エアバッグ装置
【課題】 歩行者を保護する金属製エアバッグの両端部を確実に展開させる。
【解決手段】 金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材24で閉塞したチューブ状のエアバッグ18を車両のフロントピラーに沿って配置する。金属製のエアバッグ18は一旦展開すると萎むことがなく、金属の塑性変形で歩行者の衝撃を吸収するので、容量の小さいインフレータを採用して重量やコストを削減できるだけでなく、歩行者が衝突するタイミングのずれに関わらずに安定した衝撃吸収性能を発揮することができる。また折り畳んだエアバッグ18の両端部は閉塞部材24に屈曲可能に溶接w1,w2されるので、エアバッグ18の両端部を展開時に径方向外側に屈曲させて充分に展開し、その部分の剛性を低下させて衝撃吸収性能を高めることができる。
【解決手段】 金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材24で閉塞したチューブ状のエアバッグ18を車両のフロントピラーに沿って配置する。金属製のエアバッグ18は一旦展開すると萎むことがなく、金属の塑性変形で歩行者の衝撃を吸収するので、容量の小さいインフレータを採用して重量やコストを削減できるだけでなく、歩行者が衝突するタイミングのずれに関わらずに安定した衝撃吸収性能を発揮することができる。また折り畳んだエアバッグ18の両端部は閉塞部材24に屈曲可能に溶接w1,w2されるので、エアバッグ18の両端部を展開時に径方向外側に屈曲させて充分に展開し、その部分の剛性を低下させて衝撃吸収性能を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材で閉塞したチューブ状のエアバッグを車両のフロントピラーに沿って配置し、インフレータが発生するガスで前記エアバッグを展開して歩行者を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントピラーの前面を覆うピラーガーニッシュの内側に折り畳んだ布製のエアバッグを収納し、歩行者との衝突時にインフレータが発生するガスをエアバッグに供給することで、ピラーガーニッシュが破断した隙間からエアバッグをフロントピラーの前面に沿って展開させて歩行者を保護する歩行者保護エアバッグ装置が、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また自動車のフロントピラーの前面を覆うピラーガーニッシュをピラー骨格部材にリンク式のピラー駆動機構を介して支持し、歩行者との衝突時にピラー駆動機構でピラーガーニッシュをピラー骨格部材から浮き上がらせることで、ピラーガーニッシュがストロークできるようにして衝突エネルギーを吸収する歩行者保護用衝撃吸収構造が、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−283939号公報
【特許文献2】特開2006−282105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明は、エアバッグが布製であるために展開状態を長時間に亙って維持することが難しく、歩行者がフロントピラーに衝突するタイミングによっては充分な衝撃吸収効果を発揮できない可能性があった。
【0006】
また上記特許文献2に記載された発明は、ピラーガーニッシュをピラー骨格部材に移動可能に支持するリンク式のピラー駆動機構の構造が複雑であり、部品点数が増加してコストアップの要因となる問題があった。
【0007】
そこで本出願人は、つづら折りした金属製のエアバッグをフロントウインドウガラスとフロントピラーとの間に配置し、歩行者との衝突時にエアバッグをフロントピラーに沿うようにチューブ状に展開するものを、特願2009−224380号により既に提案している。
【0008】
しかしながら、上記特願2009−224380号で提案されたものは、折り畳まれたエアバッグの両端部を、厚肉で剛性が高い箱状のエンドキャップの開口部に圧入して固定したので、エアバッグの両端部がエンドキャップに拘束されて自由に膨張することができず、エアバッグの両端部の剛性が高いままになって衝撃吸収性能が低下する可能性があった。
【0009】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、歩行者を保護する金属製エアバッグの両端部を確実に展開させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材で閉塞したチューブ状のエアバッグを車両のフロントピラーに沿って配置し、インフレータが発生するガスで前記エアバッグを展開して歩行者を保護するエアバッグ装置であって、折り畳まれた前記エアバッグの両端部は前記閉塞部材に屈曲可能に溶接されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0011】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記エアバッグの前記開口部の端面は前記閉塞部材に突き合わされて溶接されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0012】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記閉塞部材はつづら折りに折り曲げられることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0013】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記閉塞部材は、前記開口部の端面に溶接される閉塞部と、前記閉塞部から前記エアバッグの側面を覆うように折り曲げられる一対の側壁部とを備えてコ字状に形成されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0014】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記閉塞部材は、前記開口部の端面に突き合わされる閉塞部と、前記閉塞部の周囲から前記エアバッグの側面の全周を覆うように折り曲げられて該側面に溶接される筒状部とを備えてキャップ状に形成され、前記筒状部は展開する前記エアバッグの圧力で変形可能であることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0015】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項5の構成に加えて、前記筒状部は拡開可能なスリットを備えることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0016】
