説明

エアバッグ用ガス発生器

【課題】 構造が簡略化され、軽量化されたエアバッグ用ガス発生器の提供。
【解決手段】 ハウジング111内には第1燃焼室131と、カップ部材141で囲まれた第2燃
焼室35がある。カップ部材141は複数の貫通孔142を有し、カップ状薄膜部材147で覆われ
ている。第2点火器127の作動によりガス発生剤が燃焼してガスが発生すると、ガス圧に
よりカップ状薄膜部材147が破壊されて開口し、ガスが排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の乗員拘束装置に使用できるエアバッグ用ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の乗員拘束装置に使用するエアバッグ用ガス発生器には、自動車メーカーからの小型化と軽量化の要請がある。このような小型化と軽量化の要請に応える方法としては、エアバッグ用ガス発生器として要求される性能及び品質を維持した上で、構造を簡略化して部品点数を削減することが効果的である。
【0003】
特許文献1の図1には、第一室34が第二室82を内包したエアバッグインフレータが示されている。第二室82のガス出口オリフィス104は、絶縁遮壁剤106で覆われており、第二室82内から所定圧がかかったときに開いたり、破れたりする。
【0004】
特許文献2の図1には、固定隔壁で分離された第1燃焼室200と第2燃焼室180を有するインフレータ10が示されている。第1燃焼室200内の点火カップ220は、点火剤222の燃焼生成物に押されて軸方向にスライドすることが記載されている。
【0005】
特許文献3の図1には、2つの燃焼室5a、5bを有するエアバッグ用ガス発生器が示されている。
【0006】
特許文献4の緊急ガス発生器は、ケース1の底板3にV溝5が設けられており、スクイブ8の作動によりガス燃焼発生剤2が着火してガスが発生したとき、底板3がV溝5から破壊され、そこからガスが外部に放出されるようになっている。
【特許文献1】US6,189,927B1(特表2002-503584)
【特許文献2】US6,543,805B2
【特許文献3】特開2001-199303号公報
【特許文献4】特開平5-168905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2、3のインフレータは構造が複雑で、軽量化の要請に充分に応えることができない。特許文献1のインフレータは、特許文献2、3のインフレータと比べると構造は簡単であるが、第2燃焼室は固定部材と絶縁部材により、第1燃焼室と分離されている。特許文献4の緊急ガス発生器では、底板3の破壊により、そこから直接にかつ一気にガスが放出されるため、ガスの排出量を制御することができず、点火手段及び燃焼室が2つあるデュアルタイプのエアバッグ用のガス発生器としては適用できない。
【0008】
本発明は、高い性能及び品質を維持したまま、構造を簡略化することで全体として軽量化でき、製造工程も簡略化できるエアバッグ用ガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
ガス排出口を有するハウジング内に、ガス発生剤及び点火手段が配置された燃焼室を有しており、
前記燃焼室が、前記燃焼室内に配置されたカップ状又は筒状の分離壁により、点火手段とエンハンサ剤が収容されたエンハンサ室とガス発生剤が収容された空間に分離されており、
前記カップ状又は筒状の分離壁の周面が複数の貫通孔を有しており、前記貫通孔を含む前記分離壁の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されている、エアバッグ用ガス発生器を提供する。
【0010】
カップ状又は筒状の分離壁の周面には、内部(エンハンサ室)のエンハンサ剤の燃焼により発生したガスを排出するための複数の貫通孔が形成されている。
【0011】
従来、この貫通孔(エンハンサ孔)は、エンハンサ剤が燃焼室側に漏れ出ないようにするためと、燃焼時においてエンハンサ室内の圧力をある程度まで高めるため(エンハンサ剤としてガス発生剤を用いた場合には、エンハンサ室内を一定圧力まで高めることで、燃焼し易くする場合がある)、金属製の粘着テープで閉塞されていた。
【0012】
