aの通り、右半側エアバッグ12Aと左半側エアバッグ14Aの途中部分同士をベルト80を介して連結してもよい。第6図のその他の符号は第1〜5図と同一部分を示している。ベルト80の代りに紐やネット、パネルが用いられてもよい。
【0057】
上記の実施の形態では右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14の左右の側面同士をそれぞれ1本の吊紐70によって連結しているが、2本以上の吊紐によって該側面同士が連結されてもよい。また、右半側エアバッグ12及び左半側エアバッグ14の上面と下面とを連結する吊紐を設け、各バッグ12,14の膨張時における上下幅を規制してもよい。
【0058】
上記の実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明は図示の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では右半側エアバッグと左半側エアバッグとは基端側において連なっているが、両バッグが別体とされてもよい。左半側エアバッグと右半側エアバッグとは別個のインフレータによって膨張されるよう構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係るエアバッグの構成図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のエアバッグの分解斜視図と要部拡大図である。
【図5】別の実施の形態に係るエアバッグの断面図である。
【図6】さらに別の実施の形態に係るエアバッグの断面斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
10,10A エアバッグ
12,12’,12A 右半側エアバッグ
13 空間部
14,14A 左半側エアバッグ
16 連通部
18,20,22,24,26,28 パネル
56 インフレータ
70 吊紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に配置されたインフレータの噴出ガスにより先端側が該基端側から遠ざかる方向に膨張するエアバッグであって、
乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、
乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグと
を有するエアバッグにおいて、
該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグのうち、少なくとも車体室内側面に近い方の車体側バッグにあっては、該車体側バッグの車体側と、該車体側バッグの反対側とを連結する吊紐が設けられており、
該車体側バッグの膨張完了時における該吊紐を通るバッグ幅方向縦断面の全高をHとした場合、
該車体側バッグの車体側における該吊紐とバッグとの連結部の該縦断面における最低位部からの高さHは0.4H〜0.8Hの範囲にあり、
該車体側バッグの反対側における該吊紐とバッグとの連結部の該縦断面における最低位部からの高さHは0.3H〜0.6Hの範囲にあり、
>Hであることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
請求項1において、(H−H)が0.1H〜0.5Hであることを特徴とするエアバッグ。
【請求項3】
請求項1又は2において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士が非連結状となっており、
該エアバッグが膨張した状態において該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの先端部同士の間に、乗員に向って開放する空間部が形成されることを特徴とするエアバッグ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該左半側エアバッグと該右半側エアバッグとの前記膨張方向の途中部分同士が連結されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項5】
請求項4において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの対面部分同士が両者の連結方向に延在する連結体によって連結されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項6】
エアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータとを備えたエアバッグ装置において、
該エアバッグが請求項1ないし5のいずれか1項のエアバッグであることを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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