また請求項7に記載された発明によれば、請求項1〜請求項6の何れか1項の構成に加えて、前記閉塞部材は変形可能なステーを介して車体に固定されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の構成によれば、金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材で閉塞したチューブ状のエアバッグを車両のフロントピラーに沿って配置したので、インフレータが発生するガスでエアバッグを展開して歩行者を保護することができる。また金属製のエアバッグは一旦展開すると萎むことがなく、金属の塑性変形で歩行者の衝撃を吸収するので、容量の小さいインフレータを採用して重量やコストを削減できるだけでなく、歩行者が衝突するタイミングのずれに関わらずに安定した衝撃吸収性能を発揮することができる。また折り畳んだエアバッグの両端部は閉塞部材に屈曲可能に溶接されるので、エアバッグの両端部を展開時に径方向外側に屈曲させることで、前記両端部を充分に展開して衝撃吸収性能を高めることができる。
【0018】
また請求項2の構成によれば、エアバッグの開口部の端面は閉塞部材に突き合わされて溶接されるので、突き合わせて溶接した部分でエアバッグを径方向外側に容易に屈曲させて確実に展開することができる。
【0019】
また請求項3の構成によれば、閉塞部材はつづら折りに折り曲げられるので、エアバッグの展開時に閉塞部材が平面状に伸展することで、エアバッグの両端部を更に確実に展開することができる。
【0020】
また請求項4の構成によれば、閉塞部材は、開口部の端面に溶接される閉塞部と、閉塞部からエアバッグの側面を覆うように折り曲げられる一対の側壁部とを備えてコ字状に形成されるので、エアバッグの開口部と閉塞部材の閉塞部との間から漏れるガスを側壁部でシールすることができる。
【0021】
また請求項5の構成によれば、閉塞部材は、開口部の端面に突き合わされる閉塞部と、閉塞部の周囲からエアバッグの側面の全周を覆うように折り曲げられて該側面に溶接される筒状部とを備えてキャップ状に形成されるので、展開するエアバッグの圧力で閉塞部材の筒状部を変形させることで、エアバッグの両端部を径方向外側に容易に屈曲させて確実に展開することができる。
【0022】
また請求項6の構成によれば、筒状部は拡開可能なスリットを備えるので、展開するエアバッグの圧力で側壁部のスリットを拡開させることで、エアバッグの両端部を径方向外側に一層容易に屈曲させて確実に展開することができる。
【0023】
また請求項7の構成によれば、閉塞部材は変形可能なステーを介して車体に固定されるので、エアバッグの展開時にステーが変形して閉塞部材が車体から離れる方向に移動することで、エアバッグの両端部を一層確実に展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自動車の車体前部の平面図。(第1の実施の形態)
【図2】図1の2−2線拡大断面図。(第1の実施の形態)
【図3】エアバッグの斜視図。(第1の実施の形態)
【図4】図3の4部拡大分解斜視図。(第1の実施の形態)
【図5】図3の5部拡大斜視図。(第1の実施の形態)
【図6】図3の6方向拡大矢視図。(第1の実施の形態)
【図7】図2に対応するエアバッグ展開時の作用説明図。(第1の実施の形態)
【図8】前記図6に対応する図。(第2の実施の形態)
【図9】閉塞部材の斜視図。(第3の実施の形態)
【図10】閉塞部材の斜視図。(第4の実施の形態)
【図11】前記図6に対応する図。(第5の実施の形態)
【図12】前記図6に対応する図。(第6の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0026】
図1に示すように、自動車はボンネットフード11の後方にフロントウインドウガラス12を備えており、フロントウインドウガラス12の左右の縁部12a,12aおよびフロントドア13,13のドアガラス14,14間に挟まれるように、フロントピラー15,15が配置される。
【0027】
図2に示すように、フロントピラー15は車体外側に位置するアウターパネル16と、車体内側に位置するインナーパネル17とを結合して閉断面に構成されており、アウターパネル16の前面16aにピラーガーニッシュを兼ねる金属製のエアバッグ18が折り畳み状態で設けられる。アウターパネル16およびインナーパネル17の結合部16c,17aの前面にフロントウインドウガラス12の縁部12aがダムラバー20を介して重ね合わされ、接着剤21で接着される。
【0028】
折り畳んだ金属チューブよりなるエアバッグ18は、ガーニッシュ部18aと、ウインドウガラス側折り畳み部18bと、アウターパネル側折り畳み部18cと、インフレータ支持部18dとを備える。ガーニッシュ部18aは、フロントピラー15のアウターパネル16の側面16bからフロントウインドウガラス12に向かって滑らかに連なっており、アウターパネル16とフロントウインドウガラス12との間に配置されるピラーガーニッシュの機能を果たしている。
【0029】
ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは、エアバッグ18が展開するときの伸び代を確保するために、ガーニッシュ部18aの裏面側(後方側)においてつづら折り(ジクザグ折り)に折り畳まれる。その際に、ウインドウガラス側折り畳み部18bの折り幅W1に比べて、アウターパネル側折り畳み部18cの折り幅W2は大きく設定されている。
【0030】
図3、図5および図6から明らかなように、折り畳まれたエアバッグ18の両端部は細くプレス成形されており、そこに閉塞部材24,24の平板状の閉塞部24a,24aを当接させて溶接することで、エアバッグ18の両端部が閉塞される。尚、エアバッグ18の両端部を配置するスペースを車体側に確保することができれば、両端部を細くプレス成形する必要はない。各々の閉塞部材24は閉塞部24aに連なる取付部24bを備えており、取付部24bのボルト孔24cおよび車体パネル25を貫通するボルト26にナット27を螺合することで、エアバッグ18がフロントピラー15に沿って固定される。