しかし、カップ状又は筒状の分離壁の周面の大きさに比べて貫通孔の大きさは小さく、また粘着テープの幅も前記周面の大きさに比べて小さいので、粘着テープを貫通孔に貼り付ける際には、作業を容易にするため、予め貫通孔の位置決めが必要となる。更に、車両の耐用年数(通常、10年以上)を考慮すると、粘着テープを用いた際、粘着剤の性質によっては粘着力の経年劣化による閉塞不良の発生も懸念される。
【0013】
本発明では、前記貫通孔(エンハンサ孔)を含むカップ状又は筒状の分離壁の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されているため、従来の粘着テープを用いた場合のような貼り付け作業が不要となるほか、貫通孔の位置決めも不要となり、粘着剤も使用しないため、粘着力の低下が問題となることもない。
【0014】
カップ状又は筒状の薄膜部材は、アルミニウムやステンレス等からなるものが好ましく、厚さは50〜1000μm程度にすることができる。
【0015】
カップ状又は筒状の分離壁の外表面を被覆するときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の内径は、前記分離壁の外径と同程度か僅かに大きい程度にして、前記分離壁の外表面に密着して被覆できるようにすることが好ましい。
【0016】
カップ状又は筒状の分離壁の内表面を被覆するときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の外径は、前記分離壁の内径よりも僅かに小さい程度にすることが望ましい。カップ状又は筒状の薄膜部材を前記分離壁の内側に配置したときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の内部にエンハンサ剤が充填されるため、カップ状又は筒状の薄膜部材は、前記分離壁に押圧されて密着する。
【0017】
カップ状の薄膜部材は、前記分離壁の周面の全部又は一部と、底面の全部又は一部を密着して覆うことができるものである。カップ状の薄膜部材であると、底面が覆われているため、周面の全部を覆わない場合でも、位置がずれたりすることがない。但し、周面の一部を覆うときは、必ず貫通孔を含む面を覆う。
【0018】
筒状の薄膜部材は、前記分離壁の周面の全部を密着して覆うことができるものである。貫通孔を含む周面の一部を覆うようにしてもよいが、年月を経たときに、位置がずれるおそれがあるため、好ましくない。
【0019】
カップ状又は筒状の分離壁は、開口部はハウジング底面に当接されているが、天井面又は他端開口部はハウジング天井面に当接されていてもよいし、当接されていなくてもよいが、カップ状又は筒状の分離壁の天井面又は他端開口部とハウジング天井面が当接していると、カップ状又は筒状の分離壁の固定が容易であるので、好ましい。なお、カップ状又は筒状の分離壁の開口部の内側や天井面に、カップ状又は筒状の薄膜部材の開口端部を巻
き込んで固定してもよい。
【0020】
本発明は、課題の解決手段として、
ガス排出口を有するハウジング内に、それぞれ独自のガス発生剤及び点火手段が配置された第1燃焼室と第2燃焼室を有しており、
前記第2燃焼室が、前記ハウジング内に配置された燃焼室カップ部材により、第1燃焼室と分離され、前記燃焼室カップ部材内には第2ガス発生剤と第2点火手段が配置されており、
前記燃焼室カップ部材の周面が複数の貫通孔を有しており、前記貫通孔を含む前記燃焼室カップ部材の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されている、エアバッグ用ガス発生器を提供する。
【0021】
燃焼室カップ部材の周面には、内部(第2燃焼室)のガス発生剤の燃焼により発生したガスを排出するための複数の貫通孔が形成されている。
【0022】
従来、この貫通孔は、第1燃焼室で発生したガスの流入により、第2燃焼室内のガス発生剤が着火燃焼されることを防止するため、金属製の粘着テープで閉塞されていた。しかし、燃焼室カップ部材の周面の大きさに比べて貫通孔の大きさは小さく、また粘着テープの幅も前記周面の大きさに比べて小さいので、粘着テープを貫通孔に貼り付ける際には、作業を容易にするため、予め貫通孔の位置決めが必要となる。更に、車両の耐用年数(通常、10年以上)を考慮すると、粘着テープを用いた際、粘着剤の性質によっては粘着力の経年劣化による閉塞不良の発生も懸念される。
【0023】
本発明では、前記貫通孔を含む前記燃焼室カップ部材の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されているため、従来の粘着テープを用いた場合のような貼り付け作業が不要となるほか、貫通孔の位置決めも不要となり、粘着剤も使用しないため、粘着力の低下が問題となることもない。