【0031】
折り畳まれたエアバッグ18の長手方向両端部のうち、つづら折りになっていないガーニッシュ部18aおよびインフレータ支持部18dは、その全幅に亙って閉塞部材24の閉塞部24aに突き当てられて隅肉溶接w1され、つづら折りになっているウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは、その山部の先端だけが閉塞部24aに突き当てられて隅肉溶接w2される。
【0032】
図2〜図4から明らかなように、ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを挟んでガーニッシュ部18aに対向するインフレータ支持部18dの下端部には、エアバッグ18を展開させるガスを発生させるインフレータ19が取り付けられる。円筒状のインフレータ19は、断面U字状の取付ブラケット28の内面に2個の固定具29,29で固定されており、この取付ブラケット28がエアバッグ18のインフレータ支持部18dに形成した開口18eに外側から被せられてボルト30…およびナット31…で固定される。
【0033】
図2から明らかなように、エアバッグ18のガーニッシュ部18aとアウターパネル側折り畳み部18cとの境目にアウターパネル側リップ32が設けられており、このアウターパネル側リップ32がアウターパネル16の前面16aに当接する。またウインドウガラス側折り畳み部18bとエアバッグ18のインフレータ支持部18dとの境目にウインドウガラス側リップ33が設けられており、このウインドウガラス側リップ33がフロントウインドウガラス12の縁部12aの前面に当接する。これらのアウターパネル側リップ32およびウインドウガラス側リップ33により雨水等がエアバッグ18のインフレータ支持部18d側に浸入するのを阻止し、インフレータ19を保護することができる。
【0034】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
【0035】
エアバッグ18が展開しない通常時には、エアバッグ18のガーニッシュ部18aが、フロントピラー15のアウターパネル16の側面16bに滑らかに連なってピラーガーニッシュの機能を発揮するため、専用のピラーガーニッシュを廃止して部品点数を削減することができる。しかも、従来のピラーガーニッシュと置き換えることで、エアバッグ18はフロントピラー15およびフロントウインドウガラス12間にコンパクトに配置されるので、折り畳んだエアバッグ18を収納するケースやカバーを不要にしながら、フロントピラー15まわりの外観を良好に維持することができる。
【0036】
さて車両が歩行者に衝突したことが検知されるとインフレータ19が作動し、インフレータ19が発生するガスでエアバッグ18の内圧が増加する。この内圧の増加により、図7に示すように、エアバッグ18のつづら折りされたウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cが先ず車体外側に向けて膨張した後に、フロントピラー15のアウターパネル16の前面16aおよび側面16bを覆うように左右方向に展開する。
【0037】
このとき、エアバッグ18がウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを備えることで、展開後のエアバッグ18の周長を大きく確保し、フロントピラー15の広い領域を覆って衝撃吸収性能を高めることができる。またフロントピラー15はフロントウインドウガラス12に比べて硬いために歩行者に与える衝撃が大きくなるが、ウインドウガラス側折り畳み部18bの折り幅W1よりもアウターパネル側折り畳み部18cの折り幅W2を大きく設定したことで、アウターパネル側折り畳み部18cの展開時における伸び代(伸展量)を大きくし、エアバッグ18をアウターパネル16の側面16b側に回り込むように展開させて衝撃吸収性能を更に高めることができる。
【0038】
また歩行者用のエアバッグ装置では、歩行者の体格や衝突時の車速に応じて、歩行者がフロントピラー15に衝突するまでの時間に比較的に大きな差が発生し易いという特性がある。従って、従来の布製のエアバッグは、展開状態を所定時間に亙って維持するために、ガスを継続的に発生する大容量のインフレータが必要になるという問題がある。それに対して本実施の形態では、金属製のエアバッグ18を採用したことで、一旦展開したエアバッグ18はガスの供給を停止した後も展開状態が維持され、その塑性変形によって歩行者との衝突の衝撃を吸収するので、インフレータ19の容量を小さくしながら、歩行者がフロントピラー15に衝突するタイミングによらずに有効な衝撃吸収性能を発揮することができる。
【0039】
ところで、エアバッグ18が展開するとき、その長手方向両端部は折り畳み状態で閉塞部材24,24に結合されているため、長手方向中央部に比べて展開し難くなる。その結果、エアバッグ18の長手方向中央部は略円形断面に展開するのに対し、長手方向両端部は折り畳みが完全に解放されないために凹凸を有する形状に展開し、その凹凸が補強リブとして機能することで、乗員が衝突したときの剛性が高くなり過ぎて有効な衝撃吸収性能を発揮できない可能性がある。
【0040】
しかしながら本実施の形態によれば、エアバッグ18の長手方向両端部が閉塞部材24,24に突き合わされて屈曲可能に隅肉溶接w1,w2されているため、その隅肉溶接w1,w2の部分でエアバッグ18の端縁が径方向外側に折れ曲がるように変形することで、エアバッグ18の長手方向両端部を充分に展開することができる。これにより、展開したエアバッグ18の長手方向両端部の剛性を長手方向中間部の剛性と同等になるまで低下させ、エアバッグ18の全長に亙って均等な衝撃吸収性能を発揮させることができる。
【0041】
尚、エアバッグ18のウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは、その山部の先端だけが閉塞部材24に隅肉溶接w2されているため、展開時に閉塞部材24,24との接続部の隙間からガスが漏れるが、前記隙間はベントホールと同様の機能を発揮するものであり、エアバッグ18の展開に支障を及ぼすものではない。
【0042】