【0024】
カップ状又は筒状の薄膜部材は、アルミニウムやステンレス等からなるものが好ましく、厚さは50〜1000μm程度にすることができる。
【0025】
燃焼室カップ部材の外表面を被覆するときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の内径は、燃焼室カップ部材の外径と同程度か僅かに大きい程度にして、燃焼室カップ部材の外表面に密着して被覆できるようにすることが好ましい。
【0026】
燃焼室カップ部材の内表面を被覆するときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の外径は、燃焼室カップ部材の内径よりも僅かに小さい程度にすることが望ましい。カップ状又は筒状の薄膜部材を燃焼室カップ部材の内側に配置したときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の内部にガス発生剤が充填されるため、カップ状又は筒状の薄膜部材は、燃焼室カップ部材に押圧されて密着する。
【0027】
カップ状の薄膜部材は、燃焼室カップ部材の周面の全部又は一部と、底面の全部又は一部を密着して覆うことができるものである。カップ状の薄膜部材であると、底面が覆われているため、周面の全部を覆わない場合でも、位置がずれたりすることがない。但し、周面の一部を覆うときは、必ず貫通孔を含む面を覆う。
【0028】
筒状の薄膜部材は、燃焼室カップ部材の周面の全部を密着して覆うことができるものである。貫通孔を含む周面の一部を覆うようにしてもよいが、年月を経たときに、位置がずれるおそれがあるため、好ましくない。
【0029】
燃焼室カップ部材は、開口部はハウジング底面に当接されているが、天井面はハウジング天井面に当接されていてもよいし、当接されていなくてもよいが、燃焼室カップ部材の天井面とハウジング天井面が当接していると、燃焼室カップ部材の固定が容易であるので、好ましい。なお、燃焼室カップ部材の開口部内側及び天井面の少なくとも一方に、カップ状又は筒状の薄膜部材の開口端部を巻き込んで固定してもよい。
【0030】
本発明は、課題の他の解決手段として、
前記第1燃焼室が、前記第1燃焼室内に配置されたエンハンサ室カップ部材により、第1点火手段とエンハンサ剤が収容されたエンハンサ室とガス発生剤が収容された空間に分離されており、
前記エンハンサ室カップ部材の周面が複数の貫通孔を有しており、前記貫通孔を含む前記エンハンサ室カップ部材の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されている、請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器を提供する。
【0031】
エンハンサ室カップ部材の周面には、内部(エンハンサ室)のエンハンサ剤の燃焼により発生したガスを排出するための複数の貫通孔が形成されている。
【0032】
従来、この貫通孔(エンハンサ孔)は、エンハンサ剤が第1燃焼室側に漏れ出ないようにするためと、燃焼時においてエンハンサ室内の圧力をある程度まで高めるため(エンハンサ剤としてガス発生剤を用いた場合には、エンハンサ室内を一定圧力まで高めることで、燃焼し易くする場合がある)、金属製の粘着テープで閉塞されていた。
【0033】
しかし、エンハンサ室カップ部材の周面の大きさに比べて貫通孔の大きさは小さく、また粘着テープの幅も前記周面の大きさに比べて小さいので、粘着テープを貫通孔に貼り付ける際には、作業を容易にするため、予め貫通孔の位置決めが必要となる。更に、車両の耐用年数(通常、10年以上)を考慮すると、粘着テープを用いた際、粘着剤の性質によっては粘着力の経年劣化による閉塞不良の発生も懸念される。
【0034】
本発明では、前記貫通孔(エンハンサ孔)を含むエンハンサ室カップ部材の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されているため、従来の粘着テープを用いた場合のような貼り付け作業が不要となるほか、貫通孔の位置決めも不要となり、粘着剤も使用しないため、粘着力の低下が問題となることもない。
【0035】
カップ状又は筒状の薄膜部材は、アルミニウムやステンレス等からなるものが好ましく、厚さは50〜1000μm程度にすることができる。
【0036】