次に、図8に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0043】
第2の実施の形態は、閉塞部材24の閉塞部24aと取付部24bとを屈曲可能なステー24dで接続したもので、エアバッグ18の非展開時に取付部24bおよびステー24dは相互に重なり合うように折り曲げられている。
【0044】
エアバッグ18が展開するときに車体パネル25から受ける反力で取付部24bに対してステー24dが起立することで、エアバッグ18は車体パネル25から離反する方向に移動することができる。その結果、エアバッグ18の長手方向両端部は車体パネル25と干渉することなく自由に展開可能となり、エアバッグ18の長手方向両端部の展開性能が更に向上する。
【0045】
次に、図9に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0046】
第3の実施の形態は、閉塞部材24の閉塞部24aをつづら折りしたもので、エアバッグ18が展開するときに閉塞部24aのつづら折りが伸長することで、エアバッグ18の長手方向両端部の展開性能が更に向上する。
【0047】
次に、図10に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0048】
第4の実施の形態は第3の実施の形態の変形であって、閉塞部材24のつづら折りした閉塞部24aの両側縁から、エアバッグ18のウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを覆うように、一対のつづら折りした側壁部24e,24eを一体に形成したものである。
【0049】
この第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態の作用効果に加えて、山部の先端だけを隅肉溶接w2されたウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cの端部からのガス漏れを、側壁部24e,24eによって抑制するという作用効果を達成することができる。
【0050】
次に、図11に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0051】
第5の実施の形態の閉塞部材24は一面が解放したキャップ状の部材で構成される。即ち、車体パネル25にボルト26およびナット27で固定されたL字状のブラケット34に溶接される閉塞部材24は、エアバッグ18の長手方向両端部の開口部が当接する平板状の閉塞部24aと、閉塞部24aの周囲からエアバッグ18側に延びる筒状部24fとを備えており、筒状部24fの先端側部分が低強度となるように薄肉に形成される。尚、筒状部24fの全体を低強度としても良い。
【0052】
そして閉塞部材24の筒状部24fに挿入されたエアバッグ18の長手方向両端部のうち、平坦なガーニッシュ部18aおよびインフレータ支持部18dは全長に亙って隅肉溶接w1され、ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは山部の先端だけが隅肉溶接w2される。
【0053】
本実施の形態によれば、エアバッグ18が展開するときに、閉塞部材24の筒状部24fの薄肉部分がエアバッグ18と共に径方向外側に広がるように変形することで、エアバッグ18の長手方向両端部を前記薄肉部分と共に屈曲させて充分に展開することができる。これにより、展開したエアバッグ18の長手方向両端部の剛性を長手方向中間部の剛性と同等になるまで低下させ、エアバッグ18の全長に亙って均等な衝撃吸収性能を発揮させることができる。
【0054】
次に、図12に基づいて本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0055】
第6の実施の形態は第5の実施の形態の変形であって、キャップ状の閉塞部材24の筒状部24fの四隅に拡開可能なスリット24g…を形成したものである。
【0056】
本実施の形態によれば、エアバッグ18が展開するとき、閉塞部材24の筒状部24fがスリット24g…によって容易に開くことで、エアバッグ18の長手方向両端部を更に確実に展開することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0058】
例えば、エアバッグ18の折り畳み方は実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
15 フロントピラー
18 エアバッグ
19 インフレータ
24 閉塞部材
24a 閉塞部
24d ステー
24e 側壁部
24f 筒状部
24g スリット
w1 溶接
w2 溶接
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材で閉塞したチューブ状のエアバッグを車両のフロントピラーに沿って配置し、インフレータが発生するガスで前記エアバッグを展開して歩行者を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントピラーの前面を覆うピラーガーニッシュの内側に折り畳んだ布製のエアバッグを収納し、歩行者との衝突時にインフレータが発生するガスをエアバッグに供給することで、ピラーガーニッシュが破断した隙間からエアバッグをフロントピラーの前面に沿って展開させて歩行者を保護する歩行者保護エアバッグ装置が、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また自動車のフロントピラーの前面を覆うピラーガーニッシュをピラー骨格部材にリンク式のピラー駆動機構を介して支持し、歩行者との衝突時にピラー駆動機構でピラーガーニッシュをピラー骨格部材から浮き上がらせることで、ピラーガーニッシュがストロークできるようにして衝突エネルギーを吸収する歩行者保護用衝撃吸収構造が、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−283939号公報
【特許文献2】特開2006−282105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明は、エアバッグが布製であるために展開状態を長時間に亙って維持することが難しく、歩行者がフロントピラーに衝突するタイミングによっては充分な衝撃吸収効果を発揮できない可能性があった。