エンハンサカップ部材の外表面を被覆するときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の内径は、エンハンサカップ部材の外径と同程度か僅かに大きい程度にして、エンハンサカップ部材の外表面に密着して被覆できるようにすることが好ましい。
【0037】
エンハンサカップ部材の内表面を被覆するときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の外径は、エンハンサカップ部材の内径よりも僅かに小さい程度にすることが望ましい。カップ状又は筒状の薄膜部材をエンハンサカップ部材の内側に配置したときは、カップ状又は筒状の薄膜部材の内部にエンハンサ剤が充填されるため、カップ状又は筒状の薄膜部材は、エンハンサカップ部材に押圧されて密着する。
【0038】
カップ状の薄膜部材は、エンハンサカップ部材の周面の全部又は一部と、底面の全部又は一部を密着して覆うことができるものである。カップ状の薄膜部材であると、底面が覆われているため、周面の全部を覆わない場合でも、位置がずれたりすることがない。但し、周面の一部を覆うときは、必ず貫通孔を含む面を覆う。
【0039】
筒状の薄膜部材は、エンハンサカップ部材の周面の全部を密着して覆うことができるものである。貫通孔を含む周面の一部を覆うようにしてもよいが、年月を経たときに、位置がずれるおそれがあるため、好ましくない。
【0040】
エンハンサ室カップ部材は、開口部はハウジング底面に当接されているが、天井面はハウジング天井面に当接されていてもよいし、当接されていなくてもよいが、エンハンサ室カップ部材の天井面とハウジング天井面が当接していると、エンハンサ室カップ部材の固定が容易であるので、好ましい。なお、エンハンサ室カップ部材の開口部内側及び天井面の少なくとも一方に、カップ状又は筒状の薄膜部材の開口端部を巻き込んで固定してもよい。
【0041】
貫通孔(エンハンサ孔を含む)は、一般的な円形のもののほか、縦方向に細長い形状の貫通孔、周方向に細長い形状の貫通孔でもよく、これらを組み合わせたものでもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明のエアバッグ用ガス発生器は、構造が簡略化されているため、製造工程も簡略化でき、全体を軽量化できる。また、燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材が有する貫通孔を予め位置決めする必要がなくなり、粘着テープも必要なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(1)図1のガス発生器
図1により、本発明の実施の形態を説明する。図1は、エアバッグ用ガス発生器の軸方向断面図であり、公知(特開2004−344740号公報の図1)のものを応用したものである。
【0044】
ガス発生剤14が充填された燃焼室13と、エンハンサ剤12及び点火器11が収容されたエンハンサ室は、筒状分離壁20で分離されている。筒状分離壁20の上方開口部側にはフランジ部21が設けられており、フランジ部21は天井面側の内側面10aに当接されており、下方開口部端縁22の周面は、底面側の内側面10a及び点火器11に挟み込まれている。筒状分離壁20は、周面に複数の貫通孔(エンハンサ孔)25を有している。
【0045】
筒状分離壁20の外側周面の全体は、アルミニウム製の筒状の薄膜部材30で密着して覆われており、エンハンサ孔25は筒状の薄膜部材30で閉塞されている。
【0046】
筒状の薄膜部材30の上方開口部側は、フランジ部21と内側面10aの間に巻き込まれて固定されており、下方開口部側は、筒状分離壁20と内側面10aの間に挟み込まれて固定されている。このようにして筒状の薄膜部材30の両端開口部が固定されているので、筒状の薄膜部材30は、ずれたりすることがない。なお、筒状の薄膜部材30は、筒状分離壁20の内側に配置して、エンハンサ孔25を閉塞することもできる。
【0047】
(2)図2〜図6のガス発生器
図2〜図6により、本発明の実施の形態を説明する。図2は、エアバッグ用ガス発生器の軸方向断面図である。図3(a)は、図2の燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材の斜視図、図3(b)は図3(a)の縦断面図である。図4(a)は、図2の別形態の燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材の斜視図、図4(b)は図4(a)の縦断面図である。図5、図6は、図2の更に別形態の燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材の斜視図である。