【0006】
また上記特許文献2に記載された発明は、ピラーガーニッシュをピラー骨格部材に移動可能に支持するリンク式のピラー駆動機構の構造が複雑であり、部品点数が増加してコストアップの要因となる問題があった。
【0007】
そこで本出願人は、つづら折りした金属製のエアバッグをフロントウインドウガラスとフロントピラーとの間に配置し、歩行者との衝突時にエアバッグをフロントピラーに沿うようにチューブ状に展開するものを、特願2009−224380号により既に提案している。
【0008】
しかしながら、上記特願2009−224380号で提案されたものは、折り畳まれたエアバッグの両端部を、厚肉で剛性が高い箱状のエンドキャップの開口部に圧入して固定したので、エアバッグの両端部がエンドキャップに拘束されて自由に膨張することができず、エアバッグの両端部の剛性が高いままになって衝撃吸収性能が低下する可能性があった。
【0009】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、歩行者を保護する金属製エアバッグの両端部を確実に展開させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材で閉塞したチューブ状のエアバッグを車両のフロントピラーに沿って配置し、インフレータが発生するガスで前記エアバッグを展開して歩行者を保護するエアバッグ装置であって、折り畳まれた前記エアバッグの両端部は前記閉塞部材に屈曲可能に溶接されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0011】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記エアバッグの前記開口部の端面は前記閉塞部材に突き合わされて溶接されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0012】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記閉塞部材はつづら折りに折り曲げられることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0013】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記閉塞部材は、前記開口部の端面に溶接される閉塞部と、前記閉塞部から前記エアバッグの側面を覆うように折り曲げられる一対の側壁部とを備えてコ字状に形成されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0014】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記閉塞部材は、前記開口部の端面に突き合わされる閉塞部と、前記閉塞部の周囲から前記エアバッグの側面の全周を覆うように折り曲げられて該側面に溶接される筒状部とを備えてキャップ状に形成され、前記筒状部は展開する前記エアバッグの圧力で変形可能であることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0015】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項5の構成に加えて、前記筒状部は拡開可能なスリットを備えることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0016】
また請求項7に記載された発明によれば、請求項1〜請求項6の何れか1項の構成に加えて、前記閉塞部材は変形可能なステーを介して車体に固定されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の構成によれば、金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材で閉塞したチューブ状のエアバッグを車両のフロントピラーに沿って配置したので、インフレータが発生するガスでエアバッグを展開して歩行者を保護することができる。また金属製のエアバッグは一旦展開すると萎むことがなく、金属の塑性変形で歩行者の衝撃を吸収するので、容量の小さいインフレータを採用して重量やコストを削減できるだけでなく、歩行者が衝突するタイミングのずれに関わらずに安定した衝撃吸収性能を発揮することができる。また折り畳んだエアバッグの両端部は閉塞部材に屈曲可能に溶接されるので、エアバッグの両端部を展開時に径方向外側に屈曲させることで、前記両端部を充分に展開して衝撃吸収性能を高めることができる。
【0018】
また請求項2の構成によれば、エアバッグの開口部の端面は閉塞部材に突き合わされて溶接されるので、突き合わせて溶接した部分でエアバッグを径方向外側に容易に屈曲させて確実に展開することができる。
【0019】
また請求項3の構成によれば、閉塞部材はつづら折りに折り曲げられるので、エアバッグの展開時に閉塞部材が平面状に伸展することで、エアバッグの両端部を更に確実に展開することができる。
【0020】
また請求項4の構成によれば、閉塞部材は、開口部の端面に溶接される閉塞部と、閉塞部からエアバッグの側面を覆うように折り曲げられる一対の側壁部とを備えてコ字状に形成されるので、エアバッグの開口部と閉塞部材の閉塞部との間から漏れるガスを側壁部でシールすることができる。
【0021】
また請求項5の構成によれば、閉塞部材は、開口部の端面に突き合わされる閉塞部と、閉塞部の周囲からエアバッグの側面の全周を覆うように折り曲げられて該側面に溶接される筒状部とを備えてキャップ状に形成されるので、展開するエアバッグの圧力で閉塞部材の筒状部を変形させることで、エアバッグの両端部を径方向外側に容易に屈曲させて確実に展開することができる。
【0022】
また請求項6の構成によれば、筒状部は拡開可能なスリットを備えるので、展開するエアバッグの圧力で側壁部のスリットを拡開させることで、エアバッグの両端部を径方向外側に一層容易に屈曲させて確実に展開することができる。
【0023】
また請求項7の構成によれば、閉塞部材は変形可能なステーを介して車体に固定されるので、エアバッグの展開時にステーが変形して閉塞部材が車体から離れる方向に移動することで、エアバッグの両端部を一層確実に展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自動車の車体前部の平面図。(第1の実施の形態)
【図2】図1の2−2線拡大断面図。(第1の実施の形態)
【図3】エアバッグの斜視図。(第1の実施の形態)
【図4】図3の4部拡大分解斜視図。(第1の実施の形態)
【図5】図3の5部拡大斜視図。(第1の実施の形態)
【図6】図3の6方向拡大矢視図。(第1の実施の形態)
【図7】図2に対応するエアバッグ展開時の作用説明図。(第1の実施の形態)
【図8】前記図6に対応する図。(第2の実施の形態)
【図9】閉塞部材の斜視図。(第3の実施の形態)
【図10】閉塞部材の斜視図。(第4の実施の形態)
【図11】前記図6に対応する図。(第5の実施の形態)
【図12】前記図6に対応する図。(第6の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0026】
図1に示すように、自動車はボンネットフード11の後方にフロントウインドウガラス12を備えており、フロントウインドウガラス12の左右の縁部12a,12aおよびフロントドア13,13のドアガラス14,14間に挟まれるように、フロントピラー15,15が配置される。
【0027】
図2に示すように、フロントピラー15は車体外側に位置するアウターパネル16と、車体内側に位置するインナーパネル17とを結合して閉断面に構成されており、アウターパネル16の前面16aにピラーガーニッシュを兼ねる金属製のエアバッグ18が折り畳み状態で設けられる。アウターパネル16およびインナーパネル17の結合部16c,17aの前面にフロントウインドウガラス12の縁部12aがダムラバー20を介して重ね合わされ、接着剤21で接着される。
【0028】
折り畳んだ金属チューブよりなるエアバッグ18は、ガーニッシュ部18aと、ウインドウガラス側折り畳み部18bと、アウターパネル側折り畳み部18cと、インフレータ支持部18dとを備える。ガーニッシュ部18aは、フロントピラー15のアウターパネル16の側面16bからフロントウインドウガラス12に向かって滑らかに連なっており、アウターパネル16とフロントウインドウガラス12との間に配置されるピラーガーニッシュの機能を果たしている。
【0029】
ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは、エアバッグ18が展開するときの伸び代を確保するために、ガーニッシュ部18aの裏面側(後方側)においてつづら折り(ジクザグ折り)に折り畳まれる。その際に、ウインドウガラス側折り畳み部18bの折り幅W1に比べて、アウターパネル側折り畳み部18cの折り幅W2は大きく設定されている。
【0030】
図3、図5および図6から明らかなように、折り畳まれたエアバッグ18の両端部は細くプレス成形されており、そこに閉塞部材24,24の平板状の閉塞部24a,24aを当接させて溶接することで、エアバッグ18の両端部が閉塞される。尚、エアバッグ18の両端部を配置するスペースを車体側に確保することができれば、両端部を細くプレス成形する必要はない。各々の閉塞部材24は閉塞部24aに連なる取付部24bを備えており、取付部24bのボルト孔24cおよび車体パネル25を貫通するボルト26にナット27を螺合することで、エアバッグ18がフロントピラー15に沿って固定される。
【0031】
折り畳まれたエアバッグ18の長手方向両端部のうち、つづら折りになっていないガーニッシュ部18aおよびインフレータ支持部18dは、その全幅に亙って閉塞部材24の閉塞部24aに突き当てられて隅肉溶接w1され、つづら折りになっているウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは、その山部の先端だけが閉塞部24aに突き当てられて隅肉溶接w2される。
【0032】
図2〜図4から明らかなように、ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを挟んでガーニッシュ部18aに対向するインフレータ支持部18dの下端部には、エアバッグ18を展開させるガスを発生させるインフレータ19が取り付けられる。円筒状のインフレータ19は、断面U字状の取付ブラケット28の内面に2個の固定具29,29で固定されており、この取付ブラケット28がエアバッグ18のインフレータ支持部18dに形成した開口18eに外側から被せられてボルト30…およびナット31…で固定される。
【0033】
図2から明らかなように、エアバッグ18のガーニッシュ部18aとアウターパネル側折り畳み部18cとの境目にアウターパネル側リップ32が設けられており、このアウターパネル側リップ32がアウターパネル16の前面16aに当接する。またウインドウガラス側折り畳み部18bとエアバッグ18のインフレータ支持部18dとの境目にウインドウガラス側リップ33が設けられており、このウインドウガラス側リップ33がフロントウインドウガラス12の縁部12aの前面に当接する。これらのアウターパネル側リップ32およびウインドウガラス側リップ33により雨水等がエアバッグ18のインフレータ支持部18d側に浸入するのを阻止し、インフレータ19を保護することができる。
【0034】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
【0035】
エアバッグ18が展開しない通常時には、エアバッグ18のガーニッシュ部18aが、フロントピラー15のアウターパネル16の側面16bに滑らかに連なってピラーガーニッシュの機能を発揮するため、専用のピラーガーニッシュを廃止して部品点数を削減することができる。しかも、従来のピラーガーニッシュと置き換えることで、エアバッグ18はフロントピラー15およびフロントウインドウガラス12間にコンパクトに配置されるので、折り畳んだエアバッグ18を収納するケースやカバーを不要にしながら、フロントピラー15まわりの外観を良好に維持することができる。
【0036】
さて車両が歩行者に衝突したことが検知されるとインフレータ19が作動し、インフレータ19が発生するガスでエアバッグ18の内圧が増加する。この内圧の増加により、図7に示すように、エアバッグ18のつづら折りされたウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cが先ず車体外側に向けて膨張した後に、フロントピラー15のアウターパネル16の前面16aおよび側面16bを覆うように左右方向に展開する。