【0048】
エアバッグ用ガス発生器100は、ディフューザシェル112とクロージャシェル113とが接合一体化されたハウジング111により、外殻が形成されている。ディフューザシェル112とクロージャシェル113は、接合部において溶接されている。
【0049】
ディフューザシェル112の周面には、複数のガス排出口114が設けられており、ガス排出口114は、アルミニウム又はステンレスからなるシールテープ115で内側から閉塞されている。
【0050】
クロージャシェル113の底面には2つの穴が設けられ、それぞれに第1点火手段121と第2点火手段125が、外部雰囲気からの湿気の侵入が防止できるように嵌め込まれている。
【0051】
第1点火手段121は、第1点火器カラー122に固定された第1点火器123を有しており、第1点火器123から延ばされた2本の導電ピン124の部分に、リードワイヤを有するコネクタが嵌め込まれ、バッテリーに接続される。
【0052】
第2点火手段125は、第2点火器カラー126に固定された第2点火器127を有しており、第2点火器127から延ばされた2本の導電ピン128の部分に、リードワイヤを有するコネクタが嵌め込まれ、バッテリーに接続される。第2点火器カラー126は、大径部126aと小径部126bとを有している。
【0053】
ハウジング111内には、第1燃焼室131と第2燃焼室135が設けられており、第2燃焼室135は、周面141bに複数の貫通孔142を有する燃焼室カップ部材141により、第1燃焼室131と分離されている。図2では、第2燃焼室135は第1燃焼室131に内包された状態であるが、第1燃焼室131と第2燃焼室135が隣接する状態であってもよい。第1燃焼室131内には図示していない第1ガス発生剤が充填され、第2燃焼室135内には図示していない第2ガス発生剤が充填されている。
【0054】
貫通孔142は、図3、図4に示すような円形の貫通孔に代えて、図5(a)、(b)に示すような、縦方向に細長い形状の貫通孔142にすることができる。このような縦方向に細長い形状の貫通孔142は、周方向に均等間隔で、2以上設けることができる。
【0055】
また貫通孔142は、図3、図4に示すような円形の貫通孔に代えて、図6(a)、(b)に示すような、周方向に細長い形状の貫通孔142にすることができる。このような周方向に細長い形状の貫通孔142は、好ましくは高さ方向及び周方向に均等間隔で、2以上を設けることができる。
【0056】
貫通孔142は、図5に示す縦方向に細長い貫通孔と、図6に示す周方向に細長い貫通孔を組み合わせて配置したものでもよいし、場合により、図3及び図4に示す円形の貫通孔と組み合わせてもよい。
【0057】
第1燃焼室131内には、周面132bに複数のエンハンサ孔134を有するエンハンサ室カップ部材132が配置され、エンハンサ室カップ部材132内はエンハンサ室133となっており、図示していないエンハンサ剤と第2点火手段121が収容されている。
【0058】
エンハンサ孔134は、図3、図4に示すような円形のエンハンサ孔に代えて、図5(a)、(b)に示すような、縦方向に細長い形状のエンハンサ孔134にすることができる。このような縦方向に細長い形状のエンハンサ孔134は、周方向に均等間隔で、2以上設けることができる。
【0059】
またエンハンサ孔134は、図3、図4に示すような円形のエンハンサ孔に代えて、図6(a)、(b)に示すような、周方向に細長い形状のエンハンサ孔134にすることができる。このような周方向に細長い形状のエンハンサ134は、高さ方向及び周方向に均等間隔で、2以上設けることができる。
【0060】
エンハンサ孔134は、図5に示す縦方向に細長い形状のエンハンサ孔と、図6に示す周方向に細長い形状のエンハンサ孔を組み合わせて配置したものでもよいし、場合により、図3及び図4に示す円形のエンハンサ孔と組み合わせてもよい。
【0061】
エンハンサ室カップ部材132は、開口部が第1点火器カラー122に嵌め込まれており、開口部周縁がハウジング111の底面に配置したガスケット118に当接され、底部132aはハウジング111の天井面112aに当接されている。よって、エンハンサ室カップ部材132は、第1点火器カラー122により位置決めされ、天井面112aとガスケット118により、上下方向から押圧されるようにして固定されている。