【0037】
このとき、エアバッグ18がウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを備えることで、展開後のエアバッグ18の周長を大きく確保し、フロントピラー15の広い領域を覆って衝撃吸収性能を高めることができる。またフロントピラー15はフロントウインドウガラス12に比べて硬いために歩行者に与える衝撃が大きくなるが、ウインドウガラス側折り畳み部18bの折り幅W1よりもアウターパネル側折り畳み部18cの折り幅W2を大きく設定したことで、アウターパネル側折り畳み部18cの展開時における伸び代(伸展量)を大きくし、エアバッグ18をアウターパネル16の側面16b側に回り込むように展開させて衝撃吸収性能を更に高めることができる。
【0038】
また歩行者用のエアバッグ装置では、歩行者の体格や衝突時の車速に応じて、歩行者がフロントピラー15に衝突するまでの時間に比較的に大きな差が発生し易いという特性がある。従って、従来の布製のエアバッグは、展開状態を所定時間に亙って維持するために、ガスを継続的に発生する大容量のインフレータが必要になるという問題がある。それに対して本実施の形態では、金属製のエアバッグ18を採用したことで、一旦展開したエアバッグ18はガスの供給を停止した後も展開状態が維持され、その塑性変形によって歩行者との衝突の衝撃を吸収するので、インフレータ19の容量を小さくしながら、歩行者がフロントピラー15に衝突するタイミングによらずに有効な衝撃吸収性能を発揮することができる。
【0039】
ところで、エアバッグ18が展開するとき、その長手方向両端部は折り畳み状態で閉塞部材24,24に結合されているため、長手方向中央部に比べて展開し難くなる。その結果、エアバッグ18の長手方向中央部は略円形断面に展開するのに対し、長手方向両端部は折り畳みが完全に解放されないために凹凸を有する形状に展開し、その凹凸が補強リブとして機能することで、乗員が衝突したときの剛性が高くなり過ぎて有効な衝撃吸収性能を発揮できない可能性がある。
【0040】
しかしながら本実施の形態によれば、エアバッグ18の長手方向両端部が閉塞部材24,24に突き合わされて屈曲可能に隅肉溶接w1,w2されているため、その隅肉溶接w1,w2の部分でエアバッグ18の端縁が径方向外側に折れ曲がるように変形することで、エアバッグ18の長手方向両端部を充分に展開することができる。これにより、展開したエアバッグ18の長手方向両端部の剛性を長手方向中間部の剛性と同等になるまで低下させ、エアバッグ18の全長に亙って均等な衝撃吸収性能を発揮させることができる。
【0041】
尚、エアバッグ18のウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは、その山部の先端だけが閉塞部材24に隅肉溶接w2されているため、展開時に閉塞部材24,24との接続部の隙間からガスが漏れるが、前記隙間はベントホールと同様の機能を発揮するものであり、エアバッグ18の展開に支障を及ぼすものではない。
【0042】
次に、図8に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0043】
第2の実施の形態は、閉塞部材24の閉塞部24aと取付部24bとを屈曲可能なステー24dで接続したもので、エアバッグ18の非展開時に取付部24bおよびステー24dは相互に重なり合うように折り曲げられている。
【0044】
エアバッグ18が展開するときに車体パネル25から受ける反力で取付部24bに対してステー24dが起立することで、エアバッグ18は車体パネル25から離反する方向に移動することができる。その結果、エアバッグ18の長手方向両端部は車体パネル25と干渉することなく自由に展開可能となり、エアバッグ18の長手方向両端部の展開性能が更に向上する。
【0045】
次に、図9に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0046】
第3の実施の形態は、閉塞部材24の閉塞部24aをつづら折りしたもので、エアバッグ18が展開するときに閉塞部24aのつづら折りが伸長することで、エアバッグ18の長手方向両端部の展開性能が更に向上する。
【0047】
次に、図10に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0048】
第4の実施の形態は第3の実施の形態の変形であって、閉塞部材24のつづら折りした閉塞部24aの両側縁から、エアバッグ18のウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを覆うように、一対のつづら折りした側壁部24e,24eを一体に形成したものである。
【0049】
この第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態の作用効果に加えて、山部の先端だけを隅肉溶接w2されたウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cの端部からのガス漏れを、側壁部24e,24eによって抑制するという作用効果を達成することができる。
【0050】
次に、図11に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0051】
第5の実施の形態の閉塞部材24は一面が解放したキャップ状の部材で構成される。即ち、車体パネル25にボルト26およびナット27で固定されたL字状のブラケット34に溶接される閉塞部材24は、エアバッグ18の長手方向両端部の開口部が当接する平板状の閉塞部24aと、閉塞部24aの周囲からエアバッグ18側に延びる筒状部24fとを備えており、筒状部24fの先端側部分が低強度となるように薄肉に形成される。尚、筒状部24fの全体を低強度としても良い。
【0052】
そして閉塞部材24の筒状部24fに挿入されたエアバッグ18の長手方向両端部のうち、平坦なガーニッシュ部18aおよびインフレータ支持部18dは全長に亙って隅肉溶接w1され、ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは山部の先端だけが隅肉溶接w2される。
【0053】