【0062】
第2燃焼室135を形成する燃焼室カップ部材141は、燃焼室カップ部材141の内径よりも大きな外径を有する第2点火器カラー126の大径部126aに圧入されている。このように燃焼室カップ部材141を大径部126aに圧入することで、燃焼室カップ部材141の位置決めがされ、軸方向及び半径方向への移動が阻止される。
【0063】
燃焼室カップ部材141の開口部周縁は、ハウジング111の底面に配置したガスケット118に当接され、底部141aはハウジング111の天井面112aに当接されている。よって、燃焼室カップ部材141は、天井面112aとガスケット118により、上下方向から押圧されるようにして固定されている。なお、ガスケット118は使用しなくてもよい。
【0064】
第1燃焼室131内には、第1ガス発生剤の充填量に応じて、第1燃焼室131の容積を調整するための円盤状のリテーナ150が嵌め込まれている。リテーナ150は、2つの穴を有しており、これらの2つの穴が燃焼室カップ部材141とエンハンサ室カップ部材132に嵌め込まれている。
【0065】
第1燃焼室131の外側には、燃焼ガスの濾過及び冷却機能を有する筒状のクーラントフィルタ145が配置されており、クーラントフィルタ145の外周面とガス排出口114及びシールテープ115の間には間隙が設けられている。
【0066】
第2燃焼室135を形成する燃焼室カップ部材141の構造は、図3又は図4に示すようにすることができる。
【0067】
図3(a)、(b)、図5(a)、図6(a)では、燃焼室カップ部材141内に、アルミニウム製のカップ状薄膜部材147が配置されている。カップ状薄膜部材147内には図示していない第2ガス発生剤が充填されているため、カップ状薄膜部材147は、燃焼室カップ部材141の内表面の全体に密着しており、複数の貫通孔142を内側から閉塞している。
【0068】
図4(a)、(b)、図5(b)、図6(b)では、燃焼室カップ部材141の外表面の全体に密着して、アルミニウム製のカップ状薄膜部材147が被せられている。カップ状薄膜部材147は、複数の貫通孔142を外側から閉塞している。
【0069】
エンハンサ室133を形成するエンハンサ室カップ部材132の構造は、図3又は図4に示すようにすることができる。
【0070】
図3(a)、(b)、図5(a)、図6(a)では、エンハンサ室カップ部材132内に、アルミニウム製のカップ状薄膜部材137が配置されている。カップ状薄膜部材137内には図示していないエンハンサ剤が充填されているため、カップ状薄膜部材137は、エンハンサ室カップ部材132の内表面の全体に密着しており、複数のエンハンサ孔134を内側から閉塞している。
【0071】
図4(a)、(b)、図5(b)、図6(b)では、エンハンサ室カップ部材132の外表面の全体に密着して、アルミニウム製のカップ状薄膜部材137が被せられている。カップ状薄膜部材137は、複数のエンハンサ孔134を外側から閉塞している。
【0072】
図2に示すとおり、エンハンサ室カップ部材132のエンハンサ孔134と、燃焼室カップ部材141の貫通孔142は、互いに軸方向の高さが異なるように形成されている。
【0073】
次に、図2及び図4のエアバッグ用ガス発生器を自動車のエアバッグシステムに適用した場合のの動作を説明する。なお、第1点火器123と第2点火器127は、衝突時において自動車が受ける衝撃の程度に応じて、第1点火器123のみが作動する場合、第1点火器123が先に作動して第2点火器127が遅れて作動する場合、第1点火器123と第2点火器127が同時に作動する場合があるが、以下においては、第1点火器123が先に作動して第2点火器127が遅れて作動する場合について説明する。
【0074】
自動車が衝突して衝撃を受けたとき、コントロールユニットからの作動信号を受け、第1点火器123が作動点火してエンハンサ剤を着火燃焼させる。その後、エンハンサ室133内の圧力の上昇により、エンハンサ孔134を外側から覆うカップ状薄膜部材137が破壊され、エンハンサ孔134が開放されるため、そこから燃焼生成物(着火エネルギー)が第1燃焼室131内に放出される。
この燃焼生成物の放出により、第1ガス発生剤が着火燃焼され、高温の燃焼ガスを発生させる。燃焼ガスは、クーラントフィルタ145を通って濾過及び冷却された後、シールテープ115を破り、ガス排出口114から排出され、エアバッグを膨張させる。このとき、第2燃焼室135はカップ状薄膜部材147で囲まれており、カップ状薄膜部材147は外側からの圧力では開裂しないため、第1燃焼室131で発生した燃焼ガスが第2燃焼室135内に流入することがない。
【0075】
僅かに遅れて第2点火器127が作動点火して第2ガス発生剤を着火燃焼させ、高温の燃焼ガスを発生させる。そして、高温の燃焼ガスに押圧され、貫通孔142を外側から覆うカップ状薄膜部材147が破壊され、貫通孔142が開放される。このため、貫通孔142から燃焼ガスが流出し、クーラントフィルタ145を通って濾過及び冷却された後、ガス排出口114から排出され、更にエアバッグを膨張させる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】燃焼室が1つのガス発生器の軸方向の断面図。
【図2】燃焼室が2つのガス発生器の軸方向の断面図。
【図3】(a)は、燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材の斜視図、(b)は(a)の断面図。
【図4】(a)は、別形態の燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材の斜視図、(b)は(a)の断面図。
【図5】(a)、(b)は、別形態の燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材の斜視図。
【図6】(a)、(b)は、別形態の燃焼室カップ部材又はエンハンサ室カップ部材の斜視図。
【符号の説明】
【0077】
100 エアバッグ用ガス発生器
111 ハウジング
114 ガス排出口
122 第1点火器カラー
123 第1点火器
126 第2点火器カラー
127 第2点火器
131 第1燃焼室
132 エンハンサ室カップ部材
133 エンハンサ室
134 エンハンサ孔
135 第2燃焼室
137 カップ状薄膜部材
141 燃焼室カップ部材
142 貫通孔
147 カップ状薄膜部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出口を有するハウジング内に、ガス発生剤及び点火手段が配置された燃焼室を有しており、
前記燃焼室が、前記燃焼室内に配置されたカップ状又は筒状の分離壁により、点火手段とエンハンサ剤が収容されたエンハンサ室とガス発生剤が収容された空間に分離されており、
前記カップ状又は筒状の分離壁の周面が複数の貫通孔を有しており、前記貫通孔を含む前記分離壁の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されている、エアバッグ用ガス発生器。
【請求項2】
ガス排出口を有するハウジング内に、それぞれ独自のガス発生剤及び点火手段が配置された第1燃焼室と第2燃焼室を有しており、
前記第2燃焼室が、前記ハウジング内に配置された燃焼室カップ部材により、第1燃焼室と分離され、前記燃焼室カップ部材内には第2ガス発生剤と第2点火手段が配置されており、
前記燃焼室カップ部材の周面が複数の貫通孔を有しており、前記貫通孔を含む前記燃焼室カップ部材の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されている、エアバッグ用ガス発生器。
【請求項3】
前記第1燃焼室が、前記第1燃焼室内に配置されたエンハンサ室カップ部材により、第1点火手段とエンハンサ剤が収容されたエンハンサ室とガス発生剤が収容された空間に分離されており、
前記エンハンサ室カップ部材の周面が複数の貫通孔を有しており、前記貫通孔を含む前記エンハンサ室カップ部材の内表面又は外表面の少なくとも周面が、カップ状又は筒状の薄膜部材で被覆されている、請求項2記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項4】
貫通孔が、縦方向に細長い形状及び周方向に細長い形状の少なくとも一方からなるものである、請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用ガス発生器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−131077(P2007−131077A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324443(P2005−324443)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】