本実施の形態によれば、エアバッグ18が展開するときに、閉塞部材24の筒状部24fの薄肉部分がエアバッグ18と共に径方向外側に広がるように変形することで、エアバッグ18の長手方向両端部を前記薄肉部分と共に屈曲させて充分に展開することができる。これにより、展開したエアバッグ18の長手方向両端部の剛性を長手方向中間部の剛性と同等になるまで低下させ、エアバッグ18の全長に亙って均等な衝撃吸収性能を発揮させることができる。
【0054】
次に、図12に基づいて本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0055】
第6の実施の形態は第5の実施の形態の変形であって、キャップ状の閉塞部材24の筒状部24fの四隅に拡開可能なスリット24g…を形成したものである。
【0056】
本実施の形態によれば、エアバッグ18が展開するとき、閉塞部材24の筒状部24fがスリット24g…によって容易に開くことで、エアバッグ18の長手方向両端部を更に確実に展開することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0058】
例えば、エアバッグ18の折り畳み方は実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
15 フロントピラー
18 エアバッグ
19 インフレータ
24 閉塞部材
24a 閉塞部
24d ステー
24e 側壁部
24f 筒状部
24g スリット
w1 溶接
w2 溶接
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材(24)で閉塞したチューブ状のエアバッグ(18)を車両のフロントピラー(15)に沿って配置し、インフレータ(19)が発生するガスで前記エアバッグ(18)を展開して歩行者を保護するエアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグ(18)の両端部は前記閉塞部材(24)に屈曲可能に溶接(w1,w2)されることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグ(18)の前記開口部の端面は前記閉塞部材(24)に突き合わされて溶接(w1,w2)されることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記閉塞部材(24)はつづら折りに折り曲げられることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記閉塞部材(24)は、前記開口部の端面に溶接(w1,w2)される閉塞部(24a)と、前記閉塞部(24a)から前記エアバッグ(18)の側面を覆うように折り曲げられる一対の側壁部(24e)とを備えてコ字状に形成されることを特徴とする、請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記閉塞部材(24)は、前記開口部の端面に突き合わされる閉塞部(24a)と、前記閉塞部(24a)の周囲から前記エアバッグ(18)の側面の全周を覆うように折り曲げられて該側面に溶接(w1,w2)される筒状部(24f)とを備えてキャップ状に形成され、前記筒状部(24f)は展開する前記エアバッグ(18)の圧力で変形可能であることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記筒状部(24f)は拡開可能なスリット(24g)を備えることを特徴とする、請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記閉塞部材(24)は変形可能なステー(24d)を介して車体に固定されることを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項1】
金属板を折り畳んで両端の開口部を閉塞部材(24)で閉塞したチューブ状のエアバッグ(18)を車両のフロントピラー(15)に沿って配置し、インフレータ(19)が発生するガスで前記エアバッグ(18)を展開して歩行者を保護するエアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグ(18)の両端部は前記閉塞部材(24)に屈曲可能に溶接(w1,w2)されることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグ(18)の前記開口部の端面は前記閉塞部材(24)に突き合わされて溶接(w1,w2)されることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記閉塞部材(24)はつづら折りに折り曲げられることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記閉塞部材(24)は、前記開口部の端面に溶接(w1,w2)される閉塞部(24a)と、前記閉塞部(24a)から前記エアバッグ(18)の側面を覆うように折り曲げられる一対の側壁部(24e)とを備えてコ字状に形成されることを特徴とする、請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記閉塞部材(24)は、前記開口部の端面に突き合わされる閉塞部(24a)と、前記閉塞部(24a)の周囲から前記エアバッグ(18)の側面の全周を覆うように折り曲げられて該側面に溶接(w1,w2)される筒状部(24f)とを備えてキャップ状に形成され、前記筒状部(24f)は展開する前記エアバッグ(18)の圧力で変形可能であることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記筒状部(24f)は拡開可能なスリット(24g)を備えることを特徴とする、請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記閉塞部材(24)は変形可能なステー(24d)を介して車体に固定されることを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−235813(P2011−235813A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110449(P2010−110449)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]